説明

アクテオシド含量の高い胡麻若葉乾燥末およびそれより得られるエキス粉末

【課題】アクテオシド含量の高い、廉価な植物体を提供する。
【解決手段】胡麻若葉を多く含む胡麻の葉から、大量のアクテオシドを含有する胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクテオシドを1.0重量%以上含むアクテオシド含量の高い胡麻若葉乾燥末およびそれより得られるエキス粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
アクテオシドはフェニルプロパノイド化合物の一つであり、植物、特に薬用植物中に広く分布していることが知られている。たとえば、アクテオシドは、岩煙草(Conandron ramoidioides、G. Nonaka et al.,Phytochemistry,16,1265-1267(1977))、ツノゴマ(Proboscidea Louisiana、H.Sasaki et al.,Chem.Pharm.Bull.,26,2111-2121(1978))、天人草(Leucoseptrum japonicum、T.Miyase et al.,Chem.Pharm.Bull.,30,2732-2737(1982))、ハマウツボ(Cistanchis herba、H.Kobayashi et al.,Chem.Pharm.Bull,32,3009-3014(1984))、チョロギ(Stachys sieboldii、宮瀬ら,薬学雑誌,110,652-657(1990))、オオバコ(Plantago asiatica, Plantago depressa、T.Miyase et al.,Phytochemistry,30,2015-2018(1991))、地黄(Rehmanniae Radix、北川ら,薬学雑誌,115,922-1003(1995))、オリーブ果実(Coratina、Owen et al.,Food Chem.Toxicol.,41,703-717(2003))、などに含まれていることが報告されている。
【0003】
一方、胡麻を起源とするアクテオシドを調べると、1993年にSuzukiら(Phytochemistry,34、729-732(1993))は、胡麻の全草の抽出物に含まれるアクテオシドを含めたフェニルプロパノイド類を8つ明らかにしている。また、2007年にKhaleelら(J.Food Drug Anal.,15)249-257(2007))は、胡麻種子を取り除いた残りの部分から、マイナー成分としてアクテオシドの存在を報告している。したがって、胡麻の若葉から種子に成長するまでの過程において、アクテオシドは存在しており、胡麻の成長に重要な役割を果たしていると考えられる。
【0004】
また、アクテオシドは、抗酸化性以外にも、肝保護作用、抗炎症作用、抗侵害受容作用(antinociceptive activity)、性機能改善、鎮静効果など様々な薬理作用(L.Li et al.,Food Chem.,108,702-710(2008))に加えて、ホスホリパーゼA2阻害作用や5-リポキシゲナーゼ阻害作用を有し、免疫抑制剤、抗アレルギー剤、抗糖尿病剤等としての応用が期待されている(渡辺ら、特開2000-302797号公報)。渡辺らは様々な生理機能を有するアクテオシドが合成できないこと、また天然植物(地黄、チョロギ、ハマウツボ科植物のオンニク等)中に含まれるアクテオシドの含有量が0.002%〜0.08%と極微量であることから、コショウ科コショウ属植物原料からのアクテオシドの効果的な抽出法について、上記特許出願を行っている。また、オリーブ果実から得たアクテオシドを含む「オリーブ果実水」は健康食品として販売されている。オリーブ果実中のアクテオシド含有量については、あまり報告されていないが、Owenら(Food Chem.Toxicol.,41,703-717(2003))によると、1kg果皮あたり4.83gを含むとされている(0.48%)。他方、アクテオシドは、インポテンツ、不妊、血崩(生理不順)、腰膝冷痛の治療に有効であり、補腎・滋養強壮の処方薬として臨床で使用されてきたハマウツボ科(ニクジュヨウCistanche deserticola)に豊富に含まれている。このニクジュヨウは、アクテオシド4.8〜15.2 mg/gを含む(H.M.Shi et al.,Biol.Pharm.Bull.,32,142-146(2009))。したがって、このようなアクテクオシド含量の胡麻若葉が得られれば、ニクジュヨウと同様の作用をもつ可能性がある。現在、ニクジュヨウは中国において国家2級保護植物に認定され、その採取が困難となり、その代替品としてカンカニクジュヨウ(Cistanche tubulosa)が利用されている(田中ら、FoodStyle 21,Vol 12,No.1〜10(2008))。
【0005】
