説明

アンテナ装置及びその製造方法

【課題】アンテナエレメントを固定する部位を共通化することで、製造容易でかつ安定したアンテナ特性が得られるアンテナ装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アンテナ装置100は、アンテナエレメント部110、アンテナソケット部120、及びソケット支持部130を備える構造を有している。アンテナソケット部120は、アンテナエレメント部110を固定するアンテナ嵌合部と、アンテナ嵌合部に接続される給電接続部及び接地接続部を備えている。給電接続部は、アンテナエレメント部110の給電点113と基板側給電点とを電気的に接続し、接地接続部は、グランド(GND)との間で接地点を形成する。アンテナエレメント部110をアンテナ嵌合部に挿入することで、アンテナ装置100が作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の普及に伴い、携帯電話機の小型化や、マルチバンド化、デザインの多様化、等が進められている。それに伴って、携帯電話機に搭載されるアンテナ装置に対しても種々の要求があり、携帯電話の機種毎に対応させてアンテナ装置の設計及びその製造方法も、例えば、特許文献1、2に開示されているような提案がなされている。
【0003】
携帯電話等に搭載されるアンテナ装置は、通常、逆F型アンテナのアンテナエレメントを所定の形状に射出成型した誘電体キャリアに固定して提供される。従来の携帯電話用アンテナ装置の製造方法を、図12を用いて説明する。同図(a)に示すアンテナエレメント901は、板金プレスにより所定形状に形成される。また、同図(b)に示す誘電体キャリア902は、所定の誘電体を用いて射出成型することにより所定形状に形成される。同図(c)に示すアンテナ装置900は、アンテナエレメント901と誘電体キャリア902とを組み立てて固定することで作製される。
【0004】
誘電体キャリア902には、アンテナエレメント901を固定するためのボス903が複数形成されており、誘電体キャリア902の所定の位置にアンテナエレメント901を配置して組み立てた後、ボス903を溶融することでアンテナエレメント901を熱溶着して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−283587号公報
【特許文献2】特開2009−232164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のアンテナ装置及びその製造方法では、携帯電話機の機種毎にアンテナパターンや誘電体キャリアの形状が異なっている。そのため、アンテナエレメントを板金プレスするためのプレス金型、誘電体キャリアを成型するための成型金型、ボスで熱溶着させるための溶着治具、等を携帯電話機の機種毎に作成する必要がある。従来は、アンテナエレメント及び誘電体キャリアとも、機種間で共通化することができず、機種毎に設計して製作する必要があった。そのため、製造コストが高くなるのに加えて、製造に要する時間も長くなってしまうといった問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば誘電体キャリアを用いずに、アンテナエレメントを携帯電話機の筺体等に嵌め込むための部位を形成して固定したり、溶着ボスで固定する方法も考えられる。しかし、このような方法では、板金プレスで形成されたアンテナエレメントが振動に対して弱くなり、信頼性が低下してしまうといった問題が生じる。また、アンテナエレメントを筺体の所定の部位に嵌め込んだり溶着ボスで固定する工程が増え、却って製造に要する時間が長くなってしまうといった問題がある。
【0008】
さらに、アンテナエレメントを誘電体キャリアに押圧して固定するため、アンテナエレメントが誘電体キャリアの影響を受けて誘電損失が発生し、これによりアンテナ効率が低下してしまうといった問題もある。アンテナエレメントを誘電体キャリアに押圧して固定する方法では、アンテナエレメントと誘電体キャリアとの密着の度合い(誘電体キャリアからの浮きの大小)によって周波数などがばらついてしまうといった問題もある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、アンテナエレメントを固定する部位を共通化することで、製造容易でかつ安定したアンテナ特性が得られるアンテナ装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンテナ装置の第1の態様は、1以上のエレメントと給電点が設けられた固定接続部とを有するアンテナエレメント部と、前記固定接続部を固定するアンテナソケット部と、を備え、前記アンテナソケット部が、前記給電点から所定の基板に設けられた基板側給電点までを電気的に接続するとともに前記基板に設けられたグランドとの間で前記アンテナエレメント部の接地点を形成しており、前記アンテナエレメント部と前記アンテナソケット部とが一体に、所定の周波数で動作するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記周波数をλとするとき、前記アンテナエレメント部の先端から前記接地点までの長さが略λ/4となるように、前記アンテナエレメント部及び前記アンテナソケット部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記周波数において前記給電点のインピーダンスが略50Ωとなるように、前記アンテナエレメント部及び前記アンテナソケット部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナソケット部は、前記固定接続部を固定するための第1のアンテナ嵌合部と、前記第1のアンテナ嵌合部に接続されて前記給電点と前記基板側給電点とを電気的に接続する給電接続部と、前記第1のアンテナ嵌合部に接続されて前記接地点で前記グランドに電気的に接続する接地接続部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、さらに、前記基板あるいは所定の筺体に固定されて前記アンテナソケット部を支持するソケット支持部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナソケット部は、前記第1のアンテナ嵌合部に電気的に接続される第2のアンテナ嵌合部を1以上備え、前記第2のアンテナ嵌合部に追加エレメントが1以上電気的に接続されて固定されていることを特徴とする。
【0016】
本発明のアンテナ装置の他の態様は、前記アンテナソケット部は、前記第1のアンテナ嵌合部に電気的に接続される第2のアンテナ嵌合部を1以上備え、前記第2のアンテナ嵌合部に追加エレメントが1以上電気的に結合されて固定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明のアンテナ装置の製造方法の第1の態様は、1以上のエレメントと給電点が設けられた固定接続部とを有するアンテナエレメント部と、前記固定接続部を固定するアンテナソケット部と、を備え、前記アンテナエレメント部と前記アンテナソケット部とが一体に所定の周波数で動作するように形成されているアンテナ装置の製造方法であって、線材を用いて所定形状の前記アンテナエレメント部を作製し、所定の導体をプレス加工して、前記固定接続部を固定するためのアンテナ嵌合部と、前記アンテナ嵌合部に接続されて前記アンテナエレメント部の給電点と所定の基板に設けられた基板側給電点とを電気的に接続する給電接続部と、前記アンテナ嵌合部に接続されて前記アンテナエレメント部の接地点で前記基板のグランドに電気的に接続する接地接続部と、を備える前記アンテナソケット部を作製し、前記アンテナ嵌合部に前記固定接続部を挿入することで前記アンテナ装置を製造することを特徴とする。
【0018】
本発明のアンテナ装置の製造方法の他の態様は、前記アンテナ装置は、所定の誘電体を射出成型して作製したソケット支持部をさらに備え、前記アンテナソケット部を前記ソケット支持部に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、携帯電話の機種毎に設計、製造されていたアンテナ装置を、アンテナエレメントを固定するアンテナソケット部を共通化し、携帯電話の機種毎にアンテナエレメント部分のみを設計、製造することができるので、設計する部分が少なくなり、かつ短納期を実現することが可能となる。そして、アンテナエレメント、アンテナソケット部という構成とすることで、製造容易でかつ安定したアンテナ特性が得られるアンテナ装置及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のアンテナ装置の断面図である。
【図3】第1実施形態のアンテナエレメント部の構造を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態のアンテナソケット部の構造を示す斜視図である。
【図5】第1実施形態のソケット支持部の構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態のアンテナ装置の製造方法を示す説明図である。
【図7】第1実施形態のアンテナ装置を基板に実装する方法を説明する斜視図である。
【図8】第1実施形態のアンテナ装置を基板に実装する方法を説明する断面図(図7のB−B線での断面図)である。
