説明

アルカリ蓄電池用正極活物質及びその製造方法並びにアルカリ蓄電池用正極

【課題】ニッケル水酸化物の粒子表面に被覆させるコバルト化合物の組成及び結晶構造を所定のものに設定することにより、導電性ネットワークの形成を容易なものにできるアルカリ蓄電池用正極活物質を提供することである。
【解決手段】化学組成がNi0.95Zn0.05(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo0.8Al0.2(OH)(SO)0.1であるコバルト水酸化物からなる層が形成されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル金属水素化物電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池等のアルカリ蓄電池に用いられる正極活物質、及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いた正極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池の高エネルギー密度化を図る技術として、近年では、正極であるニッケル電極に、従来の焼結式電極に代えてペースト式(非焼結式)電極を用いることが行なわれている。ペースト式ニッケル電極は、電極基板として95%以上の高多孔体を用いているので、活物質である水酸化ニッケルを従来電極よりも多量に充填でき、その結果、高容量且つ高エネルギー密度を可能とするものである。
【0003】
しかしながら、ペースト式ニッケル電極において、活物質である水酸化ニッケル粒子を単に充填しただけでは、活物質利用率は60%程度しかなく、実用に至らない。そこで、活物質利用率を高めるために、各種の導電付加剤、例えば、ニッケル粉末、黒鉛粉末、コバルト化合物等の添加が行なわれており、中でも、コバルト酸化物の添加が最も効果的であると言われている。
【0004】
しかし、コバルト酸化物の全てが、活物質利用率を高めるための添加剤として有効ではなく、その効果はコバルト酸化物の結晶構造によって大きく左右されることが知られている。例えば、Coには効果が認められないが、Co(OH) 、CoO等のアルカリに可溶なコバルト酸化物には効果が認められている。
【0005】
このような有効なコバルト酸化物の作用機構は、次の通りである。即ち、コバルト酸化物がアルカリ水溶液中に溶解して2価のコバルト錯イオンが生成し、この錯イオンが水酸化ニッケル粒子や集電体の表面に水酸化コバルトとして析出し、析出した水酸化コバルトが初充電過程で導電性のオキシ水酸化コバルト(CoOOH)に変化することによって活物質粒子間及び集電体間を接続する導電性ネットワークが形成され、これによって高い活物質利用率が可能となる。このことからわかるように、高い活物質利用率を得るためには、コバルト酸化物のアルカリ水溶液中での溶解析出過程が重要であり、導電性ネットワークが十分に形成される必要がある。
【0006】
導電性ネットワークを十分に形成するために、従来では、ペースト式ニッケル電極を用いた電池にアルカリ電解液を注液して封口した後に、長時間放置し、その間にコバルト添加剤を溶解・分散させて活物質表面全体に均一に水酸化コバルト層を形成させることが行なわれている。しかし、放置時間が長いため、電池組立の後工程、例えば化成工程等を、円滑に進めることができないという問題があった。
【0007】
そこで、放置時間を短縮するために、水酸化ニッケル粒子の表面に予め水酸化コバルト層を被覆した活物質粒子を作製することが、例えば特開昭62−234867号公報等で提案されている。更に、被覆する水酸化コバルトの結晶構造を変えることによって、アルカリ電解液への溶解性を高めることも行なわれている。例えば、水酸化コバルトの結晶構造を通常のβ型(層間:4.65Å)からα型(層間:〜8Å)とすることによって、溶解過程の促進が図られている。
【0008】
ところで、高濃度アルカリ電解液中では、β型水酸化コバルトは、安定しており、その溶解速度は遅い。これに対し、α型水酸化コバルトは、不安定であり、コバルト錯イオンを経て安定なβ型水酸化コバルトに変化する。それ故、強固な導電性ネットワークの形成には、α型構造のコバルト酸化物が望ましいとされている。しかし、純粋なα型の水酸化コバルトの合成は非常に困難であり、一般にα型と言われている水酸化コバルト粉末は、例えば特開昭62−234867号公報のX線回折図に開示されているように、β型とα型とが共存したものであって、本来の特性が未だ十分に引き出されていないものである。この点が更に改良すべき課題として残されている。
【0009】
一方、添加剤には、上述した導電性の付与を目的としたもの以外にも、ニッケル電極の充電効率の向上のために、希土類元素や2族元素の酸化物等を複合添加することが行なわれている。これらの化合物は、ニッケル電極の酸素発生電位を貴とし、酸素過電圧を増大させて高温時での充電効率を向上させる作用を有することが知られている。
【0010】
しかしながら、このように、目的を別とする複数の添加剤を主活物質である水酸化ニッケル粒子に添加することは、電極基板への活物質の均一な充填を非常に困難としたり、活物質利用率を低下させたりして、製造面及び品質面で安定した生産ができないという問題があった。
【0011】
なお、先行文献としては、特許文献1、2が挙げられる。
【特許文献1】特開平08−102322号公報
