説明

イヤーピース及びイヤホン

【課題】製造工程でイヤーピースを音筒部に装着する際にフィルタ部材が脱落する虞がなく組み立て作業性が良好なイヤーピースを提供する。
【解決手段】貫通孔6aは、音筒部3への装着状態でハウジング1側から順に内方に突出し先端面と基部の軸線との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部6bと、軸線との最小距離が第1の距離より大なる第2の距離の周面を有する第2の係合部と第2の係合部と連続形成され軸線との最小距離が第2の距離より大なる周面の第3の係合部6dとを有する。フィルタ部10は、周壁部11aが第3の係合部6dに係合し底部が第2の係合部とは反対側に位置する姿勢で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤーピース及びイヤホンに係り、特に、イヤホン本体から突出して設けられた音筒部に装着されて音筒部と共に外耳道内に挿入されるイヤーピース及びそれが取り付けられたイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
イヤホンの本体から突出して設けられた音筒部にイヤーピースを着脱可能に装着し、音筒部と共にイヤーピースを外耳道内に挿入して使用する、いわゆるカナル型と称されるイヤホンが普及している。
カナル型イヤホンでは、スピーカユニットが本体内部に収められたタイプ(以下、ユニット収納タイプと称する)と、音筒部の先端に取り付けられたタイプ(以下、トップマウントタイプと称する)との双方が知られている。
【0003】
ユニット収納タイプに関し、音筒部に着脱可能に装着されるイヤーピースに音響特性調整用のフィルタ部材を固定して所望の音響特性を得る構成のイヤホンが特許文献1に記載されている。
特許文献1では、フィルタ部材の目が耳垢等により詰まってしまった場合には、イヤーピースを取り替えることで初期の音響特性に回復できる点についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、実施例において、フィルタ部材が両面テープを介してイヤーピースに貼着される点について(特許文献1の段落番号0037参照)、また、変形例において、環状のフィルタ部材がイヤーピースの貫通孔の大径空間部に嵌め込まれる構成について(特許文献1の段落番号0049,0050などを参照)記載されている。
【0006】
ところで、イヤーピースは通常シリコンゴムなどのゴム材で形成されているので、特許文献1に記載されたイヤホンは、低温環境下において、また、貼着作業における貼着面への埃の付着等により、両面テープの貼着力が充分に発揮されにくい場合があり、フィルタ部材が脱落する可能性を排除できない。
また、イヤホンの製造工程では、環状のフィルタ部材を大径空間部に嵌め込んだイヤーピースを音筒部に装着する作業においてイヤーピースを大きく変形させるので、その変形によってフィルタ部材が所定の位置からずれたり外れる可能性があり、組み立て作業性の点で改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、音響特性を調整すると共に、音筒部内または音筒部の先端に配設されたスピーカユニット内への耳垢等の侵入を防止するフィルタ部材を備えつつ、製造工程においてイヤーピースを音筒部に装着する際にフィルタ部材が脱落する虞がなく、組み立て作業性が良好なイヤーピース及びそれが取り付けられたイヤホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の1)〜3)の構成を有する。
1) イヤホン(50)のハウジング(1)から突出した音筒部(3)に装着されるイヤーピース(6)であって、
貫通孔(6a)を有して環状に形成された基部(6k)と、
開口部(11c)が設けられた底部(11b)及び前記底部(11b)の周縁から立ち上がるように形成された周壁部(11a)を有するフィルタホルダ(11)と前記フィルタホルダ(11)に対し前記開口部(11c)を覆うように取り付けられたフィルタ(12)とを有するフィルタ部(10)と、を備え、
前記貫通孔(6a)は、前記音筒部(3)に装着した状態において前記ハウジング(1)側から順に、
内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部(6k)の軸線(CL6)との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部(6b)と、
前記軸線(CL6)との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部(6c)と、
前記第2の係合部(6c)と連続して形成され前記軸線(CL6)との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部(6d)と、を有し、
