説明

アザディールス−アルダー反応用触媒、それを用いたテトラヒドロピリジン化合物の製造方法

【課題】触媒量で有効な触媒を用いたアザディールス−アルダー反応付加物の高収率製造方法の提供。
【解決手段】
【化1】


【化2】


上記化合物を含む触媒、およびこの触媒を用いた、イミン化合物と共役ジエン化合物からのテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アザディールス−アルダー反応用触媒、それを用いたイミン化合物と共役ジエン化合物とのアザディールス−アルダー反応によりテトラヒドロピリジン環を有する化合物(以下、テトラヒドロピリジン化合物と称す。)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロピリジン化合物は多くのアルカロイド合成の出発原料として重要な化合物である(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。テトラヒドロピリジン化合物は、イミン化合物とイソプレンや2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物とのアザディールス−アルダー反応により製造できることが知られている。しかしながら、このアザディールス−アルダー反応を利用して実用的な収率でテトラヒドロピリジン化合物を得ようとすると、窒素原子への酸触媒の強い配位のため、イミン化合物に対し当量以上の酸触媒の添加が必要であった。このような反応の例として、例えば、以下の二つの文献を例示することが出来る。
【0003】
一つ目は、アザディールス−アルダー反応触媒としてトリフルオロ酢酸を触媒に、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を溶媒に用い、アザディールス−アルダー付加物を42%〜95%の共役ジエン化合物に依存した収率で合成する方法が報告されているものである(非特許文献4)。触媒として用いるトリフルオロ酢酸は、イミン化合物に対し1当量必要である。
【0004】
また、N−スルホニル−トルエンスルホンアミドとトリフルオロホウ素エーテラート錯体を利用し、アザディールス−アルダー付加物を共役ジエン化合物に依存した44%〜75%の適度な収率で合成する方法が報告されている(非特許文献5)。ルイス酸として用いるトリフルオロホウ素エーテラート錯体はN−スルホニル−トルエンスルホンアミドに対し等量使用され、共役ジエン化合物に対し1.5当量必要であることが示されている。
【0005】
上述のような基質に対し1当量以上の触媒を使用する反応に対し、基質よりも少ない使用量で反応を進行させる触媒も見出されている。すなわち、小林らはSc(OTf)3を触媒として基質に対し20mol%用いることで、例えばN−ベンジリデンベンゼンアミンと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンのアザディールス−アルダー反応により40%弱の低活性ながらテトラヒドロピリジン化合物が合成できると報告している(非特許文献6)。
【0006】
また、小林らはダニシェフスキージエン(Danishefsky’s diene)と言う非常に電子リッチな反応性の高い特殊なジエンを利用するが、水系で中性のアルカリ金属塩を利用することでアザディールス−アルダー反応による含窒素6員複素環化合物の合成について報告がある(特許文献1)。使用するアルカリ金属塩触媒の量もイミン化合物に対し10mol%と少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−238268号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Tetrahedron,(Switzerland),Els evier,1982,vol.38, p.3087
【非特許文献2】Chemical Communications,(Unit ed Kingdom),RSC Publishing,1998,p.633
【非特許文献3】Journal of American Chemistry ,(United Stetes of America),American Ch emical Society,2009,vol.131,p.4598
【非特許文献4】Tetrahedron Letters,(United K ingdom),Elsevier Science Ltd.,2002,vol. 43,p.1071
