説明

丸網式抄造機

【課題】簡易な構成でボード材の厚みのばらつきを低減することができる丸網式抄造機を提供する。
【解決手段】この抄造機1は、原料のスラリーを貯留する複数の槽11A〜11Dと、前記スラリーに浸漬され、回転に伴ってこのスラリー中の固形分を抄き上げる丸網13と前記槽に対しスラリーを供給する供給手段15と、前記槽のうち前記丸網の回転軸の端部側に設けられ、前記槽から前記スラリーを排出する排出手段18、19とを備えている。前記複数の槽は、少なくとも第1槽11A、11Bおよび第2槽11C、11Dを有する。前記排出手段は、少なくとも前記第1、第2槽にそれぞれ設けられた第1排出手段、第2排出手段を有し、第1排出手段18は、第2排出手段19に対し、丸網13を挟んで対向する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は丸網式抄造機に関し、特に、簡易な構成でボード材の厚みのばらつきを低減することができる丸網式抄造機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば住宅用の建材となるボード材(一例)を抄造法と呼ばれる方法で製造することが行われている。そのうち、丸網式抄造機を用いた製造では、原料スラリーを複数の丸網で抄き、抄いて形成されたシートを巻き取り、複数のシートを積層させている。積層されたシートは、プレスされた後、蒸気養生、乾燥の各工程を経て建材のボード材となる(特許文献1参照)。
【0003】
また、丸網式抄造機において抄造されたボードの厚みばらつきを低減するため、シート厚みの偏差を演算し、その偏差に基づき抄造工程を中断し、積層させるシート数を変更することで厚みばらつきの低減を行う提案もなされている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−231443号公報
【特許文献2】特開昭60−139894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1の技術にあっては、抄造した積層シートの厚みのばらつきを低減する点については記載されていない。また、特許文献2の技術では、偏差を演算するため、煩雑であり、また、積層されるシート数が変更されるため、シート1枚当たりの厚みより小さいばらつきについては修正できず、微調整ができない、という問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成でボード材の厚みばらつきを低減し、かつ、ばらつきの低減を高精度に行える抄造機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の丸網式抄造機は、
原料のスラリーを貯留する複数の槽と、
前記スラリーに浸漬され、回転に伴ってこのスラリー中の固形分を抄き上げる丸網と、
前記槽に対しスラリーを供給する供給手段と、
前記槽のうち前記丸網の回転軸の端部側に設けられ、前記槽から前記スラリーを排出する排出手段と
を備えた丸網式抄造機において、
前記複数の槽は、少なくとも第1槽、第2槽を有し、
前記排出手段は、少なくとも前記第1、第2槽にそれぞれ設けられた第1排出手段、第2排出手段を有し、
前記第1排出手段は、前記第2排出手段に対し、前記丸網を挟んで対向する位置に設けられること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成でボードの厚みのばらつきを低減することができる抄造機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一形態の丸網式抄造機の構成を示す側面図である。
【図2】抄造法によるボード材の製造工程の概略を示すフローチャートである。
【図3】丸網を回転させている状態における、槽内の様子を示す断面図である。
【図4】本発明の一形態における槽の構造を示す斜視図である。
【図5】各槽におけるスラリーの排出方向を示す平面図である。
【図6】図4(a)の槽のスラリーの流れを示す模式図である。
【図7】各槽の排出方向を偏重させた構成を示す平面図である(比較例)。
【図8A】プレス後のボード厚みを測定した結果を示す図である(比較例)。
