説明

アスベスト除去方法

【課題】構造物が画成する長手空間において局所的に排気効率を向上させることを選択可能なアスベスト除去方法を提供する。
【解決手段】エレベータシャフト内の第1区画を作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、作業場の気圧を大気圧よりも低い負圧に設定する負圧設定工程と、供給量が排気量よりも小さくなるよう制御しつつ送風機により作業場に空気を供給する空気供給工程と、作業場内においてエレベータシャフト内のアスベストを除去する除去工程と、足場を移動させる工程と、エレベータシャフト内の第1区画とは異なる第2区画を他の作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、他の作業場に対して、負圧設定工程、空気供給工程、除去工程を実行する工程と、を備える。
【選択図】図3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物処理方法に関し、特に、鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物が画成する長手空間において当該長手空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる処理(以下、「付着物関連処理」という)を行う付着物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物としては、エレベータシャフトがある。エレベータシャフトが画成する内部空間では、人や物を運搬するためのケージ(cage:乗りかご)が昇降移動する。
【0003】
ケージ上やエレベータシャフトの壁面などに埃などが付着するのを防ぐために、エレベータシャフト内に、ダクト及び集塵機を設けて集塵することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の技術では、ダクトに複数の吸気口を設け、その複数の吸気口をエレベータシャフト内の上下方向に間隔をおいて配置している。これにより、集塵機は、ダクトが有する複数の吸気口を介して、エレベータシャフト内のあらゆる位置における空気を該空気に浮遊する埃などの粉塵と共に吸い込み、それを排気する際に、粉塵を捕集する(集塵)。この結果、エレベータシャフト内における粉塵量が少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−228446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、エレベータシャフト内における粉塵量を少なくすることはできるものの、エレベータシャフト内の清掃(付着物関連処理)がまったく不要となるわけではない。
【0006】
ここで、清掃作業は、通常、エレベータシャフト内において高所から低所の順で行われる。この際に発生する埃などの粉塵は、清掃作業を行っている場所を中心にして飛散する。つまり、エレベータシャフト内において粉塵は局所的に発生する。しかし、上述した技術では、エレベータシャフト内のあらゆる位置に吸気口がある結果、集塵機の排気能力(単位時間当たりの換気回数)が各吸気口に分散された状態にあるので、集塵機は、清掃作業の際に局所的に発生した粉塵を効率よく捕集することができない。
【0007】
なお、粉塵の局所的な発生は、清掃作業の際に限られて生じるものではなく、例えば、エレベータシャフト内の物体表面(天井面、壁面、エレベータのドア部分表面など)に付着しているアスベスト(石綿)などの有害物に対して措置(例えば除去)を施す際などにも生じる。
【0008】
本発明の目的は、構造物が画成する長手空間内で付着物関連処理を行うための付着物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エレベータシャフト内のアスベストを除去するアスベスト除去方法であって、足場の下方に下方水平区画部材を設置し、前記足場の上方に上方水平区画部材を設置することにより、前記エレベータシャフト内の第1区画を作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、集塵機を稼働させることにより、前記作業場内の排気を行って、前記作業場の気圧を大気圧よりも低い負圧に設定する負圧設定工程と、送風装置が供給する空気の単位時間当たりの供給量が、前記集塵機が排気する空気の単位時間当たりの排気量よりも小さくなるよう制御しつつ、前記送風機により前記作業場に空気を供給する空気供給工程と、前記作業場内において前記エレベータシャフト内のアスベストを除去する除去工程と、前記足場を移動させる工程と、移動した前記足場の下方に前記下方水平区画部材を設置し、移動した前記足場の上方に前記上方水平区画部材を設置することにより、前記エレベータシャフト内の前記第1区画とは異なる第2区画を他の作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、前記他の作業場に対して、前記負圧設定工程、前記空気供給工程、前記除去工程を実行する工程と、を備えることを特徴とする。
前記下方水平区画部材、及び、前記上方水平区画部材は、建物の各階間の境界に設けられることとしてもよい。
前記除去工程において、アスベスト除去作業は、前記作業場の上部から下部の順で実施されることとしてもよい。
