説明

ビデオカメラ

【目的】機材の増加を伴うことなく、電子ビューファインダでホワイトバランスを正確に認識する。
【構成】ベクトルモードでは切換スイッチ15〜17をL側に接続する。電子ビューファインダを構成する陰極線管11の水平偏向コイル12に青色差信号(電流)B−Yを供給し、その垂直偏向コイル13には赤色差信号(電流)R−Yを供給し、さらにそのグリッドには同期分離および映像増幅回路7より出力される水平同期信号HPの反転信号HP′を供給する。電子ビームは信号B−Yによって水平方向に偏向されると共に信号R−Yによって垂直方向に偏向される。ベクトルスコープと同様に、陰極線管11の画面には信号B−Y,R−Yのベクトルの合成ベクトルを示す位置が発光表示される。つまり、陰極線管11の画面には色差信号B−Y,R−Yがベクトル表示される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばENG(Electronic News Gathering)カメラ等のカメラ一体型VTRに適用して好適なビデオカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】図4において、1はENGカメラであり、カメラヘッド部およびVTR部とで構成される。屋外の撮像においては、ホワイトバランス(W/B)のセットスイッチ1bを操作してホワイトバランスを取ることができるが、必ずしも最適なホワイトバランスが取れるとは限らない。例えば、複数の光源の照明によるホワイトバランスでは、複数の光源の色温度を忠実に再現するのが困難だからである。
【0003】そこで、例えばカラーバーを撮像することでENGカメラ1より出力されるカラービデオ信号SCVをベクトルスコープ2に供給し、各色成分を2軸座標でベクトル表示して色再現性を認識し、ホワイトバランスを調整することが行なわれている。また、ENGカメラ1より出力されるカラービデオ信号SCVをカラーサブモニタ3あるいはカラー電子ビューファインダ(カラーEVF)1aに供給し、表示されるカラー画像でだいたいのホワイトバランスを認識し、その調整をすることが行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ホワイトバランス調整をするのに、ベクトルスコープ2を使用するものによれば、精度よく調整できるが、機材の増加を伴う問題点があった。また、カラーサブモニタ3を使用するものによれば、機材の増加を伴うと共に、視感調整によるバラツキが発生する問題点があった。さらに、カラーEVF1aを使用するものによれば、視感調整によるバラツキが発生する問題点があった。
【0005】そこで、この発明では、電子ビューファインダでホワイトバランスを正確に認識でき、機材の増加を伴うことなくホワイトバランス調整を精度よく行い得るビデオカメラを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、陰極線管を使用して構成される電子ビューファインダを備え、出力カラービデオ信号を構成する色差信号を陰極線管に偏向信号として供給し、この陰極線管に色差信号をベクトル表示するものである。
【0007】
【作用】この発明においては、例えばカラーバーを撮像すると、電子ビューファインダには、ベクトルスコープを使用した場合と同様に、各色成分の色差信号がベクトル表示される。そのため、ユーザは電子ビューファインダの表示によって出力ビデオ信号のホワイトバランスを正確に認識し得る。
【0008】
【実施例】以下、図面を参照しながら、この発明の一実施例について説明する。
【0009】まず、カラーバーのベクトル表示について説明する。図5Aはカラーバー画面であり、このパターンを青色差信号B−Yおよび赤色差信号R−Yで示すと、同図Bに示すようになる。数値は、輝度信号Yの白レベルを1.00としたときの値である。
【0010】ベクトルスコープでは、各色成分の色差信号B−Y,R−YがB−Y軸およびR−Y軸の2軸座標で合成されてベクトル表示されるため、カラーバーのベクトル表示は同図Cに示すようになる。
【0011】次に、図6を使用して陰極線管の基本構成について説明する。同図において、白黒ビデオ信号SV(図7Cに図示)は同期分離および映像増幅回路7に供給される。この回路7で分離される水平同期信号HP(図7Aに図示)は水平偏向回路4に供給され、この水平偏向回路4より出力される水平偏向電流IH(図7Bに図示)は陰極線管11の水平偏向コイル12に供給される。
【0012】また、回路7で分離される垂直同期信号VP(図7Eに図示)は垂直偏向回路5に供給され、この垂直偏向回路5より出力される垂直偏向電流IV(図7Fに図示)は陰極線管11の垂直偏向コイル13に供給される。
【0013】また、回路7からは同期信号が除去されると共に極性が反転されたビデオ信号SV′(図7Dに図示)が出力され、このビデオ信号SV′は陰極線管11のグリッド10に供給される。なお、陰極線管11のカソード9にはカソードバイス回路6より所定のバイアス電圧が印加されると共に、陰極線管11のアノード端子14には高圧回路8より高圧が印加される。
【0014】上述した水平偏向電流IHを水平偏向コイル12に流すことによって電子ビームは左右方向に偏向され、一方垂直偏向電流IVを垂直偏向コイル13に流すことによって電子ビームは上下方向に偏向され、図8に示すように走査される。また、ビデオ信号SV′が陰極線管11のグリッド10に供給されることによって、電子ビームはビデオ信号SV′によって密度変調される。これにより、陰極線管11の画面にはビデオ信号SV′による画像が表示されることになる。
【0015】図1は、実施例の構成を示している。図1において、図6と対応する部分には同一符号を付し、その詳細は省略する。
【0016】同図において、陰極線管11は、ENGカメラ等のカメラ一体型VTRの電子ビューファインダを構成する白黒陰極線管である。この陰極線管11の管面には、ベクトルスコープと同様の座標軸(図3参照)が予め表示されている。
