説明

アドレス信号発生回路

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラスタースキャン方式のディスプレイ装置の表示画面を制御するためのアドレス信号発生回路に係わり、特には前記ディスプレイ装置のメモリ内に予め格納されている表示画面を制御するための制御データを、前記ディスプレイ装置のラスタースキャンに同期して呼び出すアドレス信号発生回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ラスタースキャン方式のディスプレイ装置では、ディスプレイ装置の表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせにより得られる複数の格子模様の各エリアを表示画面を制御するための補正点とし、前記各補正点に対応させた表示画面の制御量を制御データとして予めディスプレイ装置のメモリに記憶している。前記エリアには水平方向のアドレスと垂直方向のアドレスの組み合わせによりアドレスが割り付けられており、前記メモリに前記アドレスを指定すると、前記アドレスに対応したエリアの制御データが前記メモリより出力され、各エリアの制御が行われている。
【0003】また、従来より、前記水平方向のアドレスを得るのにフェーズ・ロックド・ループ回路(以下PLL回路と記す)が用いられていた。このPLL回路では、水平走査に同期した水平パルスがPLL回路を構成する位相比較器に入力され、ループ・フィルターを通して特定周波数の高周波信号として出力される。そして、前記位相比較器より出力された高周波信号を別に設けたカウンター回路により分周することで、水平方向のアドレスを得ていた。
【0004】一方、垂直方向のアドレス信号は、前記水平走査に同期した水平パルスを別に設けたカウンター回路に入力し、前記水平パルスを一定の整数倍毎にカウントアップすることで得ていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近時、ラスタースキャン方式のディスプレイ装置は分野や用途を問わず広く普及していて、その仕様についても、水平走査線数は例えば、一般家庭用のテレビジョンでは525本で、高精細度用ディスプレイ装置では2000本を越えるものまであるといった具合に多種・多様である。
【0006】また、従来のアドレス信号発生回路では、垂直方向のアドレス信号を発生させるのに、水平走査に同期した水平パルスをカウンター回路に入力し、前記水平パルスを一定の整数倍毎にカウントアップすることで行っていた。ところが、このアドレス信号発生回路で、水平走査線数の異なる仕様のディスプレイ装置に対してアドレス信号を発生させ、ディスプレイ装置の表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせからなる格子模様のエリアに合わせようとすると、アドレス信号発生回路を変更するなり、スイッチで切り換えるなどしてカウントアップする整数を変更しなくてはならず不便であった。
【0007】即ち、表示画面の水平走査線数が512本のディスプレイ装置では、図3(a)に図示の如く、表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせからなる格子模様の各エリアには、それぞれA〜Pの制御量が制御データとして割り当てられている。そして、垂直方向のアドレスは、16進数で000Hから1FFHまでの512番地である。次に、この表示画面の水平走査線数が1024本になった場合には、垂直方向のアドレス信号は前記水平パルスをカウントアップするときの整数を2回に1度の割合に変更して発生させることで、図3(b)に図示の如く、表示画面と格子模様の各エリアに割り当てられるA〜Pの制御量を一致でき、表示画面を正常に制御することができる。
【0008】ところが、表示画面の水平走査線数が1300本になった場合には、前記水平パルスを2回に1度の割合でカウントアップしたのでは、図3(c)に図示する如く、水平走査線数が1024本目以降は制御データがなくなってしまうため、表示画面と格子模様の各エリアに割り当てられているA〜Pの制御量を一致させることができなくなり、表示画面の正常な制御ができなくなってしまう。
【0009】そこで、前記水平パルスを3回に1度の割合でカウントアップすると、この場合には、図3(d)に図示する如く、表示画面と格子模様の各エリアに割り当てられているA〜Pの制御量を一致させることができず、表示画面を正常に制御することもできなくなってしまう。従って、このように表示画面と格子模様の各エリアに割り当てられているA〜Pの制御量を一致させることができない場合には、制御量を再度、表示画面に合わせ直し、表示画面を正常に制御する必要があった。また、従来のアドレス信号発生回路では、前記制御量を合わせ直す場合にも、000Hから1FFHまでの全てのアドレスのデータを有効に使いきれないといった難点があった。
