説明

アンテナ装置及びその形成方法

【課題】部品点数や製造工数を増加させることなく、インサート成形を行うこと。
【解決手段】中心軸(CA)を持つロッド状アンテナコア(22)と、このロッド状アンテナコアの基端部に連結された導電性接続金具(24)と、ロッド状アンテナコアの先端頂部から導電性接続金具に至る外周面に一体成形された樹脂(26)と、を有するアンテナ装置(20)において、樹脂(26)には、当該樹脂を成形する際にロッド状アンテナコア(22)を押さえるための複数本の押さえピンのそれぞれの穴(261;262)が、ロッド状アンテナコア(22)の中心軸(CA)と直交する方向に対して所定角度(5°)傾斜した状態で、穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護カバーとして外周面に樹脂が被覆されたアンテナ装置及びその形成方法に関し、特に、車載用のロッドアンテナ及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において周知のように、現在、自動車等の車両には種々のアンテナ装置が搭載される。例えば、そのようなアンテナ装置として、AM/FMラジオ用アンテナがある。AM/FMラジオ用アンテナとしては、一般的に、ロッドアンテナが使用される。
【0003】
ロッドアンテナを備えたアンテナ装置は、通常、次のような構成をしている。ロッドアンテナはトップカバーに装着される。トップカバーはベースと組み合わされて、アンテナケースを構成する。このアンテナケース内には、増幅回路(ブースタ回路)を搭載した回路基板が収容されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような車載用のロッドアンテナは、ロッド状アンテナ素子部材(ロッド状アンテナコア)と、その基端部に取り付けられた導電性接続金具と、を基本構成とする。導電性接続金具は、コネクタ部(支持金具)によって、トップカバーに固定される。一方、ロッドアンテナは、ロッド状アンテナ素子部材(ロッド状アンテナコア)及び導電性接続金具の外周面に形成された保護カバー(樹脂)を更に備えている。この保護カバー(樹脂)は、金属面の劣化防止或いはアンテナ自体の屈曲強度を確保するためのものである。保護カバー(樹脂)は、例えば、ロッド状アンテナ素子部材(ロッド状アンテナコア)と導電性接続金具とを成形型枠(金型装置)内に配置したインサート成形によって形成される。
【0005】
このような保護カバー(樹脂)をインサート成形によって形成する技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許第4,100,804号公報(特許文献2)は、アンテナの外周面に樹脂を一体形成するにあたって、その先端頂部から基端部に至る外周面に樹脂を形成することによって、生産性の向上を図った、「アンテナ及びその形成方法」を開示している。この特許文献1に開示されたアンテナの形成方法では、ロッド状アンテナ素子部材(ロッド状アンテナコア)の側面に多数の突起を形成したり、樹脂成形金型(金型装置)の型枠空間内面に多数の突起を形成している。導電性接続金具はネジ部を有し、インサート成形する際、このネジ部を樹脂成形金型(金型装置)の下部に設けられた固定駒に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−296095号公報(図3)
【特許文献2】特許第4,100,804号公報(図2、段落[0011]〜[0016])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたインサート成形法では、ロッド状アンテナ素子部材(ロッド状アンテナコア)の側面或いは樹脂成形金型(金型装置)の型枠空間内面に多数の突起を形成する必要があるので、部品点数や製造工数が増加するという問題がある。
【0009】
したがって、本発明の解決すべき課題は、部品点数が少ない、アンテナ装置及びその形成方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の解決すべき課題は、製造工数が少ない、アンテナ装置の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、中心軸(CA)を持つロッド状アンテナコア(22)と、このロッド状アンテナコアの基端部に連結された導電性接続金具(24)と、ロッド状アンテナコアの先端頂部から導電性接続金具に至る外周面に一体成形された樹脂(26;26A;26B;26C)と、を有するアンテナ装置(20;20A;20B;20C)において、樹脂(26;26A;26B;26C)には、当該樹脂を成形する際にロッド状アンテナコア(22)を押さえるための複数本の押さえピン(126,146)のそれぞれの穴(261;262,261A;262A)が、ロッド状アンテナコア(22)の中心軸(CA)と直交する方向に対して所定角度傾斜した状態で、穿設されていることを特徴とするアンテナ装置が得られる。
【0012】
上記アンテナ装置において、上記所定角度が5°乃至10°の範囲内にあることが好ましい。複数の穴(261;262,261A;262A)が、樹脂(26;26A;26B;26C)の長手方向の中央よりも先端頂部側に設けられていることが望ましい。複数の穴(261;262,261A;262A)は、樹脂(26;26A;26B;26C)の長手方向で異なる位置に設けられていてよい。樹脂(26B)は、その先端部に平坦面(34)を持つことが好ましい。樹脂(26C)は、導電性接続金具(24)の外周面を覆う基端部の縁にカット形状(36)を持つことが望ましい。