説明

アンピロキシカム含有医薬組成物とその安定化方法及びその製造方法

【課題】
光に対する安定性が改善され、かつ服用性または利便性に優れたアンピロキシカム含有医薬組成物を提供する。
【解決手段】
本発明は、アンピロキシカムとフェノール性化合物を含有する医薬組成物を提供する。また、本発明は、黄色三ニ酸化鉄さらに含有する医薬組成物を提供する。さらに、本発明は、フェノール性化合物によるアンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法を提供する。さらにまた、本発明は、フェノール性化合物によるアンピロキシカム含有医薬組成物の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンピロキシカムを含有する医薬組成物に係り、より詳細には、光安定化させたアンピロキシカムを含有する経口用医薬組成物およびその光安定化方法、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンピロキシカムはピロキシカムのプロドラッグであり、生体内で、シクロオキシゲナーゼ阻害によるプロスタグランジン生合成を抑制するピロキシカムとなって鎮痛、消炎作用を発現する。現在、アンピロキシカム含有医薬組成物は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎及び頸肩腕症候群等の疾患並びに症状の鎮痛、消炎、あるいは外傷後、手術後及び抜歯後の鎮痛、消炎のため、アンピロキシカム27mgまたは13.5mgを含有する硬カプセル剤が市販されている。これら市販のアンピロキシカム含有医薬組成物は、アンピロキシカムが光により徐々に分解され変色をきたすため、カプセル基材に着色剤を配合した硬カプセル剤である。また、アンピロキシカム含有医薬組成物を用いた治療にあたっては、通常、1日1回アンピロキシカム27mgが投与されているが、患者の年齢や症状に併せて用量が適宜増減されている。特に、高齢者では穿孔を伴う消化性潰瘍、胃腸出血等があらわれやすいので副作用の発現に特に注意し、必要最小限の使用にとどめるなど慎重に投与されている。
【0003】
一方、我が国を中心に主な先進国では国民の高齢化が急速に進行し、アンピロキシカム含有医薬組成物に関わらず、嚥下能力の低下している高齢者にも服用しやすく、かつ薬剤の胃腸管への付着に伴う副作用を軽減できる剤形の必要性が高まっている(非特許文献1、2)。また、服用感に関する市場調査結果によると、高齢者にとって最も服用しやすい剤形は「錠剤」であったと報告され(非特許文献3)、口腔内で崩壊または溶解する錠剤が開発されている。また、慎重投与に対するため薬物の用量調節を容易にする手段としては、散剤、細粒剤、顆粒剤等の剤形が挙げられる。
【0004】
ところで、近年、医薬品の調剤現場では、錠剤・カプセル剤等の一包化が普及するのに伴い、自動錠剤分包機が多く導入されている。そのため、自動錠剤分包機では錠剤が非包装状態でタブレットケース内に保管されるため、光、湿度の影響、あるいは自動錠剤分包機の機械油やタブレットケースに酸化防止剤として含まれるジブチルヒドロキシトルエンの影響により、変色をはじめとする品質低下を生ずる場合があることが報告されている(非特許文献4)。そのため、医療現場では、着色剤で被覆して光安定性を確保し易い剤形(例えばフィルム錠や硬カプセル剤)以外の剤形であっても、非包装状態において、光や湿度の影響を受けない製剤が要求されている。特に、服用性を高めた速崩壊性の錠剤や、用量調整が容易な散剤や顆粒剤等は、着色剤で被覆し難く、光や水分等の保存環境の影響を受けやすい。例えば、顆粒剤では、ソファルコンとともに食用黄色5号、酸化チタンまたは黄色三ニ酸化鉄を精製水を用いて湿式造粒することにより、光に対するソファルコンの含量低下を抑制させた細粒剤が開示されている(特許文献1)。また、ビタミンKを配合してなる核に、中間被膜、さらに黄色三ニ酸化鉄及び酸化チタンを分散させたメチルセルロース水溶液を転動流動法によりコーティングした顆粒剤が開示されている(特許文献2)。速崩性錠剤では、光安定性を確保するための技術は開示されていない。
【特許文献1】特開2000−191516号公報
【特許文献2】特開2002−104960号公報
【非特許文献1】伊東明彦、他1名、「高齢者向け製剤」,月刊薬事,1995年、37(11),p.2381
【非特許文献2】杉原正泰、「製剤を使用性から考える」,ファルマシア,1989年、25(9) ,p.895
【非特許文献3】杉原正泰、「高齢者に好まれる剤形」,CURRENT THERAPY,1990年、18(2),p.333
【非特許文献4】湯浅宏、他4名、「光およびBHT共存下における錠剤の変色」、病院薬学、1995年、21(3)、p.231
