説明

イオン発生装置およびその製造方法と、保持治具

【課題】ケーシング本体11に取り付けた電極板2の端子部21と、この電極板2に高圧電力を供給するための回路基板SBとは、従来はリード線で接続していた。リード線を端子部21にハンダ付けする際のリード線の位置決めを手で行わなければならず、作業性が悪かった。また、リード線は電極板2と回路基板SBの間に手作業で押し込まれるので、リード線間の線間容量が一定せず、電極板2への出力がばらつくという不具合もあった。
【解決手段】複数の線材32を保持部31に保持させた接続部材を用いて電極板の端子部21と回路基板SBと接続するようにした。保持部31はケーシング11に形成した固定部13に嵌合させて固定するので、ハンダ付け作業の際に線材32を手で位置決めする必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング本体に形成した窓穴から臨む電極板を備え、この電極板からイオンを空気中に放出するイオン発生装置およびその製造方法と、イオン発生装置を製造する際に使用する保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置は、ケーシング本体もしくはケーシング本体の開口を蓋する蓋体のいずれかに窓穴を設け、その窓穴を塞ぐように電極板を取り付けている。電極板の表面はイオン発生面になっており、裏面には電極板に高圧電力等を供給するための端子部が設けられている。
【0003】
また、ケーシング本体内には電極板に供給する高圧電力を発生させるための回路基板が収納される。回路基板と電極の端子部とを電気的に接続する必要があり、従来は回路基板と端子部とをリード線で連結している(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
なお、イオン発生装置の信頼性を高めるため、電極板と回路基板とをリード線で連結した状態で回路基板がケーシング本体に収納されると、ウレタン樹脂等の熱硬化性の樹脂をケーシング本体内に充填してポッティングを行っている。
【0005】
このポッティングを行う際には、ケーシング本体内に樹脂を充填した状態で加熱炉にケーシング本体ごと入れ、樹脂を加熱することにより樹脂を硬化させている。
【特許文献1】特開2003−45611号公報(図8)
【特許文献2】特開2004−111135号公報(図1,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電極板には機能上の問題から穴を開けることができないので、裏面に形成された端子部は電極板の裏面に金属箔を被着させて形成される。そのため、リード線を端子部にハンダ付けする際には、リード線を手で位置決めしてハンダ付けしなければならず、作業性がきわめて悪く、かつハンダ付けの品質を一定させづらいという不具合が生じる。
【0007】
また、リード線はできるだけ短いことが望ましく、リード線の長さに余裕を持たすことができない。そのためハンダ付け作業がしづらく、ハンダ付け工程に要する時間が長くなり、時間あたりの生産個数を容易に上げることができない。
【0008】
さらに、両端が電極板の端子部と回路基板とに接続されたリード線は、回路基板と電極板との間に収納されるが、収納は手作業で行われ、かつリード線は自由に曲がるので、リード線の収納状態を常に一定に保つことが困難である。リード線の収納状態がばらつくと、リード線同士の線間容量が一定しないため、回路基板から電極板に出力される高圧電力がばらつき、性能が一定しないおそれが生じる。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、ハンダ付け作業が容易で、かつ性能がばらつかないイオン発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続する接続部材とを備えたイオン発生装置において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材と、これら線材を各端子部に対応させて保持する保持部とで上記接続部材を形成し、各線材の先端を端子部にハンダ付けすると共に、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とする。
【0011】
接続部材の線材はリード線と違って小さな外力では形状が変化せず、そのためハンダ付けの際にも位置決めがし易くハンダ付けを容易の行うことができる。更に、各線材は保持部に保持されているので例えば保持部を位置決めすればすべての線材を位置決めすることができる。
【0012】
なお、接続部材の位置決めを手で行ってもよいが、各線材の先端が端子部に当接するように、接続部材をケーシング本体に固定する固定部を、ケーシングに形成すれば、手で位置決めする必要がないのでさらにハンダ付け作業が容易になる。
【0013】
ところで、接続部材の代わりに既存のコネクタ類を用いてもよいが、電極板の端子部にハンダ付けする際、熱が電極板に引かれるため長時間加熱する必要がある。すると、従来のコネクタでは、このハンダ付け時の熱により樹脂部分が軟化し、信頼性が担保できない場合が生じる。そこで、上記接続部材の保持部を耐熱性材料で形成することが望まれる。
【0014】
また、上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させてケーシング本体に保持させて各線材の先端を端子部にハンダ付けすると共に、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とする。