【図9】本発明の第2実施形態のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3実施形態のアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図11】第3実施形態のアンテナ装置の構成例を示す上面図である。
【図12】従来の携帯電話用アンテナ装置の製造方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態におけるアンテナ装置及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を図1を用いて説明する。図1は、本実施形態のアンテナ装置100の構成を示す斜視図である。アンテナ装置100は、アンテナエレメント部110、アンテナソケット部120、及びソケット支持部130を備える構造を有している。本実施形態では、アンテナエレメント部110、アンテナソケット部120、及びソケット支持部130が別々に作製され、これを組み合わせてアンテナ装置100が製造される。アンテナソケット部120は、アンテナエレメント部110の形状によらず、共通化されている。
【0023】
アンテナ装置100は、基本構造として逆F型アンテナとなっている。本実施形態のアンテナ装置100の断面図を、模式的に図2(a)に示す。図2(a)は、図1に示す矢印Aの方向に切断したときの断面図である。アンテナエレメント部110は、所定の周波数で動作する第1エレメント111と、別の周波数で動作する第2エレメント112とで構成されている。また、第1エレメント111のみを有するアンテナ装置100’の断面図を、模式的に図2(b)に示す。アンテナ装置100’では、第1エレメント111のみでアンテナエレメント部110’を構成している。本実施形態のアンテナ装置100は、図2(a)に示すような構造を有しているが、図2(b)に示す構造を有するように構成してもよい。
【0024】
図1、2に示す逆F型アンテナの構造を有するアンテナ装置100、100’では、アンテナエレメント部110、110’の給電点113が、アンテナソケット部120を介して基板側給電点141に接続され、アンテナエレメント部110、110’の接地点114がアンテナソケット部120とグランド(GND)142との接続点に形成されている。本実施形態のアンテナ装置100、100’は、アンテナエレメント部110、110’とアンテナソケット部120とが一体に、所定の周波数で動作するように形成されている。エレメント111、112は、これを搭載する携帯電話機で使用する周波数や筺体の形状、アンテナ装置100の配置位置等によって、その形状を変える必要がある。そこで、本実施形態のアンテナ装置100(及び100’)では、アンテナエレメント部110の給電点113から基板側給電点141まで、及びアンテナエレメント部110から接地点114までを、アンテナソケット部120として共通化する構成としている。これにより、携帯電話の機種毎に設計、製造されていたアンテナ装置を、アンテナエレメントを固定するアンテナソケット部を共通化し、携帯電話の機種毎にアンテナエレメント部分のみを設計、製造することができるので、設計する部分が少なくなり、かつ短納期を実現することが可能となる。そして、アンテナエレメント、アンテナソケット部という構成とすることで、製造容易でかつ安定したアンテナ特性が得ることが可能となる。
【0025】
アンテナ装置100を構成するアンテナエレメント部110、アンテナソケット部120、及びソケット支持部130のそれぞれの構造を、図3乃至5を用いて詳細に説明する。図3にアンテナエレメント部110、110‘、図4にアンテナソケット部120、及び図5にソケット支持部130の構造をそれぞれ示す。なお、アンテナソケット部120とソケット支持部130とを組み合わせて一体化したものを、ソケットアセンブリ101とする。
【0026】
図3(a)には、第1エレメント111のみからなるシングルバンド対応のアンテナエレメント部110’を示し、同図(b)には、第1エレメント111と第2エレメント112からなるマルチバンド対応のアンテナエレメント部110を示している。ここでは、第1エレメント111を低周波帯に対応するエレメントとし、第2エレメント111を高周波帯に対応するエレメントとしている。それぞれのエレメントの長さは、それぞれのエレメントの先端から図2に示した接地点114までの長さがそれぞれの使用周波数に対応する波長の略1/4となるように決定されている。また、給電点113のインピーダンスが略50Ωとなるように、アンテナエレメント部110及びアンテナソケット部120が形成されている。本実施形態では、給電点113から接地点114までの長さが、第1エレメント111の先端から接地点114までの長さの略1/6となるときに、給電点113のインピーダンスが略50Ωとなる。
【0027】