前記フィルタ部(10)は、前記周壁部(11a)が前記第3の係合部(6d)に係合すると共に前記底部(11b)が前記第2の係合部(6c)とは反対側に位置する姿勢で前記基部(6k)に保持されていることを特徴とするイヤーピース(6)である。
2) イヤーピース(6)が取り付けられたイヤホン(50)であって、
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)から突出して形成され周溝(3b)を有する筒状の音筒部(3)と、
前記音筒部(3)の先端面に当接して配設されたスピーカユニット(7)と、
放音孔(8c)が設けられた底部(8b)及び前記底部(8b)の周縁から立ち上がるように形成された第1の周壁部(8d)を有し、前記第1の周壁部(8d)の内側に前記スピーカユニット(7)及び前記音筒部(3)の先端側を嵌め込むようにして前記音筒部(3)に取り付けられたユニットホルダ(8)と、
開口部(11c)が設けられた底部(11b)及び前記底部(11b)の周縁から立ち上がるように形成された第2の周壁部(11a)を有するフィルタホルダ(11)と、前記フィルタホルダ(11)に対し前記開口部(11c)を覆うように取り付けられたフィルタ(12)と、を有して、前記ユニットホルダ(8)の先端側にが嵌着されたフィルタ部(10)と、を備え、
前記イヤーピース(6)は、
貫通孔(6a)を有して環状に形成された基部(6K)と、前記基部(6k)の一端(6k2)側から順に形成された、内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部(6k)の軸線(CL6)との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部(6b)と、前記軸線(CL6)との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部(6c)と、前記第2の係合部(6c)と連続して形成され前記軸線(CL6)との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部(6d)と、を有して前記音筒部(3)に装着されており、
前記第1の係合部(6b)が前記周溝(3b)に係合し、前記第2の係合部(6c)と前記ユニットホルダ(8)の前記第1の周壁部(8d)とが当接し、前記第3の係合部(6d)に前記フィルタホルダ(11)の前記第2の周壁部(11a)が嵌合していることを特徴とするイヤホン(50)である。
3) イヤーピース(6)が取り付けられたイヤホン(50)であって、
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)から突出して形成され周溝(3b)を有する筒状の音筒部(3)と、
前記ハウジング(1)の内部に収納されたスピーカユニット(7)と、
開口部(11c)が設けられた底部(11b)及び前記底部(11b)の周縁から立ち上がるように形成された第2の周壁部(11a)を有するフィルタホルダ(11)と、前記フィルタホルダ(11)に対し前記開口部(11c)を覆うように取り付けられたフィルタ(12)と、を有して、前記音筒部(3)の先端側に嵌着されたフィルタ部(10)と、を備え、
前記イヤーピース(6)は、
貫通孔を有して環状に形成された基部(6K)と、前記基部(6K)の一端(6k2)側から順に形成された、内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部(6K)の軸線(CL6)との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部(6b)と、前記軸線(CL6)との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部(6c)と、前記第2の係合部(6c)と連続して形成され前記軸線(CL6)との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部(6d)と、を有して前記音筒部(3)に装着されており、
前記第1の係合部(6b)が前記周溝(3b)に係合し、前記第2の係合部(6c)と前記音筒部(3)の外周面とが当接し、前記第3の係合部(6d)に前記フィルタホルダ(11)の前記第2の周壁部(11a)が嵌合していることを特徴とするイヤホン(50)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造工程においてイヤーピースを音筒部に装着する際にフィルタ部材が脱落する虞がなく、組み立て作業性が良好である、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のイヤホンの実施例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明のイヤホンの実施例を説明するための部分断面図である。
