説明

アッパーブラケット

【課題】 この発明は、フロントフォークに取り付けられてハンドルを固定するアッパーブラケットの改良に関する。
【解決手段】 上下に貫通する前後の取付孔2L.2R,3L,3Rとを備えてなり、これら前後の取付孔2L.2R,3L,3Rの何れか一方にハンドルHを保持するハンドルホルダHのボルト部B21を選択的に挿通することでハンドル位置を調整可能なアッパーブラケットAにおいて、各取付孔2L.2R,3L,3Rは、直線縁5と円弧縁6とを有してD字状に形成される上下の開口と、上下の円弧縁6,6から軸心方向に傾斜する上下のテーパ面7a,7bと、上下の上記直線縁5,5から垂直に形成される上下の垂直面8a,8bとをそれぞれ備え、これら垂直面8a,8bを向かい合わせにして配置されることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントフォークに取り付けられてハンドルを固定するアッパーブラケットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントフォークに取り付けられてハンドルを固定するアッパーブラケットは、これまでに種々の提案がなされており、自動二輪車等の鞍乗型車両に利用される。
【0003】
例えば、特許文献1の図6に記載されるアッパーブラケットは、自動二輪車用のアッパーブラケットであり、左右一対のフロントフォークを保持する左右一対のフォーク保持部と、上下に貫通する左右一対の取付孔とを備えてなり、このアッパーブラケットには、各取付孔にそれぞれ挿通してボルト固定される左右一対のハンドルホルダを介してハンドルが固定される。
【0004】
上記特許文献1に開示のアッパーブラケットにおける上記構成では、ハンドルの取り付け位置を調整できないため、例えば、特許文献2の図1に記載されるように、左右一対の取付孔をアッパーブラケットの前後に設け、前方または後方の取付孔の何れか一方を選択してハンドルを取り付ける提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−284077号 公報
【特許文献2】特開2000−219184号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に開示のアッパーブラケットは、前方または後方の取付孔の何れか一方を選択してハンドルを取り付けることにより、ハンドル位置を調整することが可能となる点において有用である。
【0007】
しかしながら、アッパーブラケットの前後幅が短く、前後の取付孔が接近する場合において、前後の取付孔の間が薄肉となるため強度が低下し、アッパーブラケットを鋳造成型する場合には、生産性や加工性が低下する不具合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ハンドル位置を調整するため前後に取付孔を形成し、これらの取付孔が接近する場合においても、強度低下を招くことなく、生産性や加工性に優れたアッパーブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、左右一対のフロントフォークを保持する左右一対のフォーク保持部と、上下に貫通する前後の取付孔とを備えてなり、これら前後の取付孔の何れか一方にハンドルを保持するハンドルホルダのボルト部を選択的に挿通することでハンドル位置を調整可能なアッパーブラケットにおいて、上記各取付孔は、直線縁と円弧縁とを有してD字状に形成される上下の開口と、上下の上記円弧縁から軸心方向に傾斜する上下のテーパ面と、上下の上記直線縁から垂直に形成される上下の垂直面とをそれぞれ備え、これら垂直面を向かい合わせにして配置されることである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各取付孔が垂直面を有し、これら垂直面を向かい合わせにして配置することにより、前後の取付孔が接近する場合においても、前後の垂直面の間に肉厚を確保することが可能となり強度低下を招くことがなく、アッパーブラケットを鋳造成型する場合においても、従来と比較して生産性及び加工性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットを示す平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットのX−X線断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットにおける取付孔の形状を拡大して示す斜視図である。
