説明

アクティブ磁気シールドの性能評価方法及び装置

【課題】パッシブ磁気シールドと組み合わされたアクティブ磁気シールドの性能評価。
【解決手段】環境磁場計測センサ12と環境磁場を打ち消す補償磁場発生用補償コイル10とが配置された磁気シールド室1内に、補償コイル10と同じ位置に同じ形状の外乱磁場発生用外乱コイル11を配置し、補償コイル10の駆動停止時に外乱コイル11に試験磁場信号Vを加えてセンサ位置S及び対象位置Pの磁場量比Pv/Svを検出する。その後、外乱コイルにシールド設計時の環境磁場量Seに応じた環境磁場信号Eを加えつつ補償コイル10を駆動してセンサ位置Sの補償後磁場量Stを計測し、その補償後磁場量Stと設計時の環境磁場量Seとからセンサ位置Sの補償磁場量Scを算出し、その補償磁場量Scと磁場量比Pv/Svとから対象位置Pの補償磁場量Pcを算出し、その補償磁場量Pcと設計時の環境磁場量Peとにより対象位置Pのシールド性能を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブ磁気シールドの性能評価方法及び装置に関し、とくに環境磁場を打ち消す補償磁場発生用の補償コイルが配置されたアクティブ磁気シールド室のシールド性能を評価する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強磁気を利用する装置、例えば電子顕微鏡等のEB(Electron Beam、電子ビーム)装置、MRI(磁気共鳴画像診断)装置、NMR(核磁気共鳴)装置、SQUID(超電導量子干渉素子)装置等を建物内に設置する場合に、設置室からの漏洩磁場から周囲の人や機器を保護すること及び建物周囲の環境磁場(磁気ノイズ)から装置を保護して正常な動作を保証することを目的として、設置室に磁気シールドを施すことがある。例えば医療施設や半導体関連施設等においてMRI装置、EB装置等の設置室を、透磁率の高い電磁鋼板・パーマロイ等の磁性材料板(以下、磁性板ということがある)で囲まれたパッシブ(受動)磁気シールド室とする。一般にパッシブ磁気シールド室は壁面を磁性板で隙間なく覆うことで環境磁場の影響を遮断する密閉型であるが(特許文献1参照)、密閉型磁気シールド室は空気や光の透過性がないことから、図6に示すように複数の矩形短冊状の磁性板5を各々の長さ方向中心軸が同一面上に平行に並ぶように板厚方向に所要間隔で簾状に積層した簾体(以下、シールド簾体ということがある)2、3を壁面として用いた隙間のある開放型の磁気シールド室も開発されている(特許文献2参照)。
【0003】
図6は、6つのシールド簾体2a、2b、2c、2d、2e、及び3で囲まれた開放型パッシブ磁気シールド室1を示す。5つのシールド簾体2a、2b、2c、2d、2eはそれぞれ対応する磁性板5の端縁6を重ね合わせにより列状に接合してシールド室1の側壁とし、その一端側のシールド簾体2aと他端側のシールド簾体2eとの間にシールド簾体3を配置してシールド室1の開閉部(ドアや窓等)としている。各簾体2、3の磁性板5の板厚方向の間隔から漏洩磁場が生じないように、その間隔を、磁性板5の磁束の通りやすさ(磁性板のパーミアンス)に比して間隔の磁束の通りやすさ(間隔のパーミアンス)が十分に小さくなるように設計する。また、シールド簾体2a、2eとシールド簾体3との隙間からも漏洩磁場が生じないように、その隙間に臨む各簾体2a、2e、3の磁性板5の端縁にその端縁の面積を板厚方向に拡張する磁性拡張板7を取り付け、簾体2aと3、及び簾体2eと3が磁性拡張板7により隙間を介して磁気的に結合するように設計する。必要に応じてその隙間に磁性目張り8を設けることで、隙間からの漏洩磁場を更に小さく抑える。図示例のシールド室1によれば、各簾体2、3の板厚方向間隔によって空気や光の透過性を確保しつつ、シールド室1からの漏洩磁場を最小限の磁性材料で効率的・経済的に抑えることができる。
【0004】
しかし、従来のパッシブ磁気シールドは何れも静的な性能・構造であるため、シールド室1からの漏洩磁場対策には有効であるが、建物周囲の鉄道の運行等で生じる変動する環境磁場からMRI装置やEB装置を効率的・経済的に保護できない場合がある。例えば、環境磁場変動のピークが一時的であっても、そのピークに対応するため多くの磁性材料を用いたシールド構造とする必要があり、シールド室1の壁が厚くなる等の問題も生じる。そのため、しばしばパッシブ磁気シールドに加えて又は代えて、図4に示すように、環境磁場の変動に応じて同振幅・逆位相の補償磁場を発生させて環境磁場の変動を打ち消すアクティブ(能動)磁気シールドが用いられる(特許文献3及び4参照)。
【0005】
図4(B)に示すアクティブ磁気シールドは、同図(A)に示すようにシールド室1の中心部を通る直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)にそれぞれ中心軸方向を一致させて配置した3組の補償コイル10、10、10と、シールド室1内の環境磁場を計測する磁気センサ12と、センサ12の計測信号に応じて補償磁場信号を算出する信号処理手段15と、その補償磁場信号に応じて補償コイル10、10、10を駆動する駆動電源14とを有する。図示例は2個のヘルムホルツコイル10X1、10X2からなるX軸方向の補償コイル10を示すが、Y軸方向及びZ軸方向の補償コイル10、10も同様の構成である。センサ12で計測された環境磁場(磁束密度)の変動を打ち消すために必要な補償磁場信号を信号処理手段15で算出し、その信号に応じた電力を駆動電源14から補償コイル10、10に供給して補償磁場を発生させることにより環境磁場の変動を打ち消す。例えば図6のパッシブ磁気シールドと図4のアクティブ磁気シールドとを組み合わせる(併用する)ことにより、変動する環境磁場にも対応可能なシールド室1を効率的・経済的に設計することが期待できる。
