説明

アセン系化合物を利用した有機薄膜太陽電池

【課題】バルクへテロ構造を有する高効率な有機薄膜太陽電池を提供する。
【解決手段】一対の電極と、該一対の電極の間に配置されている、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層と、を有する有機薄膜太陽電池であって、該p型半導体が下記一般式(1):


{式中、nは2又は3の整数であり、そして、官能基R1〜R10の全てが水素であるか、又は官能基R1〜R10のうちR2、R3、R7及びR8の少なくとも1つがアルキル基で残りが水素である}で表されるアセン系化合物であり、該n型半導体がアルキル基を有する有機半導体である、有機薄膜太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、Tangによって報告されて以来(非特許文献1)、低コスト化の期待のため、活発に研究開発が行なわれている。しかし、変換効率及び信頼性ともに低く、実用レベルまでは到達していない。
【0003】
近年、p型有機半導体とn型有機半導体とが混合された形になっているバルクへテロ構造が盛んに研究され、本構造により変換効率が上がっている。低分子系有機物を用いる場合は、主に共蒸着によって、バルクへテロ構造が作製できる。例えば、非特許文献2に記載されているように亜鉛フタロシアニン及びC60フラーレンによって3.6%の変換効率を達成している。
【0004】
また、アセン系化合物は移動度が高く、トランジスタ用途として幅広く研究されているが、有機薄膜太陽電池としても移動度が高いことは重要であるため、特許文献1に記載されているように有機薄膜太陽電池への研究も検討されている。
【0005】
さらに、ペンタセンのようなアセン系化合物を、性能向上を目的としてバルクへテロ接合に適用することが検討されている。しかし、ペンタセンの結晶性の良さに起因する共蒸着膜の凝集が生じるため、性能向上が達成できていない。そのため、超格子構造といった新たな試みがなされている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2005/119794号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C.W.Tang,Appl.Phys.Lett.,48,p.183(1986)
【非特許文献2】T.Tajima,S.Toyoshima,K.Hara,K.Saito,and K.Yase,Jpn.J.Appl.Phys.,45,L217(2006)
【非特許文献3】「有機薄膜太陽電池の高効率化と耐久性向上」、サイエンス&テクノロジー発行、2009年、第121頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記の超格子構造を用いる方法は、nmオーダーの膜厚でp型材料とn型材料を交互に積層するため、nmオーダーの膜厚制御が難しく、かつ作製プロセスが煩雑であるため、量産化に課題がある。上記のように、有機薄膜太陽電池においてバルクへテロ構造を形成するための材料として従来提案されるアセン系化合物は、十分良好な性能を与えるものではない。本発明は、バルクへテロ構造を有する有機薄膜太陽電池において良好な性能を与えるアセン系化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記のような問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
【0010】
[1] 一対の電極と、該一対の電極の間に配置されている、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層と、を有する有機薄膜太陽電池であって、
該p型半導体が下記一般式(1):
【化1】

{式中、nは2又は3の整数であり、そして、官能基R1〜R10の全てが水素であるか、又は官能基R1〜R10のうちR2、R3、R7及びR8の少なくとも1つがアルキル基で残りが水素である}で表されるアセン系化合物であり、
該n型半導体がアルキル基を有する有機半導体である、有機薄膜太陽電池。
[2] 該n型半導体が下記一般式(2):
【化2】

{式中、Xは、C1〜C12のアルキル基である}で表されるペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体である、上記[1]に記載の有機薄膜太陽電池。
[3] 該活性層と該一対の電極の少なくとも一方との間にバッファ層が配置されている、上記[1]又は[2]に記載の有機薄膜太陽電池。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかに記載の有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
