説明

アース金具およびこれを用いた電気電子機器装置

【課題】 本発明は、電気電子機器装置において、アース金具の形状不具合や、アース金具と、電気電子機器装置の筺体との固着に不具合があっても、より確実に良好な接地が可能となるアース金具およびこれを用いた電気電子機器装置を提供する。
【解決手段】 アース金具が、筺体との接触面部と、接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、接触面部に形成した固定具挿通孔と、側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片とを備え、アース金具と、電気電子機器装置の筺体とを固着する固定具が、舌片と当接して電気的導通路を形成し、アース金具と、筺体とが電気的に導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子機器装置に収容される基板と、電気電子機器装置の筺体とを電気的に接続するアース金具に関し、電気的導通に優れ、接地不良の発生が少ないアース金具とこれを用いた電気電子機器装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器装置において、機器の動作不良や事故を防止する目的で接地を良好に行うことが必要となる。従来のアース金具には固定具挿通孔が形成され、その固定具挿通孔と、電子電気機器装置の筐体に形成された固定具挿通孔とに、導電性の固定具を連通して、アース金具と筐体とを固着することにより接地するものがある。アース金具に歪み等の形状不具合が生じたり、筺体に収容する基板の配置にずれが生じたりなどの原因によって接地不良があってはならず、より確実に接地可能なアース金具が望まれる。
【0003】
実用新案登録第2596238号公報には、アース端子と、筺体およびアース端子を接続する接続部材とを、それぞれに形成された螺子孔に螺子を連通して固着し、接地する技術が開示されている。アース端子の形状不具合、螺子および螺子の螺子溝の不具合が発生するなどして、接続部材と、アース端子との間の電気的導通路の形成に問題が生じ、接地が不安定となる場合が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2596238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、アース金具の形状不具合や、アース金具と、電気電子機器装置の筺体と、を固着する固定具の不良、すなわち、アース金具と筺体との電気的導通に不具合があっても、より確実に良好な接地が可能となる、アース金具およびこれを用いた電気電子機器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアース金具は、アース金具が、筺体との接触面部と、接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、接触面部に形成した固定具挿通孔と、側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片とを備える。
【0007】
また本発明のアース金具は、アース金具が、筺体との接触面部と、接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、接触面部に形成した固定具挿通孔と、接触面部の基体の一部および側面部の基体の一部を、一体に切り起こして形成した舌片と、を備え、側面部に形成される支点によって扇動可能に形成される舌片が、接触面部の平面から突出する凸部を有する。
【0008】
また本発明の電気電子機器装置は、アース金具と、固定具と、固定具挿通孔を有する筺体と、を備え、筐体の固定具挿通孔と、アース金具の固定具挿通孔と、を連通する固定具が、アース金具の側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片に当接し、筺体と、アース金具と、を電気的に導通する。
【0009】
また本発明の電気電子機器装置は、アース金具と、固定具と、固定具挿通孔を有する筐体と、を備え、筐体の固定具挿通孔と、アース金具の固定具挿通孔と、を連通する固定具が、アース金具の側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片に当接するとともに、舌片を扇動させてその凸部を筺体に当接させて、筺体と、アース金具と、を電気的に導通する。
【0010】
以下、本発明の作用について説明する。
【0011】
