説明

アクセサリ収納室を備えたカメラ

【課題】 カメラの寸法を変えずにアクセサリを収納できるようにする。
【解決手段】 カメラ2は上下に延在するフィルム巻き取り用の中空のスプール4を有する。スプール4の下端に、スプール4の内側空間16をスプール4の下方に開放する第1の開口8を形成する。カメラカバー10に、第1の開口8とほぼ同心で第1の開口8を通じてスプール4の内側空間16をカメラカバー10の下方に開放する第2の開口14を形成する。スプール4の内側空間16、すなわちアクセサリ収納室36に、小型の三脚38を閉じた状態で収納する。三脚38の脚部先端近傍には溝48が形成され、第2のコイルスプリング31により付勢された爪部材28の先端がその溝48に係合することで、三脚38はアクセサリ収納室36に収納された状態に保持される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカメラに関し、特に、フィルム巻き取り用のスプールを有するカメラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のカメラの中には、カメラ本体を覆う複数のカバー片をカメラ本体の底部に開閉可能に取り付け、必要な時にこれらカバー片を展開させ、三脚として使用できるようにしたものが提供されている。このようなカメラによれば、三脚をカメラと別に持ち運ぶ必要がないので便利である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、カバー片は、これらカバー片の不使用時に、カメラ本体を覆う構造であるため、三脚を備えていない通常のカメラに比べ大きくなり、カメラの大型化を招く結果となっている。一方、自動巻上カメラの多くはフィルム巻き取り用のスプール内に巻上用モータを配置しているが、手動巻上カメラや、巻上用モータをスプール内に配置していないカメラでは、このスプールは一般に中空状で、このスプールの内部空間は何ら利用されておらず、デッドスペースとなっている。本発明は前記事情に鑑みフィルム巻き取り用のスプールの内部空間に着目して案出されたものであり、本発明の目的は、カメラの寸法を変えることなく三脚などのカメラのアクセサリを収納できるようにしたアクセサリ収納室を備えたカメラを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部に形成され、スプールの内側空間をスプールの外部に開放する第1の開口と、カメラカバーに前記第1の開口とほぼ同心に形成され、前記第1の開口を通じてスプールの内側空間をカメラカバーの外部に開放する第2の開口とを備え、スプールの内側空間に前記第1の開口と第2の開口を通じてアクセサリが収納されることを特徴とする。また、本発明は、アクセサリをスプールの内側空間に収納された状態に保持する保持手段が設けられていることを特徴とする。また、本発明は、前記保持手段が、カメラカバーの前記第2の開口の縁部近傍に、スプールの中心軸方向に変位可能に配置され、先端部が前記第2の開口の縁部より突出可能な爪部材と、前記爪部材をスプールの中心軸方向に付勢する第2のスプリングと、前記爪部材に設けられ、カメラカバーに形成された第3の開口を通じてカメラカバーの外部に露出している摘み部とで構成されていることを特徴とする。
【0005】また、本発明は、アクセサリが、スプールの内側空間に収納された状態で前記爪部材の先端部が係合する凹部を有していることを特徴とする。また、本発明は、スプールの内側空間の、前記第1の開口と反対側の奥部に配設された第1のスプリングを有し、前記第1のスプリングは前記内側空間に収納されたアクセサリを前記第1の開口の方向に付勢することを特徴とする。また、本発明は、アクセサリがカメラの三脚、カメラを遠隔操作するリモコンユニット、取り扱い説明書のいずれかであることを特徴とする。また、本発明は、前記第2の開口がカメラカバーの底面に形成され、アクセサリはカメラの三脚であり、前記三脚は、脚部を下にしてスプールの内側空間に収納され、前記三脚は、上端部近傍の側面に第2の凹部を有し、前記第2の開口の近傍に、三脚の脚部をカメラカバーの外側に取り出した状態で前記第2の凹部に係合して三脚の上端部をカメラカバーで支持するクリック機構を備えていることを特徴とする。
【0006】また、本発明は、アクセサリがカメラの三脚であり、カメラカバーの底面には前記三脚を取り付けるための取付部が形成されていることを特徴とする。また、本発明は、前記第2の開口を閉鎖する蓋を備えたことを特徴とする。また、本発明は、フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部は、スプールの内側空間がカメラカバーの外部に開放されて形成され、この開放された部分を通じてスプールの内側空間にアクセサリが収納されることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明によるアクセサリ収納室を備えたカメラの一例を示す要部断面図、図2は同斜視図である。このアクセサリ収納室を備えたカメラ2は上下に延在するフィルム巻き取り用の中空のスプール4を有し、スプール4の周囲は、スプール4との間に間隔をおいて筒状の壁部6が取り囲み、スプール4との間にスプール室5が形成されている。スプール4の上下端はこの壁部6により回転可能に支持されている。