【0010】また、従来より水平方向のアドレス信号を発生するためにこの種のアドレス信号発生回路で用いられているPLL回路は高周波信号を出力するため、外部ノイズ等の影響を受けやすく、発振周波数を安定させるためにシールド対策等が必要で高価になる難点があった。
【0011】本発明の目的はこれら難点が解消し、簡便な手段で水平走査線数に関係なく容易に垂直方向のアドレス信号が得られる安価なアドレス信号発生回路を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】ラスタースキャン方式のディスプレイ装置の表示画面を制御するに当たり、前記ディスプレイ装置の表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせにより得られる複数の格子模様の各エリアを、表示画面を制御するための補正点とし、前記各補正点に対応させた制御量を制御データとして予め記憶したメモリの水平方向と垂直方向のアドレスを指定するアドレス信号を、前記ディスプレイ装置のラスタースキャンに同期して発生させるアドレス信号発生回路であって、複数のモノスティブル・マルチバイブレータからなり、水平走査に同期したパルスが入力されて水平走査期間内を分割するパルスを発生する第一の発振回路と、複数のモノスティブル・マルチバイブレータからなり、垂直走査に同期したパルスが入力されて垂直走査期間内を分割するパルスを発生する第二の発振回路と、フリップ・フロップからなり、前記第一の発振回路と第二の発振回路で得られるパルスをそれぞれ同じタイミングで出力させる同期回路と、前記第一の発振回路の出力が入力され、水平方向のアドレス信号を発生する第一のカウンター回路と、前記同期回路の出力が入力され、垂直方向のアドレス信号を発生する第二のカウンター回路と、前記第一の発振回路と第二の発振回路それぞれに前記第一の発振回路で得られるパルスと第二の発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変する調整器を具備せしめ、前記各調整器を調整することで前記格子模様のエリアとアドレス信号発生回路より発生するアドレス信号とを同期させるようアドレス信号発生回路を構成する。
【0013】
【作用】本発明のアドレス信号発生回路では、水平方向のアドレス信号は水平走査期間内を分割して得られ、垂直方向のアドレス信号は垂直走査期間内を分割して得られるので、垂直方向のアドレス信号が水平走査線数に関係なく簡単に得られ、表示画面と格子模様の各補正点に割り当てられている表示画面の制御量を容易に一致させることができる。
【0014】また、PLL回路を用いないので、シールド対策を不要とし、外部ノイズの影響がなくなり、安価なアドレス信号発生回路が得られる
【0015】
【実施例】以下、本発明を図に沿って説明する。図1は本発明のアドレス信号発生回路の構成を示す回路図、図2R>2は図1における各部の信号波形を示したタイミングチャートである。図1において、M1,M2,M3,M4,M5,M6はそれぞれモノスティブル・マルチバイブレータ(以下モノ・マルチと記す)であり、M1,M2,M3はJ・Kフリップ・フロップF1とともに水平走査期間内を分割するパルスを発生する第一の発振回路を構成し、M4,M5,M6は垂直走査期間内を分割するパルスを発生する第二の発振回路を構成している。F2はDフリップ・フロップであり、前記第一の発振回路と第二の発振回路で得られるパルスをそれぞれ同じタイミングで出力させるための同期回路を構成している。C1,C2はそれぞれカウンターであり、C1は前記第一の発振回路の出力が入力され、水平方向のアドレス信号を発生するための第一のカウンター回路を、C2は前記同期回路の出力が入力され、垂直方向のアドレス信号を発生する第二のカウンター回路を構成している。また、RV1,RV2は前記第一の発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変する調整器で、RV3,RV4は前記第二の発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変する調整器の可変抵抗器である。