本発明のアース金具は、筺体との接触面部と、接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、接触面部に形成した固定具挿通孔と、側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片とを備える。接触面部と、側面部とは、略コの字形状に一体に構成しており、側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片が、接触面部と、側面部とに囲まれる内方へ切り起こされて構成される。本発明のアース金具は、接触面部に形成された固定具挿通孔と、筺体に形成された固定具挿通孔とに固定具を連通し、電気電子機器装置の筺体に固着する。ここで、固定具の先端が、アース金具の舌片に当接して、アース金具と、筺体との間に電気的導通路を形成する。
【0012】
さらに本発明のアース金具は、筺体との接触面部の基体の一部と、側面部の基体の一部とを一体に切り起こして形成した舌片を有する。舌片は、接触面部の基体の一部が切り起こされて、接触面部の平面より突出する凸部を備える。凸部側の一端と、側面部の基体側の他端と、の間に支点を備える舌片は、側面部に対して扇動可能に形成される。アース金具と、筺体とを固着する固定具が、舌片に当接するまで挿通し、尚も挿通することにより、固定具が舌片を扇動させる。舌片は、接触面部の平面より突出する凸部を有するので、凸部が筺体に当接するまで舌片が扇動する。すなわち、凸部が筺体に当接するまで固定具を挿通する。
【0013】
舌片の凸部と、筺体とが当接することによって、アース金具と、筺体との電気的導通路を形成することが出来る。従って、アース金具の形状不具合に起因する、アース金具と筺体との接触不良や、固定具の不良、または、固定具挿通孔の寸法不具合などによって、筺体とアース金具との電気的導通に不具合が発生しても、筺体とアース金具とは、舌片の凸部が筺体と接触するので、電気的導通路が確保され、確実に接地が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアース金具およびこれを用いた電気電子機器装置は、アース金具の形状不具合などに起因して、筺体と、アース金具との間に接触不良が発生したり、固定具の不良、または、固定具挿通孔の寸法不具合などによって、筺体と、アース金具との電気的導通に不具合が発生するなどしても、アース金具に形成した舌片が、筺体と、アース金具とを、電気的に導通するので、確実に接地が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のアース金具1を説明する図である。
【0016】
【図2】本発明のアース金具1を用いた電気電子機器装置100を示す図である。
【0017】
【図3】本発明のアース金具2を説明する図である。
【0018】
【図4】本発明のアース金具2を用いた電気電子機器装置200を説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
アース金具 1、2
電気電子機器装置 100、200
接触面部 3、23
側面部 4、24
固定具挿通孔 5、25、
舌片 6、26
基板接触片 7、27
基板 8
筐体 10
側面シャーシ 10a
螺子 13
軸先端 13a
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、これらは本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は後述する実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明のアース金具1を示す図である。アース金具1は、筺体との接触面部3と、接触面部3から鉛直方向へ延設された2枚の側面部4と、から構成され、略コの字形状を有している。接触面部3の平面中央部分には、円形の固定具挿通孔5が形成されている。側面部4は、側面部4の基体の一部を切り起こして形成した舌片6と、側面部4に延設した基板接触片7と、を備える。基板接触片7は、1枚の側面部4につき2本形成する、つまり、アース金具1は、4本の基板接触片7を備える。
【0022】
アース金具1の外寸は、接触面部を正面視して、幅(X)7.0mm×奥行(Y)10.0mm×高さ(Z)10.0mmである。アース金具1の高さ寸法は、接触面部3および側面部4の高さ(Z2)が7.0mmであり、基板接触片7の高さ(Z3)が3.0mmである。アース金具1は、鉄、銅、真鍮などの材料から選択され、その材料にメッキが施されるなどして構成され得るが、本実施例のアース金具1はスズメッキした真鍮から構成される。
【0023】
舌片6は、側面部4の基体の略中央に、側面部4を正面視して縦(Z1)3.0mm×横(Y1)7.0mmの寸法で、横長矩形状のスリット(切り込み)が入るようにせん断し、曲げ加工して形成した。舌片6は、側面部4の両側面部に形成され、アース金具1は、2枚の舌片6を備える。それぞれの舌片6が、アース金具1の略コの字形状に囲まれる内方へ曲げ加工が施されることにより、2枚の舌片6が略ハの字形状に位置して構成される。