【0015】
あるいは、ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置の製造方法において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させた状態で保持治具に保持させ、各線材の先端を端子部にハンダ付けし、その後保持治具をケーシング本体から取り除き、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とする。
【0016】
なお、この場合、各線材の先端を端子部にハンダ付けする際に、上記保持治具をケーシング本体に対して位置決めすることにより、線材を端子部に対して位置決めすることが望まれる。
【0017】
また、この場合、ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置の製造に用いる保持治具であって、複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させた状態で保持すると共に、線材を端子部に対して位置決めするために、ケーシング本体に対して位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする保持治具を用いるとよい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、本発明は、電極板の端子部と回路基板とを、接続部材を用いて接続するので、可撓性を有するリード線で接続する場合に比べて線材の位置決めが容易でハンダ付けをすばやく、かつ正確に行うことができる。また、線材は保持部によって一体に保持されているので、各線材を別個に位置決めする必要がない。
【0019】
さらに、各線材同士の間隔が一定に保たれるので、線材相互間の線間容量がばらつかない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照して、1は本発明によるイオン発生装置の一例を示す。このイオン発生装置は樹脂成形されたケーシング本体11と、このケーシング本体11に係合した状態で接着されるカバー12とから構成されている。13はこのイオン発生装置13に外部から電力を供給するためのコードである。また、ケーシング本体11には電極板2が取り付けられている。この電極板2は箔状の電極がセラミックの薄層と交互に積層され、高圧交流電力が供給されると放電しイオンを生成して空気中に放出するものである。
【0021】
図2を参照して、本図は図1に示した状態から上下反転した状態を示している。電極板2の裏面、すなわち内側面には4個の端子部21が形成されており、回路基板SBとこれら端子部21とは導電性の線材32によって連結されている。すなわち、各線材32の一端は端子部21にハンダ付けされており、他端は回路基板SBにハンダ付けされている。
【0022】
線材32は板状の保持部31に貫通し、保持部31に所定の間隔を開けて保持されいる。この保持部31は本実施の形態ではガラス繊維を含有したエポキシ樹脂で形成されており、耐熱性と強度に優れている。なお、保持部31の材料はポッティング時の熱に耐えられる材料であれば特に限定されるものではない。
【0023】
なお、図2に示すように、電極板2の端子部21と回路基板SBとを線材32によって連結した状態で、ケーシング11内に液面がPの位置になるまでウレタン樹脂を充填し、その後加熱してポッティングを行う。
【0024】
ところで、図3に示すように、上記線材32と保持部31とで接続部材3が構成される。また、ケーシング11の内部には逆L字状の1対の固定部13が形成されている。ケーシング11の底部に形成した窓穴11aを塞ぐように外側から電極板2を固定する。すると、端子部21は窓穴11aからケーシング11の内部に露出する。その状態で接続部材3を固定部13に固定させる。接続部材3の保持部31が固定部13に係合するように、図において水平方向にスライドさせて保持部31が固定部13に係合するようにした。
【0025】
このように保持部31を固定部13に係合させると、線材32の先端が各々端子部21に当接するように設定した。このように設定することにより、固定部13によって接続部材3をケーシング11に固定すると、その後は接続部材3を手で固定する必要が無く、線材32の先端を端子部21にハンダ付けする作業を容易に行うことができる。なお、このハンダ付け作業時に線材32は高温になるが、保持部31は上述のように耐熱性に優れているので保持部31の変形等の不具合が生じない。
【0026】
そして、各線材32の先端を端子部21にハンダ付けし終えると、図4の示すように、回路基板SBをケーシング本体11内に取り付ける。回路基板SBには線材32の他端が貫通する穴が予め形成されており、図4に示すように回路基板SBをケーシング本体11内にセットすると、線材32の他端は回路基板SBを貫通して上方に突き出す。線材32が貫通する穴の周りにランドを形成しておき、回路基板SBから突き出した状態の線材32を回路基板SBに対してハンダ付けする。このハンダ付け作業時にも線材32を手で位置決めする必要はない。そして、このハンダ付け作業が終了すると、上述のように液面がPの位置になるまでウレタン樹脂をケーシング11内に充填し、加熱し硬化させた後カバー12をケーシング本体11に接着してイオン発生装置1を完成させる。
【0027】
