説明

アクセサリ判別機能を有するカメラ

【目的】 撮影レンズに装着されたアクセサリの種類を判別することができるカメラを提供すること。
【構成】 異種のアクセサリが着脱可能な撮影レンズ、異種のアクセサリのそれぞれに設けられた識別手段、撮影レンズに装着されたアクセサリが有する識別手段に基づいて識別信号を出力する信号出力手段、およびこの信号出力手段からの識別信号を受けて、装着されたアクセサリの種類を判別する判別手段を有するアクセサリ判別機能を有するカメラ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、撮影レンズに装着されたアクセサリの種類を判別する機能を有するカメラに関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】カメラの撮影レンズ用アクセサリは従来、撮影レンズの前端部に装着手段を介して、単に装着されていた。このため、撮影レンズにどのようなアクセサリが装着されたかをカメラに認識させることができず、例えばフィルタを装着しているにも拘わらず露出値を補正せずに撮影したり、他人の後で同じカメラを使用する場合に撮影レンズにアクセサリが装着されているかどうか確かめずに撮影し、意に反した構図で撮影してしまう等の不都合を招くことがあった。
【0003】
【発明の目的】本発明は、上述した従来の問題点に鑑み成されたもので、撮影レンズに装着されたアクセサリの種類を判別することができるカメラを提供することを目的とする。
【0004】
【発明の概要】上記目的を達成する本発明は従って、異種のアクセサリが着脱可能な撮影レンズ、異種のアクセサリのそれぞれに設けられた識別手段、上記撮影レンズに装着されたアクセサリが有する識別手段に基づいて識別信号を出力する信号出力手段、およびこの信号出力手段からの識別信号を受けて、装着されたアクセサリの種類を判別する判別手段を有することを特徴としている。
【0005】
【実施例】以下図示実施例に基づいて本発明を説明する。図5は、本発明を適用したカメラを示す斜視図である。カメラ11のカメラボディ12は、その前部に撮影レンズ13を有し、後部に裏蓋14を開閉可能に有している。カメラボディ12の一側部には、上面にシャッタボタン16を有するグリップ部15が設けられ、他側部の上面には、液晶表示部41が設けられている。
【0006】撮影レンズ13は図1に示されるように、レンズ17を内蔵し、内周面前端に形成された雌ねじ19を有している。さらに撮影レンズ13の内周には、雌ねじ19の後方に位置させ、撮影レンズ13の光軸中心に向けて突出成形した環状支持突起20が設けられ、この環状支持突起20の後方に、撮影レンズ13の光軸前後方向に長く構成された抵抗体21が設けられている。
【0007】環状支持突起20の支持溝20aに、接点部材22の先端支持部22aが前後方向移動可能に摺動支持されている。この接点部材22は、その接点ブラシ22bを抵抗体21に摺動可能に当接させ、その先端支持部22aを、装着される例えばフィルタ25の壁部28aに圧接させるように圧縮ばね24により前方に向けて付勢されている。この圧縮ばね24は、撮影レンズ13の内周側に突出成形したばね当部34と接点部材22との間に縮設されている。
【0008】抵抗体21と接点部材22により抵抗値読取装置(信号出力手段)が構成されており、抵抗体21に摺接する接点ブラシ22bの位置に対応させた抵抗値(識別信号)が、マイクロコンピュータ30(図5)内のアクセサリ判別手段31に出力される。
【0009】このアクセサリ判別手段31は、入力した抵抗値に基づいて所定の演算を実行し、撮影レンズ13の前端部に装着されたアクセサリの種類を判別する。マイクロコンピュータ(以後、マイコンと言う)30はさらに対応処置手段32を有している。この対応処置手段32は、アクセサリ判別手段31による判別結果に基づいて、例えば装着されたアクセサリがフィルタである場合はそれに応じて露出値を補正し、またレンズフードである場合は、該レンズフードが装着されている旨を液晶表示部41(図5)に表示し、撮影者に知らせる。
【0010】図1に示されるように、フィルタ25は、その内周溝26に嵌め込まれたフィルタ本体27と、後端部28の外周面に形成された雄ねじ29を有している。後端部28は、雄ねじ29を雌ねじ19に対し完全に螺合させたとき、接点部材22の先端支持部22aを光軸後方に所定量押し込むように、その長さ、つまり壁部(識別手段)28aの先端支持部22aに対する当接位置が決定されている。
【0011】また図2に示されるように、レンズフード40は、その後端部28′の外周面にフィルタ25と同じ雄ねじ29が形成されており、この後端部28′の壁部(識別手段)28′aは、レンズフード40を雌ねじ19に完全に螺合させたときの先端支持部22aとの当接位置が、フィルタ25の場合より所定量前方側に位置するように構成されている。従って、フィルタ25の装着時に比して接点部材22が前方側に位置されるから、フィルタ25とは異なる抵抗値が出力される。このように、アクセサリ毎にその後端部28に対応する部分の形状を変化させることにより、その種別に応じた抵抗値を出力可能な複数のアクセサリを構成することができる。図中のOは撮影レンズ13の光軸を示している。