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、第1の側面側に配置された第1の金型(12)と、第1の側面と反対側の第2の側面側に配置された第2の金型(14)とを有し、第1の金型(12)と第2の金型(14)とを相対的に水平方向に進退させる、横型射出成形機の金型装置(10)を使用してアンテナ装置(20;20A;20B;20C)をインサート成形により形成する方法であって、第1の金型(12)と第2の金型(14)とを分割するパーティングライン(PL)は、鉛直方向に対して、上端側が第1の側面側へ近接し、かつ下端側が第2の側面側へ近接するように、所定角度だけ傾斜して実質的に所定の直線に沿って延在しており、金型装置(10)が開いている状態で、中心軸(CA)を持つロッド状アンテナコア(22)の基端部に導電性接続金具(24)が連結されたロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具(24)がネジ込まれた固定駒(124)を、第1の金型(12)の上部に設けられた溝に取り付ける工程と、第1の金型(22)から第2の金型(14)へ向けて水平方向に突出する少なくとも2つの第1の押さえピン(126)によって、中心軸(CA)がパーティングライン(PL)と実質的に平行となるように、ロッド状アンテナコア(22)を位置決めする工程と、第1の金型(12)と第2の金型(14)とを相対的に水平方向に近接するように進行させて金型装置(10)を閉じることによって、ロッド状アンテナコア(22)を、少なくとも2つの第1の押さえピン(126)と同一の垂直位置にあって、第2の金型(14)から第1の金型(12)へ向けて水平方向に突出する少なくとも1つの第2の押さえピン(146)と接触させた状態で、第1の金型(12)と第2の金型(14)との間に形成されるキャビティ空間(CS)内にロッド状アンテナ部材(22,24)を収容する工程と、キャビティ空間(CS)に溶融樹脂を充填し、冷却して、ロッド状アンテナコア(22)の先端頂部から導電性接続金具(24)に至る外周面に樹脂(26;26A;26B;26C)を一体成形する工程と、を有することを特徴とするアンテナ装置の形成方法が得られる。
【0014】
上記アンテナ装置の形成方法において、第1の金型(12)がコアを備えた可動金型から成り、第2の金型(14)がキャビティを備えた固定金型から成ってよい。その代わりに、第1の金型がキャビティを備えた固定金型から成り、第2の金型がコアを備えた可動金型から成ってもよい。上記所定角度が5°乃至10°の範囲内にあることが好ましい。少なくとも2つの第1の押さえピン(126)と少なくとも1つの第2の押さえピン(146)とは、ロッド状アンテナコア(22)の長手方向の中心位置よりも先端頂部寄りの位置に設けられていることが好ましい。パーティングライン(PL)は、その下側の先端部が、所定の直線から第1の側面側へ近づく方向へ曲げられていてよい。第1の金型(12)は、キャビティ空間(CS)を形成する最下端部の内壁面が、平坦面となっていることが好ましい。第2の金型(14)は、キャビティ空間(CS)を形成する最上端部の内壁面が、パーティングライン(PL)から離れるに従って下方へ徐々に曲げられた曲面となっていることが好ましい。
【0015】
尚、上記括弧内の符号は、本発明の理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、金型装置のパーティングラインを鉛直方向に対して所定角度傾けているので、部品点数や製造工数を増加させることなく、インサート成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の横型射出成形機の金型装置を使用して従来のアンテナ装置をインサート成形により形成する方法を説明するための正面縦断面図である。
【図2】図1に図示した金型装置の主要部の横断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る、横型射出成形機の金型装置を使用してアンテナ装置をインサート成形により形成する方法を説明するための正面縦断面図である。
【図4】図3に示した金型装置の主要部の横断面図である。
【図5】パーティングラインが鉛直方向に対して5°の角度だけ傾いている場合に、樹脂が固化された後に、金型装置を開いた状態の、成形品であるアンテナ装置を示す縦断面図である。
【図6】パーティングラインが鉛直方向に対して10°の角度だけ傾いている場合に、樹脂が固化された後に、金型装置を開いた状態の、成形品であるアンテナ装置を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る、横型射出成形機の金型装置の主要部を示す部分縦断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法により形成されたアンテナ装置の主要部を示す部分縦断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法により形成されたアンテナ装置の主要部を示す部分斜視図である。
【図10】図9に示したアンテナ装置を形成するための、横型射出成形機の金型装置の固定金型(第2の金型)のキャビティの主要部を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の理解を容易にするために、射出成形機の概略について説明する。
【0019】
周知のように、射出成形機とは、熱などによって溶融状態になった樹脂を金型装置の中に射出し、樹脂製品(成形品)を作成する機械である。少し詳述すると、射出成形機は、成形材料を加熱シリンダ内で溶融可塑化し、その溶融した樹脂を金型装置内へ射出し、金型装置内部で固化させて、成形品をつくる機械である。射出成形機は、大きく分けると、金型装置の開閉を行う型締め装置と、成形材料を可塑化して射出する可塑化装置(射出装置)とにより構成される。
【0020】
型締め装置と射出装置との配列の仕方により、射出成形機は、横型射出成形機と縦型射出成形機とに分けられる。横型射出成形機は、型締め装置と射出装置とがともに横方向(水平)に組み合わせられたものである。縦型射出成形機は、型締め装置と射出装置とがともに縦方向(垂直)に組み合わせられたものである。
【0021】
横型射出成形機においては、金型装置は、第1の側面側に配置された第1の金型と、第1の側面とは反対側の第2の側面側に配置された第2の金型とを有し、型締め装置によって、第1の金型と第2の金型とを相対的に水平方向に進退させられる。例えば、第1の金型は、コア(オス型)を備えた可動金型からなり、第2の金型は、キャビティ(メス型)を備えた固定金型からなる。コア(オス型)とキャビティ(メス型)の両者をあわせて一般にキャビティ部という。したがって、横型射出成形機の金型装置では、可動金型を固定金型に対して水平方向に進退させられる。
【0022】
上述したように、射出成形のプロセスにおいて、溶融樹脂を金型装置内に注入し、充填された溶融樹脂を冷却・固化された後に金型装置から成形品を取り出す。その際、金型装置から成形品を取り出すには、金型装置を開かなければならない。すなわち、金型装置の固定側(キャビティ)と可動側(コア)とを分割する必要がある。この金型装置の合わせ面(すなわち、分割ライン(面))をパーティングライン(Parting Line=PL)と呼ぶ。