【0016】このように構成されたアドレス信号発生回路において、第一の発振回路を構成するモノ・マルチM1の入力端子Aに、図2−■に示す如き信号波形で水平走査に同期した水平パルスHBLが入力されると、モノ・マルチM1の出力端子Qからは図2−■に示す如き信号波形の出力がなされる。また、モノ・マルチM1の前記出力はモノ・マルチM2の入力端子Aに入力されるほか、モノ・マルチM3のCL端子とJ・Kフリップ・フロップF1のCL端子およびカウンターC1のCL端子に入力され、各回路を制御する。
【0017】次に、モノ・マルチM2の反転出力端子Q’からは、図2−■に示す如き信号波形の出力がなされ、この出力信号はモノ・マルチM3の入力端子Bに入力されるほか、J・Kフリップ・フロップF1のPR端子に入力され、J・Kフリップ・フロップF1を制御する。
【0018】また、モノ・マルチM3の出力端子Qからは、図2−■に示す如き信号波形の出力がなされ、この出力信号はJ・Kフリップ・フロップF1のCK端子に入力されるほか、モノ・マルチM3の入力端子Aにフィードバックされる。そして、第一の発振回路を構成するJ・Kフリップ・フロップF1の出力端子Qからは、図2R>2−■に示す如き信号波形で水平走査期間内を分割する発振パルスが出力される。
【0019】一方、第二の発振回路を構成するモノ・マルチM4の入力端子Aに、図2の○印10に示す如き信号波形で垂直走査に同期した垂直パルスVBLが入力されると、モノ・マルチM4の出力端子Qからは、図2の○印11に示す如き信号波形の出力がなされる。この出力信号は、モノ・マルチM6のCL端子に入力されるほか、Dフリップ・フロップF2のCL端子とカウンターC2のCL端子に入力され、各回路を制御する。
【0020】次に、モノ・マルチM5の出力端子Qからは、図2の○印13に示す如き信号波形の出力がなされ、この出力信号はモノ・マルチM6の入力端子Aに入力される。そして、モノ・マルチM6の出力端子Qからは、図2の○印12に示す如き信号波形の出力がなされ、この出力信号はDフリップ・フロップF2の入力端子Dに入力されるほか、モノ・マルチM5の入力端子Aにフィードバックされている。そして、第二の発振回路を構成するモノ・マルチM6の出力端子Qからは、図2の○印12に示す如き信号波形の垂直走査期間を分割する発振パルスが出力される。
【0021】また、Dフリップ・フロップF2のCK端子には、図2−■に示す如き信号波形のJ・Kフリップ・フロップF1の出力が入力され、前記第一の発振回路から得られる発振パルスの出力タイミングと一致した、図2の○印14に示す如き信号波形のパルスが出力される。
【0022】また、J・Kフリップ・フロップF1の出力端子Qからの出力信号が第一のカウンター回路のカウンターC1の入力端子CKに入力されると、前記カウンターC1の出力端子Q0,Q1,Q2,Q3からはそれぞれ図2−■,■,■,■に示す如き信号波形の出力がなされ、アドレス信号の下位4ビットとなる水平方向のアドレス信号が得られる。
【0023】一方、Dフリップ・フロップF2の出力端子Qからの出力信号が第二のカウンター回路のカウンターC2の入力端子CKに入力されると、カウンターC2の出力端子Q0〜Q8からはそれぞれ図2の○印15〜23に示す如き信号波形の出力がなされ、アドレス信号の上位9ビットとなる垂直方向のアドレス信号が得られる。
【0024】ここで、一方の端子がモノ・マルチM2のRX/CX端子に接続され、他方の端子が電源VCCに接続された可変抵抗器RV1を調整し、モノ・マルチM2の出力端子Q’から出力される図2−■に示す如きパルスのパルス幅T1を変え、第一の発振回路の発振開始のタイミングを調整することが出来る。
【0025】また、一方の端子がモノ・マルチM3のRX/CX端子に接続され、他方の端子が電源VCCに接続された可変抵抗器RV2を調整することで、モノ・マルチM3の出力端子Qから出力される図2−■に示す如きパルスのパルス幅T2を変え、水平走査期間内を分割するパルスの発振周期を変えることが出来る。
【0026】また、一方の端子がモノ・マルチM4のRX/CX端子に接続され、他方の端子が電源VCCに接続された可変抵抗器RV3を調整することで、モノ・マルチM4の出力端子Qから出力される図2の○印11に示す如きパルスのパルス幅T3を変え、第二の発振回路の発振開始のタイミングを調整することが出来る。
【0027】また、一方の端子がモノ・マルチM5のRX/CX端子とモノ・マルチM6のRX/CX端子に接続され、他方の端子が電源VCCに接続された可変抵抗器RV4を調整することで、モノ・マルチM6の出力端子Qから出力される図2の○印12に示す如きパルスのパルス幅T4を変え、垂直走査期間内を分割するパルスの発振周期を変えることが出来る。
【0028】なお、前記第一の発振回路で得られるパルスと第二の発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変するために設けられた各調整器は、実施例に限定されるものでなく、水平走査周波数および垂直走査周波数が常に一定であるような場合には、調整器が例えば固定抵抗器であってもよいことはいうまでもない。
