説明

アンテナのビーム合成方法およびアンテナ

【課題】 複雑な放射パターンを容易に成形することができ、損失が少なく、設計、製造および設置が容易でコストが低いアンテナを提供する。
【解決手段】 地板導体21上に誘電体23を配置したイメージ線路型の伝送体の誘電体表面に漏出部として金属ストリップ24を装荷した漏れ波型のアンテナユニットU1 〜U5 を、その放射面が同一方向に向いた状態で縦列に接続したアンテナにおいて、各アンテナユニットの長さLを、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値にほぼ等しく設定し、各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が、合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように各アンテナユニットの金属ストリップの周期dと長さsを設定して、所望のビーム特性を得ている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主にミリ波帯で使用されるアンテナにおいて、複雑な放射パターンが要求される路上車両監視レーダや高速無線アクセス基地局での使用に適したアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ミリ波を使用した路上車両監視システムでは、図10に示すように、アンテナ1から道路2に電波を発射し、路上を走行する車両3からの反射波を受信することで走行車両の監視を行なっている。
【0003】このような監視システムでは、監視対象物以外からの反射波を受けないように水平面の放射パターンの幅が狭く、また、遠い位置(数100m)からアンテナ1の近傍までの広い範囲でほぼ等しいレベルの反射波を受けられるように、垂直面の放射パターンPがコセカント関数に近いことが要求されている。
【0004】このような成形ビームの放射パターンを得るために、従来では、反射鏡アンテナ(パラボラアンテナ)、導波管スロットアレーアンテナ、マイクロストリップアレーアンテナ等が用いられている。
【0005】導波管スロットアレーアンテナおよびマイクロストリップアレーアンテナのようなアレーアンテナの場合には、指向性合成理論に基づいて各アンテナ素子の励振振幅と位相を計算で求め、それを実現するように個々のアンテナ素子の励振を制御している。
【0006】例えば、導波管スロットアレーアンテナでは、各スロット毎に放射される電磁波の位相と振幅を計算して、その計算結果に基づいてスロット個々の寸法や位置を決定する。また、マイクロストリップアレーアンテナでは、個々のアンテナ素子の給電線長やインピーダンスによって励振を制御している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した各アンテナには、次のような問題があった。
【0008】(イ)反射鏡アンテナは、鏡面と給電ホーンの設計が難しく、前記した複雑な放射パターンにするために特殊鏡面にする必要があり製作コストが高くなり、しかも立体構造であるため、設置工事等も面倒である。
【0009】(ロ)導波管スロットアレーアンテナは、前記したように、スロット個々の寸法や位置を決めるため設計が複雑となる。また、並列に配置されたアンテナ素子間で相互結合が生じるので、この影響を考慮して希望の励振分布を実現するのが困難であり、特に、ミリ波帯等の高い周波数帯で、個々のアンテナ素子の励振振幅と位相を厳密に合わせるためには、厳しい製作精度が要求され、コスト高になる。
【0010】(ハ)マイクロストリップアレーアンテナの場合も導波管スロットアレーアンテナと同様に、個々のアンテナ素子の励振の制御が複雑であり、また、給電損失が大きく、周波数帯域が狭く、しかも、高電力での使用が難しいという問題がある。
