説明

貯湯式給湯装置

【課題】断水状態でも水道水以外の水を貯水して沸き上げることが出来る貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】往き管8途中に設けられ湯水を循環させる循環ポンプ10と、加熱熱交換器4から貯湯タンク2の上部に戻る戻り管9と、前記往き管8の貯湯タンク2と循環ポンプ10との間に切替弁27を介して接続された補助管29と、前記戻り管9途中で戻り三方弁30を介して貯湯タンク2底部に連通する戻りバイパス管31と、前記循環ポンプ10を制御し貯湯タンク2内の湯水を加熱熱交換器4に循環させる沸き上げモードを備えた制御部37とを備えたもので、前記制御部37には断水時に前記切替弁27を補助管29側に切替ると共に、戻り三方弁30を戻りバイパス管31側の連通として、循環ポンプ10を駆動させ補助管29から吸引した水を戻りバイパス管31を介して貯湯タンク2底部から貯水する緊急貯水モードを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震等の災害発生後に電力は復旧したが水道が復旧せず断水状態で、水道水以外の水を貯水して沸き上げるようにした貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の貯湯式給湯装置において、地震(予震)が発生しこれを検知した場合に、貯湯タンク内の湯水をヒートポンプユニットで沸き上げる沸き上げ時の沸き上げ目標温度を、給湯や風呂等に直接使用可能な低温に設定し、沸き上げを行うようにして、予震後に本震が起こって断水が発生した場合でも、貯湯タンクから生活用水として直接使用可能な温度の湯水を得られるようにしたものがあった。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−255753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、地震発生時に貯湯タンク内に残った湯水を使い切れば終わりであり、折角電力が復旧しても水道が復旧せず断水状態では使用出来ず、すなわち、通常地震による災害時の復旧では、いち早く電力は復旧するが、水道の復旧には時間がかかりなかなか復旧されないので、何とか水道の水以外を利用して貯湯式の給湯機でお湯を沸かして使用出来ないかと言うのが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの下部から前記加熱手段内に収納された加熱熱交換器に向かう往き管と、該往き管途中に設けられ湯水を循環させる循環ポンプと、前記加熱熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管と、前記往き管の貯湯タンクと循環ポンプとの間に切替弁を介して接続された補助管と、前記戻り管途中で戻り三方弁を介して貯湯タンク底部に連通する戻りバイパス管と、前記循環ポンプを制御し貯湯タンク内の湯水を加熱熱交換器に循環させる沸き上げモードを備えた制御部とを備えたものに於いて、前記制御部には断水時に前記切替弁を補助管側に切替ると共に、戻り三方弁を戻りバイパス管側の連通として、循環ポンプを駆動させ補助管から吸引した水を戻りバイパス管を介して貯湯タンク底部から貯水する緊急貯水モードを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のようにこの発明によれば、バケツ内の水を今ある配管を切替ることで、簡単に貯湯タンク内に貯水することが出来、後は通常通りの沸き上げ循環を行えば、貯湯タンク内に温水を貯湯することが出来、そしてこの温水を貯湯タンク下部に連通した非常用栓を開栓することで取り出して、給湯や風呂等の生活用水として使用されるものであり、災害時に断水状態でも電力が復旧していれば、容易に水道水以外の水を利用して給湯出来、断水でも一応給湯が使用出来て極めて使用勝手が良く、被災地では大きな希望の1つになりうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同電気回路の要部ブロック図。
【図3】同緊急貯水モードから沸き上げまでを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この発明の貯湯式給湯装置の一実施形態を図面に基づき説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は前記ヒートポンプユニット3内に収納された加熱熱交換器としての水冷媒熱交換器、5は給湯設定温度を設定したり満タンモードや強制沸き増し運転モード等の各種の運転モードを手動で設定し、貯湯式給湯装置の運転操作を行うためのリモコンである。
【0009】
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管6と、下端に給水管7とが接続され、更に前記水冷媒熱交換器4と循環可能に接続する往き管8が下部に、戻り管9が上部に接続されている。また、往き管8の途中には貯湯タンク2の湯水をヒートポンプユニット3に循環させる循環ポンプ10が設けられ、往き管8、循環ポンプ10、水冷媒熱交換器4、戻り管9で加熱循環回路11を構成している。また、水冷媒熱交換器4の前後の往き管8及び戻り管9には、それぞれ入水温度センサ12と沸き上げ温度検出手段としての沸き上げ温度センサ13とが設けられている。