【図4】(a)本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットにおける取付孔の第一の変形例を示し、この取付孔の形状を拡大して示す斜視図である。(b)本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットにおける取付孔の第二の変形例を示し、この取付孔の形状を拡大して示す斜視図である。(c)本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットにおける取付孔の第三の変形例を示し、この取付孔の形状を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るアッパーブラケットにハンドルホルダを介してハンドルを取り付けた状態を部分的に切り欠いて示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施の形態を示すアッパーブラケットについて図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係るアッパーブラケットAは、自動二輪車用のアッパーブラケットであり、左右一対のフロントフォークを保持する左右一対のフォーク保持部1L,1Rと、上下に貫通する前後の取付孔(前方の取付孔2L,2R、後方の取付孔3L,3R)とを備えてなり、これら前後の取付孔(前方の取付孔2L,2Rまたは、後方の取付孔3L,3R)の何れか一方にハンドルHを保持するハンドルホルダ4のボルト部40を選択的に挿通することでハンドルH位置を調整可能とするものである。
【0014】
そして、上記各取付孔2L,2R,3L,3Rは、図2に示すように、直線縁5と円弧縁6とを有してD字状に形成される上下の開口と、上下の上記円弧縁6、6から軸心方向に傾斜する上下のテーパ面7a、7bと、上下の上記直線縁5、5から垂直に形成される上下の垂直面8a、8bとをそれぞれ備え、これら垂直面8a、8bを向かい合わせにして配置される。
【0015】
以下に、本実施の形態に係るアッパーブラケットAの各構成部品について詳細に説明する。
【0016】
上記フォーク保持部1L,1Rは、アッパーブラケットAの左右に配置されて平面視でC字状に形成されてなり、左右のフロントフォーク(図示せず)の上部をそれぞれ把持する。
【0017】
また、上記フォーク保持部1L,1Rにはボルトが挿通するボルト挿通孔10L,10Rがそれぞれ形成されてなる。そして、図示しないが、このボルト挿通孔10L,10R内にボルトを挿通し、その先端にナットを螺合することにより、フォーク保持部1L,1Rを縮径させてフロントフォークを固定する。
【0018】
上下に貫通する前後の取付孔2L,2R,3L,3Rは、フォーク保持部1L,1Rの間に左右に形成されて対をなし、前方(図1中下方)に位置する左右の取付孔を2L,2R、後方(図1中上方)に位置する左右の取付孔を3L,3Rとする。
【0019】
各取付孔2L,2R,3L,3Rは、上下の開口がD字状に形成されると共に、図2,3に示すように、上下の開口から中央にかけて縮径されて断面D字状に形成される上下の開口部90a,90bと、これら開口部90a,90bの間に円柱状に形成される柱状部91とをそれぞれ備える。
【0020】
そして、上下の開口部90a,90bは、上下の開口の円弧縁6,6からそれぞれ軸心方向に傾斜する上下のテーパ面7a,7bと、上下の開口の直線縁5、5からそれぞれ垂直に形成される上下の垂直面8a,8bとに囲まれて形成される。
【0021】
この垂直面8a,8bは、図3に示すように、中央にかけて幅狭になり、頂点が柱状部91に接する三角形状に形成されて、前後の取付孔2L,2R,3L,3Rは、各垂直面8a,8bをそれぞれ向かい合わせにして配置される。
【0022】
上記垂直面8a,8bを備えることにより、前後の取付孔、即ち、2Lと3L,2Rと3Rが接近する場合においても、前後の垂直面8aと8a,8bと8bの間に一律の肉厚を確保することが可能となり、強度低下を招くことがなく、アッパーブラケットAを鋳造成型する場合においても、従来と比較して生産性や加工性を向上することが可能となる。
【0023】
尚、上記取付孔2L,2R,3L,3Rの形状は上記の限りではなく、向かい合わせに配置される垂直面8a,8bを有して前後の取付孔2Lと3L,2Rと3Rの距離が一定以上になれば良い。
【0024】
例えば、図4(a)に示すように、柱状部91と上下の垂直面8a,8bとが接しなくとも良い。また、図4(b)に示すように、上下の垂直面8a,8bが連なり、上記柱状部91も断面D字状に形成されるとしても良い。また、図4(c)に示すように、柱状部91を設けなくとも良い。
【0025】