【0012】上記構成を有するカメラ11の作動を、このカメラ11がレンズシャッタ式等、TTL以外の測光方式のカメラである場合と、TTL測光方式の一眼レフカメラである場合とに分けて、それぞれ説明する。
【0013】まず、カメラ11がTTL測光方式でないレンズシャッタ式である場合を、図3のフローチャートに沿って説明する。すなわち、アクセサリが装着されていない状態の撮影レンズ13に、例えばフィルタ25を、雄ねじ29を雌ねじ19に完全に螺合させることにより装着すると、接点部材22の先端支持部22aが圧縮ばね24に抗して、後端部28の壁部28aの位置に対応する距離だけ後方に押し込まれる。すると、接点ブラシ22bが抵抗体21に対し摺動してその位置を変え、この位置に対応する抵抗値をマイコン30内のアクセサリ判別手段31に向けて出力する。
【0014】これにより、アクセサリ判別手段31が、入力した抵抗値に基づいて所定の演算を実行し、撮影レンズ13の前端部に装着されたアクセサリが、フィルタ25であるか否か判断する(ステップS1)。装着されたアクセサリがフィルタ25であると判断されれば、対応処置手段32により、このフィルタ25に対応すべき露出補正を実行する(S2)。この露出補正は、カメラ11がレンズシャッタ式であり、測光系が撮影光学系とは異なった構成とされていることにより生じる、測光系に基づく露出値と実際の露出値との違いを合わせるため行なわれる。
【0015】S1において、アクセサリがフィルタ25ではないと判断した場合又はS2における対応処置が終了した場合は、S3に進んで、アクセサリはレンズフード40であるか否か判断する。この結果、レンズフード40であるとされれば、対応処置手段32により、液晶表示部41に対し“ストロボ照射角と撮影画角の認識”および“ケラレ防止”を促す旨の表示を行なう(S4、S5)。
【0016】S3において、アクセサリがレンズフード40ではないと判断した場合又はS4とS5における対応処置が終了された場合は、S6に進み、アクセサリはフロントコンバージョンレンズであるか否か判断する。この結果、フロントコンバージョンレンズであるとされれば、対応処置手段32が、ファインダ光学系の倍率を変え、該コンバージョンレンズを装着したことによる撮影レンズ13とファインダ光学系との画角の違いを補正する(S7)。
【0017】S6において、装着されたアクセサリがフロントコンバージョンレンズではないと判断した場合又はS7における対応処置が終了された場合は、S8に進んで、アクセサリはリバースアダプタであるか否か判断する。そして、リバースアダプタであるとされれば、対応処置手段32が、リバース状態で装着された撮影レンズに関する情報をマイコン30に入力する(S9)。
【0018】S8において、装着されたアクセサリがリバースアダプタではないと判断した場合又はS9における処置が終了された場合は、S10に進んで、アクセサリはクローズアップレンズであるか否か判断する。クローズアップレンズであると判断されれば、対応処置手段32が、クローズアップレンズに対応させた専用の撮影モードに切り換える(S11)。この撮影モードへの切換えにより、撮影レンズ13とファインダパララックスの補正を実行する。またS10において、アクセサリはクローズアップレンズではないと判断された場合又はS11における処置が終了された場合は、全処理を終了する。
【0019】一方、カメラ11がTTL測光方式の一眼レフカメラである場合を、図4のフローチャートに沿って説明する。S12において、撮影レンズ13にレンズフード40が装着されたと判断した場合は、対応処置手段32により、液晶表示部41に対し“ストロボ照射角と撮影画角の認識”および“ケラレ防止”を促す旨の表示を行なう(S13、S14)。
【0020】S12において、アクセサリはレンズフード40ではないと判断した場合又はS13とS14における対応処置が終了された場合は、S15に進んで、アクセサリがフロントコンバージョンレンズであるか否か判断する。この結果、フロントコンバージョンレンズであるとされれば、対応処置手段32が、このレンズを装着したことによる合成F値と合成焦点距離を演算し、マイコン30のメモリに記憶する(S16)。
【0021】S15において、アクセサリはフロントコンバージョンレンズではないと判断した場合又はS16における対応処置が終了された場合は、S17に進んで、アクセサリはリバースアダプタであるか否か判断する。リバースアダプタであると判断した場合は、対応処置手段32が、カメラ側では、自動露出モード、シャッタ優先モードおよびプログラムモードのうちいずれのモードに設定されているか判断し、これらのモードのいずれかに設定されているときは、そのモードを絞り優先モードに切換える(S19)。またS18において、いずれのモードにも設定されていないと判断した場合、すなわちマニュアルと判断した場合は、何も処置せず、そのままS20に進む。
