説明

アンカー孔への無機系接着材の充填具

【課題】無機系接着材を、アンカー孔へ計画通りの充填量で充填可能であると共に空気の混入も抑制可能であって、的確に施工管理できて所定の接着性能を確保することができ、充填操作も容易かつ適切に実施し得ると共に、施工にあっても、騒音や振動が少なく居ながら施工に好適であると共に全方向の施工に適合し得、そしてまた構成が簡単なアンカー孔への無機系接着材の充填具を提供する。
【解決手段】一定の内径及び外径で、アンカー孔3の孔深さより長い中空筒体状に形成され、無機系接着材Aが先端開口4aから内方へ向かって装填されて、アンカー孔内部へ挿抜自在に挿入される充填用スリーブ4と、充填用スリーブより長いロッド状に形成され、充填用スリーブに後端開口4bから相対移動自在に挿入されて、アンカー孔からの当該充填用スリーブの抜き出しを案内すると共に、充填用スリーブ内の無機系接着材をアンカー孔内部に残置するガイド体5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機系接着材を、アンカー孔へ計画通りの充填量で充填可能であると共に空気の混入も抑制可能であって、的確に施工管理できて所定の接着性能を確保することができ、充填操作も容易かつ適切に実施し得ると共に、施工にあっても、騒音や振動が少なく居ながら施工に好適であると共に全方向の施工に適合し得、そしてまた構成が簡単なアンカー孔への無機系接着材の充填具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート躯体等の構造体にあと施工でアンカーを設ける場合、構造体に、アンカー挿入用のアンカー孔を穿設し、このアンカー孔内部に、アンカーを構造体に定着するための、無機系や有機系の接着材を充填する。
【0003】
接着材をアンカー孔に充填する方式として、カプセル方式と注入方式が知られている。カプセル方式は、接着材料を封入したガラス管やフィルム、紙チューブなどのカプセルをアンカー孔に装填するようにしたものである。
【0004】
カプセル方式では、アンカー孔に装填したカプセルを打撃及び回転で破砕し、アンカー孔に充満した接着材料を撹拌混合して接着材とし、接着作用を発現させる。打撃及び回転を伴うため、騒音や振動が大きく、建物に居住者が居住した状態で施工を行う、いわゆる居ながら施工には不向きである。
【0005】
注入方式には、無機系接着材の使用に適合するもので、カートリッジ式と現場調合式がある。無機系接着材は、有機系接着材に比べて、有害物質の揮発がなく、アンカーの定着性能にも優れる。
【0006】
現場調合式は、現場で接着材料を調合して接着材を作製し、作製した接着材をアンカー孔に、流し込むなどして充填するものである。充填操作を円滑化するには、接着材に高い流動性が要求される。流動性の高い接着材は、アンカーの下向き施工には好都合であるが、上向き施工や横向き施工では、アンカー孔から接着材が漏れ出すことを阻止するために、別途シール部材を用意してアンカー孔に対し施工を行う必要があり、全方向の施工には不向きである。
【0007】
言い換えると、現場調合式では、全方向の施工を企図する場合、接着材をある程度の硬さで作製する必要があり、硬くすると今度は、アンカー孔への接着材の充填不良が発生したり、施工性が低下するなどの不都合が生じる。
【0008】
カートリッジ式は、予め調合された接着材や未調合の接着材を収納したカートリッジを有し、後者の接着材の場合には、アンカー孔へ接着材を注入する際に、カートリッジで接着材料を撹拌混合するなどして接着材を作製する。カートリッジ式について、特許文献1が知られている。
【0009】
特許文献1の「無機系アンカーの上向き施工方法」は、コンクリート構造物の上向き穿孔に無機系アンカーを上向きに施工するにあたり、一端に吐出口を有するシリンダと、該シリンダ内において、該吐出口に向かって移動可能なピストン壁と、該シリンダ内に水硬性組成物の粉体が収容されているカートリッジに、前記該吐出口から液体を導入し、該カートリッジに振動を与え該水硬性組成物粉体と該液体とを撹拌混合して該カートリッジ内で無機系アンカーを調製した後、該ピストン壁を該吐出口側に移動させて該吐出口から無機系アンカーを、乾燥した上向き穿孔に充填するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−73694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