【0024】
図2は、本発明のアース金具1を用いた電気電子機器装置100を示す図である。アース金具1は、基板8の所定のアース金具取付部に基板接触片7を挿入して取り付けられる。本実施例において、アース金具1と、基板8とは、半田付けして取り付ける。アース金具1を取り付けた基板8が、電気電子機器装置100の筺体10に収容される。アース金具1は、筺体10と固定具11を介して固着する。本実施例の固定具11は螺子13であり、図2には、螺子13を図示した。
【0025】
筺体10は、前面および後面パネル(図示しない)と、側面シャーシ10aと、下部シャーシ(図示しない)と、天板(図示しない)とから構成される。前面パネルの筺体内部側には、前面パネルと重なるように前面ブラケットや前面シャーシが配置されてもよい。筺体10は、側面シャーシ10aに固定具挿通孔12を備える。なお、アース金具1を取り付けた電気電子機器装置を示す図2において、固定具挿通孔12は螺子13の頭部に隠れて図示されない。アース金具1と、筐体10とは、筺体10の外方から螺子13を筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具1の固定具挿通孔5とに連通して固着する。すなわち、筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具1の固定具挿通孔5は、それぞれ螺子孔である。
【0026】
螺子13は、筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具1の固定具挿通孔5とに連通した後、軸先端13aがアース金具1の舌片6に当接するまで螺合する。螺子13の軸先端13aが、舌片6に当接することで電気的導通路が形成される。ここで、螺子13は、タッピング螺子や、小螺子などが用いられ得るが、本実施例では、タッピング螺子を用いる。使用する螺子に応じて、筺体およびアース金具の螺子孔には、適宜、螺子溝が形成され得る。
【0027】
本発明によれば、アース金具の形状不具合に起因して、アース金具1の接触面部3と、筺体10と、の面接触が妨げられても、アース金具1の舌片6と、螺子13とが当接するので電気的導通路が確保され、より確実な接地が可能となる。また、螺子13と、筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具1の固定具挿通孔5と、の径公差に起因した電気的導通に不良が生じるおそれがあっても、アース金具1の舌片6と、螺子13とが当接するので電気的導通路が確保され、より確実な接地が可能となる。
【実施例2】
【0028】
図3aおよび図3bは、本発明のアース金具2を示す図である。図3aは、アース金具2の斜視図であり、図3bは、アース金具2の平面図である。アース金具2は、実施例1と同様に、筐体との接触面部23と、接触面部23から鉛直方向へ延設された2枚の側面部24とで構成され、略コの字形状を有している。接触面部23の平面略中央部分には、円形の固定具挿通孔25が形成されている。側面部24は、アース金具2の基体の一部を切り起こして形成した舌片26と、側面部24に延設した基板接触片27とを備える。基板接触片27は、側面部24より延設された脚状の小片である。アース金具2は、1枚の側面部24に基板接触片27を2本有しており、計4本の基板接触片27を備える。
【0029】
アース金具2の基体の外寸は、接触面部23を正面視して、幅(X)7.0mm×奥行(Y)10.0mm×高さ(Z)10.0mmである。アース金具2の高さ寸法は、接触面部23および側面部24の高さ(Z2’)が7.0mmであり、基板接触片27の高さ(Z3’)が3.0mmである。アース金具2は、鉄、銅、真鍮などの材料から選択され、その材料にメッキが施されるなどして構成され得るが、本実施例のアース金具2はスズメッキした真鍮から構成される。
【0030】
舌片26は、側面部24の基体の略中央に、側面部24の基体の一部と、接触面部23の基体の一部を切り起こして形成した凸部26aとから構成される。凸部26aは、接触面部23の基体の一部を切り起こして形成した部分であるので、接触面部23の平面から突出する。
【0031】
舌片26は、側面部4を正面視して縦(Z1’)3.0mm×横(Y1’)7.2mmの寸法を有して構成される。舌片26は、側面部24を縦3.0mm×横7.0mmの寸法で切り起こされた部分と、接触面部23を縦3.0mm×横0.2mmの寸法で切り起こされた部分とから構成される。従って、舌片26の凸部26aは、接触面部23の平面に対して突出している。舌片26は、凸部26aの一端と、側面部24の基体の一部である他の一端と、の間に支点を有して構成され、舌片26は、側面部24に対して支点を軸に扇動可能に形成されている。