【非特許文献5】Tetrahedron Letters,(United Kingdom),Elsevier Science Ltd.,2002,vol .43,p.1071
【非特許文献6】Synthesis,(Germany),Thieme Pu blishing,1995,p.1195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、アザディールス−アルダー反応におけるテトラヒドロピリジン化合物の合成において、非特許文献4および5に記載の方法では酸触媒を基質に対し1当量以上使用することが必要である。したがって、これら提案の方法は、使用する触媒量を低減させると言う課題を有する。
【0010】
非特許文献6の提案では、基質に対し20mol%の触媒量で反応を進行させるもので、触媒量の低減と言う点からは改良触媒と考えることが出来る。しかし、スカンジウムは希少金属で、触媒が高価であることから、工業的な使用に適するものではない。
【0011】
特許文献1では、水系における反応で、使用するアルカリ金属塩触媒の量もイミン化合物に対し10mol%と少量でよいと言う特徴を有すが、ダニシェフスキージエンという特別なジエンを使用することが要求されている点に課題が残る。ダニシェフスキージエンは、4−メトキシ−3−ブテン−2−オンを塩化亜鉛とエチルアミンの共存下にトリメチルシリルクロライドと12時間かけて反応させることにより得られ、その取得に多くの手間がかかることが知られている。また、生成物は、含窒素6員複素環化合物であり、テトラヒドロピリジン化合物ではない。
【0012】
そこで、本発明においては、イミン化合物と共役ジエン化合物とのアザディールス−アルダー反応を高収率で促進するための経済性に優れたアザディールス−アルダー反応用触媒、それを用いたテトラヒドロピリジン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を続けた結果、イミン化合物と共役ジエン化合物とのアザディールス−アルダー反応によるテトラヒドロピリジン化合物の製造において、フッ素を有するスルホン酸基含有化合物触媒の存在下に反応を行うことで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物の少なくとも1種を含む、イミン化合物と共役ジエン化合物とを環化付加反応させてテトラヒドロピリジン化合物を製造するために用いられる触媒に関するものである。より具体的には、一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物の少なくとも1種を含む、下記一般式(3)で示されるイミン化合物と下記一般式(4)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させて、下記一般式(5)で示されるテトラヒドロピリジン化合物を製造するために用いられる、アザディールス−アルダー反応用触媒に関するものである。さらに本発明は、アザディールス−アルダー反応用触媒として一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物の少なくとも1種の存在下に、下記一般式(3)で示されるイミン化合物と下記一般式(4)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(5)で示されるテトラヒドロピリジン化合物の製造方法に関するものである。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R1はフッ素原子、フッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基、フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基である。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、R2およびR3はそれぞれ独立してフッ素原子、フッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基、フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基を示し、R2とR3が結合して炭素環を形成していても良い。
【0019】
さらに本発明は、上述の触媒存在下に、下記一般式(3)で示されるイミン化合物と下記一般式(4)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(5)で示されるテトラヒドロピリジン化合物の製造方法に関する。
【化3】