カートリッジ式に使用されるコーキングガンは、一回毎の吐出量にバラツキを生じやすい。このため、接着材の充填量の確認といった管理が難しいという課題があった。また、コーキングガンで一つのアンカー孔へ複数回、接着材を注入する操作を行うと、アンカー孔内部では、注入操作の度に接着材が塊となり、このため充填状態が不連続なものとなって空気を巻き込みやすく、接着性能を適切に確保することが難しいという課題があった。
【0012】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、無機系接着材を、アンカー孔へ計画通りの充填量で充填可能であると共に空気の混入も抑制可能であって、的確に施工管理できて所定の接着性能を確保することができ、充填操作も容易かつ適切に実施し得ると共に、施工にあっても、騒音や振動が少なく居ながら施工に好適であると共に全方向の施工に適合し得、そしてまた構成が簡単なアンカー孔への無機系接着材の充填具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかるアンカー孔への無機系接着材の充填具は、一定の内径及び外径で、アンカー孔の孔深さよりも長い中空筒体状に形成され、アンカー孔内への充填量で無機系接着材が先端開口から内方へ向かって装填されて、アンカー孔内部へ挿抜自在に挿入される充填用スリーブと、該充填用スリーブよりも長いロッド状に形成され、該充填用スリーブに後端開口から相対移動自在に挿入されて、アンカー孔からの当該充填用スリーブの抜き出しを案内すると共に、該充填用スリーブ内の無機系接着材をアンカー孔内部に残置するガイド体とを備えたことを特徴とする。
【0014】
前記ガイド体には、前記充填用スリーブ内方への挿入深さを無機系接着材のアンカー孔内への充填量に対応させるために、該充填用スリーブの後端開口位置に照合されるマークが設けられることを特徴とする。
【0015】
前記充填用スリーブは、装填された無機系接着材を外部から視認することが可能な素材で形成されることを特徴とする。
【0016】
前記充填用スリーブには、先端から後端側へ該充填用スリーブの長さ方向に沿って、無機系接着材のアンカー孔内への充填量に対応する長さの切り欠き部が形成されることを特徴とする。
【0017】
前記切り欠き部に装填された無機系接着材がアンカー孔内への充填量となるように該切り欠き部の長さ方向に均すために、前記充填用スリーブの長さ方向に沿ってスライド自在な摺り切り部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるアンカー孔への無機系接着材の充填具にあっては、無機系接着材を、アンカー孔へ計画通りの充填量で充填することができると共に空気の混入も抑制でき、的確に施工管理できて所定の接着性能を確保することができ、また、充填操作も容易かつ適切に実施することができると共に、施工にあっても、騒音や振動が少なく居ながら施工に好適であると共に全方向の施工に適合し得、そしてまた簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るアンカー孔内部へ無機系接着材の充填具の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した充填具の操作からアンカーの定着までを順次説明する図である。
【図3】本発明に係るアンカー孔内部へ無機系接着材の充填具の第2実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3に示した充填具の平面図である。
【図5】図3に示した充填具に備えられる切り欠き部の断面形状の例を示す説明図である。
【図6】図3に示した充填具に用いられる摺り切り部材を説明するための、充填用スリーブを正面から見た図である。
【図7】図6に示した摺り切り部材の使い方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係るアンカー孔への無機系接着材の充填具の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2には、第1実施形態に係るアンカー孔への無機系接着材の充填具1が示されている。