アクテオシドの合成は、極めて困難であることから、上記したとおり、その生産は、植物等からの抽出に限定されている。従来、生薬である地黄(特開平3-271227号公報)、シソ科植物のチョロギ(宮瀬ら、薬学雑誌、1990年、110巻、932-935頁)、ハマウツボ科植物のホンオニク(Q.Xiong et al.,Biol.Pharm.Bull.、19,1580-1585(1996))等からアクテオシドが得られているが、その含有量は、0.002%〜0.08%と極微量である。本発明者らは、アクテオシドが多く含まれると考えられる胡麻の実ではなく、胡麻の若葉に注目して研究した結果、意外なことに胡麻の若葉に多量のアクテオシドが含まれることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-302797号公報
【特許文献2】特開平3-271227号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】G. Nonaka et al., Phytochemistry, 16, 1265-1267 (1977)
【非特許文献2】H. Sasaki et al., Chem. Pharm. Bull., 26, 2111-2121 (1978)
【非特許文献3】T. Miyase et al., Chem. Pharm. Bull., 30, 2732-2737 (1982)
【非特許文献4】H. Kobayashi et al., Chem. Pharm. Bul.,32, 3009-3014 (1984)
【非特許文献5】宮瀬ら, 薬学雑誌, 110, 652-657 (1990)
【非特許文献6】T. Miyase et al., Phytochemistry, 30, 2015-2018 (1991)
【非特許文献7】北川ら、 薬学雑誌, 115, 922-1003 (1995)
【非特許文献8】Owen ら、 Food Chem. Toxicol., 41, 703-717 (2003)
【非特許文献9】N. Suzukiら, Phytochemistry, 34, 729-732 (1993)
【非特許文献10】Khaleelら., J. Food Drug Anal., 15) 249-257 (2007)
【非特許文献11】L. Li et al., Food Chem., 108, 702-710 (2008)
【非特許文献12】Owenら、 Food Chem. Toxicol., 41, 703-717 (2003)
【非特許文献13】H. M. Shi et al., Biol. Pharm. Bull., 32, 142-146 (2009)
【非特許文献14】田中ら, Food Style 21, Vol 12, No. 1〜10 (2008)
【非特許文献15】宮瀬ら、薬学雑誌、1990年、110巻、932-935頁
【非特許文献16】Q. Xiong et al.,Biol.Pharm.Bull.、1996年、19巻、1580-1585頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、アクテオシド含量の高い、廉価な植物体が知られていない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アクテオシドを1.0重量%以上含むアクテオシド含量の高い胡麻若葉乾燥末およびそれより得られるエキス粉末を提供する。本発明の発明者は、胡麻若葉は、大麦若葉やケール若葉より高い抗酸化性を示し、その活性は桑若葉に次ぐものであり、またこの活性は含有ポリフェノール量に依存すること、すなわち、胡麻若葉には強い抗酸化性を有するポリフェノールが含まれていること、その主成分の一つがフェニルプロパノイド化合物であるアクテオシドであり、胡麻若葉中に1%以上のアクテオシドが多く含まれることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
胡麻若葉は、胡麻栽培の過程で胡麻の葉の一部として摘み取られるから、廉価な上に、多くの有用な性質を有するアクテオシドの含量が高いので、胡麻若葉から高価なアクテオシドを廉価で、かつ効率よく大量に得ることができる。従来、アクテオシドを含有する植物としては、上記のとおり、カンカニクジュヨウ、オリーブ種子、コショウ科マティコ等の植物が知られているが、いずれも安価な植物ではない。
【0011】
また、本発明のアクテオシド含量の高い胡麻若葉乾燥末は、そのまま、あるいはこれにより得られるエキス粉末を摂取することにより、さまざまな機能性を有するサプリメントとしての用途が期待される。例えば、上記した既報のアクテオシドの効果である体内での肝保護作用、抗炎症作用、抗侵害受容作用、性機能改善、鎮静効果等の発現が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】アクテオシド検量線を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の胡麻若葉乾燥末は、重量を基準にして1%以上、好ましく2.5%以上、さらに好ましくは6%以上、最も好ましくは8〜10%のアクテオシドを含有する。このようなアクテオシド含量の胡麻若葉乾燥末は、胡麻の種類、栽培地を含め胡麻栽培時の温度、湿度、地熱、栽培時期等の栽培条件等により異なるが、約2週間から約12週間栽培すると一般に胡麻の背丈が約110cm未満、好ましは約100cm未満、最も好ましくは約30〜90cmの胡麻の若葉から得られる。胡麻若葉は、国産胡麻若葉(島根産、九州産等)でもミャンマー産でもよいが、好ましくは、リグナンの含量が高いミャンマー産の「リグナン高含有黒胡麻」である。リグナン高含有黒胡麻は、胡麻の取扱い業者より容易に入手可能である。また、加工前の播種用の胡麻も同様に容易に入手できる。もっとも好ましくは、リグナン高含有黒胡麻(種苗登録No:ITCFA2001,2002,Sesamum indicum L.)であり以下のような特性をもつ。