【0011】本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、複雑な放射パターンを容易に成形することができるアンテナのビーム合成方法と、損失が少なく、設計、製造および設置が容易でコストが低いアンテナを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の請求項1のアンテナのビーム合成方法は、電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットを、漏れ波の放射面が同一方向に向いた状態で縦列に接続して、所望のビームを合成するアンテナのビーム合成方法であって、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値と、前記複数のアンテナユニットの伝送体の長さとがほぼ等しくなるように設定し、前記各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が前記合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように、各アンテナユニットの漏出部の長さと周期を設定することによって、前記所望のビームを得るようにしている。
【0013】また、本発明の請求項2のアンテナは、電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットが、各アンテナユニットの漏れ波の放射面を同一方向に向けた状態で一本の連続した伝送路を形成するように縦列に接続され、該一本の連続した伝送路の一端側から電磁波の給電を受け所望のビーム特性で電磁波を放射するアンテナであって、前記複数Nのアンテナユニットは、各アンテナユニットの放射ビームの放射角が、前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に分割したときの両端を含むN個の分割点の放射角にそれぞれほぼ一致し、且つ各アンテナユニットの放射ビームの放射強度を合成した前記各放射角毎の合成放射強度が前記各分割点の放射強度に近くなるように形成されている。
【0014】また、本発明の請求項3のアンテナは、電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットが、各アンテナユニットの漏れ波の放射面を同一方向に向けた状態で一本の連続した伝送路を形成するように縦列に接続され、該一本の連続した伝送路の一端側から電磁波の給電を受け所望のビーム特性で電磁波を放射するアンテナであって、前記複数のアンテナユニットの伝送体の長さは、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値にほぼ等しく設定され、各アンテナユニットの漏出部の長さと周期は、各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が、前記合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように設定されている。
【0015】また、本発明の請求項4のアンテナは、請求項2または請求項3記載のアンテナにおいて、前記各アンテナユニットの伝送体は地板導体の表面に棒状の誘電体を配置したイメージ線路によって形成され、前記漏出部は前記誘電体の表面に長さ方向に沿ってほぼ一定周期に装荷された複数の装荷体によって形成されている。
【0016】また、本発明の請求項4のアンテナは、請求項2または請求項3記載のアンテナにおいて、前記各アンテナユニットの伝送体は基本モードを伝送する導波管によって形成され、前記漏出部は前記導波管の表面に長さ方向に沿ってほぼ一定周期に設けられた複数のスロットによって形成されている。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1は、走行車両監視システムに用いられる一実施形態のミリ波のアンテナ20を示している。
【0018】このアンテナ20は、図1に示すように、矩形状の地板導体21上に形成されている。
【0019】地板導体21の表面21a側の上部にはホーン型の給電部22が設けられている。給電部22の内部には、導波管(図示せず)による分岐回路が形成されており、上面側に設けられた接続口22aから入力される電磁波を複数経路(この実施形態では6経路)に分岐して、後述する各誘電体23の一端側にそれぞれ同相給電する。
【0020】給電部22の下部から地板導体22の表面22aの下部の間には、例えばアルミナ等で断面矩形の角棒状に形成された所定長さの誘電体23が、その一側面を地板導体21の表面21aに接した状態で縦に複数本(図1では6本)平行に設けられている。各誘電体23の一端23aは、給電部22との整合のためにテーパ状(図4参照)に形成されている。
【0021】このように地板導体21上に棒状の誘電体23を配置した回路はイメージ線路と呼ばれる伝送路を形成しており、図2に示すように、誘電体23の一端23a側から給電された電磁波が他端23b側へ向かって伝送される。