図3(b)では、第1エレメント111と第2エレメント112を一体に形成した構造を示しているが、これをそれぞれのエレメントに分離して形成してもよい。本実施形態のアンテナ装置100では、アンテナエレメント部110を支持するのにアンテナソケット部120を用いていることから、アンテナエレメント部110が2以上に分離されていても、アンテナソケット部120で各エレメントを固定することができる。そのため、2つのエレメント111、112に限定されず、さらに別のエレメントを追加して3以上のエレメントでアンテナエレメント部110を構成することも可能である。これにより、アンテナ装置100の共振周波数をさらに増やすことも容易にできる。
【0028】
また、アンテナエレメント部110の各エレメントを適宜折り返すことで、使用周波数に対する高調波の周波数でも動作するマルチバンド対応のアンテナとすることができる。この場合には、折り返したエレメント間の距離などを調整することで、使用可能な周波数帯域を調整することができる。
【0029】
本実施形態のアンテナ装置100では、アンテナエレメント部110が第1エレメント111と第2エレメント112、及び固定接続部115で構成されている。固定接続部115は、第1エレメント111の一部、または第2エレメント112の一部、または第1エレメント111と第2エレメント112のそれぞれの一部であってもよい。固定接続部115には給電点113が配置され、固定接続部115のみがアンテナソケット部120に固定される構造となっている。アンテナエレメント部110は、固定接続部115が、挿入される部分が共通化されたアンテナソケット部120に挿入可能に形成されていればよく、第1エレメント111及び第2エレメント112を任意の形状で形成することができる。
【0030】
上記のように、アンテナエレメント部110を固定接続部115だけで支持できるようにするために、本実施形態では、アンテナエレメント部110を強度の高い材料で形成する。アンテナエレメント部110の材質として、銅、りん青銅、ベリリウム銅、黄銅等からなる1φ前後の径の銅系線材を用いることができる。また、強度を重視する場合にはSUSを用い、その表面に所定のメッキを施して導電率を高くすることも可能である。
【0031】
固定接続部115には給電点113が配置されることから、固定接続部115とアンテナソケット部120との間の導電性を高めるために、固定接続部115に金メッキを施して接触抵抗を下げることもできる。現実的には、ニッケルメッキとりん青銅(強度的に第一候補)の導電率はあまり変わらないので、接続部を同種金属として信頼性を高めるのがよい。固定接続部115以外に対しては、メッキを施す必要はない。メッキ部分をできるだけ少なくすることで、アンテナ装置100の製造コストを低減することができる。
【0032】
アンテナエレメント部110の材料として上記のような強度の高い線材を用い、これをワーヤーフォーミングやワイヤーベンディングの方法で形成するのがよい。線材を用いることで、従来の板金を用いる場合に比べて加工性を高めることができる。アンテナエレメント部110が簡単な形状を有している場合には、ワイヤーフォーミング等に代えて、板金を単純にベンディングしてアンテナエレメント部110を形成してもよい。
【0033】
図4に示すアンテナソケット部120は、アンテナエレメント部110の固定接続部115を固定するとともに、これと電気的に接続される。アンテナソケット部120は、アンテナエレメント部110の形状によらず、共通化されている。すなわち、図3に示すアンテナエレメント部110とは別の形状のアンテナエレメント部に対しても、これを固定できるように形成されている。アンテナソケット部120は、アンテナ嵌合部121と、アンテナ嵌合部121に接続される給電接続部122及び接地接続部123を備えている。アンテナ嵌合部121、給電接続部122、及び接地接続部123は、所定の導体で一体に形成されている。
アンテナ嵌合部121は、アンテナエレメント部110の固定接続部115を挿入するために、断面が凹形状に形成されている。アンテナエレメント部110は、固定接続部115をアンテナ嵌合部121に挿入し、圧着接続等で固定することで支持される。
【0034】
給電接続部122は、アンテナエレメント部110の給電点113と基板側給電点141とを電気的に接続するものであり、接地接続部123は、アンテナエレメント部110と接地点114とを電気的に接続するものである。従って、給電接続部122及び接地接続部123は、高い導電性を有しているのが好ましい。給電接続部122及び接地接続部123をそれぞれ基板側給電点141及びグランド142に接続する方法として、バネ接触による方法と半田付けによる方法とがある。
【0035】
