説明

アイアンゴルフクラブヘッドおよびアイアンゴルフクラブ

【課題】打球音を改善することで打球感を向上することが可能となるアイアンゴルフクラブヘッドおよび該ヘッドを備えたアイアンゴルフクラブを提供する。
【解決手段】アイアンゴルフクラブのヘッド1は、打球面を有するフェース部と、フェース部の背面側に位置するバック部3と、フェース部の周囲に位置するトップエッジ部4、トゥ部5、ソール部7およびヒール部6と、トップエッジ部4とトゥ部5との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域8と、バック部3側に設けられ、先端コーナ部領域8の一部を規定するようにトップエッジ部4からトゥ部5に向かって斜め方向に延在する部分を有し先端コーナ部領域8よりも補強された補強部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアンゴルフクラブヘッドおよびアイアンゴルフクラブに関し、特に、打球感に優れたアイアンゴルフクラブヘッドおよび該ヘッドを備えたアイアンゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アイアンゴルフクラブの良好な打球感を得るために様々な提案がなされているが、これまでの主な試みは、打球音中の雑音のように打球感を劣化させると考えられる音を抑制することで良好な打球感を得ようとするものである。
【0003】
たとえば、特開2006―167317号公報には、インパクトでの振動吸収効果により、雑音、ビビリ音が少なく、打球感も優れたアイアンヘッドを提供するために、アイアンヘッドのフェース背面部にプリプレグシートを接合したアイアンヘッドが記載されている。
【0004】
また、特開2004―313777号公報には、打球時における高音の金属音を抑えるために、本体部分とフェース部の間の中空部に、発泡ポリウレタン樹脂からなる、硬度が30以上70以下の弾性体を隙間なく充填したアイアンゴルフクラブヘッドが記載されている。
【特許文献1】特開2006―167317号公報
【特許文献2】特開2004―313777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アイアンゴルフクラブの打球感に影響を与える因子として、打球音、手に伝わる振動、目に見える弾道等の様々な要素が考えられるが、これらの中で「打球音」が打球感に大きな影響を与えるものと考えられる。このことは、打球音が聞こえる状態で打球した場合に判別できた打球感が、打球音が聞こえない状態で打球した場合には判別が困難となるという報告がなされていることからも裏付けられる。
【0006】
上記各文献に記載のゴルフクラブヘッドは、打球時に発生する特定の音を抑制することで良好な打球感を得ようとしているが、あくまで打球音を抑制する方向の試みであり、このようなアプローチだけでは打球音自体を改善することは困難である。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、打球音を改善することで打球感を向上することが可能となるアイアンゴルフクラブヘッドおよび該ヘッドを備えたアイアンゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアイアンゴルフクラブヘッドは、1つの局面では、打球面を有するフェース部と、フェース部の背面側に位置するバック部と、フェース部の周囲に位置するトップエッジ部、トゥ部、ソール部およびヒール部と、トップエッジ部とトゥ部との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域と、バック部側に設けられ、先端コーナ部領域の一部を規定するようにトップエッジ部からトゥ部に向かって斜め方向に延在する部分を有し先端コーナ部領域よりも補強された補強部とを備える。
【0009】
上記補強部の厚みを、上記先端コーナ部領域の厚みよりも厚くしてもよい。また、上記補強部を、フェース部のスイートスポットに衝撃を与えてアイアンゴルフクラブヘッドを振動させた際の振動の節の位置に設けてもよい。
【0010】
本発明に係るアイアンゴルフクラブヘッドは、他の局面では、打球面を有し前方側に位置するフェース部と、フェース部よりも後方側に位置するバック部と、フェース部の周囲に位置するトップエッジ部、トゥ部、ソール部およびヒール部と、トップエッジ部とトゥ部との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域と、バック部側に位置し先端コーナ部領域の一部に沿ってトップエッジ部からトゥ部に向かって斜め方向に延在する部分を有し、かつ先端コーナ部領域よりも厚みが厚くなるように先端コーナ部領域のバック部側表面よりも後方側に突出した突状厚肉部とを備える。
【0011】