【0008】スプール4の延在方向における一方の端部には、実施例ではスプール4の下端には第1の開口8が形成され、また、カメラ2のカメラカバー10の底面12には第1の開口8とほぼ同心に第2の開口14が形成されている。スプール4の内側空間16は、第1の開口8によってスプール4の外部に(下方に)開放され、さらに、第2の開口14によってカメラカバー10の外部に(下方に)開放されている。
【0009】本実施例ではスプール4の、第1の開口8と反対側の端部も開放されているが、この箇所はスプール押え部材18により閉鎖されている。したがって、スプール4の内側空間16の、第1の開口8と反対側の奥部20はこのスプール押え部材18により形成されている。奥部20のほぼ中央には略円形の凹部22が形成され、その凹部22内に第1のコイルスプリング24が収容されている。なお、壁部6とスプール押え部材18は一体的に固定され、スプール押え部材18の側面に形成された切欠部(不図示)を通してギヤ列(不図示)がスプール4に噛合され、フィルムの巻き上げや巻き戻し時にスプール4が回転駆動される。
【0010】カメラカバー10の第2の開口14の縁部26近傍には、爪部材28がスプール4の中心軸方向に変位可能に配置されている。爪部材28の先端部は第2の開口14の縁部26よりスプール4の中心軸方向に突出可能である。爪部材28はカメラカバー10の内側に設けられた爪収容部30内に収容されており、爪収容部30の奥には第2のコイルスプリング31が配設され、爪部材28をスプール4の中心軸方向に付勢している。爪部材28の側部にはロック摘み32が突設されており、ロック摘み32は、カメラカバー10の底面12に形成された第3の開口34を通じてカメラカバー10の外部に露出し、指による操作が可能となっている。これら爪部材28、コイルスプリング31、ロック摘み32により、アクセサリをスプール4の内側空間16、すなわちアクセサリ収納室36内に収納した状態に保持する保持手段が構成されている。
【0011】本実施例では、アクセサリ収納室36内には一例として小型の三脚38が収納される。三脚38は3本の脚部40とその上部の連結部42とから成り、各脚部40はヒンジ44を介して揺動可能に連結部42に連結されている。連結部42の頂部のほぼ中央の箇所に雄ネジ46が立設されている。また、各脚部40の下端近傍の側面には溝48(本発明の凹部)が、脚部40の長手方向に直交する方向に延設されている。脚部40を閉じた状態での脚部40全体の径、および連結部42の径は、スプール4の内径より若干小さい寸法に形成され、3本の脚部40の下端は隙間なく閉じるように形成されている。
【0012】このような三脚38をアクセサリ収納室36内に収納する際は、図1に示したように、3本の脚部40を閉じた状態とし、連結部42を上に脚部40を下にしてアクセサリ収納室36内に挿入する。そして全体をアクセサリ収納室36内に収めると、脚部40に形成された溝48に爪部材28の先端が係合する。このとき連結部42に立設された雄ネジ46は上部は第1のコイルスプリング24に当接し、第1のコイルスプリング24のスプリング力に抗して凹部22内に挿入された状態となる。
【0013】したがって三脚38は第1のコイルスプリング24により第2の開口14方向に付勢され、一方、爪部材28が脚部40の溝48に係合しているので、三脚38はアクセサリ収納室36内に収められた状態で保持される。なお、三脚38の全長は、この状態でカメラカバー10の外部に突出することがない寸法に形成されている。
【0014】アクセサリ収納室36内に収納された三脚38を取り出す場合には、ロック摘み32に指を掛け、スプール4の中心軸から遠ざかる方向に第2のコイルスプリング31のスプリング力に抗して爪部材28を移動させる。その結果、爪部材28の先端の溝48に対する係合が解消され、三脚38は第1のコイルスプリング24によって付勢されているので、脚部40の下端部がカメラカバー10の外部に突出する。カメラ2の使用者はこの脚部40の下端を摘んで三脚38をアクセサリ収納室36から取り出すことができる。
【0015】カメラカバー10の底面12のほぼ中央の箇所には、図2に示したように、ネジ孔50が形成されており、アクセサリ収納室36から取り出した三脚38は、図3に示すように、その雄ネジ46をこのネジ孔50に螺着することでカメラ2に取り付ける。そして、3本の脚部40を開き、カメラ2を適切な箇所に設置すれば安定した状態で撮影を行うことができる。