【0023】
また、成形品を抜き取る際、型開閉方向に突出しても成形品が金型装置から抜けない形状がある。その形状部分をアンダーカットという。成形品のアンダーカット部は、できるだけ成形品設計の段階において、機能上支障がなければ、アンダーカットのない形状に変更することが必要である。
【0024】
本発明は、横型射出成形機の金型装置を使用してアンテナ装置をインサート成形により形成する方法に係る。
【0025】
本発明を説明する前に、本発明の理解を容易にするために、図1および図2を参照して、従来技術について詳細に説明する。
【0026】
図1は、従来の横型射出成形機の金型装置10’を使用して従来のアンテナ装置をインサート成形により形成する方法を説明するための正面縦断面図である。図2は、図1に示した金型装置10’の主要部の横断面図である。
【0027】
図1および図2では、直交座標系(X,Y,Z)を採用している。図1および図2に示した状態では、X軸方向は前後方向(奥行き方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向、横方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。
【0028】
前述したように、横型射出成形機の金型装置10’は、コア(オス型)122’を備えた可動金型12’と、キャビティ(メス型)を備えた固定金型(図示せず)とを有する。図示の例では、可動金型12’は左側に配置され、固定金型は右側に配置されている。図1は、金型装置10’が開いた状態を示しており、固定金型が図示されていない。尚、固定金型の更に右側には、横型射出成形機の可塑化装置(射出装置)が設けられている。
【0029】
可動金型12’は第1の金型とも呼ばれ、固定金型は第2の金型とも呼ばれる。また、図1において、左側は第1の側面側とも呼ばれ、右側は第2の側面側とも呼ばれる。従って、横型射出成形機の金型装置10’は、第1の側面側に配置された第1の金型12’と、第1の側面とは反対側の第2の側面側に配置された第2の金型とを有する。図示しない型締め装置によって、可動金型(第1の金型)12’は固定金型(第2の金型)に対して水平方向(Y軸方向)に進退させられる。
【0030】
この横型射出成形機の金型装置10’を使用してインサート成形により形成すべきアンテナ装置は、中心軸CAを持つロッド状アンテナコア22と、このロッド状アンテナコア22の基端部に連結された導電性接続金具24とを備える。ロッド状アンテナコア22と導電性接続金具24との組み合わせは、ロッド状アンテナ部材(22,24)と呼ばれる。
【0031】
アンテナ装置の形成方法は、横型射出成形機の金型装置10’を使用して、ロッド状アンテナコア22の先端頂部から導電性接続金具24に至る外周面に樹脂を一体形成する方法である。
【0032】
従来の横型射出成形機の金型装置10’においては、可動金型(第1の金型)12’と固定金型(第2の金型)とを分割するパーティングラインPL'が、鉛直方向(Z軸方向)に沿って延在している。
【0033】
可動金型(第1の金型)12’のコア122’の上部の溝には、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24がネジ込まれた固定駒124’が入れられる。また、可動金型(第1の金型)12’は、ロッド状アンテナコア22を押えるために、当該可動金型(第1の金型)12’から固定金型(第2の金型)へ向けて水平方向に突出する複数本の可動側押さえピン126を有する。可動側押さえピン126は、第1の押さえピンとも呼ばれる。
【0034】
この複数本の可動側押さえピン126は、ロッド状アンテナコア22の長手方向の中心位置よりも先端頂部側の位置に設けられている。図2に示されるように、複数本の可動側押さえピン126は、一対ずつ、二箇所に設けられている。したがって、可動側押さえピン126の総本数は、4本である。
【0035】
同様に、固定金型(第2の金型)は、ロッド状アンテナコア22を押えるために、当該固定金型(第2の金型)から可動金型(第1の金型)12’へ向けて水平方向に突出する複数本の固定側押さえピン146(図2参照)を有する。固定側押さえピン146は、第2の押さえピンとも呼ばれる。複数本の固定側押さえピン146は、上記複数本の可動側押さえピン126と同一の垂直位置にある。図2に示されるように、複数本の固定側押さえピン146は、一本ずつ、二箇所に設けられる。したがって、固定側押さえピン146の総本数は、2本である。
【0036】
尚、可動金型(第1の金型)12’は、成形品を金型装置から取り出すためのイジェクタピンを持つイジェクタ機構(図示せず)を備えている。
【0037】
次に、従来のアンテナ装置の形成方法について説明する。
【0038】
先ず、図1に示されるように、金型装置10’が開いている状態で、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24を固定駒124’にネジ込んだ後、可動金型(第1の金型)12’のコア122’の上部に設けられている溝に固定駒124’を入れる。
【0039】
引き続いて、型締め装置によって、固定金型(第2の金型)に対して可動金型(第1の金型)12’を水平方向(図1の右方向)に近接するように進行して、金型装置10’を閉じる。これによって、ロッド状アンテナコア22が、複数本の可動側押さえピン126と複数本の固定側押さえピン146とに接触した状態で、可動金型(第1の金型)12’と固定金型(第2の金型)との間に形成されるキャビティ空間CSにロッド状アンテナ部材(22,24)が収容される。
【0040】
そして、可塑化装置(射出装置)のノズルからゲートを介して、キャビティ空間CSに溶融樹脂を充填し、冷却する。これにより、ロッド状アンテナコア22の先端頂部から導電性接続金具24に至る外周面に樹脂が一体成形される。尚、樹脂としては、熱可塑性エラストマーが使用される。
【0041】
最後に、型締め装置を使用して、固定金型(第2の金型)に対して可動金型(第1の金型)12’を水平方向(Y軸方向)に退却させることによって、金型装置10’を開き、イジェクタ機構(イジェクタピン)を使用して、金型装置10’から成形品であるアンテナ装置を固定駒124’と一緒に取り出す。
