説明

アルミノキサン類の製造方法

【課題】 水をヒドロカルビルアルミニウム化合物および/またはアルミノキサンが有機溶媒に入っている溶媒溶液に添加することによってアルミノキサン組成物を製造する方法の改良が要望された。
【解決手段】 この課題は、水を溶媒の流れで取り巻かれているオリフィスに通して供給して該溶媒の流れで上記水を上記ヒドロカルビルアルミニウムおよび/またはアルミノキサンが入っている溶媒溶液の中に運び込むことから成る方法によって解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転を有意な収量損失なしに行うことを可能にする新規な費用効果的方法を用いてアルキルアルミノキサン類(alkylaluminoxanes)を製造することに関する。より具体的には、本発明は、自由水をヒドロカルビルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウムなどに添加することを通してアルミノキサン類を製造する改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミノキサン類は重合用およびオリゴマー化用触媒の調製で用いられる成分として商業的に重要である。それらの調製はアルミニウムアルキル類、例えばトリメチルアルミニウムなどの管理した加水分解で行われている。この加水分解を結晶性塩の水化物、例えば硫酸銅の五水化物などを用いて行うことも可能であるが、そのようなアプローチでは、結果として、触媒毒として作用し得る金属残渣が生成物内に少量存在し得る。このように、アルミニウムアルキルの管理した加水分解を炭化水素媒体中で行おうとする場合には水自身を用いたアプローチの方が好適な一般的アプローチであることが確かめられている。
【0003】
そのように水を加水分解剤として用いて管理した加水分解を実施する方法に対してかなりの努力が長年に渡って捧げられてきた。例えば、特許文献1には、トリアルキルアルミニウムと制限された量の水を反応させることで生じさせた化合物はエピクロロヒドリンおよび他のオキシラン類の重合で触媒活性を示すことが報告されている。その直ぐ後、Manyik他は、特許文献2で、ヒドロカルビルアルミニウム化合物、例えばトリイソブチルアルミニウムなどと0.85−1.05モルの水を反応させることで生じさせたアルミノキサン類を一不飽和アルファ−オレフィン類、例えばエチレンおよびプロピレンなどの重合で用いられる特定の遷移金属化合物と一緒に共触媒として用いることを報告した。また、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液に等モル量の水を加えることによってイソブチルアルミノキサンの製造も行われた。
【0004】
特許文献3には、炭化水素を水の中に通すことで湿った炭化水素を生じさせてその湿った炭化水素とアルキルアルミニウム/炭化水素溶液を導管内で混合することでアルキル−アルミノキサンを生じさせることが記述されている。Manyik他は、1997年に出版された非特許文献1に、特定のクロム化合物とある程度加水分解を受けさせたトリイソブチルアルミニウムから調製した触媒を用いた研究を言及している。
【0005】
特許文献4には、超音波浴を用いて水をトルエン中に分散させることで分散液を生じさせた後この分散液にトリメチルアルミニウムのトルエン溶液を加えることによるメチルアルミノキサン製造が示されている。特許文献5は、上記水分散液を生じさせる時に高いせん断を誘発する高速羽根を用いる以外は同様である。
【0006】
特許文献6にはアルミノキサン製造方法が記述されており、そこでは、ヒドロカルビルアルミニウムが入っている溶液の表面の下に水をこの水を上記炭化水素溶液内に即座に分散させる働きをする撹拌機の近くに導入している。
【0007】
特許文献7にもアルミノキサン製造方法が記述されており、そこでは、水を溶媒内に分散させる目的でスタティックミキサー(static mixer)が用いられており、そこではその後、その水分散液をT字型反応槽に入っているヒドロカルビルアルミニウム溶液に衝突させている。次に、その溶液を、反応を完成させる容器[この中で撹拌を行い、この容器に冷却手段、例えば熱交換器などを外部のポンプアラウンドループ(pump
−around loop)内に備えることも可能である]に移すことが行われている。
【0008】
特許文献8には、水とアルミニウム原子のモル比が0.4−1:1になるようにアルミニウムアルキルの炭化水素溶液を反応ゾーンに供給しかつ水が不活性溶媒に0.5−10重量パーセント入っているエマルジョンを上記反応ゾーンに供給しそして反応ゾーン内の液体レベルが一定に維持されるようにそこから反応混合物を取り出すことによるアルミノキサン製造が記述されている。反応ゾーン内の平均滞留時間が約1時間のみになるように供給を管理している。
【0009】
特許文献9には、湿った不活性ガスをカラムの中に上方に向かって向流で通しながらアルミニウムアルキルが不活性溶媒に入っている溶液の薄い降下膜をカラム内に形成させることによるアルミノキサン製造が開示されている。
【0010】
特許文献10には、ヒドロカルビルアルミニウム化合物が液状炭化水素に入っている冷(−80℃から−10℃)溶液を強力に撹拌しながら液面の上の自由空間の中に水を導入することが教示されている。
【0011】
特許文献11および特許文献12にはトリアルキルアルミニウムが入っている有機溶媒を噴霧水に接触させることでアルミノキサンを製造することが教示されている。前以て生じさせておいたアルミノキサンを反応調節剤として上記溶液の中に入れておいてもよい。
【0012】
特許文献13および特許文献14にはそれぞれジェットループ型反応槽およびローター/ステーター(rotor/stator)機を用いて水をトリアルキルアルミニウム溶液に注入して水とトリアルキルアルミニウムを混合することを通してアルミノキサンを製造するバッチ式方法が記述されている。
【0013】
また、特許文献15、特許文献16および特許文献17にも特定の有機アルミニウム化合物と水を相互作用させる方法が記述されている。
【0014】
