説明

インキカートリッジ

【課題】 簡単な操作でインキ筒内のインキの棚つりを解消できて筆記可能になるインキカートリッジを提供する。
【解決手段】インキ筒内にインキが充填され、このインキ筒の先端開口が筆記具のインキ筒着脱部に着脱自由に取り付けられるインキカートリッジにおいて、インキ筒内に、着色剤が顔料であって粘度が例えは20℃における粘度が1.4〜2.0mPa・s(EL型粘度計、100rpm)であるインキを充填し、このインキ筒の奥底部とインキの尾端面の間にインキの棚つりを解消する加圧部材、例えばインキ筒内を移動可能な可動栓とこの可動栓の尾端側に配置されたボールからなる加圧部材を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状のインキ筒内にインキが充填され、このインキ筒の先端開口が万年筆などの筆記具のインキ筒着脱部に着脱自由に取り付けられるインキカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
万年筆などに使用されるインキカートリッジは、有底筒状のインキ筒内にインキが充填され、このインキ筒の先端開口が万年筆などの筆記具のインキ筒着脱部に着脱自由に取り付けられるが、万年筆の場合は、充填されるインキは着色材に染料を使用した水性インキが多い。しかし最近では、着色材に顔料を使用して粘度の高い水性インキを充填したインキカートリッジを使用し、筆記時に筆跡が少し盛り上がって立体感があり、興趣に富んだ筆記具が実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、着色材に顔料を使用した粘度の高い水性インキを充填したインキカートリッジを使用した筆記具は、ペン体を上向きにした状態で、つまりインキがインキ筒の奥底部側に移動した状態で比較的長期間放置した場合などにおいて、筆記時にペン体を下向きにしたとき、インキがインキ筒内で棚つりを起こし、ペン体にインキが供給されなくて筆記不能になることがある。
【0004】
そこで本発明は、着色材に顔料を使用し、粘度の高いインキが充填されたインキ筒内のインキの棚つりを解消できて筆記可能になるインキカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するため、本発明は、インキ筒内にインキが充填され、このインキ筒の先端開口が筆記具のインキ筒着脱部に着脱自由に取り付けられるインキカートリッジにおいて、インキ筒内に、着色剤が顔料であって粘度が例えは20℃における粘度が1.4〜2.0mPa・s(EL型粘度計、100rpm)であるインキを充填し、このインキ筒の奥底部とインキの尾端面の間にインキの棚つりを解消する加圧部材、例えばインキ筒内を移動可能な可動栓とこの可動栓の尾端側に配置されたボールからなる加圧部材を配置する。
【発明の効果】
【0006】
インキカートリッジのインキ筒の奥底部とインキの尾端面の間に例えばインキ筒内を移動可能な可動栓とこの可動栓の尾端側に配置されたボールからなる加圧部材が配置されているので、インキの棚つりが生じたとはき、ペン体を下向きにすると加圧部材の加圧力がインキに伝わり、棚つりしているインキの前端面が破壊されて棚つりが解消するので、簡単な操作でインキをペン体に供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明のインキカートリッジを万年筆に使用した例を示す。図1において、先口4内にはペン芯5とペン先6が嵌着されており、ペン芯5尾端の突き刺し管51が先口4から後方に突出している。この突き刺し管51がインキカートリッジのインキ筒着脱部である。そして、軸筒3は第1継ぎ手71と第2継ぎ手72を介して先口4に着脱自由に接続されている。
【0008】
合成樹脂で筒状に成形されたインキカートリッジのインキ筒1の尾端開口は詰め栓11により封止されており、先端開口は、不使用時には薄い破断膜12で封止されている。そして、インキカートリッジを使用するときはインキ筒1を突き刺し管51に突き刺すが、これにより破断膜12が破断して充填されたインキLかペン芯5を介してペン先6に供給される。
【0009】
インキ筒1に充填されるインキLは、着色剤とし黒色や赤色の顔料を使用した粘度の高い水性インキであり、黒色インキの物性は、例えば粘度が1.6〜1.9mPa・s、表面張力45〜55mN/m、pH10.5〜11.5、比重1.025〜1.035であり、赤色インキの物性は、例えば粘度が1.4〜1.6mPa・s、表面張力55〜65mN/m、pH9.0〜10.0、比重1.015〜1.025である。したがって、この万年筆で筆記すると、筆跡が少し盛り上がって興趣に富んだ筆跡となる。そして、インキLの尾端面とインキ筒1の奥底部の間には、インキ筒1の内面に沿って移動可能な移動栓21と金属ボール22からなる加圧部材2が配置されている。
【0010】
ここで、ペン先6を上向きにした状態で比較的長期間放置すると、インキ筒1の奥底側に位置するインキLの表面に薄い膜が張った状態になる。そして、筆記に際してペ先6を下向きにしたとき、図2(A)に示すように、薄い膜が張った表面L1によりインキLは棚つり状態になり、インキLはペン芯5に供給されない。しかし、インキLにボール22と移動栓21からなる加圧部材2の圧力が伝わるので、図2(B)に示すように、薄い膜が張った表面L1が引き伸ばされるので簡単に破壊し、図2(C)に示すように、棚つり状態が解消し、インキLは下側に移動するのでペン先6にインキが供給されて筆記可能になる。また、インキLが強固に棚つりしている場合は、万年筆を上下に軽く振ると、上下に震動するボール22が移動栓21に衝突し、その振動や衝撃がインキLに伝わり、棚つりを容易に解消することができる。
なお、加圧部材2は前記の実施例のように移動栓21とボール22からなるものに限られるものではなく、要は棚つりしたインキに圧力を加え、また振動や衝撃を与えるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明実施例の正面図である。
【図2】インキの棚つり状態の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 インキ筒
11 詰め栓
12 破断膜
2 加圧部材
21 移動栓
22 ボール
3 軸筒
4 先口
5 ペン芯
6 ペン先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ筒内にインキが充填され、このインキ筒の先端開口が筆記具のインキ筒着脱部に着脱自由に取り付けられるインキカートリッジにおいて、
前記インキ筒内には、着色剤が顔料であって粘度が高いインキが充填され、該インキ筒の奥底部とインキの尾端面の間に該インキの棚つりを解消する加圧部材が配置されたことを特徴とするインキカートリッジ。
【請求項2】
前記加圧部材は、インキ筒内を移動可能な可動栓と該可動栓の尾端側に配置されたボールからなることを特徴とする請求項1記載のインキカートリッジ。
【請求項3】
前記インキは、20℃における粘度が1.4〜2.0mPa・s(EL型粘度計、100rpm)であることを特徴とする請求項1又は2記載のインキカートリッ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−261111(P2007−261111A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89855(P2006−89855)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002314)セーラー万年筆株式会社 (49)
【Fターム(参考)】