【0042】
しかしながら、この従来のアンテナ装置の形成方法では、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24がネジ込まれた固定駒124’を、可動金型(第1の金型)12’のコア122’の上部に設けられた溝に取り付ける工程の後において、図1に示されるように、ロッド状アンテナコア22がぶらついてしまう。換言すれば、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAがパーティングラインPL’と平行になるように、ロッド状アンテナコア22を位置決めすることができない。
【0043】
その結果、型締め装置を使用して金型装置10’を型締めした際に、図2に示されるように、ロッド状アンテナコア22を、複数本の可動側押さえピン126と複数本の固定側押さえピン146とで押さえることができずに、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAがパーティングラインPL’からズレてしまうという虞がある。
【0044】
本発明は、このような問題点を解決した、アンテナ装置の形成方法を提供する。
【0045】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0046】
(第1の実施の形態)
図3および図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。
【0047】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る、横型射出成形機の金型装置10を使用してアンテナ装置をインサート成形により形成する方法を説明するための正面縦断面図である。図4は、図3に示した金型装置10の主要部の横断面図である。
【0048】
図3および図4では、直交座標系(X,Y,Z)を採用している。図3および図4に示した状態では、X軸方向は前後方向(奥行き方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向、横方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。
【0049】
前述したように、横型射出成形機の金型装置10は、コア(オス型)122を備えた可動金型12と、キャビティ(メス型)142を備えた固定金型14とを有する。図示の例では、可動金型12は左側に配置され、固定金型14は右側に配置されている。図3は、金型装置10が閉じた状態を示している。尚、固定金型14の更に右側には、横型射出成形機の可塑化装置(射出装置)が設けられている。
【0050】
可動金型12は第1の金型とも呼ばれ、固定金型14は第2の金型とも呼ばれる。また、図3において、左側は第1の側面側とも呼ばれ、右側は第2の側面側とも呼ばれる。従って、横型射出成形機の金型装置10は、第1の側面側に配置された第1の金型12と、第1の側面側とは反対側の第2の側面側に配置された第2の金型14とを有する。図示しない型締め装置によって、可動金型(第1の金型)12は固定金型(第2の金型)14に対して水平方向(Y軸方向)に進退させられる。
【0051】
図5に示されるように、この横型射出成形機の金型装置10を使用してインサート成形により形成すべきアンテナ装置20は、中心軸CAを持つロッド状アンテナコア22と、このロッド状アンテナコア22の基端部に連結された導電性接続金具24とを備える。ロッド状アンテナコア22と導電性接続金具24との組み合わせは、ロッド状アンテナ部材(22,24)と呼ばれる。
【0052】
本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の形成方法は、横型射出成形機の金型装置10を使用して、ロッド状アンテナコア22の先端頂部から導電性接続金具24に至る外周面に樹脂26を一体形成する方法である。
【0053】
図示の横型射出成形機の金型装置10において、可動金型(第1の金型)12と固定金型(第2の金型)14とを分割するパーティングラインPLは、鉛直方向(Z軸方向)に対して、上端側が第1の側面側(左側)へ近接し、下端側が第2の側面側(右側)へ近接するように、所定角度だけ傾斜して実質的に所定の直線に沿って延在している。図示の例では、所定角度は5°に等しい。
【0054】
尚、所定角度は5°乃至10°の範囲内にあることが好ましい。その理由は次の通りである。ロッド状アンテナコア22は、ロッド状アンテナコア22の自重が4本の可動側押さえピン126側にかかることで位置決めされるが、所定角度が5°より小さいと、ロッド状アンテナコア22の自重が4本の可動側押さえピン126側にかかる度合いが弱くなり、ロッド状アンテナコア22を位置決めすることが困難になるからである。一方、所定角度が10°より大きいと、後述するようにアンダーカット部の大きさ(寸法)が大きくなり過ぎ、成形品を金型装置10から抜き出すことが困難になるからである。
【0055】
可動金型(第1の金型)12のコア122の上部に設けられた溝には、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24がネジ込まれた固定駒124が入れられる。また、可動金型(第1の金型)12は、ロッド状アンテナコア22を押えるために、当該可動金型(第1の金型)12から固定金型(第2の金型)14へ向けて水平方向に突出する複数本の可動側押さえピン126を有する。可動側押さえピン126は、第1の押さえピンとも呼ばれる。
【0056】
この複数本の可動側押さえピン126は、ロッド状アンテナコア22の長手方向の中心位置よりも先端頂部側の位置に設けられている。図示の例では、複数本の可動側押さえピン126は、図4に示されるように、一対ずつ、二箇所に設けられている。したがって、可動側押さえピン126の総本数は、4本である。
【0057】
同様に、固定金型(第2の金型)14は、ロッド状アンテナコア22を押えるために、当該固定金型(第2の金型)14から可動金型(第1の金型)12へ向けて水平方向に突出する複数本の固定側押さえピン146(図4参照)を有する。固定側押さえピン146は、第2の押さえピンとも呼ばれる。複数本の固定側押さえピン146は、上記複数本の可動側押さえピン126と同一の垂直位置に設けられている。図示の例では、複数本の固定側押さえピン146は、図4に示されるように、一本ずつ、二箇所に設けられる。したがって、固定側押さえピン146の総本数は、2本である。