【特許文献2】特開平06−275260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点等に鑑みてなされたものであり、ニッケル水酸化物の粒子表面に被覆させるコバルト化合物の組成及び結晶構造を所定のものに設定することにより、導電性ネットワークの形成を容易なものにできる、アルカリ蓄電池用正極活物質を提供すること、及びそのような活物質の製造方法を提供すること、並びにそのような活物質を用いたアルカリ蓄電池用正極を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアルカリ蓄電池用正極活物質及びその製造方法並びにアルカリ蓄電池用正極は、以下の通りである。但し、その全てにおける化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、Bは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素Aの価数)−2}×x÷(イオンBの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。Aの各族に属する元素としては、例えば、イッテルビウム、エルビウム、ランタン、イットリウム、マンガン、鉄、チタン、銅、カルシウム等が、用いられる。なお、請求項1、3、及び4に記載の発明におけるコバルト水酸化物に含まれる元素Aは、2A族及び2B族の元素ではない。
【0014】
請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質は、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物からなる層が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項1記載の発明においては、ニッケル水酸化物の粒子の表面にコバルト水酸化物からなる層が形成されているので、導電性ネットワークの形成が容易となり、電池組立後の放置時間が短縮される。また、コバルト水酸化物に元素Aがドープされているので、(i) コバルト水酸化物がα型構造に保持され、コバルト水酸化物のアルカリ電解液への溶解が促進され、導電性ネットワークの形成が更に容易となる、又は(ii)アルカリ電解液の酸化分解反応が抑制され、電極とした場合の高温時での充電効率が向上する。
【0016】
請求項2記載のアルカリ蓄電池用正極活物質は、請求項1記載の構成に加えて、ニッケル水酸化物に対するコバルト水酸化物の割合が、3〜15重量%である。
【0017】
請求項2記載の発明においては、満足できる活物質利用率及び電池容量が得られる。なぜなら、3重量%未満の場合では、導電性ネットワークによる充分な導電性が確保されず、活物質利用率の低下が生じ、15重量%を超える場合では、活物質であるニッケル水酸化物の量が減少し、電池容量が小さくなるからである。
【0018】
請求項3記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法は、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子を反応槽に入れ、コバルトと陰イオンBとからなる塩及び元素Aと陰イオンBとからなる塩を含む水溶液を、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中に、pH8〜13に制御しながら滴下して、ニッケル水酸化物の粒子表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物を析出させることを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の発明においては、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体が存在しているため、単一結晶構造のコバルト水酸化物が安定して生成される。
【0020】
請求項4記載のアルカリ蓄電池用正極は、ペースト式電極であって、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物からなる層が形成されているニッケル活物質が、多孔性基板に充填されて構成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項4記載の発明においては、強固な導電性ネットワークが形成されるので、高容量及び高エネルギー密度が可能となる。
【0022】
請求項4の多孔性基板としては、穿孔鋼板、金属メッシュ、発泡状金属多孔体、繊維状金属多孔体等が、用いられる。
【発明の効果】
【0023】
(1)請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質によれば、ニッケル水酸化物の粒子の表面にコバルト水酸化物からなる層を形成しているので、導電性ネットワークの形成を容易なものにでき、従って、電池組立後の放置時間を短縮でき、電池の製造工程の短縮化を図ることができる。
【0024】
また、コバルト水酸化物に元素Aをドープしているので、(i) コバルト水酸化物のアルカリ電解液への溶解を促進でき、導電性ネットワークの形成を更に容易なものにできる、又は(ii)アルカリ電解液の酸化分解反応を抑制でき、電極とした場合の高温時での充電効率を向上できる。
【0025】
(2)請求項2記載のアルカリ蓄電池用正極活物質によれば、満足できる活物質利用率及び電池容量を得ることができる。
【0026】
(3)請求項3記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法によれば、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体が存在しているため、単一結晶構造のコバルト水酸化物を安定して生成でき、請求項1記載の活物質を確実に得ることができる。
【0027】
(4)請求項4記載のアルカリ蓄電池用正極によれば、高容量及び高エネルギー密度を可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の基本的な実施形態について説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0029】