【0032】
図4は、本発明のアース金具2を用いた電気電子機器装置200を示す図である。アース金具2は、基板8のアース金具取付部(図示しない)に基板接触片27を挿入して取り付けられる。本実施例においては、アース金具2と、基板8とは半田付けして取り付ける。アース金具2を取り付けた基板8が、電気電子機器装置200の筺体10に収容される。アース金具2は、筺体10と固定具11を介して固着する。本実施例の固定具11は螺子13であり、図4には、螺子13を図示した。
【0033】
筺体10は、前面および後面パネル(図示しない)と、側面シャーシ10aと、下部シャーシ(図示しない)と、天板(図示しない)とから構成されるが、前面パネルと重なるように、筺体内部に前面ブラケットや前面シャーシがあってもよい。筺体10は側面シャーシ10aに固定具挿通孔5を備える。アース金具2と筐体10とは、筺体10の外方から螺子13を筺体10の固定具挿通孔12とアース金具2の固定具挿通孔25とに連通して固着する。すなわち、筺体10の固定具挿通孔12とアース金具2の固定具挿通孔25は、それぞれ螺子孔である。
【0034】
螺子13は、筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具2の固定具挿通孔5と、に連通した後、軸先端13aがアース金具2の舌片26に当接するまで螺合する。舌片26は、扇動可能に形成しているので、螺子13はさらに螺合可能である。螺子13は、螺子13の軸先端13aが舌片26を扇動させると同時に、舌片26の凸部26aが筺体に当接する。螺子13の軸先端13aが舌片26に当接するだけでなく、舌片26の凸部26aが筺体10とも当接して、電気的導通路が形成される。ここで、螺子13は、タッピング螺子や小螺子などが選択され得るが、本実施例では、タッピング螺子を用いる。使用する螺子に応じて、筺体、および、アース金具の螺子孔には、適宜、螺子溝が形成され得る。
【0035】
本発明によれば、アース金具の形状不具合に起因して、アース金具1の接触面部3と、筺体10との面接触が妨げられても、若しくは、螺子13と筺体10の固定具挿通孔12と、アース金具2の固定具挿通孔5との径公差に起因して、電気的導通に不良が生じるおそれがあっても、アース金具1の舌片6と、螺子13とが当接するので電気的導通路が確保され、より確実な接地が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、特定製品に限られず、あらゆる電気電子機器装置に用いられるが、映像機器および音響機器に特に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気電子機器装置の筺体との接触面部と、該接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、該接触面部に形成した固定具挿通孔と、該側面部の基体の一部を切り起こして形成した舌片と、を備える、
アース金具。
【請求項2】
電気電子機器装置の筺体との接触面部と、該接触面部から鉛直方向に延設された側面部と、
該接触面部に形成した固定具挿通孔と、
該接触面部の基体の一部と、該側面部の基体の一部とを一体に切り起こして形成した舌片と、該プリント基板との接続部と、を備え、
該側面部に形成される支点によって扇動可能に形成される該舌片が、該接触面部の平面から突出する凸部を有する、
アース金具。
【請求項3】
請求項1に記載のアース金具と、固定具と、固定具挿通孔を有する筐体と、を備え、
該筐体の該固定具挿通孔と、前記アース金具の固定具挿通孔と、を連通する該固定具が、
該アース金具の前記側面部の基体の一部を切り起こして形成した前記舌片に当接し、
該筺体と、該アース金具と、を電気的に導通する、
電気電子機器装置。
【請求項4】
請求項2に記載のアース金具と、固定具と、固定具挿通孔を有する筐体と、を備え、
該筐体の該固定具挿通孔と、前記アース金具の固定具挿通孔と、を連通する該固定具が、
該アース金具の前記側面部の基体の一部を切り起こして形成した前記舌片に当接するとともに、
該舌片を扇動させてその前記凸部を該筺体に当接させて、
該筺体と、該アース金具と、を電気的に導通する、
電気電子機器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−205457(P2010−205457A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47370(P2009−47370)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】