【0020】
式中、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素原子、C1〜C20のハロゲン原子で置換されていて良いアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基、またはC1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いエステル基を示す。R6は、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基、C1〜C20のアルキル基若しくはC2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基で置換されていて良いアルキル基、C1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基を有するスルホニル基、C1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いアリール基を有するカルボニル基、またはアリール基で置換されていても良いアルキル基を示す。)
【0021】
【化4】

(式中、R7,R8,R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基、C1〜C4のアルキル基を有するシロキシ基を表し、但し、R7とR10が結合して炭素環を形成していても良い。)
【0022】
【化5】

(式中、R4,R5,R6,R7,R8,R9,R10は前記と同じ。)
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡便で入手し易い触媒を用いて、マイルドな条件下に種々のテトラヒドロピリジン化合物を高い収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒は、下記一般式(1)で示されるスルホン酸化合物および下記一般式(2)で示されるスルホンイミド化合物の少なくとも1種を含み、一般式(1)で示される化合物および一般式(2)で示される化合物の混合物であることもできる。
【0025】
【化6】

式中、R1はフッ素原子、フッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基、フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基で示されるスルホン酸化合物の置換基である。スルホン酸化合物は単種で用いても良く、R1が異なる複数のスルホン酸化合物の混合物を用いても良い。
【0026】
1としては、具体的に示すと、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、tert−ノナフルオロブチル基、トリフルオロビニル基、ペンタフルオロプロペニル基、ヘプタフルオロブテニル基、ノナフルオロペンテニル基、ヘプタフルオロシクロペンテニル基、ノナフルオロシクロへキシル基、ペンタフルオロフェニル基、2,3,5,6−テトラフルオロトルイル基などを挙げることができる。これらの中でより好ましくは、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0027】
スルホン酸化合物の具体例としては、例えば、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、n−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、i−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、n−ノナフルオロブタンスルホン酸、i−ノナフルオロブタンスルホン酸、sec−ノナフルオロブタンスルホン酸、tert−ノナフルオロブタンスルホン酸、ヘキサフルオロシクロペンテニルスルホン酸、ペンタフルオロフェニルスルホン酸などを挙げることが出来る。
【0028】
【化7】

式中、R2およびR3はそれぞれ独立してフッ素原子、フッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基を示し、R2とR3が結合して炭素環を形成していても良いスルホンイミド化合物の置換基である。スルホンイミド化合物は単種で用いても良く、複種のスルホンイミド化合物の混合物を用いても良い。
【0029】
2、R3としては、具体的に示すと、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、イソヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、tert−ノナフルオロブチル基、トリフルオロビニル基、ペンタフルオロプロペニル基、ヘプタフルオロブテニル基、ノナフルオロペンテニル基、ヘプタフルオロシクロペンテニル基、ノナフルオロシクロへキシル基、ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロメチレン基、パーフルオロジメチレン基、パーフルオロトリメチレン基などを挙げることができる。これらの中で好ましくは、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。
【0030】
スルホンイミド化合物の中で好ましいものを具体的に挙げると、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、シクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドである。
【0031】
また、上記のスルホン酸化合物およびスルホンイミド化合物は、混合して用いても良い。
【0032】
本発明の触媒は、アザディールス−アルダー反応に好適に用いることができ、具体的には、イミン化合物と共役ジエン化合物とを環化付加反応させてテトラヒドロピリジン化合物を製造するために用いられる。前記イミン化合物は、例えば、一般式(3)で示される化合物であることができ、前記共役ジエン化合物が下記一般式(4)で示される化合物であることができ、かつ前記テトラヒドロピリジン化合物が下記一般式(5)で示される化合物であることができる。
【0033】
アザディールス−アルダー反応における本発明の触媒の使用量は特に制限されるものではない。一般的にはイミン化合物が基準となって触媒の使用量が表現され、通常の使用においては、原料基質であるイミン化合物のモル数に対する触媒のモル数で表した場合0.01〜1mol/molの範囲で良い。本発明の触媒の活性を考慮し、合成反応後の反応液の処理を考えると、好ましくは0.02〜0.2mol/molであり、更に好ましくは0.04〜0.1mol/molである。
【0034】
[テトラヒドロピリジン化合物の製造方法]
さらに本発明は、上述の触媒存在下に、下記一般式(3)で示されるイミン化合物と下記一般式(4)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(5)で示されるテトラヒドロピリジン化合物の製造方法に関する。
【化8】

式中、R4、R5およびR6は前述の通りである。
【0035】
一般式(3)中のR4およびR5としては、具体的に示すと、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基またはトリクロロメチル基、ペンタクロロエチル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、メトキシフェニル基などを挙げることができる。また、メチルエステル基、エチルエステル基、メトキシメチルエステル基などのエステル基を挙げることが出来る。
【0036】
一般式(3)中のR6としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基などのアリール基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、メチルシクロプロピル基、ビニルシクロペンチル基などのシクロアルキル基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、トルエンスルホニル基、メトキシフェニルスルホニル基などのスルホニル基、フェニルカルボニル基、トリルカルボニル基、4−メトキシフェニルカルボニル基などのカルボニル基、フェニルメチル基、ジフェニルメチル基などの置換アルキル基を挙げることが出来る。
【0037】
イミン化合物の具体例としては、N−ブチリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−ベンジリデン−4−メチルベンゼンスルホンアミド、N−(4−クロロベンジリデン)−4−メチルベンゼンスルホンアミド、N-(4-メトキシベンジリデン)-4-メチルベンゼンスルホンアミド、N−ベンジリデンアミン、n−ブチルベンジリデンアミン、N−メチル−(α−メチルベンジリデン)アミン、tert−ブチルベンジリデンアミン、N−ベンジリデンベンゼンメタンアミン、N−(α−メチルベンジリデン)ベンゼンアミンなどを挙げることが出来る。
【0038】
なお、イミンは対応するカルボニル化合物とアミン化合物を酸触媒存在下に脱水縮合するという定法により生成させることができる。
【化9】