【0022】S17において、アクセサリがリバースアダプタではないと判断した場合又はS19における処置が終了された場合は、S20に進んで、アクセサリはクローズアップレンズであるか否かを判断する。この結果、クローズアップレンズであれば、対応処置手段32が、クローズアップレンズに対応させた専用の撮影モードに切換える(S21)。またS20において、アクセサリはクローズアップレンズではないと判断した場合又はS21における処置が終了された場合は、全処理を終了する。
【0023】図6により他の実施例を説明する。この実施例では、アクセサリ37はねじ込み式でなくバヨネット式とされており、このアクセサリ37の後端部38の外周面には、所定間隔で配置された複数のアクセサリ側接点39が設けられている。このアクセサリ側接点39は、アクセサリ37を前端部35に対し完全に装着したときのレンズ側接点36に対する接触状態が、種類の違うアクセサリ間で異なるように、その接点間隔および形状が決定されている。撮影レンズ13の前端部35の内周面には、アクセサリ37を前端部35に装着したときのアクセサリ側接点39と対応する位置に、この接点39と接続する上記複数のレンズ側接点36が設けられている。これらのレンズ側接点36とアクセサリ側接点39により信号出力手段が構成されている。
【0024】したがって、撮影レンズ13の前端部35にアクセサリ37を完全に装着すると、レンズ側接点36に対してアクセサリ側接点39が適正に接続され、これにより、アクセサリ37に対応する識別信号がアクセサリ判別手段31に出力されて、上記第一の実施例と同様の制御が行なわれる。
【0025】図7によりさらに他の実施例を説明する。この実施例においても、アクセサリ42はねじ込み式ではなくバヨネット式とされており、このアクセサリ42の後端部には、係合切欠43が形成されている。この係合切欠43は、アクセサリ42を前端部35に対し完全に装着したときに、抵抗値読取装置の接点ブラシに連動する係合部材44を回動移動させるもので、異なるアクセサリ毎にその形状を変えれば、係合部材44の回動移動角を個々に異ならせ、種々のアクセサリに対応させた抵抗値(識別信号)をアクセサリ判別手段31に出力させる構成が可能となる。
【0026】したがって、撮影レンズ13の前端部35にアクセサリ42を装着すると、係合部材44が、個々のアクセサリに対応して形成された係合切欠43によって所定量回転移動されるから、これによりアクセサリ37に対応する識別信号がアクセサリ判別手段31に出力されて、第一の実施例と同様の制御が行なわれる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明によると、撮影レンズに装着されるアクセサリの種類を容易に判別することができるから、フィルタを装着したにも拘わらず露出値を補正せずに撮影したり、クローズアップレンズが装着されていることに気付かずに、意に反した構図で撮影してしまう等の不都合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアクセサリ判別機能を有するカメラの第一実施例の要部を示す断面図である。
【図2】同実施例の図1とは異なるアクセサリを装着した場合の断面図である。
【図3、図4】第一実施例の作動を示すフローチャートである。
【図5】本発明によるアクセサリ判別機能を有するカメラの全体を示す斜視図である。
【図6】本発明によるアクセサリ判別機能を有するカメラの第二実施例の要部を示す斜視図である。
【図7】本発明によるアクセサリ判別機能を有するカメラの第三実施例の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 カメラ
12 カメラボディ
13 撮影レンズ
17 レンズ
19 雌ねじ
20 環状支持突起
20a 支持溝
21 抵抗体
22 接点部材
22a 先端支持部
22b 接点ブラシ
24 圧縮ばね
25 フィルタ
27 フィルタ本体
28 28′ 後端部
28a 28′a 壁部
29 雄ねじ
30 マイクロコンピュータ
31 アクセサリ判別手段
32 対応処置手段
35 前端部
36 レンズ側接点
37 42 アクセサリ
39 アクセサリ側接点
40 レンズフード
41 液晶表示部
43 係合切欠
44 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 異種のアクセサリが着脱可能な撮影レンズ;異種のアクセサリのそれぞれに設けられた識別手段;上記撮影レンズに装着されたアクセサリが有する識別手段に基づいて識別信号を出力する信号出力手段;および、この信号出力手段からの識別信号を受けて、装着されたアクセサリの種類を判別する判別手段;を有することを特徴とするアクセサリ判別機能を有するカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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