説明

イオン発生装置

【課題】従来のイオン発生装置では、1枚の回路基板上に昇圧コイルを取り付けているので、回路基板をケーシング内にセットするためには、回路基板の厚みに昇圧コイルの高さを足した寸法のほか、回路基板の昇圧コイルが取り付けられていない側の面側に確保すべきスペースが必要なため、ケーシングが大型化する。
【解決手段】回路基板を1次側と2次側とに分割し、昇圧コイルを両回路基板で挟むことにより、回路基板の表面からの昇圧コイルの高さが低くなる。このため、ケーシングを深くする必要が無くなり、ケーシングを小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧の電力を昇圧コイルの1次側巻線に供給する1次側回路と、この昇圧コイルの2次側巻線から出力される高電圧を放電電極に供給する2次側回路とを備えたイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置は、外部から低電圧の交流電力の供給を受け、その交流電力を昇圧コイルの1次側に供給する。すると、2次側から昇圧された高電圧の交流電力が出力される。その出力された交流電力を2次側回路を介して放電電極に供給している。放電電極に高電圧の交流電力が供給されると、1対の放電電極間で放電が発生し、その結果イオンが空気中に放出される。
【0003】
これら1次側回路および2次側回路と昇圧コイルとは1枚の回路基板上に載置され、ユニット化されており、そのユニット化された1枚の回路基板をケーシング内にセットしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−45611号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板をケーシング内にセットする際には、回路基板に搭載されている電子部品のスペースを確保し、あるいは配線のための空間を確保する必要があるので、回路基板の両面側に各々ある程度のスペースを設けなければならない。また、上記従来のイオン発生装置では、1枚の回路基板上に昇圧コイルを取り付けているので、回路基板をケーシング内にセットするためには、回路基板の厚みに昇圧コイルの高さを足した寸法のほか、回路基板の昇圧コイルが取り付けられていない側の面側に確保すべきスペースが必要なため、ケーシングの深さが深くなる。そのため、ケーシングを小型化できないという不具合が生じる。なお、回路基板から昇圧コイルを単に取り外して、ケーシング内の別途の位置に格納したのでは、1次側回路や2次側回路と昇圧コイルとの配線が長くなり、回路基板の設計が煩わしくなるという新たな不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、上述の新たな不具合を生じさせることなくケーシングを小型化することのできるイオン発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、低電圧の電力を昇圧コイルの1次側巻線に供給する1次側回路と、この昇圧コイルの2次側巻線から出力される高電圧を放電電極に供給する2次側回路とを備え、放電電極での放電によりイオンを発生させるイオン発生装置において、1次側回路が搭載された1次側回路基板と2次側回路が搭載された2次側回路基板とを別個に形成し、ケーシング内に、1次側回路基板と2次側回路基板とで上記昇圧コイルを挟むようにセットしたことを特徴とする。
【0007】
回路基板を1次側と2次側とに分割し、昇圧コイルを両回路基板で挟むことにより、回路基板の表面からの昇圧コイルの高さが低くなる。このため、ケーシングを深くする必要が無くなり、ケーシングを小型化することができる。なお、昇圧コイルを1次側回路基板と2次側回路基板とのあいだに配置することにより、昇圧コイルを含めた各電子部品の配置を回路図に沿ったものにすることができ、各回路基板と昇圧コイルとの接続を最短距離で行うことができる。
【0008】
ケーシングを小型化するためには昇圧コイルを可及的に小型化することが望まれる。昇圧コイルを小型化するためには巻線を細くする必要があるが、巻線が細くなるとボビンから突出する端子に接続した巻線が、この端子が曲げ等の変形することにより切れるおそれが増加する。
【0009】
そこで、上記各回路基板に接続される昇圧コイルの端子を、各回路基板に平行であって昇圧コイルのボビンを貫通して設けると共に、この端子の一端側にいずれかの回路基板を接続し、他端側に昇圧コイルの巻線を接続することが望まれる。このように構成すれば、回路基板に接続されている一端側が変形しても、その変形の影響は他端側に及ばず、巻線が切れるおそれが減少する。
【0010】