【図8B】プレス後のボード厚みを測定した結果を示す図である(本実施形態)。
【図8C】図7のような装置(比較例1)で製造したボード材の厚みと、本発明の一形態の装置で製造したボード厚みを比較したグラフおよび測定方法を示す図である。
【図9】本発明の他の形態の槽の構造を示す斜視図である。
【図10】図9の槽のスラリーの流れを示す模式図である。
【図11】左右の排出口の大きさを同一にした場合のスラリーの流れを示す模式図である。
【図12】本発明のさらに他の形態の槽の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態について説明する。
【0011】
はじめに抄造法を利用したボード材の製造の流れ簡単に説明する。この製法では、図2に示すように、ステップS1としてまず抄造工程、すなわち、スラリーからボード原料を抄いて積層シートを形成しそれを所定サイズに切断してボードとする工程が行われる(詳細後述)。次いで、ステップS2でそのボードをプレス加工し、ステップS3で蒸気養生および乾燥を行い、ステップS4で最終的な加工および塗装を施すことで建材のボード材が製造される。
【0012】
図1に示す本実施形態に係る丸網式抄造機1は、ステップS1の抄造工程で用いられるものである。図1に示すように、この抄造機1は、例えばフェルトで構成されたコンベアベルト21を含むコンベア装置20と、そのコンベア装置20の下側に配置された4つの槽11A〜11D(以下、単に槽11ともいう)を備えている。
【0013】
4つの槽11A〜11Dには、ボード材の原料を含んだスラリーが原則として常時供給される。各槽11A〜11Dは、コンベアベルト21の送り方向に沿って互いに所定の間隔をおいて配置されている。各槽11内には、原料を抄くためにメッシュ状に形成された円筒状の丸網13が配置されている。丸網13の軸方向は、コンベアベルト21の送り方向に略直交する方向である。丸網13は、不図示の駆動源により回転するように構成されており、丸網13の回転速度は、一例として、丸網表面の移動速度がコンベアベルト21の搬送速度と同じになるような速度である。
【0014】
コンベアベルト21の送り方向下流側には、回転可能に構成されたローラー23およびそのローラー23に隣接して配置されたカッター26が配置されている。ローラー23は、送られてきた積層シートを巻き取るためのものである。
【0015】
図1の丸網式抄造機の基本的な動作は次の通りである。
まず、4つの槽11A〜11Dにボード原料を含むスラリーが入っている状態で、コンベアベルト21を走行させるとともに、その速度に合わせて4つの丸網13を回転させる。丸網13を回転させることで、各槽11のスラリー中の原料が丸網13によって抄かれて、コンベアベルト21の表面に転写される。それぞれの槽11を通過した時点でシートが一層ずつ積層され、全ての槽11を通過した段階では最終的に四層の積層シートが形成される。
【0016】
この積層シートはコンベアベルト21によって連続的に下流側へと送られ、図1のローラー23まで送られたところで、このローラー23に巻き取られる。ローラー23に巻き取られた積層シートは所定のタイミングで、カッター26によってローラー23から剥離され、所望のサイズに切断される。こうして最終的なボード材の原形となるボードAが作成される。ボードAは、その後、プレス工程、養生・乾燥工程、加工・塗装工程へと送られる。なお、これらの工程は従来公知であるので詳細な説明は省略する。
【0017】
次に、図3〜図6を参照して、各槽11A〜11Dの詳細な構造について説明する。図3は、丸網13を回転させている状態における、槽11内の様子を示す断面図である。図4は、本実施形態における槽11の構造を説明するための斜視図である。なお、図4では、槽11の壁面や丸網の図示は省略し、スラリーの供給口および排出口は模式的に示している。また、図5は各槽11A、11Bにおける排出口18、19の位置を示す図であり、図6は図4(a)において排出口18へ向かうスラリー流速の模式図である。
【0018】