一対の電極の一方の上に、直接又はバッファ層を介して、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層を形成し、次いで該活性層上に直接又はバッファ層を介して一対の電極の他方を形成することによって、該活性層が一対の電極の間に配置されている素子を形成する工程と、
該素子を50℃より高く150℃以下の温度で熱処理する工程と
を含む、有機薄膜太陽電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、p型半導体とn型半導体とからなる混合層において、該p型半導体として特定構造のアセン系化合物を用い、かつn型半導体としてアルキル基を有する有機半導体を用いることにより、発電効率の高い有機薄膜太陽電池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の有機薄膜太陽電池の構成の一例を示す構造図である。
【図2】開放電圧、短絡電流及び発電効率の測定結果を示す図である。
【図3】開放電圧、短絡電流及び発電効率の測定結果を示す図である。
【図4】開放電圧、短絡電流及び発電効率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<有機薄膜太陽電池>
本発明の一態様は、一対の電極と、該一対の電極の間に配置されている、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層と、を有する有機薄膜太陽電池であって、該p型半導体が下記一般式(1):
【0014】
【化3】

【0015】
{式中、nは2又は3の整数であり、そして、官能基R1〜R10の全てが水素であるか、又は官能基R1〜R10のうちR2、R3、R7及びR8の少なくとも1つがアルキル基で残りが水素である}で表されるアセン系化合物であり、該n型半導体がアルキル基を有する有機半導体である、有機薄膜太陽電池を提供する。本発明における活性層は、特定構造のアセン化合物であるp型半導体と、アルキル基を有する有機半導体であるn型半導体とからなる混合層である。このような混合層は、アルキル基の効果により、p型とn型との接触界面が多くなり、良好な電荷発生が得られるため、例えば超格子構造の形成を必要とすることなく、変換効率の高い有機薄膜太陽電池を与えることができる。本明細書において、混合層とは、いわゆるバルクへテロ構造を有する層を意味する。
【0016】
[活性層]
(p型半導体)
p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層に含まれるp型半導体としての上記のアセン系化合物は、上記一般式(1)で表される。一般式(1)中、官能基R1〜R10は、全て水素であるか、又は、官能基R1〜R10のうち、R2、R3、R7及びR8から選ばれる少なくとも1つがアルキル基で、官能基R1〜R10の残りが水素である。一般式(1)で表されるアセン化合物は、アルキル基を有することが好ましい。この場合、p型半導体と、アルキル基を有する有機半導体であるn型半導体とが有するアルキル基がスタックすることによって、両半導体が高秩序に並んだ3次元構造を形成し、電荷の分離及び輸送性能が良好になり、結果として、良好な発電効率が得られるという利点が得られる。このような3次元構造は、特に、形成後の混合層をさらに熱処理して混合層の結晶化を促進することで良好に形成される。中でも、官能基R1〜R10の好ましい態様の例は、R2とR3との両方又は一方がアルキル基であり、R1〜R10の残りが水素である化合物である。
【0017】
一般式(1)中のnは、安定性が高く、高い移動度を得るという観点から、2又は3の整数である。
【0018】
上記のアルキル基の例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,n−ブチル基,t−ブチル基,n−ヘキシル基,トリフルオロメチル基,ベンジル基等が挙げられる。中でも、高い移動度と混合層の構造制御との観点から、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ヘキシル基が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表されるアセン化合物として、より具体的には、ペンタセン、テトラセン、2−ヘキシルペンタセン、2−ヘキシルテトラセン、2,3−ジメチルペンタセン、2,3−ジメチルテトラセン、2,3−ジプロピルペンタセン、及び2,3−ジプロピルテトラセンが特に好ましい。これらのアセン化合物を用いる場合、変換効率が特に高い有機薄膜太陽電池を作製することができる。
【0020】
(n型半導体)