【図3】本発明のイヤホンの実施例を説明するための部分的な組み立て図である。
【図4】本発明のイヤホンの実施例における組み立て途中の態様を示す外観斜視図である。
【図5】本発明のイヤホンの実施例におけるフィルタホルダを説明するための図である。
【図6】本発明のイヤホンの実施例におけるフィルタを説明するための図である。
【図7】本発明のイヤホンの実施例におけるイヤーピースを説明するための図である。
【図8】本発明のイヤホンの実施例におけるイヤーピースの取り付け状態を説明するための斜視的部分断面図である。
【図9】本発明のイヤホンの実施例における変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図9を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明のイヤホンの実施例を示す外観斜視図である。
【0013】
図1に示すように、実施例のイヤホン50はトップマウントタイプであり、箱状のハウジング1を有する本体部2と、ハウジング1から突出する筒状の音筒部3と、ハウジング1から延出したブッシング4と、ブッシング4の先端から引き出されたコード5とを有している。
また、音筒部3の先端側には、シリコンゴムなどの柔軟な材料で形成されたイヤーピース6が着脱自在に取り付けられている。
【0014】
イヤホン50は、コード5を介して外部から供給された音声信号を音声に変換するスピーカユニット7を備えている。
スピーカユニット7は、ハウジング1の内部に収納されるか、音筒部3の先端に装着される。
図1に示すように、イヤホン50は、音筒部3の先端にスピーカユニット7を備えている。
次に、イヤーピース6を装着した音筒部3近傍の詳細について、図2及び図3を用いて詳述する。
【0015】
図2は、イヤーピース6を装着した音筒部3近傍の断面図である。
図3は、実施例のイヤホン50におけるイヤーピース6と音筒部3との間の部材を説明するための部分的な分解図である。図3において、ハウジング1は、図1に示したハウジングの形状とは異なるものを示している。実施例においてハウジング1の形状は限定されるものではない。
【0016】
図2及び図3において、音筒部3は円筒状に形成されており、2つの周溝が設けられている。
2つの周溝は、具体的には、先端側から、ユニットホルダ8(詳細は後述する)における周壁部8dの端縁部8aをカシメるためのカシメ溝3aと、イヤーピース6を係合させるための係合溝3bである。
音筒部3の先端には、スピーカユニット7(図2にのみ表示)が、その底面7bが音筒部3の先端面3tに当接するように装着されている。
【0017】
スピーカユニット7は、外観形状が円筒状に形成され、図2における左側端面が、音声を放出する放音面7aとされている。
図2に示すスピーカユニット7は、放音面7a側を底面7b側より小径とする段部7dが設けられている。
底面7bには一対の端子7cが形成され、その一対の端子7cにはコード5内に収められる一対のリード線5aがそれぞれ電気的に接続されている。
【0018】
ユニットホルダ8は、金属薄板のプレス加工により深鍋状に形成されている。
具体的には、底面部8bとその周縁から軸線CL8に沿う方向に立ち上がるように形成された周壁部8dとを有して形成されている。
図3に示すように、ユニットホルダ8の底面部8bには、スピーカユニット7から放出された音声を通過させる複数の放音孔8cが設けられている。
このユニットホルダ8によりスピーカユニット7が音筒部3の先端に取り付けられる。
具体的には、予めリード線5aをスピーカユニット7の端子7cに接続しておき、リード線5aを音筒部3内に先端側から挿通すると共にユニットホルダ8の内部にスピーカユニット7をその放音面7aがユニットホルダ8の底面部8b側となるように収め、その状態でユニットホルダ8を音筒部3の先端に被せ、ユニットホルダ8の周壁部8dの端縁8aを音筒部3のカシメ溝3aにカシメて、スピーカユニット7を音筒部3の先端面3tとの間に挟むようにして固定する。
【0019】
スピーカユニット7の放音面7aとユニットホルダ8の底面部8bとの間に、スピーカユニット7としての基本的な音質を調整するために調整フィルタ9を挟みこんでもよい。
図2では、調整フィルタ9が挟み込まれた状態を示している。
【0020】
次に、図2〜図6を用いて、イヤホン50の音響特性を調整すると共に音筒部3内への耳垢等の侵入を防止するフィルタ部材(以下、フィルタ部10と称する)について説明する。
【0021】
図3に示すように、フィルタ部10は、フィルタホルダ11とフィルタ12とフィルタ12をフィルタホルダ11に固定する固定材13とを有して構成されている。
【0022】
