説明

アキュムレータ

【目的】 シリンダ内の圧力室の容量及びコイルバネの弾性力を十分に確保し、且つ、油圧回路の配管を複雑化せずに油圧を保持する。
【構成】 シリンダ1と、該シリンダ1に往復動自在に嵌入したピストン2と、該ピストン2を一端1a側へ押圧するコイルバネ3とを備える。シリンダ1の一端1aの周縁には、基台部4が設けられ、他端1bの外方には、複数本の連結棒6を介して基台部4に連結したバネ座5が設けられている。
【効果】 油圧回路の作動油が著しく高圧に達しても、ピストン2をシリンダ1の一端1a側へ押出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、油圧回路中に設けられるアキュムレータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、図3に示すように、油圧ポンプ8で発生される油圧を逆止弁9を介して工作機の油圧シリンダ等に供給するように構成した油圧回路には、ブラダ式アキュムレータBが設けられている。また、前述の油圧回路内の作動油の油圧を一定の範囲内に保持するために、前記油圧ポンプ8の下流側に、作動油の油圧が所定値以下に達すると前記油圧ポンプ8を起動させ、作動油の油圧が所定値以上に達すると前記油圧ポンプ8を停止する圧力スイッチ17を設けている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記例示のブラダ式アキュムレータBでは、封入されている高圧ガスを定期的に補充しなければならず、保守管理が煩雑であった。また、油圧回路中に圧力スイッチ17を設けるための分岐管18を付加しなければならないので、油圧回路の配管が複雑化するという問題がある。そこで、実開昭61-25587号公報に記載されているようなシリンダ内にコイルバネを収納したバネ式アキュムレータを適用することが提案された。
【0004】しかしながら、上記例示のバネ式アキュムレータでは、例えば油圧で昇降駆動するエレベータ等のように、作動油が著しく高圧に達する油圧回路に適用した場合、コイルバネの弾性力が不足し、高圧の作動油に抗してピストンを圧力保持室側へ押出すことができないという問題がある。これは、前記コイルバネは、前記シリンダ内に収納されることに加え、前記シリンダ内の圧力保持室の容積を確保する必要性から、線径を増加することが制限されるからである。
【0005】この発明の目的は、上述の問題に鑑みてなされたもので、シリンダ内の圧力室の容量及びコイルバネの弾性力を十分に確保し、且つ、油圧回路の配管を複雑化せずに油圧を保持できるアキュムレータを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のアキュムレータは、一端の内部を油圧回路に連通したシリンダと、該シリンダの内部に往復動自在に嵌入したピストンと、該ピストンをシリンダの一端側へ押圧するコイルバネとからなるアキュムレータであって、シリンダの一端周縁にフランジ状の基台部を設け、シリンダの他端外方にバネ座を配置し、該バネ座を、シリンダの長手方向に延びる複数本の連結棒を介して基台部と連結し、ピストンの油圧作用面と反対側をシリンダの他端開口から突出してバネ受け部を設けると共に、バネ座とバネ受け部との間に、ピストンの油圧作用面より大きな外径を有するコイルバネを介在したものである。
【0007】請求項2記載のアキュムレータは、上記のピストンのバネ受け部に取付けられた被検出体と、ピストンがシリンダの一端側の所定位置に達すると被検出体の位置を検出して下限検出信号を発信する下限検出器と、ピストンがシリンダの他端側の所定位置に達すると被検出体の位置を検出して上限検出信号を発信する上限検出器とを備えたものである。
【0008】
【作用】請求項1記載のアキュムレータによると、シリンダの他端外方に配置したバネ座と、ピストンの油圧作用面と反対側をシリンダの他端開口から突出して設けたバネ受け部との間に、ピストンの油圧作用面より大きな外径を有するコイルバネを介在したものであるため、コイルバネをシリンダ内に収納可能な寸法形状とする必要がなく、所望の弾性力を得ることができる。また、バネ座を、シリンダの長手方向に延びる複数本の連結棒を介して基台部と連結しているので、ピストンのバネ受け部及びコイルバネが外部に露出し、目視により保守点検が行える。
【0009】請求項2記載のアキュムレータによると、ピストンのバネ受け部に被検出体を取付け、ピストンがシリンダの一端側の所定位置に達すると被検出体の位置を下限検出器が検出して下限検出信号を発信し、ピストンがシリンダの他端側の所定位置に達すると被検出体の位置を上限検出器が検出して上限検出信号を発信するので、油圧回路中に分岐管を付加して圧力スイッチ等を設けて油圧を検出することが不要である。
【0010】
【実施例】図1に示すように、この発明の一実施例のアキュムレータAは、一端1aの内部を油圧回路の配管Pに連通したシリンダ1と、該シリンダ1の内部に往復動自在に嵌入したピストン2と、該ピストン2を前記シリンダ1の一端1a側へ押圧するコイルバネ3とを備えたものである。前述の油圧回路としては、例えば図2に示すように、油圧ポンプ8で発生される油圧を逆止弁9を介してエレベータ等を昇降駆動させる油圧シリンダ(図示せず)に供給するものが挙げられる。
【0011】図1に示すように、前記シリンダ1の一端1aの周縁には、フランジ状の基台部4が設けられ、他端1bの外方にはバネ座5が配置されている。また、前記シリンダ1の一端1aの開口には中央にポート1cを形成した端部材1dが嵌め込まれている。前記バネ座5は、前記シリンダ1の長手方向に延びる複数本の連結棒6を介して前記基台部4に連結されている。
【0012】前記ピストン2は、油圧作用面2aと反対側を前記シリンダ1の他端開口から突出すると共にバネ受け部7を一体形成している。該バネ受け部7は、前記油圧作用面2aと反対側の周縁をフランジ状に突出したものである。前記ピストン2の周面には、弾性材からなるピストンリング2b及びテフロン樹脂からなるリング状のシール材2cが各々設けられている。前記油圧作用面2aには、前記シリンダ1の外部に連通する空気抜穴2dが開口されている。前記コイルバネ3は、前記ピストン2の油圧作用面2aよりも大きな外径を有し、前記バネ座5と前記バネ受け部7との間に介在している。
