説明

イオン発生装置

【課題】昇圧コイルおよび少なくとも2次側回路がケーシング内でポッティングされるイオン発生装置では、昇圧コイルの2次コイルの出力波形を検査しようとしても、出力波形をモニターできる部分がすべて樹脂で覆われており、検査することができない。
【解決手段】ケーシング5に外部に露出する検査端子54を予め設けておき、この検査端子54に2次コイルの出力端子を接続して、ポッティングした状態でも検査端子54から2次コイルの出力波形を検査できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも昇圧コイルと2次側回路とがケーシング内でポッティングされているイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のイオン発生装置は、外部から低電圧の交流電力の供給を受け、その交流電力を昇圧コイルの1次側に供給する。すると、2次側から昇圧された高電圧の交流電力が出力される。その出力された交流電力を2次側回路を介して放電電極に供給している。放電電極に高電圧の交流電力が供給されると、1対の放電電極間で放電が発生し、その結果イオンが空気中に放出される。
【0003】
これら1次側回路および2次側回路と昇圧コイルとは1枚の回路基板上に載置され、ユニット化されており、そのユニット化された1枚の回路基板をケーシング内にセットしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、この特許文献1に記載されているイオン発生装置よりも高さ寸法を低くするため、特願2006−27895号として、薄型のイオン発生装置を提案した。
【特許文献1】特開2003−45611号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のものでは、昇圧コイルから出力される高電圧の供給電力は2次側回路によって、例えばダイオードにより整流されることにより波形が変化された状態で放電電極に供給される場合がある。
【0006】
昇圧コイルの2次コイルからの出力波形を検査するためには、放電電極に供給される波形ではなく2次側回路に入力される前の段階で波形を検査する必要が生じる。ところが、上記イオン発生装置では、昇圧コイルおよび2次側回路がポッティングされるため、昇圧コイルの2次コイルと2次側回路との中間地点が樹脂内に埋没されて、2次コイルの出力波形を検査することができない。
【0007】
なお、ポッティング前にイオン発生装置を作動させると、高電圧部分の絶縁が不十分な状態で作動させることになり、最終的な出力波形と異なる波形の出力がされるおそれがあるばかりか、高電圧のリークが発生し、望ましくない。
【0008】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、昇圧コイルや2次側回路をポッティングした状態でも2次コイルの出力波形を検査することのできるイオン発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明によるイオン発生装置は、低電圧の交流電力が入力される1次コイルと昇圧された高電圧の交流電力を出力する2次コイルとからなる昇圧コイルと、2次コイルから出力される交流電力の波形を変化させてイオン発生用の放電電極に供給する2次側回路とがケーシング内に収納された状態でポッティングされたイオン発生装置において、波形が変化される前の段階で2次コイルからの出力をケーシングの外部に導く検査用端子を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記構成では、検査用端子を設けたので、昇圧トランスや2次側回路がポッティングされていても、2次コイルからの出力波形を検査することができる。
【0011】
なお、上記放電電極はケーシングの外周面に取り付けられ、放電電極をケーシングの外周面に取り付けた状態で放電電極とケーシングとの境界線を覆うシール部材を有し、上記検査用端子をこのシール部材で覆い隠すように構成すれば、検査終了後に検査用端子が露出することによる不具合を解消することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、昇圧コイルや2次側回路がポッティングされた状態でも2次コイルの出力波形を検査することができるので、完成したイオン発生装置の検査をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を参照して、1は交流電源Bから供給される低電圧の交流電力を昇圧コイル2の1次側に供給するための1次側回路である。昇圧コイル2の2次側からは高電圧の交流電力が出力され、2次側回路3に供給される。そして、その高電圧の交流電力は放電電極4に供給されて、この放電電極4で放電が生じることによりイオンが発生し、空気中へとイオンが拡散する。なお、2次側回路3にはダイオード32が設けられており、昇圧コイル2から出力される高電圧の交流電力は半波整流されて放電電極4に供給される。
【0014】
図2を参照して、上記1次側回路1は1次側回路基板10上に形成され、2次側回路3は2次側回路基板30上に形成されている。5は上方に開口する有底のケーシングであり、樹脂を原料として射出成形により形成されている。この樹脂を射出成形する際に、外部の交流電源Bから給電される給電端子51をケーシング5に一体に設けた。また、2次回路基板30から出力される交流電力を放電電極4に供給する出力電極52も同様にケーシング5に一体に設けた。また、昇圧コイル2の出力波形を検査するための検査端子54を同様にケーシング5に一体に設けた。この検査端子54は入力端子31に接続される。