式中、R7,R8,R9およびR10は前述の通りである。
【0039】
一般式(4)の中のR7,R8,R9およびR10としては、具体的に示すと、水素、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などを挙げることができ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、トルイルオキシ基、ナフトキシ基などを挙げることができる。また、シロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、ジメチルエチルシロキシ基、メチルジエチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基などを例示することが出来る。R7とR10が環化して良いものとしては、メチレン基およびジメチレン基、トリメチレン基、エチリデン基、2−メチル−1,2,3−プロパントリル基などを挙げることが出来る。
【0040】
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンが好ましい。
【0041】
本発明におけるアザディールス−アルダー反応用触媒を用いた反応は、無溶媒でも溶媒を用いても行うことができる。本発明で用いられる溶媒として、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶媒、更にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミドなどの含酸素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中で好ましいものはクロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶媒、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒である。また、ここに挙げた溶媒は1種類のみで用いてもよく、2種類以上の溶媒を混合しても反応に用いることができる。
【0042】
溶媒の使用量は基本的に任意に設定することができるが、アザディールス−アルダー反応用触媒、イミン化合物および共役ジエン化合物のそれぞれの濃度が低くなりすぎると反応速度が低下し、反応完結に要する時間が長くかかる。一般的には、例えば、イミン化合物を基準にすると、溶媒は5000質量%以下の使用量に抑えるのが良い。
【0043】
溶媒を使用する場合、あらかじめ脱水処理を行ったものを用いるほうが良い結果を与えるため好ましい。ただし、溶媒に対し5質量%以下の水の存在を否定するものではない。
【0044】
反応温度は用いる溶媒やイミン化合物および共役ジエン化合物により適する範囲が変るが、一般には−100℃〜100℃の範囲で実施され、好ましくは−80℃〜30℃の範囲である。
【0045】
反応時間は5分〜120時間の範囲でよく、反応後の目的物は加水分解され、加水分解後に有機溶媒で有機層の抽出およびカラムクロマトグラフィーを用いて目的物を得ることが出来る。また、更なる精製を行うため、再結晶を実施しても良い。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
以下の反応は乾燥窒素ガス雰囲気下に行った。トルエン溶媒はケチルラジカルにより乾燥し、蒸留したものを用いた。また、テトラヒドロフラン溶媒およびジクロロメタン溶媒は水素化カルシウムにより乾燥し、蒸留したものを用いた。
【0048】
実施例1
トリフルオロメタンスルホン酸(HOTf)を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化10】

【0049】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率97%(166 mg, 0.49 mmol)で得た。
【0050】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 1.45 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 2.11 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 2.26-2.33 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 3.48 (dd, 2H, J = 17.7, 191.8 Hz), 5.16 (d, 1H, J = 6.3 Hz), 7.14-7.22 (m, 7H), 7.56-7.59 (m, 2H)
13C NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 16.0, 18.6, 21.5, 32.4, 44.9, 53.5, 122.2, 123.7, 127.0, 127.3, 127.4, 128.3, 129.4, 137.7, 139.7, 143.0
【0051】
実施例2
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のジクロロメタン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で2時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率97%(166 mg, 0.49 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例1で得たものと一致した。
【0052】
実施例3
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のテトラヒドロフラン溶液 (0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で4日時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1) により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率32%(55 mg, 0.16 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例1で得たものと一致した。
【0053】
実施例4
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
反応温度を0℃としたこと以外は実施例2と同様に反応を実施したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率90%(154 mg, 0.4 5mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例1で得たものと一致した。
【0054】
実施例5
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
反応温度を25℃としたこと以外は実施例2と同様に反応を実施したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率82%(140 mg, 0.41 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例1で得たものと一致した。
【0055】
実施例6
トリフルオロメタンスルホンイミドを触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化11】