回路基板上に大型の電子部品を取り付けなければならない場合には、ケーシングの小型化がその電子部品によって阻害される。そこで、上記両回路基板の少なくとも一方には円柱状の本体を備えた電子部品が、この本体の軸線が回路基板と平行になるように取り付けられ、回路基板にはこの本体が落とし込まれる開口が形成されるように構成することが望ましい。
【0011】
上記ケーシングの底部外面には、上記放電電極が嵌め込まれる、放電電極の厚みと同じ寸法の深さの電極取付部が形成されており、電極取付部に放電電極を嵌め込んだ状態で、ケーシングと放電電極との境界部分を覆うシール材であって、表面に印字可能な封止部材を貼着してもよい。
【0012】
また、上記1次側回路に外部からの低電圧の電極を供給する給電電極をケーシングに予め固定すると共に、上記1次側回路基板をケーシング内でこの給電電極に向かってスライドすることにより接続される端子を1次側回路基板上に取り付けてもよい。
【0013】
ところで、昇圧コイルがケーシングの中央部分に配置された状態でケーシング内に樹脂を流し込んでポッティングをすると、樹脂はケーシング内壁に沿って表面張力により立ち上がり、逆に中央部分での樹脂の液面が周囲よりも凹む現象が生じる。そのため昇圧コイルが樹脂から露出し易くなる。
【0014】
このような場合には、上記昇圧コイルをケーシング内にセットした状態で、上記昇圧コイルを覆う板状の庇部材を取り付けると共に、この庇部材に接するまで樹脂をケーシング内に充填して、上記各回路基板および昇圧コイルをポッティングすればよい。
【0015】
樹脂は庇部材に接すると庇部材に付着するため、庇部材の周囲の樹脂は液面が盛り上がる。このため昇圧コイルは庇部材と庇部材の周囲の樹脂とによって完全に覆われ、外部に露出することがない。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明は、1次側回路や2次側回路に対して無理なレイアウトを取ることなく昇圧コイルを配置し、かつ、回路基板と両圧コイルとを収納するためのスペースを浅くすることができるので、ケーシングを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照して、1は交流電源Bから供給される低電圧の交流電力を昇圧コイル2の1次側に供給するための1次側回路である。昇圧コイル2の2次側からは高電圧の交流電力が出力され、2次側回路3に供給される。そして、その高電圧の交流電力は放電電極4に供給されて、この放電電極4で放電が生じることによりイオンが発生し、空気中へとイオンが拡散する。
【0018】
図2を参照して、上記1次側回路1は1次側回路基板10上に形成され、2次側回路3は2次側回路基板30上に形成されている。5は上方に開口する有底のケーシングであり、樹脂を原料として射出成形により形成されている。この樹脂を射出成形する際に、外部の交流電源Bから給電される給電端子51をケーシング5に一体に設けた。また、2次回路基板30から出力される交流電力を放電電極4に供給する出力電極52も同様にケーシング5に一体に設けた。
【0019】
ところで、2次側回路基板30にはダイオード32が取り付けられているが、このダイオード32が取り付けられる位置に矩形の開口33を設け、ダイオード32の本体の一部がこの開口33内に落とし込まれ、2次側回路基板30の表面からダイオード32の本体の上端までの高さが低くなるようにした。
【0020】
1次側回路基板10には入力端子11が取り付けられている。1次側回路基板10を最終的な取付位置よりも中央部よりにケーシング5内にセットし、その状態で入力端子11に給電端子51が係合するように、1次側回路基板10を給電端子51側にスライドさせるようにした。このようにして1次側回路基板10が所定の位置にセットされると、次に2次側回路基板30をケーシング5内にセットする。その際、2次側回路基板30に設けた孔34に出力電極52が挿通するようにし、2次側回路基板30をケーシング5内にセットした後、孔34を囲繞するランドと出力端子52とを半田付けする。
【0021】
そして、1次側回路基板10と2次側回路基板30とをケーシング5内にセットした後、昇圧コイル2をケーシング5内にセットする。この昇圧コイル2は、図3に示すように、ボビン21を貫通する1対の入力端子23aと、同じくボビン21を貫通する1対の出力端子24aを備えている。入力端子23aの他端部23bには1次側コイルの巻線が接続され、出力端子24aの他端部24bには2次側コイル24の巻線が接続されている。
【0022】
この昇圧コイル2をケーシング5内に上方から挿入すると、入力端子23aが1次側回路基板10の出力端子12に係合し、昇圧コイル2の出力端子24aのうちの一方が2次側回路基板30の入力端子31に係合する。
