説明

アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置

【課題】アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めること。
【解決手段】フロント壁9の内壁面及びリア壁11の内壁面に、片側に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面45fを有しかつ基板を冷却する冷却パネル41が垂直にそれぞれ配設され、天井壁15の内壁面における隣接する各基板エリアA間に、両側に基板Wから輻射熱を吸収可能な吸収面63fをそれぞれ有しかつ基板Wを冷却する複数の中間冷却パネル63が垂直に吊設され、中間冷却パネル63がその上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動可能になっていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分をガラス基板等の基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を成膜するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池等に用いられるガラス基板等の基板の大面積化(大型化)に伴い、大面積基板(大型基板)の成膜に適したアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置について種々の開発がなされている(特許文献1から特許文献3参照)。そして、先行技術に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の構成等に説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置は、内部を真空状態に減圧可能な真空チャンバーを具備しており、この真空チャンバーは、箱型のチャンバー本体、チャンバー本体の正面側に設けられたフロント壁、チャンバー本体の背面側に設けられたリア壁、及びチャンバー本体の上側に設けられた天井壁を備えている。また、真空チャンバーの外側の適宜位置には、真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源が設けられている。
【0004】
真空チャンバーの内部には、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナが奥行き方向に間隔を置いて配設されている。また、各アレイアンテナは、垂直状態で同一平面上に幅方向を置いて配列された複数本のアンテナ素子を備えており、各アレイアンテナの両側には、垂直状態の基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成されている。そして、真空チャンバーの外側の適宜位置には、各アレイアンテナに高周波電力を供給する高周波電源が配設されている。
【0005】
従って、各基板エリアに基板をセットした状態で、真空チャンバーの内部を真空状態に減圧すると共に、ガス供給源によって真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給する。そして、高周波電源によって各アレイアンテナに高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナの周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板の表面に付着させる。これにより、各基板の表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜を成膜(形成)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−143592号公報
【特許文献2】特開2007−262541号公報
【特許文献3】特開2003−86581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させるには、高周波電源から供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナ周辺のプラズマ密度を高くする必要がある。一方、各アレイアンテナ周辺のプラズマ密度を高めると、成膜処理中に真空チャンバーの内部の温度が過度に上昇して、基板の表面温度を適正な温度(温度範囲)に保つことが困難になり、非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜の品質の低下を招くことになる。
【0008】