【0058】
尚、前述したように、可動金型(第1の金型)12は、成形品を金型装置10から取り出すためのイジェクタピン121を持つイジェクタ機構(図示せず)を備えている。
【0059】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。
【0060】
先ず、型締め装置により金型装置10を開いた状態で、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24を固定駒124へネジ込んだ後、可動金型(第1の金型)12のコア122の上部に設けられている溝へ固定駒124を入れる。
【0061】
このとき、前述したように、パーティングラインPLが鉛直方向(Z方向)に対して5°の角度だけ傾いているので、ロッド状アンテナコア22は、その自重によって4本の可動側押さえピン(第1の押さえピン)126側にかかり、4本の可動側押さえピン(第1の押さえピン)126によって、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAがパーティングラインPLと実質的に平行となるように、ロッド状アンテナコア22が位置決めされる。
【0062】
引き続いて、型締め装置によって、固定金型(第2の金型)14に対して可動金型(第1の金型)12を水平方向(図3の右方向)に近接するように進行させて、図3に示されるように、金型装置10を閉じる。これによって、ロッド状アンテナコア22が、4本の可動側押さえピン126と2本の固定側押さえピン146とに接触した状態で、可動金型(第1の金型)12のコア122と固定金型(第2の金型)14のキャビティ142との間に形成されるキャビティ空間CSにロッド状アンテナ部材(22,24)が収容される。
【0063】
そして、可塑化装置(射出装置)のノズルからゲート(図示せず)を介して、キャビティ空間CSに溶融樹脂を充填し、冷却する。これにより、図5に示されるように、ロッド状アンテナコア22の先端頂部から導電性接続金具24に至る外周面に樹脂26が一体成形される。尚、樹脂16としては、熱可塑性エラストマーが使用される。
【0064】
最後に、型締め装置を使用して、図3の矢印Aで示されるように、固定金型(第2の金型)14に対して可動金型(第1の金型)12を水平方向(Y軸方向)に退却させて金型装置10を開いて、イジェクタ機構を使用して固定駒124をイジェクタピン121で押し出すことにより、金型装置10から成形品であるアンテナ装置を固定駒124と一緒に取り出す。
【0065】
上述したように、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の形成方法では、ロッド状アンテナ部材(22,24)の導電性接続金具24がネジ込まれた固定駒124を可動金型(第1の金型)12のコア122の溝に取り付ける工程の後において、ロッド状アンテナコア22がぶらつくのを防止することができる。何故なら、前述したように、パーティングラインPLが5°の所定角度だけ傾いているので、ロッド状アンテナコア22の自重が4本の可動側押さえピン(第1の押さえピン)126側にかかることなり、4本の可動側押さえピン(第1の押さえピン)126によって、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAがパーティングラインPLと平行になるように、ロッド状アンテナコア22が位置決めされるからである。
【0066】
その結果、型締め装置を使用して金型装置10を型締めした際に、図4に示されるように、ロッド状アンテナコア22を、4本の可動側押さえピン126と2本の固定側押さえピン146とで押さえることができ、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAをパーティングラインPLに一致させることができる。
【0067】
図5は、樹脂26が固化された後に、金型装置10を開いた状態の、成形品であるアンテナ装置20を示す縦断面図である。金型装置10を開いた状態では、アンテナ装置20は、可動側であるコア122に張り付いた状態になっている。その後に、前述したように、可動金型(第1の金型)12に設けられているイジェクタ機構(イジェクタピン121)によって、アンテナ装置20が金型装置10から固定駒124と一緒に取り出される。
【0068】
ところで、前述したように、本発明の第1の実施の形態では、パーティングラインPLが鉛直方向に対して5°の角度だけ傾いている。詳述すると、図5に示されるように、樹脂26の基端部の中央(図5の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)の上端)から垂直(鉛直)下方(Z軸方向)に下ろした線を基準鉛直線RVLとすると、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAは、前述したように、基準鉛直線RVLに対して(図5の例では右側(反時計回り)に)5°の角度傾くことになる。
【0069】
そのため、樹脂26にはアンダーカット部が形成されてしまう。詳述すると、樹脂26の先端部(図5の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)より左側の下端部)には第1のアンダーカット部31が形成され、樹脂26の基端部(図5の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)より右側の上端部)には第2のアンダーカット部32が形成される。
【0070】
樹脂26の長手方向の長さが200mmであるとすると、第1のアンダーカット部31の大きさ(寸法)は0.2mmであり、第2のアンダーカット部32の大きさ(寸法)は0.33mmである。
【0071】
一方、上述したように、使用している樹脂26は、熱可塑性エラストマーから成る。周知のように、熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム弾性体としての挙動をとる。したがって、たとえ樹脂26に第1および第2のアンダーカット部31、32があったとしても、成形品であるアンテナ装置20を金型装置10から無理に抜くことが可能である。
【0072】