【0006】
【特許文献1】特開平09−162585号公報
【特許文献2】特開2006−351598号公報
【特許文献3】特開2002−232182号公報
【特許文献4】特開2006−324651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のアクティブ磁気シールドは、シールド室1のシールド性能が設計仕様に適合しているか否かを評価(検証)することが難しい問題点がある。一般的にはシールド施工前の環境磁場変動を測定してシールド性能の設計仕様を決定し、シールド施工後に環境磁場変動を再度測定してシールド室1の性能(設計仕様の適合性)を評価するが、通常は環境磁場変動に再現性がないため、設計仕様の決定時と異なる環境磁場変動を用いて適合性評価を行わざるを得ない。このように環境磁場を用いた性能評価方法では、たとえ長時間をかけて環境磁場変動の近似性を高めたとしても、設計仕様に直接反映された環境磁場変動に基づく精確なシールド性能の評価は困難である。とくにアクティブ磁気シールドがパッシブ磁気シールドと併用されている場合は、環境磁場がパッシブ磁気シールドの磁性材料の影響を受けるため、アクティブ磁気シールド単体の精確な性能評価を行うことが難しくなる。
【0008】
環境磁場変動の発生原因が十分に遠方に存在し、ほぼ一様な磁場分布を有する変動磁場が仮定できる場合は、図4(C)に示すように、シールド室1の外側に設置した外乱コイル11で人為的に環境磁場(外乱磁場)を発生させてアクティブ磁気シールドの性能評価を行う場合がある。しかし、一様な環境磁場を再現するにはシールド室1に比して大径の外乱コイル11を十分な遠方に設置する必要があり、そのような設置は実際上困難であることから、外乱コイル11を用いた性能評価方法でもアクティブ磁気シールドの信頼性の高い評価を行うことは困難であった。また、たとえ外乱コイル11の設置が可能であるとしても、パッシブ磁気シールドと併用されている場合は、外乱コイル11で意図した磁場分布がパッシブ磁気シールドの磁性材料の影響を受けて異なる分布となるため、アクティブ磁気シールドの精確な評価ができなくなる。パッシブ磁気シールドと組み合わされている場合でも、アクティブ磁気シールドの性能を適切に評価・検証できるシステムの開発が望まれている。
【0009】
更に、アクティブ磁気シールドがパッシブ磁気シールドと組み合わされている場合は、シールド室1のセンサ12と離れた位置のアクティブ磁気シールド性能を評価することが難しい問題点もある。例えばMRI装置を設置するシールド室1では、シールド対象であるMRI装置(デュワ部)の設置位置でシールド性能を評価することが望ましいが、MRI装置(デュワ部)には励磁に伴って数T程度の強磁場が発生しているため、そのような対象位置にセンサ12を設置して環境磁場の微弱な変動(例えば100nT以下)を計測することは困難である(数T程度で100nT程度の精度を有する幅の広いダイナミックレンジを有するセンサ12が存在しない)。また、電子顕微鏡等のEB装置ではシールド対象が鏡筒部内であるため、そもそもセンサ12を対象位置に配置することができない。そのため、MRI装置やEB装置等を設置するアクティブ磁気シールド室1では、評価対象位置Pから離れたセンサ位置Sのセンサ12でシールド性能を評価せざるを得ないことが多い。
【0010】
アクティブ磁気シールドがパッシブ磁気シールドと組み合わされている場合は、シールド室1内の相互に離れたセンサ位置S及び対象位置Pにおける環境磁場(又は外乱コイル11の発生する人為的な環境磁場)は、図5(P1)及び(S1)に示すように、パッシブ磁気シールドの磁性材料の影響によって異なるものとなる。また、アクティブ磁気シールドの補償コイル10の発生する補償磁場も、同図(P2)及び(S2)に示すように、磁性材料の影響を受けて設計仕様からのずれを生じる。従って、同図(P3)及び(S3)に示すように、同じシールド室1内であっても対象位置Pとセンサ位置Sとではシールド性能が全く異なる値となり、対象位置Pのシールド性能を離れたセンサ位置Sのシールド性能から推定することは困難である。パッシブ磁気シールドと組み合わされたアクティブ磁気シールドの性能を適切に評価・検証するためには、たとえ対象位置Pとセンサ位置Sとが離れていても、対象位置Pのシールド性能を適切に評価できることが望ましい。
【0011】