アンテナソケット部120は、所定の金属からなる板金をプレス加工して作製することができる。アンテナソケット部120の材料として、上記のバネ接触の方法を用いるときは、例えばリン青銅(C5210 0.2t)、ベリリウム銅、SUSなどのバネ材を用いることができる。また、半田付けによる方法を用いるときは、半田付け部にスズメッキ、金メッキ、半田メッキ等を施すのがよい。さらに、アンテナエレメント部110の固定接続部115、基板側給電点141、及びグランド142のそれぞれとの導電性を高めるために、アンテナソケット部120に金メッキを施すのがよい。
【0036】
図5に示すソケット支持部130は、アンテナソケット部120を支持するものであり、所定の誘電体を材料としてこれを射出成型して作製する。ソケット支持部130には、アンテナソケット部120を支持するソケット嵌合部131と、基板140に固定するためのフック132及びボス(図示せず)が形成されている。あるいは、ソケット支持部130を端末筐体等に機械的に固定するための部位を形成してもよい。
【0037】
ソケット支持部130は、アンテナソケット部120とアンテナエレメント部110の固定接続部115に近接、又は密着して配置されるが、エレメント111、112の大部分からは隔離されている。これにより、アンテナエレメント部110が受ける誘電損失を従来より大幅に低減することが可能となる。また、従来問題となっていたアンテナエレメントの誘電体キャリアからの浮きの問題もなくすことができる。その結果、アンテナ特性のばらつきを大幅に低減することができる。
【0038】
ソケット支持部130の材料には、ポリカーボネート、ポリアセタール、PBTなどが使用できる。リフローする場合は、ソケット支持部130の材料にSPS、PPS、LCP(液晶ポリマー)等を使用して表面実装部品とし、リフロー後にアンテナエレメント部110をアンテナソケット部120に挿入する方法を用いることができる。
【0039】
次に、アンテナエレメント部110、アンテナソケット部120、及びソケット支持部130を組み立ててアンテナ装置100を製造する方法を、図6を用いて以下に説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の製造方法を説明するための説明図である。
【0040】
図6(a)において、まずアンテナソケット部120をソケット支持部130のソケット嵌合部131に配置し、これを所定の方法で固定する。アンテナソケット部120をソケット支持部130に固定する方法として、アンテナソケット部120を固定するためのボス(図示せず)をソケット支持部130に予め形成しておき、アンテナソケット部120を配置した後にボスを熱溶着させる方法を用いることができる。このようにしてアンテナソケット部120とソケット支持部130とを一体化させることで、ソケットアセンブリ101を形成する。
【0041】
次に、ソケットアセンブリ101にアンテナエレメント部110を固定する方法を、図6(b)を用いて説明する。アンテナソケット部120には、図4に示すような断面が凹形状のアンテナ嵌合部121が形成されており、アンテナエレメント部110の固定接続部115をアンテナ嵌合部121に挿入する。次に、アンテナ嵌合部121をかしめることで、アンテナエレメント部110を固定する。
【0042】
ソケットアセンブリ101にアンテナエレメント部110を固定する別の方法を、図6(c)を用いて説明する。この方法では、アンテナ嵌合部121の内部に、アンテナエレメント部110の固定接続部115を押圧するバネ板121aを対向させて設け、その間に固定接続部115を挿入することで、アンテナエレメント部110を固定できるようにしている。図6(b)または(c)の方法でアンテナエレメント部110をアンテナアセンブリ101に固定することで、アンテナ装置100を製造することができる。
【0043】
次に、アンテナ装置100を基板に表面実装する方法を、図7、8を用いて以下に説明する。図7は、アンテナ装置100を基板140に実装する方法を説明するための斜視図であり、図8は図7に示すB−B線で切断したときの断面図である。ここでは、説明簡単のため、アンテナエレメント部110を省略して図示している。なお、アンテナエレメント部110をソケットアセンブリ101に固定してアンテナ装置100を作製する前に、図7、8に示すように、ソケットアセンブリ101を基板140に固定し、その後にアンテナエレメント部110を固定してアンテナ装置100を作製してもよい。
【0044】
図7、8に示す基板140は、例えば携帯電話機のメイン基板である。基板140には、基板給電点141に接続されたランド143と、グランド142に接続されたランド144が設けられている。アンテナソケット部120をバネ接触の方法で基板140に実装する場合には、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部が、ランド143、144を弾性的に押圧するようにアンテナソケット部120を形成しておく。