[ニッケル活物質粒子の作製]
(1) ニッケル水酸化物粒子の作製:
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛とを所定の比率で溶解した水溶液に、硫酸アンモニウムを添加してアンミン金属錯体を生成した後、水酸化ナトリウム水溶液を激しく撹拌しながら且つpH10〜13に制御しながら滴下し、亜鉛を5モル%固溶した球状のニッケル水酸化物粒子を得た。その化学組成は、Ni0.95Zn0.05(OH)であった。
【0030】
(2) コバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子の作製:
(1) で得たニッケル水酸化物粒子を、硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液とでpH8〜13に制御した水溶液中に投入し、これに、硫酸コバルトと硫酸アルミニウムとを所定の比率で混合した水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、撹拌しながら且つpH8〜13に制御しながら滴下した。この際、所定のpHにて10分間〜2時間保持するのが好ましい。
【0031】
次いで、ろ過、水洗、真空乾燥して、コバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子(以下、ニッケル活物質a粒子と称する)を得た。
【0032】
なお、コバルト水酸化物中のアルミニウム量の設定は、水溶液に溶解させるニッケル塩(硫酸ニッケル)とアルミニウム塩(硫酸アルミニウム)の比率を調整して行なった。コバルト水酸化物の被覆量は5重量%であり、コバルト水酸化物の化学組成は、Co0.8Al0.2(OH)(SO)0.1であった。このコバルト水酸化物は、図1のX線回折図が示すように、純粋なα型構造をとっており、アルカリ電解液(6M−KOH水溶液)への溶解速度は、従来のβ型/α型のCo(OH)に比較して大きな値を示した。
【0033】
(3) コバルト酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子の作製:
(2) で得たニッケル活物質a粒子を、次亜塩素酸水溶液で化学酸化処理して、被覆しているコバルト水酸化物を高次のコバルト酸化物であるCo0.8Al0.2OOHに変換させた。即ち、コバルト酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子(以下、ニッケル活物質b粒子と称する)を得た。このニッケル活物質b粒子の導電率は、オキシ水酸化ニッケルよりも高いものであった。
【0034】
[ペースト式正極の作製]
(1) ニッケル活物質a粒子を用いた正極の作製:
ニッケル活物質a粒子80重量部に、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤を溶解した水溶液20重量部を加え、混練してペースト状とし、これを95%のニッケル多孔体基板に充填し、乾燥後にプレスして正極(以下、正極aと称する)を作製した。
【0035】
(2) ニッケル活物質b粒子を用いた正極の作製:
ニッケル活物質a粒子に代えてニッケル活物質b粒子を用い、(1) と同様にして正極(以下、正極bと称する)を作製した。
【0036】
[アルカリ電解液へのコバルトの溶解性]
ニッケル活物質a粒子について、アルカリ電解液中でのコバルトの溶解性を調べた。図2は、コバルト水酸化物中のコバルト/アルミニウムのモル比と、KOH電解液中に一定時間放置した後のコバルト溶解量の相対値との関係を示す。溶解速度は、異種元素(ここではアルミニウム)のドープ量の増加と共に増大し、モル比0.3で最大となり、0.5でも高い値を維持した。一方、ドープ量の増加は、導電性ネットワークの形成に必要なコバルト量の減少を招く。従って、異種元素のドープ量のモル比は0.05〜0.5が好ましい。
【0037】
[活物質利用率]
ニッケル活物質a粒子について、コバルト水酸化物の被覆量と活物質利用率との関係を調べた。図3はその結果を示す。図3からわかるように、被覆量が3重量%以上の場合に、95%以上の高い活物質利用率が得られている。一方、実用的見地から、被覆量を15重量%を超える値とすることは、電池容量を小さくすることとなるので、好ましくない。従って、被覆量は3〜15重量%であるのが好ましい。
【0038】
[アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係]
(1) 正極aについて、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を調べた。一方、β型水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極1と称する)と、一酸化コバルト粉末を混合添加した水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極2と称する)とについても、同様に調べた。
【0039】
図4はその結果を示す。正極aでは、比較電極1,2である従来電極とは異なり、アルカリ電解液への浸漬時間が短時間であっても、高い活物質利用率が得られた。
【0040】
このように、正極aでは、ニッケル活物質a粒子のコバルト水酸化物に、異種元素をドープしているので、コバルト水酸化物にα型構造をとらせることができ、アルカリ電解液への溶解性が向上する。その結果、電池組立後の放置時間が従来よりも大きく短縮されることとなる。
【0041】
