説明

α−リポ酸ナノ粒子およびその調製方法

【課題】安定なα−リポ酸の提供。
【解決手段】非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを特定の順序で使用することにより、α−リポ酸ナノ粒子の製造方法であって、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程;該水性分散液に、2価金属塩を添加する工程であって、該2価金属塩が、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物または2価金属グルコン酸化物である、工程;および該2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加して、α−リポ酸ナノ粒子を形成させる工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−リポ酸を含むナノ粒子およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α−リポ酸は生体内に含まれ、糖の代謝およびTCAサイクルの回転に作用する補酵素の一種であり、構造式C14、分子量206.3、黄色結晶で融点60〜62℃の物質である。α−リポ酸は人間の体内にも存在し、ブロッコリーや赤身肉など多くの食品にも含まれる。そのため、α−リポ酸は安全性の高い物質といえる。機能面に関して、α−リポ酸は、生体内で強力な抗酸化力を持ち、酸化ストレスを軽減することや、重金属排出に効果的なキレート剤であることが認められている。α−リポ酸は、現在、「チオクト酸」として医薬品に配合されており、チオクト酸製剤は、通常、注射剤として販売されている。チオクト酸製剤の効能・効果としては、チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体労働時)、リー症候群(亜急性壊死性脳脊髄炎)、中毒性(ストレプトマイシン、カナマイシンによる)および騒音性(職業性)の内耳性難聴が日本医薬品集 医療薬(非特許文献1)に記載されている。
【0003】
α−リポ酸は、近年の規制緩和によって食品および化粧品への使用が認められたので、これらの分野でのさらなる応用が期待される。
【0004】
α−リポ酸は黄色粉末状の性状を持つが、水に難溶であるためにその用途が限られている。またα−リポ酸は熱および光に対して非常に不安定であり、製剤中に安定して存在することが困難である。さらにα−リポ酸は特有の硫黄臭を持ち、変質することでその臭いがより強力になること、および熱によってガム化してしまうことが問題となり、食品、化粧品および医薬品に使用するには、これらの品質および使用感の面で大きな問題がある。
【0005】
上記のような問題を解決するために、特許文献1においては、α−リポ酸またはその薬理学的に許容できる塩および亜硫酸塩またはその水和物を含有する水溶製剤が提案されている。
【0006】
また、特許文献2においては、α−リポ酸をエタノールなどの有機溶剤に溶解した後、乳化剤、多価アルコールを添加し、乳化機等の物理的作用によりα−リポ酸を乳化状態にする水溶製剤の製法が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3および特許文献4においては、α−リポ酸をエタノールなどの有機溶剤や乳化剤、多価アルコールと混合し、水への分散性、乳化安定性を向上させるα−リポ酸水溶製剤の製法が提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの特許文献に記載されるような、乳化状態にする方法は、乳化機という特殊な装置を必要とするうえ、乳化液の粒径が大きい場合および粒子径の大きさの分布が不均一である場合には、分離しやすい状態になる。またその他の方法でも、乳化によるα−リポ酸の分散が不完全であるために保存中にα−リポ酸特有の硫黄臭が強く生じることも指摘されている。
【0009】
他方、レチノイン酸のナノ粒子化に関する文献がある。特許文献5〜8は、多価金属無機塩被覆レチノイン酸ナノ粒子を開示する。
【0010】
しかし、レチノイン酸とα−リポ酸とは構造が全く異なるため、特許文献5〜8のレチノイン酸の代わりにα−リポ酸を使用することは容易には想到できず、全く考えられてこなかった。
【0011】
この点に関してより詳細に説明する。第1に、下記に示す構造のようにα−リポ酸とレチノイン酸はカルボキシル基をひとつ含有していること以外は全く異なる構造を有している。さらにα−リポ酸は分子中に硫黄原子を含んでいる点および2重結合を全く持たない点でもレチノイン酸と全く異なっている。以上のことから特許文献5〜特許文献8に記載される方法において、レチノイン酸の代わりにα−リポ酸を用いることは容易には想到できない。
【0012】
【化1】

