説明

インクジェットプリンタ

【課題】UVLEDを冷却するための水冷型の冷却装置のメンテナンス作業量が少なく、冷却装置の維持費が安く、量産性の高いインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】冷却装置80は、UV光源70に設けられて紫外線発光時に発生する熱を冷却する冷却部71と、冷媒液を冷却部71を通過させて循環させる第1循環管路81と、第1循環管路81に設けられ冷媒液が第1循環管路81内で循環するための循環流を作り出す第1循環ポンプ82と、第1循環管路81に設けられ冷媒液と冷却水との熱交換を行う熱交換器83と、熱交換器83に冷却水を供給する水冷チラーユニット90とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に印刷ヘッドから吐出して付着させたインクに紫外線照射手段により紫外線を照射して、インクを硬化させて印刷を行うインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラテン上に載置させた印刷媒体に対して、プラテンと対向して配設された印刷ヘッドを左右に往復移動させながら、印刷ヘッドからインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すインクジェットプリンタが知られている。このようなインクジェットプリンタには、紫外線が照射されることにより硬化する性質を有した紫外線硬化型インク(以下、これをUVインクという)を、印刷ヘッドから吐出させて印刷媒体に印刷を行うものがある。このUVインクは、耐候性および耐水性に優れているため、印刷物を例えば屋外広告宣伝ビラ等に用いることが可能となり、水溶性インクを用いた場合と比較して印刷物の使用用途が格段に広がるという利点がある。
【0003】
このようにUVインクを吐出させて印刷を行うインクジェットプリンタには、印刷媒体に付着したUVインクに紫外線を照射して硬化させるための紫外線照射装置が設けられている。近年、この紫外線照射装置における紫外線を発光させる光源として、紫外線発光ダイオード(以下、これをUVLEDという)を用いたインクジェットプリンタが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、一つの印刷ラインにおいて1パスで印刷を行うインクジェットプリンタや高速印刷を行うインクジェットプリンタのように、紫外線照射装置による紫外線照射時間の短いインクジェットプリンタの場合、必然的に紫外線照射装置による紫外線照射強度を高く設定しなければならない。この場合、紫外線照射装置の紫外線を発光する光源の発熱量が大きくなり、光源自体の温度上昇に伴って所望の照射強度を保持することが困難になるという問題があった。そこで、従来、冷却装置としては、安価でかつ小型で取付容易なファンが取り付けられ、UVLEDを空冷するものが知られている。しかし、ファンでは静音化の妨げになるため、水冷チラーから供給される冷却水によって水冷する装置も考えられる。
【特許文献1】特開2004‐188920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、水冷の装置を用いるインクジェットプリンタでは、冷却水によってUVLEDの電極を直接冷却しなければならないため、電極が酸化してしまうのを防ぐ必要がある。そのため、冷却水として純水を使用することによって電極の酸化を防ぐことが考えられる。しかし、冷却水として純水を使用しても、次第に電極が溶出して、電極の酸化を招いたり、配管内等の陽イオンが増えて電気伝導度(率)が高くなって、場合によっては、電極間でスパークしてショートしたりする虞もある。そのため、配管内の電気伝導度を計測してショートを防ぐ必要もある。また、このような問題を回避するために、約1週間という短い期間で定期的に冷却水(純水)を交換する必要もある。さらに、その純水の交換時に、配管内にゴミや空気の混入を招く虞もある。そのため、純水を使用した水冷装置を用いるインクジェットプリンタでは、冷却装置のメンテナンスが煩雑であって、作業者負担が大きく、経済的負担も大きく、また、量産に向かないという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、UVLEDを冷却するための水冷型の冷却装置のメンテナンス作業量が少なく、冷却装置の維持費が安く、量産性の高いインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、媒体支持手段(例えば、実施形態における支持テーブル11)により支持された印刷媒体の表面に印刷ヘッドから吐出して付着させたインクに、紫外線照射手段(例えば、実施形態におけるUV光源70)により紫外線を照射して、前記インクを硬化させて前記印刷媒体の表面に所望のプリントを施すインクジェットプリンタであり、前記紫外線照射手段に設けられて紫外線発光時に発生する熱を冷却する冷却部と、第1の冷媒(例えば、実施形態における冷媒液)を、前記冷却部を通過させて循環させる循環管路(例えば、実施形態における第1循環管路81)と、前記循環管路に設けられ、前記第1の冷媒が前記循環管路内で循環するための循環流を作り出す循環ポンプ(例えば、実施形態における第1循環ポンプ82)と、前記循環管路に設けられ、前記第1の冷媒と外部から供給される第2の冷媒(例えば、実施形態における冷却水)との熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器に前記第2の冷媒を供給する第2の冷媒供給手段(例えば、実施形態における水冷チラーユニット90)とを備えて構成される。