このように試験および研究が非常に広範に行われたにも拘らず、有意な収量損失なしに濃アルミノキサン溶液を製造することを可能にする実用的で商業的に実施可能な工程技術、特にバッチ式および連続式両方の運転に適用可能な工程技術が要求されている。本発明は前記要求を非常に有効な様式で満足させるものであると考えている。
【0015】
アルミノキサン類の製造で自由水をヒドロカルビルアルミニウムが入っている溶媒溶液に直接添加することに伴う問題は、水を搬送する装置のオリフィスに詰まりが生じる点である。これは、ヒドロカルビルアルミニウムの過剰な酸化が局所的に起こって不溶な生成物が生じることが原因であり、これは水が溶媒に入っている溶液または分散液を用いた時にも起こり得る。このように詰まりの問題が生じると、オリフィスを定期的に奇麗にする必要があり、それによって、アルミノキサン製造工程が中断する。また、このような詰まり問題を軽減するか或はなくす方法も見い出した。
【0016】
【特許文献1】米国特許第3,219,591号
【特許文献2】米国特許第3,242,099号
【特許文献3】米国特許第3,300,458号
【特許文献4】米国特許第4,730,071号
【特許文献5】米国特許第4,730,072号
【特許文献6】米国特許第4,772,736号
【特許文献7】米国特許第4,908,463号
【特許文献8】米国特許第4,924,018号
【特許文献9】米国特許第4,937,363号
【特許文献10】米国特許第4,968,827号
【特許文献11】米国特許第5,041,585号
【特許文献12】米国特許第5,206,401号
【特許文献13】米国特許第5,403,942号
【特許文献14】米国特許第5,427,992号
【特許文献15】米国特許第4,960,878号
【特許文献16】米国特許第5,041,584号
【特許文献17】米国特許第5,086,024号
【非特許文献1】Journal of Catalysis、47巻、197〜209頁
【発明の要約】
【0017】
本発明は、ヒドロカルビルアルミノキサンを生じさせる時に水、ヒドロカルビルアルミニウムおよび有機溶媒を用いる方法に適用可能であり、そのような方法の改良を構成するものである。本発明に従い、反応槽に供給する上記材料の供給を希釈反応生成物混合物が生じるように管理し、そして次にそれを処理することで、少なくとも2種類の生成物混合物[これの1つは、本質的に有機溶媒に溶解しているヒドロカルビルアルミニウムから成り、そしてもう1つは、有機アルミニウム化合物(即ちヒドロカルビルアルミニウムとヒドロカルビルアルミノキサンから本質的に成る混合物)が有機溶媒に入っている濃縮溶液(この中に入っているアルミノキサンの量はヒドロカルビルアルミニウムの量よりずっと多い)である]を生じさせる。本明細書で用いる如き用語「ヒドロカルビルアルミニウム」は「アルミノキサン」とも「ヒドロカルビルアルミノキサン」とも異なり、それらを包含しない。
【0018】
本発明の1つの態様に従う改良は、(a)ヒドロカルビルアルミニウム、有機溶媒および水を反応槽にアルミニウムがヒドロカルビルアルミニウムおよびヒドロカルビルアルミノキサンとして0.5から15重量%の範囲で入っている溶液が生じる温度条件および比率で供給するが、ここで、該溶液に入っているヒドロカルビルアルミニウムの量がこの溶液に入っているアルミニウム1モル部当たり0.1から0.9モル部の範囲になるようにし、そして(b)該溶液をアルミニウムが有機溶媒に溶解しているヒドロカルビルアルミニウムとして本質的に0.5から15重量%入っている第一部分とアルミニウムがヒドロカルビルアルミニウムおよびヒドロカルビルアルミノキサンとして全体で本質的に3から20重量%入っている第二部分に分離するが、ここで、上記第二部分の溶液に入っているヒドロカルビルアルミニウムの量がアルミニウム1モル部当たり0.03から0.3モル部のみの範囲になるようにすることを含む。上記第二部分に溶解しているアルミニウムの残りの実質的に全部をヒドロカルビルアルミノキサンで構成させる。好適な態様では、上記第一部分を上記反応槽に再循環させる。
【0019】
特に好適な態様では、上記方法を連続原理で実施し、特に上記第一部分を上記反応槽に連続的に再循環させる運転で実施する。上記方法を連続原理で実施する時には、反応を連続ループ型(loop)反応槽またはポンプアラウンド装置、例えば米国特許第5,599,964号に記述されている装置などを用いて実施するのが非常に望ましいが、必ずしも必須ではない。また、必ずしも必須ではないが、そこに記述されている水供給様式または注入様式を利用するのも有利である。
【0020】
必須ではないが、水を溶媒の流れで取り巻かれているオリフィスに通して供給して上記溶媒の流れで上記水をヒドロカルビルアルミニウムおよび/またはアルミノキサンが入っている溶媒溶液の中に運び込むことを通して水を上記溶媒溶液に添加することでアルミノキサン組成物を製造するのが有利である。従って、本発明は、また、水をヒドロカルビル
アルミニウム化合物および/またはアルミノキサンが有機溶媒に入っている溶媒溶液に添加してアルミノキサン組成物を製造する改良方法も提供し、ここでの改良は、水を溶媒の流れで取り巻かれているオリフィスに通して供給して上記溶媒の流れで上記水を上記ヒドロカルビルアルミニウムおよび/またはアルミノキサンが入っている溶媒溶液の中に運び込むことを含む。
【0021】
以下に行う説明および添付請求の範囲から本発明の上記および他の態様が更に明らかになるであろう。
【0022】
図1から5に示す同様な番号はいくつかの図の中に示す同様な構成要素を表し、これらの図は説明の目的で示すものであり、このように、バルブ、モーター、ホールドアップタンク、フィルター、追加的ポンプなどを図の中に示さない意味で簡潔にした図である。このような詳細は本発明の理解にとって不必要であり、充分に確立された化学工学原理に従って所望に応じてそれらを与えることができる。
【発明のさらなる説明】
【0023】
ヒドロカルビルアルミノキサン類は線状、環状、篭形またはポリマー構造形態で存在している可能性があり、最も簡単な化合物はテトラアルキルアルミノキサン、例えばテトラメチルアルミノキサン[(CHAlOAl(CH]またはテトラエチルアルミノキサン[(CAlOAl(C]などである。オレフィン重合の触媒として用いるに好適な化合物はオリゴマーであり、これは通常、繰り返し単位:



−(Al−O)−