第2に、レチノイン酸は生体内において、細胞の増殖・分化、生体の恒常性維持、形態形成に関わる重要な生体内ホルモンであるといわれており、その作用機序として核内のレチノイン酸レセプターへの結合による各種遺伝子発現のコントロールが提唱されている。一方、α−リポ酸は解糖系の補酵素としてピルビン酸からアセチルCoAへの酸化的脱炭酸反応を触媒し、細胞の呼吸やエネルギー産生に不可欠な栄養素であるといわれている。またα−リポ酸のよく知られる機能として抗酸化作用が知られている。以上のようなことからレチノイン酸とα−リポ酸は生体内での働きや期待される薬理効果が全く異なっており、産業上の利用を考える際に求める有効性の観点からも、特許文献5〜特許文献8に記載される方法においてレチノイン酸の代替物としてα−リポ酸を用いることは容易には想到できない。
【0013】
第3に、非特許文献2のp.410ではレチノイン酸のpKa値は6.4であると報告されており、p.411のDiscussionでは、ミセル化することでpKaが7〜8へと上昇すると記載されている。一方、非特許文献3には、α−リポ酸のpKa値が4.76であると記載されている。以上のように、α−リポ酸とレチノイン酸とは解離に関する性質が全く異なる。それゆえ、α−リポ酸を特許文献5〜特許文献8に記載される方法においてレチノイン酸の代替物として用いることは容易には想到できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−2096公報
【特許文献2】特開2006−129841号公報
【特許文献3】特開2006−257010号公報
【特許文献4】特開2007−16000号公報
【特許文献5】特開2004−161739号公報
【特許文献6】国際公開第2005/037267号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/037268号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2005/070413号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】日本医薬品集 医療薬 2007年版、株式会社 じほう、1327頁(2006)
【非特許文献2】Robbert Cretonら、Int.J.Dev.Biol.39:409−414(1995)
【非特許文献3】Lester J.Reedら、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,Vol.75:1267(1953)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、安定なα−リポ酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを特定の順序で使用することにより、安定したα−リポ酸ナノ粒子が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0018】
本発明はα−リポ酸の両親媒性を利用するものである。α−リポ酸は酸性条件または中性条件では非常に水に難溶であるが、アルカリを加えると透明な液状になる。アルカリ溶液中のα−リポ酸は、水中で球状ミセルを形成すると考えられる。ついで、α−リポ酸に非イオン性界面活性剤を添加すると、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤の混合ミセルが形成すると考えられる。さらに2価金属のハロゲン化物、酢酸塩、あるいはグルコン酸塩を添加することにより、リポ酸イオンのマイナス電荷に2価の金属カチオンを結合させ、α−リポ酸の凝集・沈澱を防ぐことによりリポ酸の表面に2価の金属イオンが結合した球状、もしくは卵形等を有するミセルが形成すると考えられる。さらに2価の陰イオンを添加して、2価の陰イオンをミセル表面の金属イオンに吸着(結合)させて、ミセル表面荷電を中和させる。その結果、ミセル表面に多価金属無機塩の皮膜が形成され、多価金属無機塩皮膜α−リポ酸ナノ粒子が調製されると考えられる。本ナノ粒子の調製法はα−リポ酸ミセルを鋳型にしていることから、封入率は単分散α−リポ酸分子を除いた濃度に相当し100%に近いものとなると考えられる。本ナノ粒子の表面には非イオン性界面活性剤の親水基が露出すると考えられる。本発明のナノ粒子は、水中に透明に分散する。またCaCOなどの多価金属無機塩結晶は水に溶解しないが、ナノ粒子表面ではパテライトあるいはアモルファス構造をとると考えられ、生体内では徐々に溶解し、α−リポ酸が徐放されるDDS効果が期待される。
【0019】
本発明者らはさらに、α−リポ酸がある種の非イオン性界面活性剤に可溶化され、この可溶化物を水中に分散させることによりα−リポ酸と非イオン性界面活性剤の混合ミセルが形成されることもまた見出した。このα−リポ酸溶解非イオン性界面活性剤の混合ミセルに、2価金属のハロゲン化物、酢酸塩、あるいはグルコン酸塩を添加することにより、α−リポ酸イオンのマイナス電荷に2価の金属カチオンを結合させる。この際、界面活性剤の存在によりα−リポ酸の凝集・沈澱が妨げられ、リポ酸の表面に2価の金属イオンが結合した球状もしくは卵形の形状のミセルが形成されると考えられる。このミセルに対してさらに2価の陰イオン(アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物)を添加して、2価の陰イオンをミセル表面の金属イオンに吸着(結合)させて、ミセル表面荷電を中和させる。その結果、ミセル表面に多価金属無機塩の皮膜が形成され、多価金属無機塩皮膜α−リポ酸ナノ粒子が調製されると考えられる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
α−リポ酸ナノ粒子の製造方法であって、
α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程;
該水性分散液に、2価金属塩を添加する工程であって、該2価金属塩が、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物または2価金属グルコン酸化物である、工程;および
該2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加して、α−リポ酸ナノ粒子を形成させる工程
を包含する、方法。
【0021】
(項目2)
前記α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程が、
液状の非イオン性界面活性剤にα−リポ酸を溶解して界面活性剤溶液を得ること;および該界面活性剤溶液に水または水を含む液体を添加して水性分散液を得ることを含む、項目1に記載の方法。
【0022】
(項目3)
前記α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程が、α−リポ酸とアルカリ性物質と水との混合物を作製してα−リポ酸含有水性分散液を調製すること;および該α−リポ酸含有水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加することを含む、項目1に記載の方法。
【0023】
(項目4)
前記2価金属塩が、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される、項目1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【0024】
(項目5)
前記2価金属塩が、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【0025】
(項目6)
前記アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムからなる群より選択される、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【0026】
(項目7)
前記アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が、炭酸ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなる群より選択される、項目1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【0027】
(項目8)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される、項目1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【0028】
(項目9)
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が、10以上である、項目8に記載の方法。
【0029】
(項目10)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油およびショ糖ラウリン酸エステルからなる群より選択される、項目1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【0030】
(項目11)
前記α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程において、
前記非イオン性界面活性剤にα−リポ酸を溶解する前に、ポリエチレングリコールを該非イオン性界面活性剤中に混合しておくか、または
前記界面活性剤溶液に水を含む液体を添加する際に、該水を含む液体として、ポリエチレングリコールを含む水を用いる、項目2および4〜10のいずれか1項に記載の方法。
【0031】
(項目12)
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子。
【0032】
(項目13)
前記2価金属イオンがカルシウムイオン、亜鉛イオンまたはマグネシウムイオンである、項目12に記載のα−リポ酸ナノ粒子。
【0033】
(項目14)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される、項目12または13に記載のα−リポ酸ナノ粒子。
【0034】
(項目15)
さらにポリエチレングリコールを含む、項目12〜14のいずれか1項に記載のα−リポ酸ナノ粒子。
【0035】
(項目16)
項目12〜15のいずれか1項に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、皮膚外用剤。
【0036】
(項目17)
項目12〜15のいずれか1項に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、医薬品。
【0037】
(項目18)
項目12〜15のいずれか1項に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、口腔用組成物。
【0038】
(項目19)
項目12〜15のいずれか1項に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、食品。
【0039】
本発明はまた、例えば、以下の手段も提供する:
(項目A1)
α−リポ酸ナノ粒子の製造方法であって、
α−リポ酸とアルカリ性物質と水との混合物を作製してα−リポ酸含有水性分散液を調製する工程;
該水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加する工程;
該非イオン性界面活性剤を添加した水性分散液に、2価金属塩を添加する工程であって、該2価金属塩が、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物または2価金属グルコン酸化物である、工程;および
該2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加して、α−リポ酸ナノ粒子を形成させる工程
を包含する、方法。
【0040】
(項目A2)
前記2価金属塩が、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0041】
(項目A3)
前記2価金属塩が、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0042】
(項目A4)
前記アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムからなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0043】
(項目A5)
前記アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が、炭酸ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0044】
(項目A6)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0045】
(項目A7)
前記非イオン性界面活性剤のHLB値が、10以上である、項目A6に記載の方法。
【0046】
(項目A8)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油およびショ糖ラウリン酸エステルからなる群より選択される、項目A1に記載の方法。
【0047】
(項目A9)
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子。
【0048】
(項目A10)
前記2価金属イオンがカルシウムイオン、亜鉛イオンまたはマグネシウムイオンである、項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子。
【0049】
(項目A11)
前記非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される、項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子。
【0050】
(項目A12)
項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、皮膚外用剤。
【0051】
(項目A13)
項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、医薬品。
【0052】
(項目A14)
項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、口腔用組成物。
【0053】
(項目A15)
項目A9に記載のα−リポ酸ナノ粒子を含有する、食品。
【発明の効果】
【0054】
本発明のナノ粒子の調製法はα−リポ酸ミセルを鋳型にしていることから、封入率は単分散α−リポ酸分子を除いた濃度に相当し100%に近いものとなる。本発明のナノ粒子の表面には非イオン性界面活性剤の親水基が露出していると考えられ、水中に透明に分散する。またナノ粒子表面では多価金属無機塩はパテライトあるいはアモルファス構造をとると考えられ、生体内では徐々に溶解し、α−リポ酸が徐放されるDDS効果が期待される。また本発明のナノ粒子は表面を多価金属無機塩に被覆されていることから、α−リポ酸に特有の硫黄臭の発生を著しく抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、実施例1で蒸留水を使用して作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の粒子径分布を光散乱光度計(大塚電子 ELS−710TY)によって測定した結果を示す。
【図2】図2は、比較例1Aでイオン交換水を使用して作製したα−リポ酸ナノ粒子の粒子径分布を光散乱光度計(大塚電子 ELS−710TY)によって測定した結果を示す。
【図3】図3は、α−リポ酸の残存率の結果を示す。△は対照である試薬のα−リポ酸の結果であり、■は比較例1のα−リポ酸ナノ粒子の結果であり、□は実施例1のα−リポ酸−MgCOナノ粒子の結果である。
【図4】図4は、試験例3の結果を示す。
【図5】図5は、試験例4の結果を示す。
【図6】図6は、試験例4のしわのレプリカを示す。
【図7】図7は、実施例22Aで蒸留水を使用して作製したα−リポ酸−CaCOナノ粒子の粒子径分布を光散乱光度計(大塚電子 FPAR1000)によって測定した結果を示す。
【図8】図8は、実施例29Bで蒸留水を使用して作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の粒子径分布を光散乱光度計(大塚電子 FPAR1000)によって測定した結果を示す。
【図9】図9は、試験例5の結果を示す。
【図10】図10は、試験例6の結果を示す。
【図11】図11は、試験例7で3T3−L1細胞培養液にα−リポ酸−MgCOナノ粒子を添加し、未成熟脂肪細胞内に蓄積した脂肪をオイルレッドOで染色し、吸光度計(波長520nm)にて測定した結果を示す。
【図12】図12は、試験例8で3T3−L1細胞培養液にα−リポ酸−MgCOナノ粒子を添加し、成熟脂肪細胞内に蓄積した脂肪をオイルレッドOで染色し、吸光度計(波長520nm)にて測定した結果を示す。
【図13】図13は、試験例9で3T3−L1細胞培養液にα−リポ酸−MgCOナノ粒子を添加し培養した未成熟脂肪細胞を破砕した細胞破砕液中のα−リポ酸濃度を高速液体クロマトグラフ質量分析計によって測定した結果を示す。
【図14】図14は、試験例9で3T3−L1細胞培養液にα−リポ酸−MgCOナノ粒子を添加し培養した未成熟脂肪細胞培養上清液中のα−リポ酸濃度を高速液体クロマトグラフ質量分析計によって測定した結果を示す。
【図15】図15は、試験例10で作製した皺モデルマウスの評価基準例を示す。
【図16】図16は、試験例10で作製した皺モデルマウスに6週間α−リポ酸−MgCOナノ粒子を塗布したマウスの皺レプリカとその皺評価点数を示す。
【図17】図17は、試験例10で作製した皺モデルマウス皮膚切片のヒアルロン酸染色の結果を示す。
【図18】図18は、試験例11の皺レプリカを示す。
【図19】図19は、試験例12の細胞破砕液画分に対するヒアルロン酸ELISAの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0057】
(1.α−リポ酸ナノ粒子の材料)
本発明のα−リポ酸ナノ粒子は、α−リポ酸、非イオン性界面活性剤、2価金属塩、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を使用して製造される。当業者は、本発明の製造法において、アルカリ性水溶液など、必要に応じて他の材料を使用し得る。
【0058】
(1a.α−リポ酸)
本発明において用いられるα−リポ酸は、当該分野で公知の任意のα−リポ酸であり得る。α−リポ酸はチオクト酸としても公知である。α−リポ酸は、R,S−(+/−)−α−リポ酸、R−(+)−α−リポ酸、S−(−)−α−リポ酸のいずれであってもよい。α−リポ酸は、酸の形態であってもよく、塩の形態であってもよい。市販の任意のα−リポ酸が用いられ得る。α−リポ酸は、粉末または結晶の形態であり得る。
【0059】
(1b.非イオン性界面活性剤)
本発明において用いられる非イオン性界面活性剤は、非イオン性であれば任意の界面活性剤であり得る。本発明において用いられる非イオン性界面活性剤の例としては、特に限定はないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明において用いられる非イオン性界面活性剤としては特に、HLB値が約10以上であるものが好ましい。本発明において用いられる非イオン性界面活性剤としては特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される非イオン性界面活性剤であって、かつHLB値が約10以上であるものが好ましい。本発明においてはさらに、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度10〜20)ポリオキシプロピレン(重合度4〜8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(重合度20〜100)硬化ヒマシ油およびショ糖ラウリン酸エステルからなる群より選択されることが特に好ましい。本発明においては、1種類の非イオン性界面活性剤を使用してもよく、または2種類以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLB値は、約10以上であることが好ましく、約12以上であることがより好ましく、約14以上であることが最も好ましい;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLB値は、約20以下であることが好ましく、約18以下であることがより好ましく、約16以下であることが最も好ましい。
【0060】
非イオン性界面活性剤は、室温で固体のもの(すなわち、融点が室温よりも高い界面活性剤)であってもよく、室温で液体のもの(すなわち、融点が室温よりも低い界面活性剤)であってもよい。本願明細書中で「液状の非イオン性界面活性剤」との用語は、室温で液体の非イオン性界面活性剤を使用する実施形態と、室温で固体の非イオン性界面活性剤を加熱して融解させて液状にして使用する実施形態との両方に関して用いられる。
【0061】
本明細書中で用いられる場合、「HLB値」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)をいい、一般に、20×M/Mにより計算され、ここで、M=親水基部分の分子量であり、M=分子全体の分子量である。HLB値は、分子中の親水基の量が0%のとき0であり、100%のとき20である。HLB値は、界面活性剤では界面活性剤分子を形成する親水性および疎水性の基の大きさと強さを表し、疎水性の高い界面活性剤はHLB値が小さく、親水性の高い界面活性剤はHLB値が大きい。
【0062】
本発明において好適に使用されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の例としては、酸化エチレンの重合度が任意のものであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。例えば、酸化エチレンの重合度が約10以上のものが好ましく、酸化エチレンの重合度が約200以下のものが好ましい。さらにより好ましいポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の例としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80が挙げられる。なお、この数字は、酸化エチレンの重合度の程度を表し、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40は、酸化エチレンの付加モル数が40であることを示す。
【0063】
本発明において好適に使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、酸化エチレンの重合度が任意のものであるポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。酸化エチレンの重合度が約10以上のものが好ましく、酸化エチレンの重合度が約20以下のものが好ましい。さらにより好ましいポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、例えば、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(POE(20)ステアリルエーテルとも記載される)、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(POE(20)オクチルドデシルエーテルとも記載される)およびポリオキシエチレン(20)イソステアリルエーテル(POE(20)イソステアリルエーテル)が挙げられる。この(20)という数字は酸化エチレンの重合度が20であることを示す。
【0064】
本発明において好適に使用されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの例としては、酸化エチレンの重合度が任意のものであるポリオキシエチレンソルビタン酸エステルが挙げられる。酸化エチレンの重合度が約10以上のものが好ましく、酸化エチレンの重合度が約20以下のものが好ましい。さらにより好ましいポリオキシエチレンソルビタン酸エステルの例としては、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(POE(20)ソルビタンモノオレエートとも記載される)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(POE(20)ソルビタンモノラウレートとも記載される)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(POE(20)ソルビタンモノステアレートとも記載される)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(POE(20)ソルビタンモノパルミテートとも記載される)およびポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート(POE(20)ソルビタントリオレートとも記載される)が挙げられる。この(20)という数字は酸化エチレンの重合度が20であることを示す。
【0065】
本発明において好適に使用されるポリオキシエチレンポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルの例としては、酸化エチレンの重合度が任意のものであるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテルが挙げられる。ポリオキシエチレン部分の重合度が約10以上のものが好ましく、ポリオキシエチレン部分の重合度が約20以下のものが好ましい。ポリオキシプロピレン部分の重合度が約4以上のものが好ましく、ポリオキシプロピレン部分の重合度が約8以下のものが好ましい。さらにより好ましいポリオキシエチレンポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルの例としては、例えば、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル(POE(20)POP(8)セチルエーテルとも記載される)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル(POE(20)POP(4)セチルエーテルとも記載される)、ポリオキシエチレン(34)ポリオキシプロピレン(23)セチルエーテル(POE(34)POP(23)セチルエーテルとも記載される)、ポリオキシエチレンポリオキシエチレンプロピレンデシルテトラデシルエーテル(POEPOEプロピレンデシルテトラデシルエーテルとも記載される)およびポリオキシエチレン(20)イソステアリルエーテル(POE(20)イソステアリルエーテルとも記載される)が挙げられる。