【0008】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記循環管路、前記循環ポンプおよび前記熱交換器は、前記印刷媒体に沿って相対移動する第1の移動部材(例えば、実施形態におけるガイドバー部材51)に搭載され、前記第2の冷媒供給手段はプリンタ本体(例えば、実施形態における支持テーブル11)に固定保持され、前記第2の冷媒供給手段から前記熱交換器に延びて前記第2の冷媒を供給する管路(例えば、実施形態における第3循環管路98)における前記第1の移動部材と前記プリンタ本体とを繋ぐ部分が、前記第1の移動部材の相対移動を許容するように構成されることが好ましい。
【0009】
上記構成のインクジェットプリンタにおいて、前記紫外線照射手段は前記第1の移動部材に移動可能に取り付けられた第2の移動部材(例えば、実施形態におけるキャリッジ63)に搭載され、前記循環ポンプおよび前記熱交換器は前記第1の移動部材に搭載され、前記第2の冷媒供給手段は前記プリンタ本体に固定保持され、前記循環管路における前記第2の移動部材と前記第1の移動部材とを繋ぐ部分が、前記第2の移動部材の前記第1の移動部材に対する相対移動を許容するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、紫外線照射手段に設けられて紫外線発光時に発生する熱を冷却する冷却部と、第1の冷媒を冷却部を通過させて循環させる循環管路と、循環管路に設けられ第1の冷媒が循環管路内で循環するための循環流を作り出す循環ポンプと、循環管路に設けられ第1の冷媒と外部から供給される第2の冷媒との熱交換を行う熱交換器と、熱交換器に第2の冷媒を供給する第2の冷媒供給手段とを備えて構成される。この構成により、循環管路には交換の必要もない冷媒液が循環されるため、循環管路を密閉させたままにしておくことができ、循環管路へのゴミの混入もない。また、冷媒液が電極を侵食しないため、電極がイオンの多い冷媒液に浸らず、電極の酸化を防ぎ、電極間でのスパークを防ぐこともできるようになる。
【0011】
上記インクジェットプリンタにおいて、紫外線照射手段、循環管路、循環ポンプおよび熱交換器は、印刷媒体に沿って相対移動する第1の移動部材に搭載され、第2の冷媒供給手段はプリンタ本体に固定保持され、第2の冷媒供給手段から熱交換器に延びて第2の冷媒を供給する管路における第1の移動部材とプリンタ本体とを繋ぐ部分が、第1の移動部材の相対移動を許容するように構成されることが好ましい。また、紫外線照射手段は第1の移動部材に移動可能に取り付けられた第2の移動部材に搭載され、循環ポンプおよび熱交換器は第1の移動部材に搭載され、第2の冷媒供給手段はプリンタ本体に固定保持され、循環管路における第2の移動部材と第1の移動部材とを繋ぐ部分が、第2の移動部材の第1の移動部材に対する相対移動を許容するように構成されることが好ましい。このように構成すると、冷却装置の配置位置の自由度が格段に向上するため、種々の形態のインクジェットプリンタにおいて冷却装置を用いることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係るインクジェットプリンタの一例として、テーブル上に固定保持された印刷媒体に対して印刷ユニットを水平面内の直交二軸(X軸‐Y軸)方向に移動させて印刷媒体に所望の印刷を行うインクジェットプリンタ1の概略構成を、図1および図2に示している。なお、説明の便宜上、図中に示す前後、左右および上下と書いた矢印の方向を、以下の説明においてそれぞれ前後方向、左右方向および上下方向とする。
【0013】
インクジェットプリンタ1は、印刷媒体2を載置保持する支持テーブル11の左右に前後に延びて前後移動機構20,30が設けられてなる支持部10と、支持テーブル11の上方に左右に延びて設けられる印刷部50と、インクジェットプリンタ1の作動全体を制御するコントロールユニット100とから構成される。
【0014】
支持テーブル11は、サイズの大きな平板状(シート状)の印刷媒体2を受容保持可能なように、サイズの大きな矩形状の載置台12を備えており、載置台12の表面に形成された多数の小孔を介して負圧吸引して載置台12の上に印刷媒体2を固定保持するように構成されている。また、支持テーブル11は、下方に延びた複数の脚13を有しており、床面上の所定高さ位置に載置台12が設定される。支持テーブル11の左右側面には、前後に水平に延びるガイドレール15,16が取り付けられている(図3(a)を参照)。なお、支持テーブル11の下側に電源18および後述する水冷チラーユニット90が配設されている。