図5は、フィルタホルダ11を示す正面図及び断面図である。図5では寸法が示されているが、この寸法は一例であり限定されるものではない。
図5において、フィルタホルダ11は、底部11bとその周縁から立ち上がる周壁部11aとを有して形成されている。
底部11bには、スピーカユニット7からの音声を通過させる開口部11cが設けられている。
実施例のフィルタホルダ11は、底部11bが円形とされ、開口部11cも円形とされている。
【0023】
図6は、フィルタ12の平面図と、フィルタ12の納入形態を示す部分断面図である。図6では寸法が示されているが、この寸法は一例であり限定されるものではない。
【0024】
フィルタ12は、PET(ポリエチレンテレフタレート)で形成されたメッシュ部材である。例えば、目開き230のPET材メッシュを用いることができる。
このフィルタ12は、図3及び図6に示すように、一面側に固定材としてリング状の両面テープ13が貼付され、その状態で図6に示すようにセパレータ61上に整列配設されて納入される。
【0025】
フィルタ12を両面テープ13が付いた状態でセパレータ61から剥がし、フィルタホルダ11の底部11bの外表面11btに貼付し、フィルタ部10とされる。
この状態で、フィルタ12はフィルタホルダ11の開口部11cを覆うようになっている。
【0026】
フィルタホルダ11は、その内径φa(図5参照)がユニットホルダ8の外径φh(図2参照)より僅かに大きく形成されている。
従って、フィルタ部10は、ユニットホルダ8に対し、フィルタホルダ11をユニットホルダ8の先端部にほぼガタなく嵌め込むことで装着することができる。
この嵌め込み装着において、フィルタ部10をユニットホルダ8へ充分に押し込めば、フィルタフィルタホルダ11の底部11bの内表面11bu(図5参照)はユニットホルダ8の底面部8bの外表面8btに当接する。
図4は、フィルタ部10をユニットホルダ8の先端部に嵌め込んだ状態を示している。
【0027】
図7は実施例のイヤーピース6の断面図である。図7では寸法が示されているが、この寸法は一例であり限定されるものではない。
イヤーピース6は柔軟な材料で形成することができる。例えばゴム材を用いることができ、特にシリコンゴムが好適である。
【0028】
イヤーピース6は貫通孔6aを有する円環状の基部6kと、基部6kの一端部6k1側で連結し基部6kの外側にて他端部6k2側に向け傘状に延在するヒレ部6hと、を備えている。
貫通孔6aは、イヤーピース6が音筒部3に装着された状態で、スピーカユニット7からの音声を一端部6k1側から外部に放出する。
【0029】
貫通孔6aは、異なる径を有する複数の部位を有している。
基部6kの他端部6k2側から具体的に説明すると、音筒部3の係合溝3bに係合するよう内方に突出した周リブである係合凸部6bと、係合凸部6bの内径φeよりも大で、かつユニットホルダ8の外径φhに対して僅かに小さい内径φfで形成されたUH係合部6cと、UH係合部6cの内径φfよりも大きくフィルタホルダ11の外径φc(図5参照)より小さい内径φdで形成されたFH係合部6dと、一端部6k1で開口しフィルタホルダ11の開口部11cより僅かに小さい内径φb(図2も参照)で形成された開口孔6eと、を有している。
また、UH係合部6cとFH係合部6dとは段部6d1を介して連続し、その他の部位が間に入らないように形成されている。
【0030】
次に、イヤホン50の組み立て工程におけるフィルタ部10の装着工程について図2などを用いて詳述する。
【0031】
まず、フィルタ部10をユニットホルダ8に矢印D1方向(図4参照)から嵌め込んで装着する。
次に、イヤーピース6を、その他端部6k2側を広げるように変形させながら音筒部3に嵌めこんだフィルタ部10の上から嵌め込み、押し込む。
イヤーピース6は、音筒部3の所定位置まで押し込まれると、係合凸部6bが音筒部3の係合溝3bに入りこむように係合し、音筒部3に装着される。
また、FH係合部6dの軸線CL6(図7参照)方向の長さL1は、フィルタホルダ11の軸線CL11方向の長さL2よりも長く設定されており、イヤーピース6が音筒部3に所定位置で装着された状態で、フィルタホルダ11の周壁部11aはFH係合部6dに嵌り込むようになっている。
すなわち、フィルタ部10は、FH係合部6dにおける軸線CL6方向のいずれかの位置で保持されるようになっている。
各部の寸法設定により、この状態でフィルタホルダ11の底部11bの内表面11bu(図5参照)をユニットホルダ8の底面部8bの外表面8btに当接させるようにできる。
また、フィルタ部10は、イヤーピース6から上述のように径方向内側に向かう圧縮力を受ける。
また、UH係合部6cの内径φfは、ユニットホルダ8の外径φhに対して僅かに小さく形成されているので、UH係合部6cは、ユニットホルダ8を径方向内側に押圧する。