前述したように、樹脂26の長手方向の長さが200mmである場合、樹脂26の長手方向のほぼ中央部で基準鉛直線RVLから8.98mmだけ離間したロッド状アンテナコア22の中心軸CAの位置に、および樹脂26の長手方向の中央部より先端部寄りで基準鉛直線RVLから15.08mmだけ離間したロッド状アンテナコア22の中心軸CAの位置に、4本の可動側押さえピン126と2本の固定側押さえピン146とによりそれぞれ形成される穴261、262が、樹脂26に穿設される。
【0073】
換言すれば、樹脂26には、当該樹脂26を成形する際にロッド状アンテナコア22を押さえるための複数本の押さえピン126、146のそれぞれの穴261、262が、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAと直交する方向に対して5°の角度傾斜した状態で、穿設される。
【0074】
尚、上述した第1の実施の形態では、可動金型(第1の金型)12は、異なる二箇所の垂直位置に4本の可動側押さえピン126を有し、固定金型(第2の金型)14は、同一の二箇所の垂直位置に2本の固定側押さえピン146を有しているが、押さえピンの本数はこれに限定されない。すなわち、可動金型(第1の金型)12は、少なくとも一箇所の垂直位置に2本の可動側押さえピン(第1の押さえピン)126のみを有し、固定金型(第2の金型)14は、同一の一箇所の垂直位置に1本の固定側押さえピン(第2の押さえピン)146のみを有してよい。
【0075】
また、このようにして形成(製造)されたアンテナ装置(ロッドアンテナ)20は、アンテナケースのトップカバーにコネクタ部(支持金具)によって、装着される。詳述すると、アンテナ装置20の導電性接続金具24は、中心軸CAに沿って延在し、外周面に雄ネジが切られた雄ネジ部(図示せず)を有する。一方、コネクタ部は、内周面に上記雄ネジが螺合される雌ネジが切られた雌ネジ部をする。したがって、アンテナ装置(ロッドアンテナ)20の雄ネジ部をコネクタ部の雌ネジ部に螺合することによって、アンテナ装置(ロッドアンテナ)20をアンテナケースのトップカバーに装着(固定)することができる。
【0076】
次に、第1の実施の形態によるアンテナ装置20およびその形成方法の効果について説明する。
【0077】
第1の効果は、部品点数や製造工数を増加することなく、インサート成形を行うことができることである。その理由は、金型装置10のパーティングラインPLを鉛直方向に対して所定角度傾けているので、少ない数の押さえピン126、146を用いて、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAをパーティングラインPLと平行になるように容易に位置決めすることが可能となるからである。
【0078】
(第2の実施の形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。図示のアンテナ装置の形成方法では、パーティングラインPLの傾き角度が相違している点を除いて、図3乃至図5に示した、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では相違点についてのみ説明する。
【0079】
図6は、パーティングラインPLが鉛直方向に対して10°の角度だけ傾いている場合に、樹脂26Aが固化された後に、金型装置10を開いた状態の、成形品であるアンテナ装置20Aを示す縦断面図である。金型装置10を開いた状態では、アンテナ装置20Aは、可動側であるコア122に張り付いた状態になっている。その後に、前述したように、可動金型(第1の金型)12に設けられているイジェクタ機構(イジェクタピン121)によって、アンテナ装置20Aが金型装置10から固定駒124と一緒に取り出される。
【0080】
本例の場合、図6に示されるように、樹脂26Aの基端部の中央(図6の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)の上端)から垂直(鉛直)下方に下ろした線を基準鉛直線RVLとすると、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAは、前述したように、基準鉛直線RVLに対して(図6の例では右側(反時計回り)に)10°の角度傾くことになる。
【0081】
そのため、樹脂26Aにはアンダーカット部が形成されてしまう。詳述すると、樹脂26Aの先端部(図6の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)より左側の下端部)には第1のアンダーカット部31Aが形成され、樹脂26Aの基端部(図6の例では、パーティングラインPL(中心軸CA)より右側の上端部)には第2のアンダーカット部32Aが形成される。
【0082】
樹脂26Aの長手方向の長さが200mmであるとすると、第1のアンダーカット部31Aの大きさ(寸法)は0.43mmであり、第2のアンダーカット部32Aの大きさ(寸法)は0.67mmである。
【0083】
一方、上述したように、使用している樹脂26Aは、熱可塑性エラストマーから成る。周知のように、熱可塑性エラストマーは、常温ではゴム弾性体としての挙動をとる。したがって、たとえ樹脂26Aに第1および第2のアンダーカット部31A、32Aがあったとしても、成形品であるアンテナ装置20Aを金型装置10から無理に抜くことが可能である。
【0084】
前述したように、樹脂26Aの長手方向の長さが200mmである場合、樹脂26Aの長手方向のほぼ中央部で基準鉛直線RVLから17.89mmだけ離間したロッド状アンテナコア22の中心軸CAの位置に、および樹脂26Aの長手方向の中央部より先端部側で基準鉛直線RVLから30.04mmだけ離間したロッド状アンテナコア22の中心軸CAの位置に、4本の可動側押さえピン126と2本の固定側押さえピン146とによりそれぞれ形成される穴261A、262Aが、樹脂26Aに穿設される。
【0085】
換言すれば、樹脂26Aには、当該樹脂26Aを成形する際にロッド状アンテナコア22を押さえるための複数本の押さえピン126、146のそれぞれの穴261A、262Aが、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAと直交する方向に対して10°の角度傾斜した状態で、穿設される。
【0086】
次に、第2の実施の形態によるアンテナ装置20Aおよびその形成方法の効果について説明する。