【0045】
ソケット支持部130には、基板140に固定するためのフック132とボス133が予め形成されている。また、基板140側には、フック132を差し込むための貫通孔145が設けられている。さらに、基板140側にはボス133を貫通させるための孔(図示せず)も設けられている。
【0046】
まず、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部をランド143、144に押圧させて電気的に接続しながら、フック132を貫通孔145に挿入する(図8(a))。これにより、アンテナ装置100あるいはソケットアセンブリ101が、基板140に係止される。さらに、基板140上の所定の孔を貫通したボス133(図8(b))を熱溶着することで(図8(c))、アンテナ装置100あるいはソケットアセンブリ101を基板140に固定する。なお、ここでは、ボス133を用いた熱溶着によりソケットアセンブリ101を基板140に固定する方法を説明したが、熱溶着に代えてネジ止めによる方法でソケットアセンブリ101を基板140に固定してもよい。
【0047】
アンテナソケット部120を半田付けの方法で基板140に実装する場合には、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部が、ランド143、144を押圧するように形成する必要はなく、フック132を貫通孔145に挿入したときに、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部がランド143、144に接触して電気的に接続されればよい。ボス133を熱溶着してソケットアセンブリ101を基板140に固定した後に、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部をランド143、144に半田付けする。
【0048】
アンテナソケット部120と基板140との電気的な接続方法として、上記ではバネ接触による方法と半田付けによる方法について説明したが、これに限定されず、例えば給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部をランド143、144上にネジ止めして電気的に接続させてもよい。あるいは、給電接続部122及び接地接続部123のそれぞれの先端部とランド143、144とをそれぞれ接触させずに、容量結合で電気的に接続するようにすることも可能である。本実施形態によれば、アンテナエレメント部110の給電点113から基板側給電点141まで、及びアンテナエレメント部110から接地点114までを、アンテナソケット部120として共通化することで、製造容易でかつ安定したアンテナ特性が得られるアンテナ装置100及びその製造方法を提供することができる。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を図9を用いて説明する。図9は、第2実施形態のアンテナ装置200の概略構成を示す斜視図である。アンテナ装置200は、アンテナエレメント部110とアンテナソケット部120で構成されており、ソケット支持部130を有していない。本実施形態では、アンテナソケット部120が、ソケット支持部130を用いることなく自立できる程度の強度を有し、給電接続部122及び接地接続部123の先端(ランド143、144に接する部分)に設けられたネジ穴224をネジ止めして基板140に固定している。あるいは、ネジ止めに代えて半田付けして固定するようにしてもよい。
【0050】
さらに別の固定方法として、アンテナ装置200を搭載する携帯電話機等のケース(筺体)が2以上に分割された部位からなるとき、上記のケースの一つの部位にアンテナ装置200を固定する。そして、給電接続部122及び接地接続部123をバネ構造とし、ケースを組み立てたときに、給電接続部122及び接地接続部123が基板140のランド143、144を押圧するように構成する。これにより、アンテナ装置200と基板140とを電気的に接続することができる。
【0051】
本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置及びその製造方法を図10を用いて説明する。図10は、第3実施形態のアンテナ装置300の概略構成を示す斜視図である。本実施形態では、アンテナソケット部320に別の第3エレメントを固定するための別のアンテナ嵌合部321が形成されている。以下では、アンテナ嵌合部121を第1アンテナ嵌合部121とし、別のアンテナ嵌合部321を第2アンテナ嵌合部321とする。図10では、第2アンテナ嵌合部321を第1アンテナ嵌合部121に略平行に形成しているが、これに限定されず、例えば第1アンテナ嵌合部121の断面凹形状の溝が、長手方向の途中で2つに分岐されて二股形状に形成される、あるいはさらに3つ以上に分岐されるように形成してもよい。