図4に示すように、各槽11A〜11Dはその上流側に、槽11の幅方向(図の左右方向)に細長く形成されたスラリー供給口15を有している。スラリー供給口15がこのような形状をしているので、スラリーは槽11の幅方向全体にわたってほぼ同じ条件で供給される。図3に示すように、槽11の上流側から供給されたスラリーは、丸網13に沿うように流れながら丸網13内へと流入し、流入する際にスラリー中の固形分が丸網13に抄き取られる。このように丸網13に沿って流れる際にスラリーは丸網13内周側に流入するが、図4(a)では領域D1、図4(b)では領域D2において流入量が最大となる(詳細は後述)。
【0019】
なお、丸網13を回転させている状態では、図3に示すように、丸網13の内側の液面レベルL1は外側に比べて低くなる。
【0020】
このようにして丸網13内へと流入したスラリーは、スラリー排出口18、19から外に排出される。図4(a)および図5に示すように、本実施形態では4つの槽11A〜11Dのうち上流側の2つの槽11A、11Bに関しては、右側の側面にスラリー排出口18が設けられている。
【0021】
一方、下流側の2つの槽11C、11Dに関しては、図4(b)および図5に示すように、左側の側面にスラリー排出口19が設けられている。特に限定されるものではないが、本実施形態においては、一例としてスラリー排出口18、19の大きさは同一である。
【0022】
スラリー排出口18(一例)が槽11の片側に設けられている場合、排出口18に近い側のスラリーの圧力が高く(流速が速く)なり、反対側では圧力が低く(流速が遅く)なる。また、供給口15から供給されたスラリーは、丸網13の下方側を通って供給口15の対向面11a方向に向かって対向面11aに衝突し、丸網13の内周側に流入して排出口18から排出される(図3参照)。丸網13の下方側を通過する際にも一部のスラリーは丸網13の内周側に流入するが、抄造機1の通常運転時には丸網13内周側への流量よりも対向壁11a側への流量が大きく、そのため槽11A,11B内のスラリー圧力は、対向面11a付近において他の領域よりも相対的に大きくなる。
【0023】
したがって、図4(a)においては、対向面11aの上部付近であって排出口18側(右側)が最も高圧の領域D1となり、丸網13の内周側へ流入するスラリーの流量も領域D1において最も大きくなり、丸網13によって抄かれる固形分は領域D1において他の領域よりも相対的に増大する。この現象は図4(b)でも同様である。上記作用により、コンベアベルト21に転写されるシート厚みは、図4(a)においては領域D1が存在する排出口18側ほど厚く、図4(b)においては領域D2が存在する排出口19側ほど厚くなり、左右で差異が生じることとなる。
【0024】
このようなシートの左右における厚みのばらつきは、最終的なボード材の厚みばらつきを招くこととなる。とりわけ、図7のように複数の槽11を有する丸網式抄造機において、それぞれの排出口18の位置が丸網に対して同一位置に偏在している場合、それぞれの槽11における厚みの差異が重畳され、積層シートの厚みばらつきがより顕著となる。
【0025】
また、積層シートの厚みがばらついている場合、後工程において、その積層シートをプレスしてボード用の柄を転写する際に転写不良が生じるおそれがある。あるいは、積層シートの厚い部分に水が残っている場合には、積層シートがローラー23(図1参照)を通過する際にいわゆる「水割れ」と呼ばれる問題、すなわち、シート間に水が入り、プレス時にその水が圧縮されてシートが割れる問題を招くこととなる。さらには、積層シート内に残っている水は、プレスした後にシート同士が剥離する原因ともなりうる。
【0026】
このような問題点に鑑みて、本実施形態においては、図5に示したようにスラリー排出口18、19の位置を左右に振り分けて設ける構成としている。これにより、各槽11A〜11Dで発生する原料の厚みに差異が出る位置を分散し、各槽11A〜11Dで抄き上げられた原料を積層する際に厚みの差異を相対的に吸収することが可能となる。よって、偏差の演算等煩雑な構成を必要とせず、簡易な構成でボードの厚みばらつきを効率的に低減することができる。
【0027】
図8A〜Cは、比較例1と本実施形態との対比である。プレス後のボード材の厚みを測定した結果を図8A(比較例1)、図8B(本実施形態)に示す。図8A,Bは、1枚のボード材における厚みのばらつきを示しており、板厚が薄い部分ほど濃く、厚い部分ほど薄い色で表されている。比較例1では、図8Aに示されているように、ボード材の中央部は厚いが端部側は薄くなっており、板厚のばらつきが大きかった。これに対して、本実施形態では、図8Bに示されているように、ボード材全体にわたって板厚のばらつきが抑えられていた。
