説明

し渣圧送装置

【課題】し渣に粗大物(例えば、木材のような長尺物)が混入していても、確実にし渣の搬送を行うことができるし渣圧送処理装置を提供する。
【解決手段】第3支持体26の内底面26aと集積室24の底板24aの内面側周縁部24bとの段差部60の段差量δが9mm以下になるように底板24aを配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理設備に使用されるし渣用の圧送処理装置に関する。更に詳しくは、下水処理設備で掻きだされ集積されたし渣を往復移動するプランジャーにより間歇的に圧送して処理するし渣圧送処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、汚水や雨水等は下水として下水処理施設に送られ処理される。汚水や雨水等の下水には、砂や土類以外に種々の汚水物質、例えば、家庭等から排出される生活物質、木片、ビニール片、布片、枯葉等が含まれている。汚水や雨水等の下水は回収された後、これらの汚水物質を除去処理した上で、河川等に放流される。又、回収された汚水物質は焼却等の処理がなされる。これらの処理のために下水処理設備を要するが、この処理は例えば以下に述べるような設備で行っている。
【0003】
すなわち、回収された下水を沈砂池に貯留させて、砂や土壌を除き、下水中の汚水物質、即ち塵芥類を例えば除塵機により掻き出しし渣としてホッパーに集積する。ホッパーのし渣は、落下して一定量ずつ圧送装置に取り込まれ、往復ポンプの作用で圧送される。圧送されたし渣は、一旦保留された後、最終的には焼却等の処理がなされる。
【0004】
そして、上記における圧送装置として、特許文献1に記載されているような、し渣圧送処理装置が提案されている。
【0005】
前記特許文献1に記載のし渣圧送処理装置は、し渣を往復移動するプランジャーにより間歇的に圧送して処理するものであり、図1、図2に全体構成の断面図を示すように、このし渣圧送処理装置1は、搬送された下水のし渣54を集積するホッパー57の排出口57aに設けられた本体2(ベース3上に搭載されている)と、本体2内に設けられて排出口57aからし渣54を取り込む集積室24と、端部にボルト10で押圧体8に固定されたし渣用刃部材9(形状面9a)を有し、集積室24を通過して往復移動可能なシリンダー体7と、本体2に設けられてシリンダー体7の外側を第1摺動部材17により摺動可能に支持する筒状の第1支持体6(本体2と一体の第1支持プレート4にボルト5により固定されている)と、本体2に設けられてシリンダー体7との間に圧力室(第1圧力室16、第2圧力室19)を構成し、この圧力室(第1圧力室16、第2圧力室19)に連通する圧力流体(作動油)の通路(連通路22、23)を有し、シリンダー体7を第2摺動部材18により摺動可能に支持する第2支持体14(本体2の後方の第2支持プレート13にステー部材15を介して固定されている)と、本体2に設けられて集積室24を通過して移動するシリンダー体7を支持する筒状の第3支持体26(本体2の前方の第3支持プレート25にボルト27により固定されていて、その内径が押圧体8の外径に略同じ)と、第3支持プレート25の集積室24側に第3支持体26の内径部に合わせて設けられた刃形状部材28と、第3支持体26のし渣排出側端部に設けられて圧送されたし渣の遮断、通過を繰り返し行う開閉装置29(開閉扉30、孔30a、孔の周縁部30b、ステー32)とを備えている。
【0006】
ちなみに、図1は、シリンダー体7が圧送される前の状態を示しており、図2は、シリンダー体7が圧送された後の状態を示している。
【0007】
そして、このし渣圧送処理装置1は、以上のような構成により、次の動作をする。
【0008】
ホッパー57に集積されて集積室24に取り込まれたし渣54を圧送するときは、図1の状態にあるが、一方の連通路22に作動油が供給されると、第1圧力室16に供給され、この作動油の圧力でシリンダー体7は第3支持体26側に向かって、即ち図2に示す状態へ前進する。集積室24にはし渣54が集積し充満しているので、し渣54は刃部材9で圧縮されながら押し出される。
【0009】
この刃部材9が第3支持体26側の刃形状体28近傍に差し掛かったとき、シリンダー体7は、ピン−長溝機構(図示せず)によって回動する。このときし渣54の刃部材9側の部分は、刃形状部材28と刃部材9との間に挟まれながら回動方向及び前進移動方向に力が加えられる。この強制的な回動と前進移動とにより、刃部材9の形状面9aと刃形状部材28との相対的な位置ずれを起こして、し渣54は切断されることになる。この結果、刃部材9とし渣54とが分離しやすい状態となる。
【0010】
刃部材9は、シリンダー体7の移動で第3支持体26内を圧送し続け、し渣54を送り出す。第3支持体26内の後端部の開閉装置29の開閉扉30は開いているので、圧送されたし渣54はそのままスムースに外部へ排出される。刃部材9が開閉扉30の位置まで達すると、そのシリンダー体7の移動は停止する。シリンダー体7が前進するとき、ホッパー57のし渣54はシリンダー体7上に留まっている。