他の区画から隔離すべき区画が、前記エレベータシャフト内の最下部の区画である場合には、前記下方水平区画部材を設置しないこととしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の付着物処理方法によれば、構造物が画成する長手空間において効果的にアスベストを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る付着物処理装置としての清掃装置が設置された建物の概略的な構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すダクトの部分拡大側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る付着物処理装置としてのアスベスト除去装置を用いたアスベスト除去作業の工程を示すフローチャートである。
【図4】図3のステップS2において養生されたある作業場を例示する縦断面図である。
【図5】図3のステップS2において養生された別の作業場を例示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下に示す実施の形態(第1の実施の形態及び第2の実施の形態)では、エレベータシャフトが画成する長手空間において付着物関連処理(後述する清掃作業やアスベスト除去作業)が行われる。なお、エレベータシャフトは、鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物の一例である。
【0013】
図1は、第1の実施の形態に係る付着物処理装置としての清掃装置が設置された建物の概略的な構成を示す縦断面図である。
【0014】
図1に示す建物10は、1階部分〜5階部分を含む多層構造の建物であり、さらにエレベータ50が設置されている。建物10の各階は、エレベータホールとして機能する。なお、建物10の1階部分の床面は、地上面1と同じ高さにある。
【0015】
エレベータ50は、人や物を運搬するためのケージ51と、ケージ51が鉛直方向に昇降移動するためのガイドを行うエレベータシャフト52を備えている。ケージ51は、建物10の各階に停止可能である。エレベータシャフト52は、鉛直方向に立設された構造物であり、鉛直方向に長い長手空間を画成している。その長手空間の底部にはピット(pit)53が形成されている。ピット53は、ケージ51を地上面1よりも低い位置に収納するためのものである。
【0016】
また、建物10には、図1に示すように、中空部材であるダクト110と、排気機能及び集塵機能を有する集塵機120とが設置されている。ダクト110としては、例えば、フレキシブルダクト又はテレスコープ式ダクトを用いることができる。フレキシブルダクトは、可撓性及び気密性のある可撓性部材で囲んだ中空部材であり、可撓性があるので、例えば建物10内のコーナー部等に沿って任意に曲げることができ、また、伸縮可能でもある。テレスコープ式ダクトは、長さ方向に段階的に伸縮可能に形成されている。このようなフレキシブルダクトやテレスコープ式ダクトを用いることにより、ダクト110を任意の大きさ、任意の形状の室内空間20に設置することが容易となる。さらには、フレキシブルダクトやテレスコープ式ダクトを収縮状態にすることで、ダクト110の外形が占める体積が小さくなるため、持ち運びが容易となる。
【0017】
ダクト110は、複数の吸気口と、1つの排気口119とを有する。ダクト110の排気口119は、集塵機120に接続される。ダクト110が有する複数の吸気口は、エレベータシャフト52内においてエレベータシャフト52の長手方向の上下に並んでいる。また、ダクト110の外側側面には、ダクト110の各吸気口を遮蔽可能な吸気選択ユニット(図1に示す符号111〜116)が設けられている。なお、ダクト110において、吸気選択ユニットを設ける部分は、フレキシブルダクトやテレスコープ式ダクトとは別の部材で構成することが好ましく、その部材として剛性のある筐体を用いることで吸気選択ユニットを容易に設けることができる。また、吸気選択ユニットを設ける筐体の形状を矩形にすることで、吸気選択ユニットが例えばエレベータシャフト52の壁面52aに向かないように設置することが容易となる。
【0018】
ダクト110は、複数の吸気選択ユニットが図1に示すように鉛直方向の上下に並ぶように設置されている。隣り合う2つの吸気選択ユニット間の間隔は、例えば、建物10の各階の高さ方向の寸法に等しい。したがって、複数の吸気選択ユニットは、等間隔に並んでいる。このように間隔を設定することで、ダクト110をエレベータシャフト52内に設置する際の吸気選択ユニットの位置決めを容易に行うことができる。なお、吸気選択ユニットの構成については、図2を用いて後述する。
【0019】
集塵機120は、例えば、建物10の1階部分に設置されており、稼働されると、図1に示す矢印A方向に排気を行う(排気機能)。排気の際、集塵機120は、上記吸気選択ユニットが遮蔽していない吸気口を介して、エレベータシャフト52内の空気を取り込み(矢印B参照)、取り込んだ空気を排気口119に向かって移動させることになる。また、集塵機120は、通気可能な程度にメッシュの細かい薄膜フィルタ(図示せず)を備えている。集塵機120は、エレベータシャフト52内の空気吸い込む際、該空気に浮遊する埃などの粉塵も一緒に吸い込み、排気の際に、上記薄膜フィルタで粉塵を捕集する(集塵機能)。これにより、集塵機120の排気機能によって排気される空気は、除塵され、その結果、清浄化される。
【0020】
上述したように、エレベータシャフト52内には吸気口を有するダクト110が設置されているので、エレベータ50の通常運転時や後述する清掃作業時に、ダクト110に接続されている集塵機120を稼働することにより、エレベータシャフト52内の粉塵量を少なくすることができる。
【0021】
図2は、図1に示すダクト110の部分拡大側面図である。上述したように、ダクト110の側面には複数の吸気選択ユニットが設けられている。図2の部分拡大図には、2つの吸気選択ユニット114,115が示されている。
【0022】