【0021】
図1は充填具1の斜視図、図2は、充填具1の操作からアンカー2の定着までを順次説明する図であって、図2(a)は、接着材Aを装填した充填具1をアンカー孔3に挿入した状態を、図2(b)は、接着材Aをアンカー孔3に移し替えた状態を、図2(c)は、充填具1を撤去した状態を、図2(d)は、接着材Aを充填したアンカー孔3内へアンカー2を挿入した状態を、図2(e)は、アンカー2の定着を完了した状態を、それぞれ示している。
【0022】
第1実施形態に係るアンカー孔3への無機系接着材Aの充填具1は主に、充填用スリーブ4とガイド体5とから構成される。
【0023】
充填用スリーブ4は、無機系接着材Aが装填され、コンクリート躯体等の構造体6に形成したアンカー孔3に対し、挿抜操作される。ガイド体5は、充填用スリーブ4内に相対移動自在に挿入されて、充填用スリーブ4に装填した接着材Aをアンカー孔3内部へ移し替えて充填する役割と、充填用スリーブ4のアンカー孔3からの抜き出し操作をガイドする役割とを営む。無機系接着材Aは、現地調合式で、現場にて接着材料を調合して作製される。
【0024】
充填用スリーブ4は、アンカー孔3に臨む先端に先端開口4aを有し、反対側の後端に後端開口4bを有する、真っ直ぐな中空筒体状に形成される。充填用スリーブ4は、その長さ方向に沿って、一定の内径d及び外径Dで形成される。従って、先端開口4aと後端開口4bは同一口径で形成される。充填用スリーブ4には、先端開口4aからその内方へ向かって、無機系接着材Aが装填される。
【0025】
充填用スリーブ4の内径dは、できる限り大きく設定することで、接着材Aの装填量を多く確保することができる。充填用スリーブ4には、アンカー孔3内への充填量で接着材Aが装填される。従って、充填用スリーブ4を一回アンカー孔3に挿入操作することで、アンカー孔3内部に必要充填量の接着材Aが充填される。
【0026】
充填用スリーブ4の外径Dは、アンカー孔3の各種孔径に対応させて設定される。具体的には充填用スリーブ4の外径Dは、充填用スリーブ4の外周面4cがアンカー孔3の内周面3aに摺接するかしない程度でアンカー孔3に対し摺動自在に、アンカー孔3の孔径よりも僅かに小さく設定される。これにより、充填用スリーブ4は、アンカー孔3の内部へ、アンカー孔3の内周面3aをガイドにして、挿抜自在に挿入される。
【0027】
充填用スリーブ4は、アンカー孔3に挿入した際に、一部がアンカー孔3から外部へ突出するように、アンカー孔3の孔深さよりも長く形成される。充填用スリーブ4は、鋼製など金属製であっても、樹脂製やガラス製であっても良い。透明な樹脂材や硬質ガラスを素材とすれば、装填した接着材Aを外部から視認することができ、装填量や装填状態など、アンカー孔3へ充填する接着材Aを管理することができる。
【0028】
充填用スリーブ4への接着材Aの装填量は、さほど厳密である必要はなく、数グラム程度の誤差を見込んで良い。第1実施形態の充填用スリーブ4では、接着材Aの装填量は、充填用スリーブ4の内径dで決定される断面積×充填用スリーブ4の長さ方向に沿う装填距離Lとなる。充填用スリーブ4の先端開口4aからはみ出す接着材Aは、先端開口4aに沿って、へらなどの摺り切り具6で摺り切ることで、接着材Aの装填量を適正にすることができる。
【0029】
ガイド体5は、真っ直ぐなロッド状に形成される。ガイド体5は、充填用スリーブ4に後端開口4bから相対移動自在に挿入される。ガイド体5の挿入深さは、充填用スリーブ4内方へ挿入した状態で当該充填用スリーブ4と共にアンカー孔3に挿入される際、その挿入先端5aがアンカー孔3内部に達するように設定される。従って、充填用スリーブ4の全長は、ガイド体5の挿入深さに装填距離Lを加えた長さ以上に設定される。
【0030】
ガイド体5の外径は、ガイド体5の外周面5bが充填用スリーブ4の内周面4dに摺接するかしない程度で充填用スリーブ4に対し摺動自在に、充填用スリーブ4の内径dよりも僅かに小さく設定される。ガイド体5は、鋼製などの金属製であっても、樹脂製であっても良い。
【0031】