イヤーピース6がユニットホルダ8及び音筒部6の先端側に装着された状態で、イヤーピース6の開口部6eの内径φbがフィルタ部10の外径(φcに相当)よりも小さくなっており、フィルタ部10はイヤーピース6から外れることがない。
【0032】
上述のように装着されたフィルタホルダ11は、フィルタ12がユニットホルダ8の底面部8bの外表面8bt(図3参照)とイヤーピース6の一端部6k1との間に位置し、フィルタホルダ11の底部11bがUH係合部6cとは反対側(図7において段部6d1に対するFH係合部6d側)に位置する姿勢で基部6kに保持されている。
そして、フィルタ12が、このイヤホン50から出力される音声の音響特性を調整する一方、外部からユニットホルダ8側に耳垢などが侵入するのを防止する。
【0033】
図8は、フィルタホルダ11をユニットホルダ8の先端に被せイヤーピース6を所定位置に装着した状態を示す部分的な断面図である。
図8では、フィルタホルダ11の外形線を二点鎖線で示している。図8からわかるように、周壁部11aは、イヤーピース6のFH係合部6dに係合して嵌り込んでいる。
【0034】
長時間の使用などにより、フィルタ12が埃や耳垢などで目詰まりした場合、次に示す方法でフィルタ12を交換することができる。
【0035】
一般のイヤーピース6の交換と同様の手順で、イヤーピース6の貫通孔6aの係合凸部6bを広げ、音筒部3から抜き取る。
その際、FH係合部6dの他端部6k2側の段部6d1(図7参照)に、フィルタ部10のフィルタホルダ11における周壁部11aの端面11a1(図5参照)が当接するので、フィルタ部10は、FH係合部6dに係合して保持されたままイヤーピース6と共に音筒部3から抜き取られる。
【0036】
そして、替わりに、目詰まりしていないフィルタ12を有するフィルタ部10がFH係合部6dに装着された、別のイヤーピース6を、ユニットホルダ8及び音筒部3に装着する。
あるいは、抜き取ったイヤーピース6の開口部6aを変形させて目詰まりしたフィルタ12を取り外し、目詰まりしていないフィルタ12を有するフィルタ部10をFH係合部6dに取り付け、再度ユニットホルダ8及び音筒部3に装着する。
予めFH係合部6dにフィルタ部10が装着されたイヤーピース6をユニットホルダ8及び音筒部3に装着すると、所定の装着位置でユニットホルダ8にフィルタホルダ11が被さり使用可能状態となる。この状態は、ユニットホルダ8に予めフィルタホルダ11を被せてから、フィルタ部10が装着されていないイヤーピース6を音筒部3に装着した状態と同様で何ら変わらない。従って、後者の場合、イヤーピース6自体を再利用することも可能である。
もちろん、フィルタ12をPETのメッシュを含め洗浄が可能なものとすれば、フィルタ12を洗浄して再利用することもできる。
【0037】
上述した実施例は、音筒部3の先端にスピーカユニット7を備えたトップマウントタイプであるが、ハウジング1の内部にスピーカユニット7を収納したユニット収納タイプであっても、フィルタ部10を同様に取り付けることができる。
その場合は、ユニットホルダ8が無いので、音筒部3の先端側の外径をフィルタホルダ11の周壁部11aの内径φaに対して僅かに小さく設定し、フィルタ部10が音筒部3の先端にガタなく嵌め込まれるようにしておくとよい。
【0038】
実施例のイヤーピース6は、音筒部に装着された状態において、フィルタホルダ11における周壁部11aの外周面がイヤーピース6のFH係合部6dの内周面に周面当たりで当接するようになっている。
また、FH係合部6dは、フィルタホルダ11の周壁部11aと強嵌合になっているので周壁部11aを径方向に圧縮するように付勢する。
これにより、フィルタホルダ11とイヤーピース6との間に大きな摩擦力が生じ、イヤーピース6を音筒部3から外すために貫通孔6aを変形させても、フィルタ部10がイヤーピース6のFH係合部6dからずれたり外れたりすることが極めて起こり難くなっている。
【0039】
また、実施例のイヤホン50は、それを組み立てる際に、フィルタ部10をイヤーピース6の内部に変形させつつ取り付けるのではなく単にハウジング1の音筒部3に被せ、その後、イヤーピース6を従来と同じ要領で音筒部3に装着するだけで、イヤーピース6内の所定の位置に収めることができる。
従って、イヤーピース6の装着工程でフィルタ部10が脱落してしまうことがなく、組み立て作業性が極めて容易である。
【0040】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
【0041】
上述したように、イヤホン50は、スピーカユニット7がハウジング1の内部に収容されたユニット収容タイプであってもよい。
【0042】
図9にその一例を示す。変形例のイヤホン60は、ユニット収容タイプであり、ハウジング61の内部にスピーカユニット67が収納されている。