【0022】各誘電体23の表面には、誘電体23と同一幅の金属ストリップ24が装荷体として長さ方向に沿って間欠的に形成されている。
【0023】このように、イメージ線路を構成している誘電体23の表面に金属ストリップ24を所定間隔で設けたり、後述するように誘電体23の表面をコルゲート(波型)加工することで、誘電体23内に多数の空間高調波が発生し、そのうちのあるものが漏れ波として誘電体23の表面から出力される。この漏れ波の放射パターンは、金属ストリップの間隔d(ストリップ周期という)と、金属ストリップの長さs(ストリップ幅という)とによって決定される。
【0024】即ち、前記空間高調波βn は、次式、βn =β+2nπ/d (−∞≦n≦∞)
(ただし、βは誘電体線路の位相定数)で表され、βn が自由空間波数k0 より小さい場合に漏れ波が放射される。
【0025】そして、この漏れ波の放射方向は、誘電体23の表面に直交する軸xを基準として誘電体23の長さ方向zを正の角度方向とし、漏れ波の自由空間波長をλ0とすると、次式、θn =sin-1(βn /k0
=sin-1〔(β/k0 )+nλ0 /d〕
で表される。ここで、−1≦sinθn ≦1であり、誘電体の場合(β/k0 )は1より大きい定数であるから、θn が有効な解を持つために通常はn=−1とする。
【0026】これらの式から、漏れ波の放射ビームの方向はストリップ周期dで決まることが判る。また、漏れ波の単位長さ当りの放射量(漏れ波定数)はストリップ幅sで決まることが知られている。
【0027】この実施形態のアンテナ20は、放射特性が異なる漏れ波型のアンテナユニットを、その放射面が同一方向に向いた状態で各アンテナユニットの地板導体と誘電体とが1本の連続したイメージ線路を形成するように縦列に接続したものであり、その合成ビームがコセカントビームをとなるようにしている。
【0028】ここで、そのビームの合成方法について説明する。n番目のアンテナユニットの振幅がan で均一、位相定数がβn 、長さがLとし、u、un を、sin θ=u、 sin θn =un =βn /k0と定義すると、そのアンテナユニットの指向性は、En =an sin 〔(u−un )k0 L/2〕/〔(u−un )k0 L/2〕となる。
【0029】このアンテナユニットをN個縦列に接続すると、アンテナ全体の指向性は、E(u)=Σn n jP(sin U)/U …(1)
となる。ただし、Σn はn=1〜Nまでの総和を表し、U=(u−un )k0 L/2、P=(Ψn −k0 uZn )であり、Ψn はZ=Zn に到達する伝送波の位相である。
【0030】ここで、所望の合成ビームを定義する領域をu空間でN−1に等分し、その領域の両端を含む各分割点にun (n=1、2、…、N)を割当て、その間隔(分割幅)をΔuとして、アンテナユニットの長さLをλ0 /Δuに選ぶと、式(1)の第2項(sin U)/Uは直交標本関数となり、u=un では、n番目のビームのみが大きさ1となり、他のビームは零となる。
【0031】したがって、振幅an をun における所望の指向性のレベルに選べば、u1 、u2 、…、uN の標本点においては所望の指向性に一致するパターンが得られる。
【0032】N=3の場合の簡単な例を示すと、図3のように、u=0.2〜0.4までの範囲を所望の合成ビーム(希望パターン)Prを定義する領域とし、その間を2つの領域に等分し(Δu=0.1)、各アンテナユニットの長さLをλ0 /Δu=10λ0 に選ぶ。
【0033】そして、第1のアンテナユニットの振幅a1 を希望パターン(コセカントビーム)のu=0.2のレベルに対応するように設定し、第2のアンテナユニットの振幅a2 を希望パターンのu=0.3のレベルに対応するように設定し、さらに、第3のアンテナユニットの振幅a3 を希望パターンのu=0.4のレベルに対応するように設定する。
【0034】このように設定すると、図3に示しているように、第1のアンテナユニットの指向性E1 のメインローブM1 の最大点(u=0.2)で、第2、第3のアンテナユニットの指向性E2 、E3 の電界が零となり、同様に、第2のアンテナユニットの指向性E2 のメインローブM2 の最大点(u=0.3)では、第1、第3のアンテナユニットの指向性E1 、E3 の電界が零となり、第3のアンテナユニットの指向性E3 のメインローブM3 の最大点(u=0.4)では、第1、第2のアンテナユニットの指向性E1 、E2 の電界が零となる。