【0056】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHNTf2 (7 mg, 0.025 mmol)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol) を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率81%(138 mg, 0.41 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例1で得たものと一致した。
【0057】
実施例7
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とするイソプレンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化12】

【0058】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のジクロロメタン溶液(0.5 ml)を加え、-78℃まで冷却した。そしてイソプレン(100μl, 1.0 mmol)を加えて-78℃で4時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.6 mmol)を加えて撹拌して触媒を失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4-メチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率70%(115 mg, 0.35 mmol)で得た。
【0059】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 1.55 (s, 3H), 2.10-2.30 (m, 2H), 2.30 (s, 3H), 3.24 (d, 1H, J = 19.2 Hz), 3.98 (d, 1H, J = 18.0 Hz), 5.20 (d, 2H, J = 5.7 Hz), 7.07-7.19 (m, 7H), 7.58 (d, 2H, J = 8.4 Hz)
13C NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 21.5, 23.3, 31.3, 40.9, 53.2, 117.5, 127.1, 127.3, 127.5, 128.4, 129.5, 131.5, 137.7, 139.5, 143.1
【0060】
実施例8
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とするイソプレンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
反応温度を-40℃としたこと以外は実施例7と同様に反応を実施したところ、4-メチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率67%(110 mg, 0.34 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例7で得たものと一致した。
【0061】
実施例9
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とするイソプレンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
反応温度を25℃としたこと以外は実施例7と同様に反応を実施したところ、4-メチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率58%(95 mg, 0.34 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例7で得たものと一致した。
【0062】
実施例10
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とするイソプレンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
反応温度を-40℃、使用溶媒をトルエンとしたこと以外は実施例7と同様に反応を実施したところ、4-メチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率59%(97 mg, 0.30 mmol)で得た。生成物のスペクトルは実施例7で得たものと一致した。
【0063】
実施例11
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする1,3-シクロヘキサジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化13】

【0064】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(129.66 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして1,3-シクロヘキサジエン(200μl, 2.1 mmol)を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒を失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、3-フェニル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)-2-アザビシクロ[2,2,2]オクタ-5-エンを収率70%(237 mg, 0.35 mmol)で得た。
【0065】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 0.81-0.85 (m, 1H), 1.18-1.43 (m, 2H), 2.11-2.35 (m, 1H), 2.35 (s, 3H), 2.51 (bs, 1H), 4.11 (s, 1H), 4.56 (bs, 1H), 5.85 (t, 1H, J = 6.7 Hz), 6.14 (t, 1H, J = 6.7 Hz), 7.06-7.31 (m, 5H) , 7.37 (d, 2H, J = 7.2 Hz), 7.55 (d, 2H, J = 8.4 Hz)
【0066】
実施例12
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-(4-クロロベンジリデン)-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化14】

【0067】
窒素雰囲気下、室温でN-(4-クロロベンジリデン)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(146.9 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、0℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で46時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒を失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製したところ、2-(4-クロロフェニル)-4,5-ジメチル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率91%(172 mg,0.46 mmol)で得た。
【0068】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 1.45 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 2.06 (d, 1H, J = 17.1 Hz), 2.24-2.34 (m, 1H), 2.34 (s, 3H), 3.14 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 3.79 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 5.12 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 7.08-7.19 (m, 6H), 7.57 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 16.0, 18.6, 21.5, 32.3, 44.9, 52.9, 122.3, 123.0, 126.9, 128.4, 128.8, 129.5, 133.1, 137.5, 138.2, 143.2
【0069】
実施例13
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-(4-メトキシベンジリデン)-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化15】