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンピロキシカム含有医薬組成物は、高齢者に良く見られる慢性関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症などの疾患並びに症状の鎮痛、消炎に適した薬剤であるにも関わらず、市販のアンピロキシカム含有医薬組成物はカプセル剤のみであり、嚥下能力の低下している高齢の患者にも投与しやすい剤形が望まれていた。また、医療現場ではアンピロキシカムを患者に提供するにあたり投与量を管理しているが、現状、2つの用量水準のカプセル剤に過ぎず、アンピロキシカムの用量調節に限界があった。そのため、医療現場では、患者の状態にあわせて、調剤時または服用時に投与量の微量調節が容易なアンピロキシカム含有医薬組成物が望まれていた。一方、これらのアンピロキシカムの用量調節が容易な医薬組成物や服用性に優れた医薬組成物は、保存環境の影響を受けやすく、光安定性を確保する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アンピロキシカム含有医薬組成物におけるアンピロキシカムの光安定性に対して、フェノール性化合物が、著しい光安定化効果を有していることを見出した。つまり、フェノール性化合物を配合することにより、アンピロキシカムの分解に伴う色調変化を生じない医薬組成物、並びに、アンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法を見出した。さらに、遮光包装などの包装を用いなくとも医薬品としての品質を確保し、かつ服用性に優れたアンピロキシカム医薬組成物または用量調節を容易にできるアンピロキシカム含有医薬組成物を見出した。すなわち、(1)アンピロキシカム及びフェノール性化合物を含有する医薬組成物である。(2)前記アンピロキシカム及び前記フェノール性化合物は混合されている前記(1)に記載の医薬組成物である。(3)前記フェノール性化合物が、カテコール誘導体、ヒドロキノン誘導体、没食子酸誘導体、トコフェロール類、フラボン類、ポリフェノール類からなる群から選択される前記(1)または(2)に記載の医薬組成物である。(4)前記フェノール性化合物の配合量が、前記アンピロキシカム1重量部に対して0.00001〜0.1重量部である前記(1)ないし(3)のうち何れかに記載の医薬組成物である。(5)黄色三ニ酸化鉄をさらに含む前記(1)ないし(4)のうち何れかに記載の医薬組成物である。(6)前記黄色三ニ酸化鉄の配合量が、前記アンピロキシカム1重量部に対して0.00005〜1重量部である前記(1)ないし(5)のうち何れかに記載の医薬組成物である。(7)前記医薬組成物は散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤である前記(1)ないし(6)のうち何れかに記載の医薬組成物である。(8)前記錠剤は、速崩性錠剤である前記(7)に記載の医薬組成物である。(9)フェノール性化合物を添加する添加工程を含むアンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法である。(10)前記添加工程において、黄色三ニ酸化鉄をさらに添加する前記(9)に記載のアンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法である。(11)フェノール性化合物を添加する添加工程を含むアンピロキシカム含有医薬組成物の製造方法である。(12)前記添加工程において、黄色三ニ酸化鉄をさらに添加する前記(11)に記載のアンピロキシカム含有医薬組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンピロキシカム含有医薬組成物において、患者の服薬コンプライアンスの向上、医薬品としての品質向上、調剤現場での管理の軽減を可能にする医薬組成物が提供される。具体的には、患者の症状や年齢に併せて、きめ細かな用量水準で、アンピロキシカムを調剤することが可能な薬剤を提供できる。また、嚥下能力の低下している患者であっても、服用しやすい薬剤を提供できる。さらに、医薬品の保存環境の影響または自動分包機など調剤中の作業環境の影響を受けにくい医薬品を提供できる。さらにまた、遮光包装などの特別な包装形態を利用しなくても、患者が投与するまで、高い品質を維持できる医薬品を提供できる。加えて、本発明の医薬組成物によれば、光安定性を確保するために着色剤や遮断剤を配合した特別な被膜等を医薬組成物に施す必要がなく、製造工程を簡素化でき、生産性を向上させることができる。さらに、本発明によれば、硬カプセル剤以外にも、アンピロキシカムを含有する製剤を提供することができ、投与方法の選択肢を広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。本発明は、アンピロキシカム及びフェノール性化合物を含有する医薬組成物を提供する。ここで、本発明に用いるアンピロキシカムは、(±)-4-[1-(ethoxycarbonyloxy)ethoxy]-2-methyl-N-2-pyridyl-2H-1,2-benzothiazine-3-carboxamide 1,1-dioxide(C20H21N3O7S)であり、下式に示す。本発明に用いるアンピロキシカムは、例えば、Dae He Chemical Co.,Ltd(新日本薬業株式会社)の商品名アンピロキシカムを使用することができる。医薬組成物中のアンピロキシカムの配合量は、医薬品の有効成分としての有効量を投与できるのであれば、特に限定されないが、調剤での用量調節を容易に行うことができ、かつ容易に服薬できる配合量が望ましい。例えば、医薬組成物100重量部中に0.01〜75重量部である。好ましくは、0.1〜50重量部であり、さらに好ましくは、0.5〜30重量部である。