【0013】前記バネ受け部7には、複数本のガイドピン10及び該ガイドピン10より細径で先端にテーパを設けた被検出体11が各々固定され、前記シリンダ1の他端1bの周縁には、前記複数本のガイドピン10及び被検出体11を前記シリンダ1の長手方向へ案内するガイド穴12a,12bを形成したフランジ状のガイド部材12が固定されている。前記基台部4は、前記配管Pを内部に形成した管座13の表面にボルト(図示せず)で固定されており、また前記シリンダ1に沿ってブラケット14を立ち上げ、該ブラケット14に、前記シリンダ1の長手方向に所定間隔を開けて下限検出器15及び上限検出器16を各々固定している。
【0014】前記下限検出器15は、前記シリンダ1内の油圧が下降して前記コイルバネ3の弾性力によって前記ピストン2が前記シリンダ1の一端1a側の所定位置に達すると、前記被検出体11に係合して下限検出信号を発信するリミットスイッチである。前記上限検出器16は、前記シリンダ1内の油圧が上昇して前記コイルバネ3が圧縮されることによって前記ピストン2が前記シリンダ1の他端1b側の所定位置に達すると、前記被検出体11との係合が外れて上限検出信号を発信するリミットスイッチである。
【0015】以上のように構成したアキュムレータAによれば、前記コイルバネ3を前記シリンダ1内に収納可能な寸法形状とする必要がないので、従来のようにコイルバネ3の弾性力が制限されることがない。従って、油圧で昇降駆動するエレベータ等のように、作動油が著しく高圧に達する油圧回路に適用した場合でも、高圧の作動油に抗して前記ピストン2を前記シリンダ1の一端1a側へ押出すことができる。また、前記ピストン2のバネ受け部7及び前記コイルバネ3が外部に露出するので、目視により容易に保守点検を行える。
【0016】更に、前記下限検出器15及び上限検出器16から各々発信される下限検出信号及び上限検出信号に基づいて前記油圧ポンプ8をON/OFF制御することができる。これにより、圧力スイッチや分岐部を設けて前記管座13の配管Pを複雑化することなく、作動油の油圧を一定に保持することが可能である。
【0017】
【発明の効果】請求項1記載のアキュムレータによると、シリンダの他端外方に配置したバネ座と、ピストンの油圧作用面と反対側をシリンダの他端開口から突出して設けたバネ受け部との間に、ピストンの油圧作用面より大きな外径を有するコイルバネを介在したものであるため、コイルバネをシリンダ内に収納可能な寸法形状とする必要がなく、従来のようにコイルバネの弾性力が制限されることがない。
【0018】従って、油圧で昇降駆動するエレベータ等のように、作動油が著しく高圧に達する油圧回路に適用した場合でも、高圧の作動油に抗してピストンをシリンダの一端側へ押出すことができる。また、バネ座を、シリンダの長手方向に延びる複数本の連結棒を介して基台部と連結しているので、ピストンのバネ受け部及びコイルバネが外部に露出し、目視により容易に保守点検が行える。
【0019】請求項2記載のアキュムレータによると、ピストンのバネ受け部に被検出体を取付け、ピストンがシリンダの一端側の所定位置に達すると被検出体の位置を下限検出器が検出して下限検出信号を発信し、ピストンがシリンダの他端側の所定位置に達すると被検出体の位置を上限検出器が検出して上限検出信号を発信するので、下限検出器及び上限検出器から各々発信される下限検出信号及び上限検出信号に基づいて油圧ポンプ等をON/OFF制御することができる。これにより、圧力スイッチ等の付加やそのための分岐管等の付加による油圧回路の複雑化を伴うことなく、作動油の油圧を一定に保持することがてきる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のアキュムレータを管座に取付けた状態の断面図。
【図2】この発明の一実施例のアキュムレータを設けた油圧回路の概略図。
【図3】従来のブラダ式アキュムレータを設けた油圧回路の概略図。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 ピストン
2a 油圧作用面
3 コイルバネ
4 基台部
5 バネ座
6 連結棒
7 バネ受け部
11 被検出体
15 下限検出器
16 上限検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一端の内部を油圧回路に連通したシリンダと、該シリンダの内部に往復動自在に嵌入したピストンと、該ピストンを前記シリンダの一端側へ押圧するコイルバネとからなるアキュムレータであって、前記シリンダの一端周縁にフランジ状の基台部を設け、前記シリンダの他端外方にバネ座を配置し、該バネ座を、前記シリンダの長手方向に延びる複数本の連結棒を介して前記基台部と連結し、前記ピストンの油圧作用面と反対側を前記シリンダの他端開口から突出してバネ受け部を設けると共に、前記バネ座と前記バネ受け部との間に、前記ピストンの油圧作用面より大きな外径を有するコイルバネを介在したことを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】 前記ピストンのバネ受け部に取付けられた被検出体と、前記ピストンが前記シリンダの一端側の所定位置に達すると前記被検出体の位置を検出して下限検出信号を発信する下限検出器と、前記ピストンが前記シリンダの他端側の所定位置に達すると前記被検出体の位置を検出して上限検出信号を発信する上限検出器とを備えた請求項1記載のアキュムレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平8−247101
【公開日】平成8年(1996)9月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−48480
【出願日】平成7年(1995)3月8日
【出願人】(000004019)株式会社ナブコ (7)