そこで本発明の目的は、パッシブ磁気シールドと組み合わされた場合でもアクティブ磁気シールドの性能を適切に評価できる評価方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1の実施例及び図2の流れ図を参照するに、本発明によるアクティブ磁気シールドの性能評価方法は、環境磁場の計測センサ12とその環境磁場を打ち消す補償磁場発生用の補償コイル10とが配置されたアクティブ磁気シールド室1内の評価対象位置Pのシールド性能を評価する方法において、補償コイル10と同じ位置に同じ形状の外乱磁場発生用の外乱コイル11を配置し(図2のステップS002〜S005)、補償コイル10の駆動停止時に外乱コイル11に試験磁場信号Vを印加してセンサ位置S及び対象位置Pの間の磁場量比Pv/Svを検出し(ステップS006〜S007)、外乱コイルにセンサ位置Sのシールド設計時の環境磁場量Seに応じた環境磁場信号Eを印加しつつ補償コイル10を駆動してセンサ位置Sの補償後磁場量Stを計測し(ステップS008)、センサ位置Sの補償後磁場量Stと設計時の環境磁場量Seとの差(=St−Se)からセンサ位置Sの補償磁場量Scを算出し且つその補償磁場量Scと磁場量比Pv/Svとから対象位置Pの補償磁場量Pcを算出し(ステップS009)、対象位置Pの補償磁場量Pcと対象位置Pのシールド設計時の環境磁場量Peとにより対象位置Pのシールド性能を評価し(ステップS012)てなるものである。
【0013】
また図1のブロック図を参照するに、本発明によるアクティブ磁気シールドの性能評価装置は、環境磁場の計測センサ12とその環境磁場を打ち消す補償磁場発生用の補償コイル10とが配置されたアクティブ磁気シールド室1内の評価対象位置Pのシールド性能を評価する装置において、シールド室1の補償コイル10と同じ位置に同じ形状で配置された外乱磁場発生用の外乱コイル11、センサ位置S及び対象位置Pのシールド設計時の環境磁場量Se、Peを記録する記憶手段23、補償コイル10の駆動停止時に外乱コイル11に試験磁場信号Vを印加してセンサ位置S及び対象位置Pの間の磁場量比Pv/Svを検出する検出手段24、外乱コイル11に設計時のセンサ位置Sの環境磁場量Seに応じた環境磁場信号Eを印加しつつ補償コイル10を駆動してセンサ位置Sの補償後磁場量Stを計測する計測手段25、センサ位置Sの補償後磁場量Stと設計時の環境磁場量Seとの差(=St−Se)からセンサ位置Sの補償磁場量Scを算出し且つその補償磁場量Scと磁場量比Pv/Svとから対象位置Pの補償磁場量Pcを算出する算出手段26、並びに対象位置Pの補償磁場量Pcと設計時の対象位置Pの環境磁場量Peとにより対象位置Pのシールド性能を評価する評価手段27を備えてなるものである。
【0014】
好ましくは、図2のステップS010〜S011に示すように、センサ位置Sの補償後磁場量Stの計測(ステップS008)と対象位置Pの補償磁場量Pcの算出(ステップS009)とを複数回反復し、対象位置Pの補償磁場量Pcの複数回の平均値により対象位置Pのシールド性能を評価する。更に好ましくは、図1に示すように、シールド室1の内側又は外側周辺に検査位置Rを定め、試験磁場信号Vの印加時に検査位置Rとセンサ位置Sとの間の磁場量比Sv/Rvを検出し(図2のステップS007)、環境磁場信号Eの印加時にセンサ位置Sの補償後磁場量Stに代えて検査位置Rの補償後磁場量Rtを計測し且つその補償後磁場量Rtと磁場量比Sv/Rvとからセンサ位置Sの補償後磁場量Stを算出する(ステップS008)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるアクティブ磁気シールドの性能評価方法及び装置は、シールド室1に補償磁場発生用の補償コイル10と外乱磁場発生用の外乱コイル11と同じ位置に同じ形状で配置し、補償コイル10の駆動停止時に外乱コイル11に試験磁場信号Vを印加してセンサ位置Sと対象位置Pとの間の磁場量比Pv/Svを検出したうえで、外乱コイルにセンサ位置Sのシールド設計時の環境磁場量Seに応じた環境磁場信号Eを印加しつつ補償コイル10を駆動してセンサ位置Sの補償後磁場量Stを計測し、センサ位置Sの補償後磁場量Stと設計時の環境磁場量Seとの差(=St−Se)からセンサ位置Sの補償磁場量Scを算出し、その補償磁場量Scと磁場量比Pv/Svとから対象位置Pの補償磁場量Pcを算出し、対象位置Pの補償磁場量Pcと対象位置Pのシールド設計時の環境磁場量Peとにより対象位置Pのシールド性能を評価するので、次の有利な効果を奏する。
【0016】
(イ)補償コイル10と外乱コイル11とを同じ位置に同じ形状で配置するので、補償コイル10の発生する補償磁場分布と外乱コイル11の発生する環境磁場分布とを一致させ、対象位置Pから離れたセンサ位置Sの計測値により対象位置Pのシールド性能を適切に評価することができる。
(ロ)また、アクティブ磁気シールドの設計仕様に直接反映された環境磁場量Se、Peを再現してシールド性能を評価するので、設計仕様に基づいたシールド性能の精確な評価・検証(検収)が可能となる。
(ハ)パッシブ磁気シールドを併用したアクティブ磁気シールド室1においても、磁性材料の影響を受ける環境磁場分布及び補償磁場分布を一致させることでシールド性能を直接的に評価することが可能であり、仮定された磁場分布(例えば均一な磁場分布)等を用いた性能評価方法に比して評価結果の信頼性を高めることできる。
【0017】
(ニ)また、パッシブ磁気シールドの磁性材料の影響によりシールド性能評価のS/N比が劣化する場合でも、センサ位置Sの補償後磁場量Stの計測を繰り返すことにより、複数回の性能評価値の平均操作によってS/N比を簡単に改善できる。