音筒部63は、ハウジング61から突出して形成されており、周溝63aが形成されている。
イヤーピース66は、円環状の基部66kと、ヒレ部66hとを有してシリコンゴムで形成されている。
基部66kの貫通孔66aを音筒部63に嵌め込むと共に端部の係合凸部66bを周溝63aに係合させてイヤーピース66を音筒部63に装着させる。
フィルタ部10は、フィルタホルダ11の内周面が音筒部63の先端側の外周面にほぼガタなく係合し、音筒部63の先端に装着される。
イヤーピース66の貫通孔66aは、係合凸部66b側から、音筒部63の外径と同じか僅かに小さい内径の係合部66cと、係合部66cの内径よりも大きくフィルタホルダ11の外径より僅かに小さい内径のFH係合部66dを有し、FH係合部66dにフィルタホルダ11の周壁部11aが嵌り込む。イヤーピース66の先端側の開口部66eの内径がフィルタ部10の外径よりも充分小さくなっているので、フィルタ部10はイヤーピースから外れることがない。
【0043】
変形例のイヤーピース66は、使用状態において、フィルタホルダ11における周壁部11aの外周面がイヤーピース66のFH係合部66dの内周面に周面当たりで当接するようになっている。
また、FH係合部66dは、フィルタホルダ11の周壁部11aと強嵌合になっているので周壁部11aを径方向に圧縮するように付勢する。
これにより、フィルタホルダ11とイヤーピース66との間に大きな摩擦力が生じ、イヤーピース66を音筒部63から外すために貫通孔66aを変形させても、フィルタ部10がイヤーピース66のFH係合部66dからずれたり外れたりすることが極めて起こり難くなっている。
【0044】
また、変形例のイヤホン60は、イヤーピースを装着する際に、フィルタ部10をイヤーピース66の内部に変形させつつ取り付けるのではなく単にハウジング61の音筒部63に被せ、その後、イヤーピース66を従来と同じ要領で音筒部63に装着するだけで、イヤーピース66内の所定の位置に収めることができる。
従って、イヤーピース66の装着工程でフィルタ部10が脱落してしまうことがなく、組み立て作業性が極めて容易である。
【0045】
フィルタ12は、PETのメッシュに限定されるものではない。所定の大きさ以上の物体の通過を規制するフィルタであれば、金属のメッシュであってもよく、パンチングメタルを用いたものでもよく、不織布であってもよく、スポンジ状のものであってもよい。所定の大きさは、例えば0.2mmである。
イヤーピース6は、基部6kとヒレ部6hとを有するものに限定されない。
低発泡性のウレタン材などで外形が略円錐台状に形成されたものでもよい。
フィルタ12をフィルタホルダ11に固定する固定材13は両面テープに限定されない。例えば、接着剤であってもよい。
【0046】
音筒部3は断面形状が円の筒状でなくてもよい。例えば、断面が楕円状、多角形状、であってもよい。
また、音筒部3に装着されるイヤーピース6の基部6kは断面形状が円の筒状でなくてもよい。例えば、断面が楕円状、多角形状であってもよい。
また、フィルタホルダ11は、音筒部3の断面形状に拘わらず、その先端部にガタなく嵌め込めるように形成されていればよい。
また、フィルタホルダ11とイヤーピース6のFH係合部6dとは、互いに嵌合し合う形状であれば、断面形状が円形であるものに限らない。
すなわち、イヤーピース6は、断面形状が円形でない場合の軸線を便宜的に軸線CL6とすると、内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部の軸線との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部6bと、軸線CL6との最小距離が第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部6cと、第2の係合部と連続して形成され軸線CL6との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部6dと、を有するように形成される。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング
2 本体部
3 音筒部
3a カシメ溝
3b 係合溝
3t 先端面
4 ブッシング
5 コード
5a リード線
6,66 イヤーピース
6a,66a 貫通孔
6k,66k 基部
6h,66h ヒレ部
6b 係合凸部
6c UH係合部
6d FH係合部
6d1 段部
6e 開口孔
6k1 一端部
6k2 他端部
7 スピーカユニット
7a 放音面
7b 底面
7c 端子
7d 段部
8 ユニットホルダ
8a 端縁部
8b 底面部
8c 放音孔
8d 周壁部
9 調整フィルタ
10 フィルタ部
11 フィルタホルダ
11a 周壁部
11b 底部
11bt 外表面
11c 開口部
12 フィルタ
13 固定材(両面テープ)