n型半導体は、アルキル基を有する有機半導体である。ここで、有機半導体とは、半導体であって炭素原子を含有する化合物と定義する。アルキル基としては、C1〜C10のアルキル基等が好ましく例示される。より具体的なn型半導体の例としては、フラーレン系化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体等が挙げられる。
【0021】
n型半導体としては、高い移動度と混合層の構造制御との観点から、下記一般式(2):
【0022】
【化4】

【0023】
{式中、Xは、C1〜C12のアルキル基である}で表される、アルキル置換されたペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体が好ましい。上記一般式(2)中、Xは、混合層の良好な構造制御の観点と高い移動度の発現の観点とからC1〜C12のアルキル基である。Xとしては、上記観点から、C511及びC817がより好ましい。
【0024】
(混合層の作製)
p型半導体とn型半導体とからなる混合層を作製する方法としては、p型半導体及びn型半導体を同時に蒸着する共蒸着法、p型半導体及びn型半導体を溶媒中で混合して得た塗布液を基材に塗工する塗工法、等が挙げられる。p型半導体とn型半導体とからなる混合層における各半導体の割合は、p型半導体とn型半導体との界面の面積を増やすことによって、電荷の発生の増大及び均一な膜質の混合層の形成を可能にするという観点から、混合層中のp型半導体の割合は体積で15%以上85%以下であることが好ましく、30%以上70%以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明においては、前述したように、p型半導体及びn型半導体の両者にアルキル基が導入されていることが好ましい。この場合、作製後の混合層をさらに熱処理することが好ましい。熱処理温度は50℃より高く150℃以下であることが好ましく、また熱処理時間は5分間〜60分間であることが好ましい。熱処理によって、混合層の結晶化が進み、最適な構造を形成できる。
【0026】
[有機薄膜太陽電池の構成]
図1は、本発明の有機薄膜太陽電池の構成の一例を示す図である。図1に示す構成においては、基板1の上に、電極2、バッファ層3、活性層4、バッファ層5及び電極6が積層されている。以下、各構成部材の好ましい具体例について説明するが、これらは図1に示す構成の有機薄膜太陽電池での使用に限られない。なお以下では、電極2側がホール側、電極6側が電子側である場合の例について説明する。
【0027】
基板1としては、任意の材質の基板が使用可能である。図1においては、基板1が電極2側に形成されているが、基板1は電極6側に存在してもよい。また、電極2及び電極6の両者に基板が積層されていてもよい。基板の材質としては、ガラス、アルミニウム、ステンレス、PETのようなプラスチック等が挙げられる。
【0028】
ホール側の電極2の構成物質としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO、亜鉛酸化物とも言う。)、酸化スズ(SnO2、スズ酸化物とも言う。)、酸化インジウム(In23、インジウム酸化物とも言う。)、酸化チタン(TiO2、チタン酸化物とも言う。)等の光半導物質が挙げられる。これらは、通常、結晶格子のところどころが欠けたいわゆる格子欠陥を多く有する。つまり、これらが酸素欠陥状態で製造されることによって、余剰電子が生成し、光半導性が付与される。したがって、製造時に酸素の供給量を抑制する還元焼成が好ましく、又はある種のドーパントを添加することによって積極的に空孔の形成を促進させることも好ましい。ドーパントは、電極2の構成物質に応じて選択でき、酸化亜鉛の場合はアルミニウム(Al)又はガリウム(Ga)が使用される。また、酸化スズの場合はアンチモン(Sb)(又は酸化アンチモン)が使用される。また、酸化チタンの場合はニオブ(Nb)が使用される。また、酸化インジウムの場合はスズ(Sn)(酸化スズ)が使用される。これは、酸化スズインジウム(ITO、インジウム・スズ酸化物ともいう。)といわれ、透明導電性材料として利用される。電極2の構成物質としては、前記したすべての金属酸化物が使用できる。また、金、白金等の金属も使用できる。また、PEDOT:PSS(ポリ(3,4エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸)等の導電性ポリマーの使用も可能である。本発明において、一対の電極(すなわちホール側電極及び電子流入側電極)のうち、少なくとも光を取り入れる側の電極の構成物質が透明であることが好ましい。
【0029】
本発明においては、活性層と一対の電極の少なくとも一方との間にバッファ層が配置されていることが好ましい。バッファ層によれば格子定数整合効果が得られる。ホール側のバッファ層3としては、例えば前記のPEDOT:PSS及びアセン系化合物を用いることができる。本発明においてはこのバッファ層3はなくてもよい。
