説明

アルコール飲料の製造方法および製造装置

【課題】酵母の生理状態の制御により香気を生成するために有利な技術を提供する。
【解決手段】アルコール飲料の製造方法は、容器内で糖を含む原料液体を酵母によって発酵させる工程を含み、前記工程の少なくとも一部において、前記容器内の原料液体の表面の上方の空間である上方空間に対して供給ノズルを通して空気を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料は、糖を含む原料液体を発酵させる工程を経て製造されうる。糖は、例えば、麦(大麦、小麦、ライ麦など)、とうもろこし、米または果実(葡萄など)などの種々の植物原料を糖化させることによって生成されうる。発酵は、糖を含む原料液体(例えば麦汁)に酵母を添加し、該原料液体を適当な温度に制御することによってなされうる。
【0003】
例えば、モルトウイスキーの製造を例として説明すると、原料液体である麦汁に対して酵母を添加することによって該麦汁を発酵させることができる。モルトウイスキーの製造における発酵工程は比較的高い温度で実施され、発酵によって炭酸ガスが大量に発生しうる。通常の発酵期間は、2〜5日であるが、発酵の開始から36時間程度が経過する前では、盛んに発酵が起こり、原料液体の中はもちろんのこと、発酵容器内における原料液体の上方空間(原料液体の表面よりも上方の空間)は、ほとんど無酸素状態が続く。
【0004】
酵母を付活する目的で原料液体をエアーレーションする方法が知られている。これに関連する文献として特許文献1を挙げることができる。特許文献1は、麦汁に酵母を添加して発酵させる発酵麦芽飲料の製造方法に関するものであり、同文献には、発酵タンクへ酵母を添加した直後の発酵時に一定時間の通気を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−102458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原料液体をエアーレーションする方法は、原料液中に直接に空気を送り込む方法であり、空気の供給タイミングや供給量を厳密に管理しないかぎり、エステルの生成が妨げられたり、生成成分が酸化により劣化したり、生成されたアルコールや香気の揮発が促進されたり、過度に強烈な発泡が起こるなどといった負の作用を招くことが多い。
【0007】
本発明は、酵母の生理状態の制御により、例えばγデカラクトン、γドデカラクトンなどの香気成分を生成するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、アルコール飲料の製造方法に係り、該製造方法は、容器内で糖を含む原料液体を酵母によって発酵させる工程を含み、前記工程の少なくとも一部において、前記容器内の原料液体の表面の上方の空間である上方空間に対して供給ノズルを通して空気を供給する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の側面は、アルコール飲料の製造装置に係り、該製造装置は、糖を含む原料液体を酵母によって発酵させるための容器と、該原料液体を発酵させる工程の少なくとも一部において前記容器内の原料液体の表面の上方の空間である上方空間に対して空気を供給する供給ノズルとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酵母の生理状態の制御により香気成分を生成するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な実施形態のアルコール飲料の製造装置の構成を概略的に示す断面図。
【図2】本発明の他の好適な実施形態のアルコール飲料の製造装置の構成を概略的に示す断面図。
【図3】実施例1の結果を示す図。
【図4】実施例2の結果を示す図。
【図5】実施例3の結果を示す図。
【図6】実施例4の結果を示す図。
【図7】実施例5の結果を示す図。
【図8】実施例6の結果を示す図。
【図9】実施例6の結果を示す図。
【図10】実施例7の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の好適な実施形態の製造装置1の構成を概略的に示す断面図である。製造装置1は、アルコール飲料を製造するための製造装置として、より具体的には、アルコール飲料を製造するための発酵装置として構成されている。ここで、アルコール飲料は、アルコールを含む飲料であり、例えば、ウイスキー、ブランデー、ラム、焼酎などの蒸留酒、又は、ビール、発泡酒、ワイン、シェリー、清酒などの醸造酒などでありうる。
【0014】
製造装置1は、糖を含む原料液体100を収容し、それを酵母によって発酵させるための容器10と、容器10内の原料液体100の表面(液面)102の上方空間12に対して空気(酸素)を供給する供給ノズル20とを備えている。ここで、上方空間12は、原料液体100の表面102よりも上方の空間であって、少なくとも側部が容器10によって取り囲まれている空間である。容器10は、上部に開口部18を有していてもよいし、開口部18を有していなくてもよい。供給ノズル20は、空気の吹き出し部分22を含み、吹き出し部分22は、典型的には、容器10内の原料液体100の表面102と容器10の上端との間に位置する。供給ノズル20には、空気供給部30が接続されていて、空気供給部30が空気を供給ノズル20に供給することによって供給ノズル20から上方空間12に空気が供給される。
【0015】