【0052】
第3エレメントとして、例えば無給電素子を第2アンテナ嵌合部321に固定することができる。このように、本実施形態のアンテナ装置300では、アンテナソケット部320にアンテナ嵌合部を容易に追加することができ、これにより、アンテナエレメントを追加して固定することが可能となる。
【0053】
図10のアンテナソケット部320の構成例を、図11を用いてさらに詳細に説明する。図11は、アンテナ嵌合部を2つ備える本実施形態のアンテナソケット部320の構成例を示す上面図である。なお、図10、11では、アンテナソケット部320がアンテナ嵌合部を2つ備える構成としているが、これに限定されず、3つ以上備えるように構成することも可能である。
【0054】
図11(a)に示す第1の構成では、第1アンテナ嵌合部121が基板側給電点141(図2参照)及びグランド142(図2参照)に接続され、第2アンテナ嵌合部321が基板側給電点141及びグランド142のいずれにも接続されない電気的に浮いた状態となっている。第1アンテナ嵌合部121に接続される第1エレメント111及び第2エレメント112は、それぞれ異なる周波数帯で共振を行うように形成されている。ここでは、第1エレメント111が低周波帯(例えば、800〜900MHz帯)で共振し、第2エレメント112が低周波帯の1/2波長に相当する高周波帯(例えば、1700〜2100MHz)で共振するように形成されている。
【0055】
また、第2アンテナ嵌合部321に接続される第3エレメント311は、電気的に浮いている無給電素子となっている。第3エレメント311の長さを低周波帯用の第1エレメント111と同程度とし、第1エレメント111と第3エレメント311とを略平行に配置して両者を電気的に結合させている。無給電素子311をこのように配置することで、第1エレメント111の共振周波数の略2倍の周波数(1/2波長)で共振させることができる。このように追加された共振は、第2エレメントが共振する高周波帯に近いことから、高周波帯の帯域を拡げることが可能となる。あるいは、第3エレメント(無給電素子)311で高周波帯用の第2エレメント112を代用させることができる。
【0056】
図11(b)に示す第2の構成では、第2アンテナ嵌合部321がグランド142(図2参照)に接続されており、この点が図11(a)に示した第1の構成と異なっている。但し、第2アンテナ嵌合部321は、第1アンテナ嵌合部121がグランド142に接続される接地接続部123とは別の接地接続部(図示せず)でグランド142に接続されている。
【0057】
図11(b)に示す第2の構成でも、第2アンテナ嵌合部321に接続される第3エレメント311はグランドに接続された無給電素子となっている。第3エレメント311を、第1エレメント111と若干異なる長さで形成し、第1エレメント111と略平行に配置してこれと電気的に結合させる。これにより、第3エレメント311は、その先端から上記の別の接地接続部を介してグランド142までの長さが1/4波長に相当する周波数で共振する。第3エレメント311を第1エレメント111と若干異なる長さとしたことにより、第3エレメント311の共振周波数も第1エレメント111の共振周波数と若干異なる。その結果、第1エレメントの共振周波数帯である低周波帯の帯域を拡大することが可能となる。
【0058】
図11(c)に示す第3の構成では、第2アンテナ嵌合部321が第1アンテナ嵌合部121と一体に形成されており、給電接続部122及び接地接続部123でそれぞれ基板側給電点141及びグランド142に接続されている。
【0059】
第3の構成では、第2アンテナ嵌合部321に接続される第3エレメント311が、第1エレメント111あるいは第2エレメント112と電気的にできるだけ結合しないように配置されている。これにより、第3エレメント311は、第1エレメント111及び第2エレメント112とは独立した周波数で共振する。あるいは、第3エレメント311をスタブとして機能するように配置することで、第1エレメント111及び第2エレメント112のインピーダンス整合状態を改善するのに用いることも可能である。
【0060】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るアンテナ装置及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるアンテナ装置及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