【0035】このため、アンテナ全体の合成パターンは、u=0.2、0.3、0.4の位置(各分割点の位置)で希望パターンPrと一致し、他の位置では希望パターンPrを中心にして上下に変化する特性となり、希望パターンPr(コセカントビーム)に沿った特性が得られる。
【0036】なお、アンテナユニットは伝送路を一端側から他端側へ電波を進行させながら電波を漏出させているから、単位長さ当りの漏れ量が均一であると、電波が進行するにつれてその振幅が小さくなり、完全に均一な振幅分布を得ることはできない。そのために、1つのアンテナユニット内でのストリップ幅s(金属ストリップの長さ)を給電側から僅かずつ増加させ、給電側から遠くなるほど漏れ量を増やして均一の振幅分布を得るようにしている。
【0037】図1に示した実施形態のアンテナ20は、長さLが等しい5つのアンテナユニットU1 〜U5 を縦列に接続したものであり、希望パターンの定義領域を4つに分け、その両端を含む5つの各分割点u1 〜u5 (図示せず)に対応した放射角θ1 〜θ5 が各アンテナユニットの最大放射角となり、各分割点における希望パターンのレベルが各アンテナユニットの最大強度となるようにストリップ周期dとストリップ幅sを設定したものである。
【0038】即ち、図4に示すように、誘電体23の最も給電部22側に形成されたアンテナユニットU1 の誘電体表面には、その漏れ波のメインローブM1 の最大放射方向が希望パターンPrの定義領域の端の分割点u1 に対応した角度θ1 となり、その強度が分割点u1 における希望パターンPrのレベルに対応した値a1 となるストリップ周期d1 とストリップ幅s1 で金属ストリップ24が設けられている。
【0039】また、アンテナユニットU1 に続くアンテナユニットU2 の誘電体表面には、その漏れ波のメインローブM2 の最大放射方向が希望パターンPrの定義領域のの端から2番目の分割点u2 に対応した角度θ2 となり、その強度が分割点u2における希望パターンPrのレベルに対応した値a2 になるストリップ周期d2とストリップ幅s2 で金属ストリップ24が設けられている。
【0040】以下同様にして、アンテナユニットU3 〜U5 の誘電体表面には、各アンテナユニットU3 〜U5 の漏れ波のメインローブM3 〜M5 の最大放射方向が希望パターンPrの定義領域の各分割点u3 〜u5 にそれぞれ対応した角度θ3 〜θ5となり、その強度が分割点u3 〜u5 における希望パターンPrのレベルに対応した値a3 〜a5 になるストリップ周期d3 〜d5 とストリップ幅s3 〜s5 で金属ストリップ24が設けられている。
【0041】また、各アンテナユニットのストリップ幅s1 〜s5 は、前記したように、各アンテナユニット毎に振幅分布が均一となるように僅かずつ変化させているので、1つのアンテナユニットの最大放射方向では、他のアンテナユニットから放射される電波の強度は零となり、希望パターンに近似した合成ビームが得られる。なお、図4は各アンテナユニットU1 〜U5 のビームを極座標上に示したものである。
【0042】図5、図6は、5つのアンテナユニットU1 〜U5 を縦列接続したアンテナのサブローブを含めた垂直面の合成パターンをu軸上で示したもので、図5の特性は、遠距離からの監視が可能なように0°近傍の放射レベルを高く(26dB)設定したときのものであり、偏差がやや大きいが希望パターンに沿った特性が得られている。また、図6の特性は、比較的近距離からの監視用に0°付近の放射レベルをやや低く(21dB)設定したものであり、図5に示した特性に対して偏差が大幅に減って、希望パターンPrに非常に近い特性が得られている。なお、図5、図6の縦軸は、θ=0、即ち、z軸方向の放射レベルを基準(0dB)にしたときの相対値である。
【0043】これら図5、図6の特性は、一本の誘電体23上に5つのアンテナユニットを縦列に形成したときのものであるが、一本の誘電体23上に8つのアンテナユニットを縦列に形成したときの特性例を図7に示す。このアンテナの特性は、図5のアンテナと同様に、遠距離からの監視が可能なように0°近傍の放射レベルを高く(26dB)設定したときのものであり、図5の特性と比べて短い周期で変化しているが希望パターンからの偏差量は小さく、希望パターンPrに非常に近い特性が得られている。
