説明

にんにく含有液体調味料

【課題】 にんにく、食酢を含有し、乳化剤を含有しない水相、及び油相からなる液体調味料において、にんにくの風味に優れた液体調味料を提供する。
【解決手段】
にんにく及び食酢を含有する液体調味料であって、乳化剤を含有せず、水相中に油相が油滴状に分散しており、油滴の平均粒子径が40〜170μmである液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、にんにく、食酢を含有し、乳化剤として卵黄を含有しない水相、及び油相からなる液体調味料において、にんにくの風味に優れた液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
にんにくは特有の風味に優れることから、従来より、ドレッシング、焼肉のたれ、つゆ等、食品の風味付けに広く用いられている。
【0003】
しかしながら、食酢を含有し、酸味を有する液体調味料ににんにくを配合すると、食酢のツンとする風味(酢カド)を強く感じるため、良好なにんにくの風味が感じられないという課題があった。
【0004】
食酢を含有する液体調味料に、にんにくを配合したものとして、にんにくやネギに含まれる特定の成分の配合量を、規定の範囲内になるように調整したものが挙げられている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この方法においては、酢カドを強く感じるため、良好なにんにくの風味が感じられないという課題があった。
【0006】
このような液体調味料の酢カドを弱める方法として、食酢そのものの酢カドを弱める方法が提案されている。例えば、米糠糖化液を含有する培地に細菌を接種して、得られた発酵物を食酢醪に添加して、酢酸発酵した食酢(特許文献2)、またはγ−ノナラクトンを添加した食酢(特許文献3)が挙げられる。
【0007】
しかしながら、これらの方法を用いて製造された食酢を含有する液体調味料に、にんにくを配合した場合でも、依然として酢カドを強く感じ、良好なにんにくの風味が感じにくいという課題があった。
【0008】
他方、食酢を含有する液体調味料に油相を含有させて、油脂のコクによるまろやかな風味を付与して、酢カドを改善する方法も広く知られている。例えば、生のにんにくをジューサーにかけて、ジュースにしたにんにくを、油相を含有する液体調味料に配合したものが挙げられている(特許文献4)。
【0009】
しかしながら、この方法においても、酢カドを強く感じるため、良好なにんにくの風味を感じにくいという課題があった。
【0010】
さらに、液体調味料に油相を含有させた別の方法として、液体調味料ににんにく風味の加熱食用油脂抽出油を配合して、乳化剤として卵黄を含有する水相と油相を乳化した液体調味料が提案されている(特許文献5)。しかしながら、この液体調味料においては、乳化剤の卵黄を含有したため、全体がまろやかになる反面、良好なにんにくの風味がやや弱いという課題があった。
【0011】
また、一般的な乳化ドレッシングの油滴の平均粒子径は2μmであることが知られている(非特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
特許文献1 特開2011−41508
特許文献2 特開2010−227055
特許文献3 特開2010−227054
特許文献4 特開昭59−74968
特許文献5 特開2006−61065
【非特許文献】
【0013】
非特許文献1 食品知識ミニブックスシリーズ マヨネーズ・ドレッシング入門(日本食糧新聞社)平成17年発行
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
鋭意研究した結果、本発明者らは、にんにく、食酢を含有し、乳化剤として卵黄を含有しない水相、及び油相からなり、水相中に油相が油滴状に分散している液体調味料において、かかる油滴の平均粒子径に着目した結果、一般的な乳化ドレッシングと同様の2μmでは目的を達せられないことを見出し、かかる油滴の平均粒子径を特定の範囲にすることで、にんにくの良好な風味が強く感じられ、まろやかで酢カドを感じにくい、これまでにない液体調味料を提供することが可能となることを見出した。
【0015】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]にんにく及び食酢を含有する液体調味料であって、乳化剤として卵黄をを含有せず、水相中に油相が油滴状に分散しており、油滴の平均粒子径が40〜170μmであることを特徴とする液体調味料。
[2]にんにくが、油ちょう処理されたものである[1]記載の液体調味料。
[3]焦がし醤油をさらに含有する[1]又は[2]に記載の液体調味料。
[4]にんにく及び食酢を含有する水相に、撹拌しながら油相原料を添加する液体調味料の製造方法において、1)乳化剤として卵黄を含有せず、かつ、2)水相中に油相が油滴状に分散しており、油滴の平均粒子径が40〜170μmとなるように撹拌することを特徴とする液体調味料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乳化剤として卵黄を含有せず、にんにく及び食酢を含有する液体調味料において、水相中に油相が油滴状に分散させ、油滴の平均粒子径を40〜170μmに調整することにより、にんにくの良好な風味が強く感じられ、まろやかで酢カドを感じにくい、風味の向上した液体調味料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における液体調味料は、にんにくおよび食酢を含有する。
【0018】
本発明において用いられるにんにくとしては、特に限定されないが、例えば、生のにんにく、熱風乾燥等により乾燥させた乾燥にんにく、火で焼いた焙焼にんにく、油ちょう処理された揚げにんにく等が挙げられる。その形態は特に限定されず、原体のままであってもよいし、細断品、破砕品、すりおろし品、圧搾搾汁品、ペースト品であってもよい。その中でも、より良好なにんにくの風味が感じられる点から、油ちょう処理したにんにくが好ましい。油ちょう処理したにんにくとしては、一般にローストガーリックペースト、ローストガーリックパウダー等の名称で市販されているものを用いることもできる。