【0016】このように、本実施例のアクセサリ収納室を備えたカメラ2では、デッドスペースであるスプール4の内側空間16を三脚38の収納スペースとして利用しているので、三脚38をカメラ2と別に持ち運ぶ必要がなく便利であり、また、従来のように三脚38を構成する専用の部材やその専用の部材の収納スペースを確保する必要がなく、したがってカメラの寸法が大きくなるという問題も発生しない。
【0017】次に第2の実施例について説明する。図4は第2の実施例のアクセサリ収納室を備えたカメラを示す要部断面図である。このアクセサリ収納室36を備えたカメラ52が、上記アクセサリ収納室36を備えたカメラ2と異なるのは、三脚の連結部64をカメラカバー10に形成された第2の開口14の箇所に支持するクリック機構54を備えている点である。このクリック機構54は、球体56、第3のコイルスプリング58、球体収容部60などにより構成されている。球体収容部60は、カメラカバー10の第2の開口14近傍の箇所に設けられ、アクセサリ収納室36内に開口している。球体収容部60には、まず第3のコイルスプリング58が収容され、続いて球体56が収容されている。球体56はアクセサリ収納室36に対して出没可能となっており、第3のコイルスプリング58によってスプール4の中心軸方向に付勢されている。
【0018】この実施例では、図4に示すように、三脚62の連結部64には、その周方向に連続して溝66(本発明の第2の凹部)が形成されている。三脚62の構造はこの点以外では上述した三脚38と同じであり、爪部材28が脚部40の溝48に係合し、これにより三脚62はアクセサリ収納室36内に収められた状態で保持される。また、本実施例では、球体収容部60と爪収容部30とは、カメラカバー10の底面12から同じ距離の位置に形成されており、そして、球体56と爪部材28とはスプール4の中心軸を挟んで対向して配置されている。
【0019】このカメラ52では、三脚62は上述したカメラ2の場合と同様にアクセサリ収納室36内に収納されるが、三脚62をアクセサリ収納室36から引き出すときは、三脚62の連結部64が第2の開口14の縁部26に支持され、三脚62はその状態で利用される。すなわち、連結部64を第2の開口14付近まで引き出すと、第3のコイルスプリング58により付勢された球体56は連結部64の溝66に係合し、また同時に、第2のコイルスプリング31により付勢された爪部材28の先端が連結部64の溝66に係合する。その結果、連結部64はカメラカバー10の第2の開口14の箇所に支持される。この状態で、図5にも示すように、三脚62の3本の脚部40を広げれば、カメラ2を適切な箇所に設置して安定した状態で撮影を行うことが可能となる。
【0020】この場合にも第1の実施例と同様の効果が得られ、さらにこの第2の実施例では、三脚62をカメラカバー10の底面12に設けられたネジ孔に装着固定するといった手間を省くことができる。なお、この第2の実施例では、開かれた各脚部40の角度や各脚部40の長さを等しくした場合、連結部64が第2の開口14の箇所に支持され三脚62全体がカメラ52の一側に位置する関係上、三脚62によりカメラ52を安定した状態で支持できない場合が生じることが考えられるが、このように場合には、開かれた各脚部40の角度や各脚部40の長さを個別に変えることや、カメラ52の重心をスプール4側に変位させる等の種々の手段により三脚62でカメラ52を安定した状態で支持することが可能となる。また、この第2の実施例では、球体56のみならず爪部材28も連結部64の溝66に係合するとしたが、球体56のみが溝66に係合する構造とすることも無論可能である。
【0021】また、第1および第2の実施例では、アクセサリ収納室には三脚を収納するとしたが、三脚以外にも、例えばカメラを操作するためのリモコンユニットや、筒状に丸めたり適切に折り畳んだカメラの取り扱い説明書などを収納することができる。また、第2の開口14を閉鎖する蓋を設け、収納されたアクセサリが露出しないようにしてもよい。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部に形成され、スプールの内側空間をスプールの外部に開放する第1の開口と、カメラカバーに前記第1の開口とほぼ同心に形成され、前記第1の開口を通じてスプールの内側空間をカメラカバーの外部に開放する第2の開口とを備え、スプールの内側空間に前記第1の開口と第2の開口を通じてアクセサリが収納される。また、本発明は、フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部は、スプールの内側空間がカメラカバーの外部に開放されて形成され、この開放された部分を通じてスプールの内側空間にアクセサリが収納される。したがって本発明のアクセサリ収納室を備えたカメラでは、デッドスペースであるスプールの内側空間をアクセサリの収納に利用するので、三脚などのアクセサリをカメラと別に持ち運ぶ必要がなく便利であり、また、従来のようにカメラの寸法が大きくなるという問題も発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアクセサリ収納室を備えたカメラの一例を示す要部断面図である。