ところで、上記実施の形態では。接続部材3を用いたが、接続部材3を用いない構成も考えられる。図5および図6を参照して、ケーシング本体11に線材32を保持する保持部14を設け、線材32をケーシング本体11に直接保持させるようにしてもよい。この構成では、線材32を図5および図6において、保持部14に上下方向の貫通穴を予め形成しておき、線材を下方向から差し込み、保持部14に線材32を保持させる。その後に、電極板2をケーシング本体11に接着する。接着工程が完了すると線材32の一端を端子部にハンダ付けし、さらに上記と同様にして線材32の他端を回路基板SBにハンダ付けする。
【0028】
あるいは、図7に示すように、線材32を保持治具4に保持させた状態で、保持治具4ごとケーシング本体11に位置決めした状態で線材32を端子部にハンダ付けするようにしてもよい。
【0029】
この保持治具4は基部41の下端に位置決め把持部42が形成されている。この位置決め把持部42には線材32を位置決めするための4本の縦溝が形成されている。そして線材32はその縦溝に嵌った状態で把持される。一方、基部41に対して揺動自在に連結された押さえ把持部43が線材32を押さえ、線材32が縦溝から脱落しないようにしている。
【0030】
この押さえ把持部43は図示しないトーションばねによって、常に位置決め把持部42に押接する方向に付勢されており、つまみ部45と基部41の上部とに指をかけてつまむと、押さえ把持部43が上記付勢力に抗して位置決め把持部42から離れ、線材32から保持治具4を取り外すことができる。
【0031】
ところで、押さえ把持部43の両端部43aは、ケーシング本体11に形成した1対の位置決め部15に各々当接して、保持治具4をケーシング本体11に対して位置決めすることができる。そして、その位置決めした状態で線材32の一端を端子部にハンダ付けする。その後、保持治具4をケーシング本体11内から取り出し、上述と同様にして線材32の他端を回路基板SBにハンダ付けする。
【0032】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】イオン発生装置の断面図
【図3】接続部材の取付状態を示す図
【図4】接続部材の取付状態を示す断面図
【図5】第2の実施形態を示す図
【図6】VI-VI断面図
【図7】第3の実施形態を示す図
【符号の説明】
【0034】
1 イオン発生装置
2 電極板
3 接続部材
4 保持治具
13 固定部
11 ケーシング本体
21 端子部
31 保持部
32 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続する接続部材とを備えたイオン発生装置において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材と、これら線材を各端子部に対応させて保持する保持部とで上記接続部材を形成し、各線材の先端を端子部にハンダ付けすると共に、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
各線材の先端が端子部に当接するように、接続部材をケーシング本体に固定する固定部を、ケーシングに形成したことを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
上記接続部材の保持部を耐熱性材料で形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させてケーシング本体に保持させて各線材の先端を端子部にハンダ付けすると共に、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項5】
ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置の製造方法において、上記複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させた状態で保持治具に保持させ、各線材の先端を端子部にハンダ付けし、その後保持治具をケーシング本体から取り除き、線材の他端を回路基板に貫通させた状態で回路基板に対してハンダ付けしたことを特徴とするイオン発生装置の製造方法。
【請求項6】
各線材の先端を端子部にハンダ付けする際に、上記保持治具をケーシング本体に対して位置決めすることにより、線材を端子部に対して位置決めすることを特徴とする請求項5に記載のイオン発生装置の製造方法。
【請求項7】
ケーシング本体の壁面に形成された窓穴に、この窓穴を塞ぐように、かつイオン発生面が外部に臨むように取り付けられた電極板を備えると共に、ケーシング本体内に収納される高圧発生用の回路基板と、電極板の内側面に形成された複数の端子部とを電気的に接続するイオン発生装置の製造に用いる保持治具であって、複数の端子部の各々に対応する複数の導電性の線材を、各端子部に対応させた状態で保持すると共に、線材を端子部に対して位置決めするために、ケーシング本体に対して位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする保持治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−147379(P2006−147379A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336836(P2004−336836)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)