(2) 正極bについても、同様に、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を調べたところ、アルカリ電解液への浸漬時間に殆んど依存することなく、高い活物質利用率が得られた。
【0042】
[高温時での充電効率]
ニッケル活物質a粒子のコバルト水酸化物のアルミニウムがイッテルビウムに置換されてなる正極cを作製して、高温40℃での充電効率を調べた。即ち、このニッケル活物質粒子は、化学組成がNi0.95Zn0.05(OH)であるニッケル水酸化物の粒子表面が化学組成がCo0.8Yb0.2(OH)(SO)0.1であるコバルト水酸化物により被覆されてなるものであり、被覆量は5重量%である。
【0043】
一方、上記比較電極2及び酸化イッテルビウム粉末を混合添加した水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極3と称する)についても、同様に調べた。なお、酸化イッテルビウムは、ニッケル電極の充電効率を高める作用を有することが知られている。
【0044】
図5はその結果を示す。図5からわかるように、正極cは、比較電極3と同様に、高温時での充電効率が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、導電性ネットワークの形成を容易なものにできるアルカリ蓄電池用正極活物質を、提供することができるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物のX線回折図である。
【図2】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子に関して、コバルト水酸化物中の異種元素の量とアルカリ電解液中でのコバルトの溶解性との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子に関して、コバルト水酸化物の被覆量と活物質利用率との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子を用いて構成した正極に関して、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態で作製した別の例のコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子を用いて構成した正極に関して、高温時での充電効率を示す図である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル金属水素化物電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池等のアルカリ蓄電池に用いられる正極活物質、及びその製造方法、並びにその正極活物質を用いた正極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池の高エネルギー密度化を図る技術として、近年では、正極であるニッケル電極に、従来の焼結式電極に代えてペースト式(非焼結式)電極を用いることが行なわれている。ペースト式ニッケル電極は、電極基板として95%以上の高多孔体を用いているので、活物質である水酸化ニッケルを従来電極よりも多量に充填でき、その結果、高容量且つ高エネルギー密度を可能とするものである。
【0003】
しかしながら、ペースト式ニッケル電極において、活物質である水酸化ニッケル粒子を単に充填しただけでは、活物質利用率は60%程度しかなく、実用に至らない。そこで、活物質利用率を高めるために、各種の導電付加剤、例えば、ニッケル粉末、黒鉛粉末、コバルト化合物等の添加が行なわれており、中でも、コバルト酸化物の添加が最も効果的であると言われている。
【0004】
しかし、コバルト酸化物の全てが、活物質利用率を高めるための添加剤として有効ではなく、その効果はコバルト酸化物の結晶構造によって大きく左右されることが知られている。例えば、Coには効果が認められないが、Co(OH) 、CoO等のアルカリに可溶なコバルト酸化物には効果が認められている。
【0005】
このような有効なコバルト酸化物の作用機構は、次の通りである。即ち、コバルト酸化物がアルカリ水溶液中に溶解して2価のコバルト錯イオンが生成し、この錯イオンが水酸化ニッケル粒子や集電体の表面に水酸化コバルトとして析出し、析出した水酸化コバルトが初充電過程で導電性のオキシ水酸化コバルト(CoOOH)に変化することによって活物質粒子間及び集電体間を接続する導電性ネットワークが形成され、これによって高い活物質利用率が可能となる。このことからわかるように、高い活物質利用率を得るためには、コバルト酸化物のアルカリ水溶液中での溶解析出過程が重要であり、導電性ネットワークが十分に形成される必要がある。
【0006】
導電性ネットワークを十分に形成するために、従来では、ペースト式ニッケル電極を用いた電池にアルカリ電解液を注液して封口した後に、長時間放置し、その間にコバルト添加剤を溶解・分散させて活物質表面全体に均一に水酸化コバルト層を形成させることが行なわれている。しかし、放置時間が長いため、電池組立の後工程、例えば化成工程等を、円滑に進めることができないという問題があった。
【0007】
そこで、放置時間を短縮するために、水酸化ニッケル粒子の表面に予め水酸化コバルト層を被覆した活物質粒子を作製することが、例えば特開昭62−234867号公報等で提案されている。更に、被覆する水酸化コバルトの結晶構造を変えることによって、アルカリ電解液への溶解性を高めることも行なわれている。例えば、水酸化コバルトの結晶構造を通常のβ型(層間:4.65Å)からα型(層間:〜8Å)とすることによって、溶解過程の促進が図られている。
【0008】