【0066】
本発明において好適に使用されるポリグリセリン脂肪酸エステル類の例としては、例えば、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノオレートおよびデカグリセリンモノステアレートが挙げられる。使用されるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は特に限定はされないが、HLB値は好ましくは約8以上であり、より好ましくは約10以上であり、さらに好ましくは約12以上である。HLB値は好ましくは約20以下であり、より好ましくは約19以下であり、さらに好ましくは約18以下である。
【0067】
本発明において好適に使用されるショ糖脂肪酸エステル類の例としては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステルおよびショ糖ラウリン酸エステルが挙げられる。中でもショ糖ラウリン酸エステルがより好適に使用される。
【0068】
本発明において、α−リポ酸ナノ粒子中の界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類により異なる。界面活性剤の量は、α−リポ酸重量の、好ましくは約1倍以上であり、より好ましくは約2倍以上であり、さらに好ましくは約3倍以上であり、特に好ましくは約4倍以上であり、最も好ましくは約5倍以上である。界面活性剤の量は、α−リポ酸重量の、好ましくは約40倍以下であり、より好ましくは約35倍以下であり、さらに好ましくは約30倍以下であり、特に好ましくは約25倍以下であり、最も好ましくは約20倍以下である。α−リポ酸に対する界面活性剤の量が少なすぎると、ナノ粒子が凝集しやすくなり、透明かつ安定な粒子を得ることが難しい場合がある。α−リポ酸に対する界面活性剤の量が多すぎると、添加量を増やしてもそれにより得られる効果がそれほど増えない上に、α−リポ酸含量が相対的に低下する、使用時のハンドリングが悪くなる、本ナノ粒子を食品に利用した場合に界面活性剤由来の味が発現し商品価値を下げる、などの問題が生じ得る。
【0069】
(1c.2価金属塩)
本発明においては、2価金属塩が使用される。使用され得る2価金属塩の例としては、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物および2価金属グルコン酸化物が挙げられる。
【0070】
2価金属酢酸化物とは、酢酸と2価金属との塩であり、酢酸二価金属塩ともいう。2価金属グルコン酸化物とは、グルコン酸と2価金属との塩であり、グルコン酸二価金属塩ともいう。2価金属塩は好ましくは、塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マグネシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択され、より好ましくは、塩化マグネシウム、塩化カルシウムおよびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される。市販の2価金属塩が使用され得る。1種類の2価金属塩を使用してもよく、2種類以上の2価金属塩を混合して使用してもよい。1種類の2価金属塩を使用することが好ましい。
【0071】
(1d.アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物)
本発明においては、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が使用される。アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物中のアルカリ金属の例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムが挙げられる。アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムであることが好ましく、ナトリウムであることがさらに好ましい。本発明において使用され得るアルカリ金属炭酸化物の例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが挙げられ、炭酸ナトリウムが好ましい。本発明において使用され得るアルカリ金属リン酸化物の例としては、例えば、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムが挙げられる。リン酸ナトリウムは、メタリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸水素ナトリウムであり得、好ましくはリン酸水素二ナトリウムである。リン酸カリウムは、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムまたはリン酸三カリウムであり得、好ましくはリン酸水素二カリウムである。
【0072】
市販のアルカリ金属炭酸化物およびアルカリ金属リン酸化物が使用され得る。1種類のアルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を使用してもよく、2種類以上のアルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を混合して使用してもよい。1種類のアルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を使用することが好ましい。
【0073】
(1e.添加剤)
本発明においては、添加剤を使用することができる。添加剤は、水溶性高分子であることが好ましい。添加剤の例としては、ポリエチレングリコール、植物系高分子、微生物系高分子、動物系高分子、デンプン類およびデキストリン類、セルロース類、ビニル系高分子およびアクリル系高分子が挙げられる。
【0074】
添加剤を用いることにより、ミセル表面へと水溶性高分子が吸着することによるミセルの凝集抑制効果および分散効果;ミセル間の水中(連続相)に高分子化合物が存在することによる立体障害によるミセルの凝集抑制効果;ならびに増粘によるミセルの凝集抑制効果などの効果が得られると考えられる。
【0075】
ポリエチレングリコールは、HO(CHCHO)Hによって示される物質である。ポリエチレングリコールは、エチレングリコールの脱水重縮合によって生成したと考えられる構造をもち、両末端がヒドロキシル基であるポリエーテルである。分子量約200から約20,000の種々のものが公知である。ポリエチレングリコールは、分子量が約200〜約600では液体であり、分子量が約1000を超えると固体である。ポリエチレングリコールは高分子であるので、通常、種々の分子量の分子の混合物として販売される。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは約500以上であり、より好ましくは約600以上であり、さらに好ましくは約700以上であり、なおさらに好ましくは約800以上であり、特に好ましくは約900以上であり、そして最も好ましくは約1,000以上である。ポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは約10,000以下であり、より好ましくは約9,000以下であり、さらに好ましくは約8,000以下であり、なおさらに好ましくは約7,000以下であり、特に好ましくは約6,500以下であり、そして最も好ましくは約20,000以下である。本発明で好適に使用されるポリエチレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000が挙げられる。
【0076】
植物系高分子とは、植物から抽出または精製される高分子をいう。植物系高分子の例としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、ローカストビーンガム、カラギナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ種子)抽出物、褐藻粉末などが挙げられる。
【0077】
微生物系高分子とは、微生物から抽出または精製される高分子をいう。微生物系高分子の例としては、キサンタンガム、デキストラン、プルランなどが挙げられる。
【0078】
動物系高分子とは、動物から抽出または精製される高分子をいう。動物系高分子の例としては、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸などが挙げられる。
【0079】
デンプン類およびデキストリン類とは、デンプンおよびデキストリン、ならびにそれらの化学修飾物、酵素処理物および物理的処理物をいう。デンプン類は、好ましくは、化学修飾されたデンプンである。デンプン類の例としては、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシデンプンなどが挙げられる。
【0080】
セルロース類とは、セルロース類およびその化学修飾物、酵素処理物および物理的処理物をいう。セルロース類の例としては、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末などが挙げられる。
【0081】
ビニル系高分子とは、ビニル系モノマーを重合して得られる高分子をいう。ビニル系高分子の例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。
【0082】
アクリル系高分子とは、アクリル系モノマーを重合して得られる高分子をいう。アクリル系高分子の例としては、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルイミドなどが挙げられる。
【0083】
(2.α−リポ酸ナノ粒子の製造方法)
本発明のα−リポ酸ナノ粒子の製造方法は、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程;該水性分散液に、2価金属塩を添加する工程であって、該2価金属塩が、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物または2価金属グルコン酸化物である、工程;および該2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加して、α−リポ酸ナノ粒子を形成させる工程を包含する。
【0084】
好ましい実施形態では、前記α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程が、液状の非イオン性界面活性剤にα−リポ酸を溶解して界面活性剤溶液を得ること;および該界面活性剤溶液に水または水を含む液体を添加して水性分散液を得ることを含む。この実施形態では、以下に記載の「2a−1」、「2b−1」、「2c」および「2d」を含む工程を行うことにより、α−リポ酸ナノ粒子を製造し得る。
【0085】
別の好ましい実施形態では、前記α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とを含む水性分散液を調製する工程が、α−リポ酸とアルカリ性物質と水との混合物を作製してα−リポ酸水性分散液を調製すること;および該α−リポ酸含有水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加することを含む。この実施形態では、以下に記載の「2a−2」、「2b−2」、「2c」および「2d」を含む工程を行うことにより、α−リポ酸ナノ粒子を製造し得る。
【0086】
特定の好ましい実施形態では、本発明の方法は、α−リポ酸ナノ粒子の製造方法であって、α−リポ酸とアルカリ性物質と水との混合物を作製してα−リポ酸含有水性分散液を調製する工程(該水性分散液中でα−リポ酸がミセルを形成すると考えられる);該水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加する工程(α−リポ酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルが形成すると考えられる);該水性分散液に、2価金属塩を添加する工程であって、該2価金属塩が、2価金属ハロゲン化物、2価金属酢酸化物または2価金属グルコン酸化物である、工程;および該2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加して、α−リポ酸ナノ粒子を形成させる工程を包含する。
【0087】
(2a−1.α−リポ酸を液状の非イオン性界面活性剤に溶解する工程)
α−リポ酸を非イオン性界面活性剤に最初に溶解させる実施形態を説明する。この実施形態においては、非イオン性界面活性剤を溶媒として用いる。すなわち、界面活性剤溶液を調製する。この実施形態においては、まず、液状の非イオン性界面活性剤にα−リポ酸を溶解して界面活性剤溶液を得る。このα−リポ酸は、非イオン性界面活性剤に直接添加してもよく、間接的に添加してもよい。「間接的に添加する」とは、他の物質と混合してから添加することをいう。例えば、α−リポ酸を添加剤と混合した後に非イオン性界面活性剤に添加してもよい。α−リポ酸は、通常、結晶または粉末の形態で市販されている。この実施形態では、α−リポ酸は、液状の非イオン性界面活性剤にほぼ完全に溶解する。非イオン性界面活性剤が室温で液状であれば、室温でこの溶解操作を行うことができるが、必要に応じて、加熱してこの溶解操作を行っても良い。非イオン性界面活性剤が室温で固体であれば、加熱して非イオン性界面活性剤を液状にして、この溶解操作を行う。この界面活性剤溶液を調製する際、必要に応じて、非イオン性界面活性剤に上述した添加剤を加えておいても良い。
【0088】
この界面活性剤溶液を調製する際、好ましくは、水を使用しない。すなわち、界面活性剤溶液を調製する際に混入する水の量は、α−リポ酸100重量部に対して約50重量部以下とすることが好ましく、約20重量部以下とすることがより好ましく、約10重量部以下とすることがさらに好ましく、約5重量部以下とすることがいっそう好ましく、約1重量部以下とすることが特に好ましい。水分量の下限は特にないが、α−リポ酸100重量部に対して約0.001重量部以上、約0.01重量部以上、または約0.1重量部以上の水が混合される条件を採用してもよい。
【0089】
α−リポ酸はアルコールには溶解するが、本発明においてはアルコールを実質的に使用しないことが好ましい。アルコールを使用するとα−リポ酸のミセル形成効率に悪影響を及ぼし得る。従って、例えば、α−リポ酸100重量部に対して、アルコールの使用量を約10重量部以下とすることが好ましく、約5重量部以下とすることがより好ましく、約1重量部以下とすることがさらに好ましく、約0.5重量部以下とすることが特に好ましく、約0.1重量部以下とすることが最も好ましい。ただし、必要に応じてアルコールを使用する場合、そのアルコールの使用量の下限は特にないが、例えば、α−リポ酸100重量部に対して、アルコールの使用量が約0.01重量部以上に設定することは可能である。
【0090】
なお、後述する実施形態では、α−リポ酸を溶解させる際にアルカリ性化合物を使用するが、本実施形態では、アルカリ性化合物を使用してα−リポ酸を溶解させる必要はない。本実施形態において、α−リポ酸を非イオン性界面活性剤に溶解する際には、好ましくは、α−リポ酸および非イオン性界面活性剤以外の材料を用いずに、当該溶解操作を行う。例えば、アルカリ性化合物を実質的に使用せずに、当該溶解操作を行うことができる。従って、溶解操作を行う際に使用されるアルカリ性化合物の量については、例えば、α−リポ酸100重量部に対して、アルカリ性化合物の使用量を5重量部以下とすることが可能であり、約1重量部以下とすることも可能であり、約0.5重量部以下とすることも可能であり、約0.1重量部以下とすることも可能であり、約0.05重量部以下とすることも可能であり、約0.01重量部以下とすることも可能である。
【0091】
なお、α−リポ酸を非イオン性界面活性剤に溶解した後、水を加える際には、必要に応じて、水とともにアルカリを同時に添加しても良く、アルカリ性の水(例えば、塩基性化合物の水溶液)を添加しても良い。
【0092】
非イオン性界面活性剤は、融点が室温以上のものは、加熱して融解することが好ましい。加熱は、使用する非イオン性界面活性剤が融解するに充分な温度になるように行われればよい。α−リポ酸を分解するおそれがあるので、非イオン性界面活性剤の温度が約70℃以上になるような、過度の加熱は好ましくない。α−リポ酸を添加する際の非イオン性界面活性剤の温度は、この非イオン性界面活性剤の融点より高く、(融点+20℃)以下であることが好ましく、(融点+15℃)以下であることがより好ましく、(融点+10℃)以下であることが最も好ましい。
【0093】
非イオン性界面活性剤とα−リポ酸との混合物の作製の際に、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤との混合(ミセル形成)に実質的に悪影響を及ぼさない限り、他の物質をまた混合してもよい。例えば、非イオン性界面活性剤と添加剤(例えば、ポリエチレングリコール)とを混合した後にα−リポ酸を添加することにより混合物を作製してもよい。あるいは、非イオン性界面活性剤とα−リポ酸との混合物に添加剤(例えば、ポリエチレングリコール)を添加してもよい。
【0094】
α−リポ酸を添加した後の混合物をよく攪拌することが好ましい。
【0095】
α−リポ酸の量は、工程2b−1で得られるα−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度が、臨界ミセル濃度以上になるように選択される。α−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、より好ましくは約1.0重量%以上である。α−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度は、好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約16重量%以下であり、さらに好ましくは約14重量%以下であり、特に好ましくは約12重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0096】
α−リポ酸を溶解するために使用される非イオン性界面活性剤の量は、任意に選択され得るが、α−リポ酸の量を100としたときに、重量比で、好ましくは約100%以上であり、より好ましくは約200%以上であり、さらに好ましくは約300%以上であり、特に好ましくは約400%以上であり、最も好ましくは約500%以上である。この工程で添加される非イオン性界面活性剤の量は、α−リポ酸の量を100%としたときに、重量比で、好ましくは約4000%以下であり、より好ましくは約3500%以下であり、さらに好ましくは約3000%以下であり、特に好ましくは約2500%以下であり、最も好ましくは約2000%以下である。
【0097】
(2b−1.非イオン性界面活性剤とα−リポ酸との混合物に水を添加してα−リポ酸含有水性分散液を得る工程)
次いで、非イオン性界面活性剤とα−リポ酸との混合物に水を添加して、α−リポ酸含有水性分散液が得られる。α−リポ酸含有水性分散液の作製の際に、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤との混合(ミセル形成)に実質的に悪影響を及ぼさない限り、他の物質をまた混合してもよい。
【0098】
非イオン性界面活性剤とα−リポ酸との混合物に水を添加して混合することにより、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルが自然に形成されると考えられる。この実施形態では、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤とが規則的に配列している状態から、水の添加によって一気に混合ミセルが形成されると考えられるので、非常に安定的に混合ミセルを形成できると考えられる。水を添加した後の溶液をよく攪拌することが好ましい。攪拌は、ある程度の時間継続されることが好ましい。攪拌時間は、好ましくは約10分間以上であり、より好ましくは約20分間以上であり、さらに好ましくは約25分間以上であり、最も好ましくは約30分間以上である。攪拌時間に特に上限はない。例えば、約48時間以下、約24時間以下、約18時間以下、約12時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約50分間以下、約40分間以下、約35分間以下など、任意に設定され得る。
【0099】
このようにしてα−リポ酸と非水溶性界面活性剤とを含む水性分散液が得られる。
【0100】
(2a−2.α−リポ酸とアルカリを混合する工程)
α−リポ酸とアルカリを最初に混合する実施形態の本発明の方法においては、まず、α−リポ酸とアルカリ性物質と水との混合物を作製してα−リポ酸含有水性分散液が調製される。α−リポ酸は、通常、結晶または粉末の形態で市販されている。α−リポ酸を水に添加すると、分散はするが、完全に溶解することはない。α−リポ酸はアルコールには溶解するが、本発明においてはアルコールを使用しないことが好ましい。アルコールを使用するとα−リポ酸のミセル形成効率に悪影響を及ぼし得る。アルカリ性物質は、任意のアルカリ性物質であり得るが、好ましくは、強塩基であり、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0101】
α−リポ酸含有水性分散液は、例えば、まず、水にα−リポ酸を添加して混合し、そこにアルカリ性溶液を添加して混合することによって作製され得る。α−リポ酸含有水性分散液はまた、水にα−リポ酸を添加して混合し、そこにアルカリ性物質を添加して混合することによっても作製され得る。α−リポ酸含有水性分散液はまた、アルカリ性溶液にα−リポ酸を添加して混合することによっても作製され得る。α−リポ酸含有水性分散液はまた、水にα−リポ酸とアルカリ性物質とを添加して混合することによっても作製され得る。
【0102】
α−リポ酸含有水性分散液の作製の際に、α−リポ酸とアルカリとの混合(ミセル形成)に実質的に悪影響を及ぼさない限り、他の物質をまた混合してもよい。
【0103】
α−リポ酸含有水性分散液を作製するために使用されるα−リポ酸の量は、α−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度が、臨界ミセル濃度以上になるように選択される。α−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、より好ましくは約1.0重量%以上である。α−リポ酸含有水性分散液中のα−リポ酸の濃度は、好ましくは約20重量%以下であり、より好ましくは約16重量%以下であり、さらに好ましくは約14重量%以下であり、特に好ましくは約12重量%以下であり、最も好ましくは約10重量%以下である。
【0104】
α−リポ酸含有水性分散液を作製するために使用されるアルカリ性物質の量は、α−リポ酸を水に分散させる量であれば任意の量であり得る。アルカリ性物質の量は、好ましくは、α−リポ酸含有水性分散液のpHを約6.5以上にする量である。アルカリ性物質の量は、好ましくは、α−リポ酸含有水性分散液のpHを約13.5以下にする量であり、より好ましくはα−リポ酸含有水性分散液のpHを約13.0以下にする量であり、特に好ましくはα−リポ酸含有水性分散液のpHを約12.5以下にする量である。
【0105】
このようにしてα−リポ酸含有水性分散液が得られる。
【0106】
(2b−2.α−リポ酸含有水性分散液と非イオン性界面活性剤を添加する工程)
次いで、このα−リポ酸含有水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加する。α−リポ酸のミセルの表面は、マイナス荷電で覆われた状態となっているため、容易に2価金属イオン、たとえばカルシウムイオン(Ca2+)が吸着(結合)し、ナトリウムイオンとの交換反応が生じ得る。この場合、2価金属イオンはナトリウムイオンに比較して吸着力(結合力)が高いことから、2価金属イオンを吸着したミセルは、その表面の荷電は解離しにくくなり、水に不溶化して、ミセルが沈澱する。沈澱を生じると、粒子同士の凝集が生じ、非常に大きな粒子を形成することとなる。この段階での粒子同士の凝集を防ぐために、非イオン性界面活性剤が添加される。非イオン性界面活性剤は、α−リポ酸と共に混合ミセルを形成し、ミセル表面上に親水基を突出させるために、多価金属イオンがミセル表面に吸着(結合)しても、ミセル表面に突出した親水基の存在により、ミセルの沈澱が生じないこととなると考えられる。
【0107】
この工程で添加される非イオン性界面活性剤の量は任意に選択され得るが、α−リポ酸の濃度を100としたときに、重量比で、好ましくは約100%以上であり、より好ましくは約200%以上であり、さらに好ましくは約300%以上であり、特に好ましくは約400%以上であり、最も好ましくは約500%以上である。この工程で添加される非イオン性界面活性剤の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、重量比で、好ましくは約4000%以下であり、より好ましくは約3500%以下であり、さらに好ましくは約3000%以下であり、特に好ましくは約2500%以下であり、最も好ましくは約2000%以下である。
【0108】
α−リポ酸含有水性分散液に非イオン性界面活性剤を添加して混合することにより、α−リポ酸と非イオン性界面活性剤との混合ミセルが自然に形成されると考えられる。非イオン性界面活性剤を添加した後の溶液をよく攪拌することが好ましい。攪拌は、ある程度の時間継続されることが好ましい。攪拌時間は、好ましくは約10分間以上であり、より好ましくは約20分間以上であり、さらに好ましくは約25分間以上であり、最も好ましくは約30分間以上である。攪拌時間に特に上限はない。例えば、約48時間以下、約24時間以下、約18時間以下、約12時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約50分間以下、約40分間以下、約35分間以下など、任意に設定され得る。
【0109】
このようにしてα−リポ酸と非水溶性界面活性剤を含む水性分散液が得られる。
【0110】
(2c.2価金属塩を添加する工程)
次いで、上記2b−1または2b−2で調製された水性分散液に、2価金属塩が添加される。2価金属塩は、この水性分散液に直接添加されてもよく、水溶液として添加されてもよいが、好ましくは、2価金属塩の水溶液として添加される。
【0111】
2価金属塩を添加すべき水性分散液は、前の工程のものがそのまま使用され得るが、好ましくは、使用する金属塩に応じて、金属塩を添加する直前にpHが調整される。
【0112】
本発明者らは、α−リポ酸においてはα−リポ酸の分散に好適なpHと、2価金属塩を添加する際に好適なpHとが異なり、α−リポ酸および非イオン性界面活性剤を含む混合ミセルを含む水性分散液に2価の金属イオンを付加する際に、金属イオンの種類によって好適なpHが存在することを見出した。このpHは、2価の金属イオンがMg2+の際には約12.0以下、Ca2+の際には約12.0以下、Zn2+の際には約9.5以下であることが望ましく、さらに好ましくはMg2+の際には約11.5以下、Ca2+の際には約11.5以下、Zn2+の際には約8.8以下が望ましい。