[ここで、RはC−Cアルキル、好適にはメチルである]
を4から20個含む。アルミノキサン類の正確な構造は限定されておらず、それらは線状、環状、篭形および/または架橋種を含み得る。メチルアルミノキサン(MAO)類が有機溶媒中で示す溶解度は、通常、高級アルキルアルミノキサンが示す溶解度に比べて低く、メチルアルミノキサンが入っている溶液は、粒子および凝集物が分離することが原因で曇るか或はゼラチン状になる傾向がある。このメチルアルミノキサンが示す溶解度を向上させる目的で、トリメチルアルミニウムと50モルパーセント以下の量のCからC20アルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムまたはトリアリールアルミニウムなどの混合物に加水分解を受けさせることなどで高級アルキル基、例えばCからC20アルキル基などをそれに含めることも可能である。また、MAOの活性、安定性および/または溶解性を更に向上させる目的で、このMAO類に、アミン類、アルコール類、エーテル類、エステル類、燐酸、カルボン酸、チオール類、アルキルジシロキサン類およびアリールジシロキサン類などから派生する部分をアルミニウムを基準にして20モルパーセント以下の量で含めることも可能である。本文脈で使用に関して具体的に(例えば本明細書の以下に示す実施例で)記述する具体的な材料によって特に示さない限り、そのような修飾型およびメチル−高級アルキルまたはアリール混合型アルミノキサン類も本明細書で用いる如き用語「メチルアルミノキサン」に包含される。
【0024】
水と反応してアルミノキサンを生じ得る如何なるヒドロカルビルアルミニウム化合物も化合物混合物も使用可能である。それには例えばトリアルキルアルミニウム、トリアルケニルアルミニウム、トリアリールアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、トリアラルキルアルミニウム、アルキルアリール混合アルミニウムまたは水素化ジアルキルア
ルミニウムなどが含まれる。
【0025】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物はアルキルアルミニウム化合物、特にトリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどである。これらの中でトリ−C1−4−アルキルアルミニウム化合物がより好適である。
【0026】
本質的にヒドロカルビルアルミニウム化合物(類)と溶媒から成る溶液を分離して再循環させる時にそれと一緒にまたアルミノキサンも少量再循環され得るが、その量は少なければ少ないほど良好であることは理解されるであろう。従って、本発明の方法は、水をヒドロカルビルアルミニウム化合物に添加することばかりでなく水をアルミノキサンとヒドロカルビルアルミニウム化合物の混合物に添加することも同様に包含する。
【0027】
この反応を不活性な溶媒中で実施する。不活性な如何なる溶媒も使用可能である。好適な溶媒は脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素である。芳香族炭化水素がより好適である。その例にはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレンなどが含まれる。最も好適な溶媒はトルエンである。
【0028】
この反応に添加する水は混ぜものなしそして/または上記溶媒に溶解または分散させて添加可能である。ヒドロカルビルアルミニウム化合物が水1モル当たり0.5から8.0モルになるような比率でこの反応体を一緒にする。メチルアルミノキサン類を製造しようとする時には、上記比率を好適にはトリメチルアルミニウムが水1モル当たり1.3から6.0モル、より好適には2.0から4.0または5.0モルになるような比率にする。
【0029】
適切な反応温度は−70から100℃の範囲であり、好適な範囲は−50から50℃である。より好適な範囲は−20から20℃である。
【0030】
以下に示す実施例で本発明の方法を実施する好適な手順を説明する。本実施例に示すパーセントは全部重量パーセントであり、そしてそれらの大部分はベンチスケールの試験に由来するコンピューターシミュレーションを基にしていることから近似値である。本実施例は運転の実施で考えられる現在最も良好な様式を例示する目的で示すものであることは明らかに理解されるであろう。それらは本発明を本実施例に挙げる具体的な詳細に限定することを意図するものでなく、制限として解釈されるべきでない。
【実施例1】
【0031】
連続ループ型反応槽系、例えば本明細書の図1に示す如き反応槽系[これは本質的に反応槽70、ポンプ72、クーラー30およびライン10、34、36および38で構成されている](また、共通所有の米国特許第5,599,964号も参照)に、ライン10を通して、トルエン中3.8重量%のトリメチルアルミニウム(TMA)を718kg/時、トルエンを13kg/時および水を1.36kg/時で連続的に仕込む。これによってアルミニウムに対する水の比率は0.2になる。この反応混合物をクーラー30による循環で約2℃の温度に維持する。脱気装置40で脱気を受けさせた後の反応生成物はトルエンが約96.3重量%でTMAが約3.0重量%でメチルアルミノキサン(MAO)が約0.7重量%で、約730kg/時である。この系内に取り付けた10ミクロンのフィルター(示していない)には本質的に固体が全く検出されず、従ってこのような反応条件にするとアルミニウムが固体として失われることはない。蒸留装置50を105mmHg下55℃で運転する連続瞬間蒸発(flash)により、(a)TMAが約3.0重量%とトルエンが約97重量%入っている溶液が約712kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)MAOが約27%とTMAが約3%とトルエ
ンが約70%入っている生成物溶液が約18kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。装置50に送られる供給材料の温度をヒーター48で上昇させ、このようにして装置50の運転で用いる熱をヒーター48で供給する。ライン24内でその凝縮した塔頂留出物に100%TMAを6kg/時で加える(ライン26に通して)ことで、TMAフィードレート(feed rate)を再び生じさせて、それを上記ループ型反応槽系に再循環させる。