(ホ)センサ位置Sの補償後磁場量Stを計測する比較的短時間の作業で対象位置Pのシールド性能を評価することができ、アクティブ磁気シールドの評価・検証作業の迅速化を図ると共に、シールド室周囲の環境磁界が弱い時間帯に素早く実施して性能評価の精度を高めることもできる。
(ヘ)シールド室1の内側だけでなく外側周辺でも外乱コイル11の環境磁場分布と補償コイル10の補償磁場分布とを一致させることができ、シールド室1に入室することなく室外周囲の検査位置Rで対象位置Pのシールド性能評価を実施することも期待できる。
(ト)センサ位置S及び対象位置Pの設計時の環境磁場量Se、Peと磁場量比Pv/Svとを記録しておけば、検収時だけでなく定期的な保守点検の際にも、シールド室1内の装置(MRI装置やEB装置)を稼動させたままシールド室1内の対象位置Pのシールド性能を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、パッシブ磁気シールドとアクティブ磁気シールドとが併用されたシールド室1に本発明の性能評価装置を適用した実施例を示す。図示例のシールド室1は漏洩磁場対策として、図6のパッシブ磁気シールド室1と同様、複数の磁性板5を板厚方向に所要間隔で積層したシールド簾体2で構成された周壁を有する。ただし、本発明の適用対象の磁気シールド室1はシールド簾体2を用いたものに限定されず、例えば特許文献1のように隙間のないパッシブ磁気シールドで周壁を構成したシールド室1であってもよい。また図示例のシールド室1は、図4のアクティブ磁気シールド室1と同様に、シールド室1内のセンサ位置Sで環境磁場を計測する磁気センサ12と、その環境磁場を打ち消す補償磁場を発生するためシールド室1の直交3軸(X軸、Y軸、Z軸)に中心軸方向を一致させて配置された補償コイル(例えばヘルムホルツコイル)10、10、10と、補償コイル10、10、10を駆動する駆動電源14と、センサ12及び駆動電源14に接続されたコンピュータ20とを有する。
【0019】
図示例では、説明簡単化のためにアクティブ磁気シールドのX軸方向の補償コイル10X1、10X2のみを示しているが、Y軸方向及びZ軸方向の補償コイル10、10も同様の構成とすることができる。補償コイル10、10、10は、パッシブ磁気シールド(図示例ではシールド簾体)の内側又は外側の何れに配置してもよく、パッシブ磁気シールドの内部又は近傍に一体的に配置してもよい。また図示例のコンピュータ20は、磁気センサ12の計測信号を入力する入力手段21と、入力手段21の入力信号に応じて補償磁場信号を算出して駆動電源14に出力する信号処理手段15とを有する。また、入力手段21及び信号処理手段15の間にスイッチ手段28を設け、スイッチ手段28の制御により補償コイル10の駆動/駆動停止を切り替え可能としている。入力手段21、信号処理手段15、スイッチ手段28はそれぞれコンピュータ20の内蔵プログラムである。
【0020】
図示例の性能評価装置は、シールド室1の補償コイル10、10、10と同じ位置に同じ形状で配置された外乱磁場発生用の外乱コイル11、11、11と、外乱コイル11、11、11を駆動する駆動電源16と、コンピュータ20の記憶手段23及び後述する内蔵プログラムとで構成されている。外乱コイル11、11、11は例えば補償コイル10、10、10と同様のヘルムホルツコイルであるが、図示例では補償コイル10との識別容易化のために外乱コイル11を点線で表している。また、説明簡単化のためにX軸方向の外乱コイル11X1、11X2のみを示しているが、Y軸方向及びZ軸方向の外乱コイル11、11も同様の構成とすることができる。
【0021】
コンピュータ20の記憶手段23には、後述するようにアクティブ磁気シールドの設計仕様決定の際のセンサ位置S及び評価対象位置Pの環境磁場量Se(t)、Pe(t)を記録する。対象位置Pは、上述したようにシールド室1内に設置する装置に応じて決定される(例えばMRI装置のデュワ部、電子顕微鏡の鏡筒部等)。またセンサ位置Sは、その装置の設置・操作の邪魔にならないシールド室1内の任意位置とすることができる。なお、図示例では対象位置Pに環境磁場量Peを計測する磁気センサ12aを設けているが、環境磁場量Peはセンサ位置Sの磁気センサ12を対象位置Pに移動させて計測することが可能であり、磁気センサ12aは本発明の性能評価装置に必須のものではない。またコンピュータ20は、性能評価のための内蔵プログラムとして、外乱コイル11の磁場信号を駆動電源16に出力する信号処理手段17と、その信号処理手段17を介して試験磁場信号Vを外乱コイル11に印加する検出手段24と、信号処理手段17を介して環境磁場信号Eを外乱コイル11に印加する計測手段25と、算出手段26及び評価手段27とを有している。
【0022】