【0030】
バッファ層3と活性層4との間にp型半導体層を導入してもよい。p型半導体層は、例えば、芳香族アミン系材料、フタロシアニン系錯体、アセン系化合物等であることができる。
【0031】
活性層4は、前述した、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である。活性層4の厚みは5nm〜300nmであることが好ましく、10nm〜100nmであることがより好ましい。
【0032】
活性層4とバッファ層5との間にn型半導体層を導入してもよい。n型半導体層は、例えばフラーレン系化合物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等であることができる。
【0033】
電子流入側のバッファ層5の構成物質としては、BAlq((p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III))、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、又はバソクプロイン)、TAZ(3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール)、フッ化リチウム等が挙げられる。バッファ層5はなくてもよい。
【0034】
電子流入側の電極6の構成物質としてはリチウム、リチウム−インジウム合金、カルシウム、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、インジウム、ルテニウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−カルシウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金、銀、ITO,IZO等が挙げられる。これらの電極構成物質は単独で使用してもよく、又は複数種を併用してもよい。電極6側が光を取り入れる側である場合、電極6の構成物質は透明な材料であることが好ましい。
【0035】
また、キャリアの取り出し効率を向上させる目的で、バッファ層5と電極6との間にフッ化リチウム等を蒸着してもよい。
【0036】
<有機薄膜太陽電池の製造方法>
本発明の別の態様は、上述した本発明の有機薄膜太陽電池の製造方法であって、一対の電極の一方の上に、直接又はバッファ層を介して、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層を形成し、次いで該活性層上に直接又はバッファ層を介して一対の電極の他方を形成することによって、該活性層が一対の電極の間に配置されている素子を形成する工程と、該素子を50℃より高く150℃以下の温度で熱処理する工程とを含む、有機薄膜太陽電池の製造方法を提供する。本発明の有機薄膜太陽電池は、例えば以下の手順で製造できる。
【0037】
まず、基板上に、蒸着法又はスパッタ法等によって電極材料を薄膜形成させて、一対の電極の一方を形成する。次いで、塗工法又は蒸着法等によってバッファ層を形成する(バッファ層を形成する場合)。次いで、例えばp型半導体及びn型半導体を同時に蒸着する共蒸着法、p型半導体及びn型半導体を溶媒中で混合して得た塗布液を基材に塗工する塗工法、等により、活性層を形成する。次いで蒸着等によってバッファ層を形成する(バッファ層を形成する場合)。次いで、蒸着法等で電極材料を薄膜形成させて、一対の電極の他方を形成する。以上のような手順で、活性層が一対の電極の間に配置されている素子を形成することができる。
【0038】
次いで、該素子を50℃より高く150℃以下、より好ましくは70℃〜150℃で熱処理する。熱処理時間は、好ましくは5分間〜60分間であり、より好ましくは5分間〜30分間である。これにより、活性層におけるp型半導体及びn型半導体の結晶化を促進できる。熱処理による結晶化促進効果は、混合層におけるp型半導体及びn型半導体の両者がアルキル基を有する場合に顕著である。
以上の方法により、有機薄膜太陽電池を製造できる。
【実施例】
【0039】
以下、具体的な実施例により、本発明を詳細に説明する。
【0040】
[実施例1]
ITO付きガラス基板を2−プロパノールで5分間超音波洗浄し、その後、超純水で5分間超音波洗浄した。さらにUVオゾン洗浄装置で20分間ドライ洗浄を行なった。
【0041】
洗浄した基板をスピンコーターにセットし、PEDOT:PSS(H.C.Starck社製のCLEVIOS P VP.AI 4083)を1質量%に調整した液を0.45μmのフィルターでろ過後、滴下した。スピンコート条件を、1500rpmで45秒間、その後さらに3000rpmで1秒間、の条件として製膜し、バッファ層を形成した。