【0070】
窒素雰囲気下、室温でN-(4-メトキシベンジリデン)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(144.7 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液 (0.5 ml)を加え、0℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて0℃で47時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒を失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製したところ、2-(4-メトキシフェニル)-4,5-ジメチル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率53%(99 mg,0.27 mmol)で得た。
【0071】
1H NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 1.45 (s, 3H), 1.50 (s, 3H), 2.06 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 2.23-2.33 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 3.14 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 3.71 (s, 3H), 3.78 (d, 1H, J = 17.7 Hz), 5.11 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 6.72 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.09 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.15 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 7.57 (d, 2H, J = 8.1 Hz)
13C NMR (300.13 MHz, CDCl3) δ 16.1, 18.7, 21.5, 32.7, 44.8, 53.1, 55.3, 113.7, 122.3, 123.3, 127.1, 128.6, 129.4, 131.8, 137.8, 143.0, 158.8
【0072】
実施例14
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-(2-フェニルエテン)-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化16】

【0073】
窒素雰囲気下、室温でN-(2-フェニルエテン)-4-メチルベンゼンスルホンアミド(142.66 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液 (0.5 ml)を加え、0℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて0℃で47時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒を失活させた後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)により精製したところ、2-(2-フェニルエテン)-4,5-ジメチル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率34%(63 mg,0.17 mmol)で得た。
【0074】
実施例15
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとN-ブチリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化17】

【0075】
窒素雰囲気下、室温でN-ブチリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(113mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のジクロロメタン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol) を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-ブチル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率78%(120 mg, 0.39mmol)で得た。
【0076】
実施例16
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする2,3-ジメチルブタジエンとn-ブチルベンジリデンアミンのアザディールス−アルダー反応
【化18】

【0077】
窒素雰囲気下、室温でn-ブチルベンジリデンアミン(81mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のジクロロメタン溶液 (0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして2,3-ジメチルブタジエン(120μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(n-ブチル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率90%(137mg, 0.56mmol)で得た。
【0078】
実施例17
トリフルオロメタンスルホン酸を触媒とする1,3-ペンタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化19】

【0079】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHOTf(2.2μl, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして1,3-ペンタジエン(128μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol)を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率75%(118 mg, 0.38 mmol)で得た。
【0080】
実施例18
トリフルオロメタンスルホンイミドを触媒とする1,3-ペンタジエンとN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミドのアザディールス−アルダー反応
【化20】

【0081】
窒素雰囲気下、室温でN-ベンジリデン-4-メチルベンゼンスルホンアミド(130 mg, 0.50 mmol)にHNTf2 (7 mg, 0.025 mmol, 0.050 mol/l)のトルエン溶液(0.5 ml)を加え、-40℃まで冷却した。そして1,3-ペンタジエン(128μl, 1.1 mmol)を加えて-40℃で3時間撹拌した。反応終了後、トリエチルアミン(0.5 ml, 3.59 mmol) を加えて撹拌して触媒活性を無くした後、減圧下で2時間乾燥し低沸点成分を除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、4,5-ジメチル-2-フェニル-1-(トルエン-4-スルホニル)-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンを収率88%(138 mg, 0.45 mmol)で得た。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、アザディールス-アルダー反応およびアザディールス-アルダー反応用として有用な性能を示す触媒を提供するもので、種々の有機合成反応が関係する分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物の少なくとも1種を含む、イミン化合物と共役ジエン化合物とを環化付加反応させてテトラヒドロピリジン化合物を製造するために用いられる触媒。
【化1】