原料液体100に含まれる糖は、例えば、麦(大麦、小麦、ライ麦など)、とうもろこし、米または果実(葡萄など)の種々の植物原料を糖化させることによって生成されうる。発酵は、糖を含む原料液体(例えば麦汁)100に酵母を添加し、該原料液体100を適当な温度に制御することによってなされうる。原料液体100の酵母による発酵を通して炭酸ガス112が生成される。炭酸ガス112は、原料液体100の表面102に向かって移動し、該表面102上に炭酸ガス112の泡110が形成されうる。炭酸ガス112が原料液体100の表面102に向かって移動する際に酵母も一緒に移動して該表面102に到達しうる。吹き出し部分22は、原料液体100の表面102の上方空間12における泡110の上の空間に配置されてもよいし、原料液体100の表面102の上方空間12における泡110の中の空間に配置されてもよい。
【0016】
この実施形態のアルコール飲料の製造方法では、原料液体100の発酵工程の少なくとも一部において、原料液体100の表面102の上方空間12に対して供給ノズル20から空気が供給される。一方、この発酵工程は、原料液体100中には空気を直接に供給することなく、換言すると、容器10内の原料液体100の表面102と容器10の底面14との間の領域16に対して直接に空気を供給することなく実施されることが好ましい。ただし、本発明は、上方空間12に供給される空気よりも十分に少ない量の空気を原料液体100中に供給することを排除するものではない。
【0017】
このような発酵工程では、原料液体100中の酵母は、無酸素状態あるいは低酸素状態に維持され、この酵母は、フレッシュな還元型香気の生成に寄与しうる。一方で、炭酸ガス112とともに原料液体100の表面102に浮上した酵母は、そこで空気(酸素)を得ることによって賦活される。よって、原料液体100の表面102に浮上して酸素を得た酵母は、酸化型香気の生成に寄与しうる。より具体的には、酸素を得た酵母の状態が糖代謝から脂質代謝β酸化フェーズに移行することで、ラクトン類の生成およびそれに付随する香気の生成が促される。酸素を得た酵母には、原料液体100の表面102または表面102付近に留まるものや、原料液体100の中に戻るものがありうる。酸素を得た酵母は、酸素リッチとなることによってその寿命が延びて、酸素を利用した代謝が可能になる。
【0018】
上方空間12に対する空気(酸素)の供給は、図1に例示されるように供給ノズル20の吹き出し部22から水平方向(即ち、原料液体100の表面102に沿った方向)に空気を吹き出すことによってなされうる。あるいは、図2に例示されるように、供給ノズル20の吹き出し部22から原料液体100の表面102に向かう方向に空気を吹き出してもよい。この場合において、水平面と空気の吹き出し方向とがなす角度αは、任意に定められうる。供給ノズル20の吹き出し部22は、種々の構成を有しうる。供給ノズル20の吹き出し部22は、例えば、空気を放射状に吹き出すように放射状に配置された複数の吹き出し流路を備えてもよいし、単一の吹き出し流路を備えてもよいし、シャワーヘッド状の複数の吹き出し口を備えてもよい。
【0019】
上方空間12に対する空気(酸素)の供給は、容器10内の原料液体100の表面102の上に泡110が存在する状態でなされうる。ここで、該表面102の上に泡110が存在する状態は、発酵によって原料液体100中で発生した炭酸ガス112が原料液体100の表面102に向かって移動し、この際に炭酸ガス112とともに酵母が浮上しうる状態である。
【0020】
以下、本発明のより具体的な実施例を説明する。なお、以下の実施例は、原料液体100として麦芽を使用した例である。
【0021】
(実施例1)
1L(Lはリットルを意味する)のガラス容器10にSG(Specific Gravity)=1.055に調整された500mLの麦汁(原料液体)100を入れ、それにプレス酵母0.4%を添加して5日間にわたって醗酵させた。
【0022】
図3に実施例1の結果が示されている。サンプル1は、比較例であり、ガラス容器10内の上方空間12に対して空気を供給しなかったサンプルである。サンプル2は、醗酵工程の開始からその3日後までの期間にわたって、ガラス容器10内の上方空間12に対して、上方空間12の容積に対して0.25VVM(Volume per Volume per minute)の空気を供給ノズル20から供給した実施例であり、供給ノズル20の吹き出し部22の位置は、泡110の上の高さとし、吹き出し方向は、斜め方向とした。醗酵工程の終了後、300mLのモロミをガラス蒸留器で蒸留し、100mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)によって分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0023】
サンプル1(比較例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンと比較してサンプル2(実施例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度が高いことが分かる。
【0024】
(実施例2)
1Lのガラス容器10にSG=1.055に調整された500mLの麦汁100を入れ、それにプレス酵母を添加して4日間にわたって醗酵させた。図4に実施例2の結果が示されている。醗酵工程の終了後、300mLのモロミをガラス蒸留器で蒸留し、100mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MSによって分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0025】
サンプル1は、プレス酵母を0.4%添加したものであり、サンプル2〜4は、プレス酵母を0.3%添加したものである。サンプル1、2は、醗酵工程の開始からその3日後までの期間にわたって、ガラス容器10内の上方空間12に対して、上方空間12の容積に対して0.25VVMの空気を供給ノズル20から供給した実施例であり、供給ノズル20の吹き出し部22の位置は、泡110の上の高さとし、吹き出し方向は、斜め方向とした。サンプル3は、ガラス容器10外の空気の影響がないように容器10のヘッドスペースの空気を炭酸ガスで置換した後、上方空間12に空気を供給せずに発酵工程を実施した比較例である。サンプル4は、麦汁100にシリコンを入れて泡の発生を抑え、かつ、ガラス容器10外の空気の影響がないように容器10のヘッドスペースの空気を炭酸ガスで置換した後、上方空間12に空気を供給せずに発酵工程を実施した比較例である。