【図2】本発明によるアクセサリ収納室を備えたカメラの一例を示す斜視図である。
【図3】図1のカメラに三脚を装着する場合を示す斜視図である。
【図4】第2の実施例のアクセサリ収納室を備えたカメラを示す要部断面図である。
【図5】図4のカメラで三脚を取り出した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
2、52 カメラ
4 スプール
8 第1の開口
10 カメラカバー
14 第2の開口
16 内側空間
22 凹部
24 第1のコイルスプリング
28 爪部材
36 アクセサリ収納室
38、62 三脚
40 脚部
54 クリック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部に形成され、スプールの内側空間をスプールの外部に開放する第1の開口と、カメラカバーに前記第1の開口とほぼ同心に形成され、前記第1の開口を通じてスプールの内側空間をカメラカバーの外部に開放する第2の開口とを備え、スプールの内側空間に前記第1の開口と第2の開口を通じてアクセサリが収納される、ことを特徴とするアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項2】 アクセサリをスプールの内側空間に収納された状態に保持する保持手段が設けられている請求項1記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項3】 前記保持手段は、カメラカバーの前記第2の開口の縁部近傍に、スプールの中心軸方向に変位可能に配置され、先端部が前記第2の開口の縁部より突出可能な爪部材と、前記爪部材をスプールの中心軸方向に付勢する第2のスプリングと、前記爪部材に設けられ、カメラカバーに形成された第3の開口を通じてカメラカバーの外部に露出している摘み部とで構成されている請求項2記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項4】 アクセサリは、スプールの内側空間に収納された状態で、前記爪部材の先端部が係合する凹部を有している請求項3記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項5】 スプールの内側空間の、前記第1の開口と反対側の奥部に配設された第1のスプリングを有し、前記第1のスプリングは前記内側空間に収納されたアクセサリを前記第1の開口の方向に付勢する請求項1、2、3または4記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項6】 アクセサリはカメラの三脚、カメラを遠隔操作するリモコンユニット、取り扱い説明書のいずれかである請求項1乃至5の何れか1項記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項7】 前記第2の開口はカメラカバーの底面に形成され、アクセサリはカメラの三脚であり、前記三脚は、脚部を下にしてスプールの内側空間に収納され、前記三脚は、上端部近傍の側面に第2の凹部を有し、前記第2の開口の近傍に、三脚の脚部をカメラカバーの外側に取り出した状態で前記第2の凹部に係合して三脚の上端部をカメラカバーで支持するクリック機構を備えている請求項1乃至5の何れか1項記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項8】 アクセサリはカメラの三脚であり、カメラカバーの底面には前記三脚を取り付けるための取付部が形成されている請求項1乃至7の何れか1項記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項9】 前記第2の開口を閉鎖する蓋を備えた請求項1乃至8の何れか1項記載のアクセサリ収納室を備えたカメラ。
【請求項10】 フィルム巻き取り用の中空のスプールを有するカメラであって、スプールの延在方向における一方の端部は、スプールの内側空間がカメラカバーの外部に開放されて形成され、この開放された部分を通じてスプールの内側空間にアクセサリが収納される、ことを特徴とするアクセサリ収納室を備えたカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開平10−62853
【公開日】平成10年(1998)3月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−232613
【出願日】平成8年(1996)8月13日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)