ところで、高濃度アルカリ電解液中では、β型水酸化コバルトは、安定しており、その溶解速度は遅い。これに対し、α型水酸化コバルトは、不安定であり、コバルト錯イオンを経て安定なβ型水酸化コバルトに変化する。それ故、強固な導電性ネットワークの形成には、α型構造のコバルト酸化物が望ましいとされている。しかし、純粋なα型の水酸化コバルトの合成は非常に困難であり、一般にα型と言われている水酸化コバルト粉末は、例えば特開昭62−234867号公報のX線回折図に開示されているように、β型とα型とが共存したものであって、本来の特性が未だ十分に引き出されていないものである。この点が更に改良すべき課題として残されている。
【0009】
一方、添加剤には、上述した導電性の付与を目的としたもの以外にも、ニッケル電極の充電効率の向上のために、希土類元素や2族元素の酸化物等を複合添加することが行なわれている。これらの化合物は、ニッケル電極の酸素発生電位を貴とし、酸素過電圧を増大させて高温時での充電効率を向上させる作用を有することが知られている。
【0010】
しかしながら、このように、目的を別とする複数の添加剤を主活物質である水酸化ニッケル粒子に添加することは、電極基板への活物質の均一な充填を非常に困難としたり、活物質利用率を低下させたりして、製造面及び品質面で安定した生産ができないという問題があった。
【0011】
なお、先行文献としては、特許文献1、2が挙げられる。
【特許文献1】特開平08−102322号公報
【特許文献2】特開平06−275260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点等に鑑みてなされたものであり、ニッケル水酸化物の粒子表面に被覆させるコバルト化合物の組成及び結晶構造を所定のものに設定することにより、導電性ネットワークの形成を容易なものにできる、アルカリ蓄電池用正極活物質を提供すること、及びそのような活物質の製造方法を提供すること、並びにそのような活物質を用いたアルカリ蓄電池用正極を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のアルカリ蓄電池用正極活物質及びその製造方法並びにアルカリ蓄電池用正極は、以下の通りである。但し、その全てにおける化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、Eは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、及びDは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素の価数)−2}×x÷(イオンの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。A及びEの各族に属する元素としては、例えば、イッテルビウム、エルビウム、ランタン、イットリウム、マンガン、鉄、チタン、銅、カルシウム等が、用いられるが、Eには、2A族及び2B族の元素は用いられない。
【0014】
請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質は、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物からなる層が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項1記載の発明においては、ニッケル水酸化物の粒子の表面にコバルト水酸化物からなる層が形成されているので、導電性ネットワークの形成が容易となり、電池組立後の放置時間が短縮される。また、コバルト水酸化物に元素がドープされているので、(i) コバルト水酸化物がα型構造に保持され、コバルト水酸化物のアルカリ電解液への溶解が促進され、導電性ネットワークの形成が更に容易となる、又は(ii)アルカリ電解液の酸化分解反応が抑制され、電極とした場合の高温時での充電効率が向上する。
【0016】
請求項2記載のアルカリ蓄電池用正極活物質は、請求項1記載の構成に加えて、ニッケル水酸化物に対するコバルト水酸化物の割合が、3〜15重量%である。
【0017】
請求項2記載の発明においては、満足できる活物質利用率及び電池容量が得られる。なぜなら、3重量%未満の場合では、導電性ネットワークによる充分な導電性が確保されず、活物質利用率の低下が生じ、15重量%を超える場合では、活物質であるニッケル水酸化物の量が減少し、電池容量が小さくなるからである。
【0018】
請求項3記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法は、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子を反応槽に入れ、コバルトと陰イオンとからなる塩及び元素と陰イオンとからなる塩を含む水溶液を、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中に、pH8〜13に制御しながら滴下して、ニッケル水酸化物の粒子表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物を析出させることを特徴としている。
【0019】
請求項3記載の発明においては、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体が存在しているため、単一結晶構造のコバルト水酸化物が安定して生成される。
【0020】
請求項4記載のアルカリ蓄電池用正極は、ペースト式電極であって、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物からなる層が形成されているニッケル活物質が、多孔性基板に充填されて構成されていることを特徴としている。
【0021】
請求項4記載の発明においては、強固な導電性ネットワークが形成されるので、高容量及び高エネルギー密度が可能となる。
【0022】