【0087】
第1の効果は、部品点数や製造工数を増加することなく、インサート成形を行うことができることである。その理由は、金型装置10のパーティングラインPLを鉛直方向に対して所定角度傾けているので、少ない数の押さえピン126、146を用いて、ロッド状アンテナコア22の中心軸CAをパーティングラインPLと平行になるように容易に位置決めすることが可能となるからである。
【0088】
前述した第1および第2の実施の形態では、樹脂として熱可塑性エラストマーを使用しているので、たとえアンダーカット部があっても、成形品(アンテナ装置)を金型装置10から無理に抜くことが可能である。しかしながら、樹脂として硬いものを使用している場合、アンダーカット部があるのは望ましくない。そこで、以下に述べる他の実施の形態では、アンダーカット部をなくした例を示している。
【0089】
(第3の実施の形態)
図7を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。図示のアンテナ装置の形成方法では、パーティングラインPLの形状が相違している点を除いて、図3乃至図5に示した、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では相違点についてのみ説明する。
【0090】
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る、横型射出成形機の金型装置10の主要部を示す部分縦断面図である。
【0091】
図7に示されるように、パーティングラインPLは、その下側の先端部で、所定の直線から左側(第1の側面側)へ近づく方向へ曲げられた曲線部PL(C)を有する。
【0092】
このように、パーティングラインPLの先端部に曲線部PL(C)を設けることにより、図5に示されるような、第1のアンダーカット部31を無くすことができる。
【0093】
(第4の実施の形態)
図8を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。図示のアンテナ装置の形成方法では、可動金型(第1の金型)12のコア122の内壁面の形状が後述するように変更されている点を除いて、図3乃至図5に示した、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では相違点についてのみ説明する。
【0094】
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法により形成されたアンテナ装置20Bの主要部を示す部分縦断面図である。図示のアンテナ装置20Bは、樹脂の形状が後述するように変更されている点を除いて、図5に示したアンテナ装置20と同様の構成を有する。したがって、樹脂に26Bの参照符号を付してある。以下では、相違点についてのみ説明する。
【0095】
図5に示したアンテナ装置20では、その樹脂26の先端部は、半径が5.2mmの半球面の形状をしている。その結果、樹脂26の先端部には第1のアンダーカット部31が形成されている。
【0096】
図8に示したアンテナ装置20Bでは、そのような第1のアンダーカット部31をなくすために、樹脂26Bは、その先端部に平坦面34を持つ。図示の平坦面34は、水平方向(Y軸方向)に0.9mmの長さを持っている。
【0097】
樹脂26Bの先端部に平坦面34を形成するために、図示はしないが、可動金型(第1の金型)12のコア122は、そのキャビティ空間CSを形成する最下端部の内壁面が平坦面となっている。
【0098】
(第5の実施の形態)
図9および図10を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法について詳細に説明する。図示のアンテナ装置の形成方法では、固定金型(第2の金型)14のキャビティ142の内壁面の形状が後述するように変更されている点を除いて、図3乃至図5に示した、本発明の第1の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では相違点についてのみ説明する。
【0099】
図9は、本発明の第5の実施の形態に係る、アンテナ装置の形成方法により形成されたアンテナ装置20Cの主要部を示す部分斜視図である。図示のアンテナ装置20Cは、樹脂の形状が後述するように変更されている点を除いて、図5に示したアンテナ装置20と同様の構成を有する。したがって、樹脂に26Cの参照符号を付してある。以下では、相違点についてのみ説明する。
【0100】
図5に示したアンテナ装置20では、その樹脂26の基端部に第2のアンダーカット部32が形成されている。
【0101】
図9に示したアンテナ装置20Cでは、そのような第2のアンダーカット部32をなくすために、樹脂26Cは、導電性接続金具24の外周面を覆う基端部の縁にカット形状36を持つ。
【0102】
尚、第2のアンダーカット部32をなすためには、その部分に相当する縁のみをカットすればよいが、図9に示す例では、樹脂26Cの基端部は、その全周に亘って縁がカット形状36にされている。
【0103】
図10は、図9に示したアンテナ装置20Cを形成するための、横型射出成形機の金型装置10の固定金型(第2の金型)14のキャビティ142の主要部を示す部分縦断面図である。
【0104】
樹脂26Cの基端部にカット形状36を形成するために、固定金型(第2の金型)14のキャビティ142は、キャビティ空間CSを形成する最上端部の内壁面が、パーティングラインPLから離れるに従って下方へ徐々に曲げられた曲面142aとなっている。図示の例では、この曲面142aの曲率半径は1.2mmである。
【0105】
以上、本発明について好ましい実施の形態によって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定しないのは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、第1の金型がコアを備えた可動金型であり、第2の金型がキャビティを備えた固定金型であるとして説明しているが、逆であってもよい。すなわち、第1の金型がキャビティを備えた固定金型であり、第2の金型がコアを備えた可動金型であっても良い。この場合、固定金型に、固定駒やイジェクト機構(イジェクタピン)が備えられる。また、樹脂は熱可塑性エラストマーに限定されないのは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