【0042】
次に、PEDOT:PSS薄膜付き基板を真空蒸着機にセットし、蒸着法にて以下の薄膜を作製した。まず、2,3−ジプロピルペンタセンを20nm蒸着し、p型半導体層を形成した。
【0043】
次に、活性層を蒸着するため、2,3−ジプロピルペンタセン(p型半導体として)とN、N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド(アルドリッチ社製)(n型半導体として)との混合層を45nmの膜厚になるように蒸着した。混合層中の2,3−ジプロピルペンタセンの割合は30体積%とした。
【0044】
次に、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドを15nmの膜厚になるように蒸着し、n型半導体層を形成した。
【0045】
次に、BCP(アルドリッチ社製)を8nmの膜厚になるように蒸着してバッファ層を形成した。そして、銀を150nm蒸着して電極を形成した。以上により、太陽電池を作製した。
【0046】
[実施例2]
実施例1で作製した太陽電池を50℃で10分間熱処理した。
【0047】
[実施例3]
実施例1で作製した太陽電池を100℃で10分間熱処理した。
【0048】
[実施例4]
実施例1で作製した太陽電池を150℃で10分間熱処理した。
【0049】
[実施例5]
ITO付きガラス基板を2−プロパノールで5分間超音波洗浄し、その後、超純水で5分間超音波洗浄した。さらにUVオゾン洗浄装置で20分間ドライ洗浄を行なった。
【0050】
洗浄した基板をスピンコーターにセットし、PEDOT:PSS(H.C.Starck社製のCLEVIOS P VP.AI 4083)を1質量%に調整した液を0.45μmのフィルターでろ過後、滴下した。スピンコート条件を、1500rpmで45秒間、その後さらに3000rpmで1秒間、の条件として製膜し、バッファ層を形成した。
【0051】
次に、PEDOT:PSS薄膜付き基板を真空蒸着機にセットし、蒸着法にて以下の薄膜を作製した。まず、ペンタセン(アルドリッチ社製昇華精製グレード)を20nm蒸着し、p型半導体層を形成した。
【0052】
次に、活性層を蒸着するため、ペンタセン(p型半導体として)とN、N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミド(アルドリッチ社製)(n型半導体として)との混合層を35nmの膜厚になるように蒸着した。混合層中のペンタセンの割合は30体積%とした。
【0053】
次に、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドを20nmの膜厚になるように蒸着し、n型半導体層を形成した。
【0054】
次に、BCP(アルドリッチ社製)を8nmの膜厚になるように蒸着してバッファ層を形成した。そして、銀を150nm蒸着して電極を形成した。以上により、太陽電池を作製した。
【0055】
[実施例6]
実施例5で作製した太陽電池を100℃で10分間熱処理した。
【0056】
[比較例1]
ITO付きガラス基板を2−プロパノールで5分間超音波洗浄し、その後、超純水で5分間超音波洗浄した。さらにUVオゾン洗浄装置で20分間ドライ洗浄を行なった。
【0057】
洗浄した基板をスピンコーターにセットし、PEDOT:PSS(H.C.Starck社製のCLEVIOS P VP.AI 4083)を1質量%に調整した液を0.45μmのフィルターでろ過後、滴下した。スピンコート条件を、1500rpmで45秒間、その後さらに3000rpmで1秒間、の条件として製膜し、バッファ層を形成した。
【0058】
次に、PEDOT:PSS薄膜付き基板を真空蒸着機にセットし、蒸着法にて以下の薄膜を作製した。まず、2,3−ジプロピルペンタセンを20nm蒸着し、p型半導体層を形成した。
【0059】
次に、N、N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドを15nmの膜厚になるように蒸着し、n型半導体層を形成した。
【0060】
次に、BCP(アルドリッチ社製)を8nmの膜厚になるように蒸着してバッファ層を形成した。そして、銀を150nm蒸着して電極を形成した。以上により、太陽電池を作製した。
【0061】
[比較例2]
ITO付きガラス基板を2−プロパノールで5分間超音波洗浄し、その後、超純水で5分間超音波洗浄した。さらにUVオゾン洗浄装置で20分間ドライ洗浄を行なった。
【0062】
洗浄した基板をスピンコーターにセットし、PEDOT:PSS(H.C.Starck社製のCLEVIOS P VP.AI 4083)を1質量%に調整した液を0.45μmのフィルターでろ過後、滴下した。スピンコート条件を、1500rpmで45秒間、その後さらに3000rpmで1秒間、の条件として製膜し、バッファ層を形成した。