【0044】なお、アンテナユニットU1 〜U5 を縦列に接続した1本のアンテナの水平面の放射特性は路上監視用としては広すぎるため、この実施形態のアンテナ20では、前記したように誘電体23を平行に複数本(図1R>1では6本)並べ、各誘電体23毎に5つのアンテナユニットU1 〜U5 をそれぞれ形成して、水平面の放射パターンを路上監視用として最適な広がり幅に設定している。
【0045】このため、アンテナ20からは、水平面の指向特性が道路幅にほぼ対応した幅で、垂直面の指向特性がコセカント関数に近くなり、遠方の車両には強い電波が放射され、近傍の車両には弱い電波が放射されて、道路の長さ方向の広い範囲でほぼ等しい感度で車両からの反射波を受信することができる。
【0046】このアンテナ20は、低伝送損失の漏れ波型のアンテナユニットを縦列接続した構造であるので、アンテナ全体としても低伝送損失である。また、平面構造であって、その表面処理のみで簡単に製作でき、設計、製造および設置が容易でコストが低く、しかも、装荷体としての金属ストリップは印刷技術やエッチング技術によって高い寸法精度で形成することができるので、ビームの合成精度も高い。
【0047】また、金属ストリップの周期と長さによって、各アンテナユニットの放射特性を任意に設定することができ、複雑な放射特性が容易に得られる。
【0048】また、イメージ線路では、誘電体外部の電磁界は指数関数的に減少するので、これを用いた漏れ波型のアンテナユニットの誘電体の側面側への電波の漏れは非常に少なく、この実施形態のようにアンテナを並列に配置した場合でも隣接するアンテナユニット同士の干渉による放射パターンの乱れが少なく、逆にグレーティングローブが発生しないように隣接するアンテナユニットの間隔をより接近させて配置することができ、アンテナ全体を小型化できる。
【0049】
【他の実施の形態】前記実施形態では、5つ(および8つ)のアンテナユニットを縦列に接続した場合について説明したが、垂直面の目標放射特性がより複雑な場合にはユニット数を増加し、垂直面の目標放射特性がより単純な場合にはユニット数を減少してもよく、目標とする垂直面の放射特性に応じて種々変更可能である。
【0050】また、前記実施形態では、水平面の放射特性を狭くするために本発明のアンテナを並列に設けていたが、これは、目標とする水平面の放射特性に応じて種々変更可能であり、水平面の放射特性が広くてもよい場合には1本だけにしてもよい。
【0051】また、前記実施形態では、誘電体表面から電磁波を漏出させるための装荷体として金属ストリップを用いていたが、図8に示すように、誘電体23の表面に装荷体として所定高さhの高段部24′を一定間隔で設けてコルゲート(波型)状に形成することによって、漏れ波型のアンテナユニットを構成することができる。
【0052】この場合、高段部24′の間隔d(コルゲート周期という)と、高段部24′の長さs(コルゲート幅という)とは、前記実施形態の金属ストリップのストリップ周期およびストリップ幅にそれぞれ相当しており、前記した2つの式がそのまま使用でき、アンテナユニットの放射方向はコルゲート周期dで決まり、放射量はコルゲート幅sと高段部24′の高さhとで決まる。
【0053】また、前記実施形態の給電部22は、地板導体の表面側に設けられていたが、入力された電磁波を地板導体の背面側で分岐して、表面側の各誘電体の一端に給電する折り返しホーン型の給電部を用いてもよい。
【0054】また、前記実施形態では、イメージ線路に電波を漏出させるための装荷体を設けた漏れ波型のアンテナユニットを縦列に接続していたが、漏れ波型のアンテナである導波管スロットアンテナに本発明を適用することもできる。
【0055】導波管スロットアンテナは、基本波を伝送する所定長の導波管の一側面にスロットを長さ方向に沿って複数設けて電波を漏出させるアンテナであり、漏れ波の放出方向は、θn =sin -1〔(β/k0 )+(2n−1)λ0 /2dn
(通常はビームを1つだけにするためにn=−1を使う)となるが、基本的な動作はイメージ線路に装荷体を設けた場合と同様である。
【0056】図9はこのような導波管スロットアンテナを1つのアンテナユニットとして、5つのアンテナユニットU1 〜U5 を、各アンテナユニットの導波管が1本の伝送路を形成するように、縦列に接続したものである。