【0113】
2価金属塩が塩化カルシウム、臭化カルシウム、フッ化カルシウム、ヨウ化カルシウム、酢酸カルシウムまたはグルコン酸カルシウムである場合、2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは、好ましくは約3.4以上であり、より好ましくは約3.6以上であり、特に好ましくは約3.8以上であり、最も好ましくは約4.0以上であり;2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは好ましくは約12.0以下であり、さらに好ましくは約11.9以下であり、特に好ましくは約11.7以下であり、最も好ましくは約11.5以下である。
【0114】
2価金属塩が塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、フッ化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、酢酸マグネシウムまたはグルコン酸マグネシウムである場合、2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは、好ましくは約3.4以上であり、より好ましくは約3.6以上であり、特に好ましくは約3.8以上であり、最も好ましくは約4.0以上であり;2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは好ましくは約12.0以下であり、さらに好ましくは約11.9以下であり、特に好ましくは約11.7以下であり、最も好ましくは約11.5以下である。
【0115】
2価金属塩が塩化亜鉛、臭化亜鉛、フッ化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛またはグルコン酸亜鉛である場合、2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは、好ましくは約3.5以上であり、より好ましくは約3.7以上であり、最も好ましくは約3.9以上であり;2価金属塩を添加する直前の水性分散液のpHは好ましくは約9.5以下であり、さらに好ましくは約9.2以下であり、最も好ましくは約8.8以下である。
【0116】
この工程で添加される2価金属塩の量は任意に選択され得るが、α−リポ酸の濃度を100としたときに、モル比で、好ましくは約10%以上であり、より好ましくは約20%以上であり、さらに好ましくは約30%以上であり、特に好ましくは約40%以上であり、最も好ましくは約50%以上である。この工程で添加される2価金属塩の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、好ましくは約200%以下であり、より好ましくは約160%以下であり、さらに好ましくは約140%以下であり、特に好ましくは約120%以下であり、最も好ましくは約100%以下である。
【0117】
水性分散液に2価金属塩を添加して混合することにより、混合ミセル表面のマイナス電荷に2価の金属イオンが結合して、α−リポ酸のミセル同士の凝集および沈澱が防御されると考えられる。2価金属塩を添加した後の溶液をよく攪拌することが好ましい。攪拌は、ある程度の時間継続されることが好ましい。攪拌時間は、好ましくは約10分間以上であり、より好ましくは約20分間以上であり、さらに好ましくは約25分間以上であり、最も好ましくは約30分間以上である。攪拌時間に特に上限はない。例えば、約48時間以下、約24時間以下、約18時間以下、約12時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約50分間以下、約40分間以下、約35分間以下など、任意に設定され得る。
【0118】
(2d.アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加する工程)
次いで、この2価金属塩を添加した水性分散液に、アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物が添加される。
【0119】
アルカリ金属炭酸化物およびアルカリ金属リン酸化物(「2価陰イオンを持つ塩」ともいう)の量は任意に選択され得るが、添加した2価金属塩の量を1としたときの2価陰イオンを持つ塩の量は、モル比で、好ましくは約0.01以上であり、より好ましくは約0.02以上であり、さらに好ましくは約0.1以上である。添加した2価金属塩の量を1としたときの2価陰イオンを持つ塩の量は、モル比で、好ましくは約0.80以下であり、より好ましくは約0.70以下であり、さらに好ましくは約0.60以下である。特定の実施形態では、添加した2価金属塩の量を1としたときの2価陰イオンを持つ塩の量は、モル比で、例えば、約0.60以下、約0.50以下または約0.40以下であってもよい。添加した2価金属塩の量を1としたときの2価陰イオンを持つ塩の量は、モル比で、最も好ましくは0.2である。2価金属塩の量に対する2価陰イオンを持つ塩の量が少なすぎるとミセル表面のプラス電荷が中和されず、ミセル同士の凝集及び沈殿の防御効率が低下するという場合がある。2価金属塩の量に対する2価陰イオンを持つ塩の量が多すぎると沈澱が生じやすくなる場合がある。
【0120】
例えば、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムのモル比を1:1とした場合、一昼夜放置すると沈澱が生じるようになるが、1:0.01〜0.8、特に1:0.4までの場合は透明で、長時間の放置でも沈澱を生じない。濁ったり、沈澱が生じたりする場合は、形成された粒子の粒子径が大きすぎるからであり、粒子径が大きすぎると、皮膚透過性が悪くなり、注射する場合でも不都合が生じる。しかし、透明で沈澱も生じない場合は、形成される粒子の粒子径が小さくかつ分布が狭い。したがって皮膚透過性もよく注射にも不都合が生じないのである。
【0121】
このようにして、水性分散液中でα−リポ酸ナノ粒子が形成される。
【0122】
この工程で添加される2価陰イオンを持つ塩の量は任意に選択され得るが、α−リポ酸の濃度を100としたときに、モル比で、好ましくは約0.1%以上であり、より好ましくは約0.5%以上であり、さらに好ましくは約1.0%以上であり、特に好ましくは約1.5%以上であり、最も好ましくは約2.0%以上である。この工程で添加される2価陰イオンを持つ塩の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、好ましくは約80%以下であり、より好ましくは約74%以下であり、さらに好ましくは約68%以下であり、特に好ましくは約62%以下であり、最も好ましくは約60%以下である。特定の実施形態では、この工程で添加される2価陰イオンを持つ塩の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、例えば、約50%以下、約46%以下、約44%以下、約42%以下または約40%であってもよい。
【0123】
2価金属塩を添加した水性分散液に2価陰イオンを持つ塩を添加して混合することにより、ミセル表面に結合した2価金属イオンに2価陰イオンが結合すると考えられる。ミセル表面に結合した2価金属塩に2価陰イオンが結合することにより、ミセル表面の荷電が実質的に中和されると考えられる。ミセル表面では、2価金属イオンと2価陰イオンとが結合して多価金属無機塩を形成していると考えられる。このようにしてミセル表面に多価金属無機塩の被膜が形成されており、その結果、ミセル同士の結合による沈澱が防御されていると考えられる。
【0124】
アルカリ金属炭酸化物またはアルカリ金属リン酸化物を添加した後の溶液をよく攪拌することが好ましい。攪拌は、ある程度の時間継続されることが好ましい。攪拌時間は、好ましくは約10分間以上であり、より好ましくは約20分間以上であり、さらに好ましくは約25分間以上であり、最も好ましくは約30分間以上である。攪拌時間に特に上限はない。例えば、約48時間以下、約24時間以下、約18時間以下、約12時間以下、約6時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約50分間以下、約40分間以下、約35分間以下など、任意に設定され得る。
【0125】
(2e.他の工程)
上記の各工程を行うことにより、水性分散液中でα−リポ酸のナノ粒子が形成される。この水性分散液を必要に応じて乾燥させて粉末を得ることができる。乾燥は、当該分野で公知の任意の方法によって行われ得る。乾燥は、例えば、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライなどによって行われる。凍結乾燥が好ましい。本発明の方法に従って製造されたα−リポ酸ナノ粒子を含む粉末は、水に添加したときに容易に分散して透明な液を形成する。
【0126】
(3.α−リポ酸ナノ粒子)
本発明のα−リポ酸ナノ粒子は、α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む。
【0127】
本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の非イオン性界面活性剤の量は、α−リポ酸の濃度を100としたときに、重量比で、好ましくは約100%以上であり、より好ましくは約200%以上であり、さらに好ましくは約300%以上であり、特に好ましくは約400%以上であり、最も好ましくは約500%以上である。本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の非イオン性界面活性剤の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、重量比で、好ましくは約4000%以下であり、より好ましくは約3500%以下であり、さらに好ましくは約3000%以下であり、特に好ましくは約2500%以下であり、最も好ましくは約2000%以下である。
【0128】
本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンの量は、α−リポ酸の濃度を100としたときに、モル比で、好ましくは約10%以上であり、より好ましくは約20%以上であり、さらに好ましくは約30%以上であり、特に好ましくは約40%以上であり、最も好ましくは約50%以上である。本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンの量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、好ましくは約200%以下であり、より好ましくは約160%以下であり、さらに好ましくは約140%以下であり、特に好ましくは約120%以下であり、最も好ましくは約100%以下である。
【0129】
本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の炭酸イオンまたはリン酸イオン(2価陰イオンともいう)の量は、α−リポ酸の濃度を100としたときに、モル比で、好ましくは約0.1%以上であり、より好ましくは約0.5%以上であり、さらに好ましくは約1.0%以上であり、特に好ましくは約1.5%以上であり、最も好ましくは約2.0%以上である。本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の炭酸イオンまたはリン酸イオンの量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、好ましくは約80%以下であり、より好ましくは約74%以下であり、さらに好ましくは約68%以下であり、特に好ましくは約62%以下であり、最も好ましくは約60%以下である。特定の実施形態では、この工程で添加される2価陰イオンを持つ塩の量は、α−リポ酸の濃度を100%としたときに、モル比で、例えば、約50%以下、約46%以下、約44%以下、約42%以下または約40%であってもよい。
【0130】
本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンは、好ましくはカルシウムイオン、亜鉛イオンまたはマグネシウムイオンである。
【0131】
本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンの量を1としたときの2価陰イオンの量は、モル比で、好ましくは約0.01以上であり、より好ましくは約0.10以上であり、さらに好ましくは約0.20以上である。本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンの量を1としたときの2価陰イオンの量は、モル比で、好ましくは約0.80以下であり、より好ましくは約0.50以下であり、さらに好ましくは約0.40以下である。本発明のα−リポ酸ナノ粒子中の2価金属イオンの量を1としたときの2価陰イオンの量は、モル比で、最も好ましくは約0.2である。
【0132】
(4.α−リポ酸ナノ粒子の用途)
本発明のα−リポ酸ナノ粒子は、従来α−リポ酸が使用されてきた種々の用途に使用され得る。このような用途の例としては、皮膚外用剤、医薬品(注射液を含む)、口腔用組成物および食品が挙げられる。
【0133】
(4a.α−リポ酸ナノ粒子を含む皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、本発明のα−リポ酸ナノ粒子を含有する。
【0134】
本明細書において、用語「皮膚外用剤」とは皮膚に接触させることにより、所望の効果を達成する、皮膚に対して使用する製剤をいう。特に長時間継続的に皮膚に接触させる用途(例えば、約1時間以上継続的に皮膚に接触させる用途、または約5時間以上継続的に皮膚に接触させる用途)に本発明は有効である。
【0135】
皮膚外用剤の好ましい例は、化粧料である。
【0136】
化粧料の好ましい例としては、スキンケア化粧料が挙げられる。化粧料の具体的な例としては、化粧水、乳液、クリーム等のスキンケア化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅などの化粧品、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリーム、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリーム、ケーキ、などが挙げられる。特に、保湿効果が望まれる用途に本発明は有効である。例えば、スキンケア化粧料に本発明は有効である。本発明は、長時間皮膚に接触させる用途に特に有効であるが、洗顔料やシャンプーなどのように、短時間で使用した後に洗い流してしまうような用途においても本発明は有効である。
【0137】
上述したとおり、化粧品も化粧料に含まれる。化粧品としては、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け用化粧品、日焼け止め用化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、アイシャドウ化粧品、チーク、口唇化粧品、口腔化粧品などに分類され、そのいずれの用途にも本発明は有効である。
【0138】
また、皮膚外用剤は、医薬品または医薬部外品であってもよい。例えば、薬学的に有効な成分を含む軟膏にα−リポ酸ナノ粒子を配合することもできる。
【0139】
乳液、化粧水、クリーム、シャンプー、洗顔料などの化粧品および医薬部外品などの皮膚外用剤にα−リポ酸ナノ粒子を配合することにより、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などの予防および治療に有効な皮膚外用剤が得られる。本発明の皮膚外用剤はまた、肌の保湿を高め、乾燥肌、肌荒れ、アレルギー、アトピー性皮膚炎等の症状改善にも有効である。本発明の皮膚外用剤は、抗酸化能を発揮することにより、皮膚の新陳代謝を活発化する。さらに、本発明の皮膚外用剤は、紫外線等により発生したメラニン色素および活性酸素をすばやく除去することにより、美白効果を発揮し、そして皮膚の障害予防に有効である。したがって、α−リポ酸ナノ粒子を含む皮膚外用剤は、乾燥および紫外線による肌への悪影響を軽減し、シミ、ソバカス等の色素異常症を改善し、くすみ、シワ、たるみ、脱毛等の老化現象を遅延させるのにも有効である。
【0140】
本発明の皮膚外用剤の剤形の例としては、軟膏、増粘ゲル系、ローション、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、固形状、シート状、パウダー状、ジェル状、ムース状およびスプレー状が挙げられる。メーク落としパックなどのように、皮膚外用剤を布等に含浸させた形態の製品としてもよい。
【0141】
皮膚外用剤の剤形をローション、乳液、増粘ゲル系などとする場合、上記の成分の中でも特に、増粘剤のうち、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、カラギナン、ローカストビーンガム、ペクチン、クインスシード(マルメロ種子)抽出物、褐藻粉末などの植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、プルランなどの微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン、ヒアルロン酸などの動物系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシデンプンなどのデンプン類;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸塩、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース類;ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子;ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリルイミドなどのアクリル系高分子;グリチルリチン酸やアルギン酸などの有機系増粘剤;ベントナイト、ヘクトライト、ラボナイト、珪酸アルミニウムマグネシウム、無水珪酸などの無機系増粘剤;などからなる水溶性増粘剤と、アルコールのうち、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールとを配合することが効果を増大させる点で好ましい。
【0142】
本発明の皮膚外用剤は公知の方法により製造することができる。
【0143】
本明細書中では、α−リポ酸ナノ粒子を繊維に結合したり、繊維材料に混合したり、繊維に含浸させたり、または布帛の表面に塗布したりすることにより、その繊維または布帛から製造した衣類(例えば、肌着など)と皮膚とが接触したときにα−リポ酸ナノ粒子が経皮吸収されるような利用方法におけるα−リポ酸ナノ粒子を含む衣類も、皮膚外用剤の概念に含む。α−リポ酸ナノ粒子を繊維に結合することは、例えば、架橋などにより行われ得る。化合物を繊維に結合する方法、繊維材料に混合する方法、繊維に含浸させる方法、布帛表面に塗布する方法などは、当該分野で公知である。
【0144】
本発明の方法で合成されたα−リポ酸ナノ粒子を皮膚外用剤に添加するには特別な工程を必要とせず、皮膚外用剤の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を皮膚外用剤の種類および性状に応じて選択する。本発明の方法で合成された皮膚外用剤は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0145】
本発明の皮膚外用剤に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約0.002重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。本発明の皮膚外用剤に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
【0146】
(4b.α−リポ酸ナノ粒子を含む徐放性皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、徐放性製剤であり得る。徐放性製剤は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよいが、好ましくは液体である。
【0147】
本発明の方法で合成されたα−リポ酸ナノ粒子を徐放性製剤に添加するには特別な工程を必要とせず、徐放性製剤の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を徐放性製剤の種類および性状に応じて選択する。本発明の徐放性製剤は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0148】
本発明の徐放性製剤に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約0.002重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。本発明の徐放性製剤に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
【0149】
(4c.α−リポ酸ナノ粒子を含む口腔用組成物)
本発明の口腔用組成物は、本発明のα−リポ酸ナノ粒子を含有する。口腔用組成物は、任意の口腔用組成物であり得る。口腔用組成物は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよいが、好ましくは液体である。口腔用組成物の例としては、歯磨剤(例えば、練り歯磨、粉歯磨きなど)、歯用クリーム、含嗽剤(マウスウォッシュを含む)、マウススプレー、崩壊性フィルム、ゲル、トローチが挙げられる。
【0150】
本発明の方法で合成されたα−リポ酸ナノ粒子を口腔用組成物に添加するには特別な工程を必要とせず、口腔用組成物の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を口腔用組成物の種類および性状に応じて選択する。本発明の口腔用組成物は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0151】
本発明の口腔用組成物に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約0.002重量%以上であり、より好ましくは約0.01重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。本発明の口腔用組成物に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
【0152】
(4e.α−リポ酸ナノ粒子を含む食品)
本発明の食品は、本発明のα−リポ酸ナノ粒子を含有する。食品は、任意の食品であり得る。食品は、固体であっても、半固体であっても、液体であってもよいが、好ましくは液体である。食品は、好ましくは、健康食品であり、より好ましくは健康飲料であるが、これらに限定されない。健康食品は、その健康食品に含まれるα−リポ酸と同じ通常の用途に用いられ得る。健康食品の用途・効能の例としては、シワ、シミ、ソバカス、色素沈着などが挙げられる。
【0153】
食品は、例えば、冷菓(アイスクリーム、アイスミルク、氷菓など)、嗜好性飲料(例えば、清涼飲料、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、薬味飲料、アルコール性飲料、粉末ジュースなど)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等)、菓子類(洋菓子、和菓子、スナック菓子等、例えば、あんこ、羊羹、饅頭、チョコレート、ガム、ゼリー、寒天、杏仁豆腐、ケーキ、カステラ、クッキー、煎餅、錠菓等)、パン、餅、水産練製品(蒲鉾、ちくわ等)、畜肉加工品(ソーセージ、ハム等)、果実加工品(ジャム、マーマレード、果実ソース等)、調味料(ドレッシング、マヨネーズ、味噌等)、麺類(うどん、そば等)、漬物、および蓄肉、魚肉、果実の瓶詰、缶詰類などであり得る。
【0154】
本発明の方法で合成されたα−リポ酸ナノ粒子を食品に添加するには特別な工程を必要とせず、食品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を食品の種類および性状に応じて選択する。本発明の食品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0155】
本発明の食品に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。本発明の食品に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
【0156】
(4f.α−リポ酸ナノ粒子を含む医薬品)
本発明の医薬品は、本発明のα−リポ酸ナノ粒子を含有する。医薬品は、任意の医薬品であり得る。医薬品の形態は、任意であり得る。本発明の医薬品は、散剤、顆粒剤、錠剤(タブレット)、カプセル剤、丸剤、液剤、分散剤、軟膏、クリームなどであり得る。本発明の医薬品が経口投与用途に使用される場合、本発明の医薬品は好ましくは、タブレット、粉末製剤、内服液、カプセル剤などの形態である。本発明の医薬品が非経口投与用途に使用される場合、好ましくは、注射剤、軟膏またはクリーム剤であるが、これに限定されない。本発明の医薬品を用いることにより、α−リポ酸ナノ粒子が体内で徐々に分解することによって徐放効果が得られ得る。
【0157】
本発明の医薬品は、α−リポ酸を主成分とする通常の医薬品と同じ通常の用途に用いられ得る。本発明の医薬品の用途・効能の例としては、チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体労働時)、リー症候群(亜急性壊死性脳脊髄炎)、中毒性(ストレプトマイシン、カナマイシンによる)および騒音性(職業性)の内耳性難聴が挙げられる。本発明の医薬品はまた、重金属の解毒のための点滴剤または注射剤であってもよい。本発明の医薬品はまた、糖尿病の治療のための経口投与用の医薬品であり得る。
【0158】
本発明の方法で合成されたα−リポ酸ナノ粒子を医薬品に添加するには特別な工程を必要とせず、医薬品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を医薬品の種類および性状に応じて選択する。本発明の医薬品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0159】
本発明の医薬品に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約0.01重量%以上であり、より好ましくは約0.05重量%以上であり、さらに好ましくは約0.1重量%以上であり、特に好ましくは約0.5重量%以上であり、最も好ましくは約1.0重量%以上である。本発明の医薬品に含まれるα−リポ酸ナノ粒子の含有量は、α−リポ酸に換算して、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらに好ましくは約5重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。