つまり、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることは容易でないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を形成するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置において、正面側にフロント開口部を有しかつ背面側にリア開口部を有したチャンバー本体、前記チャンバー本体の正面側に設けられかつ前記フロント開口部を開閉するフロント壁、前記チャンバー本体の背面側に設けられかつ前記リア開口部を開閉するリア壁、及び前記チャンバー本体の上側に設けられた天井壁、を備えてあって、内部を真空状態に減圧可能な真空チャンバーと、前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源と、前記真空チャンバーの内部に奥行き方向(前記真空チャンバーの奥行き方向)に間隔を置いて配設され、垂直状態で同一平面上に幅方向(前記真空チャンバーの幅方向)に間隔を置いて配列されかつ前記真空チャンバーに対して着脱可能な複数本のアンテナ素子を備え、両側に垂直状態の基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成され、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナと、各アレイアンテナ(各アレイアンテナにおける各アンテナ素子)に高周波電力を供給する高周波電源と、前記フロント壁の内壁面及び前記リア壁の内壁面に垂直にそれぞれ配設され、片側(前記基板エリアに対向する側)に基板から輻射熱を吸収可能な吸収面を有し、基板を冷却する冷却パネル(第1冷却パネル)と、前記天井壁の内壁面における隣接する各基板エリア間に垂直に吊設され、両側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面をそれぞれ有し、基板を冷却する複数の中間冷却パネル(第2冷却パネル)と、を具備し、複数の前記中間冷却パネルのうちのいずれかの前記中間冷却パネルがその上端側の水平な揺動軸心周りに揺動可能になっていることを要旨とする。
【0011】
なお、特許請求の範囲及び明細書において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意であって、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意である。また、「アンテナ素子」には、誘導結合型電極、容量結合型電極が用いられる。
【0012】
本発明の特徴によると、各基板エリアに基板をセットした状態で、前記真空チャンバーの内部を真空状態に減圧すると共に、前記ガス供給源によって前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給する。そして、前記高周波電源によって各アレイアンテナに高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナの周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板の表面に付着させる。これにより、各基板の表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜を成膜(形成)することができる。
【0013】
ここで、成膜処理中に、各冷却パネルを適宜に作動させることにより、前記奥行き方向の端部側(一端部側又は他端部側)の前記基板エリアにセットされた基板(端部側の基板)からの輻射熱を前記冷却パネルの前記吸収面によって吸収して、端部側の基板を冷却する。また、各中間冷却パネルを適宜に作動させることにより、前記奥行き方向の中間側の前記基板エリアにセットされた基板(中間側の基板)からの輻射熱を前記中間冷却パネルの前記吸収面によって吸収して、中間側の基板を冷却する。これにより、前記高周波電源から各アレイアンテナに供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナの周辺のプラズマ密度を高めても、各基板の表面温度が過度に上昇することを抑えて、各基板の表面温度を適正な温度(温度範囲)に保つことができる。
【0014】
前述の作用の他に、前記冷却パネルが前記フロント壁の内壁面及び前記リア壁の内壁面に設けられ、複数の前記中間冷却パネルのうちのいずれかの前記中間冷却パネルがその上端側の水平な揺動軸心周りに揺動可能になっているため、前記フロント壁及び前記リア壁によって前記チャンバー本体の前記フロント開口部及び前記リア開口部を開き、かついずれかの前記中間冷却パネルをその上端側の水平な揺動軸心周りに揺動させることにより、前記アンテナ素子と前記冷却パネル及び前記中間冷却パネルとの干渉を回避しつつ、前記真空チャンバーに対する複数本の前記アンテナ素子の着脱作業(取付と取外し)を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各アレイアンテナの周辺のプラズマ密度を高めても、各基板の表面温度を適正な温度に保つことができるため、前記アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることができる。
【0016】
また、前記アンテナ素子と前記冷却パネル及び前記中間冷却パネルとの干渉を回避しつつ、前記真空チャンバーに対する複数本の前記アンテナ素子の着脱作業を容易に行うことができるため、前記アンテナ素子の着脱作業に要する時間を短くして、前記アンテナ素子の洗浄メンテナンス等のメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置の側面断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ式のVCDプラズマ装置の正面断面図である。
【図3】図3は、図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図5(a)は、図4における矢視部VAの拡大断面図、図5(b)は、図4における矢視部VBの拡大断面図である。