本発明に係るアイアンゴルフクラブは、上述のようなゴルフクラブヘッドを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トップエッジ部とトゥ部との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域の一部を規定するようにトップエッジ部からトゥ部に向かって斜め方向に延在する部分を有する補強部あるいは突状厚肉部を設けているので、フェース部でボールを打撃した際に最も振動し易いと考えられる先端コーナ部領域を、ボールの打撃時に積極的に振動させることができる。その結果、打球音を改善することができ、打球感を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図5を用いて説明する。本発明の実施の形態におけるアイアンゴルフクラブは、後述するアイアンゴルフクラブヘッドと、シャフトと、グリップとを備える。なお、シャフトおよびグリップとしては周知のものを採用可能である。
【0014】
図1は、本実施の形態のアイアンゴルフクラブのヘッド1の背面図であり、図2は、本実施の形態のヘッド1をトゥ部側から見た図である。
【0015】
図1および図2に示すように、ヘッド1は、キャビティバック型のアイアンゴルフクラブのヘッドであり、シャフトが接続されるホーゼル部と、前方側に位置し打球面を有するフェース部2と、フェース部2の背面側(後方側)に位置するバック部3と、フェース部2の周囲に位置するトップエッジ部4、トゥ部5、ソール部7およびヒール部6とを備える。
【0016】
本願明細書において、トップエッジ部4とはホーゼル部からトゥ部5に至るヘッド1本体の上端縁部を構成する部分であり、ソール部7はヘッド1本体の底部を構成する部分であり、トゥ部5はホーゼル部から離れた側のトップエッジ部4とソール部7とを接続する部分であり、ヒール部6はホーゼル部下端からソール部7に至る部分である。
【0017】
ヘッド1本体は、たとえばSUS630等のステンレス鋼、軟鉄、マルエージング鋼、純チタン、チタン合金、アルミニウム合金等の1種または2種以上の素材を用いて鍛造や鋳造により作製することができる。
【0018】
図1に示すように、ヘッド1は、トップエッジ部4とトゥ部5との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域8を有する。この先端コーナ部領域8は、ホーゼル部およびソール部7から離れた側のヘッド1本体の上端角部に位置する。先端コーナ部領域8は、ホーゼル部とソール部7との双方から離れているので、ヘッド1において打球時に最も変形・振動し易い部位の1つであると考えられる。図1の例では、先端コーナ部領域8は、トップエッジ部4からトゥ部5に達するヘッド1本体の周縁領域と、周縁領域よりもヘッド1本体の内側に位置し該周縁領域よりも厚みの薄い内側領域をも含む。また、先端コーナ部領域8は、ヘッド1の後方側から見て略三角形の形状を有しているが、先端コーナ部領域8の形状は任意に選択可能である。
【0019】
この先端コーナ部領域8の一部に隣接して、先端コーナ部領域8よりも補強された補強部9を設ける。より詳しくは、先端コーナ部領域8においてバック部3の中央部側に位置する部分に沿うように補強部9を設ける。
【0020】
上記補強部9は、図1に示すように、バック部3側に設けられ、先端コーナ部領域8の一部を規定するように、トップエッジ部4からトゥ部5に向かって斜め方向に延在する部分を有する。この補強部9の上端縁部は、図1の例では、図2に示すヘッド1の高さ方向の中央部よりも上側に位置している。換言すると、上述の先端コーナ部領域8は、図2に示すヘッド1の高さ方向の中央部よりも上側に位置することとなる。
【0021】
なお、図1の例では、補強部9は、全体として屈曲形状を有しているが、トップエッジ部4からトゥ部5に向かって斜め方向に延在する部分を有するものであれば、補強部9の形状としては任意の形状を選択可能である。
【0022】
また、補強部9の厚み(最大厚み)は、先端コーナ部領域8の厚み(最大厚み)よりも厚くされており、補強部9はヘッド1本体と一体的に形成されている。より詳しくは、補強部9は、バック部3の表面から後方に突出する突状の厚肉部となるようにバック部3側に設けられている。このように本実施の形態では、補強部9は、ヘッド1本体と一体的に形成されているが、別部材をヘッド1に取付けることで補強部9を設けてもよい。
【0023】
図3に示すように、ヘッド1のフェース部2(たとえばスイートスポット)でボールを打撃した場合には、先端コーナ部領域8が前方側に倒れる方向に変形するかのように、ヘッド1本体は振動するものと考えられる。これは、先端コーナ部領域8がホーゼル部とソール部7との双方から離れており、ヘッド1本体からの拘束の程度が最も少ないと考えられるからである。ここで、先端コーナ部領域8のうちトップエッジ部4の側面を除く領域の厚みをたとえば2.5mm〜6mm程度に薄くする一方で、先端コーナ部領域8の下方にたとえば5〜10mm程度と厚みの厚い補強部9を設けることにより、ボールを打撃した際に先端コーナ部領域8が比較的変形・振動し易くなる。
【0024】
特に、ボールの打撃時のヘッド1本体の振動の節の位置に補強部9を設けた場合には、振動の節の位置を補強できるので、ボールを打撃した際の先端コーナ部領域8の振動を助長することができる。このため、ボールの打撃時に、先端コーナ部領域8が積極的に振動するような態様でヘッド1本体を振動させることができる。その結果、ゴルファにとって心地よい打球音が得られ、打球感を向上することができる。