【0010】
14は給水管7から分岐されて貯湯タンク2をバイパスする給水バイパス管、15は出湯管6からの湯と給水バイパス管14からの水とを混合して給湯設定温度の湯に混合する給湯混合弁、16は給湯混合弁15で混合された湯を台所や洗面所等に設けられた給湯栓17に給湯する給湯管、18は給湯混合弁15の直後の給湯管16に設けられ給湯混合弁15で混合された湯の温度を検出する給湯温度センサ、19は給湯する湯水の量をカウントする流量カウンタである。
【0011】
前記ヒートポンプユニット3は、凝縮器としての前記水冷媒熱交換器4と冷媒を圧縮する回転数可変の圧縮機20と電子膨張弁21と強制空冷式の蒸発器としての空気熱交換器22で構成されたヒートポンプ回路23と、空気熱交換器22に送風する室外ファン24と、前記ヒートポンプユニット3を制御するヒーポン制御部25とを備えており、ヒートポンプ回路23内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。
【0012】
26は貯湯タンク2の側面上下方向に複数配設され貯湯温水の温度を検出する貯湯温度検出手段としての貯湯温度センサで、この実施形態では上から順に26a、26b、26c、26d、26eの5つの貯湯温度センサ26が配設され、この貯湯温度センサ26が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているか検知し、そして貯湯タンク2内の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0013】
27は加熱循環回路11の往き管8途中で、貯湯タンク2と循環ポンプ10との間に備えられた切替弁で、通常時は貯湯タンク2と水冷媒熱交換器4の連通とし、貯湯タンク2からの湯水を循環ポンプ10の駆動で水冷媒熱交換器4に送り、該水冷媒熱交換器4の熱交換で高温となった湯水を戻り管9を介して貯湯タンク2上部に戻すもので、断水時には接続されている逆止弁28付きの補助管29と、往き管8の一部を介して循環ポンプ10と連通すると共に、戻り管9の途中に備えた戻り三方弁30を切替て、該戻り管9の途中から貯湯タンク2底部に連通した戻りバイパス管31を介して該貯湯タンク2底部に戻るようにしたものであり、災害等による断水時に、バケツAに入った水道水以外の水(給水車からの水、井戸水等)を補助管29→往き管8の一部→循環ポンプ10→水冷媒熱交換器4→戻り管9の一部→戻りバイパス管31→貯湯タンク2底部へと順に流れて該貯湯タンク2底部から貯水するものである。
【0014】
前記リモコン5は、設定温度やエラー情報等を表示する表示部32と、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ33と、風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ34と、貯湯タンク2内の湯水をヒートポンプユニット3で沸き上げるための運転モードを選択して操作するものであって、各種運転モード、例えば貯湯タンク2内に大容量の貯湯量を所望する満タンモード、過去の使用湯量の実績に応じた貯湯量を所望するおまかせモード、電力安価な深夜時間帯のみ沸き上げを行う深夜のみモード、直ぐに沸き上げ運転を開始させる沸き上げモード、災害等による断水時に貯湯タンク2内に底部から水道水以外の水を貯水させる緊急貯水モードのうち何れかを選択する運転モード選択スイッチ35と、貯湯タンク2内の湯水を沸き増しする沸き増し量を「満タン」、「100L」、または「50L」と手動で切替えて選択し沸き増し運転を行なわせるための沸き増しスイッチ36とが設けられているものである。
【0015】
37はヒートポンプユニット3の駆動開始・停止制御や各種センサの入力を受けて各アクチュエータの駆動を制御するマイクロコンピュータを備えた制御部であり、リモコン5と無線または有線により接続されユーザーが自由に設定した各種運転モードに応じて各部を駆動制御すると共に、ヒーポン制御部25と有線にて通信可能に接続されて沸き上げ目標温度および沸き上げ動作の発停の指示をヒーポン制御部25へ送るものであり、特に緊急貯水モードでは、制御部37によって切替弁27と戻り三方弁30が連通を切替られ、循環ポンプ10の駆動も制御されるものであり、又この緊急貯水モードにより貯湯タンク2内に溜められた貯水は、使用者が必要を感じた時に、沸き上げモードにすれば、貯水は加熱循環回路11を通常の循環をしてヒートポンプユニット3で加熱されて沸き上げられるもので、そして貯湯タンク2下部に連通した非常用栓38を開くことにより、容易に給湯を得ることが出来るものである。
【0016】
39は貯湯タンク2内の過圧を逃がす過圧逃し弁で、緊急貯水モード時は手動で開放されて貯湯タンク2内の空気を逃がし貯水を流入させるものであり、40は給水の圧力を減圧する減圧弁、41は給水の温度を検出する給水温度センサ、42は給水管7を開閉する止水栓で、給水管7に設けた減圧弁37より上流側に設けられているものである。また、43は排水管で、一端が貯湯タンク2の底部に接続され、排水管43の途中には排水管43を開閉する排水栓44を有しているものである。なお、地震等の災害発生により断水が発生した場合は、止水栓42を閉めるものである。
【0017】
次に、この発明の一実施形態の作動を説明する。