【0028】
図8Cのグラフは、図7のような装置(比較例1)で製造したボード材を重ねた際の厚みと、本実施形態の装置で製造したボード材の厚みとを比較した結果を示している。ボード材の厚みの測定は、図8の左下の図のように所定枚数のボードを積み上げて、その左右の積上げ高さを測定した。積み上げるボードの枚数を増やして上記測定を複数回行った。グラフ中、左側が比較例1の結果を示し、右側が本実施形態の結果を示している。それぞれ、横軸が積み上げたボード枚数で、縦軸が積上げ高さである。このグラフから明らかなように、比較例1ではボードの左右の高さが大きく違っていたのに対して、本実施形態では左右の高さがほぼ同一であり、この実験により、本発明に係る抄造機によればボード材の左右の厚みのばらつきを大幅に低減できることが実証された。
【0029】
以上、槽11A〜11Dの配置として、スラリー排出方向が右側、右側、左側、左側、となっているものを例示したが(図5参照)、このような配置に限らず、スラリーの排出方向が右側と左側との交互になっていてもよい。また、1つ目の槽11Aから溢れたスラリーは、全て左側排出口から排出してもよいし、その一部を2つ目の槽11Bに供給してもよい。槽11C、11Dについても同様である。
【0030】
(第2の実施形態)
本発明は、さらに、図9のような槽11−2を備えるものであってもよい。
この槽11−2では、図9に示すように、左右方向の一方側に小開口部18′が形成され、他方側に大開口部19′が形成されている。そして、2つの開口部18′、19′の開口面積に差が設けられていることにより、大開口部19′側と小開口部18’とで排出されるスラリーの流量に差異が生じ、この差異に基づき対向面11a付近で左右の圧力差が生じる。そのため対向面11a付近の上部であって大開口部19’側の領域D3と、小開口部18’側の領域d3では、領域D3のほうが高圧となる。したがって、領域D3での原料の抄上げ量が他の領域に比べて相対的に増加することとなる。
【0031】
また、第2の実施形態では大開口部19′への流量と小開口部18’への流量が異なるため、槽11−2内における流速分布がアンバランスとなり、小開口部18’からの排出量が少ない分だけ領域D4(中心線L2よりも小開口部18’側へ偏在)では圧力が増大して流速が高速となり、丸網13を通過するスラリーが増大する。したがって領域D4におけるスラリーの抄き上げ量が増大するため、厚みが増すこととなる。
【0032】
したがって、上記実施形態1と同様、4つの槽のうち上流側の2つを図9のような槽とし、小開口部18’を左側に配置して領域D4を左側に偏在させる(参考として図5を参照)。下流側の2つの槽については、2つの開口部18′、19′の位置を左右反転させた槽(不図示)を配置し、小開口部18’を右側に配置して領域D4を左側に偏在させる。このような構成により、上記実施形態と同様、各槽で発生する原料の厚みに差異が出る位置が分散され、製造されるボードの厚みのばらつきを効果的に低減させることができる。
【0033】
上記説明から明らかなように、本発明においては槽の両側面にスラリー排出口18′、19′が設けられていてもよい。但し、左右の排出口の大きさに差が設けられていることが好ましい。この理由は、スラリー排出口の大きさが左右同じである場合、図11に例示するように、スラリーの流れが中心線L2を挟んで左右対象となり、左右の排出口付近での流速が増大する一方、中心線L2付近での流速が小さくなるため、中心線L2付近における厚みが増大することにより、各槽で発生する原料の厚みに差異が出る位置を分散することができず、よって、原料の厚みが増大する位置、あるいは厚みが減少する位置が各槽で対称の位置に形成されてしまい、原料同士を積層してもボードの厚みのばらつきを低減させにくいためである。これに対し、第1、第2の実施形態、および後述の実施例3では、厚みが増大または減少する位置が各槽で非対称の位置に形成されるため、原料同士を積層することで、結果としてボードの厚みを低減できるものである。
【0034】
(第3の実施形態)