図2において、吸気選択ユニット115は、ダクト110が有する複数の吸気口の1つである吸気口115aに対応する位置に設けられている。吸気選択ユニット115は、吸気口115aを遮蔽する遮蔽部材としての扉115bと、扉115bの開閉を制御するロック機構(図示せず)とを有する。他の吸気選択ユニットも、吸気選択ユニット115と同様に構成されており、例えば、吸気選択ユニット114は、対応する吸気口を遮蔽する遮蔽部材としての扉114bを有する。
【0023】
また、図2に示す例では、2つの吸気選択ユニット114,115のうち、吸気選択ユニット115は、扉115bのロックが解放された状態(扉オープン状態)にある。これにより、吸気口115aが開放され、ダクト110への空気の流入が許容される。したがって、吸気選択ユニットを扉オープン状態にすることで、対応する吸気口と排気口119とが連通し、これにより、ダクト110において、図1に示す矢印Bから矢印Aに至るまでの排気経路が確保される。一方、吸気選択ユニット114は、扉114bがロックされた状態(扉クローズ状態)にあり、これにより、対応する吸気口が遮蔽される。
【0024】
さらに、図2に示す例では、吸気口115aに対応する位置においてフィルタ115cがダクト110に設置されている。フィルタ115cは、集塵機120が備える薄膜フィルタよりもメッシュが粗いフィルタであり、薄膜フィルタの目詰まりを起こしにくくするプレフィルタとして機能する。これにより、集塵機120が備える薄膜フィルタの交換頻度を抑えることができる。なお、フィルタ115cのようなフィルタは、吸気口115a以外の吸気口の各々に対応する位置にも設置されている。
【0025】
図2を用いて説明したように、ダクト110には、吸気選択ユニット114,115が設けられているので、各吸気選択ユニットについて、扉オープン状態と扉クローズ状態の一方を選択することが可能であり、選択結果に応じて、対応する吸気口の遮蔽/開放が決まる。また、実際には、ダクト110に、複数(3つ以上)の吸気選択ユニットが設けられているので、遮蔽又は開口を選択可能な吸気口の数は2つに限られることはない。したがって、ダクト110は、吸気口の遮蔽又は開口を選択する際の自由度が高い。
【0026】
ここで、エレベータ50の通常運転時には、ダクト110が有する全ての吸気選択ユニットについて、扉オープン状態が選択される。このため、エレベータシャフト52が有する全ての吸気口は、開放状態にあり、集塵機120は、全ての吸気口を介して空気を取り込むこと(吸気)が可能である。この状態にあるとき、集塵機120の排気機能は、全ての吸気口に分散されていることになる。
【0027】
したがって、エレベータ50の通常運転時に、集塵機120は、エレベータシャフト52内のあらゆる箇所から、エレベータシャフト52内に浮遊する粉塵を捕集することができる。ここで、粉塵は、エレベータ50の通常運転時、ケージ51の昇降移動や人の乗り降りに伴って発生するので、粉塵の発生箇所は特定されるものではない。このため、上述したようにあらゆる箇所から粉塵を捕集することで、エレベータシャフト52内の粉塵量を効率的に少なくすることができる。
【0028】
しかしながら、エレベータシャフト52内の粉塵量が皆無になるわけではないので、発生した粉塵の一部は、エレベータシャフト52内にある物体の表面(ケージ51表面、天井面、壁面52a、エレベータ50のドア部分表面など)に付着する。そこで、エレベータシャフト52内を清掃する清掃作業を定期的に行う必要がある。清掃作業では、エレベータシャフト52内にある物体表面から、埃などの付着物を脱落させる作業が中心となる。したがって、清掃作業は、上記付着物関連処理の一例である。以下、清掃作業の手順などについて詳細に説明する。
【0029】
清掃作業を行うために、まず、建物10には、図1に示すように、清掃作業を行う際に用いる清掃装置100が設置される。清掃装置100は、垂直区画部材140と、空気を圧縮状態で噴射可能なエアブラストマシン150とを備えており、さらに、上記ダクト110と、上記集塵機120とを含んで構成されている。すなわち、本実施の形態では、清掃作業の際、既設のダクト及び集塵機を利用する。さらに言い換えると、既設のダクト及び集塵機は、清掃装置100の一部をなすと云える。
【0030】
具体的には、エアブラストマシン150をケージ51の筐体上に載置し、垂直区画部材140を、建物10の各階のエレベータホールにおいて垂直となるように設置する。ここで、垂直区画部材140は、気密性の高いシート状部材で構成されており、例えば、PET(polyethylene terephthalate)製のシートである。垂直区画部材140を設置することにより、エレベータホールが区切られる。これにより、建物10内の空間から、エレベータシャフト52側の空間が清掃作業場として隔離される。なお、各垂直区画部材140には、作業員が清掃作業場内に直接入ることができるように、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。
【0031】
続いて、作業員は、1階のエレベータホールからケージ51の筐体上に乗り込む。すなわち、ケージ51の筐体を清掃作業用の足場とする。したがって、ケージ51は、清掃装置100の一部をなすと云える。そして、作業員は、ケージ51を用いてエレベータシャフト52内の最上部(高所)に移動する。この移動の際、作業員は、低所にある吸気選択ユニット(図1に示す例では、吸気選択ユニット111,112,113,…)を扉クローズ状態にし、高所(ケージ51近傍)にある吸気選択ユニットは、扉オープン状態を維持する。なお、吸気選択ユニットの扉オープン状態又は扉クローズ状態の選択を遠隔操作によって行ってもよい。
【0032】
続いて、作業員は、集塵機120の稼働中に、エアブラストマシン150を用いて清掃作業を開始する。具体的には、作業員は、エアブラストマシン150が噴射した圧縮状態の空気をエレベータシャフト52にある物体に吹き付ける。この吹き付け時に生じた衝突エネルギーにより、エレベータシャフト52内の物体に付着している埃などの付着物が物体表面から脱落する。