【0057】このアンテナにおいても、各アンテナユニットU1 〜U5 のスロット30の間隔d1 〜d5 およびスロット幅s1 〜s5 を、希望パターンPrのu空間における定義領域を4つに等分割する分割幅Δuで漏れ波の自由空間波長λ0 を除算した値に、各アンテナユニットU1 〜U5 の長さLを一致させ、各アンテナユニットU1 〜U5 の漏れ波のメインローブの最大放射方向が希望パターンPrの定義領域の各分割点にそれぞれ対応した角度となり、その強度が各分割点における希望パターンPrのレベルに対応した値になるように設定することで、希望パターンに近似した合成ビームを得ることができる。
【0058】このアンテナでは、ほぼ同一長さのスロットが一定間隔に設けられた導波管スロットアンテナを縦列に接続して、所望のパターンを得るようにしているから、設計も容易で加工もし易い。
【0059】なお、前記実施形態では、各アンテナユニットの振幅分布をそれぞれ均一にするために、金属ストリップの長さ(ストリップ幅)を僅かずつ増加していたが、アンテナユニット内の金属ストリップの長さを全て同一にしても、合成パターンが希望パターンに対して掛け離れることはないので、設計をより簡単化するために、各アンテナユニット毎の金属ストリップの長さを同一にしてもよい。
【0060】また、厳密な合成精度が要求されていない場合には、所望のビーム特性を適度な間隔でN−1に分割し、その両端を含む分割点に各アンテナユニットの放射ビームの放射角をほぼ一致させるとともに、各アンテナユニットの放射ビームの放射強度を合成した各放射角毎の合成放射強度が各分割点の放射強度に近くなるように、各アンテナユニットを形成してもよい。この場合には、一つのアンテナユニットのメインローブの最大放射角において、他のアンテナユニットの放射強度が零とならない場合があるが、製造上の精密な加工が不要で安価に所望のビーム特性に近い特性のアンテナが得られる。これは、装荷体として誘電体の表面に高段部を設けたアンテナユニットや導波管にスロットを設けたアンテナユニットの場合でも同様である。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の請求項1のアンテナのビーム合成方法および請求項3のアンテナは、縦列に接続された漏れ波型の複数のアンテナユニットの各伝送体の長さを、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値にほぼ等しく設定し、各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が、合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように各アンテナユニットの漏出部を設定している。
【0062】このため、1つのアンテナユニットのメインローブの最大点では他の全てのアンテナユニットの放射強度が最小となり、各アンテナユニットのメインローブの最大点が所望のパターン上の点に一致して、その合成パターンを所望のパターンに極めて近いものとすることができ、複雑な任意のビームを容易に且つ精度よく合成することができる。
【0063】また、本発明の請求項2のアンテナでは、縦列に接続された漏れ波型の複数Nのアンテナユニットは、放射ビームの放射角が、所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に分割したときの両端を含むN個の分割点の放射角にそれぞれほぼ一致し、各アンテナユニットの放射ビームの放射強度を合成した各放射角毎の合成放射強度が各分割点の放射強度に近くなるように形成されているため、製造上の精密な加工が不要で安価に所望のビーム特性に近い特性のアンテナが得られる。
【0064】また、各アンテナユニットの伝送体が、地板導体上に誘電体を配置したイメージ線路によって形成され、漏出部が誘電体の表面に装荷された装荷体によって形成された構造のアンテナでは、伝送損失が少なく、平面構造であるため、設計、製造および設置が容易でコストが低く、複雑な放射特性を高い精度で得られる。また、イメージ線路では、誘電体外部の電磁界は指数関数的に減少するので、隣接するアンテナユニット同士の同士の干渉が少なく、アンテナユニット同士を接近させてグレーティングローブを発生させないようにすることができる。それにより、水平面内で希望する指向性を得るようにアンテナユニットを配置することができ、アンテナ全体を小型化することができる。
【0065】また、各アンテナユニットの伝送体が導波管によって形成され、漏出部が導波管の表面に設けられたスロットによって形成された構造のアンテナでは、各アンテナユニット内のスロットの寸法および周期をほぼ一様にすることができ、アンテナ素子間の相互結合を考慮しないで済み、設計、製造が容易でコストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のアンテナの斜視図