【実施例】
【0160】
以下の実施例および比較例においては、試薬として以下のものを用いた:
α−リポ酸:和光純薬社製 α−リポ酸 特級(純度98%以上、粉末状);
ショ糖ラウリン酸エステル:三菱化学フーズ株式会社製リョートーシュガーエステルL−1695(HLB値約15;結合脂肪酸約99%;モノエステル約80%;ジ・トリ・ポリエステル約20%);
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ社製NIKKOL HCO−60(HLB約14;白色〜微黄色のペースト〜固体);
ポリオキシエチレンオクチドデシルエーテル:花王株式会社製エマルゲン2020G−HA(HLB値13.0);
POE(20)POP(8)セチルエーテル:日光ケミカルズ社製NIKKOL PBC44(HLB約12.5;白色〜微黄色の固体)
POE(20)ステアリルエーテル:日光ケミカルズ社製NIKKOL BS−20(HLB18.0;白色〜微黄色の固体);
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル:日油株式会社製ポリソルベート(80)(HLB約15;無色透明の液体);
MgCl:市販品、試薬グレード;
CaCl:市販品、試薬グレード;
グルコン酸亜鉛:市販品、試薬グレード;
NaCO:市販品、試薬グレード;
NaHPO:市販品、試薬グレード。
【0161】
(実施例1:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例1A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.2に調整した。pHが7.2になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをリョートーシュガーエステルL−1695 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、この溶液に0.5M MgClを20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。この透明な分散液を一昼夜(24時間)攪拌した後、分散液を1晩かけて凍結乾燥させてペーストを得た。このα−リポ酸−MgCOナノ粒子を他の試験に使用する際は、凍結乾燥後のペーストを蒸留水で所定の濃度に再分散させて使用した。この凍結乾燥後のペーストを蒸留水に添加したところ、よく再分散し、透明な分散液が得られた。これは、凍結乾燥後に対してα−リポ酸−MgCOナノ粒子が安定であることを示す。
【0162】
(実施例1B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例1Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含むペーストを得た。このα−リポ酸−MgCOナノ粒子を他の試験に使用する際は、凍結乾燥後のペーストを蒸留水で所定の濃度に再分散させて使用した。この凍結乾燥後のペーストを蒸留水に添加したところ、よく再分散し、透明な分散液が得られた。これは、凍結乾燥後に対してα−リポ酸−MgCOナノ粒子が安定であることを示す。
【0163】
(実施例2:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例2A)
α−リポ酸 0.25gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.1に調整した。pHが7.1になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをリョートーシュガーエステルL−1695 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、この溶液に0.5M MgClを20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。この透明な分散液を一昼夜(24時間)攪拌した後、分散液を1晩かけて凍結乾燥させてペーストを得た。このα−リポ酸−MgCOナノ粒子を他の試験に使用する際は、凍結乾燥後のペーストを蒸留水で所定の濃度に再分散させて使用した。この凍結乾燥後のペーストを蒸留水に添加したところ、よく再分散し、透明な分散液が得られた。これは、凍結乾燥に対してα−リポ酸−MgCOナノ粒子が安定であることを示す。
【0164】
(実施例2B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例2Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含むペーストを得た。このα−リポ酸−MgCOナノ粒子を他の試験に使用する際は、凍結乾燥後のペーストを蒸留水で所定の濃度に再分散させて使用した。この凍結乾燥後のペーストを蒸留水に添加したところ、よく再分散し、透明な分散液が得られた。これは、凍結乾燥に対してα−リポ酸−MgCOナノ粒子が安定であることを示す。
【0165】
(比較例1:α−リポ酸分散液の作製)
(比較例1A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.2に調整した。pHが約7.2になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをリョートーシュガーエステルL−1695 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。この分散液を一昼夜(24時間)攪拌した後、分散液を1晩かけて凍結乾燥させてペーストを得た。
【0166】
(比較例1B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は比較例1Aと同じ手順でペーストを得た。
【0167】
(測定例1:粒子径の測定)
実施例1Aで使用した作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子のペーストと、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないで作製した比較例1Aのα−リポ酸ナノ粒子のペーストそれぞれ0.3gを3mLの水に添加し、3時間程度4℃で放置した後、1分間攪拌することによって分散させ、光散乱光度計(大塚電子 ELS−710TY)によって粒子径を測定した。その結果、実施例1Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の粒子径が約10nmであり、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないで作製した比較例1Aのα−リポ酸ナノ粒子の粒子径が約760nmであることが確認できた。蒸留水を使用した場合もイオン交換水を使用した場合も粒子径はほぼ同じであった。実施例1Aで蒸留水を使用して作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の粒子径分布を(大塚電子 ELS−710TY)によって測定した結果を、図1に示し、比較例1Aで蒸留水を使用して作製したα−リポ酸ナノ粒子の粒子径分布を光散乱光度計(大塚電子 ELS−710TY)によって測定した結果を図2に示す。
【0168】
(実施例3:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例3A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.0に調整した。pHが7.0になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、この溶液に0.5M MgClを20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0169】
(実施例3B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例3Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0170】
(実施例4:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例4A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.3に調整した。pHが7.3になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として50μL採取し、これをエマルゲン2020G−HA 0.02gを含む蒸留水0.95mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、この溶液に0.5M MgClを10μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを5μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0171】
(実施例4B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例4Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0172】
(実施例5:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例5A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.1に調整した。pHが7.1になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として50μL採取し、これをHCO−60 0.05gを含む蒸留水0.95mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClまたは0.1M NaOHでこの溶液のpHを6.6に調整し、その後、0.5M CaClを10μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを10μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。この透明な分散液を一昼夜(24時間)攪拌した後、分散液を1晩かけて凍結乾燥し、ペーストとした。
【0173】
(実施例5B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例5Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含むペーストを得た。
【0174】
(実施例6:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例6A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを7.0に調整した。pHが7.0になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として20μL採取し、これをエマルゲン2020G−HA 0.02gを含む蒸留水0.98mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClまたは0.1M NaOHでこの溶液のpHを6.2に調整し、その後、0.5M CaClを5μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを5μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0175】
(実施例6B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例6Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0176】
(実施例7:α−リポ酸−CaPOナノ粒子の作製)
(実施例7A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として20μL採取し、これをHCO−60 0.02gを含む蒸留水0.98mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClまたは0.1M NaOHでこの溶液のpHを6.4に調整し、その後、0.5M CaClを5μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaHPOを5μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaPOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。この透明な分散液を一昼夜(24時間)攪拌した後、分散液を1晩かけて凍結乾燥し、ペーストとした。
【0177】
(実施例7B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例7Aと同じ手順でα−リポ酸−CaPOナノ粒子を含むペーストを得た。
【0178】
(実施例8:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例8A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に1M NaOHを加えて混合液のpHを11.7に調整した。pHが11.7になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをPOE(20)POP(8)セチルエーテル(PBC44)0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClまたは0.1M NaOHでこの溶液のpHを11.0に調整し、その後、0.5M CaClを40μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを4μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0179】
(実施例8B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例8Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0180】
(実施例9:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例9A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に1M NaOHを加えて混合液のpHを11.5に調整した。pHが11.5になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mL)にメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをPOE(20)ステアリルエーテル 0.02gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClまたは0.1M NaOHでこの溶液のpHを10.8に調整し、その後、0.5M CaClを40μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを4μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0181】
(実施例9B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例9Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0182】
(実施例10:α−リポ酸−ZnCOナノ粒子の作製)
(実施例10A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.8に調整した。pHが6.8になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを5.0に調整し、その後、5% グルコン酸亜鉛溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0183】
(実施例10B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例10Aと同じ手順でα−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0184】
(実施例11:α−リポ酸−ZnCOナノ粒子の作製)
(実施例11A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを5.0に調整し、その後、0.5M 酢酸亜鉛溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0185】
(実施例11B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例11Aと同じ手順でα−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0186】
(実施例12:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例12A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをリョートーシュガーエステルL−1695 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを6.8に調整し、その後、0.5M 塩化マグネシウム溶液を40μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを80μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0187】
(実施例12B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例12Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0188】
(実施例13:α−リポ酸−ZnCOナノ粒子の作製)
(実施例13A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを3.9に調整し、その後、0.5M 酢酸亜鉛溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0189】
(実施例13B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例13Aと同じ手順でα−リポ酸−ZnCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0190】
(実施例14:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例14A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを10.9に調整した。pHが10.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを6.4に調整し、その後、0.5M 塩化カルシウム溶液を40μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを40μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0191】
(実施例14B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例14Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0192】
(実施例15:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例15A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを8.7に調整した。pHが8.7になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを6.3に調整し、その後、0.5M 塩化カルシウム溶液を40μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを40μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0193】
(実施例15B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例15Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0194】
(実施例16:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例16A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを6.4に調整し、その後、0.5M 塩化カルシウム溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを40μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0195】
(実施例16B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例16Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0196】
(実施例17:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例17A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを6.9に調整した。pHが6.9になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをエマルゲン2020G−HA 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを6.7に調整し、その後、0.5M 塩化カルシウム溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを40μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0197】
(実施例17B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例17Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0198】
(実施例18:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例18A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを11.8に調整した。pHが11.8になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをHCO−60 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを10.9に調整し、その後、0.5M CaClを20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0199】
(実施例18B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例18Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0200】
(実施例19:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例19A)
α−リポ酸 0.5gを9mLのイオン交換水に添加して混合し、この混合液に5M NaOHを加えて混合液のpHを9.1に調整した。pHが9.1になると、α−リポ酸の粉末が消滅し、溶液のような透明な外観になった。この溶液をイオン交換水で10mLにメスアップした。この溶液を母液として100μL採取し、これをリョートーシュガーエステルL−1695 0.1gを含む蒸留水0.9mLに加え、よく攪拌した。攪拌を約30分間行った後、0.1M HClでこの溶液のpHを8.5に調整し、その後、0.5M MgCl溶液を20μL加えて攪拌した。攪拌を30分間行った後、この溶液に0.1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌した。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0201】
(実施例19B)
母液の調製のためにイオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例19Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0202】
(実施例20:α−リポ酸−MgCO3ナノ粒子の作製)
(実施例20A)
α−リポ酸0.05gに0.28gの1M NaOHを添加して混合し、完全に溶解するまで攪拌した。そこに注射用水(大塚製薬製 日本薬局方注射用水)を9.328ml添加し混合した。この混合液にPOE(20)ステアリルエーテルを0.3g加えて30分以上攪拌した後、5N HClでこの溶液のpHを7.0に調整した。そこに2.5M MgClを40μL添加しよく攪拌した後、1M NaCOを2μL加えてさらに攪拌し、注射用水を加えて10mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0203】
(実施例20B)
注射用水の代わりにイオン交換水を用いたこと以外は実施例20Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0204】
(実施例21:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例21A)