【実施例2】
【0032】
この場合には図2に示した如き流れ図式を用いる。これは、追加的溶媒を用いた希釈による濃度調整が可能なように、ライン22を通る塔底液をブレンド用タンク52に向かわせる以外は図1に示した構造配置と本質的に同じである。従って、この場合には反応槽70にトルエン中6.0重量%のTMAを454.5kg/時、トルエンを8.4kg/時および水を1.36kg/時で連続的に仕込む。これによってアルミニウムに対する水の比率は0.2になる。この連続ループ型反応槽系に入っている反応混合物を約2℃の温度に維持する。脱気装置40で脱気を受けさせた後の反応生成物はトルエンが約94%でTMAが約5%でMAOが約1%で、約462kg/時である。この系内に取り付けた10ミクロンのフィルター(示していない)には本質的に固体が全く検出されない。従って、このような反応条件にするとアルミニウムが固体として失われることはない。装置50を105mmHg下55℃で運転する連続瞬間蒸発により、(a)TMAが約4.7%でトルエンが約95.3%の混合物が約448kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)MAOが約35.8%とTMAが約4.5%とトルエンが約59.7%入っている溶液が約13.5kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。上記塔頂留出物をコンデンサ54で液化させて、ループ型反応槽系またはセクション[反応槽70、ポンプ72、クーラー30およびライン10、34、36および38(これらは全部実施例1に示したのと同様)で構成されている]に再循環させる。タンク52に入っている塔底液にトルエンをライン32に通して約4.3kg/時で加えることにより、MAOを約27%とTMAを約3%とトルエンを約70%含む所望生成物濃縮物が約18kg/時で得られる。ライン24内でその凝縮した塔頂留出物に100%TMAを6kg/時で加える(ライン26に通して)ことで、TMAフィードレートを再び生じさせて、それを上記ループ型反応槽系に再循環させる。
【実施例3】
【0033】
この実施例では図3に示す装置を用いる。図1の装置と図3の装置の間のただ1つの差は、運転に関する生成物処理部分にある。このように、連続ループ型反応槽にトルエン中6.5重量%のTMAを419.5kg/時、トルエンを4.5kg/時および水を1.36kg/時で連続的に仕込む。これによってアルミニウムに対する水の比率は0.2になる。この反応混合物を約2℃の温度に維持する。脱気を受けさせた後の反応生成物はトルエンを約94%とTMAを約5%とMAOを約1%含む混合物(約423.5kg/時)である。この系内に取り付けた10ミクロンのフィルター(示していない)には本質的に固体が全く検出されない。従って、このような反応条件にするとアルミニウムが固体として失われることはない。105mmHg下55℃で連続瞬間蒸発を行うことにより、(a)TMAが約5.1%とトルエンが約94.9%入っている溶液が約404kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)トルエンが約69.3%とTMAが約5.7%とMAOが約25%入っている混合物が約19.3kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。上記塔底液の流れを10段の回収塔カラム56に移送して上記カラムの上部に導入しそして110℃のトルエン蒸気を8.2kg/時で下部に導入する。その結果として得られる塔頂留出物はTMAが約5.1%とトルエンが約94.9%入っている溶液(約9.6kg/時)である。この2つの塔頂留出物流れを個々のコンデンサ54および58で液化させた後、それらを一緒にライン24に入れて、ライン26から来る100%TMA(6kg/時)と一緒にすることで、TMA
フィードレートを再び生じさせて、それを上記ループ型反応槽セクションに再循環させる。上記回収塔の塔底液生成物はMAOが約27%でTMAが約3%でトルエンが約70%の濃縮物であり、これを約18kg/時の速度で得る。
【実施例4】
【0034】
この上に示した実施例1−3と同様なループ型反応槽配置と清掃膜式蒸発装置(wiped film evaporator)60を含む図4の装置を用いる。回収塔カラム56の代わりに清掃膜式蒸発装置60を用いる以外は図3および4の装置と本質的に同じである。反応槽70に3.8重量%のTMA溶液を718kg/時、トルエンを135kg/時および水を1.36kg/時で連続的に供給し、これはアルミニウムに対する水の比率が0.2であることに等しい。この反応混合物を約2℃の温度に維持する。装置40内で脱気を受けさせた後の反応生成物はトルエンを約96.3重量%とTMAを約3.0重量%とMAOを約0.7重量%含む混合物(約730kg/時)である。この系内に取り付けた10ミクロンのフィルターには本質的に固体が全く検出されない。従って、このような反応条件にするとアルミニウムが固体として失われることはない。装置50を210mmHg下72℃で操作する連続瞬間蒸発により、(a)TMAが約2.95重量%とトルエンが約97.05重量%入っている溶液が約690kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)おおよその組成が12.2%のMAOと3.8%のTMAと84%のトルエンである組成物が約40kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。上記塔底液を清掃膜式蒸発装置60に連続供給してそれを105mmHg下55℃で運転することにより、TMAが約3.7重量%とトルエンが約96.3重量%入っている溶液が塔頂留出物として約2kg/時で得られ、そしてMAOが約27%とTMAが約4%とトルエンが約69%入っている溶液が塔底液として約18kg/時の速度で得られる。この2つの塔頂留出物流れを個々のコンデンサ54および58で液化させた後、それらを一緒にして、ライン26から来る100%TMA(6kg/時)と一緒にすることで、適切なTMA供給材料組成物およびフィードレートを再び生じさせて、その組成物を上記ループ型反応槽セクションに再循環させる。