請求項4の多孔性基板としては、穿孔鋼板、金属メッシュ、発泡状金属多孔体、繊維状金属多孔体等が、用いられる。
【発明の効果】
【0023】
(1)請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質によれば、ニッケル水酸化物の粒子の表面にα型構造のコバルト水酸化物からなる層を形成しているので、導電性ネットワークの形成を容易なものにでき、従って、電池組立後の放置時間を短縮でき、電池の製造工程の短縮化を図ることができる。
【0024】
また、コバルト水酸化物に元素をドープしているので、(i) コバルト水酸化物のアルカリ電解液への溶解を促進でき、導電性ネットワークの形成を更に容易なものにできる、又は(ii)アルカリ電解液の酸化分解反応を抑制でき、電極とした場合の高温時での充電効率を向上できる。
【0025】
(2)請求項2記載のアルカリ蓄電池用正極活物質によれば、満足できる活物質利用率及び電池容量を得ることができる。
【0026】
(3)請求項3記載のアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法によれば、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体が存在しているため、単一結晶構造のコバルト水酸化物を安定して生成でき、請求項1記載の活物質を確実に得ることができる。
【0027】
(4)請求項4記載のアルカリ蓄電池用正極によれば、高容量及び高エネルギー密度を可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の基本的な実施形態について説明するが、本発明はこれに限るものではない。
【0029】
[ニッケル活物質粒子の作製]
(1) ニッケル水酸化物粒子の作製:
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛とを所定の比率で溶解した水溶液に、硫酸アンモニウムを添加してアンミン金属錯体を生成した後、水酸化ナトリウム水溶液を激しく撹拌しながら且つpH10〜13に制御しながら滴下し、亜鉛を5モル%固溶した球状のニッケル水酸化物粒子を得た。その化学組成は、Ni0.95Zn0.05(OH)であった。
【0030】
(2) コバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子の作製:
(1) で得たニッケル水酸化物粒子を、硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液とでpH8〜13に制御した水溶液中に投入し、これに、硫酸コバルトと硫酸アルミニウムとを所定の比率で混合した水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、撹拌しながら且つpH8〜13に制御しながら滴下した。この際、所定のpHにて10分間〜2時間保持するのが好ましい。
【0031】
次いで、ろ過、水洗、真空乾燥して、コバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子(以下、ニッケル活物質a粒子と称する)を得た。
【0032】
なお、コバルト水酸化物中のアルミニウム量の設定は、水溶液に溶解させるニッケル塩(硫酸ニッケル)とアルミニウム塩(硫酸アルミニウム)の比率を調整して行なった。コバルト水酸化物の被覆量は5重量%であり、コバルト水酸化物の化学組成は、Co0.8Al0.2(OH)(SO)0.1であった。このコバルト水酸化物は、図1のX線回折図が示すように、純粋なα型構造をとっており、アルカリ電解液(6M−KOH水溶液)への溶解速度は、従来のβ型/α型のCo(OH)に比較して大きな値を示した。
【0033】
(3) コバルト酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子の作製:
(2) で得たニッケル活物質a粒子を、次亜塩素酸水溶液で化学酸化処理して、被覆しているコバルト水酸化物を高次のコバルト酸化物であるCo0.8Al0.2OOHに変換させた。即ち、コバルト酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子(以下、ニッケル活物質b粒子と称する)を得た。このニッケル活物質b粒子の導電率は、オキシ水酸化ニッケルよりも高いものであった。
【0034】
[ペースト式正極の作製]
(1) ニッケル活物質a粒子を用いた正極の作製:
ニッケル活物質a粒子80重量部に、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤を溶解した水溶液20重量部を加え、混練してペースト状とし、これを95%のニッケル多孔体基板に充填し、乾燥後にプレスして正極(以下、正極aと称する)を作製した。
【0035】
(2) ニッケル活物質b粒子を用いた正極の作製:
ニッケル活物質a粒子に代えてニッケル活物質b粒子を用い、(1) と同様にして正極(以下、正極bと称する)を作製した。
【0036】
[アルカリ電解液へのコバルトの溶解性]
ニッケル活物質a粒子について、アルカリ電解液中でのコバルトの溶解性を調べた。図2は、コバルト水酸化物中のコバルト/アルミニウムのモル比と、KOH電解液中に一定時間放置した後のコバルト溶解量の相対値との関係を示す。溶解速度は、異種元素(ここではアルミニウム)のドープ量の増加と共に増大し、モル比0.3で最大となり、0.5でも高い値を維持した。一方、ドープ量の増加は、導電性ネットワークの形成に必要なコバルト量の減少を招く。従って、異種元素のドープ量のモル比は0.05〜0.5が好ましい。
【0037】
[活物質利用率]