【0033】
このように、エアブラストマシン150を用いると、エレベータシャフト52側の空間内には、大量の埃などの粉塵が清掃作業を行っている場所を中心にして局所的に発生する。しかし、発生した粉塵は、吸気選択ユニットにより遮蔽されていない吸気口に設けられているフィルタや、集塵機120の薄膜フィルタによって捕集される。こうして、エレベータシャフト52の最上部における清掃作業が完了する。なお、垂直区画部材140が設置されているので、粉塵がエレベータホールにまで飛散することはない。
【0034】
エレベータシャフト52の最上部での清掃作業が完了したら、最上部よりも下方に移動して、移動した位置、例えば、図1に示すケージ51の位置で同様の清掃作業を行う。図1に示す例では、移動の際、作業員は、ケージ51近傍の吸気選択ユニット116,115を扉オープン状態にすると共に、最上部での清掃作業時に扉オープン状態を維持した吸気選択ユニット(吸気選択ユニット116よりも上方の吸気選択ユニット)を扉クローズ状態にする。
【0035】
そして、上述したような作業を繰り返し、最終的に、エレベータシャフト52の最下部(ピット53)での清掃作業を行う。なお、ピット53での清掃作業はケージ51を足場にすることはなく、ピット53の底面53a上で作業員が清掃作業を行う。このようにして、エレベータシャフト52内での清掃作業を完了する。
【0036】
上述したような清掃作業によれば、ケージ51の位置(清掃位置)が変わっても、ケージ51近傍にある吸気選択ユニットが扉オープン状態(吸気口開放状態)にあり、ケージ51の近傍にない吸気選択ユニットが扉クローズ状態(吸気口遮蔽状態)になっている。このとき、集塵機120の排気機能は、開放状態にある吸気口にのみ集約されるので、集塵機120では、全ての吸気口が開放状態にある場合よりも、各吸気口を介した排気の排気効率が高まることになる。つまり、本実施の形態では、粉塵が発生しやすい清掃位置近傍の吸気口を介した排気の排気効率を高めることで、局所的に発生する粉塵を速やかに且つ効率的に捕集している。このため、粉塵が長時間に亘ってエレベータシャフト52内に浮遊した状態で滞留することがなく、集塵機120による集塵効率が非常に高い。これにより、粉塵が、捕集されなかった結果エレベータシャフト52内の物体に再付着することが抑制される。
【0037】
なお、清掃作業が完了した後は、全ての吸気選択ユニットを扉オープン状態にすると共に、垂直区画部材140やエアブラストマシン150を撤去する。このようにすることで、エレベータ50の通常運転時における粉塵の捕集を再開することが可能となる。
【0038】
なお、上述した第1の実施の形態において、清掃作業の際に、ケージ51を足場とするとしたが、ケージ51に代わるゴンドラ(wall maintenance lift)を設置してそれを足場としてもよいし、ゴンドラを設置せずに、各階のエレベータホールから足場を組んでもよい。
【0039】
また、上述した実施の形態では、清掃作業の際に、エアブラストマシン150を用いたが、エアブラストマシン150に代えて、粒状のドライアイスを噴射可能なドライアイスブラストマシンを用いてもよい。なお、ドライアイスブラストマシンを用いた場合、ドライアイス(固体)が昇華(気化)した結果二酸化炭素ガスが発生するので、清掃作業中は、ピット53にある吸気選択ユニット111を常時扉オープン状態とすることが好ましい。二酸化炭素ガスは空気よりも比重が大きいために、エレベータシャフト52の底部にあるピット53に滞留しやすいからである。これにより、二酸化炭素ガスを速やかに且つ効率的に排気することができ、作業員の安全を確実に確保することができる。
【0040】
さらに、上述した実施の形態では、清掃作業の際、既設のダクトを利用するとしたが、例えば、既設のダクトに吸気選択ユニットが設けられていない場合には、吸気選択ユニットが設けられる。また、清掃作業の際、既設のダクト及び集塵機を利用することに代えて、清掃作業専用のダクト及び集塵機を用意してもよい。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。上述した第1の実施の形態では、エレベータシャフト52内において清掃作業を行ったが、本実施の形態では、エレベータシャフト52内においてアスベスト除去作業を行う。そのため、本実施の形態において建物や装置の構成及び構成要素が上述した第1の実施の形態のものと同一又は類似のものには同じ符号又は同様の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0042】
アスベスト除去作業では、エレベータシャフト52内にある物体表面(天井面、壁面52a、エレベータ50のドア部分表面など)から、それらの物体に付着している有害物であるアスベストを剥離・脱落させる作業が中心となる。したがって、アスベスト除去作業は、上記付着物関連処理の一例である。アスベスト除去作業は、エレベータ50が老朽化した結果、更新(replacement)を行う際に行われることが好ましい。更新の際、既設のケージ51がエレベータシャフト52内から撤去されるため、エレベータシャフト52の壁面52aの全面が露出するからである。
【0043】
図3は、第2の実施の形態に係る付着物処理装置としてのアスベスト除去装置を用いたアスベスト除去作業の工程を示すフローチャートである。
【0044】
図3において、まず、第1工程(ステップS1:アスベスト除去装置設置工程)では、アスベスト除去作業を行う際に用いられるアスベスト除去装置100’を建物10においてエレベータシャフト52内及びその近傍に設置する(図4参照)。
【0045】