50,60 イヤホン
61 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤホンのハウジングから突出した音筒部に装着されるイヤーピースであって、
貫通孔を有して環状に形成された基部と、
開口部が設けられた底部及び前記底部の周縁から立ち上がるように形成された周壁部を有するフィルタホルダと前記フィルタホルダに対し前記開口部を覆うように取り付けられたフィルタとを有するフィルタ部と、を備え、
前記貫通孔は、前記音筒部に装着した状態において前記ハウジング側から順に、
内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部の軸線との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部と、
前記軸線との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部と、
前記第2の係合部と連続して形成され前記軸線との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部と、を有し、
前記フィルタ部は、前記周壁部が前記第3の係合部に係合すると共に前記底部が前記第2の係合部とは反対側に位置する姿勢で前記基部に保持されていることを特徴とするイヤーピース。
【請求項2】
イヤーピースが取り付けられたイヤホンであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから突出して形成され周溝を有する筒状の音筒部と、
前記音筒部の先端面に当接して配設されたスピーカユニットと、
放音孔が設けられた底部及び前記底部の周縁から立ち上がるように形成された第1の周壁部を有し、前記第1の周壁部の内側に前記スピーカユニット及び前記音筒部の先端側を嵌め込むようにして前記音筒部に取り付けられたユニットホルダと、
開口部が設けられた底部及び前記底部の周縁から立ち上がるように形成された第2の周壁部を有するフィルタホルダと、前記フィルタホルダに対し前記開口部を覆うように取り付けられたフィルタと、を有して、前記ユニットホルダの先端側に嵌着されたフィルタ部と、を備え、
前記イヤーピースは、
貫通孔を有して環状に形成された基部と、前記基部の一端側から順に形成された、内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部の軸線との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部と、前記軸線との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部と、前記第2の係合部と連続して形成され前記軸線との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部と、を有して前記音筒部に装着されており、
前記第1の係合部が前記周溝に係合し、前記第2の係合部と前記ユニットホルダの前記第1の周壁部とが当接し、前記第3の係合部に前記フィルタホルダの前記第2の周壁部が嵌合していることを特徴とするイヤホン。
【請求項3】
イヤーピースが取り付けられたイヤホンであって、
ハウジングと、
前記ハウジングから突出して形成され周溝を有する筒状の音筒部と、
前記ハウジングの内部に収納されたスピーカユニットと、
開口部が設けられた底部及び前記底部の周縁から立ち上がるように形成された第2の周壁部を有するフィルタホルダと、前記フィルタホルダに対し前記開口部を覆うように取り付けられたフィルタと、を有して、前記音筒部の先端側に嵌着されたフィルタ部と、を備え、
前記イヤーピースは、
貫通孔を有して環状に形成された基部と、前記基部の一端側から順に形成された、内方に突出する周リブであってその先端面と前記基部の軸線との最小距離が第1の距離とされた第1の係合部と、前記軸線との最小距離が前記第1の距離より大なる第2の距離とされた周面を有する第2の係合部と、前記第2の係合部と連続して形成され前記軸線との最小距離が前記第2の距離より大なる周面を有する第3の係合部と、を有して前記音筒部に装着されており、
前記第1の係合部が前記周溝に係合し、前記第2の係合部と前記音筒部の外周面とが当接し、前記第3の係合部に前記フィルタホルダの前記第2の周壁部が嵌合していることを特徴とするイヤホン。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−151793(P2011−151793A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279053(P2010−279053)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】