(式中、R1はフッ素原子、フッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基、フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基である。)

【化2】

(式中、R2およびR3はそれぞれ独立してフッ素原子またはフッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基、フッ素原子を含有するC3〜C10のシクロアルキル基、またはフッ素原子を含有するC6〜C12アリール基を示し、R2とR3が結合して炭素環を形成していても良い。)
【請求項2】
前記イミン化合物が下記一般式(3)で示される化合物であり、前記共役ジエン化合物が下記一般式(4)で示される化合物であり、かつ前記テトラヒドロピリジン化合物が下記一般式(5)で示される化合物である、請求項1に記載の触媒。
【化3】

(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子で置換されていて良いC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基の炭化水素基、またはC1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いエステル基を示し、R6は、C1〜C10のアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基、C1〜C20のアルキル基若しくはC2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基で置換されて良いC1〜C10のアルキル基、若しくはC1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基を有するスルホニル基、またはC1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基を有するカルボニル基、C6〜C20のアリール基で置換されていても良いC1〜C20のアルキル基を示す。)
【化4】

(式中、R7,R8,R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基、C1〜C4のアルキル基を有するシロキシ基を表し、但し、R7とR10が結合して炭素環を形成していても良い。)
【化5】

(式中、R4,R5,R6,R7,R8,R9およびR10は前記と同じである。)
【請求項3】
一般式(1)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、n−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、i−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、n−ノナフルオロブタンスルホン酸、i−ノナフルオロブタンスルホン酸、sec−ノナフルオロブタンスルホン酸、tert−ノナフルオロブタンスルホン酸、またはヘキサフルオロシクロペンテニルスルホン酸である請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
一般式(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、またはシクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドである請求項1または2に記載の触媒。
【請求項5】
一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホンイミドまたはそれらの混合物である請求項1または2に記載の触媒。
【請求項6】
一般式(1)または(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物の少なくとも1種の存在下に、下記一般式(3)で示されるイミン化合物と下記一般式(4)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(5)で示されるテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【化6】

(式中、R1はフッ素原子およびフッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基若しくはフッ素原子を含有するアリール基である。)

【化7】

(式中、R2およびR3はそれぞれ独立してフッ素原子またはフッ素原子を含有するC1〜C6のアルキル基、フッ素原子を含有するC2〜C6のアルケニル基若しくはフッ素原子を含有するアリール基を示し、R2とR3が結合して炭素環を形成していても良い。)
【化8】

(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子で置換されていて良いC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基、またはC1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いエステル基を示し、R6は、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルキル基若しくはC1〜C20のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基、C2〜C20のアルケニル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いアルキル基、若しくはC1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いアリール基を有するスルホニル基、C1〜C5のアルキル基若しくはC1〜C5のアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基を有するカルボニル基、またはC6〜C20のアリール基で置換されていても良いC1〜C20のアルキル基を示す。)
【化9】

(式中、R7,R8,R9およびR10はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10のアルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基、C1〜C4のアルキル基を有するシロキシ基を表し、但し、R7とR10が結合して炭素環を形成していても良い。)
【化10】

(式中、R4,R5,R6,R7,R8,R9およびR10は前記と同じである。)
【請求項7】
一般式(1)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、n−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、i−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、n−ノナフルオロブタンスルホン酸、i−ノナフルオロブタンスルホン酸、sec−ノナフルオロブタンスルホン酸、tert−ノナフルオロブタンスルホン酸、またはヘキサフルオロシクロペンテニルスルホン酸である請求項6に記載のテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、またはシクロヘキサフルオロプロパン−1,3−ビス(スルホニル)イミドである請求項6に記載のテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。
【請求項9】
一般式(1)ないし(2)で表されるスルホン酸基を有する化合物が、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホンイミドまたはそれらの混合物である請求項6に記載のテトラヒドロピリジン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−187473(P2012−187473A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51564(P2011−51564)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【Fターム(参考)】