【実施例5】
【0035】
本明細書の図1に示した如き装置の連続ループ型反応槽セクションに、ライン10により、トルエン中4.3重量%のトリメチルアルミニウム(TMA)を614kg/時、トルエンを10kg/時および水を1.36kg/時で連続的に仕込む。これによってアルミニウムに対する水の比率は0.2になる。このループ型反応槽セクションに入っている反応混合物をクーラー30による循環で約2℃の温度に維持する。脱気装置40で脱気を受けさせた後の反応生成物はおおよその組成でトルエンが95.7重量%でTMAが3.4重量%でメチルアルミノキサン(MAO)が0.8重量%の混合物(約624kg/時)である。この系内に取り付けた10ミクロンのフィルター(示していない)に検出された固体量は非常に僅かであり、従ってこのような反応条件にすると本質的にアルミニウムが固体として失われることはない。蒸留装置50を105mmHg下55℃で運転する連続瞬間蒸発により、(a)TMAがトルエンに約3.3重量%入っている溶液が約606kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)MAOが約27%とTMAが約3%とトルエンが約70%入っている生成物溶液が約18kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。ライン24内でその凝縮した塔頂留出物にトルエン中80%のTMAを8kg/時で加える(ライン26に通して)ことで、TMA供給材料を再び生じさせて、それを上記ループ型反応槽系に再循環させる。
【0036】
実施例6に、工程の経済性を達成する目的であまり厳格でない工程管理を用いた修飾形を例示する。この態様では、使用したアルミニウムを基準にした収率の若干の低下は容認され、効果的に取り扱われ、その代わりにプラント操作全体の経済性が向上する。
【実施例6】
【0037】
使用した装置全体は図5に図式的に示す通りである。この装置は図1の脱気装置40を沈降および脱気装置44に置き換える以外は図1の装置と基本的に同じであることが分かるであろう。装置44は、連続ループ型反応槽セクションから得られる反応生成物の脱気とこの反応生成物内に存在する固体をこの液状反応生成物を装置50で分溜する前にその液相から沈降させて濾過することの両方を行う設計になっている。このように、反応槽70、ポンプ72、クーラー30およびライン10、34、36および38を含む連続ループ型反応槽セクションに、ライン10を通して、トルエン中5.0重量%のトリメチルアルミニウム(TMA)を364kg/時、トルエンを22kg/時および水を1.36kg/時で連続的に仕込み、これはアルミニウムに対する水の比率が0.3であることに相当する。このループ型反応槽セクションに入っている反応混合物をクーラー30による循環で約2℃の温度に維持する。装置44内で脱気と固体除去を受けさせた後の反応生成物はおおよその組成でトルエンが95.3重量%でTMAが3.3重量%でメチルアルミノキサン(MAO)が1.3重量%の混合物(約374kg/時)である。装置44内に取り付けた10ミクロンのフィルターで失われたアルミニウムはアルミニウム全体の約3モル%である。蒸留装置50を105mmHg下55℃で運転する連続瞬間蒸発により、(a)TMAがトルエンに約3.3重量%入っている溶液が約356kg/時の留出速度でライン20を通る塔頂留出物(即ちテイクオフ)と(b)MAOが約27%とTMAが約3%とトルエンが約70%入っている生成物溶液が約18kg/時の速度でライン22を通る塔底液への分離が起こる。ライン24内でその凝縮した塔頂留出物にトルエン中80重量%のTMA溶液を8kg/時で加える(ライン26に通して)ことで、TMA供給材料を再び生じさせて、それを上記ループ型反応槽系に再循環させる。
【0038】
実施例6の場合のように固体の生成を伴う運転を行う場合には、反応槽セクションから出る溶液に含まれる微細なアルミニウム含有固体の量を制限すべきである。一般的には、そのような固体に入っているアルミニウムの全体量を存在させる全アルミニウム種(即ち溶液および固体に入っている)全体重量の10%以下にすべきである。このような微細固体の粒子サイズは典型的に50ミクロンのフィルターを通過するが10ミクロンのフィルターに保持されるような範囲である。
【0039】
従って、本発明は、好適な態様において、メチルアルミノキサンの連続製造方法を提供する。この方法は、段階(a)において、トリメチルアルミニウム、水および有機溶媒を反応槽にアルミニウムがトリメチルアルミニウムおよびメチルアルミノキサンとして全体で0.5から8重量%の範囲で入っている溶液が生じる温度条件および比率で連続供給することを伴うが、ここでは、上記溶液に入っているトリメチルアルミニウムの量がこの溶液に入っているアルミニウム1モル部当たり0.10から0.63モル部の範囲(最も好適には0.16から0.63モル部の範囲)になるようにする。段階(b)において、(a)で生じさせた反応溶液に脱気を連続的に受けさせる。次に、段階(c)において、その脱気を受けさせた溶液に瞬間蒸発を連続的に受けさせることで、アルミニウムが有機溶媒に溶解しているトリメチルアルミニウムとして本質的に0.5から8重量%入っている塔頂留出物とアルミニウムがメチルアルミノキサンおよびトリメチルアルミニウムとして本質的に4から20重量%入っている塔底液を生じさせる。上記塔底液の溶液に入っているトリメチルアルミニウムの量がアルミニウム1モル部当たり0.03から0.3モル部のみの範囲(最も好適には0.05から0.20の範囲)になるようにする。段階(d)は、段階(c)の塔頂留出物の少なくとも一部を段階(a)における供給材料の一部として再循環させることを伴う。このような連続運転の場合、段階(a)における供給材料に補給トリメチルアルミニウムと補給不活性溶媒を含め、最も好適には、段階(a)の供給材料に含めるトリメチルアルミニウムと不活性な溶媒を、(i)段階(d)の再循環液と(ii)上記補給トリメチルアルミニウムと(iii)上記補給不活性溶媒で構成させる(composed or made up)。このようにして、そのような供給で(a