【0015】
すなわち、伸育性は、無限、草丈は中程度で分枝の位置は全体、第1果までの節数は極多、葉身長はやや短、葉幅は狭く、葉身の長さと幅の比率はやや大きく複葉の着生程度は、極少、葉身の緑色の程度はやや淡く、葉腋当たりの花数葉1花、花筒部外面の色は淡く、下唇弁先端部の色は淡い。さく果の房室数は、5房以上、さく果の長さは、中、さく果の最大幅は広く、さく果の裂開の有無は有、種皮の色は黒色、セサミン含有量は多く、開花始めは極晩、成熟期は極晩である。国産品種「ごまぞう」と比較して分枝の位置が全体であり、さく果の房室数が5房以上であること、種皮の色が黒色であること、成熟期が極晩であること等で区別される。また栽培から成熟まで地温約20℃、約3000時間以内の日照熱量が必要とされる。なお、このリグナン高含有黒胡麻とこの種由来の植物を交配させて得られる交配種のみならず、それらリグナン高含有黒胡麻および交配種の形質転換植物を本発明の胡麻若葉乾燥末の原料として使用できる。上記した交配種あるいは形質転換植物は周知の技術によって得られる。
【0016】
また、アクテオシド含量の高い,上記した背丈の胡麻若葉は、上記した栽培条件等によっても異なるが、一般的には約2週間から約12週間胡麻を栽培して得られる。本発明の好ましい態様においては、アクテオシドを1.0重量%以上含む胡麻若葉は、約2週間から約12週間、好ましくは約8週間から12週間栽培して得られる背丈が約110cm未満の胡麻から得られるが、栽培期間が延びるに従って、成熟葉の割合が増加する。従って、胡麻の背丈が伸びるにしたがって、アクテオシドの含量は、胡麻の葉の成長期に増加し、ある期間(背丈が110cm以上)を境に胡麻の葉中全体に含まれるアクテオシド含量は低下する傾向にある。なお、胡麻若葉は、若葉だけを採取してもよいし、成熟葉を含む葉全体を採取してもよい。
【0017】
本発明の胡麻若葉乾燥末は、常法により胡麻若葉を乾燥し、常法により乾燥した胡麻若葉を常用されている粉砕装置を用い、微粉砕して得ることができる。また、若葉を多く含む胡麻の葉あるいはこの乾燥末のエキス粉末を得るには、まず胡麻若葉の乾燥末をヘキサン等の適当な溶媒で脱脂後、水や熱水またはアルコール等の適当な溶媒でアクテオシドを抽出して、アクテオシド高含有エキス粉末を得る。抽出には如何なる方法を用いてもよく、例えば、上記した胡麻若葉を原料とし、これを破砕した後、これらの破砕物を上記した溶媒に浸漬し、撹拌、振盪、あるいは超音波で処理することにより得られる。具体的には、原料の10倍量以上(重量比)、好ましくは10〜100倍量(重量比)の溶媒で、温度0℃以上、好ましくは10℃〜その溶媒の沸点以下の温度条件下で、攪拌しつつ1分間〜8週間、好ましくは10分〜1週間抽出処理をすることにより得ることができる。また、必要により加熱還流しながら抽出する方法を用いてもよい。
【0018】
なお、上記のアクテオシド抽出物からアクテオシドを精製するには、天然有機化合物類の分離または精製に用いられる公知の方法を用いることができる。例えば、活性炭、シリカゲル、化学修飾シリカゲル、ポリマー系担体等を用いた脱吸着、あるいはクロマトグラフィー、液−液抽出、分別沈殿等の手法により、アクテオシドを精製することができる。また必要により、適宜抽出液から溶媒を除去した残渣をそのまま、または水に溶解して酢酸エチル、石油エーテル、ジエチルエーテル、クロロホルム等の有機溶剤で洗浄し、有機溶剤に移行する脂溶性成分を除去してもよい。具体的には、前記粗抽出物をダイアイオンHP-20カラム(三菱化学株式会社製)に供し、メタノール溶出画分を集め、クロロフィルを除去する。
【0019】
なお、吸着されたクロロフィルはメタノール-アセトン(1:1)混液やアセトンを流すことにより溶出する。上記メタノール画分を濃縮乾固し、40%メタノールに溶解後、酢酸エチル、1-ブタノールと順次液−液分配を行うことにより、ブタノール相に目的成分を得ることができる。濃縮乾固後、40%メタノールに溶解し、ODS−カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:40%メタノール)およびODSカラムを装着した分取高速液体クロマトグラフィー(溶出溶媒:40%メタノールあるいは40%エタノール)によって分離された目的画分を集め、濃縮・乾固すると、純度約95%のアクテオシド画分が得られる。
【0020】