【0011】
次に、開閉扉30を閉じるが、孔30aの周縁部30bが鋭利な状態になっているので、圧縮されて送り込まれたし渣54をスムースに切断して開閉扉30は閉じる(図2に示す状態)。この開閉扉30が閉じたなら、シリンダー体7は元の位置まで後退するが、このときホッパー57の排出口57aが開放されているので、し渣54がホッパー57から落下し集積室24に取り込まれる。このとき開閉装置29の開閉扉30を再び開放する。この状態で再度シリンダー体7を移動させれば、前述したのと同様の動作を繰り返し行うことになる。このようにしてホッパー57のし渣54を、繰り返し一定量ずつ間歇的に集積室24に取り込み次工程に圧送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−212625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
汚水と雨水を1つの管路で一緒に送る合流式下水道によって送られてきた下水を処理する下水処理施設において、上述したような、特許文献1に記載されているし渣圧送処理装置(図1、図2)を用いてし渣を搬送するようにしている場合、時には搬送不能になることがあり、特に雨天時に搬送不能になる確率が高かった。これは、し渣が晴天時と雨天時で性状が変化し、雨天時にはし渣に混入する粗大物(例えば、木材のような長尺物)の量が増加するためのであると考えられた。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、し渣に粗大物(例えば、木材のような長尺物)が混入していても、確実にし渣の搬送を行うことができるし渣圧送処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するために、まず、特許文献1に記載されているし渣圧送処理装置では、し渣に粗大物が混入しているとどうして搬送不能になりやすいのかを検討した。
【0016】
その結果、特許文献1に記載されているし渣圧送処理装置においては、これまでは、図3に部分拡大図を示すように、第3支持体26の内底面26aと集積室24の底板24aの内面側周縁部24bとの段差部60の段差量δが大きく(例えば、δ=15mm)、この段差部60に粗大物(粗大し渣)54Aが引っ掛かって、その粗大し渣54Aを刃部材9で切断する際に必要な切断圧力が増大し、それが限度以上になると切断不可になって、搬送不能になることを突き止めた。
【0017】
そこで、本発明者らは、さらに検討を行った結果、前記段差部60の段差量δを9mm以下にすれば、段差部60に粗大し渣54Aが引っ掛かることがなくなり、粗大し渣54Aが刃部材9で容易に切断されるようになり、搬送不能の発生を防止できることを見出した。
【0018】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、以下の特徴を有している。
【0019】
[1]下水処理設備に使用されるし渣用の圧送処理装置であって、搬送された下水のし渣を集積するホッパーの排出口に設けられた本体と、前記本体内に設けられ前記排出口から前記し渣を取り込む集積室と、端部にし渣用刃部材を有し前記集積室を通過し往復移動可能なシリンダー体と、前記本体に設けられ前記シリンダー体の外側を摺動可能に支持する筒状の第1支持体と、前記本体に設けられ前記シリンダー体との間に圧力室を構成しこの圧力室に連通する圧力流体の通路を有し前記シリンダー体を摺動可能に支持する第2支持体と、前記本体に設けられ前記集積室を通過して移動する前記シリンダー体を支持する筒状の第3支持体と、前記第3支持体のし渣排出側端部に設けられ圧送されたし渣の遮断、通過を繰り返し行う開閉装置とを備えたし渣圧送処理装置において、前記集積室の底板が、前記第3支持体の内底面と該底板の内面側周縁部との段差が9mm以内となるように配置されていることを特徴とするし渣圧送処理装置。
【0020】
[2]前記集積室の底板が凹面状であることを特徴とする前記[1]に記載のし渣圧送処理装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、し渣に粗大物(例えば、木材のような長尺物)が混入していても、確実にし渣の搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態におけるし渣圧送処理装置の全体構成の断面図で、シリンダー体が圧送される前の状態を示している。
【図2】本発明の一実施形態におけるし渣圧送処理装置の全体構成の断面図で、シリンダー体が圧送された後の状態を示している。
【図3】従来のし渣圧送処理装置の部分拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるし渣圧送処理装置の部分拡大図である。
【図5】粗大し渣を刃部材で切断している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