)の比率を維持する。本図に示すように、上記補給トリメチルアルミニウム(およびまたより好適には上記補給不活性溶媒の一部)を段階(a)で供給する前に段階(d)の再循環液と一緒にするのが望ましい。同様に、段階(a)の供給材料に含める不活性溶媒の一部と水をそれらを段階(a)で供給する前に一緒に混合するのが最も好適である。この目的で、共通所有の米国特許第5,599,964号に記述されている(または図6から11に関連させて本明細書の以下に示す実施例7から11で記述するような)水供給もしくは注入様式の使用が特に有利である。段階(a)における供給を行う特に好適な様式は、上記補給トリメチルアルミニウムと上記補給不活性溶媒の一部を段階(d)の再循環液と一緒にしてこの一緒にした混合物を段階(a)で供給しそして加うるに不活性溶媒の別の補給部分と水を一緒にしてこの一緒にした混合物を段階(a)で供給することを含む。
【0040】
ここで、我々は、ヒドロカルビル化合物および/またはアルミノキサンが入っている溶媒溶液に水を供給する本発明の改良方法を言及する。
【0041】
図6に示す本発明の方法の態様では、反応槽ループ2内に位置させたインラインミキサー1の入り口に水とトリメチルアルミニウム(TMA)とトルエンを連続注入する。別法として、図8に示すように、TMAを異なる地点、例えばポンプ4とクーラー5の間の地点などで反応槽に供給することも可能である。この水とTMAが反応し、そして生成物であるメチルアルミノキサン(MAO)と未反応のTMAが入っている反応混合物をループ2に通して脱気用タンク3に循環させて、そこからメタンガスを排出させる。次に、上記反応混合物をポンプ4でインラインミキサー1、例えばIKA Worksインラインディスパーサー(disperser)の入り口などにポンプ輸送して戻して、上記ディスパーサーに備わっているローターを約7,000から13,000rpmの速度で作動させる。クーラー5を用いて反応熱を選択した温度範囲内に維持する。生成物であるMAO[これは溶媒に入っていて、未反応のTMAを含有する]をライン6に通して連続的に取り出す。この粗MAO生成物からTMAおよび溶媒を瞬間蒸発させて例えば脱気装置3にか或はインラインミキサーの前方でライン2に戻してもよい。このインラインミキサーで均一な反応ゾーンを生じさせ、そして生成物流れを多量に再循環させて反応体、特に水の熱吸収と希釈の両方を行うことで、局所的な過熱および/または有意な如何なる温度上昇も回避する。反応体を連続的に導入して生成物を連続的に取り出すことによって、定常状態の反応で反応体を一定濃度に保持することが可能になり、これは、より均一かつ再現可能な生産を向上した収率で達成するに役立つ。これにより、また、反応体の供給速度および比率を単に調整することで多様な製品を連続的に製造することが可能になる。
【0042】
図7に、図6に例示した本発明の方法に従って水をアルミニウムアルキルが入っている溶媒溶液に導入するに適した装置を示す。管15内に同軸配置した毛細管13に通して水を送り込む。この管13の先端14は管15の末端16から約1−2mm引っ込んでいる。管15の中を通る溶媒が水を管13の先端14から押し流して、この水を溶媒中のTMAおよび溶媒中のTMAとMAOのポンプアラウンド混合物(それらはそれぞれ管18および19を通って入って来る)の中に運んだ後、混合装置(示していない)の中に運び込む。水を取り囲んでそれをTMA含有混合物の中に押し流す溶媒の流れを用いると、水搬送用管の末端部の詰まり(これは酸化アルミニウムの生成が原因で起こる)が回避され得る。
【0043】
図9に、図8に例示した如き本発明の方法に従って水を反応ゾーンに導入するに適した別の装置を示す。この装置はモーター12で駆動するローター/ステーターインラインミキサー1に関連した装置である。直径が例えば3.0mmの管15内に同軸配置した毛細管13に通して水を送り込む。この毛細管13の先端14は管15の末端16から約1−2mm引っ込んでいる。管15の中を通る溶媒は水を先端14から反応ゾーン17の中に押し流し、そのゾーンの中で上記水がTMA−MAO−溶媒混合物(管19を通って反応
ゾーン17の中に入って来る)と反応する。この反応混合物は出口21を通ってローター/ステーターインラインミキサー1から出る。上記毛細管13の内径をそれが水の流れか或は個々の水滴を搬送するように選択することができる。例えば0.001から0.1mmの内径。水注入用管またはノズルの末端部を水が溶媒用導管の壁に接触しないで噴霧されるように位置させるべきである。そのようにしないと、この二者は混和しない液相であることから、水が上記壁の所に集まる可能性がある。一般的には、この水を反応ゾーンに運ぶ目的で用いる溶媒流の重量と水の重量の比率を10:1から1000:1、好適には25:1から150:1の範囲にする。水を反応に導入する時、水を運ぶノズルまたは管の末端部が溶媒の流れの中に位置している他の適切な装置も使用可能である。水を前以て溶媒の一部の中に分散させておくことも可能である。この管または導管の形状は決定的でなく、それらの断面は円形以外の形状であってもよい。また、反応ゾーン内に高いせん断を作り出す他の混合装置も使用可能であり、このような装置には、これらに限定するものでないが、超音波ミキサー、プロペラミキサーおよびスタティックミキサーなどが含まれる。実際、上記ローター/ステーターミキサーの電源を切った時でも良好な生成物を高い収率で得ることができることを確認した。不活性ガス雰囲気、例えば乾燥窒素などを用いて上記ヒドロカルビルアルミニウム化合物およびアルミノキサン生成物を酸素および水分から保護する。
【0044】
より均一な加水分解反応を起こさせようとする場合には水、溶媒および再循環流れの体積および流量を非常に高い希釈濃度の水が得られるような体積および流量にする。例えば、全体の流れが水供給体積の少なくとも200倍、好適には少なくとも5,000倍、より好適には少なくとも8,000倍大きくなるようにする。この水は、溶媒の流量をより高くするとそれに完全に溶解することで、反応槽の詰まり(これは連続T型反応槽を用いると局所的な過反応が起こることが原因で起こり得る)が回避される。その結果として安定な反応が起こることで、詰まりを排除する目的で中断を行う必要がなくなる。ポンプアラウンド流量を高くしていることから、高度に発熱的な加水分解反応が原因で起こる如何なる温度上昇も最小限になる。補給するヒドロカルビルアルミニウムと水を、それらが反応してポンプアラウンド流れから取り出される比率で連続添加することを通して、反応ゾーン内の水とヒドロカルビルアルミニウム化合物の相対濃度を実質的に一定に維持することができる。