【図2】イメージ線路の信号の伝搬状態を説明するための側面図
【図3】本発明のビーム合成方法を説明するための図
【図4】一実施形態の各アンテナユニットの放射特性を示す図
【図5】実施形態の垂直面の合成放射特性の一例を示す図
【図6】実施形態の垂直面の合成放射特性の一例を示す図
【図7】ユニット数を増加したときの垂直面の合成放射特性の一例を示す図
【図8】他の実施形態の要部の斜視図
【図9】他の実施形態の要部の斜視図
【図10】ミリ波を使用した路上車両監視システムを説明するための概略図
【符号の説明】
20 アンテナ
21 地板導体
22 給電部
23 誘電体
24 金属ストリップ
1 〜 U5 アンテナユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットを、漏れ波の放射面が同一方向に向いた状態で縦列に接続して、所望のビームを合成するアンテナのビーム合成方法であって、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値と、前記複数のアンテナユニットの伝送体の長さとがほぼ等しくなるように設定し、前記各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が前記合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように、各アンテナユニットの漏出部の長さと周期を設定することによって、前記所望のビームを得ることを特徴とするアンテナのビーム合成方法。
【請求項2】電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットが、各アンテナユニットの漏れ波の放射面を同一方向に向けた状態で一本の連続した伝送路を形成するように縦列に接続され、該一本の連続した伝送路の一端側から電磁波の給電を受け所望のビーム特性で電磁波を放射するアンテナであって、前記複数Nのアンテナユニットは、各アンテナユニットの放射ビームの放射角が、前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に分割したときの両端を含むN個の分割点の放射角にそれぞれほぼ一致し、且つ各アンテナユニットの放射ビームの放射強度を合成した前記各放射角毎の合成放射強度が前記各分割点の放射強度に近くなるように形成されていることを特徴とするアンテナ。
【請求項3】電磁波の伝送路を形成する伝送体と該伝送体の表面に長さ方向に沿って複数形成された漏出部とからなる漏れ波型の複数Nのアンテナユニットが、各アンテナユニットの漏れ波の放射面を同一方向に向けた状態で一本の連続した伝送路を形成するように縦列に接続され、該一本の連続した伝送路の一端側から電磁波の給電を受け所望のビーム特性で電磁波を放射するアンテナであって、前記複数のアンテナユニットの伝送体の長さは、放射角θに対しu=sin θとなる値uについての前記所望のビーム特性の合成対象領域をN−1に等分割したときの分割幅で漏れ波の自由空間波長を除算した値にほぼ等しく設定され、各アンテナユニットの漏出部の長さと周期は、各アンテナユニットの最大放射角度とその放射強度が、前記合成対象領域の両端を含むN個の分割点の放射角と放射強度にほぼ一致するように設定されていることを特徴とするアンテナ。
【請求項4】前記各アンテナユニットの伝送体は地板導体の表面に棒状の誘電体を配置したイメージ線路によって形成され、前記漏出部は前記誘電体の表面に長さ方向に沿ってほぼ一定周期に装荷された複数の装荷体によって形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のアンテナ。
【請求項5】前記各アンテナユニットの伝送体は基本モードを伝送する導波管によって形成され、前記漏出部は前記導波管の表面に長さ方向に沿ってほぼ一定周期に設けられた複数のスロットによって形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のアンテナ。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図10】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図9】
image rotate