説明

イオン発生装置

【課題】ケーシング本体に回路基板を収納し、ケーシング本体を蓋する蓋体に電極を取り付け、回路基板から電極板に高圧電力を供給して電極板からイオンを発生させるイオン発生装置において、ケーシングが大型化しても電極板が割れるおそれがなく、かつポッティング用の樹脂の注入を短時間で行うことができるイオン発生装置を提供する。
【解決手段】蓋体3の内側に回路基板31を取り付け、蓋体3に対して回路基板をポッティングすると共に、電極板41を蓋体3とは別体の電極板保持部材4に取り付けてポッティングした後で、電極板保持部材4を蓋体3に取り付けるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを発生させるセラミック製の電極を有するイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置は、開口部を備えた有底のケーシング本体内に昇圧コイルやその他の部品が取り付けられた回路基板をセットし、その状態でこの開口部を樹脂製の蓋体で閉塞している。この蓋体にはイオンを発生するための電極板が取り付けられている。この電極板はセラミック製の多層板で構成されており、表面には電極パターンが露出しており、裏面にはケーシング内の回路基板からのリード線がハンダ付けされる端子が設けられている。したがって、蓋体に取り付けられた状態でこの電極板の裏面はケーシング内に露出している。
【0003】
また、蓋体には注入口が形成されており、ケーシングの開口部を蓋体が閉塞した後、この注入口から樹脂をケーシング内に注入し、さらに熱硬化させることにより樹脂で回路基板をポッティングして耐久性を向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−45611号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、蓋体でケーシングの開口部を閉塞した後、蓋体の注入口から樹脂を注入するので、その注入された樹脂は蓋体に取り付けられている電極板の裏面にも接触する。そのため電極板の裏面はケーシング内に充填された状態の樹脂に接着された状態になる。このように完成されたイオン発生装置が加熱されるとケーシング内に充填された樹脂は膨張し、逆に冷却されると充填された樹脂は収縮する。
【0005】
このように加熱および冷却がくり返されるヒートサイクル中に、樹脂の膨張により裏面から押され、樹脂の収縮によりケーシング内方向に引き込まれる。特にケーシングが大型化すると、ケーシングへの樹脂の充填量が増え、膨張収縮量も大きくなる。特に樹脂の収縮時に電極板がケーシング内方向に引き込まれると、電極板がセラミック製であるため、電極板が割れるという不具合が生じる。
【0006】
また、ポッティング用の樹脂は蓋体に形成された注入口からケーシング本体内に充填されるが、ケーシング内の空気が注入される樹脂によってこの注入口から押し出されるため、注入速度を上げると、注入口が注入される樹脂で塞がれてケーシング本体内の空気がうまく排出されない。そのため樹脂の注入速度を上げることができず、樹脂の注入に長時間を要してしまうという不具合が生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、ケーシングが大型化しても電極板が割れるおそれがなく、かつポッティング用の樹脂の注入を短時間で行うことできるイオン発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、イオンを発生させる板状の電極板と、この電極板に高圧電力を供給する回路基板とを備えたイオン発生装置において、回路基板を収納するケーシングを有底中空のケーシング本体とこのケーシング本体の開口を蓋する蓋体とで構成すると共に、回路基板を蓋体の内側にポッティングし、更に電極板で蓋される電極板取り付け用の開口が設けられた中空の電極板取付部材に電極板を取り付けた状態でポッティングし、電極板取付部材を上記蓋体の外側面に取り付けたことを特徴とする。
【0009】
回路基板を蓋体の内側に取り付けてポッティングすることにより、ポッティング用の樹脂を蓋体の内側に注入する際、空気と樹脂との置換について配慮する必要が無く、短時間で樹脂を蓋体の内側に充填することができる。また、回路基板をポッティングする樹脂と電極板をポッティングする樹脂とは個別に充填され互いに接触することがないので、電極板をポッティングしている樹脂の表面は電極板取付部材内で拘束されず、樹脂の膨張収縮による応力が電極板に作用することはない。
【0010】
なお、電極板を蓋体の外側面に取り付ける電極保持部材に保持させたので、電極保持部材内の電極板と蓋体内の回路基板とを連結するリード線は蓋体の外側を通す必要が生じる。そこで、蓋体をケーシング本体に取り付けた状態で蓋体とケーシングとの間に隙間ができるように蓋体に凹部を設けると共に、電極板と回路基板とを連結するリード線をこの隙間に通し、電極板取付部材を蓋体に取り付けた状態でこの隙間を電極板取付部材で覆うようにした。
【0011】