ガイド体5が挿入された状態で、充填用スリーブ4は、アンカー孔3に挿入され、アンカー孔3から抜き出す際には、アンカー孔3及びガイド体5に対して相対移動しつつ、これらアンカー孔3及びガイド体5によって抜き出しが案内される。ガイド体5は、充填用スリーブ4のアンカー孔3からの抜き出しを案内するために、充填用スリーブ4よりも長く形成される。
【0032】
ガイド体5は、充填用スリーブ4のアンカー孔3からの抜き出し操作時にその位置が保持され、もしくはアンカー孔3内部に向かって僅かながら押し込まれることにより、充填用スリーブ4に装填されている接着材Aをアンカー孔3内部へ移し替えて、当該アンカー孔3内部に残置する。
【0033】
ガイド体5には、接着材Aの装填距離L位置へ挿入先端5aが達したときに後端開口4b位置と合致する箇所に、マーク7が設けられる。ガイド体5のマーク7を充填用スリーブ4の後端開口4b位置に照合すると、ガイド体5の充填用スリーブ4内方への挿入深さが、充填用スリーブ4への接着材Aの装填量、すなわちアンカー孔3への充填量に対応する。
【0034】
例えば、充填用スリーブ4に多めに接着材Aを装填し、ガイド体5のマーク7を後端開口4b位置に合わせれば、過剰な接着材Aが先端開口4aから溢れ出し、適正量の接着材Aを充填用スリーブ4に装填することができる。
【0035】
次に、第1実施形態に係るアンカー孔3への無機系接着材Aの充填具1の作用について説明する。現場調合式にて無機系接着材Aを作製し、作製した接着材Aを、図1に示すように、先端開口4aから充填用スリーブ4内方へ装填する。
【0036】
接着材Aの装填の仕方には、2通りある。第1に、ガイド体5を、マーク7の有無にかかわらず、後端開口4bから充填用スリーブ4内方へ浅く挿入し、予め計量しておいた接着材Aを充填用スリーブ4内部にすべて装填する。次いで、ガイド体5を押し込んで、接着材Aが先端開口4a位置で満ちるようにする。
【0037】
第2に、図2(a)に示すように、充填用スリーブ4に、マーク7付きのガイド体5を浅く挿入しておき、接着材Aを目分量で充填用スリーブ4内部に充填する。次いで、ガイド体5を押し込んで、マーク7を後端開口4b位置に照合し、過剰な接着材Aを先端開口4aから溢れ出させたり、足りない接着材Aを先端開口4aから補充する。
【0038】
いずれにあっても、アンカー孔3への充填量で接着材Aを充填用スリーブ4に装填することができる。装填操作では最後に、摺り切り具6で先端開口4aの接着材Aを摺り切ることが好ましい。
【0039】
図2(a)に示すように、接着材Aを装填した充填用スリーブ4をアンカー孔3内部に挿入する。好ましくは、先端開口4aがアンカー孔3の孔底3bに達するように挿入する。次いで、図2(b)に示すように、ガイド体5を位置保持し、もしくは僅かながらアンカー孔3内部へ押し込みながら、アンカー孔3及びガイド体5をガイドとして、充填用スリーブ4をアンカー孔3の外方へ抜き出す。充填用スリーブ4はガイド体5に保持しておいても、あるいはガイド体5から引き抜いても良い。
【0040】
これにより、接着材Aは充填用スリーブ4からアンカー孔3へ移し替えられ、ガイド体5は、接着材Aがアンカー孔3外方へ漏れ出さないように保持しつつ、接着材Aをアンカー孔3内部に残置する。その後、図2(c)に示すように、ガイド体5をアンカー孔3から抜き出す。
【0041】
その後、図2(d)に示すように、インパクトレンチなどの回転工具でアンカー2を回転させながらアンカー孔3内に押し込む。この際、アンカー孔3の開口縁3cに係合されるような形状寸法からなるOリングなどのシール材8をアンカー2に装着することで、アンカー孔3から空気を速やかに排出できると共に、シール材8で接着材Aをアンカー孔3内に押し止めることができ、接着材Aの密実な充填を確保することができる。図2(e)に示すように、接着材Aが硬化してアンカー2の定着が完了したら、シール材8を撤去する。なお、アンカー2にシール材8を装着しなくても、施工可能であることは言うまでもない。
【0042】
以上説明した第1実施形態に係るアンカー孔3への無機系接着材Aの充填具1にあっては、アンカー孔3内への充填量で接着材Aが装填される充填用スリーブ4を備えているので、アンカー孔3へ計画通りの充填量で接着材Aを充填することができる。充填用スリーブ4の内径d及び装填距離Lの設定により、充填用スリーブ4への一回の装填量を、アンカー孔3に充填すべき充填量とすることができ、複数回にわたり充填を行う場合と異なり、アンカー孔3への充填操作に伴う空気の混入を抑制することができる。従って、接着材量の管理に基づくあと施工アンカー2の施工管理を的確化でき、所定の接着性能、アンカー定着性能を確保することができる。