100、100’、200、300 アンテナ装置
101 ソケットアセンブリ
110 アンテナエレメント部
111 第1エレメント
112 第2エレメント
311 第3エレメント
113 給電点
114 接地点
115 固定接続部
120、320 アンテナソケット部
121、321 アンテナ嵌合部
122 給電接続部
123 接地接続部
130 ソケット支持部
131 ソケット嵌合部
132 フック
133 ボス
140 基板
141 基板側給電点
142 グランド
143、144 ランド
224 ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のエレメントと給電点が設けられた固定接続部とを有するアンテナエレメント部と、
前記固定接続部を固定するアンテナソケット部と、を備え、
前記アンテナソケット部が、前記給電点から所定の基板に設けられた基板側給電点までを電気的に接続するとともに前記基板に設けられたグランドとの間で前記アンテナエレメント部の接地点を形成しており、
前記アンテナエレメント部と前記アンテナソケット部とが一体に、所定の周波数で動作するように形成されている
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記周波数をλとするとき、前記アンテナエレメント部の先端から前記接地点までの長さが略λ/4となるように、前記アンテナエレメント部及び前記アンテナソケット部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記周波数において前記給電点のインピーダンスが略50Ωとなるように、前記アンテナエレメント部及び前記アンテナソケット部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナソケット部は、
前記固定接続部を固定するための第1のアンテナ嵌合部と、
前記第1のアンテナ嵌合部に接続されて前記給電点と前記基板側給電点とを電気的に接続する給電接続部と、
前記第1のアンテナ嵌合部に接続されて前記接地点で前記グランドに電気的に接続する接地接続部と、を備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
さらに、前記基板あるいは所定の筺体に固定されて前記アンテナソケット部を支持するソケット支持部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナソケット部は、前記第1のアンテナ嵌合部に電気的に接続される第2のアンテナ嵌合部を1以上備え、前記第2のアンテナ嵌合部に追加エレメントが1以上電気的に接続されて固定されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナソケット部は、前記第1のアンテナ嵌合部に電気的に接続される第2のアンテナ嵌合部を1以上備え、前記第2のアンテナ嵌合部に追加エレメントが1以上電気的に結合されて固定されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
1以上のエレメントと給電点が設けられた固定接続部とを有するアンテナエレメント部と、前記固定接続部を固定するアンテナソケット部と、を備え、前記アンテナエレメント部と前記アンテナソケット部とが一体に所定の周波数で動作するように形成されているアンテナ装置の製造方法であって、
線材を用いて所定形状の前記アンテナエレメント部を作製し、
所定の導体をプレス加工して、前記固定接続部を固定するためのアンテナ嵌合部と、前記アンテナ嵌合部に接続されて前記アンテナエレメント部の給電点と所定の基板に設けられた基板側給電点とを電気的に接続する給電接続部と、前記アンテナ嵌合部に接続されて前記アンテナエレメント部の接地点で前記基板のグランドに電気的に接続する接地接続部と、を備える前記アンテナソケット部を作製し、
前記アンテナ嵌合部に前記固定接続部を挿入することで前記アンテナ装置を製造する
ことを特徴とするアンテナ装置の製造方法。
【請求項9】
前記アンテナ装置は、所定の誘電体を射出成型して作製したソケット支持部をさらに備え、前記アンテナソケット部を前記ソケット支持部に固定する
ことを特徴とする請求項8に記載のアンテナ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−160372(P2011−160372A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22740(P2010−22740)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】