【図6】図6は、サーキュレータ及びその周辺の構成を説明する図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図7を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は前方向、「FR」は後方向、「L」は左方向、「R」は右方向、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指してある。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るアレイアンテナ方式のCVDプラズマ装置1は、真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板Wの表面に付着させることにより、基板Wの表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜(図示省略)を成膜(形成)する装置である。
【0020】
アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1は、箱型の真空チャンバー3を具備しており、この真空チャンバー3は、真空圧を発生させる真空ポンプ等の真空圧発生源5に接続されてあって、内部を真空状態に減圧可能である。また、真空チャンバー3は、箱型のチャンバー本体7の備えており、このチャンバー本体7は、正面側(前側)にフロント開口部7a、背面側(後側)にリア開口部7b、両側面側(左側及び右側)にサイド開口部7cをそれぞれ有している。更に、チャンバー本体7の正面側には、フロント開口部7aを開閉するフロント壁9が設けられており、チャンバー本体7の背面側には、リア開口部7bを開閉するリア壁11が設けられている。そして、チャンバー本体7の両側面側には、サイド開口部7cを開閉するサイド壁(ゲートバルブを含む)13がそれぞれ設けられており、チャンバー本体7の上側には、天井壁15が設けられている。
【0021】
真空チャンバー3の外側の適宜位置には、真空チャンバー3の内部側へ材料ガスを供給するガス供給ポンプ等のガス供給源17が配設されている。
【0022】
真空チャンバー3の内部には、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナ19が真空チャンバー3の奥行き方向(前後方向)に間隔を置いて配設されている。また、各アレイアンテナ19は、垂直状態で同一平面上に真空チャンバー3の幅方向(左右方向)へ間隔を置いて配列(配設)された複数本のアレイアンテナ素子としてU字形状の複数本の誘導結合型電極21を備えており、各誘導結合型電極21は、真空チャンバー3に対して着脱可能である。更に、各アレイアンテナ19の片側又は両側には、基板Wをセット可能な基板エリアAが形成されている。そして、真空チャンバー3の外側の適宜位置には、各アレイアンテナ19(各アレイアンテナ19における各誘導結合型電極21)に高周波電力を供給する高周波電源23が配設されている。
【0023】
図2に示すように、各誘導結合型電極21は、上端部が天井壁15にコネクタ25を介して着脱可能に連結されかつ高周波電源23の供給側(非接地側)に電気的に接続された第1電極棒27と、上端部が天井壁15にコネクタ29を介して着脱可能に連結されかつ第1電極棒27に対して平行であってかつ高周波電源23の接地側に電気的に接続された第2電極棒31と、第1電極棒27の下端部と第2電極棒31の下端部との間に電気的に接続するように連結された接続金具33とを備えている。また、各第1電極棒27は、前述の特許文献1(特開2004−143592号公報)に示すように、外側にセラミックス又は樹脂等の誘電体からなる外筒(図示省略)を有しており、各第2電極棒31の内部は、ガス供給源17に接続可能であって、各第2電極棒31の外周面には、基板エリアAに向かって材料ガスを噴出する複数の噴出孔(図示省略)が上下方向(第2電極棒の長手方向)に沿って形成されている。
【0024】
なお、アレイアンテナ19に複数本のアレイアンテナ素子としてU字形状の複数本の誘導結合型電極21を用いる代わりに、棒状(I字形状)の複数本の誘導結合型電極又は複数本の容量結合型電極等を用いても構わない。
【0025】
図1及び図2に示すように、真空チャンバー3の内部の床面には、左右方向へ延びた一対のガイドレール35が設けられており、一対のガイドレール35には、台車37が左右方向へ移動可能に設けられている。換言すれば、真空チャンバー3の内部の床面には、台車37が一対のガイドレール35を介して左右方向へ移動可能に設けられている。また、台車37は、チャンバー本体7のサイド開口部7cを介して真空チャンバー3の内部に送り出し及び引き出し可能である。そして、台車37には、垂直状態の1枚又は2枚の基板Wを保持する枠状の複数の基板ホルダ39が前後方向に間隔を置いて立設されてある。更に、台車37を真空チャンバー3の内部における基準の台車送り出し位置(図2に示す位置)に送り出すことによって、各基板エリアAに基板Wがセットされるようになっている。
【0026】
図1及び図3に示すように、フロント壁9の内壁面及びリア壁11の内壁面には、基板Wを冷却する矩形の冷却パネル(第1冷却パネル)41が垂直にブラケット43を介してそれぞれ配設されている。そして、各冷却パネル41の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