本発明の一実施形態におけるし渣圧送処理装置の全体構成とその動作は、[背景技術]の欄において、図1、図2を用いて説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0025】
そして、本発明の一実施形態においては、図4に部分拡大図を示すように、第3支持体26の内底面26aと集積室24の底板24aの内面側周縁部24bとの段差部60の段差量δが9mm以下になるように底板24aを配置している。
【0026】
ここで、刃部材9で粗大し渣54Aを切断する際の切断状況について、段差部60の段差量δを15mm、9mm、3mmと変化させて比較した結果を表1に示す。なお、粗大し渣54Aとしては、木材(断面寸法:40mm×25mm)と塩ビ管(外径:φ60mm)を用いた。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、段差量δが15mmの場合には、塩ビ管については切断可(△:切断時の作動油の圧力が12MPa未満)であったが、木材については切断不可(×:12MPa以上の作動油圧力が必要)になった。
【0029】
これに対して、段差量δが9mmの場合には、木材と塩ビ管のいずれについても切断可(△:切断時の作動油の圧力が12MPa未満)であった。さらに、段差量δが3mmの場合には、木材と塩ビ管のいずれについても切断良好(○:切断時の作動油の圧力が9MPa未満)であった。
【0030】
これは、段差量δが15mmの場合には、図5(a)に示すように、粗大し渣54Aが段差部60に引っ掛かって、第3支持体26の入口を塞いでしまう状態になり、切断抵抗が大きくなるためであり、段差量δが9mm以下の場合には、図5(b)に示すように、粗大し渣54Aが段差部60に引っ掛かることがなくなり、第3支持体26の入口を塞いでしまう状態にならないので、切断抵抗が小さくなるためである。
【0031】
したがって、この実施形態においては、段差部60の段差量δを9mm以下にしているので、段差部60に粗大し渣54Aが引っ掛かることがなくなり、粗大し渣54Aが刃部材9で容易に切断されるようになる。その結果、し渣54に粗大し渣54Aが混入していても、確実にし渣54の搬送を行うことができる。
【0032】
なお、この実施形態においては、集積室24の底板24aは平板であるが、本発明においては、第3支持体26の内底面26aと集積室24の底板24aの内面側周縁部24bとの段差量δが9mm以下であればよいので、集積室24の底板24aとして、内面側周縁部24bが上方に持ち上がったような凹面状のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 し渣圧送処理装置
2 本体
3 ベース
4 第1支持プレート
5 ボルト
6 第1支持体
7 シリンダー体
8 押圧体
9 刃部材
9a 刃部材の形状面
10 ボルト
13 第2支持プレート
14 第2支持体
15 ステー部材
16 第1圧力室
17 第1摺動部材
18 第2摺動部材
19 第2圧力室
22 連通路
23 連通路
24 集積室
24a 集積室の底板
24b 集積室の底板の内面側周縁部
25 第3支持プレート
26 第3支持体
26a 第3支持体の内底面
27 ボルト
28 刃形状部材
29 開閉装置
30 開閉扉
30a 孔
30b 孔の周縁部
32 ステー
54 し渣
54A し渣中の粗大物
57 ホッパー
57a ホッパーの排出口
60 第3支持体の内底面と集積室の底板の内面側周縁部との段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理設備に使用されるし渣用の圧送処理装置であって、搬送された下水のし渣を集積するホッパーの排出口に設けられた本体と、前記本体内に設けられ前記排出口から前記し渣を取り込む集積室と、端部にし渣用刃部材を有し前記集積室を通過し往復移動可能なシリンダー体と、前記本体に設けられ前記シリンダー体の外側を摺動可能に支持する筒状の第1支持体と、前記本体に設けられ前記シリンダー体との間に圧力室を構成しこの圧力室に連通する圧力流体の通路を有し前記シリンダー体を摺動可能に支持する第2支持体と、前記本体に設けられ前記集積室を通過して移動する前記シリンダー体を支持する筒状の第3支持体と、前記第3支持体のし渣排出側端部に設けられ圧送されたし渣の遮断、通過を繰り返し行う開閉装置とを備えたし渣圧送処理装置において、前記集積室の底板が、前記第3支持体の内底面と該底板の内面側周縁部との段差が9mm以内となるように配置されていることを特徴とするし渣圧送処理装置。
【請求項2】
前記集積室の底板が凹面状であることを特徴とする請求項1に記載のし渣圧送処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−621(P2013−621A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131715(P2011−131715)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】