上記した胡麻の葉あるいはこの乾燥末のエキス粉末を得るのに使用される熱水又はエタノールの量は、胡麻若葉又は胡麻若葉の乾燥末の10〜100倍量(容量/重量)であるが必ずしもこの範囲でなくてもよい。さらに、エタノール等の溶媒を除去して得られる胡麻若葉の乾燥末またはこれより得られるエキス粉末は、適当な添加物を添加して、胡麻若葉末のエキスを含有する組成物として食用に供される。添加物の使用量は、約100倍量である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
以下のようにして、胡麻若葉乾燥末を作成した。
洗浄した胡麻若葉生葉から異物を除去し、荒粉砕する。粉砕物を熱水でブランチングして冷却し、さらに脱水後熱風乾燥する。次いで、金属探知機により金属を除去して選別後、7メッシュの粉砕を行う。1mmの篩で異物を除去し、さらに殺菌、金属選出(Fe:1.2Φ、Sus: 1.2Φ)を行い、最後に2次粉砕、金属選出(75μm以下200メッシュ、金属マグネット付)を行う。
【0022】
[実施例2]
以下のようにして、胡麻若葉中に含まれるアクテオシドを抽出して同定した。
胡麻若葉乾燥末試料200 gにヘキサン500 mLを加え、30分間の振とうを行った。この操作を2回行い、脱脂した。次いで80%エタノールを500 mL加え、30分間振とうし、ろ過後抽出液を得た。
【0023】
この操作を2回繰り返し、得られた抽出液を100 mLまで濃縮した。この操作を7回繰り返し、1.4 kgの試料を処理し、計700 mLの抽出液を得た。この抽出液中に含まれる多くのクロロフィルを、ダイヤイオンHP-20カラム(5.5×53 cm)を用いて除去した。1回当たり100 〜200 mLの抽出液を負荷後、メタノール、メタノール-アセトン、アセトンを各1.5 Lずつ流し、計4.5 Lのメタノール画分を得た(乾燥重量102.8 g)。この画分を40%メタノール 450 mLに溶解後、メタノール150 mLに対し、酢酸エチル150 mL、ブタノール150 mLと順次、液−液分配を行い、ブタノール画分を得た(17.1 g)。
【0024】
本画分を40%メタノール200 mLに溶解し、ODSカラムクロマトグラフィー(カラム:Develosil Lop-ODS、24×360 mm、移動相:40% メタノール、流速6 mL/分、注入量5 mL)に供した。視覚的に分離が認められる5つの画分(Fr.1〜Fr.5)に分けた(Fr.1:11.93 g、Fr.2:0.72 g、Fr.3:1.08 g、Fr.4:1.37 g、Fr.5:0.88 g)。HPLC分析より、Fr.1はS1〜S3、Fr.2はS3〜S5、Fr.3はS5、Fr.4はS4〜S7、Fr.5はS5〜S9を主に含んでいた。このうち、Fr.3を40%エタノール 5 mLに溶解し、分取HPLC (Inertsil ODS-3 JET 10×50 mm、移動相:40%エタノール、流速:4.0 mL/分、カラム温度:40℃、検出波長:340 nm、注入量150 L)に供した。溶出成分を細かく分け(9画分:Fr.3-1〜Fr.3-9)、S5(アクテオシド画分)を単離した(Fr.3-2; 532.8 mg)。
【0025】
[実施例3]
アクテオシドの定量および確認のためのMSおよびNMR測定は、下記のとおり行った。
質量分析(MS)はWaters社製Quattro Premierを搭載したLC-MS/MSにてエレクトロスプレーイオン化法(ESI)ネガティブモード及び日本電子製JMS-SX102Aにて電子衝撃イオン化法(FAB)にて行った。またNMRは試料10 mgをDMSO-d6およびMeOH-d41 mLに溶解し、日本電子製ECA-500にて1H、13Cの各種二次元測定を行った。
【0026】
[実施例4]
以下の方法でアクテオシドの検量線を作成し、これに基づいて胡麻若葉中のアクテオシドを定量した。
試料調製:胡麻若葉は、ミャンマー産の黒胡麻を栽培し、栽培期間約2から12週間の背丈が30から150cmの胡麻から若葉を採取し、乾燥、粉砕したものを使用した。胡麻若葉乾操品50mgを秤量し、80%エタノール水溶液を適当量加えた後、超音波処理し、80%エタノール水溶液で50Lに定容する。0.45μmまたは0.2μmメンブレンフィルターでろ過し、UPLC用試料とする。
【0027】
アクテオシド標準溶液の調製:アクテオシド標準品(市販標準品)を1〜5 mgを秤量し、80%エタノール水溶液を加え、1000μg/mLの溶液を調製する。これを原液とし、希釈により、500、100、50、10、5μg/mLの溶液を調製する。各溶液を0.45μmまたは0.2μmメンブレンフィルターでろ過し、UPLC用標準溶液とする。
【0028】
UPLC条件:(今回)
カラム: Waters BEH C18, 1.7 μm, 2.1×50 mm
移動相: A, 0.1%ギ酸水溶液; B, アセトニトリル(0.1%ギ酸含有)
リニアーグラジエント:0-3.47 分 (5%-35% B), 3.47-9.26 分 (35%-100% B)
