説明

お経再生装置

【課題】経本本来の意匠を守りながら、経本の広がりを極力抑えて携行し易いようにするとともに、出力される音声を聞き取り易いようにしたお経再生装置を提供する。
【解決手段】本体ケース1の内部に、経文の音声データが記憶されたメモリ9と、メモリ9に記憶された音声データを出力するスピーカ7とを備え、前面に音声データに対応する経本2と、スピーカ7に臨む音声窓4と、音声データの再生/停止を行う操作スイッチを備え、経本2を、片面に経文を記した1枚の刷り紙を経本折りし、経文を記していない面の一部を貼り合わせた状態で厚地の表紙の裏面に貼り付けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、僧侶が唱えるお経を音声出力し、それに併せて経文を唱えるのに用いられるお経再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の装置として、本出願人は先に特許文献1を提案している。この装置は、表カバーと裏カバーとを見開き状に開閉自在で連結し、裏カバーに音声データを記憶した記憶手段などの電子回路を組み込み、表カバーに音声データに対応する記述を施した書面を綴り、カバーを開閉することで音声の再生と停止を行えるようにしたものである。この装置には、音声データとして例えば『般若心経』などのお経が記憶されており、カバー内面に設けた選択スイッチを操作することにより好みの音声データを選択できるようになっている。そして、選択した音声データは裏カバーの背面に設けたスピーカ、もしくはイヤホンジャックを通じて出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3033521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、経本は、図7に示すように、経文を記した1枚の刷り書を山折りと谷折りを繰り返してジグザクに折り畳み(経本折り)、最初の頁と最後の頁に厚紙の表紙を貼り合わせて形成されている。経本折りされた刷り書は、見開き易く、しかも見開いた状態を保持し易いものの、逆さにしたりすると広がってしまうという欠点がある。この点、上記従来の装置では、経本部分が表カバーと裏カバーに収容され、カバーを閉じておけば経本が広がってしまうことはないが、経本本来の形態が損なわれ、日常の勤行を行う上で違和感が生じていた。また、従来の装置では、音声を出力するスピーカを裏カバー側に取り付けて背面から音声を出力するようにしているため、経本を見ながら音声を聞くときに聞き取りにくいという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、経本本来の意匠を守りながら、経本の広がりを極力抑えて携行し易いようにするとともに、出力される音声を聞き取り易いようにしたお経再生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明は、本体ケースの内部に、経文の音声データが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された音声データを出力するスピーカとを備え、前面に音声データに対応する経本と、スピーカに臨む音声窓と、音声データの再生/停止を行う操作スイッチを備え、経本を、片面に経文を記した1枚の書面を経本折りし、経文を記していない面の一部を貼り合わせた状態で厚地の表紙裏面に貼り付けて構成したものである。
【0007】
また、本体ケースに可搬式の記憶媒体を抜き差し自在にし、該記憶媒体が差し込まれていないときには操作スイッチの操作により記憶手段に記憶された音声データを再生し、記憶媒体が差し込まれているときには操作スイッチの操作により記憶媒体に記憶された音声データを再生するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明によれば、経本を本体ケースの前面に設けたので、経本本来の形態を損なうことなく、日々の勤行においても違和感なく使用することができる。また、1枚の横長刷り紙の片面に経文を記して経本折りし、経文を記していない面の折り畳み接触面の一部を貼り合わせた状態で厚地の表紙に貼り付けて経本を構成したので、経本を閉じておくカバーや係止部材がなくても、経本が必要以上に広がることがない。しかも携帯性に優れているため墓参り等に持参して使用することができる。
【0009】
また、スピーカからの音声を出力する音声窓を、本体ケースの前面に設けたので、経本を見ながらスピーカから流れるお経に合わせて読経することができるので、日常の勤行と同じ感覚で使用することができる。また、可搬式の記憶媒体を抜き差し自在にしたので、複数のお経を出力させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のお経再生装置を示す外観図である。
【図2】本装置の内部断面図である。
【図3】本装置における経本を示す斜視図である。
【図4】経本を開いた状態を示す外観図である。
【図5】経本を広げた状態を示す外観図である。
【図6】本装置の別の実施態様を示す外観図である。
【図7】従来の経本を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施態様について説明する。図1は本発明のお経再生装置を示す外観図、図2は内部断面図である。
1は本体ケースで、前面に経本2と、操作スイッチ3と、音声窓4を備え、底面にイヤホンジャック5を備え、背面に電池ボックスのカバー6を備え、内部には、音声窓4に対向するスピーカ7と、回路基板8を備えている。
【0012】