即ち、各冷却パネル41は、フロント壁9の内壁面又はリア壁11の内壁面にブラケット43を介して設けられた矩形の冷却パネル本体(第1冷却パネル本体)45を備えており、この冷却パネル本体45は、アルミ等の金属により構成されている。また、冷却パネル本体45は、片側(基板エリアに対向する側)に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面45fを有してあって、冷却パネル本体45の吸収面45fには、アルミナ等のセラミックスのコーティング処理が施されている(図中において、コーティング処理を施した部位には、グレー着色を施してある)。更に、冷却パネル本体45の内部には、冷却油(冷熱媒の一例)を循環させるための蛇行状の循環流路(第1循環流路)47が形成されており、冷却パネル本体45の吸収面45fは、冷却油の循環により温度制御可能になっている。そして、冷却パネル本体45の左側上端部には、循環流路47に冷却油を導入する導入管(第1導入管)49が一体的に設けられており、この導入管49は、フロント壁9の左部又はリア壁11の左部を気密的に挿通してある。また、冷却パネル本体45の右側上端部には、循環流路47から冷却油を導出する導出管(第1導出管)51が一体的に設けられており、この導出管51は、フロント壁9の右部又はリア壁11の右部を気密的に挿通してある。
【0028】
図1、図4、及び図5(a)(b)に示すように、天井壁15の内壁面の左部における各隣接する基板エリアA間には、容器状のレフト支持部材53がOリング55を介して配設されており、各レフト支持部材53の内側は、大気に開放されている。また、天井壁15の内壁面の右部における各隣接する基板エリアA間には、容器状のライト支持部材57がOリング59を介して配設されており、各ライト支持部材57の内側は、大気に開放されている。
【0029】
対応関係にあるレフト支持部材53とライト支持部材57の間には、基板Wを冷却する中間冷却パネル(第2冷却パネル)61が垂直に吊設されており、換言すれば、天井壁15の内壁面における各隣接する基板エリアA間には、中間冷却パネル61がレフト支持部材53及びライト支持部材57を介して垂直に吊設されている。そして、各中間冷却パネル61の具体的な構成は、次のようになる。
【0030】
即ち、各中間冷却パネル61は、上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動可能であって、矩形の中間冷却パネル本体(第2冷却パネル本体)63を備えており、この中間冷却パネル本体63は、アルミ等の金属からなるもである。また、中間冷却パネル本体63は、両側(前側及び後側)に基板Wからの輻射熱を吸収可能な吸収面63fをそれぞれ有してあって、中間冷却パネル本体63の各吸収面63fには、アルミナ等のセラミックスのコーティング処理が施されている(図中において、コーティング処理を施した部位には、グレー着色を施してある)。更に、中間冷却パネル本体63の内部には、冷却油(冷熱媒の一例)を循環させるための蛇行状の中間循環流路(第2循環流路)65が形成されており、中間冷却パネル本体63の吸収面63fは、冷却油の循環により温度制御可能になっている。更に、中間冷却パネル本体63の左側上端部には、中間循環流路65に冷却油を導入する中間導入管(第2導入管)67が一体的に設けられており、この中間導入管67は、レフト支持部材にベアリング69及びOリング71を介して気密的に軸心(中間導入管67の軸心)周りに回転可能に支持されている。また、中間冷却パネル本体63の右側上端部には、中間循環流路65から冷却油を導出する中間導出管(第2導出管)73が中間導入管67と同心状に一体的に設けられており、この中間導出管73は、ライト支持部材57にベアリング75及びOリング77を介して気密的に軸心(中間導出管73の軸心)周りに回転可能に支持されている。ここで、各中間冷却パネル61の水平な揺動軸心Cは、中間導入管67及び中間導出管73の軸心に一致するようになっている。
【0031】
なお、各中間冷却パネル61を上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動可能にする代わりに、いずれかの中間冷却パネル61のみを上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動可能にしても構わない。また、各中間冷却パネル61は左右方向に沿って分割されてあっても構わない。
【0032】
図4から図6に示すように、真空チャンバー3の外側には、各冷却パネル41の循環流路47及び各中間冷却パネル61の中間循環流路65に温調した冷却油を循環させるサーキュレータ(循環ユニット)79が配設されている。また、サーキュレータ79の往き側は、各冷却パネル41の導入管49及び各中間冷却パネル61の中間導入管67に往き回路(往き配管)81を介して接続されてあって、サーキュレータ79の戻り側は、各冷却パネル41の導出管51及び各中間冷却パネル61の中間導出管73に戻り回路(戻り配管)83を介して接続されている。更に、各中間冷却パネル61の中間導入管67は、ベアリング87及びOリング89を介して往き回路81の一部分(分岐部分)に気密的に回転可能に接続されてあって、各中間冷却パネル61の中間導出管69は、ベアリング91及びOリング93を介して戻り回路83に気密的に回転可能に接続されている。そして、サーキュレータ79は、サーキュレータ79の戻り側に配設されかつ冷却油と外気等とを熱交換する熱交換器95と、サーキュレータ79の往き側に配設されかつ冷却油を加熱するヒーター97と、熱交換器95とヒーター97との間に配設されかつ冷却油を圧送するポンプ99を備えている。