アスベスト除去装置100’は、図4に示すように、アスベスト除去作業専用に用意されたダクト110’及び集塵機120’と、後述するドライアイスブラストマシン160とを備える。なお、ダクト110’の構成は、上述したダクト110と同様である。ただし、ダクト110’の鉛直方向に配置される部分の長さは、アスベスト除去作業の作業場の広さに応じて適宜選択することが可能であり、図4に示す例では、建物10の4階分の高さ相当の長さである。集塵機120’は、上述した集塵機120と同様に構成されているが、集塵効率の高いHEPAフィルタ(high efficiency particle air filter)を備えている。また、集塵機120’は、作業場の換気を実現するために、作業場を負圧に設定できる程度の高さに排気能力が設定されている。
【0046】
また、アスベスト除去装置100’は、垂直区画部材140と、上方水平区画部材141と、下方水平区画部材142とを備える。さらに、アスベスト除去装置100’は、送風装置130を備える。ここで、第1工程では、アスベスト除去装置100’の構成要素のうち、水平区画部材141,142及び送風装置130以外の構成要素が設置される。
【0047】
また、第1工程では、アスベスト除去装置100’の付帯設備として、ゴンドラ210と、セキュリティゾーン220とが設置される。ゴンドラ210は、撤去されたケージ51の代わりに設置される。ゴンドラ210は、アスベスト除去作業用の足場211と、足場211を上方から吊持するためのワイヤ212と、ワイヤ212を巻き取る巻き取り装置(図示せず)とで構成されている。足場211は、ケージ51と同様に、エレベータシャフト52内を昇降移動することが可能である。したがって、ゴンドラ210は、アスベスト除去装置100’の使用を容易にするために設置されたものである。セキュリティゾーン220は、建物10の1階部分に設置され、前室やエアシャワー室を含む。セキュリティゾーン220の前室は、作業員が作業場内へ入ったり作業場内から出たりするための出入口となる。したがって、セキュリティゾーン220は、アスベストを扱う作業員が作業場の外に出ることによるアスベストの外部への漏出を防止するために設置されたものである。
【0048】
続いて、第2工程(ステップS2:作業場養生工程)では、アスベスト除去作業を行う作業場の養生(covering)を行う。ここで、養生とは、隔離密閉養生とも称され、作業場の周囲を、気密性の高いシート(例えば、PET製のシート)等で囲み覆うことで、作業場内部の空間を密封空間にして他の空間(作業場外部)から隔離することをいう。作業場を養生させることにより、作業場内のアスベストが外部へ漏出することが防止される。図4に示す例では、ゴンドラ210の足場211に乗り込んだ作業員が、足場211の下方に下方水平区画部材142を設置し、足場211の上方に上方水平区画部材141を設置することで、作業場の養生が完了する。図4に示すように、水平区画部材141,142の設置場所は、エレベータ50のドア部分の開口を除く部分、つまり建物10の各階間の境界である。
【0049】
また、このとき、別の作業員は、送風装置130を設置する。送風装置130は、送風機131と、それに接続された配管132とから構成されており、送風機131は、上方水平区画部材141の上方、図4に示す例では建物10の5階部分に設置され、配管132は、上方水平区画部材141を貫通するように設置される。
【0050】
その後、第3工程(ステップS3:負圧設定工程)では、集塵機120’を稼働させることにより、作業場内の排気を行って、作業場の気圧を大気圧よりも低い負圧に設定する。また、送風装置130を稼働させることにより、図4に示す矢印C方向に空気が移動する。これにより、作業場内に新鮮な空気(酸素を含む気体)が供給される。これらにより、作業場の空気の入れ替え(換気)が達成されるので、作業員は容易に酸素を確保することができる。なお、送風装置130が供給する空気の単位時間当たりの供給量(供給体積)は、集塵機120’が排気する空気の単位時間当たりの排気量(供給体積)よりも小さくなるように制御される。これにより、作業場の内圧が低くなり過ぎない状態が維持され、且つ作業場に設定した負圧が維持される。このようにして、作業場の負圧を維持することで、アスベストを含む粉塵が排気経路以外に移動すること、つまり作業場外部へのアスベストの曝露を防止することができる。
【0051】
そして、第4工程(ステップS4:アスベスト除去工程)では、アスベスト除去作業を行う。アスベスト除去作業は、養生された作業場の上部(高所)から下部(低所)の順で実施される。そこで、ゴンドラ210の足場211を高所に移動させて、足場211の近傍にある吸気選択ユニット(図4に示す例では、吸気選択ユニット115)を扉オープン状態にする。一方、他の吸気選択ユニットは扉クローズ状態にされる。なお、吸気選択ユニットの扉オープン状態又は扉クローズ状態の選択を遠隔操作によって行ってもよい。
【0052】
続いて、作業員は、建物10からアスベストを除去するために、エレベータシャフト52内の物体(壁面52aなど)に付着しているアスベストに対して外力を作用させる。これにより、アスベストは物体表面などから剥離し脱落する。本実施の形態では、アスベストを脱落させるために、まず、へら・皮スキ・ブラシなどを用いて手作業を行う。続いて、作業員は、ドライアイスブラストマシン160を用いたドライアイスブラスト法を実施する。ドライアイスブラスト法とは、ドライアイスブラストマシン160が噴射した粒状のドライアイスを物体に吹き付け、この吹き付け時に生じた衝突エネルギーにより、物体に付着しているアスベストを物体表面から脱落させるものである。これらの作業によってもアスベストが脱落せずに残存する可能性がある場合には、さらに、アスベストに対して薬液を作用させて無害化させる作業なども行う。
【0053】