回路基板8には、音声データが記憶されたメモリ9が内蔵され、操作スイッチ3の操作によりイヤホンジャック5もしくはスピーカ7から音声データを出力する。ここでは、メモリ9にお経の音声データが記憶されており、操作スイッチ3を1回入力すると、お経が再生され、もう1回入力すると停止する。このような構成によれば、操作スイッチ3を入力してイヤホンジャック5もしくはスピーカ7からお経を流しながら、本体ケース1の前面に設けた経本2を見て、音声に合わせて読経を行うことができる。
【0013】
図3・4・5は経本2の構成を示す説明図である。
経本2は、横長1冊分の刷り紙10を、所定の小口寸法に合わせて山折りと谷折りを繰り返してジグザクに折る経文折りによって折り畳み、最初の頁と最後の頁の裏面10bに厚紙の表紙11,11を貼り合わせて形成されている。刷り紙10の表面10aには、縦書きの経文が記されており、右開きでめくっていくことで経文が見開き状に開かれる。刷り紙10の裏面10bは、刷り紙10がバラバラに広がるのを防ぐため、接触面同士を接着剤などで貼り合わせてある。ここで、経本折りされた刷り紙10を見開く場合、紙の剛性や厚みによって貼り合わせた裏面10bが浮き上がった状態となるため、裏面10bの全面を貼り合わせないようにしている。すなわち、刷り紙10の裏面10bは、谷折り目から幅w1の範囲で接着部10cを形成して貼り合わせてあり、残りの幅w2を非接着部10dとして剥離した状態にしている。これにより、見開き状態での紙の撓みを非接着部10dで吸収できるため、どの頁においても見開きが可能になる。
尚、接着部10cの幅w1は、頁数などにより考慮されるものであるが、およそ接着部10cと非接着部10dとの割合が7:3程度になるように設定されるのが望ましい。
【0014】
このように構成する本発明のお経再生装置について説明する。
操作スイッチ3を入力すると、メモリ9に記憶されたお経がイヤホンジャック5もしくはスピーカ7から再生される。このまま、単にお経を再生する装置として利用しても良いが、本体ケース1の前面に取り付けた経本2を見ながら、流れるお経に合わせて読経を行うこともできる。経本2は、刷り紙10の裏面10bを非接着部10dを残して貼り合わせているので、経文を記した刷り紙10の表面10aがどの頁においても見開き状に開かれる。また、経本2から手を離したとしても刷り紙10がバラバラに広がらないため、刷り紙10が破れたりすることが防がれる。
【0015】
本装置は、通常の経本とほぼ同等の形態を有しているため、これまで経本を用いて勤行を行っていた利用者も違和感なく使用することができる。また、経本が広がりにくい構造となっているため、携帯にも便利であり、使用中もバラバラになりにくい。更に、必要に応じてお経の音声を出力することができるので、経本としてだけでなく、読経装置としても利用することが可能であり、お経が必要な場所に気軽に携行することができる。
【0016】
本発明の実施態様は以上のように構成されるものであるが、本発明はこうした実施態様に限られるものではない。例えば、図6に示すように、実施態様を発展させた形態として、メモリカード等の可搬式記憶媒体を読み込む機能を付加しても良い。すなわち、本体ケース1にメモリカード20(SDカード等)のリーダ21を装備して、複数のお経を再生可能にするとともに、経文を音声データに合わせて付け替え可能にすることで、宗派に関係なく利用することができる。
【0017】
このとき、メモリカード20が差し込まれていないときには、操作スイッチ3の入力により内蔵されたメモリ9に記憶されたお経(般若心経)を再生し、メモリカード20が差し込まれているときには、操作スイッチ3の入力によりメモリカード20に記憶されたお経(宗派の経文)を再生するといった使い方を可能にする。
【0018】
また、本体ケース1の前面には、経本2の裏表紙11が挿通される折曲片22が形成され、本体ケース1の上方からこの折曲片22の間に挿脱させることで、経本2の取り付け・取り外しが容易に行えるようにしている。
【0019】
尚、本装置は、お経を再生する装置として利用する以外にも、音読付き絵本等に応用することも可能であり、経本折りした書面部の裏面を、山折り目から所定幅の非接着部を残して接着するという本発明の主旨を逸脱しない範囲で応用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 本体ケース
2 経本
3 操作スイッチ
4 音声窓
5 イヤホンジャック
6 電池ボックスのカバー
7 スピーカ
8 回路基板
9 メモリ
10 刷り紙
11 表紙
20 メモリカード
21 リーダ
22 前面枠
23 抑え爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースの内部に、経文の音声データが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された音声データを出力するスピーカを備え、前面に音声データに対応する経本と、スピーカに臨む音声窓と、音声データの再生/停止を行う操作スイッチを備え、
前記経本を、片面に経文を記した1枚の書面を経本折りし、経文を記していない面の一部を貼り合わせた状態で厚地の表紙裏面に貼り付けて構成したことを特徴とするお経再生装置。
【請求項2】
前記本体ケースに可搬式の記憶媒体を抜き差し自在にし、該記憶媒体が差し込まれていないときには前記操作スイッチの操作により前記記憶手段に記憶された音声データを再生し、前記記憶媒体が差し込まれているときには前記操作スイッチの操作により前記記憶媒体に記憶された音声データを再生することを特徴とする上記請求項1記載のお経再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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