α−リポ酸0.05gに950μLの0.26M NaOHを添加して混合し、完全に溶解するまで攪拌した。そこにPOE(20)ステアリルエーテルを0.25g加えよく攪拌した後、そこにイオン交換水を3.626ml添加して30分以上攪拌した。5N HClでこの溶液のpHを5.5に調整した。そこに2.5M MgClを48μL添加してよく攪拌した後、1M NaCOを48μL加えてさらに攪拌し、イオン交換水を加えて5mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0205】
(実施例21B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例21Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0206】
(比較例22−1:α−リポ酸分散液の作製)
(比較例22−1A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを6.8に調整した後、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸分散液が得られた。
【0207】
(比較例22−1B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は比較例22−1Aと同じ手順でα−リポ酸分散液を得た。
【0208】
(比較例22−2:α−リポ酸分散液の作製)
(比較例22−2A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを7.0に調整した後、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸分散液が得られた。
【0209】
(比較例22−2B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は比較例22−2Aと同じ手順でα−リポ酸分散液を得た。
【0210】
(実施例22:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例22A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.96ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.7に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0211】
(実施例22B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例22Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0212】
(実施例23:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例23A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.96mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.96ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0213】
(実施例23B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例23Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0214】
(実施例24:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例24A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.7に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0215】
(実施例24B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例24Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0216】
(実施例25:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例25A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)3.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.3に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0217】
(実施例25B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例25Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0218】
(実施例26:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例26A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)3.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.2に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.72ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.9に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0219】
(実施例26B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例26Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0220】
(実施例27:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例27A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0221】
(実施例27B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例27Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0222】
(実施例28:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例28A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)4.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0223】
(実施例28B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例28Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0224】
(実施例29:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例29A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.96mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を1.44ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0225】
(実施例29B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例29Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0226】
(実施例30:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例30A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.6に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0227】
(実施例30B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例30Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0228】
(実施例31:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例31A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.9に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0229】
(実施例31B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例31Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0230】
(実施例32:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例32A)
あらかじめ加温して融解したエマルゲン2020G−HA 7.0gへα−リポ酸粉末1.0gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約70mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0231】
(実施例32B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例32Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0232】
(実施例33:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例33A)
あらかじめ加温して融解したポリソルベート(80)7.0gへα−リポ酸粉末0.25gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.12mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.12ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.5に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0233】
(実施例33B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例33Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0234】
(実施例34:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例34A)
あらかじめ加温して融解したポリソルベート(80)7.0gへα−リポ酸粉末0.25gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.12ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0235】
(実施例34B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例34Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0236】
(実施例35:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例35A)
あらかじめ加温して融解したポリソルベート(80)7.0gへα−リポ酸粉末0.25gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.5に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0237】
(実施例35B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例35Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0238】
(実施例36:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例36A)
あらかじめ加温して融解したポリソルベート(80)7.0gへα−リポ酸粉末0.25gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.9に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0239】
(実施例36B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例36Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0240】
(実施例37:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例37A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(1000)1.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.6に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0241】
(実施例37B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例37Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0242】
(実施例38:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例38A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(4000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0243】
(実施例38B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例38Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0244】
(実施例39:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例39A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(4000)2.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.5に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0245】
(実施例39B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例39Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0246】
(実施例40:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例40A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(1000)2.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlの蒸留水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.4に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.9に調整し、さらに蒸留水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0247】
(実施例40B)
蒸留水の代わりに同量のイオン交換水を用いたこと以外は実施例40Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0248】
(実施例41:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例41A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(1000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.4に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0249】
(実施例41B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例41Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0250】
(実施例42:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例42A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル4.0gとポリエチレングリコール(4000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0251】
(実施例42B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例42Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0252】
(実施例43:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例43A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gとポリエチレングリコール(1000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.48ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.7に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0253】
(実施例43B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例43Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0254】
(実施例44:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例44A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gとポリエチレングリコール(1000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.6に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.72ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0255】
(実施例44B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例44Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0256】
(実施例45:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例45A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gとポリエチレングリコール(1000)1.5gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。この混合物に約35mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、2.5M MgCl水溶液0.48mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.72ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.6に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0257】
(実施例45B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例45Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0258】
(実施例46:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例46A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。ここにポリエチレングリコール(1000)10gをイオン交換水に溶解して100mlとした溶液を15ml添加して混合し、さらに約20mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.5に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.7に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0259】
(実施例46B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例46Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0260】
(実施例47:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例47A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。ここにポリエチレングリコール(4000)10gをイオン交換水に溶解して100mlとした溶液を15ml添加して混合し、さらに約20mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.3に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.6に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0261】
(実施例47B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例47Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0262】
(実施例48:α−リポ酸−CaCOナノ粒子の作製)
(実施例48A)
あらかじめ加温して融解したポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル5.0gへα−リポ酸粉末0.5gを加えて混合し、α−リポ酸を溶解した。ここにポリエチレングリコール(6000)10gをイオン交換水に溶解して100mlとした溶液を15ml添加して混合し、さらに約20mlのイオン交換水を加えて30分以上混合し、5M NaOHでpHを4.4に調整した。ここに、5M CaCl水溶液0.24mlを添加して混合した後、1M NaCO水溶液を0.24ml加えてさらに混合した。この溶液のpHを測定し、1M NaOH又は1M HClでpH6.8に調整し、さらにイオン交換水を加えて50mlとした。これにより、α−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0263】
(実施例48B)
イオン交換水の代わりに同量の蒸留水を用いたこと以外は実施例48Aと同じ手順でα−リポ酸−CaCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0264】
(実施例49:高濃度のα−リポ酸−MgCOナノ粒子の作製)
(実施例49A)
α−リポ酸0.15gに2.85mlの0.26M NaOHを添加して混合し、完全に溶解するまで攪拌した。そこにPOE(20)ステアリルエーテルを0.75g加えよく攪拌した後、そこに蒸留水を0.5ml添加して30分以上攪拌した。5N HClでこの溶液のpHを5.5に調整した。そこに2.5M MgClを144μL添加して12時間以上攪拌した後、1M NaCOを144μL加えてさらに12時間以上攪拌した。そこに蒸留水を加えて5.0mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0265】
(実施例49B)
蒸留水の代わりにイオン交換水を用いたこと以外は実施例49Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0266】
(実施例50:α−リポ酸−MgCO3ナノ粒子の作製)
(実施例50A)
α−リポ酸0.05gに0.28gの1M NaOHを添加して混合し、完全に溶解するまで攪拌した。そこに注射用水(大塚製薬製 日本薬局方注射用水)を9.35ml添加し混合した。この混合液にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO−60)を0.3g加えて30分以上攪拌した後、5N HClでこの溶液のpHを7.0に調整した。そこに2.5M MgClを40μL添加しよく攪拌した後、1M NaCOを20μL加えてさらに攪拌し、注射用水を加えて10mlとした。これによりα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液が得られた。
【0267】
(実施例50B)
注射用水の代わりにイオン交換水を用いたこと以外は実施例50Aと同じ手順でα−リポ酸−MgCOナノ粒子を含む透明な分散液を得た。
【0268】
これらの実施例1A〜50Bおよび比較例1A、1B、22−1A〜22−2Bの結果を以下の表1−1から表1−3にまとめる。なお、実施例1A〜21B及び49A〜50Bでは、α−リポ酸含有水性分散液を調製した後に非イオン性界面活性剤を添加する手順を用い、実施例22A〜48Bでは、α−リポ酸を非イオン性界面活性剤に溶かした後に水を添加する手順を用いた。
【0269】
【表1−1】