【0063】
次に、PEDOT:PSS薄膜付き基板を真空蒸着機にセットし、蒸着法にて以下の薄膜を作製した。まず、ペンタセン(アルドリッチ社製昇華精製グレード)を20nm蒸着し、p型半導体層を形成した。
【0064】
次に、N、N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンジカルボキシイミドを15nmの膜厚になるように蒸着し、n型半導体層を形成した。
【0065】
次に、BCP(アルドリッチ社製)を8nmの膜厚になるように蒸着してバッファ層を形成した。そして、銀を150nm蒸着して電極を形成した。以上により、太陽電池を作製した。
【0066】
[太陽電池素子測定]
実施例1及び2、並びに比較例1で作製した太陽電池に関して、太陽電池素子測定を行なった。ソーラシミュレータは三永電機製作所社製のXES40S1を用い、100mW/cm2(AM1.5)の擬似太陽光を照射し、株式会社ADC社製の6242電流電圧発生器にて開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、及び発電効率(PCE)を測定した。測定は窒素雰囲気中のグローブボックス内で行なった。その結果を図2に示す。比較例1と実施例1とを比べると、混合層を導入することによる性能向上を確認できた。非特許文献3で記されているような超格子構造を必要とせず、有機半導体材料中にアルキル基を導入することで、性能向上を達成した。また、実施例1で作製した太陽電池に熱を加えることで、さらなる性能向上が確認できた。
【0067】
また、図3に、熱処理条件を変更した時の太陽電池素子測定結果を示す。図3に示す結果から分かるように、実施例3について、100℃、10分間の熱処理時における顕著な性能向上が確認できた。
【0068】
図4に、実施例5及び6、並びに比較例2で作製した太陽電池についての太陽電池素子測定結果を示す。図4に示す結果から分かるように、混合層を導入することによる性能向上を確認した。しかし、実施例5と実施例6との比較から、熱処理による性能向上は確認できなかった。本結果から、p型半導体とn型半導体との両者にアルキル基を導入した場合に熱処理の顕著な効果が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、フレキシブルでかつ変換効率が高い有機薄膜太陽電池の作製に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
2 電極
3 バッファ層
4 活性層
5 バッファ層
6 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極の間に配置されている、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層と、を有する有機薄膜太陽電池であって、
該p型半導体が下記一般式(1):
【化1】

{式中、nは2又は3の整数であり、そして、官能基R1〜R10の全てが水素であるか、又は官能基R1〜R10のうちR2、R3、R7及びR8の少なくとも1つがアルキル基で残りが水素である}で表されるアセン系化合物であり、
該n型半導体がアルキル基を有する有機半導体である、有機薄膜太陽電池。
【請求項2】
該n型半導体が下記一般式(2):
【化2】

{式中、Xは、C1〜C12のアルキル基である}で表されるペリレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体である、請求項1に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項3】
該活性層と該一対の電極の少なくとも一方との間にバッファ層が配置されている、請求項1又は2に記載の有機薄膜太陽電池。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機薄膜太陽電池の製造方法であって、
一対の電極の一方の上に、直接又はバッファ層を介して、p型半導体とn型半導体とからなる混合層である活性層を形成し、次いで該活性層上に直接又はバッファ層を介して一対の電極の他方を形成することによって、該活性層が一対の電極の間に配置されている素子を形成する工程と、
該素子を50℃より高く150℃以下の温度で熱処理する工程と
を含む、有機薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−231062(P2012−231062A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99362(P2011−99362)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】