図2は、図1の性能評価装置を用いた本発明の性能評価方法の流れ図の一例を示す。以下、図2の流れ図を参照して本発明の性能評価方法及びコンピュータ20の内蔵プログラムの作用を説明する。先ずステップS001において上述したパッシブ磁気シールドをシールド室1に施工したのち、ステップS002においてシールド室1内のセンサ位置S及び対象位置Pの環境磁場量Se(t)、Pe(t)を磁気センサ12で計測し、計測した環境磁場量Se(t)、Pe(t)をコンピュータ20に入力して記憶手段23に記録する。環境磁場量Se(t)、Pe(t)の波形の一例を図3(P1)及び(S1)に示す。記録した環境磁場量Se、Peは、ステップS008においてシールド性能評価の際に環境磁場を再現するために利用する。なお、ステップS002においてセンサ位置Sが未確定である場合は、センサ位置Sの複数の候補点で環境磁場量Se(t)を計測することで対応してもよい。
【0023】
ステップS003において、記録した環境磁場量Se(t)、Pe(t)に基づきアクティブ磁気シールドの設計仕様(補償コイル10、10、10の配置位置や形状、磁気センサ12のセンサ位置S、信号処理手段15のプログラム等)を決定したのち、ステップS004において上述したアクティブ磁気シールドを施工する。具体的には、設計仕様に応じて補償コイル10、10、10及び磁気センサ12をシールド室1内に配置する。更にステップS005において、シールド室1の補償コイル10、10、10と同じ位置に、補償コイル10、10、10と同じ形状で外乱コイル11、11、11を配置する。図示例のようにパッシブ磁気シールドを併用したシールド室1では、磁性板5の影響により補償コイル10、10、10の発生する補償磁場分布が設計仕様と異なることも想定されるが、外乱コイル11、11、11を補償コイル10、10、10と同じ位置に同じ形状で配置することで、外乱コイル11の発生する環境磁場分布を補償コイル10の発生する補償磁場分布と一致させることできる。
【0024】
アクティブ磁気シールドを施工したのち、補償コイル10を駆動する前に、ステップS007においてコンピュータ20の検出手段24によって外乱コイル11に正弦波等の試験磁場信号Vを印加し、センサ位置S及び対象位置Pの試験磁場量Sv(t)、Pv(t)を磁気センサ12で計測し、計測された試験磁場量Sv(t)、Pv(t)を検出手段24に入力してセンサ位置S及び対象位置Pの間の磁場量比(振幅比)Pv/Svを検出する。補償コイル10が既に駆動されている場合は、ステップS006において例えば検出手段24によりスイッチ手段28を制御して補償コイル10の駆動を停止したうえで、ステップS007において磁場量比Pv/Svを検出する。補償コイル10の駆動停止は、例えばコンピュータ20に設けた手動スイッチ(図示せず)等で行うこともできる。試験磁場量Sv(t)、Pv(t)の波形の一例を図3(P2)及び(S2)に示す。図示例では、試験磁場量Sv(t)、Pv(t)の振幅比率から、例えば磁場量比Pv/Sv=1/0.7と検出することができる。検出した磁場量比Pv/Svはコンピュータ20の記憶手段23に記録し、後述するステップS009においてアクティブ磁気シールド駆動後の対象位置Pの補償磁場量Pt(t)を算出するために利用する。
【0025】
なお、ステップS007で用いる試験磁場の周波数は、磁場量比Pv/Svに対する環境磁場の影響をできるだけ小さく抑えてS/N比を高めるため、ステップS002で計測した環境磁場量Se(t)、Pe(t)のスペクトル強度が十分に低い周波数帯とすることが望ましい。例えば、ステップS002で記憶手段23に記録された環境磁場量Se(t)、Pe(t)の波形に応じて、商用電源周波数(50Hz/60Hz)及びその高調波周波数(100、150、200……Hz/120、180、240……Hz)による雑音や鉄道・自動車・エレベータ等の直流磁場による10Hz程度以下の雑音の混入を避けるため、検出手段24によりステップS007で用いる試験磁場の周波数帯を110Hz等と定める。
【0026】
また、ステップS007で用いる試験磁場の大きさは、パッシブ磁気シールドの非線形な特性の影響を受けないように、アクティブ磁気シールド駆動後の対象位置Pの補償後磁場量Pt(t)(又はセンサ位置Sの補償後磁場量St(t))と同程度とすることが望ましい。例えばアクティブ磁気シールドの補償コイル10がパッシブ磁気シールドの近傍に配置されている場合は、補償コイル10の発生する補償磁場の影響によってパッシブ磁気シールドの磁性材料の特性(パッシブ磁気シールド性能)が変動し、センサ位置S及び対象位置Pの磁場量比(振幅比)Pv/Svを変動させる可能性がある。アクティブ磁気シールド駆動後の磁場(設計磁場)と同程度の大きさの試験磁場を用いて磁場量比Pv/Svを検出しておけば、その磁場量比Pv/Svを用いてパッシブ磁気シールド駆動後の補償磁場量Pt、Stを算出する際に(後述のステップS009)、パッシブ磁気シールドの非線形な特性変動の影響を小さく抑えることができる。例えば、アクティブ磁気シールドによって対象位置Pの磁場量を10〜100nT程度に抑える設計の場合は、その設計仕様に合わせて試験磁場の大きさも10〜100nT程度とする。
【0027】
次いでステップS008において、コンピュータ20の計測手段25により、ステップS002のセンサ位置Sのシールド設計時の環境磁場量Seに応じた環境磁場信号Eを外乱コイル11に印加する。例えばセンサ位置Sの磁場波形データSe(t)を磁気センサ12で計測してモニタしながら外乱コイル11を駆動し、図3(S3)に示すようにセンサ位置Sの磁場波形データSe(t)の振幅が同図(S1)に示す環境磁場量Se(t)の振幅と一致するように外乱コイル11に印加する環境磁場信号Eの電流等を調整し、シールド室1内のセンサ位置Sにシールド設計時の環境磁場量Seを再現する。またステップS008において、シールド室1内に環境磁場量Seを再現したのちアクティブ磁気シールドの補償コイル10を駆動し、センサ位置Sの補償後磁場量St(t)を磁気センサ12で計測して計測手段25に入力する。計測手段25で計測された補償後磁場量St(t)の波形の一例を図3(S4)に示す。