【0009】
【化1】

【0010】
本発明おけるフェノール性化合物は、薬理学的に許容される物質であることが好ましい。また、本発明におけるフェノール性化合物は芳香環に直接水酸基が結合した化合物であり、芳香環とはベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ナフタレン環、ビフェニル環、クロマン環などであり、こられに限定されるものではない。フェノール性化合物は、例えば、カテコール、クロロゲン酸、カフェイン酸、チロシンなどのカテコール誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどのヒドロキノン誘導体、没食子酸、没食子酸エステル、タンニン酸などの没食子酸誘導体、dl-α-トコフェロール、d-α-トコフェロール、d-β−トコフェロール、d-γ-トコフェロール、d-δ-トコフェロール、d-α-トコトリエノール、d-β-トコトリエノール、d-γ-トコトリエノール、d-δ-トコトリエノール、またはそれらの混合物などのトコフェロール類、ルチン、ケルセチン、ヘスペリチンなどのフラボン類、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、プロアントシアニジンなどのポリフェノール類が挙げられる。これらの化合物は、化学合成または、生薬や植物等から抽出して得られたもの、あるいは本発明におけるフェノール性化合物として、これらの化合物を含む生薬、植物抽出物または香料を用いても良い。本発明におけるフェノール性化合物は、好ましくは、カテコール誘導体、ヒドロキノン誘導体、没食子酸誘導体、トコフェロール類である。さらに好ましくは、クロロゲン酸、カフェイン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール類である。
【0011】
本発明におけるジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTとする)は医薬品添加物規格1998(以下、薬添規とする)に収載され、また、ブチルヒドロキシアニソール(以下、BHAとする)は、食品添加物公定書第七版(以下、食添)にも収載され、医薬品添加物としての使用前例がある。例えば、BHTは精工化学株式会社の商品名ジブチルヒドロキシトルエンや、BHAは東京化成工業株式会社の商品名ブチルヒドロキシアニソールを使用できる。本発明におけるBHTまたはBHA、あるいはそれらの配合量は、特に限定されず、アンピロキシカム1重量部に対して0.00001〜0.1重量部である。好ましくは、アンピロキシカム1重量部に対して0.00003〜0.05重量部であり、さらに好ましくは、0.00005〜0.02重量部である。
【0012】
本発明のアンピロキシカム含有医薬組成物はフェノール性化合物のほかに、黄色三ニ酸化鉄を配合し、さらに光安定化効果を高めることができる。本発明における三ニ酸化鉄(Fe23)及び黄色三ニ酸化鉄(Fe23・H2O)は、天然に存在する顔料であり、薬添規にも収載され、着色剤としての使用前例がある。例えば、三ニ酸化鉄は癸巳化成株式会社の商品名三ニ酸化鉄や、黄色三ニ酸化鉄は日本カラコン株式会社の商品名黄色酸化鉄カラコンを使用できる。本発明における三ニ酸化鉄または黄色三ニ酸化鉄、あるいはそれらの混合物の配合量は、特に限定されず、例えば、アンピロキシカム1重量部に対して0.00005〜1重量部である。好ましくは、アンピロキシカム1重量部に対して0.0001〜0.5重量部であり、さらに好ましくは、0.0005〜0.25重量部である。
【0013】
本発明のアンピロキシカム含有医薬組成物は、経口の固形製剤として製造することができ、その剤形は特に限定されるものではないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤などの経口用固形製剤などが挙げられる。具体的には、本発明のアンピロキシカム医薬組成物は、アンピロキシカムと、フェノール性化合物とを混合して、または、さらに賦形剤や黄色三ニ酸化鉄などを添加して散剤等とすることができる。あるいは、アンピロキシカムと、フェノール性化合物、さらに必要に応じて賦形剤や結合剤、あるいは黄色三ニ酸化鉄や被覆剤などともに混合し造粒して細粒剤や顆粒剤としてもよい。または、アンピロキシカムと、フェノール性化合物、さらに必要に応じて賦形剤や結合剤とともに混合し造粒して、さらに、黄色三ニ酸化鉄や被覆剤、あるいは防湿剤を含む皮膜で被覆して細粒剤や顆粒剤としてもよい。さらに、本発明のアンピロキシカム含有医薬組成物は、それらの細粒剤や顆粒剤をゼラチンやヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを基剤とするカプセルに充填してカプセル剤としたり、さらに懸濁化剤、糖類や矯味剤などの添加物を加えてドライシロップ剤を製造することができる。さらにまた、アンピロキシカム、フェノール性化合物を含有する顆粒に、滑沢剤や崩壊剤等の添加物を加えて圧縮成型し錠剤とすることができる。もちろん、本発明の医薬品組成物の剤形は、これらに限定されるものではないが、好ましくは、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドライシロップ剤であり、より好ましくは、細粒剤、顆粒剤、錠剤である。特に好ましくは、錠剤が速崩性錠剤である。ここで、本発明における速崩性錠剤とは、崩壊が極めて速い錠剤を意味し、通常は口腔内において唾液等の極めて少ない水分でも1分以内に崩壊し得る錠剤である。速崩性錠剤は錠剤を服用しにくい小児や老人に適した製剤である。