流速:0.3 mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:200-400 nm (定量時340 nm)
注入量:2 μL
【0029】
結果
【表1】

【0030】
以上の結果から、アクテオシド検量線(図1)を得た。
なお、上記図1中の式において、x:試料中のアクテオシド含量、y:UPLC測定値のArea値を示す。
【0031】
試料中のアクテオシド(%)
=(検量線より求められた濃度μg/mL)/(試料重量濃度μg/mL)×100
=(12.6/1000)×100
=1.26 %
【0032】
なお、本測定は以下に示すHPLC分析でも可能である。
HPLC条件
カラム:Waters X-Bridge C18,5mm,4.6×150mm
移動相:A,0.1%ギ酸水溶液;B,アセトニトリル(0.1%ギ酸含有)
リニアーグラジエント:0-15分(5%-35% B),15-40分(35%-100% B)
流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
検出波長:340nm
注入量:10mL
【0033】
[実施例5]
胡麻若葉の成長に伴うアクテオシド含量の経時変化を測定した。
背丈が10cmから150cmまで成長するまでの間、若葉を多く含む国産胡麻及びリグナン黒胡麻の葉を採取し、胡麻若葉末に含まれるアクテオシド含量の変化を測定した。播種試験は島根県で実施した。
【0034】
上記した方法で測定したアクテオシド含量は以下のとおりであった。なお、胡麻若葉末は、採取後、水分含量が5%以下になるまで乾燥した。
【0035】
【表2】

【0036】
上記播種試験の結果では、通常の胡麻製造で実施する洗浄工程、およびブランチング工程を省略した。国産胡麻では10cm丈で2.06%の数値を示し、また150cm丈で最高値の約3.12%を示した。
【0037】
またリグナン高含有黒胡麻(リグナンリッチ黒胡麻)の若葉粉末では同様に10cm丈では、1.82%を示し、90cm丈では最高値の4.09〜6.39%を示した。また国産のごまぞうと異なり、150cmでは減少傾向を示した。
【0038】
この結果より、リグナン高含有黒胡麻で栽培された胡麻若葉は、明らかに国産胡麻と比較して、アクテオシド含量が高いこと、またその増加傾向も国産胡麻と異なる傾向を示すことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクテオシド含量が1重量%以上である胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項2】
アクテオシド含量が2.5重量%以上である請求項1に記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキ
ス粉末。
【請求項3】
アクテオシド含量が6重量%以上である請求項2に記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項4】
アクテオシド含量が8重量%〜10%である請求項3に記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項5】
胡麻若葉の背丈が110 cm未満の胡麻若葉から得られる請求項1〜4のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項6】
胡麻若葉の背丈が30〜100 cmの胡麻若葉から得られる請求項1〜5のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項7】
栽培期間が2〜12週間である胡麻若葉から得られる請求項1〜6のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項8】
栽培期間が8〜12週間である請求項7に記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項9】
胡麻若葉乾燥末,またはこれを熱水またはエタノールで抽出して得られる請求項1〜8のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項10】
胡麻若葉がリグナンリッチ黒胡麻に由来する請求項1〜9のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の胡麻若葉乾燥末およびそのエキス粉末を含有する組成物。
【請求項12】
組成物がサプリメントである請求項11に記載の組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2012−197247(P2012−197247A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62464(P2011−62464)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(507333409)株式会社わだまんサイエンス (1)
【出願人】(302060720)株式会社和田萬商店 (2)
【Fターム(参考)】