ここで、エレベータシャフト52内の物体から脱落したアスベストを含む粉塵は、作業場内に飛散するが、集塵機120’の集塵機能によって、捕集(回収)される。このとき、ゴンドラ210の足場211の近傍にある吸気口は吸気選択ユニットにより開放された状態にあるので、第1の実施の形態と同様に、集塵機120’の排気能力は開放された状態にある吸気口に集約されており、これにより、排気効率が高まるので、足場211近傍における集塵効率を向上させることができる。
【0054】
アスベスト除去作業が進行し、作業場の下部におけるアスベスト除去作業が完了したら、下方水平区画部材142上に堆積しているアスベストなどを手作業等で回収し、一時保管する。
【0055】
次に、アスベスト除去作業を行うべき別の区画があるか否かを判断する(ステップS5)。図4に示す例では、エレベータシャフト52内において作業場(下方水平区画部材142)よりも下方に空間があるので、別の区画があると判断される。そして、別の区画がある場合には(ステップS5でYES)、その区画において上述した第2工程〜第4工程を実施することで、アスベスト除去作業を行う。次の区画の養生は、図4に示す例の場合、まず、水平区画部材141,142を撤去し、続いて、図5に示すように、ゴンドラ210の足場211を下方に移動させて、新たに上方水平区画部材141’を設置することで、完了する。なお、図5に示す例では、エレベータシャフト52の最下部の区画となるので、下方水平区画部材は不要である。
【0056】
一方、別の区画がない場合、つまり、図5に示すようにエレベータシャフト52のピット53を含む作業場でのアスベスト除去作業が完了したときには(ステップS5でNO)、アスベスト除去作業を完了する。なお、複数の区画(作業場)において回収され一時保管されていたアスベストは、最終処分場へ運搬される。また、アスベスト除去作業実施のために設置されたアスベスト除去装置100’やその付帯設備は撤去される。
【0057】
図3の処理によれば、作業場の養生を水平区画部材141,142などで行うので、鉛直方向に長い長手空間を分割することができる。これにより、集塵機120’の排気能力(単位時間当たりの換気回数)を高めることができ、さらに集塵機120’による粉塵の集塵効率が高まる。
【0058】
また、養生された作業場内の空間内においてアスベスト除去作業が行われる際には、作業場内の足場211近傍の吸気口が開放状態にあり、且つ足場211の近傍にない吸気口(作業場外の吸気口を含む)は遮蔽状態にあるので、開放状態にある吸気口を介した排気の排気効率が高い。これにより、局所的に発生するアスベストを含む粉塵の集塵効率を向上させることができる。このことは、次の作業場内の空間内においてアスベスト除去作業が行われる際も同様に適用される。
【0059】
また、集塵機120’は、作業場を負圧に設定できる程度に排気能力が高いので、アスベストを含む粉塵の捕集と共に、ドライアイスブラスト法の実施により発生した二酸化炭素ガスの排気を行うことが可能となる。
【0060】
ところで、上記説明では、第4工程実施の際、足場211の近傍にある吸気選択ユニットを扉オープン状態にし、他の吸気選択ユニットを扉クローズ状態にするとしたが、アスベスト除去作業の際に上述したようにドライアイスを使用する場合には、さらに、作業場の下部にある吸気選択ユニットも扉オープン状態にすることが好ましい。これは、ドライアイスブラスト法の実施により発生した二酸化炭素ガスを効率的に排除するためである。このことについて、以下、詳細に説明する。
【0061】
まず、第1工程においてダクト110’を設置する際、水平区画部材141,142などによる区画によってできた空間の下部になり得る位置に、吸気口及び対応する吸気選択ユニットを配置する。ここで、水平区画部材141,142などが設置される場所は、建物10の各階間の境界であるから、吸気選択ユニットの位置は、水平区画部材の設置場所の上方側でその近傍、又はピット53の底面53a近傍となる。
【0062】
そして、第2工程実施の際に、水平区画部材141,142を配置すると、下方水平区画部材142の上方の空間であって上方水平区画部材141の下方の空間(上方空間)の下部に、1つの吸気口及びそれに対応する吸気選択ユニット113が配置されることになる。また、下方水平区画部材142の下方の空間(下方空間)の下部(ピット53の底面53a近傍)にも1つの吸気口及びそれに対応する吸気選択ユニット111が配置されることになる。
【0063】
その後、アスベスト除去作業としてドライアイスブラスト法を実施する前に、作業場下部に設置されている吸気選択ユニットを扉オープン状態にする。そして、アスベスト除去作業中(ドライアイス使用中)は、作業場下部の吸気口の開放状態を維持する。ここで、扉オープン状態にされる吸気選択ユニットは、図4に示す例では吸気選択ユニット113に該当し、図5に示す例では吸気選択ユニット111に該当する。なお、上述したように、アスベスト除去作業中では、足場211近傍の吸気選択ユニット(図4では吸気選択ユニット115,図5では吸気選択ユニット112)も扉オープン状態にされる。このため、作業場下部においてアスベスト除去作業を行う場合には、作業場下部の吸気選択ユニットと、足場211近傍の吸気選択ユニットとが一致する場合がある。
【0064】
そして、ドライアイスブラスト法を実施すると、使用したドライアイス(固体)が昇華(気化)した結果、作業場内に大量の二酸化炭素ガスが発生する。発生した二酸化炭素ガスの一部は、足場211近傍の吸気口から排気される。しかし、二酸化炭素ガスは空気よりも比重が大きいため、二酸化炭素ガスは、作業場の下部に充満しようとする性質がある。したがって、足場211近傍の吸気口から排気されなかった残りの二酸化炭素ガスは、足場211近傍の吸気口よりも下方に移動する。ここで、上述したように、予め、作業場下部の吸気口を開放状態に維持することで、作業場の下部に充満しようとする二酸化炭素ガスを、その吸気口を介して排気することができる(図4,図5に示す矢印B’参照)。