【0026】
サンプル3、4(比較例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンと比較してサンプル1、2(実施例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度が高いことが分かる。
【0027】
(実施例3)
200Lのステンレスタンク10にSG=1.055に調整された100Lの麦汁100を入れ、それにプレス酵母を添加して3日間にわたって醗酵させた。図5に実施例3の結果が示されている。サンプル1は、比較例であり、ステンレスタンク10内の上方空間12に対して空気を供給しなかった比較例である。サンプル2は、醗酵工程の開始の20時間後から24時間にわたって、ステンレスタンク10内の上方空間12に対して、上方空間12の容積に対して0.04VVMの空気を供給ノズル20から供給した実施例であり、供給ノズル20の吹き出し部22の位置は、麦汁100の表面102から5cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向は、斜め方向とした。醗酵工程の終了後、4000mLのモロミを5L容量のステンレス蒸留器で蒸留し、1215mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MSによって分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0028】
サンプル1(比較例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンと比較してサンプル2(実施例)におけるγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度が高いことが分かる。
【0029】
(実施例4)
10Lのプラスチック容器10にSG=1.055に調整された4Lの麦汁100を入れ、それにプレス酵母を添加して5日間にわたって醗酵させた。図6に実施例4の結果が示されている。醗酵工程の終了後、300mLのモロミを500mL容量のガラス蒸留器で蒸留し、100mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MSによって分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0030】
プレス酵母を0.3%添加して発酵を開始した後、サンプル1は醗酵開始の8時間後から24時間、サンプル2は醗酵開始の8時間後から39時間、サンプル3は醗酵開始の20時間後から11時間、サンプル4は醗酵開始の20時間後から26時間にわたって、プラスチック容器10内の上方空間12に対して、上方空間12の容積に対して0.04VVMの空気を供給ノズル20から供給した実施例である。ここで、供給ノズル20の吹き出し部22の位置を原料液体100の表面(液面)102から3cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向を水平方向とした。
【0031】
実施例4より、生成されるγデカラクトンおよびγドデカラクトンの量は、上方空間12に対する空気(酸素)の供給を発酵工程の全体期間のうちのどの期間において行うか、および、空気の供給時間の長さ、に対して鈍感であることがわかる。
【0032】
(実施例5)
200Lのステンレスタンク10にSG=1.055に調整された100Lの麦汁100を入れ、それにプレス酵母を添加して3日間にわたって醗酵させた。図7に実施例5の結果が示されている。醗酵工程の終了後に4000mLのモロミを5L容量のステンレス蒸留器で蒸留し、1215mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MSで分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0033】
サンプル1は、比較例であり、ステンレスタンク10内の上方空間12に対して空気を供給しなかったサンプルである。サンプル2、3、4は、プレス酵母0.4%を添加して発酵を開始し、醗酵開始後から48時間にわたってステンレスタンク10内の上方空間(液面から高さ50cmまでの空間)12に対して、上方空間12の容積に対して0.016VVM、0.04VVM、0.24VVMの空気を供給ノズル20から供給した実施例である。ここで、供給ノズル20の吹き出し部22の位置は、原料液体100の表面(液面)102から5cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向は、水平方向とした。
【0034】
(実施例6)
10Lのプラスチック容器10にSG=1.055に調整された4Lの麦汁100を入れ、それに酵母を添加して2日間にわたって醗酵させた。図8、図9に実施例6の結果が示されている。醗酵工程の終了後、300mLのモロミを500mL容量のガラス蒸留器で蒸留し、100mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、100倍に濃縮したものをGC−MSで分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。また、初溜液75mLをガラス蒸留器で再度蒸留して25mLの再溜液を得た。この再溜液をGLC分析して各エステル、アルデヒドの分析をした。
【0035】