【0033】
本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0034】
(i) 成膜処理に関する作用
まず、サーキュレータ79によって各冷却パネル本体45の循環流路47及び各中間冷却パネル本体63の中間循環流路65に温調した冷却油を循環させる(換言すれば、各冷却パネル41及び各中間冷却パネル61を適宜に作動させる)ことにより、真空チャンバー3の内部の温度を所定の温度(本発明の実施形態にあっては、例えば100〜300℃)まで昇温させる。次に、台車37を真空チャンバー3の内部における基準の台車送り出し位置に送り出すことにより、各基板Wを対応する基板エリアAにセットする。続いて、真空圧発生源5によって真空チャンバー3の内部へ真空状態に減圧する。また、ガス供給源17によって真空チャンバー3の内部側へ材料ガスを供給することにより、各第2電極棒31の各噴出孔から基板エリアAに向かって材料ガスを噴射する。そして、高周波電源23によって各アレイアンテナ19に高周波波電力を供給することにより、各アレイアンテナ19の周辺にプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を各基板Wの表面に付着させる。これにより、各基板Wの表面に非結晶シリコン膜又は微結晶シリコン膜等の薄膜を成膜(形成)することができる。
【0035】
ここで、成膜処理中に、サーキュレータ79によって各冷却パネル本体45の循環流路47に温調した冷却油を循環させることにより、前端部側(真空チャンバー3の奥行き方向の一端部側)及び後端部側(真空チャンバー3の奥行き方向の他端部側)の基板エリアAにセットされた基板(端部側の基板)Wからの輻射熱を冷却パネル本体45の吸収面45fによって吸収して、端部側の基板Wを冷却する。また、サーキュレータ79によって各中間冷却パネル本体63の中間循環流路65に温調した冷却油を循環させることにより、中間側(真空チャンバー3の奥行き方向の中間側)の基板エリアAにセットされた基板(中間側の基板)Wからの輻射熱を中間冷却パネル本体63の吸収面63fによって吸収して、中間側の基板Wを冷却する。これにより、高周波電源23から各アレイアンテナ19に供給される高周波電力を大きくして、各アレイアンテナ19の周辺のプラズマ密度を高めても、各基板Wの表面温度が過度に上昇することを抑えて、各基板Wの表面温度を適正な温度範囲(本発明の実施形態にあっては、例えば150〜300℃)に保つことができる。
【0036】
特に、各冷却パネル本体45の吸収面45f及び各中間冷却パネル本体63の吸収面63fにセラミックスのコーティング処理が施されているため、各冷却パネル本体45の吸収面45f及び各中間冷却パネル本体63の吸収面63fの熱吸収率を高めて、各基板Wの表面温度が過度に上昇することを十分かつ確実に抑えることができる。
【0037】
(ii) 誘導結合型電極21の着脱に関する作用
冷却パネル41がフロント壁9の内壁面及びリア壁11の内壁面に設けられ、中間冷却パネル61がその上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動可能になっているため、図7に示すように、フロント壁9及びリア壁11によってチャンバー本体7のフロント開口部7a及びリア開口部7bを開き、かつ中間冷却パネル61をその上端側の水平な揺動軸心C周りに揺動させることにより、誘導結合型電極21と冷却パネル41及び中間冷却パネル61との干渉を回避しつつ、真空チャンバー3に対する複数本の誘導結合型電極21の着脱作業(取付と取外し)を容易に行うことができる。
【0038】
(iii) 本発明の実施形態の効果
本発明の実施形態によれば、各アレイアンテナ19の周辺のプラズマ密度を高めても、各基板Wの表面温度を適正な温度範囲に保つことができるため、アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置1の生産性を高いレベルまで向上させつつ、薄膜の品質を高めることができる。
【0039】
また、誘導結合型電極21と冷却パネル41及び中間冷却パネル61との干渉を回避しつつ、真空チャンバー3に対する複数本の誘導結合型電極21の着脱作業を容易に行うことができるため、誘導結合型電極21の着脱作業に要する時間を短くして、誘導結合型電極21の洗浄メンテナンス等のメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0040】
更に、中間冷却パネル61の水平な揺動軸心Cが中間導入管67及び中間導出管73の軸心に一致するようになっているため、中間導入管67又は中間導出管73からの冷却油の漏れを抑えつつ、中間冷却パネル61を揺動させるための構成の簡略化を図ることができる。
【0041】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、次のように種々の態様で実施可能である。
【0042】
即ち、各冷却パネル本体45の吸収面45fが冷却油の循環より温度制御可能にする代わりに、熱源(冷熱源)からの熱伝達又はヒートパイプによる熱伝達により温度制御可能にしても構わない。同様に、各中間冷却パネル本体63の吸収面63fを冷却油の循環により温度制御可能にする代わりに、熱源からの熱伝達又はヒートパイプによる熱伝達により温度制御可能にしても構わない。また、冷却油の代わりに、冷却水等の別の熱媒(冷熱媒)を各冷却パネル本体45の循環流路47及び各中間冷却パネル本体63の中間循環流路65に循環させるようにしても構わない。