【0270】
【表1−2】

【0271】
【表1−3】

【0272】
(試験例1:製剤の熱安定性試験)
実施例1Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子と、比較例1Aで作製した、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子をそれぞれ60℃にて加温し、加熱1時間後および加熱3時間後のサンプル中のα−リポ酸の量をHPLCで分析した。対照として試薬のα−リポ酸を用いた。加熱後のα−リポ酸の量を加熱前のα−リポ酸の量で除算して100を乗算することにより、α−リポ酸の残存率を計算した。α−リポ酸の残存率の結果を以下の表2および図3に示す。△は対照である試薬のα−リポ酸の結果であり、■は比較例1のα−リポ酸分散液の結果であり、□は実施例1Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子の結果である。
【0273】
【表2】

その結果、加温3時間後に試薬のα−リポ酸は55%程度減少したのに対し、実施例1Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子と、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子ではα−リポ酸の実質的な減少が見られなかった。コントロールとの比較からも明らかなように、本発明の製剤は、α−リポ酸の安定性が極めて優れているものであることが理解される。
【0274】
(試験例2:硫黄臭の改善)
実施例1Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の凍結乾燥後のペーストと、比較例1Aで作製した、塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子の凍結乾燥後のペーストをそれぞれ、α−リポ酸が最終濃度0.1%となるように蒸留水に分散させ、透明な樹脂製の試験管に入れ、太陽光の届く室内で放置した。対照として、試薬のα−リポ酸にアルカリ(5M NaOH)を加えてpHを7〜7.5にすることによってα−リポ酸を水に溶解した水性分散液(α−リポ酸の最終濃度0.1%)も同様に放置した。
【0275】
その結果、2週間経過後、対照溶液および比較例1Aで作製した塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子の分散液からは特有の硫黄臭が強く感じられた。その程度は、対照としたα-リポ酸を水に溶解した水性分散液と同程度であった。それに対して、α−リポ酸−MgCOナノ粒子分散液では臭いは感じられなかった。
【0276】
(試験例3:有色モルモットにおけるα−リポ酸−MgCOナノ粒子の紫外線惹起色素沈着抑制効果試験)
メラニン色素産生細胞を持つ有色モルモット(Weiser Maples、5週齢、雄)の背部を2cm×2cmの面積で毛剃りし、実施例3Aにおいて得られたα−リポ酸−MgCOナノ粒子分散液(α−リポ酸を350μg含有する)を一日あたり80mgずつ1日1回、5日/週(月曜日〜金曜日)、塗布した。塗布後、塗布開始日(月曜日)および、2、4、7日後(水曜日、金曜日、次週の月曜日)にそれぞれUV−Aを8J/cm、UV−Bを12mJ/cm照射した。モルモット皮膚でのメラニン産生の指標として色差計を用いて皮膚の明度(L*値)を測定し、明度の減少量を黒色化の程度の指標とした。明度はL*値が大きいほど、色が白いことを示す。メラニン産生による試験開始日からの明度の変化量(ΔL*値)の絶対値を比較した。α−リポ酸を含まない水のみを塗布したモルモットをコントロール区として比較を行った。
【0277】
その結果、α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区は試験の全期間を通じてコントロール区よりも明度の減少が少なく、すなわち、皮膚の黒色化が抑制されていた。試験終了時のΔL*値の絶対値はコントロール区が8.3であったのに対し、α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区は6.6であった。
【0278】
以下の表3および図4に、0日後(月曜日)、4日後(金曜日)、7日後(月曜日)および9日後(水曜日)に測定したΔL*値の絶対値を示す。以上の結果により、α−リポ酸ナノ粒子が皮膚に吸収され、紫外線により惹起される色素沈着を抑制できることが確認された。
【0279】
【表3】

【0280】
(試験例4:光老化モデルマウスの皮膚水分、バリア機能およびシワの回復におけるα−リポ酸−MgCOナノ粒子の効果確認試験)
ヘアレスマウス(Hos:HR−1、7週齢、雄)の背部に一日あたり55mJ/cmのUV−Bを週5日(すなわち、月曜日〜金曜日のみ照射し、土曜日および日曜日には照射しなかった)、2ヶ月間照射し、光老化モデルマウスを作製した。このマウスに(実験3Aにより得られたα−リポ酸−MgCOナノ粒子分散液(α−リポ酸を350μg含有する)を一日あたり80mgずつ1日1回、週5日(すなわち、月曜日〜金曜日のみ塗布し、土曜日および日曜日には塗布しなかった)、1ヶ月間塗布した。塗布開始時と塗布終了時のマウス皮膚について目視による皮膚状態観察および、角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL)の測定を行い、シワおよび角層水分、皮膚バリア機能の状態をチェックした。
【0281】
その結果、以下の表4および図5に示すように、α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区は塗布開始時よりも角層水分量の回復が認められた。一方、コントロール区(α−リポ酸を含まない水のみを同様に塗布)では角層水分量の回復は認められなかった。試験終了時の角層水分量はα−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区が18.2(μs)であったのに対し、コントロール区で5.6(μs)であった。また、試験最終日のTEWL値はα−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区が15.7(g/h・m)であったのに対し、コントロール区では32.6(g/h・m)であり、α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布により皮膚のバリア機能が回復していることが確認できた。また、シワのレプリカ写真を図6に示す。コントロール区は試験開始時とシワの状態に変化は認められなかったがα−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布区では明らかなシワの減少が認められた。以上の結果により、α−リポ酸ナノ粒子が皮膚に吸収され、光老化した皮膚の状態を健全な状態に戻す効果が確認できた。
【0282】
【表4】

【0283】
(測定例2:粒子径の測定)
実施例22Aで作製したα−リポ酸−CaCOナノ粒子の溶液を、光散乱光度計(大塚電子 FPAR1000)によって粒子径を測定した。その結果、実施例22Aで作製したα−リポ酸−CaCOナノ粒子の粒子径が約20nmであることが確認できた。蒸留水を使用した場合もイオン交換水を使用した場合も粒子径はほぼ同じであった。実施例22Aで蒸留水を使用して作製したα−リポ酸−CaCOナノ粒子の粒子径分布を(大塚電子 FPAR1000)によって測定した結果を、図7に示す。
【0284】
(測定例3:粒子径の測定)
実施例29Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の溶液を、光散乱光度計(大塚電子 FPAR1000)によって粒子径を測定した。溶液が完全に透明であること及び粒子径測定の結果から、実施例29Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子は平均粒子径が約12nmである一次粒子が平均粒径200nmおよび1700nmの、弱いクラスターを形成していることが確認できた。蒸留水を使用した場合もイオン交換水を使用した場合も粒子径はほぼ同じであった。実施例29Aでイオン交換水を使用して作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の粒子径分布を(大塚電子 FPAR1000)によって測定した結果を、図8に示す。
【0285】
(測定例4:粒子径の測定)
実施例24A、24B、25A、25B、33A、33B、36Aおよび36Bで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子の溶液のそれぞれについても、光散乱光度計(大塚電子 FPAR1000)によって粒子径を測定した。
【0286】
測定例1〜4で測定した各α−リポ酸ナノ粒子の平均粒子径(nm)を以下の表5にまとめる。
【0287】
【表5】

【0288】
(試験例5:製剤の熱安定性試験)
実施例22Aで作製したα−リポ酸−CaCOナノ粒子と、比較例22−1Aで作製したα−リポ酸分散液(塩化カルシウムも炭酸ナトリウムも添加しないもの)をそれぞれ60℃にて保存(加熱保存)し、3週間まで1週間ごとに溶液中のα-リポ酸の量をHPLCで分析した。加熱保存後のα−リポ酸の量を加熱前のα−リポ酸の量で除算して100を乗算することにより、α−リポ酸の残存率を計算した。α−リポ酸の残存率の結果を以下の表6および図9に示す。■は比較例22−1Aのα−リポ酸分散液の結果であり、□は実施例22Aのα−リポ酸−CaCOナノ粒子の結果である。
【0289】
【表6】

その結果、60℃で3週間保存後に比較例22−1Aで作製した塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子では約18%の現象が見られたが、実施例22Aのα−リポ酸−CaCOナノ粒子ではα−リポ酸の減少が約11%に抑えられていた。このことから、本発明の製剤は、α−リポ酸の安定性が極めて優れているものであることが理解される。
【0290】
(試験例6:製剤の熱安定性試験)
実施例29Aで作製したα−リポ酸−MgCOナノ粒子と、比較例22−2Aで作製した塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子をそれぞれ60℃にて保存し、3週間まで1週間ごとに溶液中のα-リポ酸の量をHPLCで分析した。加熱保存後のα−リポ酸の量を加熱前のα−リポ酸の量で除算して100を乗算することにより、α−リポ酸の残存率を計算した。α−リポ酸の残存率の結果を以下の表7および図10に示す。■は比較例22−2Aのα−リポ酸ナノ粒子の結果であり、△は実施例29Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子の結果である。
【0291】
【表7】