【0028】
更にステップS009において、計測手段25で計測したセンサ位置Sの補償後磁場量St(t)を算出手段26に入力し、算出手段26においてセンサ位置Sの補償後磁場量St(t)と記憶手段23に記録したセンサ位置Sのシールド設計時の環境磁場量Se(t)との差として、アクティブ磁気シールドの補償コイル10により発生したセンサ位置Sの補償磁場量Sc(t)(=St−Se)を算出する。算出手段26で算出されたセンサ位置Sの補償磁場量Sc(t)の波形の一例を図3(S5)に示す。また算出手段26により、センサ位置Sの補償磁場量Sc(t)と記憶手段23に記録した磁場量比Pv/Svとから、対象位置Pの補償磁場量Pc(t)(=Sc(t)×Pv/Sv)を算出する。図3(P6)に示す対象位置Pの補償磁場量Pc(t)の波形の一例は、同図(S5)の補償磁場量Sc(t)の波形と磁場量比Pv/Sv=1/0.7との積として算出したものである。
【0029】
ステップS012において、算出手段26で算出した対象位置Pの補償磁場量Pc(t)を評価手段27に入力し、評価手段27において対象位置Pの補償磁場量Pc(t)と記憶手段23に記録した対象位置Pのシールド設計時の環境磁場量Pe(t)とから対象位置Pのシールド性能を評価する。例えばステップS012において評価手段27により、図3(P7)に示すように、対象位置Pの補償磁場量Pc(t)と環境磁場量Pe(t)との和として、アクティブ磁気シールドの補償コイル10により補償された対象位置Pの補償後磁場量Pt(t)(=Pc+Pe)を算出する。また、環境磁場量Pe(t)に対する補償後磁場量Pt(t)の比として、対象位置Pにおけるアクティブ磁気シールド単体の磁場(磁束密度)の減衰率(=Pt(t)/Pe(t))を算出する。図3(P1)と(P7)との振幅比率から、シールド室1の対象位置Pの環境磁場をアクティブ磁気シールドによって1/6.4に減衰できたことが分かる。
【0030】
図2の流れ図では、センサ位置S及び対象位置Pにおける補償コイル10の補償磁場分布と外乱コイル11の環境磁場分布とを一致させたうえで(ステップS005)、両位置S、Pにおける外乱コイル11の磁場量比Pv/Svを検出し(ステップS007)、その磁場量比Pv/Svとセンサ位置Sにおける補償コイル10の補償磁場量Scとから対象位置Pにおける補償コイル10の補償磁場量Pcを算出するので(ステップS009)、対象位置Pのアクティブ磁気シールド性能(補償後磁場量)をその対象位置Pから離れたセンサ位置Sにおいて適切に評価することができる。また、パッシブ磁気シールドが併用されていても、環境磁場分布及び補償磁場分布を一致させることで磁性材料の影響を相殺し、対象位置Pのシールド性能を直接的に評価することができ、アクティブ磁気シールド単体の信頼性の高い性能評価を行うことができる。更に、外乱コイル11によりアクティブ磁気シールドの設計仕様に直接反映されたセンサ位置Sの環境磁場量Seを再現することで、ステップS012において設計仕様に基づいた対象位置Pのシールド性能(磁場減衰率)を評価・検証することが可能となる。
【0031】
こうして本発明の目的である「パッシブ磁気シールドと組み合わされた場合でもアクティブ磁気シールドの性能を適切に評価できる評価方法及び装置」の提供を達成できる。
【0032】
なお、図2のステップS010〜S011は、ステップS008の計測手段25によるセンサ位置Sの補償後磁場量Stの計測と、ステップS009の算出手段26による対象位置Pの補償磁場量Pcの算出とを複数回反復し、対象位置Pの補償磁場量Pcの複数回の平均値を求める処理を示す。図2の流れ図では、ステップS008において計測する補償後磁場量Stがシールド室1のその時点における環境磁場の影響を受け、ステップS012で求める対象位置Pのシールド性能のS/N比が劣化する場合も考えられるが、補償後磁場量Stを複数回計測した平均値を用いることにより、シールド性能のS/N比の改善を図ることができる。しかも、ステップS008におけるシールド設計時の環境磁場量Seの再現は比較的短時間(数分〜数十分)で実施可能であり、ステップS009はコンピュータ処理であるから、反復した場合でも性能評価に要する時間があまり長くなることはない。
【0033】
また、上述したように本発明はパッシブ磁気シールドが併用されていても対象位置Pのシールド性能を適切に評価できる利点を有しているが、本発明の適用範囲はパッシブ磁気シールドが併用されたシールド室1に限定されるものではなく、アクティブ磁気シールドのみを用いたシールド室1にも適用可能である。更に、アクティブ磁気シールドの検収時にステップS002で求めたセンサ位置S及び対象位置Pのシールド設計時の環境磁場量Se、Peと、ステップS007で求めた磁場量比Pv/Svとをコンピュータ20の記憶手段23に記録しておけば、定期的な保守点検の際にステップS008〜S012を実施することで、シールド室1内の装置(MRI装置やEB装置)を稼動させたままシールド室1内の対象位置Pのシールド性能を評価することができる。