これらのにんにくは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0019】
にんにくの含有量は、通常、液体調味料中に0.1〜10.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%である。にんにくの含有量が0.1重量%未満であるとにんにくの風味が感じられず物足りない味となり、また10.0重量%を超えるとにんにくの味が強すぎて好ましくない味となる。
【0020】
本発明において用いられる食酢としては、特に限定されないが、例えば、醸造酢、米酢、穀物酢、果実酢、合成酢等が挙げられる。これらの食酢は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
食酢の含有量は、通常、液体調味料中に酸度5.0%の食酢を使用したとき8.0〜40.0重量%、好ましくは10.0〜30.0重量%である。食酢の含有量が8.0重量%未満であると酸味が弱く、液体調味料を食材に供する際に食材の味がぼやけてしまい、また40.0重量%を超えると酸味が強く刺激的な味となる。
【0022】
本発明における液体調味料は、配合された原料の風味がバランスよく感じられるよう、乳化剤として卵黄を含有しない。本発明において乳化剤としての卵黄とは、生卵黄、冷凍卵黄、乾燥卵黄、酵素処理卵黄を指し、加熱によりゆで卵状に凝固した卵黄は含まない。
【0023】
本発明における液体調味料は、水相と油相とを含有し、水相中に油相が油滴状に分散している液体調味料である。本発明の液体調味料としては、例えば、ドレッシング、ソース、たれ等が挙げられる。液体調味料中の油相は通常3.0〜60.0重量%の範囲であり、10.0〜45.0重量%が好ましく、さらに15.0〜40.0重量%であることが、味覚品質の点から好ましい。
【0024】
液体調味料の油相を構成する原料(油相原料)としては、通常、食品に添加可能な親油性の物質であれば特に制限がなく、例えば、食用油脂、親油性のある着香料、香味油等が挙げられる。
【0025】
以下に適宜配合できる油相原料を具体的に例示するが、これらの成分に限定されるものではない。
【0026】
食用油脂としては、特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、サフラワー油、トウモロコシ油、ごま油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油、米油、落花生油、ヒマワリ油などの植物油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油などの動物油が挙げられる。またこれらを原料としたこれらの食用油相は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の液体調味料では、水相中に分散している油滴の平均粒子径が40〜170μm、好ましくは50〜145μm、より好ましくは55〜130μmである。油滴の平均粒子径が40μm未満であると、にんにくの良好な風味が感じられず好ましくなく、170μmを超えるとであると酢カドが強く感じられ好ましくない。
【0028】
油滴の平均粒子径の測定には、通常の粒度分布計を用いることができる。特に限定はないが、例えば、レーザー式粒度分布計、画像解析式粒度分布計、コールターカウンター等が挙げられる。
【0029】
本発明の液体調味料には、上述したにんにく、食酢、及び油脂を配合させる他に、本発明の効果を損なわない範囲で液体調味料に通常用いられている各種原料を、その配合割合に準じて適宜決定すればよい。原料は特に制限されないが、例えば、水、食塩、醤油、香辛料、野菜、果物、エキス類、調味料、糖類、澱粉、増粘剤、着香料等が挙げられる。
以下に適宜配合できる水相原料を具体的に例示するが、これらに限定されない。
【0030】
醤油としては、特に限定されないが、例えば、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、再仕込醤油、白醤油等が挙げられる。これらの醤油は、液体、ペースト、粉末等の性状で用いられる。醤油の香ばしい風味とこく味を付与する点から、醤油を100℃〜200℃で1時間〜10時間加熱処理して焦げ風味を付与した、焦がし醤油を用いることが好ましい。焦がし醤油としては、焦がし醤油、焦がし醤油ペースト、又は焦がし醤油パウダー等の名称で市販されているものを用いることもできる。これらの醤油は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
香辛料としては、特に限定されないが、例えば、胡椒、山椒、クミン、クローブ、シナモン、ナツメグ、唐辛子、アニス、オールスパイス、オレガノ、コリアンダー、ターメリック、タイム、ティル、バジル、パセリ、バニラ、マスタード、ミント、ローズマリー、ローレル、ジンジャー等が挙げられる。これらの香辛料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
野菜としては、特に限定されないが、たまねぎ、ねぎ、にんじん、大根等が挙げられる。これらの野菜は、すりおろし、みじん切り、又はペーストの性状で用いられる。これらの野菜はこれらの野菜は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0033】
調味料としては、特に限定されないが、例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの調味料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
糖類としては、特に限定されないが、例えば、グラニュー糖、果糖ぶどう糖液糖、上白糖、中白糖、三温糖、白ザラ糖、中ザラ糖、水あめ、ぶどう糖果糖液糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