【0023】
なお、53は上記出力端子52と対を成す出力端子であり、図4に示すように、ケーシング5の底部に形成したスリット状の開口53aに外側から挿入し、ケーシング5に固定している。そして、昇圧コイル2の他方の出力端子24aがこの出力端子53に係合する。
【0024】
図4を参照して、40は放電電極4が形成されている放電電極板であり、ケーシング5の底部外面に形成した放電電極板取付部50に嵌め込まれる。ただし、放電電極板40の裏面には1対の端子が形成されており、それらの端子と出力端子52,53とをリード線で各々接続した後に、放電電極板40を放電電極板取付部50に嵌め込むようにした。
【0025】
放電電極板40を嵌め込んだ後に、放電電極板40とケーシング5とのあいだの隙間を塞ぐシール7を貼着した。このシール7の表面には印刷が可能であり、例えば図示のように「高圧注意」等の文字を印刷すれば、注意書きのための別途のシールを貼着する必要がない。
【0026】
そして、最後に昇圧コイル2のボビン21に形成した1対のボス22に庇部材6を取り付けた後、ケーシング5内にウレタン樹脂を注入してポッティングを行う。その際、図5に示すように、樹脂の表面Sが庇部材6に接するまで樹脂を注入する。すると、樹脂は庇部材6に接着し、庇部材6の周囲の表面Sが盛り上がって、昇圧コイル2を樹脂と庇部材6とで完全に覆うことができる。なお、41はリード線である。
【0027】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用するイオン発生装置の回路図
【図2】イオン発生装置の組み立て工程を示す図
【図3】昇圧コイルの構成を示す図
【図4】放電電極板の取り付け工程を示す図
【図5】イオン発生装置の断面図
【符号の説明】
【0029】
1 1次側回路
2 昇圧コイル
3 2次側回路
4 放電電極
5 ケーシング
40 放電電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧の電力を昇圧コイルの1次側巻線に供給する1次側回路と、この昇圧コイルの2次側巻線から出力される高電圧を放電電極に供給する2次側回路とを備え、放電電極での放電によりイオンを発生させるイオン発生装置において、1次側回路が搭載された1次側回路基板と2次側回路が搭載された2次側回路基板とを別個に形成し、ケーシング内に、1次側回路基板と2次側回路基板とで上記昇圧コイルを挟むようにセットしたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
上記各回路基板に接続される昇圧コイルの端子を、各回路基板に平行であって昇圧コイルのボビンを貫通して設けると共に、この端子の一端側にいずれかの回路基板を接続し、他端側に昇圧コイルの巻線を接続したことを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
上記両回路基板の少なくとも一方には円柱状の本体を備えた電子部品が、この本体の軸線が回路基板と平行になるように取り付けられ、回路基板にはこの本体が落とし込まれる開口が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
上記ケーシングの底部外面には、上記放電電極が嵌め込まれる、放電電極の厚みと同じ寸法の深さの電極取付部が形成されており、電極取付部に放電電極を嵌め込んだ状態で、ケーシングと放電電極との境界部分を覆うシール材であって、表面に印字可能な封止部材を貼着したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項5】
上記1次側回路に外部からの低電圧の電極を供給する給電電極をケーシングに予め固定すると共に、上記1次側回路基板をケーシング内でこの給電電極に向かってスライドすることにより接続される端子を1次側回路基板上に取り付けたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のイオン発生装置。
【請求項6】
上記昇圧コイルをケーシング内にセットした状態で、上記昇圧コイルを覆う板状の庇部材を取り付けると共に、この庇部材に接するまで樹脂をケーシング内に充填して、上記各回路基板および昇圧コイルをポッティングすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−207691(P2007−207691A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27895(P2006−27895)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)