先ず、通常時での沸き上げについて説明すると、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯(例えば23:00)に達すると、制御部37は沸き上げ制御を開始し、例えば、過去1週間の最大使用熱量や前日23:00〜当日23:00までの平均給水温度等から沸き上げ目標温度を自動で算出して設定し、貯湯温度センサ26の検出する貯湯温度に基づき現在貯湯タンク2内に貯湯されている貯湯熱量を算出すると共に、沸き上げ開始時刻を算出する。そして、沸き上げ開始時刻に達するとヒートポンプユニット3を駆動させると共に循環ポンプ10を駆動させ、貯湯タンク2の下部から湯水を取り出し往き管8を介して水冷媒熱交換器4で加熱して、戻り管9を介して貯湯タンク2の上部に沸き上げ目標温度に加熱した湯を戻すようにして、貯湯タンク2の上部から順次積層して高温の温水を貯湯していく。貯湯温度センサ26が必要な熱量が貯湯されたことを検出すると、制御部37はヒートポンプユニット3を停止すると共に循環ポンプ10も停止して沸き上げ動作を終了するものである。
【0018】
次に、この一実施形態の緊急貯水モードについて図3のフローチャートを用いて説明する。
ここでは、地震等の災害によって停電かつ断水が発生し、この停電かつ断水の期間に貯湯タンク2内の湯水を非常用栓38を開いて生活用水として使用しなくなった後、数日後に、断水状態が続く中で電力が復旧した時の貯水から沸き上げを想定したものである。
先ず、過圧逃し弁39を手動で開放すると共に、バケツAに給水車からの水や井戸水等を入れ、そこに補助管29の端部を差し込んで置く(ステップS1)、又このバケツAは多数用意しても良いし、給水される毎に補給しても良いものである。
【0019】
続いて、制御部37は、リモコン5の運転モード選択スイッチ35の手動操作によって緊急貯水モードが選択されたか否かを判断し(ステップS2)、緊急貯水モードが選択されたと判断すると、制御部37は切替弁27と戻り三方弁30の連通をそれぞれ切替ると共に、循環ポンプ10を駆動開始させる(ステップS3)。
【0020】
これによりバケツA内の給水は、補助管29→往き管8の一部→循環ポンプ10→水冷媒熱交換器4→戻り管9の一部→戻りバイパス管31→貯湯タンク2底部へと順に流れて該貯湯タンク2底部から貯水されるものであり、このように貯湯タンク2底部からの貯水は、万一貯湯タンク2内に残湯があった場合に、上から給水すると温度成層が崩れるのでこのを防止して、この残湯を無駄にすることなく使用するようにしたものであり、そしてある程度貯水した所で、リモコン5の運転モード選択スイッチ35の手動操作で、緊急貯水モードをキャンセルして貯水完了とし(ステップS4)、制御部37が切替弁27と戻り三方弁30の連通を元の連通に戻すと共に、循環ポンプ10の駆動を停止する(ステップS5)。
【0021】
そして次に、過圧逃し弁39を手動で閉じた後、同じくリモコン5の運転モード選択スイッチ35の手動操作で、沸き上げモードが選択されたか否かを判断し(ステップS6)、沸き上げモードが選択されたと判断すると、制御部37は切替弁27と戻り三方弁30の連通はすでに元に戻っているので、ヒートポンプユニット3及び循環ポンプ10を駆動開始させて、貯湯タンク2内の貯水を従来通り沸き上げるものである(ステップS7)。
【0022】
更にこの沸き上げられた貯湯タンク2内の温水は、必要に応じて非常用栓38を開いて使用することが出来るものであり、断水時にバケツAから自動給水して沸き上げて使用出来るので、極めてありがたく使用勝手が良く、長期に渡って安心して生活していられるものである。
【符号の説明】
【0023】
2 貯湯タンク
3 加熱手段(ヒートポンプユニット)
4 加熱熱交換器(水冷媒熱交換器)
5 リモコン
8 往き管
9 戻り管
10 循環ポンプ
27 切替弁
29 補助管
30 戻り三方弁
31 戻りバイパス管
37 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンクの下部から前記加熱手段内に収納された加熱熱交換器に向かう往き管と、該往き管途中に設けられ湯水を循環させる循環ポンプと、前記加熱熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管と、前記往き管の貯湯タンクと循環ポンプとの間に切替弁を介して接続された補助管と、前記戻り管途中で戻り三方弁を介して貯湯タンク底部に連通する戻りバイパス管と、前記循環ポンプを制御し貯湯タンク内の湯水を加熱熱交換器に循環させる沸き上げモードを備えた制御部とを備えたものに於いて、前記制御部には断水時に前記切替弁を補助管側に切替ると共に、戻り三方弁を戻りバイパス管側の連通として、循環ポンプを駆動させ補助管から吸引した水を戻りバイパス管を介して貯湯タンク底部から貯水する緊急貯水モードを備えた事を特徴とする貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108630(P2013−108630A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251393(P2011−251393)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】