澱粉としては、特に限定されないが、例えば、とうもろこし澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、コメ澱粉、加工澱粉等が挙げられる。これらの澱粉は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、キサンタンガム、グアガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、モナトウガム、アラビアガム、トラガントガム等が挙げられる。これらの増粘剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0037】
着香料としては、特に限定されないが、例えば、コショウ香料、レモン香料、ユズ香料、オレンジ香料、バジル香料、ローズマリー香料、タラゴン香料、マジョラム香料、タイム香料、ショウガ香料、ニンニク香料、タマネギ香料、ゴマ香料、ナッツ香料、等が挙げられる。これらの着香料は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
液体調味料の製造は、既知の手法により行い得る。例えば、水相原料をスティックミキサーで均一に混合して水相を調製した後、これを攪拌しながら油相原料を徐々に添加し、全量添加した後に適宜攪拌を継続することによって、液体調味料を製造することができる。
【0039】
本発明の食品の製造には、通常の乳化食品の製造に使われる装置を用いることができ、特に制限はないが、例えば一般的な攪拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。攪拌機の攪拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【0040】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
(実施例1〜8 にんにく含有液体調味料の製造)
液体調味料の重量が5kgとなるように表1の配合割合で、水相原料をステンレスポットに計量し、スティックミキサー(エスゲー社製 BAMIX M250)で均一に混合して水相とした。このステンレスポットを湯煎にて攪拌しながら加熱し、80℃達温後に常温まで冷却し、加熱殺菌済みの水相を得た。この水相を攪拌機(プライミクス社製 TKコンビミックス3M−5)に移し、ホモディスパーにより攪拌しながら、油相原料を徐々に添加し、全量添加した後に適宜攪拌を継続した。液体調味料の容量が200mlとなるように、200ml容量のPET容器に液体調味料を充填し、密栓した。
各実施例におけるホモディスパー回転数と攪拌時間は表2の通りである。
【0042】
(比較例1、2 にんにく含有液体調味料の製造)
液体調味料の重量が5kgとなるように表1の配合割合で、水相原料をステンレスポットに計量し、スティックミキサー(エスゲー社製 BAMIX M250)で均一に混合して水相とした。このステンレスポットを湯煎にて攪拌しながら加熱し、80℃達温後に常温まで冷却し、加熱殺菌済みの水相を得た。この水相を攪拌機(プライミクス社製 TKコンビミックス3M−5)に移し、ホモディスパーにより攪拌しながら、油相原料を徐々に添加し、全量添加した後に適宜攪拌を継続した。液体調味料の容量が200mlとなるように、200ml容量のPET容器に液体調味料を充填し、密栓した。
各実験区におけるホモディスパー回転数と攪拌時間は表2の通りである。
【0043】
【表1】

【0044】
試験例 液体調味料の油滴の平均粒子径が味覚品質に及ぼす影響
実施例1〜8、及び比較例1、2の液体調味料について、油滴の平均粒子径を、レーザー回折式粒度分布計(島津製作所製 SALD−3100)を用いて測定した。
実施例1〜8、及び比較例1、2の液体調味料について、専門パネラー3名により味覚評価を行った。評価基準は以下の基準に従った。
[評価基準]
◎・・・大変好ましい
○・・・好ましい
×・・・好ましくない
平均粒子径の測定結果および味覚評価の結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示す結果から明らかなとおり、実施例1〜8の液体調味料は、酢カドが弱く、にんにくの風味が良好であり、好ましいものであった。中でも、油滴の平均粒子径が80μm〜105μmである実施例3及び4の液体調味料は、酢カドがなく、にんにくの風味が非常に良好であり、非常に好ましいものであった。また、実施例3,4,6〜8の結果より、油滴の平均粒子径が80μm〜105μmである場合に、ローストガーリックおよび焦がし醤油を配合した実施例3、4が、ローストガーリックまたは焦がし醤油を配合しない実施例6〜8に対し、特に良好な風味を示した。
これに対し、比較例1の液体調味料は、酢カドが強く、比較例2の液体調味料はにんにくの風味が弱く、いずれも好ましくないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、にんにく、食酢を含有する水相、及び油相を含有する液体調味料において、にんにくの風味に優れた液体調味料を提供することができるので、ドレッシングなどの液体調味料として大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
にんにく及び食酢を含有する液体調味料であって、乳化剤として卵黄を含有せず、水相中に油相が油滴状に分散しており、油滴の平均粒子径が40〜170μmであることを特徴とする液体調味料。
【請求項2】
にんにくが、油ちょう処理されたものである、請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
焦がし醤油をさらに含有する請求項1又は2に記載の液体調味料。
【請求項4】
にんにく及び食酢を含有する水相に、撹拌しながら油相原料を添加する液体調味料の製造方法において、1)乳化剤として卵黄を含有せず、かつ、2)水相中に油相が油滴状に分散しており、油滴の平均粒子径が40〜170μmとなるように撹拌することを特徴とする液体調味料の製造方法。