【0014】
本発明のアンピロキシカム医薬組成物は、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、コーティング剤、可塑剤、懸濁剤または乳化剤、着香剤、抗酸化剤、糖衣剤、防湿剤、流動化剤、着色剤等の添加物を配合しても良いが、これらに限定されるものではない。例えば、賦形剤は、D−マンニト−ル、乳糖(無水乳糖含む)、白糖(精製白糖含む)、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムなど、結合剤は、ポビドン、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム末などが挙げられるが、特に限定されるものではない。滑沢剤としては、硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウムなど、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン等を配合しても良いが、これらに限定されるものではない。さらに、コーティング剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS,メタクリル酸コポリマーL,メタクリル酸コポリマーLD,メタクリル酸コポリマーS,2−メチル−5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマなどのアクリル酸系高分子、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、マクロゴールなどの合成高分子物質、プルラン、キトサンなどの多糖類やゼラチン、コハク化ゼラチン、アラビアゴム、セラックなどの天然系高分子物質等が挙げられる。可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、濃グリセリン、プロピレングリコールなど、懸濁剤または乳化剤として、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物など、着香剤として、メントール、はっか油、レモン油、オレンジ油など、抗酸化剤として、アスコルビン酸ナトリウム、L−システイン、亜硫酸ナトリウム、天然ビタミンEなど、糖衣剤としては、白糖、乳糖、水アメ、沈降炭酸カルシウム、アラビアゴム、カルナウバロウ、セラック、ミツロウ、マクロゴール、エチルセルロース、メチルセルロース、ポピドンなど、防湿剤として、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、硬化油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、パラフィン、ヒマシ油、マクロゴール、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、セラック等、流動化剤として、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム、タルク、トウモロコシデンプン等、また着色剤としては、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用青色1号、食用青色2号(インジゴカルミン)、食用黄色4号アルミニウムレーキなどのタール系色素、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、ウコン抽出液、カラメル、カロチン液、β−カロテン、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、リボフラビン、カーボンブラック、薬用炭が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明のアンピロキシカムを含有する医薬組成物は、公知の方法を単独または組み合わせて使用して製造することができる。例えば、細粒剤あるいは顆粒剤の製造方法では、造粒方法が主要な操作方法となるが、混合、乾燥、整粒、分級などの操作を組み合わせることができる。造粒方法としては、例えば、粉末に結合剤及び溶媒を加えて造粒する湿式造粒法、粉末を圧縮して造粒する乾式造粒法、加熱溶融する結合剤を加えて加熱して造粒する溶融造粒方法などが利用できる。さらに、これらの造粒法に合わせて、プラネタリーミキサーやスクリュー型混合機などを用いる混合撹拌造粒法、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどを用いる高速混合撹拌造粒法、円筒造粒機、ロータリー型造粒機、スクリュー押し出し造粒機、ペレットミル型造粒機などを用いる押し出し造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、圧縮造粒法、破砕造粒法、噴霧造粒法などの操作方法を利用できる。