10 横型射出成形機の金型装置
12 可動金型(第1の金型)
121 イジェクタピン
122 コア
124 固定駒
126 可動側押さえピン(第1の押さえピン)
14 固定金型(第2の金型)
142 キャビティ
142a 曲面
146 固定側押さえピン(第2の押さえピン)
20、20A、20B、20C アンテナ装置
22 ロッド状アンテナコア
24 導電性接続金具
26、26A、26B、26C 樹脂
261、261A 穴
262、262A 穴
31、31A 第1のアンダーカット部
32、32A 第2のアンダーカット部
34 平坦面
36 カット形状
PL パーティングライン
PL(C) 曲線部
CA 中心軸
CS キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を持つロッド状アンテナコアと、該ロッド状アンテナコアの基端部に連結された導電性接続金具と、前記ロッド状アンテナコアの先端頂部から前記導電性接続金具に至る外周面に一体成形された樹脂と、を有するアンテナ装置において、
前記樹脂には、当該樹脂を成形する際に前記ロッド状アンテナコアを押さえるための複数本の押さえピンのそれぞれの穴が、前記ロッド状アンテナコアの前記中心軸と直交する方向に対して所定角度傾斜した状態で、穿設されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記所定角度が5°乃至10°の範囲内にある、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数の穴が、前記樹脂の長手方向の中央よりも前記先端頂部側に設けられている、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記複数の穴が、前記樹脂の長手方向で異なる位置に設けられている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記樹脂は、その先端部に平坦面を持つ、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記樹脂は、前記導電性接続金具の外周面を覆う基端部の縁にカット形状を持つ、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
第1の側面側に配置された第1の金型と、該第1の側面と反対側の第2の側面側に配置された第2の金型とを有し、前記第1の金型と前記第2の金型とを相対的に水平方向に進退させる、横型射出成形機の金型装置を使用してアンテナ装置をインサート成形により形成する方法であって、
前記第1の金型と前記第2の金型とを分割するパーティングラインは、鉛直方向に対して、上端側が前記第1の側面側へ近接し、かつ下端側が前記第2の側面側へ近接するように、所定角度だけ傾斜して実質的に所定の直線に沿って延在しており、
前記金型装置が開いている状態で、中心軸を持つロッド状アンテナコアの基端部に導電性接続金具が連結されたロッド状アンテナ部材の前記導電性接続金具がネジ込まれた固定駒を、前記第1の金型の上部に設けられた溝に取り付ける工程と、
前記第1の金型から前記第2の金型へ向けて水平方向に突出する少なくとも2つの第1の押さえピンによって、前記中心軸が前記パーティングラインと実質的に平行となるように、前記ロッド状アンテナコアを位置決めする工程と、
前記第1の金型と前記第2の金型とを相対的に水平方向に近接するように進行させて前記金型装置を閉じることによって、前記ロッド状アンテナコアを、前記少なくとも2つの第1の押さえピンと同一の垂直位置にあって、前記第2の金型から前記第1の金型へ向けて水平方向に突出する少なくとも1つの第2の押さえピンと接触させた状態で、前記第1の金型と前記第2の金型との間に形成されるキャビティ空間内に前記ロッド状アンテナ部材を収容する工程と、
前記キャビティ空間に溶融樹脂を充填し、冷却して、前記ロッド状アンテナコアの先端頂部から前記導電性接続金具に至る外周面に樹脂を一体成形する工程と、
を有することを特徴とするアンテナ装置の形成方法。
【請求項8】
前記第1の金型がコアを備えた可動金型から成り、前記第2の金型がキャビティを備えた固定金型から成る、請求項7に記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項9】
前記第1の金型がキャビティを備えた固定金型から成り、前記第2の金型がコアを備えた可動金型から成る、請求項7に記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項10】
前記所定角度が5°乃至10°の範囲内にある、請求項7乃至9のいずれか1つに記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの第1の押さえピンと前記少なくとも1つの第2の押さえピンとは、前記ロッド状アンテナコアの長手方向の中心位置よりも前記先端頂部寄りの位置に設けられている、請求項7乃至10のいずれか1つに記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項12】
前記パーティングラインは、その下側の先端部が、前記所定の直線から前記第1の側面側へ近づく方向へ曲げられている、請求項7乃至11のいずれか1つに記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項13】
前記第1の金型は、前記キャビティ空間を形成する最下端部の内壁面が、平坦面となっている、請求項7乃至11のいずれか1つに記載のアンテナ装置の形成方法。
【請求項14】
前記第2の金型は、前記キャビティ空間を形成する最上端部の内壁面が、前記パーティングラインから離れるに従って下方へ徐々に曲げられた曲面となっている、請求項7乃至13のいずれか1つに記載のアンテナ装置の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−111810(P2013−111810A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258721(P2011−258721)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】