【0045】
溶媒に入っている粗アルミノキサン生成物の濃度が1から5重量パーセントになるように反応供給速度と生成物取り出し速度を調整する。未反応ヒドロカルビルアルミニウムの濃度は0から10重量パーセントの範囲であり得る。MAOを製造する時のMAO生成物の濃度はMAOとTMAと溶媒の全体重量を基準にして一般に20から30重量パーセントの範囲でありそして未反応のTMAは2から10重量パーセントの範囲である。供給速度は使用する反応槽のサイズに依存する。溶媒と未反応のアルキルアルミニウム化合物を除去することで粗アルミノキサン生成物の濃縮を行うことができる。
【0046】
以下に示す実施例で本発明のさらなる説明を行うが、それに限定することを意図するものでない。
【実施例7】
【0047】
実施例7では、図6および7に示した装置に類似した反応槽および水注入装置を用いてMAOを製造する実験を行った。トルエンの流量を2.80kg/時にし、水の流量を0.04kg/時にし、トルエン中10重量パーセントのTMAの流量を2.26kg/時にし、そしてトルエンが96.1重量パーセントでTMAが1.6重量パーセントでMAOが2.3重量パーセントのポンプアラウンド混合物の流量を13.18kg/時にした。反応温度を約6℃にした。管およびチャンネル(channel)の寸法を表1に示す。水用管13の先端14は溶媒用管15(これの末端16はMAO用管18の出口を約3
mm越えて伸びている)の末端16から約1mm引っ込んでいた。インラインミキサー1は分散用チャンバと「微分散用要素」が備わっているIKA−Works UTL 25であり、これを約11,700rpmで作動させた。100分間に渡る実験時間中、毛細管13の詰まりは全く観察されなかった。
【実施例8】
【0048】
実施例8では、図8および9に示した装置に類似した反応槽および水注入装置を用いてMAOを製造する実験を行った。トルエンに入っているTMAをクーラーとポンプの間でポンプアラウンド流れの中に注入した。トルエンの流量を2.55kg/時にし、水の流量を0.02kg/時にし、トルエン中10重量パーセントのTMAの流量を3.03kg/時にし、そしてTMAが1.9重量パーセントでMAOが1.9重量パーセントでトルエンが96.2重量パーセントのポンプアラウンド混合物の流量を682kg/時にした。反応温度を約6℃にした。管およびチャンネルの寸法を表1に示す。水用毛細管13の先端14は溶媒用管15の末端16から約1mm引っ込んでいた。インラインミキサー1は実施例7で用いたのと同じミキサーであったが、ローターのスイッチを入れなかった(0rpm)。2時間に渡る実験時間中、毛細管13の詰まりは全く観察されなかった。
【実施例9】
【0049】
実施例9では、実施例8で用いた装置に類似した装置およびミキサーを用いてMAOを製造する実験を行った。トルエンの流量を2.0kg/時にし、水の流量を0.05kg/時にし、トルエン中10重量パーセントのTMAの流量を5.4−5.7kg/時にし、そしてTMAが5.6重量パーセントでMAOが3.4重量パーセントでトルエンが91重量パーセントのポンプアラウンド混合物の流量を682kg/時にした。反応温度を約11℃にした。管およびチャンネルの寸法を表1に示す。インラインミキサーを7,000rpmで作動させた。6時間に渡る運転中、毛細管13の詰まりは全く観察されなかった。
【0050】
しかしながら、水用毛細管13の先端14が溶媒用管15の末端16を若干越えて伸びるように注入装置を変えると、水注入を開始して1分以内に先端14が白色の酸化アルミニウムで詰まった。
【0051】
【表1】

【実施例10】
【0052】
使用した装置は図10および11に示した装置である。水をミキサー1の入り口ではなくそれの前方でポンプアラウンドループ2の中に注入した。インジェクター装置25には、図10に示すように、溶媒用管15および水用毛細管13が備わっていて、この毛細管は、ポンプアラウンドループ2内で、溶媒と生成物MAOと未反応TMAの流れに対しておおよそ垂直に位置している。管13の先端14は管15の末端16から約1mm引っ込んでいる。水用毛細管13の内径は0.55mmで外径は0.65mmである。溶媒用管15の内径は1.4mmで外径は3.2mmである。ループ2の内径は9.4mmで外径は12.7mmである。図10に示した装置の残りの部分は実施例8で用いた装置(図8)と同じである。供給材料は、窒素圧下のトルエン中12.3重量パーセントのTMA、窒素圧下のトルエン(水が10ppm)およびデュテリウム置換水(ヘリウムでパージ洗浄)であった。このTMA溶液と水を計量用ポンプで供給しそしてトルエンを窒素圧下で供給した。脱気装置にTMA溶液を3.65kg(4.09L)仕込んでバルク(bulk)温度を2−3℃にまで下げた。上記ミキサーを通る流れを522kg/時にして、このミキサーを始動させて7500rpmで回転するように設定した(t=0)。t=40分の時にトルエンの供給を開始し(平均1.5kg/時、即ち16.3gモル/時);t=48分の時、TMAの供給を開始し(平均で6.0kg/時、即ち0.7kg/時のTMA+5.26kg/時のトルエン、即ち10.2gモル/時のTMAと57.2gモル/時のトルエン);そしてt=140分の時、水の供給を開始した(HOを0.4g/分、即ち1.33gモル/時)。反応ゾーンの温度は2−3℃で、HO/TMA供給モル比は0.13で、バルク/HO流量(体積)比は約24,000で、バルク/HO流量(質量)比は約22,000であった。予測Al重量パーセントは3.7重量パーセントであり、そして滞留時定数(residence time constant)は29分であった。装置内のレベルが一定に維持されるように粗MAOを連続的に取り出し
、これをt=323分、6.3時定数の時に集めた。t=248分後、定常状態を調べる目的で、上記ミキサーの電源を切って、2サンプルの分析を行った。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【実施例11】