【0065】
このように、作業場内において、足場211近傍の吸気口を開放するだけでなく、作業場下部の吸気口も開放しておくことで、ドライアイス使用に際して発生した二酸化炭素ガスが作業場の下部に充満する前にそれを速やかに排気することができる。つまり、二酸化炭素ガスを効率的に排除することができる。
【0066】
なお、アスベスト除去作業の際には、作業場の換気(作業場全体の空気の入れ替え)が1時間に4回以上行われることが法令等により義務付けられている。この換気により、二酸化炭素ガスの排気が十分に行われるようであれば、作業場下部の吸気選択ユニットを扉オープン状態にしなくてもよい。しかし、エレベータシャフト52内でアスベスト除去作業を行う場合、特に水平区画部材を設置する場合、作業場が狭くなりがちであり、また、ピット53では、二酸化炭素ガスを含む空気の滞留が生じやすい(気流が生じにくい)。このため、大量の二酸化炭素ガスが発生する場合には、作業員は、酸素欠乏という危険に曝されることになる。そこで、作業員の安全を確実に確保するためにも、上述したように、作業場下部の吸気選択ユニットを扉オープン状態にして、二酸化炭素ガスを速やかに且つ効率的に排気しておくことが好ましい。つまり、ドライアイス使用の際に作業場下部の吸気選択ユニットを扉オープン状態にして、二酸化炭素ガスを確実に排気することは、作業場が狭い場合や作業場下部において空気の滞留が生じやすい場合に有効であると云える。
【0067】
なお、上述した第2の実施の形態において、アスベスト除去作業専用のダクト110’を用意したが、これに代えて、既存のダクトを用いてもよい。ただし、アスベストは有害であるため、アスベスト除去作業専用のダクト110’を用意することが好ましい。
【0068】
また、上述した第2の実施の形態では、アスベスト除去作業として、手作業及びドライアイスブラスト法の実施によってアスベストを積極的に剥離・脱落させる例を説明した。このように、アスベストのような有害物を建物10から積極的に除去することは、有害物に対する措置(付着物関連処理)としては、非常に効果がある。しかしながら、有害物を建物10から積極的に除去することができないような状況においては、有害物に対する措置として、封じ込めや囲い込みを行ってもよい。封じ込めとは、薬液を壁面52aなどに向かって散布することにより、有害物の表面を薬液で被覆して有害物の脱落(飛散)を防止するための措置である。囲い込みとは、有害物が付着した壁面52aなどの全体、つまり有害物の周囲を別の部材で囲むことで、有害物が脱落したとしても飛散しないようにするための措置である。また、上記封じ込めや上記囲い込みは、有害物を積極的に除去した後に、残存の可能性がある有害物に対する措置として副次的に行ってもよい。なお、封じ込めや囲い込みの場合には、ドライアイスを使用しないので、作業場下部の吸気口を開放する必要はない。
【0069】
第2の実施の形態において、主な除去対象は、アスベストであったが、アスベスト以外の有害物(例えば、ダイオキシン類や、放射性物質)であってもよい。また、除去対象は、有害物に限られることはなく、第1の実施の形態において説明したように、埃などであってもよい。
【0070】
また、第2の実施の形態において、水平区画部材141,141’,142は、水平に設置されたが、完全に水平でなくてもよい。つまり、水平区画部材は、エレベータシャフト52が画成する長手空間をその長手方向と交差する方向に仕切るものであればよい。これにより、作業空間を狭くして、集塵機120’の排気能力を高めることができる。
【0071】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、集塵機120,120’は、排気機能と集塵機能の双方を有するとしたが、排気機能だけを有する送風機(排気装置)であってもよい。この場合、ダクト110,110’などに集塵機能を実現するフィルタが設置される。
【0072】
また、上述した第1及び第2の実施の形態では、鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物として、エレベータシャフト52を例示したが、これに限られることはない。このような構造物としては、ゴミ焼却施設の焼却炉、タワー式の立体駐車場なども例示される。このような構造物であれば、清掃作業や有害物除去作業などの処理を行う際に、高所から低所へと順次行われるのが一般的であるからである。
【0073】
なお、本明細書及び添付図面には、次の事項も開示されている。
鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物に設置される付着物処理装置であって、
第1吸気口及び第2吸気口並びに排気口を有するダクトと、
前記第1吸気口を遮蔽可能な第1遮蔽部材と、
前記第2吸気口を遮蔽可能な第2遮蔽部材と、
前記第1遮蔽部材又は前記第2遮蔽部材が開放している吸気口を介して空気を取り込み、取り込んだ前記空気を前記排気口に向かって移動させることで排気を行う排気装置と、
を備え、
前記ダクトは、前記第1吸気口及び第2吸気口が、前記構造物が画成する長手空間内において前記長手方向の上下に並ぶように、前記構造物に設置され、
前記付着物処理装置は、前記長手空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる処理を行う際に用いられる
ことを特徴とする付着物処理装置。
【0074】
前記処理が行われる際に、前記第1吸気口は前記第1遮蔽部材により開放され、且つ前記第2吸気口は前記第2遮蔽部材により遮蔽されることとしてもよい。
【0075】
前記長手空間を前記長手方向と交差する方向に仕切ることにより、前記第1遮蔽部材及び前記第1吸気口を含む上方空間と、前記上方空間よりも下方の下方空間であって前記第2遮蔽部材及び前記第2吸気口を含む下方空間とを区画する区画部材を備え、