造粒後、さらに乾燥機や流動層などによる乾燥や、解砕、整粒して細粒や顆粒として使用することができる。より具体的には、本発明の細粒剤や顆粒剤は、アンピロキシカム、賦形剤及び結合剤を混合機または練合機で混合しながら、フェノール性化合物を添加して、混合または練合し、さらに押し出し造粒機で造粒して造粒物を得る。押し出し造粒機は、特に、限定されないが、例えば、バスケット式造粒機(円筒造粒機など)などが挙げられる。得られた造粒物は、棚式乾燥機や流動層乾燥機などにより乾燥させ、ミルやオシレーターなどで整粒して、細粒や顆粒を得ることができる。あるいは、本発明における細粒剤や顆粒剤の製造方法は、ローラーコンパクターや、スラッグ打錠機などの乾式加圧圧縮機を用いてアンピロキシカム、賦形剤、滑沢剤及びフェノール性化合物を攪拌混合しながら、強圧、成形し、さらに適当な大きさに解砕して造粒することができる。これらの造粒機で調製された造粒物は、そのまま本発明の細粒剤や顆粒剤として用いても良いが、さらにパワーミルやロールグラニュレーター、ロータースピードミルなどで解砕、整粒して細粒剤や顆粒剤を得ることもできる。また、本発明のアンピロキカム医薬組成物を調製する際に、造粒溶媒を使用してもよい。これらの造粒溶媒は、特に限定されないが、水や各種有機溶媒など、例えば、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、塩化メチレン、あるいはそれらの混合液などである。
【0016】
また、本発明のアンピロキシカムを含有する医薬組成物は、公知の方法を単独または組み合わせて使用して、錠剤を製することができる。例えば、マンニトール、乳糖等の賦形剤、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース等の結合剤、カルメロースナトリウムやクロスポビドン等の崩壊剤、ステリアン酸マグネシウムやタルク等の滑沢剤を使用し、通常用いられる方法で打錠して錠剤を得るとことができる。例えば、錠剤の製造方法では、打錠方法が主要な操作方法となるが、混合、乾燥、糖衣、コーティングなどの操作を組み合わせることができる。打錠方法としては、アンピロキシカムと薬理学的に許容される添加物を混合し、直接、打錠機で錠剤に圧縮成型する直打法や、細粒剤や顆粒剤の製造方法と同様な方法で得た顆粒に、さらに必要に応じて滑沢剤あるいは崩壊剤を加えて、圧縮成型する湿式顆粒圧縮法または乾式顆粒圧縮法などが挙げられる。錠剤の圧縮成型に用いられる打錠機は、特に限定されないが、例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機、有核打錠機などを用いることができる。さらに、本発明におけるアンピロキシカム医薬組成物は、服用性を考慮した速崩性錠剤として製することができる。例えば、アンピロキシカムにマンニトール及びポリビニルピロリドンを加えて混合し、水及び水と混和する有機溶媒の混合物を加え、さらにフェノール性化合物を有機溶媒に溶解して加えて練合する。特許第3179658号公報で開示される機械により錠剤を成型後、乾燥して得られる。特許第3179658号公報で開示される装置は、錠剤成型時にフィルムを介して製錠する装置であり、湿潤粉体を用いても成型パンチにはりつくことなく製錠することができ、本発明にかかる速崩性錠剤を得るために最も適した装置である。本装置を用いると、口腔内における崩壊時間は30秒以内である。
【0017】
本発明の医薬組成物は、調剤時または服用時にアンピロキシカムの投与量の調節が容易な医薬組成物または高齢者にも服用しやすい医薬組成物である。さらに、顆粒剤や細粒剤のように比表面積が大きな剤形の場合や速崩性錠剤のように被覆を施し難い剤形でも、特別な遮光性カプセル基材または遮光包装を用いずに、光に対するアンピロキシカムの安定性を確保できる医薬組成物である。
【0018】
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、医薬品組成物中の添加物は、日局、薬添規、日本薬局方外医薬品規格1997、食添等の公定書に適合したもの、または試薬を使用した。
【実施例】
【0019】
(実施例1)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g及びD-マンニトール683.96gを入れて混合した。次にポリビニルピロリドン8gを溶解した含水エタノール溶液、BHT40mgを溶解したエタノール溶液を加え練合した。この練合物を特許第3179658号公報で開示される装置を用いて錠剤を製錠し、乾燥して1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0020】
(実施例2〜実施例7)
実施例2〜実施例7の組成を表1に示す。実施例1と同様の方法で調製し、1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0021】
(対照例1)