【0054】
使用した装置は、ポンプアラウンド流れの一部をクーラー5と平行に配列した2番目のクーラーに通して送って粗MAO生成物取り出し地点の後部でループ2の中に再び入れる以外は図10および11に示した装置である。この実験では実施例10で用いた水注入装置を奇麗にすることなく実験を行った。全実験時間=11時間。ミキサー1のローターの電源を入れなかった(rpm=0)。供給材料は、脱イオン水を用いる以外は実施例10と同じであった。脱気装置にTMA溶液(12.3%)を6.4kg(7.2L)仕込んでバルク温度を1−3℃にまで下げた。ミキサー1を通る流れを545kg/時にした。TMAの供給を開始(t=0)し(平均で8.2kg/時、即ち1.0kg/時のTMA+7.2kg/時のトルエン、即ち14.0gモル/時のTMA+78gモル/時のトルエン)、そして次にt=6分の時、トルエンの供給を開始した(平均で1.2kg/時、即ち12.8gモル/時)。t=21分の時に水の供給を開始した(HOを0.89g/分、即ち3.0gモル/時)。反応ゾーンの温度は1−3℃で、HO/TMA供給モル比は0.21で、バルク/HO流量(体積)比は約11,000で、バルク/HO流量(質量)比は約10,000であった。予測Al重量パーセントは3.99重量パーセントであり、そして滞留時定数は41分であった。レベルが一定に維持されるように粗MAOを連続的に取り出し、これをt=213分、4.7時定数の時に集め始めて273分、6.1時定数の時に集め終わり、10.9kg集めた。t=270分の時に採取したサンプルの分析は下記を示した:Al:3.73重量パーセント、TMA:7.5重量パーセント、TMAとしてのAl:72%。直後の粗MAOサンプルには目に見える固体が全く観察されなかった。−15℃で約1週間貯蔵した後、サンプルびんの底に固体の膜が非常に僅かであるが現れた。推定アルミニウム収率は99%を越えていた。
【0055】
本発明のこの供給方法は、水をアルミニウムアルキルに詰まりなしに添加するに極めて有用であり、その結果として、休止時間が短縮され、再循環させる溶媒の量が少なくなりかつアルミニウムの利用度がより良好になることから生産コストがより低くなる。これは、直接的工程配管で水をアルミニウムアルキルおよび/またはアルミノキサン流れに工程の詰まりなしに連続的に添加する方法を与えるものである。また、溶媒を温めている限り水を凍結温度以下の温度で注入する目的で本発明を用いることも可能である。特にMAOポンプアラウンド生産様式の場合には、反応槽内の温度を低くすればするほど生産の向上がもたらされると期待される。
【0056】
特に明記しない限り、本開示および本請求の範囲に挙げる沸騰温度は全部大気圧下を条件とした沸騰温度である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施で使用可能なプラント施設のいろいろな図式的工程流れ図である。
【図2】本発明の実施で使用可能なプラント施設のいろいろな図式的工程流れ図である。
【図3】本発明の実施で使用可能なプラント施設のいろいろな図式的工程流れ図である。
【図4】本発明の実施で使用可能なプラント施設のいろいろな図式的工程流れ図である。
【図5】本発明の実施で使用可能なプラント施設のいろいろな図式的工程流れ図である。
【図6】実施例7に記述する本発明の方法の態様で用いるポンプアラウンド反応槽系を示す図式図である。
【図7】実施例7に記述する本発明の方法の態様の実施で用いる水注入装置を示す図式図である。
【図8】実施例8および9に記述する本発明の方法の態様で用いるポンプアラウンド反応槽系を示す図式図である。
【図9】実施例8および9に記述する本発明の方法の態様で用いる水および溶媒注入器およびインライン混合装置の図式的断面図である。
【図10】実施例10に記述する本発明の方法の態様で用いるポンプアラウンド反応槽系を示す図式図である。
【図11】実施例10および11に記述する本発明の方法の態様の実施で用いる水注入装置を示す図式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水をヒドロカルビルアルミニウム化合物および/またはアルミノキサンが有機溶媒に入っている溶媒溶液に添加してアルミノキサン組成物を製造する改良方法であって、上記水を溶媒の流れで取り巻かれているオリフィスに通して供給して該溶媒の流れで上記水を上記ヒドロカルビルアルミニウムおよび/またはアルミノキサンが入っている溶媒溶液の中に運び込むことを含む方法。
【請求項2】
上記水を上記溶媒の流れが入る2番目の導管で取り巻かれている1番目の導管に通して供給するが、上記1番目の導管の出口を上記2番目の導管の出口末端から引っ込ませて位置させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記1番目の導管の出口末端を上記2番目の導管の出口末端から少なくとも約1mm引っ込ませて位置させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記溶媒流れの重量と水の重量の比率を10:1から1000:1にする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記溶媒流れの重量と水の重量の比率を25:1から250:1にする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記ヒドロカルビルアルミニウム化合物がトリメチルアルミニウムでありそして上記アルミノキサン組成物がメチルアルミノキサンである請求項1に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−73849(P2009−73849A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284860(P2008−284860)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願平9−538089の分割
【原出願日】平成9年4月2日(1997.4.2)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】