【実施例1】
【0034】
以上、シールド室1の内側のセンサ位置Sの計測値を用いて対象位置Pのシールド性能を評価する方法について説明したが、本発明(図2のステップS005)ではシールド室1の内側だけでなく外側周辺においても外乱コイル11の発生する環境磁場分布を補償コイル10の発生する補償磁場分布と一致させることができ、センサ位置Sに代えて、シールド室1の内側の任意位置R又は外側周辺の任意位置Rの計測値を用いて対象位置Pのシールド性能を評価することも可能である。例えば図1に示すように、図2のステップS006においてシールド室1の外側周辺に検査位置Rを定めることにより、シールド室1に入室することなく室外周囲の検査位置Rでシールド室1内の対象位置Pのシールド性能評価を実施することが期待できる。
【0035】
図2のステップS006においてセンサ位置S以外の検査位置Rを定めた場合は、ステップS007において外乱コイル11に試験磁場信号Vを印加した際に、センサ位置S及び対象位置Pと共に検査位置Rにおいて試験磁場量Rv(t)を磁気センサ13で計測し、検出手段24において検査位置Rとセンサ位置Sとの間の磁場量比(振幅比)Sv/Rvを検出する。試験磁場量Rv(t)の波形の一例を図3(R2)に示す。図示例では、試験磁場量Sv(t)、Rv(t)の振幅比率から、例えば磁場量比Sv/Rv=0.7/0.5と検出することができる。検出した磁場量比Sv/Rvは、磁場量比Pv/Svと共にコンピュータ20の記憶手段23に記録しておく。
【0036】
また、図2のステップS008において外乱コイル11に環境磁場信号Eを印加する際に、検査位置Rの磁場波形データRe(t)を磁気センサ12で計測してモニタしながら外乱コイル11を駆動し、例えば図3(R3)に示すような検査位置Rの磁場波形データRe(t)と磁場量比Sv/Rvとの積によりセンサ位置Sの磁場波形データSe(t)(=Re(t)×Sv/Rv、図3の例ではRe(t)×0.7/0.5)を算出する。そして、算出したセンサ位置Sの磁場波形データSe(t)の振幅がセンサ位置Sの環境磁場量Se(t)の振幅と一致するように外乱コイル11に印加する環境磁場信号Eの電流等を調整する。こうすれば、センサ位置Sの磁場波形データSe(t)を実際にモニタすることなく、シールド室1内のセンサ位置Sにシールド設計時の環境磁場量Seを再現することができる。
【0037】
更にステップS008において、シールド室1内にシールド設計時の環境磁場量Seを再現したのち、アクティブ磁気シールドの補償コイル10を駆動する際に、センサ位置Sの補償後磁場量Stに代えて検査位置Rの補償後磁場量Rt(t)を磁気センサ12で計測して計測手段25に入力する。計測手段25において、図3(R4)に示すような検査位置Rの補償後磁場量Rt(t)と磁場量比Sv/Rvとの積を求めることにより、センサ位置Sの補償後磁場量St(t)(=Rt(t)×Sv/Rv、図3の例ではRt(t)×0.7/0.5)を算出する。こうすれば、センサ位置Sの補償後磁場量Rt(t)を実際に計測せずとも、検査位置Rの補償後磁場量Rtからセンサ位置Sの補償後磁場量Rt(t)を推定して求めることができる。図3(S3)及び(S4)の点線枠は、センサ位置S以外の検査位置Rの測定値を用いた場合に、センサ位置Sでは実際に磁場波形データRe(t)及び補償後磁場量Rt(t)をモニタ又は計測する必要がなくなることを示す。
【0038】
ステップS009において、検査位置Rの補償後磁場量Rt(t)に基づき算出されたセンサ位置Sの補償後磁場量St(t)を算出手段26に入力し、上述した処理と同様にセンサ位置Sの補償磁場量Sc(t)(=St−Se)を算出し、更に対象位置Pの補償磁場量Pc(t)を算出する。必要に応じてステップS008〜S010を繰り返したのちステップS011からS012へ進み、上述した処理と同様にステップS012において対象位置Pの補償磁場量Pc(t)に基づき対象位置Pのシールド性能を評価する。すなわち、検査位置Rの計測値から対象位置Pのシールド性能を評価する方法によれば、センサ位置Sの磁場波形の実際に計測する必要がないので、シールド室1に入室することなく室外の検査位置Rでシールド室1内のシールド性能を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による性能評価装置の一実施例のブロック図である。
【図2】本発明による性能評価方法を示す流れ図の一例である。
【図3】図2の流れ図に対応する対象位置P、センサ位置S(、及び検査位置R)の磁束密度の変化を示す説明図である。
【図4】従来のアクティブ磁気シールド方法の一例の説明図である。
【図5】図4のアクティブ磁気シールド方法における対象位置P及びセンサ位置Sのシールド性能評価手法の説明図である。
【図6】従来のパッシブ磁気シールド方法の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1…磁気シールド室 2…磁気シールド壁(シールド簾体)
3…磁気シールド開閉部(シールド簾体)
5…磁性材料板(磁性板) 6…重ね合わせ部