【0043】
また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0044】
A 基板エリア
W 基板
1 アレイアンテナ式のCVDプラズマ装置
3 真空チャンバー
5 真空圧発生源
7 チャンバー本体
7a チャンバー本体のフロント開口部
7b チャンバー本体のリア開口部
7c チャンバー本体のサイド開口部
9 フロント壁
11 リア壁
15 天井壁
17 ガス供給源
19 アレイアンテナ
21 誘導結合型電極
23 高周波電源
27 第1電極棒
31 第2電極棒
33 接続金具
35 ガイドレール
37 台車
39 基板ホルダ
41 冷却パネル
43 ブラケット
45 冷却パネル本体
45f 冷却パネル本体の吸収面
47 循環流路
49 導入管
51 導出管
53 レフト支持部材
57 ライト支持部材
61 中間冷却パネル
C 中間冷却パネルの揺動軸心
63 中間冷却パネル本体
63f 中間冷却パネル本体の吸収面
65 中間循環流路
67 中間導入管
69 中間導出管
73 中間導出管
79 サーキュレータ
81 往き回路
83 戻り回路
95 熱交換器
97 ヒーター
99 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気中でプラズマを発生させつつ、プラズマによって分解された材料ガスの成分を基板の表面に付着させることにより、基板の表面に薄膜を形成するアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置において、
正面側にフロント開口部を有しかつ背面側にリア開口部を有したチャンバー本体、前記チャンバー本体の正面側に設けられかつ前記フロント開口部を開閉するフロント壁、前記チャンバー本体の背面側に設けられかつ前記リア開口部を開閉するリア壁、及び前記チャンバー本体の上側に設けられた天井壁を備えてあって、内部を真空状態に減圧可能な真空チャンバーと、
前記真空チャンバーの内部側へ材料ガスを供給するガス供給源と、
前記真空チャンバーの内部に奥行き方向に間隔を置いて配設され、垂直状態で同一平面上に幅方向に間隔を置いて配列されかつ前記真空チャンバーに対して着脱可能な複数本のアンテナ素子を備え、両側に垂直状態の基板をセット可能な基板エリアがそれぞれ形成され、プラズマを発生させる複数のアレイアンテナと、
各アレイアンテナに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記フロント壁の内壁面及び前記リア壁の内壁面に垂直にそれぞれ配設され、片側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面を有し、基板を冷却する冷却パネルと、
前記天井壁の内壁面における隣接する各基板エリア間に垂直に吊設され、両側に基板からの輻射熱を吸収可能な吸収面をそれぞれ有し、基板を冷却する複数の中間冷却パネルと、を具備し、
複数の前記中間冷却パネルのうちのいずれかの前記中間冷却パネルがその上端側の水平な揺動軸心周りに揺動可能になっていることを特徴とするアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項2】
各冷却パネルは、片側に前記吸収面を有しかつ内部に熱媒を循環させるための循環流路が形成された冷却パネル本体、前記冷却パネル本体に設けられかつ前記循環流路に冷熱媒を導入する導入管、及び前記冷却パネル本体に設けられかつ前記循環流路から冷熱媒を導出する導出管を備え、
各中間冷却パネルは、両側に前記吸収面をそれぞれ有しかつ内部に熱媒を循環させるための中間循環流路が形成された中間冷却パネル本体、前記中間冷却パネル本体に設けられかつ前記中間循環流路に冷熱媒を導入する中間導入管、及び前記中間冷却パネル本体に設けられかつ前記中間循環流路から冷熱媒を導出する中間導出管を備えていることを特徴とする請求項1に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項3】
前記いずれかの前記中間冷却パネルの揺動軸心が前記中間導入管及び前記中間導出管の軸心と一致していることを特徴とする請求項2に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項4】
各冷却パネルの前記吸収面及び各中間冷却パネルの前記吸収面にセラミックスのコーティング処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。
【請求項5】
各アレイアンテナにおける各アンテナ素子は、U字形状又は棒形状の誘導結合型電極であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載のアレイアンテナ式のCVDプラズマ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87293(P2013−87293A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225600(P2011−225600)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】