前記上方空間内において前記処理が行われる際には、
前記第1吸気口は前記第1遮蔽部材により開放され、且つ前記第2吸気口は前記第2遮蔽部材により遮蔽され、
前記下方空間内において前記処理が行われる際には、
前記第2吸気口は前記第2遮蔽部材により開放され、且つ前記第1吸気口は前記第1遮蔽部材により遮蔽される
こととしてもよい。
【0076】
前記第1吸気口は前記上方空間の下部にあり、
前記第2吸気口は前記下方空間の下部にあり、
前記付着物を前記物体の表面から脱落させるために、当該物体に粒状のドライアイスを吹き付け可能な吹き付け装置を備える、
こととしてもよい。
【0077】
前記上方空間及び前記下方空間のうち、前記吹き付け装置が用いられる空間の上部から酸素を含む気体を供給する気体供給装置を備えることとしてもよい。
【0078】
前記排気装置により排出される前記空気の除塵を行うフィルタを備えることとしてもよい。
【0079】
前記ダクトは、前記第1吸気口及び前記第2吸気口とは別の第3吸気口を有し、
前記第3吸気口を遮蔽可能な第3遮蔽部材を備え、
前記排気装置は、前記第1遮蔽部材乃至前記第3遮蔽部材の少なくとも1つが開放している吸気口を介して空気を取り込む
こととしてもよい。
【0080】
第1吸気口及び第2吸気口並びに排気口と、前記第1吸気口を遮蔽可能な第1遮蔽部材と、前記第2吸気口を遮蔽可能な第2遮蔽部材とを有するダクトを、
鉛直方向に沿う長手方向を有する構造物が画成する長手空間において、前記第1吸気口及び前記第2吸気口が前記長手方向の上下に並ぶように、設置する設置ステップと、
前記第1遮蔽部材又は前記第2遮蔽部材が開放している吸気口を介して空気を取り込み、取り込んだ前記空気を前記排気口に向かって移動させることで排気を行う排気ステップと、
前記排気ステップの実行中に、前記長手空間内にある物体の表面に付着している付着物に関わる付着物関連処理を前記長手空間内において行う処理ステップと、
を有することを特徴とする付着物処理方法。
【0081】
前記付着物関連処理は、
前記付着物に外力を作用させることで当該付着物を前記物体の表面から脱落させて除去する除去処理と、
薬液を用いて前記付着物の封じ込めを行う封じ込め処理と、
前記付着物の周囲を囲む囲い込み処理と、
から成る処理群から選択された、少なくとも1つの処理であることとしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 地上面
10 建物
51 ケージ(乗りかご)
52 エレベータシャフト
52a 壁面
100 清掃装置
100’ アスベスト除去装置
110,110’ ダクト
111〜116 吸気選択ユニット
115a 吸気口
114b,115b 扉
119 排気口
120,120’ 集塵機
130 送風装置
140 垂直区画部材
141,141’ 上方水平区画部材
142 下方水平区画部材
150 エアブラストマシン
160 ドライアイスブラストマシン
210 ゴンドラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシャフト内のアスベストを除去するアスベスト除去方法であって、
足場の下方に下方水平区画部材を設置し、前記足場の上方に上方水平区画部材を設置することにより、前記エレベータシャフト内の第1区画を作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、
集塵機を稼働させることにより、前記作業場内の排気を行って、前記作業場の気圧を大気圧よりも低い負圧に設定する負圧設定工程と、
送風装置が供給する空気の単位時間当たりの供給量が、前記集塵機が排気する空気の単位時間当たりの排気量よりも小さくなるよう制御しつつ、前記送風機により前記作業場に空気を供給する空気供給工程と、
前記作業場内において前記エレベータシャフト内のアスベストを除去する除去工程と、
前記足場を移動させる工程と、
移動した前記足場の下方に前記下方水平区画部材を設置し、移動した前記足場の上方に前記上方水平区画部材を設置することにより、前記エレベータシャフト内の前記第1区画とは異なる第2区画を他の作業場として他の区画から隔離する隔離工程と、
前記他の作業場に対して、前記負圧設定工程、前記空気供給工程、前記除去工程を実行する工程と、
を備えることを特徴とするアスベスト除去方法。
【請求項2】
前記下方水平区画部材、及び、前記上方水平区画部材は、建物の各階間の境界に設けられることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト除去方法。
【請求項3】
前記除去工程において、アスベスト除去作業は、前記作業場の上部から下部の順で実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載のアスベスト除去方法。
【請求項4】
他の区画から隔離すべき区画が、前記エレベータシャフト内の最下部の区画である場合には、前記下方水平区画部材を設置しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアスベスト除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53515(P2013−53515A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227203(P2012−227203)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2007−261969(P2007−261969)の分割
【原出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】