その結果、60℃で3週間保存後に比較例22−2Aで作製した塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムを添加しないα−リポ酸ナノ粒子では約13%の減少が見られたが、実施例29Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子ではα−リポ酸の減少が約8%に抑えられていた。このことから、本発明の製剤は、α−リポ酸の安定性が極めて優れているものであることが理解される。
【0292】
(試験例7:脂肪前駆細胞の分化に関するα−リポ酸−MgCOナノ粒子の機能試験)
直径3.5cmのプラスチックシャーレにD−MEM培地(D−MEM培地に終濃度10% FCS、100ユニット/mlのペニシリン(penicillin)と100μg/mlのストレプトマイシン(streptomycin)になるように添加したもの)を1.5ml添加した。そこに脂肪前駆細胞である3T3−L1細胞を5.0×10個接種し、3日間前培養を行いコンフルエント状態にした。その後、培地を脂肪細胞分化誘導培地(D−MEMに終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシン、5μg/mlのインスリン、0.25μMのデキサメタソン(dexamethasone)、0.5mMのイソブチル−メチルキサンチン(isobutyl−methylxanthine)(IBMX)になるように添加したもの)3mlに交換した。さらに2日後、同じ組成の脂肪細胞分化誘導培地3mlと交換し、そして2日間培養し、合計して4日間脂肪細胞分化誘導培地で培養した。この培養の際に、脂肪細胞分化誘導培地にはα−リポ酸溶液あるいは実施例20Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子溶液を、α−リポ酸濃度で0、100、250または500μMになるように添加した。培養は全て5%CO、37°Cの条件で行った。
【0293】
こうして得られた培養細胞の蓄積脂肪量を計測した。PBS緩衝液1mlで洗浄後、中性ホルマリンで5分間固定を行った。さらに70%エタノール溶液および蒸留水で洗浄を行った。続いてオイルレッドO溶液(飽和オイルレッドO/イソプロパノール溶液と蒸留水を6:4の比率で混合し、濾過した染色液)を1ml添加し15分間放置した。染色液を除去し、70%エタノール溶液で色素が拡散しなくなるまで洗浄を行った後、0.75mlの4%ノニデットP−40/イソプロパノール溶液を添加し、30分間攪拌し、色素を溶出させた。この溶液を全量回収し、吸光度計を用いて520nmの波長の吸光度を測定した。
【0294】
その結果、α−リポ酸の添加により脂肪の蓄積が減少する結果となったのに対し、α−リポ酸−MgCOナノ粒子添加では脂肪を細胞内蓄積させる作用が認められた(図11)。すなわちα−リポ酸−MgCOナノ粒子には効率よく未成熟脂肪細胞内に糖を取り込ませる作用があることが示唆された。上記試験において糖の取り込みを促進したことは、α−リポ酸ナノ粒子にはα−リポ酸単体では認められなかった血糖値を改善する効果が期待でき、糖尿病治療薬としての有用性が示唆された。
【0295】
(試験例8:成熟脂肪細胞の脱分化に関するα−リポ酸−MgCOナノ粒子の機能試験)
直径3.5cmのプラスチックシャーレにD−MEM培地(D−MEM培地に終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンになるように添加したもの)を1.5ml添加した。そこに脂肪前駆細胞である3T3−L1細胞を5.0×10個接種し、3日間前培養を行いコンフルエント状態にした。その後、培地を脂肪細胞分化誘導培地(D−MEM培地に終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシン、5μg/mlのインスリン、0.25μMのデキサメタゾン、0.5mMのイソブチル−メチルキサンチンになるように添加したもの)3mlに交換して4日間培養し、脂肪細胞への分化を誘導した。さらにその後、脂肪細胞成熟化培地(D−MEM培地に終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシン、5μg/mlのインスリンになるように添加したもの)に交換し、7日間培養した。その後、試験培地に交換して更に4日間培養した。試験培地には脂肪細胞成熟化培地にα−リポ酸溶液あるいは実施例20Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子溶液をα−リポ酸濃度で0、100、250または500μMになるように添加した。それぞれの培地は培養2日毎に同じものに交換した。培養は全て5%CO、37°Cの条件で行った。
【0296】
こうして得られた培養細胞の蓄積脂肪量を計測した。PBS緩衝液1mlで洗浄後、中性ホルマリンで5分間固定を行った。さらに70%エタノール溶液および蒸留水で洗浄を行った。そこにオイルレッドO溶液を1ml添加し15分間放置した。染色後、70%エタノール溶液で色素が拡散しなくなるまで洗浄を行った。ここに0.75mlの4%ノニデットP−40/イソプロパノール溶液を添加し、30分間攪拌し、色素を溶出させた。この溶液を全量回収し、吸光度計を用いて520nmの波長の吸光度を測定した。
【0297】
その結果、α−リポ酸添加区では無添加区と脂肪蓄積量がほとんど変わらなかったのに対し、α−リポ酸−MgCOナノ粒子添加区では脂肪を細胞内へ蓄積させる作用が認められた(図12)。すなわち試験例7同様、α−リポ酸−MgCOナノ粒子には効率よく成熟脂肪細胞内に糖を取り込ませる作用があることを示唆している。特に脂肪細胞に対してはどのような分化段階にあっても脂肪を蓄積させる作用が確認された。以上のことからα−リポ酸ナノ粒子にはα−リポ酸単体では認められなかった高い血糖値改善効果が期待でき、糖尿病治療薬としての有用性が示唆された。
【0298】
(試験例9:α−リポ酸−MgCOナノ粒子の培養液中での安定性とその細胞局在解析)
試験例7と同様の方法で培養を行った。α−リポ酸および実施例20Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子はそれぞれ終濃度250μMで添加した。この細胞の培養上清を全量回収し培養上清画分とした。さらに細胞をPBS緩衝液で洗浄後、常法にて回収・洗浄を行い遠心処理で沈殿させ、500μLの精製水で懸濁し超音波処理にて破砕した。この破砕液を毎分15000回転、4℃で15分間遠心し、上清を回収し、これを細胞破砕液画分とした。各画分の残存α−リポ酸濃度を高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いて定量した。
【0299】
その結果、細胞破砕液画分では濃度差が確認されなかった(図13)。しかし、培養上清画分においてはα−リポ酸−MgCOナノ粒子添加実験群において高いα−リポ酸残存が確認された(図14)。以上の結果から、α−リポ酸−MgCOナノ粒子は培養液中でも非常に安定であることが確認された。また、試験例7において観察されたα−リポ酸とα−リポ酸−MgCOナノ粒子の作用の違いは、細胞内α−リポ酸濃度の違いによるものではなく、α−リポ酸−MgCOナノ粒子の持つ物理化学的な性質の違いによるものであることが示唆された。
【0300】
(試験例10:α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布による皺モデルマウス抗皺効果試験)
ヘアレスマウス(Hr/kud、9週齢、雄)に紫外線を照射し皺モデルマウスを作製した。この皺モデルの作製においては、紫外線を13週間(5日間/週、月曜から金曜まで)にわたって、UVA、UVBがそれぞれ合計148.99J/cm、3.49J/cmの照射量になるように照射した。皺モデルを作製後、マウス背部に0.01%α−リポ酸を含有する市販品化粧品と実施例21Aの0.01%α−リポ酸−MgCOナノ粒子含有水性分散液をそれぞれ30mg/cm/dayの量で5回/週(月曜から金曜まで)で塗布し、これを6週間行った。対照区としては何も製剤を塗布せず6週間飼育した無塗布群およびUV照射による皺形成を行わずに同時に飼育した無処置区を用いた。作製した皺モデルはレプリカ法によって評価し、図15に示す独自に設定した点数化基準を元に、目視によって皺の程度を比較し、皺モデルマウスの点数化を行った。また、マウス背部皮膚のパラフィン包埋切片を作製し、ヒアルロン酸の染色をすることでその量を比較した。ヒアルロン酸の染色は、ビオチンで標識化したヒアルロン酸結合タンパク質(ビオチン標識HABP、生化学工業)をプローブとして用い、ストレプトアビジン標識した蛍光色素(Cy3ストレプトアビジン(Cy3 streptavidin)、Jackson ImmunoResearch LABORATORIES)により検出する方法を用いた。
【0301】
その結果、6週間塗布したマウス背部のレプリカ解析から0.01%α−リポ酸含有市販品と比較して0.01%α−リポ酸−MgCOナノ粒子含有水性分散液塗布群においてより高い皺の改善効果が観察された(図16)。また点数化においても、皺改善効果が確認された(表8)。
【0302】
また、同マウス皮膚切片のヒアルロン酸染色を行った結果、0.01%α−リポ酸含有市販品や無塗布群ではヒアルロン酸の減少が観察されたが、0.01%α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布群において無処置群と同程度のヒアルロン酸の蓄積が観察された(図17)。真皮におけるヒアルロン酸減少が皺の形成に関与していることが知られている。以上の結果から、α−リポ酸−MgCOナノ粒子は紫外線により障害を受けた真皮層において細胞外基質であるヒアルロン酸の量を増加させる作用があり、これらの効果により皺が改善されたことが確認された。
【0303】
【表8】

【0304】
(試験例11:α−リポ酸−MgCOナノ粒子塗布によるヒト皺改善効果試験)
30代男性被験者(被験者1)に一方の半顔には0.01%α−リポ酸含有水性分散液を、他方の半顔には実施例21Aの0.01%α−リポ酸−MgCOナノ粒子含有水性分散液を、1日2回、連日、ムラなく塗布してもらった。また、50代女性被験者(被験者2)には半顔だけに実施例21Aの0.01%α−リポ酸−MgCOナノ粒子含有水性分散液を連日ムラなく塗布してもらい、半顔は無塗布とした。それぞれの試験期間は16週間行い、皺の評価は試験前と16週間後に眼尻からレプリカを作製して行った。
【0305】
その結果、どちらの被験者とも0.01%α−リポ酸含有水性分散液を塗布した側が0.01%α−リポ酸含有水性分散液や無塗布であった反対側と比較して皺の改善が観察された(図18)。以上の結果から、α−リポ酸−MgCOナノ粒子はヒトの皺を改善する効果があることが確認された。
【0306】
(試験例12:α−リポ酸−MgCOナノ粒子によるヒアルロン酸蓄積試験)
直径6.0cmのプラスチックシャーレにD−MEM培地(D−MEM培地に終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシンになるように添加したもの)を3ml添加した。そこに脂肪前駆細胞である3T3−L1細胞を1.5×10個接種し、3日間前培養を行いコンフルエント状態にした。その後、培地を脂肪細胞分化誘導培地(D−MEMに終濃度10%FCS、100ユニット/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシン、5μg/mlのインスリン、0.25μMのデキサメタゾン、0.5mMのイソブチル−メチルキサンチンになるように添加したもの)3mlに交換した。さらに2日後、同じ組成の脂肪細胞化誘導培地3mlと交換し2日間培養し、合計4日間脂肪細胞分化誘導培地で培養した。脂肪細胞分化誘導培地にはα−リポ酸溶液と実施例50Aのα−リポ酸−MgCOナノ粒子溶液がそれぞれα−リポ酸濃度で0、100、250、500μMになるように添加した。培養後、培養上清を除いたシャーレにPBS緩衝液を1ml添加し、細胞をセルスクレーパーで回収した。こうして回収した細胞を超音波破砕したものを細胞破砕液とし、これに含まれるヒアルロン酸量を酵素免疫測定法(ELISA)により定量した。ヒアルロン酸ELISAの実験方法はAnnica Jacobsonら、Int. J. Cancer. 102:212−219(2002)に記載される方法に従って行った。また、培養は全て5%CO、37°C条件で行った。
【0307】
その結果、α−リポ酸添加群と比較してα−リポ酸−MgCOナノ粒子添加群の方が高いヒアルロン酸量を示した(図19)。以上の結果から、α−リポ酸−MgCOナノ粒子はヒアルロン酸を細胞表面へ蓄積させる作用があることが確認された。このことからα−リポ酸−MgCOナノ粒子は皮膚真皮層の保水性を向上さることにより、皺を改善していることが示唆された。また、関節において軟骨細胞表面にヒアルロン酸を蓄積・濃縮させ、間接軟骨組織間の損傷を低減する効果が期待され、変形性関節症の治療薬としての有用性も示唆された。
【0308】
(実施例51:外用剤軟膏の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表9に示す配合の材料を混合して外用剤軟膏を製造する。
【0309】
【表9】

【0310】
(実施例52:化粧用乳液の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表10に示す配合の材料を混合して化粧用乳液を製造する。
【0311】
【表10】

【0312】
(実施例53:練り歯磨きの製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表11に示す配合の材料を混合して練り歯磨きを製造する。
【0313】
【表11】

【0314】
(実施例54:タブレットの製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表12に示す配合の材料を混合してタブレットを製造する。
【0315】
【表12】

【0316】
(実施例55:注射液の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表13に示す配合の材料を混合して注射液を製造する。
【0317】
【表13】

【0318】
(実施例56:化粧水の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表14に示す配合の材料を混合して化粧水を製造する。
【0319】
【表14】

【0320】
(実施例57:皮膚外用ローションの製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表15に示す配合の材料を混合して皮膚外用ローションを製造した。
【0321】
【表15】

【0322】
(試験例13:UV−B照射によるヘアレスマウス皮膚のバリア機能低下に対するα−リポ酸ナノ粒子含有皮膚外用ローションの効果確認試験)
ヘアレスマウス(Hos:HR−1、25週齢、雄)の背部に70mJ/cmのUV−Bを単回照射した。紫外線照射後、このマウスに実施例57により得られたα−リポ酸−CaCOナノ粒子含有皮膚外用ローションを一日あたり100μlずつ1日1回、連続4日間塗布した。紫外線照射直前および紫外線照射日から4日目および5日目に経皮水分蒸散量(TEWL)の測定を行い、皮膚バリア機能の状態をチェックした。紫外線照射日から各測定日における紫外線照射直前のTEWLに対する増加量をΔTEWLとし皮膚バリア機能低下の目安とした。
【0323】
表16に示すように、どちらの測定日においてもα−リポ酸−CaCOナノ粒子含有皮膚外用ローション塗布区(n=3)はコントロール区(α−リポ酸を含まない水のみを同様に塗布、n=3)と比較しTEWL値の上昇、すなわち皮膚バリア機能の低下が抑制されていることが確認された。以上の結果により、α−リポ酸−CaCOナノ粒子含有皮膚外用ローションは紫外線照射後の皮膚に作用し、紫外線刺激による皮膚の機能障害を低減する効果を発揮することが確認できた。
【0324】
【表16】

【0325】
(実施例58:ドリンク剤の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表17に示す配合の材料を混合してドリンク剤を製造した。
【0326】
【表17】

上記表17におけるα−リポ酸-Caナノ粒子溶液のかわりに、α−リポ酸を最小量の0.25M水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和溶解し1%水溶液としたもので置換した比較品を作製した。専門のパネル5名で実施例58のドリンク剤と比較品の官能評価を行ったところ、全員が本実施例のドリンク剤は比較品に比べて、α−リポ酸に起因する硫黄臭や舌のピリピリ感が低減されており、嗜好性に優れているとの評価を得た。
【0327】
(実施例59:清涼飲料水の製造)
当該分野で通常行われる方法に従って以下の表18に示す配合の材料を混合して清涼飲料水を製造した。
【0328】
【表18】

上記表18におけるα−リポ酸-Mgナノ粒子溶液のかわりに、α−リポ酸を最小量の0.25M水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和溶解し1%水溶液としたもので置換した比較品を作製した。専門のパネル5名で実施例59の清涼飲料水(ドリンク剤)と比較品の官能評価を行ったところ、全員が本実施例の清涼飲料水(ドリンク剤)は比較品に比べて、α−リポ酸に起因する硫黄臭や舌のピリピリ感が低減されており、嗜好性に優れているとの評価を得た。
【0329】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0330】
本ナノ粒子は水に溶解した場合に透明溶液の形態を保つものであり、且つ、多価金属無機塩の皮膜によりα−リポ酸が被覆されていることから低刺激性である。従って、皮下および静脈内注射製剤として投与することが可能となる。
【0331】
本ナノ粒子を外用剤として塗布投与、あるいは口腔組成物として歯肉等口腔粘膜から投与した場合には、良好に経皮吸収され、刺激性がないことから炎症を惹起せず、ナノ粒子から除法的にα−リポ酸が放出され、皮膚の活性化、光老化の抑制、光老化からの回復、紫外線刺激によるメラニン生成抑制等の効果を発揮できる。
【0332】
本ナノ粒子を食品として利用した場合には、α−リポ酸に特有の硫黄臭が低減されていることから、嗜好品としての価値が向上するとともに、α−リポ酸の配合量を増やすことも可能となるので、α−リポ酸のもつ有効性をより発揮しやすい組成物を得ることができる。また本ナノ粒子は比表面積が非常に大きいことから、生体内へ非常に良好に吸収される。さらに本ナノ粒子は水溶性であることから、飲料等幅広い形態の食品での利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子を含有する、皮膚外用剤。
【請求項2】
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子を含有する、医薬品。
【請求項3】
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子を含有する、口腔用組成物。
【請求項4】
α−リポ酸と、非イオン性界面活性剤と、2価金属イオンと、炭酸イオンまたはリン酸イオンとを含む、α−リポ酸ナノ粒子を含有する、食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図19】
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【図6】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−63606(P2011−63606A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253310(P2010−253310)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【分割の表示】特願2009−546249(P2009−546249)の分割
【原出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(506151235)株式会社ナノエッグ (11)
【Fターム(参考)】