7…拡張部 8…磁性目張り
10…補償コイル 11…外乱コイル
12、12a、13…計測センサ(磁気センサ)
14…補償コイルの駆動電源 15…補償コイルの信号処理手段
16…外乱コイルの駆動電源 17…外乱コイルの信号処理手段
20…コンピュータ 21、22…入力手段
23…記憶手段 24…検出手段
25…計測手段 26…算出手段
27…評価手段 28…スイッチ手段
29…出力手段
P…評価対象位置 R…検査位置
S…センサ位置
E…環境磁場信号 V…試験磁場信号
Pe…対象位置の環境磁場量の記録値
Se…センサ位置の環境磁場量の記録値
Pv/Sv、Sv/Rv…磁場量比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境磁場の計測センサとその環境磁場を打ち消す補償磁場発生用の補償コイルとが配置されたアクティブ磁気シールド室内の評価対象位置のシールド性能を評価する方法において、前記補償コイルと同じ位置に同じ形状の外乱磁場発生用の外乱コイルを配置し、前記補償コイルの駆動停止時に外乱コイルに試験磁場信号を印加してセンサ位置及び対象位置の間の磁場量比を検出し、前記外乱コイルにセンサ位置のシールド設計時の環境磁場量に応じた環境磁場信号を印加しつつ補償コイルを駆動してセンサ位置の補償後磁場量を計測し、前記センサ位置の補償後磁場量と前記設計時の環境磁場量との差からセンサ位置の補償磁場量を算出し且つその補償磁場量と前記磁場量比とから対象位置の補償磁場量を算出し、前記対象位置の補償磁場量と対象位置のシールド設計時の環境磁場量とにより対象位置のシールド性能を評価してなるアクティブ磁気シールドの性能評価方法。
【請求項2】
請求項1の性能評価方法において、前記センサ位置の補償後磁場量の計測と前記対象位置の補償磁場量の算出とを複数回反復し、前記対象位置の補償磁場量の複数回の平均値により対象位置のシールド性能を評価してなるアクティブ磁気シールドの性能評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2の性能評価方法において、前記シールド室の内側又は外側周辺に検査位置を定め、前記試験磁場信号の印加時に検査位置とセンサ位置との間の磁場量比を検出し、前記環境磁場信号の印加時に前記センサ位置の補償後磁場量に代えて検査位置の補償後磁場量を計測し且つその補償後磁場量と前記磁場量比とからセンサ位置の補償後磁場量を算出してなるアクティブ磁気シールドの性能評価方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの性能評価方法において、前記試験磁場の周波数帯を、前記センサ位置及び対象位置のシールド設計時の環境磁場に応じて定めてなるアクティブ磁気シールドの性能評価方法。
【請求項5】
環境磁場の計測センサとその環境磁場を打ち消す補償磁場発生用の補償コイルとが配置されたアクティブ磁気シールド室内の評価対象位置のシールド性能を評価する装置において、前記シールド室の補償コイルと同じ位置に同じ形状で配置された外乱磁場発生用の外乱コイル、前記センサ位置及び対象位置のシールド設計時の環境磁場量を記録する記憶手段、前記補償コイルの駆動停止時に外乱コイルに試験磁場信号を印加してセンサ位置及び対象位置の間の磁場量比を検出する検出手段、前記外乱コイルに前記設計時のセンサ位置の環境磁場量に応じた環境磁場信号を印加しつつ補償コイルを駆動してセンサ位置の補償後磁場量を計測する計測手段、前記センサ位置の補償後磁場量と前記設計時の環境磁場量との差からセンサ位置の補償磁場量を算出し且つその補償磁場量と前記磁場量比とから対象位置の補償磁場量を算出する算出手段、並びに前記対象位置の補償磁場量と前記設計時の対象位置の環境磁場量とにより対象位置のシールド性能を評価する評価手段を備えてなるアクティブ磁気シールドの性能評価装置。
【請求項6】
請求項5の性能評価装置において、前記計測手段によるセンサ位置の補償後磁場量の計測と前記算出手段による対象位置の補償磁場量の算出とを複数回反復し、前記評価手段において前記対象位置の補償磁場量の複数回の平均値により対象位置のシールド性能を評価してなるアクティブ磁気シールドの性能評価装置。
【請求項7】
請求項5又は6の性能評価装置において、前記検出手段により前記シールド室の内側又は外側周辺に定めた検査位置とセンサ位置との間の磁場量比を検出し、前記計測手段により前記センサ位置の補償後磁場量に代えて検査位置の補償後磁場量を計測し且つその検査位置の補償後磁場量と前記磁場量比とからセンサ位置の補償後磁場量を算出してなるアクティブ磁気シールドの性能評価装置。
【請求項8】
請求項5から7の何れかの性能評価装置において、前記試験磁場の周波数帯を、前記センサ位置及び対象位置のシールド設計時の環境磁場に応じて定めてなるアクティブ磁気シールドの性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229325(P2009−229325A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76930(P2008−76930)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】