ニッケル活物質a粒子について、コバルト水酸化物の被覆量と活物質利用率との関係を調べた。図3はその結果を示す。図3からわかるように、被覆量が3重量%以上の場合に、95%以上の高い活物質利用率が得られている。一方、実用的見地から、被覆量を15重量%を超える値とすることは、電池容量を小さくすることとなるので、好ましくない。従って、被覆量は3〜15重量%であるのが好ましい。
【0038】
[アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係]
(1) 正極aについて、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を調べた。一方、β型水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極1と称する)と、一酸化コバルト粉末を混合添加した水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極2と称する)とについても、同様に調べた。
【0039】
図4はその結果を示す。正極aでは、比較電極1,2である従来電極とは異なり、アルカリ電解液への浸漬時間が短時間であっても、高い活物質利用率が得られた。
【0040】
このように、正極aでは、ニッケル活物質a粒子のコバルト水酸化物に、異種元素をドープしているので、コバルト水酸化物にα型構造をとらせることができ、アルカリ電解液への溶解性が向上する。その結果、電池組立後の放置時間が従来よりも大きく短縮されることとなる。
【0041】
(2) 正極bについても、同様に、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を調べたところ、アルカリ電解液への浸漬時間に殆んど依存することなく、高い活物質利用率が得られた。
【0042】
[高温時での充電効率]
ニッケル活物質a粒子のコバルト水酸化物のアルミニウムがイッテルビウムに置換されてなる正極cを作製して、高温40℃での充電効率を調べた。即ち、このニッケル活物質粒子は、化学組成がNi0.95Zn0.05(OH)であるニッケル水酸化物の粒子表面が化学組成がCo0.8Yb0.2(OH)(SO)0.1であるコバルト水酸化物により被覆されてなるものであり、被覆量は5重量%である。
【0043】
一方、上記比較電極2及び酸化イッテルビウム粉末を混合添加した水酸化ニッケル粒子を活物質として用いた正極(比較電極3と称する)についても、同様に調べた。なお、酸化イッテルビウムは、ニッケル電極の充電効率を高める作用を有することが知られている。
【0044】
図5はその結果を示す。図5からわかるように、正極cは、比較電極3と同様に、高温時での充電効率が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、導電性ネットワークの形成を容易なものにできるアルカリ蓄電池用正極活物質を、提供することができるので、産業上の利用価値が大である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物のX線回折図である。
【図2】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子に関して、コバルト水酸化物中の異種元素の量とアルカリ電解液中でのコバルトの溶解性との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子に関して、コバルト水酸化物の被覆量と活物質利用率との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態で作製したコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子を用いて構成した正極に関して、アルカリ電解液中での浸漬時間と活物質利用率との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態で作製した別の例のコバルト水酸化物で被覆されたニッケル水酸化物粒子を用いて構成した正極に関して、高温時での充電効率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物からなる層が形成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質。但し、ニッケル水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、コバルト水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、両水酸化物の上記化学組成式において、Bは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素Aの価数)−2}×x÷(イオンBの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。
【請求項2】
ニッケル水酸化物に対するコバルト水酸化物の割合が、3〜15重量%である請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項3】