【0029】また、前記発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変するための各調整器に、水平・垂直の周波数により出力が変化する素子(F/Vコンバータ等)を用いて、周波数や水平走査線数に関係なく表示画面と表示画面上に想定した格子模様の各エリアを一致させるようすれば、マルチスキャンディスプレイの表示画面の制御も可能である。
【0030】このように、本発明ではPLL回路を用いることなく、また、水平走査線の数に関係なく水平方向のアドレス信号と垂直方向のアドレス信号を確実に得ることができる。
【0031】
【発明の効果】本発明のアドレス信号発生回路では、垂直方向のアドレス信号は垂直走査期間内を調整器で分割して得るため、垂直方向のアドレス信号が水平走査線数に関係なく得られるほか、走査線数が変わってもディスプレイ装置の表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせからなる格子模様の各エリアにアドレス信号を容易に割り当てることが出来るようになった。この結果、走査線数が変わっても全てのメモリを有効に利用できるほか、各種仕様のディスプレイ装置に対してメモリの制御データを共用できるといった効果がある。また、本発明のアドレス信号発生回路はPLL回路を用いないので、ノイズに対する特別な対策が不要で安価なアドレス信号発生回路が得られる。といった実用上の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアドレス信号発生回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の各部の波形を示す波形図である。
【図3】垂直方向のアドレス信号を得るための従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
HBL 水平パルス
VBL 垂直パルス
M1,M2,M3 モノスティブル・マルチバイブレータ
M4,M5,M6 モノスティブル・マルチバイブレータ
F1 J・Kフリップ・フロップ
F2 Dフリップ・フロップ
C1,C2 カウンター
RV1,RV2,RV3,RV4 可変抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラスタースキャン方式のディスプレイ装置の表示画面を制御するに当たり、前記ディスプレイ装置の表示画面上に想定した水平線と垂直線の組み合わせにより得られる複数の格子模様の各エリアを、表示画面を制御するための補正点とし、前記各補正点に対応させた制御量を制御データとして予め記憶したメモリの水平方向と垂直方向のアドレスを指定するアドレス信号を、前記ディスプレイ装置のラスタースキャンに同期して発生させるアドレス信号発生回路であって、■複数のモノスティブル・マルチバイブレータからなり、水平走査に同期したパルスが入力されて水平走査期間内を分割するパルスを発生する第一の発振回路と、■複数のモノスティブル・マルチバイブレータからなり、垂直走査に同期したパルスが入力されて垂直走査期間内を分割するパルスを発生する第二の発振回路と、■フリップ・フロップからなり、前記第一の発振回路と第二の発振回路で得られるパルスをそれぞれ同じタイミングで出力させる同期回路と、■前記第一の発振回路の出力が入力され、水平方向のアドレス信号を発生する第一のカウンター回路と、■前記同期回路の出力が入力され、垂直方向のアドレス信号を発生する第二のカウンター回路と、■前記第一の発振回路と第二の発振回路それぞれに前記第一の発振回路で得られるパルスと第二の発振回路で得られるパルスの発振開始のタイミングと発振周期を可変する調整器を具備せしめ、前記各調整器を調整することで前記格子模様のエリアとアドレス信号発生回路より発生するアドレス信号とを同期させるよう構成したことを特徴とするアドレス信号発生回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2698954号
【登録日】平成9年(1997)9月26日
【発行日】平成10年(1998)1月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−92091
【出願日】平成5年(1993)3月26日
【公開番号】特開平6−282254
【公開日】平成6年(1994)10月7日
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)