【0043】
先端開口4aから接着材Aが装填された状態でアンカー孔3内部へ挿抜自在に挿入される充填用スリーブ4に対し、後端開口4bから相対移動自在に挿入されるガイド体5を備えているので、充填用スリーブ4と共にガイド体5をアンカー孔3に挿入したり、あるいは、充填用スリーブ4をアンカー孔3に挿入した後で充填用スリーブ4にガイド体5を挿入するなどの操作により、ほぼ全量の接着材Aをアンカー孔3内方へ移し替えて残置することが可能であると共に、アンカー孔3の内周面3aに摺接し得る充填用スリーブ4をアンカー孔3から円滑に抜き出すことができ、充填操作を容易かつ適切に実施することができる。
【0044】
あと施工アンカー2の施工全般についても、現地調合式で作製した接着材Aをアンカー孔3に充填する方式に適合するものであり、打撃及び回転で接着材料から接着材を作製するカプセル方式とは異なり、騒音や振動の発生がなく、居ながら施工に好適である。
【0045】
接着材Aをガイド体5でアンカー孔3内部に残置することができるので、接着材Aとして、流動性の乏しい固練りのものであっても、アンカー孔3への充填を円滑に行うことができ、下向きのみならず、上向き・横向きなど、全方向について接着材の充填を行うことができる。
【0046】
充填具1は、充填用スリーブ4とガイド体5の2部品であって、構成が極めて簡単であると共に、安価である。
【0047】
ガイド体5に、充填用スリーブ4の後端開口4b位置に照合するマーク7を設けることにより、目視で確実に、充填用スリーブ4への装填量をガイド孔3への充填量に対応させることができ、接着材Aの的確な管理を簡単な構成で容易に行うことができる。
【0048】
充填用スリーブ4を、装填した無機系接着材Aを外部から視認することが可能な素材で形成したので、装填量のみならず、装填状態も確認することができ、空気の混入が多い場合などには、装填をやり直すことなどが可能で、アンカー孔3への充填操作の施工管理を向上することができる。
【0049】
図3〜図7には、第2実施形態に係るアンカー孔3への無機系接着材Aの充填具9が示されている。図3は充填具9の斜視図、図4はその平面図、図5は、各種の切り欠き部10の断面形状を示す説明図、図6は、摺り切り部材11を説明するための、充填用スリーブ12を正面から見た図、図7は、摺り切り部材11の使い方を説明するための図で、図7(a)は、摺り切り前の様子を、図7(b)は、摺り切り後の様子をそれぞれ示す図である。
【0050】
第2実施形態では、充填用スリーブ12には、先端開口12aが位置する先端から後端開口12bが位置する後端側へ充填用スリーブ12の長さ方向に沿って、切り欠き部10が形成される。切り欠き部10を形成したことにより、接着材A作製用のバケツなどの容器に充填用スリーブ12を差し入れて掬い取ることで、接着材Aを簡単に装填することができる。
【0051】
切り欠き部10の長さは、接着材Aのアンカー孔3への充填量に相当する長さ、すなわち、上記装填距離Lに設定される。第2実施形態の充填用スリーブ12では、接着材Aの装填量は、第1実施形態における接着材Aの装填量に、充填用スリーブ12を切り欠いた肉厚相当分を加えたものとなる。
【0052】
切り欠き部10を形成することにより、充填用スリーブを透明な素材で形成した場合と同様に、装填量や装填状態を目視で確認することができ、接着材Aの充填管理を向上することができる。ガイド体5の挿入深さは図3及び図4に示すように、充填用スリーブ12の後端開口12aから切り欠き部10までに設定される。
【0053】
切り欠き部10の切り欠き深さは図5に示すように、種々に設定することができる。図5(a)は、充填用スリーブ12の上部を一部切り欠いたものであり、図5(b)は、僅かに浅く切り欠いた場合、図5(c)は、充填用スリーブ12をほぼ半円状に深く切り欠いた場合である。接着材Aの視認性や保持性から、図5(a)の例が最も好ましい。
【0054】