サンプル1〜2では、プレス酵母を0.3%添加して発酵を開始し、醗酵開始の20時間後から24時間にわたって上方空間12に対して供給ノズル20から空気を供給した。ここで、サンプル1では、供給ノズル20の吹き出し部22の位置を麦汁100の表面(液面)102から2cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向を水平方向とし、供給量を上方空間12の容積に対して0.04VVMとした。サンプル2では、吹き出し部22の位置を麦汁100の表面(液面)102から2cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向を液面に向かう垂直方向とし、供給量を上方空間12の容積に対して0.04VVMとした。サンプル3では、吹き出し部22の位置を麦汁100の表面(液面)102から18cmの高さで、泡110の上とし、吹き出し方向を液面に向かう垂直方向とし、供給量を上方空間12の容積に対して0.04VVMとした。一方、サンプル4は、比較例であり、サンプル4では、プラスチック容器10の底に供給ノズルを配置し、これを通して、原料液体100の体積に対して1VVMの空気を供給(バブリング)した。
【0036】
供給ノズル20の位置と空気の吹き出し方向に関係なくラクトンが生成されることが確認された。また、麦汁100の液中への空気の供給でもラクトンが生成されることが確認された。しかし、上方空間12に空気を供給する場合と異なり、液中に空気を供給する場合は、良好な香気であるEthyl.caproateやiso−AmylacetateやEthyl.acetateが著しく減少し、悪臭であるAceto−Aldehydeが著しく増加して酒質を劣化させることが確認された。
【0037】
(実施例7)
10Lのプラスチック容器10にSG=1.055に調整された4Lの麦汁100を入れ、それに酵母を添加して2日間にわたって醗酵させた。図10に実施例7の結果が示されている。醗酵工程の終了後、300mLのモロミを500mL容量のガラス蒸留器で蒸留し、100mLの留出液を得た。この初溜留出液20mLを定法で固相カラムによりジクロロメタン抽出し、これを100倍に濃縮したものをGC−MSで分析して、サンプル間でγデカラクトンおよびγドデカラクトンの濃度を比較した。
【0038】
サンプル1は、比較例であり、サンプル1では、プラスチック容器10に蓋をして密閉系とし、空気の供給は行わなかった。発酵によって発生した炭酸ガスは、弁を通して抜けるようにした。サンプル2〜5では、プレス酵母を0.3%添加して発酵を開始し、醗酵開始の20時間後から24時間にわたって上方空間12に対して供給ノズル20から空気を供給した。サンプル2から5では、供給ノズル20の吹き出し部22の位置を麦汁100の表面(液面)102から2cmの高さで、泡110の中とし、吹き出し方向を水平方向とした。供給量は、サンプル2では、上方空間12の容積に対して0.004VVMとし、サンプル3では、上方空間12の容積に対して0.01VVMとし、サンプル4では、上方空間12の容積に対して0.04VVMとし、サンプル5では、上方空間12の容積に対して1.0VVMとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料の製造方法であって、
容器内で糖を含む原料液体を酵母によって発酵させる工程を含み、前記工程の少なくとも一部において、前記容器内の原料液体の表面の上方の空間である上方空間に対して供給ノズルを通して空気を供給する、
ことを特徴とするアルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
前記工程は、前記容器内の原料液体の前記表面と前記容器の底面との間の領域に対して直接に空気を供給することなく実施される、
ことを特徴とする請求項1に記載のアルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
前記工程では、前記容器内の原料液体の前記表面に発酵による泡が存在する状態で前記上方空間に対して前記供給ノズルを通して空気が供給される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
原料液体として麦汁を使用する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
前記供給ノズルにおける空気の吹き出し部分は、前記容器内の原料液体の前記表面と前記容器の上端との間に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
前記容器は、上部に開口部を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のアルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
アルコール飲料の製造装置であって、
糖を含む原料液体を酵母によって発酵させるための容器と、
該原料液体を発酵させる工程の少なくとも一部において前記容器内の原料液体の表面の上方の空間である上方空間に対して空気を供給する供給ノズルと、
を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項8】
前記供給ノズルにおける空気の吹き出し部分は、前記容器内の原料液体の前記表面と前記容器の上端との間に位置する、
ことを特徴とする請求項7に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−239391(P2012−239391A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109573(P2011−109573)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000110918)ニッカウヰスキー株式会社 (21)
【Fターム(参考)】