次に、本実施の形態におけるアッパーブラケットAにハンドルを取り付けるためのハンドル取り付け部材について図5を参照して説明する。
【0026】
このハンドル取付部材は、前方に位置する左右の取付孔2L,2Rまたは後方に位置する左右の取付孔3L,3Rの何れか一方にボルト部を選択的に挿通する左右一対のハンドルホルダBと、各ハンドルホルダBのボルト部B21の外周に装着される上下一対のブッシュC,Cとを備えてなる。
【0027】
尚、図5には、後方に位置する右側の取付孔3Rに右側のハンドルホルダBを取り付けた状態を示し、図示しない左側のハンドルホルダの構成は、右側のハンドルホルダBの構成と同様であり、左側のハンドルホルダは、右側のハンドルホルダBと同様にしてアッパーブラケットAに取り付けられる。
【0028】
上記ハンドルホルダBは、ハンドルHを挟持する上下一対のホルダ部材B1,B2と、これらのホルダ部材B1,B2を連結するボルトB3とを備えてなる。
【0029】
そして、下側のホルダ部材B2は、上側のホルダ部材B1に連結されてハンドルHを下支えする本体部B20と、この本体部B20の軸心部から垂設されるボルト部B21と、このボルト部B21の先端に螺合するナットB22とを備える。
【0030】
また、上記ボルト部B21の外周に装着されるブッシュCは、取付孔3Rにおける上下の開口部90a,90b内にそれぞれ挿入されて対となり、ボルト部B21が挿通する挿通孔C1を軸心部に備えて環状に形成される防振ゴムであり、外周が開口部90a,90bの形状に符合するよう断面D字状に形成される。
【0031】
そして、アッパーブラケットAにハンドルHを固定する場合には、取付孔3Rの上下の開口部90a,90bにブッシュCをそれぞれ挿入し、上側のブッシュCに環板状の受け部材Dを積層する。
【0032】
次いで、ブッシュC,Cの挿入孔C1,C1内に下側のホルダ部材B2のボルト部B21を挿入し、その先端に受け部材D及びワッシャEを装着させてナットB22を螺合する。これにより、下側のボルダ部材B2がアッパーブラケットAに固定される。
【0033】
そして、下側のホルダ部材B2にハンドルHを設置して上側のホルダ部材B1を被せてボルトB3を螺着する。つまり、上記構成を備えることにより、ハンドルホルダBを介してハンドルHをアッパーブラケットAに取り付けることが可能となる。
【0034】
また、ハンドルホルダHは、ブッシュC,Cを介してアッパーブラケットAに当接し、直接アッパーブラケットAに接触しないことから、車輪側からの振動をブッシュC,Cで吸収することが可能となる。
【0035】
尚、図中には、ボルト部B21を下側のホルダ部材B2の軸心に設けた状態を示すがこの限りではなく、図示しないが、ボルト部B21を偏心させて設けるとしても良い。
【0036】
この場合においては、下側のボルダ部材B2の取り付け方向を変更することにより、四段階にハンドルHの位置を調整することが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0038】
A アッパーブラケット
B ハンドルホルダ
C ブッシュ
H ハンドル
1L、1R フォーク保持部
2L、2R、3L、3R 取付孔
4 ホルダ
5 直線縁
6 円弧縁
7a、7b テーパ面
8a、8b 垂直面
90a、90b 開口部
91 柱状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のフロントフォークを保持する左右一対のフォーク保持部と、上下に貫通する前後の取付孔とを備えてなり、これら前後の取付孔の何れか一方にハンドルを保持するハンドルホルダのボルト部を選択的に挿通することでハンドル位置を調整可能なアッパーブラケットにおいて、
上記各取付孔は、直線縁と円弧縁とを有してD字状に形成される上下の開口と、上下の上記円弧縁から軸心方向に傾斜する上下のテーパ面と、上下の上記直線縁から垂直に形成される上下の垂直面とをそれぞれ備え、これら垂直面を向かい合わせにして配置されることを特徴とするアッパーブラケット。
【請求項2】
前後の取付孔がそれぞれ左右に形成されて対をなし、前方に位置する左右一対の取付孔または後方に位置する左右一対の取付孔の何れか一方にハンドルを保持する左右一対のハンドルホルダのボルト部を選択的に挿通することを特徴とする請求項1に記載のアッパーブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206528(P2012−206528A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71339(P2011−71339)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】