化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子を反応槽に入れ、コバルトと陰イオンBとからなる塩及び元素Aと陰イオンBとからなる塩を含む水溶液を、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中に、pH8〜13に制御しながら滴下して、ニッケル水酸化物の粒子表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物を析出させることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。但し、ニッケル水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、コバルト水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、両水酸化物の上記化学組成式において、Bは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素Aの価数)−2}×x÷(イオンBの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。
【請求項4】
ペースト式電極であって、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるコバルト水酸化物からなる層が形成されているニッケル活物質が、多孔性基板に充填されて構成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極。但し、ニッケル水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、コバルト水酸化物の上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、両水酸化物の上記化学組成式において、Bは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素Aの価数)−2}×x÷(イオンBの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物からなる層が形成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質。但し、上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、Eは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、B及びDは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素の価数)−2}×x÷(イオンの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。
【請求項2】
ニッケル水酸化物に対するコバルト水酸化物の割合が、3〜15重量%である請求項1記載のアルカリ蓄電池用正極活物質。
【請求項3】
化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子を反応槽に入れ、コバルトと陰イオンとからなる塩及び元素と陰イオンとからなる塩を含む水溶液を、アンモニア又はアンモニウムイオン供給体とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中に、pH8〜13に制御しながら滴下して、ニッケル水酸化物の粒子表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物を析出させることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極活物質の製造方法。但し、上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、Eは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、B及びDは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素の価数)−2}×x÷(イオンの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。
【請求項4】
ペースト式電極であって、化学組成がNi1−z(OH)であるニッケル水酸化物の粒子の表面に、化学組成がCo1−x(OH)であるα型構造のコバルト水酸化物からなる層が形成されているニッケル活物質が、多孔性基板に充填されて構成されていることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極。但し、上記化学組成式において、Aは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、2A族、2B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、Eは、Co以外の元素であって、周期律表の1B族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、及び8族のいずれかに属する元素、又はホウ素、又はアルミニウムであり、B及びDは、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、及びリン酸イオンのいずれかであり、xは0.05〜0.5であり、yは{(元素の価数)−2}×x÷(イオンの価数)であり、zは0〜0.5であり、wは{(元素Aの価数)−2}×z÷(イオンBの価数)である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−59822(P2006−59822A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299089(P2005−299089)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【分割の表示】特願平8−173407の分割
【原出願日】平成8年7月3日(1996.7.3)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】