対照例1として、実施例1と同様の方法で、BHTまたはBHAの何れを配合していない1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
(参考例1〜3)
実施例1と同様の方法で、BHTまたはBHAの代替成分として、アスコルビン酸(以下、VCとする)、亜硫酸水素ナトリウム(以下、SHSとする)またはエデト酸ナトリウム(以下、EDTAとする)を各々含有する1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0022】
表1

【0023】
(試験例1)
実施例2及び6、対照例1及び比較例1〜3を用いて、BHTまたはBHAの添加効果を検討した。各錠剤をシャーレに広げ、露光試験器(約1000lx)で30日間保存した。保存後、錠剤の露光面を色差計(日本電色工業株式会社 分光式色差計 SZ-Σ90)にて測定した。ここで、初期品に対する保存品の色調変化について、変色度△E*(ab)及び黄色度変化△YIを算出した(n=3の平均値)。その結果、フェノール性化合物であるBHTまたはBHAを配合した実施例は、対照例1と比較して、光による色調変化を抑制させた(図1)。比較例1〜3は、対照例1とほぼ同様の変化であり、色調変化の抑制効果を認めなかった。
【0024】
(試験例2)
実施例1〜実施例7及び対照例1を用いて、アンピロキシカム医薬組成物の光安定性におけるフェノール性化合物/アンピロキシカム比の影響について検討した。試験例1と同様に試験を実施した。黄色度変化△YIの測定結果を図2に示した。いずれも、BHTまたはBHAを配合した実施例は、何れの比でも対照例1と比較し、アンピロキシカム医薬組成物の光安定化効果を示した。
【0025】
(実施例8)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g及びD-マンニトール683.16gを入れて混合した。次にポリビニルピロリドン8gを溶解した含水エタノール溶液、BHT40mgを溶解したエタノール溶液、さらに黄色三ニ酸化鉄0.8gを水に分散させた溶液を加え練合した。この練合物を特許第3179658号公報で開示される装置を用いて錠剤を製錠し、乾燥して1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0026】
(実施例9〜実施例14)
実施例9〜実施例14の組成を表1に示す。実施例8と同様の方法で調製し、BHTまたはBHAの濃度が異なる1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0027】
【表2】

【0028】
(対照例2)
実施例8と同様の方法で、対照例2としてBHTまたはBHAの何れも配合していない1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
(参考例4〜6)
実施例8と同様の方法で、BHTまたはBHAの代替成分として、VC、SHS、EDTAを各々含有する1錠あたり約200mg(アンピロキシカム27mg含有)の速崩性錠剤を得た。
【0029】
(試験例3)
実施例9及び13、対照例2及び参考例4〜6を用いて、黄色三ニ酸化鉄の存在下におけるBHTまたはBHAの添加効果を検討した。方法は、試験例1と同様に行った。その結果、フェノール性化合物であるBHTまたはBHAを配合した実施例は、対照例2と比較して、光による色調変化を抑制させた(図3)。比較例4〜6は、対照例2とほぼ同様の変化であり、色調変化の抑制効果を認めなかった。
【0030】
(試験例4)
実施例8〜実施例14及び対照例2を用いて、黄色三ニ酸化鉄を含むアンピロキシカム医薬組成物の光安定性におけるフェノール性化合物/アンピロキシカム比の影響について検討した。試験例1と同様に試験を実施した。黄色度変化△YIの測定結果を図4に示した。BHTまたはBHAを配合した実施例は、何れの比でも対照例2と比較し、アンピロキシカム医薬組成物の光安定化効果を示した。また、黄色三ニ酸化鉄の影響を比較したところ、アンピロキシカム医薬組成物において、フェノール性化合物と黄色三ニ酸化鉄を併用することにより、さらに色調変化は小さくなることが確認された。例えば、BHTに関しては、黄色三ニ酸化鉄を含まない実施例2は対照例1に対して、色調変化を約10%抑制したが、黄色三ニ酸化鉄を含む実施例9は対照例2に対して、色調変化を約20〜25%抑制した。同様にBHAの場合は、黄色三ニ酸化鉄を含まない系では色調変化を約10%抑制したが、黄色三ニ酸化鉄を含む系では、さらに25〜30%抑制することができた。
【0031】
(実施例15:速崩性錠剤)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g及びD-マンニトール687.92gを入れて混合した。次にポリビニルピロリドン4gを溶解した含水エタノール溶液及びBHA80mgを溶解したエタノール溶液を加え練合した。この練合物を特許第3179658号公報で開示される装置を用いて錠剤を製錠し、乾燥して1錠約200mgの速崩性錠剤を得た。
【0032】