【0017】水平偏向回路4より出力される水平偏向電流IHは切換スイッチ15のH側の固定端子に供給されると共に、垂直偏向回路5より出力される垂直偏向電流IVは切換スイッチ16のH側の固定端子に供給される。
【0018】また、カメラ部より出力される青色差信号(電流)B−Yは切換スイッチ15のL側の固定端子に供給され、この切換スイッチ15の出力信号は陰極線管11の水平偏向コイル12に供給される。
【0019】また、カメラ部より出力される赤色差信号(電流)R−Yは切換スイッチ16のL側の固定端子に供給され、この切換スイッチ16の出力信号は陰極線管11の垂直偏向コイル13に供給される。
【0020】また、同期分離および映像増幅回路7より出力されるビデオ信号SV′は切換スイッチ17のH側の固定端子に供給される。この切換スイッチ17のL側の固定端子には回路7より出力される水平同期信号HPの反転信号HP′が供給される。この場合、反転信号HP′のレベルは、例えばビデオ信号SV′の100IREのレベルに設定される。この切換スイッチ17の出力信号は陰極線管11のグリッドに供給される。
【0021】また、カメラ一体型VTR本体の外面には、図示せずもビデオモードとベクトルモードとを切り換えるためのモード切換スイッチが配設される。上述した切換スイッチ15〜17には、ビデオモードのときはハイレベル“H”となり、ベクトルモードのときはローレベル“L”となるモード信号SMが切換制御信号として供給される。そして、切換スイッチ15〜17は、ビデオモードではH側に接続され、一方ベクトルモードではL側に接続される。
【0022】以上の構成において、ビデオモードにおいては、切換スイッチ15〜17はH側に接続され、陰極線管11の水平偏向コイル12には水平偏向回路4より出力される水平偏向電流IHが供給され(図2Bに図示)、陰極線管11の垂直偏向コイル13には垂直偏向回路5より出力される垂直偏向電流IVが供給され(同図Cに図示)、さらに陰極線管11のグリッドには回路7より出力されるビデオ信号SV′が供給される(同図Dに図示)。そのため、図6の例と同様の状態となり、陰極線管11の画面にはビデオ信号SV′による画像が表示される。なお、図2Aは水平同期信号HPを示しており、同図Eはモード信号SMを示している。
【0023】次に、ベクトルモードにおいては、切換スイッチ15〜17はL側に接続され、陰極線管11の水平偏向コイル12には青色差信号B−Yが供給され(図2Bに図示)、陰極線管11の垂直偏向コイル13には赤色差信号R−Yが供給され(同図Cに図示)、さらに陰極線管11のグリッドには回路7より出力される反転信号HP′が供給される(同図Dに図示)。そのため、電子ビームは青色差信号B−Yによって水平方向に偏向されると共に赤色差信号R−Yによって垂直方向に偏向され、ベクトルスコープと同様に、陰極線管11の画面には色差信号B−Y,R−Yのベクトルの合成ベクトルを示す位置が発光表示される。
【0024】このように本例においては、ベクトルモードに切り換えることによって、ベクトルスコープと同様に、陰極線管11の画面には色差信号B−Y,R−Yが2軸座標でベクトル表示される。例えば、カラーバー(図5A参照)をフルフィールドで撮像する場合、最適なホワイトバランスにあるときは図3に「●」で示す位置が発光表示され、一方R方向にずれているときは同図に「×」で示す位置が発光表示される。
【0025】したがって本例によれば、ベクトルモードとすることで、ユーザは電子ビューファインダの表示によって出力ビデオ信号のホワイトバランスを正確に認識でき、ホワイトバランス調整を精度よく行なうことができる。また本例によれば、ベクトルスコープ等を使用するものでなく、機材が増加する等の不都合もなくなる。
【0026】なお、ホワイトバランスの調整時には、上述したようにカラーバーを撮像せずに、単一カラー、例えばホワイトチャートを撮像して、その位置のずれを修正するように調整することも可能である。
【0027】
【発明の効果】この発明によれば、電子ビューファインダの陰極線管に出力カラービデオ信号を構成する色差信号をベクトル表示するので、ユーザは電子ビューファインダの表示によって出力ビデオ信号のホワイトバランスを正確に認識でき、ベクトルスコープ等の機材の増加を招くことなく、ホワイトバランス調整を精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例の動作を説明するための波形図である。
【図3】陰極線管の画面のベクトル表示の一例を示す図である。
【図4】従来のホワイトバランスの確認の説明のための図である。
【図5】カラーベクトル表示の説明のための図である。
【図6】陰極線管の基本構成を示すブロック図である。
【図7】図6の例の各部の信号波形を示す図である。
【図8】陰極線管の走査原理を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ENGカメラ
4 水平偏向回路
5 垂直偏向回路
6 カソードバイアス回路
7 同期分離および映像増幅回路
8 高圧回路
11 陰極線管
12 水平偏向コイル
13 垂直偏向コイル
15〜17 切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 陰極線管を使用して構成される電子ビューファインダを備え、出力カラービデオ信号を構成する色差信号を上記陰極線管に偏向信号として供給し、上記陰極線管に上記色差信号をベクトル表示することを特徴とするビデオカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平6−38222
【公開日】平成6年(1994)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−189566
【出願日】平成4年(1992)7月16日
【出願人】(000000491)アイワ株式会社 (10)