なお、回路基板に外部からの給電用のコネクタ部材を取り付けると共に、ケーシング本体と蓋体とを連結した状態でコネクタ部材がケーシング本体の外部に臨むように、ケーシング本体にコネクタ部材の外形とほぼ同形の窓穴を形成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、電極板をポッティングする樹脂は電極板保持部材内に充填されるだけであるので、樹脂の厚みはそれほど厚くならず、かつ樹脂の表面は空気中に対して露出し、拘束されることがないので、例えこの樹脂が膨張収縮しても電極板に大きな応力が作用することがなく、その結果、電極板が破損するおそれがない。
【0013】
また、回路基板を蓋体の内側に取り付けてポッティングするので、回路基板のポッティング用の樹脂の充填を短時間を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明によるイオン発生装置の一例であり、有底中空のケーシング本体2と、このケーシング本体2の開口を閉塞する蓋体3と、この蓋体3の外側面に取り付けられた電極板保持部材4とから構成されている。この電極板保持部材4には外側に電極面が露出するように電極板41が取り付けられており、この電極板41からイオンが空気中に放出される。
【0015】
図2を参照して、蓋体3の内側には回路基板31が取り付けられ、樹脂3aによってポッティングされている。一方、電極板取付部材4内には樹脂4aが充填され電極板41の内側面をポッティングしている。なお、5はリード線であり、回路基板31から電極板41に対して高圧電極および露結防止のため加熱用電力を供給している。
【0016】
図3を参照して、電極板41は電極板取付部材4に形成された窓穴42に液密に取り付けられ、更に回路基板からのリード線5をハンダ付けした後、樹脂4aによってポッティングされる。一方、回路基板31は蓋体3内に取り付けられた状態で蓋体3内の注ぎ込まれる樹脂3aによってポッティングされる。
【0017】
電極板41および回路基板31のポッティングが完了すると、電極板保持部材4を蓋体3の外側面に取り付ける。その際、リード線5は蓋体3に形成した凹部32内に格納する。この凹部32は電極板取付部材4に形成した凸片43によって塞がれるようにした。したがって、蓋体3の外側面に電極板取付部材4が取り付けられた状態では、凹部32は電極板取付部材4で覆い隠されることになる。
【0018】
図4を参照して、蓋体3に電極板取付部材4を取り付けた状態で、蓋体3とケーシング本体2とを連結する。なお、回路基板31には空電用のリード線が外部から接続されるためのコネクタ31aが取り付けられている。ケーシング本体2にこのコネクタ31aの形状とほぼ同じ形の窓穴21を設けて、ケーシング本体2と蓋体3とを相互に取り付けた状態で、コネクタ31aが窓穴21から外部に臨むようにした。
【0019】
ところで、回路基板31にコネクタ31aを取り付けずに、回路基板31に給電用のリード線を直接取り付けてもよい。その際には、図5に示すように、ケーシング本体2に段部22を設けると共に、この段部22に切欠き部23を形成し、外部からの給電用のリード線をこの切欠き部23に挿通すればよい。そして、蓋体3に凸片33を形成しておき、蓋体3とケーシング本体2とを相互に連結した際に凸片33が切欠き部23を閉塞するようにした。
【0020】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】II-II断面図
【図3】蓋体と電極板取付部材へのポッティング状態を示す図
【図4】蓋体とケーシング本体との取付状態を示す図
【図5】他の実施の形態を示す図
【符号の説明】
【0022】
1 イオン発生装置
2 ケーシング本体
3 蓋体
31 回路基板
4 電極板保持部材
41 電極板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを発生させる板状の電極板と、この電極板に高圧電力を供給する回路基板とを備えたイオン発生装置において、回路基板を収納するケーシングを有底中空のケーシング本体とこのケーシング本体の開口を蓋する蓋体とで構成すると共に、回路基板を蓋体の内側にポッティングし、更に電極板で蓋される電極板取り付け用の開口が設けられた中空の電極板取付部材に電極板を取り付けた状態でポッティングし、電極板取付部材を上記蓋体の外側面に取り付けたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
蓋体をケーシング本体に取り付けた状態で蓋体とケーシングとの間に隙間ができるように蓋体に凹部を設けると共に、電極板と回路基板とを連結するリード線をこの隙間に通し、電極板取付部材を蓋体に取り付けた状態でこの隙間を電極板取付部材で覆うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
回路基板に外部からの給電用のコネクタ部材を取り付けると共に、ケーシング本体と蓋体とを連結した状態でコネクタ部材がケーシング本体の外部に臨むように、ケーシング本体にコネクタ部材の外形とほぼ同形の窓穴を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−127766(P2006−127766A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310298(P2004−310298)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)