本発明は、さらに、図12のような槽11−3を備えるものであってもよい。この槽11−3では、スラリー供給口15′の位置が左右一方に偏在している。図12の例では、スラリー供給口15′は、上記実施形態のものより小さく右側に1つのみ配置されている。スラリー排出口18、19大きさは一例として左右同じである。
【0035】
このような槽11−3では、左右のスラリー排出口18の大きさは同じであるが、供給口15′が偏在していることから、対向面11a付近では供給口15’側で相対的に高圧となり、左右の圧力差(流速差)が生じる。これにより、他の領域と比べ、対向面11aの上部であって供給口15’側の領域D4が相対的に高圧となり、スラリーの抄上げ量が局所的に増大してシート厚みにばらつきが生じる。上記同様、一例として、4つの槽のうち、上流側の2つを図12のような槽11−3とし、下流側の2つは、スラリー供給口15′の位置を左右反転させた槽(不図示)を配置する。このような構成により、各槽で発生する原料の厚みに差異が出る位置が分散され、製造されるボードの厚みのばらつきを効果的に低減させることができる。
【0036】
以上、本発明について幾つかの形態を例示して説明したが、本発明は上記に示した具体的な構成に限定されるものではない。例えば、槽の数は4つ以外であってもよい。但し、各槽におけるシート厚みのばらつきを左右に均等に分散させる観点から、槽の数は偶数台であることが好ましい。
【0037】
以上、第1〜第3の実施形態を例として本発明について説明したが、本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)原料のスラリーを貯留する複数の槽(11)と、
前記スラリーに浸漬され、回転に伴ってこのスラリー中の固形分を抄き上げる丸網(13)と、
前記槽(11)に対しスラリーを供給する供給手段(15)と、
前記槽(11)のうち前記丸網(13)の回転軸の端部側に設けられ、前記槽から前記スラリーを排出する排出手段(18、19)と
を備えた丸網式抄造機(1)において、
前記複数の槽(11)は、少なくとも第1槽(11A、11B)、第2槽(11C、11D)を有し、
前記排出手段は、少なくとも前記第1、第2槽にそれぞれ設けられた第1排出手段(18)、第2排出手段(19)を有し、
前記第1排出手段(18)は、前記第2排出手段(19)に対し、前記丸網(13)を挟んで対向する位置に設けられることを特徴とする丸網式抄造機。
【0038】
(2)上記(1)に記載の丸網式抄造機において、
前記第1槽(11A、11B)及び第2槽(11C、11D)は、それぞれ2つずつ設けられることを特徴とする丸網式抄造機。
このように槽が2つずつ設けられている場合、シート積層時の厚みのばらつきをさらに低減することができる。
【0039】
(3)上記(1)または(2)に記載の丸網式抄造機において、
前記第1排出手段(18)は、前記第1槽(11A、11B)の回転軸側の側面の一方のみに設けられ、
前記第2排出手段(19)は、前記第2槽(11C、11D)の回転軸側の側面の一方のみに設けられることを特徴とする丸網式抄造機。
このように排出手段が各槽の一方のみに設けられている場合、簡易な構成によりボード材の厚みばらつきを低減することができる。
【0040】
(4)上記(1)または(2)に記載の丸網式抄造機において、
前記第1排出手段は、前記第1槽(11A、11B)の回転軸側の両側面に設けられた開口部であって、それぞれ開口面積が異なる第1大開口部(19′)と、第1小開口部(18′)を有し、前記第1大開口部(19′)と前記第1小開口部(18′)は、互いに対向する側面に設けられ、
前記第2排出手段は、前記第2槽(11C、11D)の回転軸側の両側面に設けられた開口部であって、それぞれ開口面積が異なる第2大開口部と、第2小開口部を有し、前記第2大開口部と前記第2小開口部は、互いに対向する側面に設けられ、
前記第1、第2大開口部は、前記丸網に対し互いに対向して設けられ、
前記第1、第2小開口部は、前記丸網に対し互いに対向して設けられることを特徴とする丸網式抄造機。
このように、槽の両側面に排出口を設けそれぞれ異なる開口面積を持たせ適宜面積比を変更することで、排出されるスラリーの流量を適宜変更し、厚みばらつきの微調整を行うことができる。
【0041】