第2実施形態では、図7(a)に示すように、掬い取った接着材Aが切り欠き部10に盛られた状態なる。このため、充填用スリーブ12の長さ方向に沿ってスライド自在な摺り切り部材11が用意される。摺り切り部材11は、切り欠き部10に装填された接着材Aがアンカー孔3内への充填量となるように、接着材Aを切り欠き部10の長さ方向に均すようになっている。
【0055】
摺り切り部材11は、図6に示すように、充填用スリーブ12の外周面12cに沿うアーチ状であって、充填用スリーブ12の長さ方向に適宜な長さを有するブロック状に形成される。例えば、摺り切り部材11は、パイプ材から切り出すことで形成される。特に、摺り切り部材11の、切り欠き部10に臨む内周面11aは、充填用スリーブ12のほぼ外径寸法で形成される。これにより、充填用スリーブ12の長さ方向に沿ってスライド自在となって、充填用スリーブ12への接着材Aの装填量を、上記装填量とすることができる。摺り切り部材11は、充填用スリーブ12を包囲するリング形状であっても良い。
【0056】
第2実施形態では、図7(a)に示すように、切り欠き部10で接着材Aを掬い取って充填用スリーブ12に装填し、その後、図7(b)に示すように、摺り切り部材11を充填用スリーブ12の長さ方向に沿って前後にスライドさせて接着材Aを均す。これにより、接着材Aの装填を完了することができる。均す操作により、切り欠き部10と接着材Aとの間の空気を除去することもできる。
【0057】
接着材Aの装填を終えたら、アンカー孔3内部へ充填具9を挿入することで、上記第1実施形態と同様に、アンカー孔3内部へ無機系接着材Aを充填することができる。このような第2実施形態にあっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
1,9 アンカー孔への無機系接着材の充填具
3 アンカー孔
4,12 充填用スリーブ
4a,12a 先端開口
4b,12b 後端開口
5 ガイド体
7 マーク
10 切り欠き部
11 摺り切り部材
A 無機系接着材
D 充填用スリーブの外径
d 充填用スリーブの内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の内径及び外径で、アンカー孔の孔深さよりも長い中空筒体状に形成され、アンカー孔内への充填量で無機系接着材が先端開口から内方へ向かって装填されて、アンカー孔内部へ挿抜自在に挿入される充填用スリーブと、
該充填用スリーブよりも長いロッド状に形成され、該充填用スリーブに後端開口から相対移動自在に挿入されて、アンカー孔からの当該充填用スリーブの抜き出しを案内すると共に、該充填用スリーブ内の無機系接着材をアンカー孔内部に残置するガイド体とを備えたことを特徴とするアンカー孔への無機系接着材の充填具。
【請求項2】
前記ガイド体には、前記充填用スリーブ内方への挿入深さを無機系接着材のアンカー孔内への充填量に対応させるために、該充填用スリーブの後端開口位置に照合されるマークが設けられることを特徴とする請求項1に記載のアンカー孔への無機系接着材の充填具。
【請求項3】
前記充填用スリーブは、装填された無機系接着材を外部から視認することが可能な素材で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のアンカー孔への無機系接着材の充填具。
【請求項4】
前記充填用スリーブには、先端から後端側へ該充填用スリーブの長さ方向に沿って、無機系接着材のアンカー孔内への充填量に対応する長さの切り欠き部が形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載のアンカー孔への無機系接着材の充填具。
【請求項5】
前記切り欠き部に装填された無機系接着材がアンカー孔内への充填量となるように該切り欠き部の長さ方向に均すために、前記充填用スリーブの長さ方向に沿ってスライド自在な摺り切り部材を備えたことを特徴とする請求項4に記載のアンカー孔への無機系接着材の充填具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−29002(P2013−29002A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167519(P2011−167519)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】