【0025】
本願発明者等は、上記の効果を確認すべく、実際に図1の形状のヘッド1を有するアイアンゴルフクラブを作製し、10名の女子プロゴルファによる試打試験を行なったところ、半数のプロゴルファが、上記アイアンゴルフクラブの打球感が良好であると判定した。このことからも、ヘッド1の背面側に先端コーナ部領域8および補強部9を設けることにより、打球感を向上することができことがわかる。
【0026】
次に、図1〜図3に示すヘッド1の形状の変形例について、図4と図5を用いて説明する。
【0027】
図1〜図3に示す実施の形態では、先端コーナ部領域8に面する補強部9の端部形状を直線状としたが、図4に示すように、先端コーナ部領域8に面する端部が曲線状である補強部10を設けてもよい。この場合も、図1〜図3に示す実施の形態の場合と同様に、ヘッド1でボールを打撃した際に先端コーナ部領域8を積極的に振動させることができるものと考えられる。したがって、図1〜図3に示す実施の形態の場合と同様に、打球感を向上することができる。
【0028】
上述の実施の形態では、本発明をキャビティバック型のアイアンゴルフクラブのヘッド1に適用した場合を例示したが、本発明はプレーンバック型のアイアンゴルフクラブにも適用可能である。
【0029】
この場合も、図5に示すように、先端コーナ部領域8の一部に沿うようにトップエッジ部4からトゥ部5に向かって斜め方向に延在する部分を有する補強部10を設ければよい。それにより、前述の各例の場合と同様に、打球感を向上することができるものと考えられる。
【0030】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の1つの実施の形態におけるアイアンゴルフクラブのヘッドの背面図である。
【図2】図1に示すヘッドをトゥ部側から見た図である。
【図3】図2に示すヘッドの変形状態の一例を模式的に示す図である。
【図4】補強部の形状の変形例を示す図である。
【図5】補強部の形状の他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ヘッド、2 フェース部、3 バック部、4 トップエッジ部、5 トゥ部、6 ヒール部、7 ソール部、8 先端コーナ部領域、9,10 補強部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打球面を有するフェース部(2)と、
前記フェース部(2)の背面側に位置するバック部(3)と、
前記フェース部(2)の周囲に位置するトップエッジ部(4)、トゥ部(5)、ソール部(7)およびヒール部(6)と、
前記トップエッジ部(4)と前記トゥ部(5)との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域(8)と、
前記バック部(3)側に設けられ、前記先端コーナ部領域(8)の一部を規定するように前記トップエッジ部(4)から前記トゥ部(5)に向かって斜め方向に延在する部分を有し、前記先端コーナ部領域(8)よりも補強された補強部(9)と、
を備えた、アイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記補強部(9)の厚みを、前記先端コーナ部領域(8)の厚みよりも厚くした、請求項1に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記補強部(9)は、前記フェース部(2)のスイートスポットに衝撃を与えて前記アイアンゴルフクラブヘッドを振動させた際の振動の節の位置に設けた、請求項1または請求項2に記載のアイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
打球面を有し、前方側に位置するフェース部(2)と、
前記フェース部(2)よりも後方側に位置するバック部(3)と、
前記フェース部(2)の周囲に位置するトップエッジ部(4)、トゥ部(5)、ソール部(7)およびヒール部(6)と、
前記トップエッジ部(4)と前記トゥ部(5)との接続部の近傍に位置する先端コーナ部領域(8)と、
前記バック部(3)側に位置し、前記先端コーナ部領域(8)の一部に沿って前記トップエッジ部(4)から前記トゥ部(5)に向かって斜め方向に延在する部分を有し、かつ前記先端コーナ部領域(8)よりも厚みが厚くなるように前記先端コーナ部領域(8)の前記バック部(3)側表面よりも後方側に突出した突状厚肉部(9)とを備えた、アイアンゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のアイアンゴルフクラブヘッドを備えたアイアンゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−240587(P2009−240587A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91691(P2008−91691)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】