(実施例16:速崩性錠剤)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g、部分アルファー化デンプン8g及びD-マンニトール679.92gを入れて混合した。次にヒドロキシプロピルセルロース4gを溶解した含水エタノール溶液及びBHT80mgを溶解したエタノール溶液を加え練合した。この練合物を特許第3179658号公報で開示される装置を用いて錠剤を製錠し、乾燥して1錠約200mgの速崩性錠剤を得た。
【0033】
(実施例17:顆粒剤)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g、乳糖404g、トウモロコシデンプン228g、結晶セルロース32g、ヒドロキシプロピルセルロース24gを入れ混合した。次にBHT80mgを溶解した含水エタノール溶液を加え練合した。練合物を熱風乾燥機(商品名DAE-20、三和化機工業製)で乾燥後、パワーミル(株式会社ダルトン製)で整粒し、1包あたり200mgの顆粒剤を得た。
【0034】
(実施例18:錠剤)
ラボ用万能粉体処理装置(商品名メカノミル、岡田精工株式会社製)に、アンピロキシカム108g、乳糖404g、トウモロコシデンプン228g、結晶セルロース32g、ヒドロキシプロピルセルロース24gを入れ混合した。次にBHT80mgを溶解したエタノール溶液を加え練合した。練合物を熱風乾燥機(商品名DAE-20、三和化機工業製)で乾燥後、パワーミル(株式会社ダルトン製)で顆粒として、ステアリン酸マグネシウム添加(0.5%)後、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)で3分間混合した。万能試験機(商品名オートグラフAGS-1000D、株式会社島津製作所製)を用いて錠剤を製錠し、1錠約200mgの錠剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、アンピロキシカム含有医薬組成物の光安定性に対するフェノール性化合物の添加効果を示す図である。
【図2】図2は、アンピロキシカム含有医薬組成物の光安定性に対するフェノール性化合物/アンピロキシカム比の影響を示す図である。
【図3】図3は、黄色三ニ酸化鉄を含むアンピロキシカム含有医薬組成物における前記医薬組成物の光安定性に対するフェノール性化合物の添加効果を示す図である。
【図4】図4は、黄色三ニ酸化鉄を含むアンピロキシカム含有医薬組成物における前記医薬組成物の光安定性に対するフェノール性化合物/アンピロキシカム比の影響を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンピロキシカム及びフェノール性化合物を含有する医薬組成物。
【請求項2】
前記アンピロキシカム及び前記フェノール性化合物は混合されている請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記フェノール性化合物が、カテコール誘導体、ヒドロキノン誘導体、没食子酸誘導体、トコフェロール類、フラボン類、ポリフェノール類からなる群から選択される請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記フェノール性化合物の配合量が、前記アンピロキシカム1重量部に対して0.00001〜0.1重量部である請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
黄色三ニ酸化鉄をさらに含む請求項1ないし4のうち何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記黄色三ニ酸化鉄の配合量が、前記アンピロキシカム1重量部に対して0.00005〜1重量部である請求項1ないし5のうち何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物は散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤である請求項1ないし6のうち何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記錠剤は、速崩性錠剤である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
フェノール性化合物を添加する添加工程を含むアンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法。
【請求項10】
前記添加工程において、黄色三ニ酸化鉄をさらに添加する請求項9に記載のアンピロキシカム含有医薬組成物の光安定化方法。
【請求項11】
フェノール性化合物を添加する添加工程を含むアンピロキシカム含有医薬組成物の製造方法。
【請求項12】
前記添加工程において、黄色三ニ酸化鉄をさらに添加する請求項11に記載のアンピロキシカム含有医薬組成物の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−8543(P2006−8543A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184458(P2004−184458)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】