(5)上記(1)または(2)に記載の丸網式抄造機において、
前記供給手段(15′)は、前記丸網(13)の回転軸方向の一方側に偏在して設けられることを特徴とする丸網式抄造機。
このように、スラリーの供給手段を偏在させることで、槽内の流量分布を変更し、丸網の特定領域で抄き上げられるスラリーの量を調整することが可能となる。よって、厚みばらつきの微調整を行うことができる。
【0042】
なお、厚みが増大または減少する位置が非対称となる槽を複数組み合わせて厚みばらつきを低減させるものであれば、他の実施の形態でもよい。例えば、計4つの槽のうち、片側のみに排水口を有する槽を2つ、両側に排水口を有する槽を2つ設けてもよい。
【0043】
この場合、片側のみ排水する槽では左側のみに排水口を有する槽を1つ、右側のみに排水口を有する槽を1つずつ設けることとし、残り2つの両側排水の槽では、一方は左側の排水口を大きく設けた槽とし、他方は右側の排水口を大きく設けた槽とすれば、厚みの大きい位置と小さい位置とを相互に非対称の位置とし、結果として厚みばらつきを低減することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 丸網式抄造機
11A〜11D、11−2、11−3 槽
13 丸網
15、15′ スラリー供給口
18、18′、19、19′ スラリー排出口
20 コンベア装置
21 コンベアベルト
23 ローラー
26 カッター
A ボード
L1 液面レベル
L2 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料のスラリーを貯留する複数の槽と、
前記スラリーに浸漬され、回転に伴ってこのスラリー中の固形分を抄き上げる丸網と、
前記槽に対しスラリーを供給する供給手段と、
前記槽のうち前記丸網の回転軸の端部側に設けられ、前記槽から前記スラリーを排出する排出手段と
を備えた丸網式抄造機において、
前記複数の槽は、少なくとも第1槽、第2槽を有し、
前記排出手段は、少なくとも前記第1、第2槽にそれぞれ設けられた第1排出手段、第2排出手段を有し、
前記第1排出手段は、前記第2排出手段に対し、前記丸網を挟んで対向する位置に設けられること
を特徴とする丸網式抄造機。
【請求項2】
請求項1に記載の丸網式抄造機において、
前記第1槽及び第2槽は、それぞれ2つずつ設けられること
を特徴とする丸網式抄造機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の丸網式抄造機において、
前記第1排出手段は、前記第1槽の回転軸側の側面の一方のみに設けられ、
前記第2排出手段は、前記第2槽の回転軸側の側面の一方のみに設けられること
を特徴とする丸網式抄造機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の丸網式抄造機において、
前記第1排出手段は、前記第1槽の回転軸側の両側面に設けられた開口部であって、それぞれ開口面積が異なる第1大開口部と、第1小開口部を有し、前記第1大開口部と前記第1小開口部は、互いに対向する側面に設けられ、
前記第2排出手段は、前記第2槽の回転軸側の両側面に設けられた開口部であって、それぞれ開口面積が異なる第2大開口部と、第2小開口部を有し、前記第2大開口部と前記第2小開口部は、互いに対向する側面に設けられ、
前記第1、第2大開口部は、前記丸網に対し互いに対向して設けられ、
前記第1、第2小開口部は、前記丸網に対し互いに対向して設けられること
を特徴とする丸網式抄造機。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の丸網式抄造機において、
前記供給手段は、前記丸網の回転軸方向の一方側に偏在して設けられること
を特徴とする丸網式抄造機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2013−112901(P2013−112901A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257343(P2011−257343)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】