【0015】
ところで、2次側回路基板30にはダイオード32が取り付けられているが、このダイオード32が取り付けられる位置に矩形の開口33を設け、ダイオード32の本体の一部がこの開口33内に落とし込まれ、2次側回路基板30の表面からダイオード32の本体の上端までの高さが低くなるようにした。
【0016】
1次側回路基板10には入力端子11が取り付けられている。1次側回路基板10を最終的な取付位置よりも中央部よりにケーシング5内にセットし、その状態で入力端子11に給電端子51が係合するように、1次側回路基板10を給電端子51側にスライドさせるようにした。このようにして1次側回路基板10が所定の位置にセットされると、次に2次側回路基板30をケーシング5内にセットする。その際、2次側回路基板30に設けた孔34に出力電極52が挿通するようにし、2次側回路基板30をケーシング5内にセットした後、孔34を囲繞するランドと出力端子52とを半田付けする。
【0017】
そして、1次側回路基板10と2次側回路基板30とをケーシング5内にセットした後、昇圧コイル2をケーシング5内にセットする。この昇圧コイル2は、図3に示すように、ボビン21を貫通する1対の入力端子23aと、同じくボビン21を貫通する1対の出力端子24aを備えている。入力端子23aの他端部23bには1次側コイルの巻線が接続され、出力端子24aの他端部24bには2次側コイル24の巻線が接続されている。
【0018】
この昇圧コイル2をケーシング5内に上方から挿入すると、入力端子23aが1次側回路基板10の出力端子12に係合し、昇圧コイル2の出力端子24aのうちの一方が2次側回路基板30の入力端子31に係合する。ただし、上述のように、この入力端子31は検査端子54に接続されるので、検査端子54は出力端子24aの一方に接続されることになる。
【0019】
なお、53は上記出力端子52と対を成す出力端子であり、図4に示すように、ケーシング5の底部に形成したスリット状の開口53aに外側から挿入し、ケーシング5に固定している。そして、昇圧コイル2の他方の出力端子24aがこの出力端子53に係合する。このように、出力端子53をケーシング5に取り付けた状態でケーシング5内にウレタン樹脂を注入し、ポッティングを行う。
【0020】
なお、このポッティングを行う際には、図5に示すように、昇圧コイル2のボビン21に形成した1対のボス22に庇部材6を取り付けた後、樹脂の表面Sが庇部材6に接するまで樹脂を注入する。すると、樹脂は庇部材6に接着し、庇部材6の周囲の表面Sが盛り上がって、昇圧コイル2を樹脂と庇部材6とで完全に覆うことができる。
【0021】
図4を参照して、40は放電電極4が形成されている放電電極板であり、ケーシング5の底部外面に形成した放電電極板取付部50に嵌め込まれる。ただし、放電電極板40の裏面には1対の端子が形成されており、それらの端子と出力端子52,53とをリード線で各々接続した後に、放電電極板40を放電電極板取付部50に嵌め込むようにした。
【0022】
この時点で検査端子54がケーシング5の表面に露出しているので、昇圧コイル2の2次側コイル24の出力波形を、出力端子53および検査端子54からモニターして検査することができる。
【0023】
そして、この検査が終了すると、放電電極板40を放電電極板取付部50に嵌め込み、放電電極板40とケーシング5とのあいだの隙間を塞ぐシール7を貼着した。このシール7はこの隙間を覆うと共に検査端子54を覆い隠す大きさに形成されている。また、このシール7の表面には印刷が可能であり、例えば図示のように「高圧注意」等の文字を印刷すれば、注意書きのための別途のシールを貼着する必要がない。
【0024】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用するイオン発生装置の回路図
【図2】イオン発生装置の組み立て工程を示す図
【図3】昇圧コイルの構成を示す図
【図4】放電電極板の取り付け工程を示す図
【図5】イオン発生装置の断面図
【符号の説明】
【0026】
1 1次側回路
2 昇圧コイル
3 2次側回路
4 放電電極
5 ケーシング
40 放電電極板
54 検査端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧の交流電力が入力される1次コイルと昇圧された高電圧の交流電力を出力する2次コイルとからなる昇圧コイルと、2次コイルから出力される交流電力の波形を変化させてイオン発生用の放電電極に供給する2次側回路とがケーシング内に収納された状態でポッティングされたイオン発生装置において、波形が変化される前の段階で2次コイルからの出力をケーシングの外部に導く検査用端子を設けたことを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
上記放電電極はケーシングの外周面に取り付けられ、放電電極をケーシングの外周面に取り付けた状態で放電電極とケーシングとの境界線を覆うシール部材を有し、上記検査用端子をこのシール部材で覆い隠すようにしたことを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242254(P2007−242254A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58873(P2006−58873)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000100562)アール・ビー・コントロールズ株式会社 (97)