【0015】
支持テーブル11の左右に設けられる前後移動機構20,30は、公知の種々の移動機構を用いることができるが、例えば、図3(a)に示すように、支持テーブル11の左右側端に前後に離れて回転自在に支持される駆動スプロケット21,31および従動スプロケット22,32と、ガイドレール15,16の上下面に形成されたガイド溝(図示せず)に嵌合される上下一対の二組のガイドローラ41,46を有し、ガイドレール15,16に沿って前後にスライド移動可能な係止部材40,45と、駆動スプロケット21,31と従動スプロケット22,32とに掛け回され、両端部23a,33aが係止部材40,45を介して連結されてそれぞれリング状に形成される歯付ベルト23,33とから構成される。係止部材40,45の上面には、上下に貫通する係合孔42,47が形成されている。
【0016】
駆動スプロケット21,31は、図3(b)に示すように、駆動シャフト25を介して連結されている。駆動シャフト25の中央には駆動ギヤ26が取り付けられており、これに駆動ギヤ列28a,28bが図示のように噛合して設けられている。駆動ギヤ28aは駆動モータ27により回転駆動されるもので、これにより駆動ギヤ26および駆動シャフト25を介して左右の駆動スプロケット21,31が同期して回転駆動され、左右の歯付ベルト23,33を前後移動させて左右の係止部材40,45を同期して前後移動させることができる。このように同期して前後移動される左右の係止部材40,45の上に、印刷部50が取り付けられ、印刷部50全体が前後移動されるようになっている。
【0017】
印刷部50は、図1に示すように、支持テーブル11の上方に左右に延びて取り付けられる長尺状のガイドバー部材51と、ガイドバー部材51に沿って移動可能に取り付けられる印刷ユニット60とを主体に構成される。ガイドバー部材51は、図3(a)に示すように、下面に左右に所定間隔(左右の係止部材40,45の間隔に対応)をおいて下方に突出する一対の係止突起53a,53bが形成されている。これら係止突起53a,53bを左右の係止部材40,45の上面に形成された係合孔42,47に嵌合させてガイドバー部材51が取り付けられ、この結果、左右の係止部材40,45が上述したように同期して前後移動されるとガイドバー部材51が一緒に前後移動される。ガイドバー部材51の前面には、左右に延びるガイドレール52が設けられており(図4を参照)、このガイドレール52にガイドされて左右に移動可能となってガイドバー部材51に印刷ユニット60が取り付けられている。
【0018】
印刷ユニット60は、図1および図4に示すように、印刷ヘッド62、キャリッジ63およびUV光源70を主体に構成され、外周部がカバー61によって覆われている。印刷ヘッド62は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)、ブラック(K)およびクリア(T)の各色のUVインクに対応した5つの印刷ヘッド62(第1印刷ヘッド62M,第2印刷ヘッド62Y,第3印刷ヘッド62C,第4印刷ヘッド62K,第5印刷ヘッド62T)から構成される。各印刷ヘッド62の下面には、UVインクを下方に向けて吐出可能な多数のノズル(図示せず)が形成されており、このノズルが形成された面が印刷媒体2と所定のギャップを隔てて対向するようにキャリッジ63に固定支持されている。
【0019】
キャリッジ63は、左右からの側面視においてL字状に形成されており、前方に延びる搭載部63aに印刷ヘッド62およびUV光源70が搭載され、上方に延びる支持部63bの後面に形成された左右ガイド65がガイドレール52に嵌合して左右にスライド移動自在に支持され、左右移動機構(図示せず)により左右移動される。この左右移動機構は、公知の種々の移動機構を用いることができるため、本明細書において詳細図示は省略するが、例えば、ガイドバー部材51の左端側と右端側にそれぞれ回転自在に設けた駆動プーリおよび従動プーリ(タイミングプーリ)と、駆動プーリを回転駆動する駆動モータと、駆動プーリと従動プーリとに掛け回された無端ベルト(タイミングベルト)とからなり、無端ベルトの中間部にキャリッジ63を固定して構成することができる。
【0020】
キャリッジ63における搭載部63aの左右側部に、印刷ヘッド62から印刷媒体2に吐着されたUVインクに紫外線を照射して硬化させるUV光源70が設けられている。UV光源70は、搭載部63aの左側部に設けられた左UV光源70Lと、搭載部63aの右側部に設けられた右UV光源70Rとからなり、これら左右のUV光源70L,70Rが搭載部63aに設けられた第1〜第5印刷ヘッド62M,62Y,62C,62K,62Tを左右外側から挟み込むように配設される。左UV光源70Lおよび右UV光源70Rは、波長λ=100〜380nm程度の紫外線を射出する光源、例えば、UVランプやUVLED等を用いて構成される。左右のUV光源70L,70Rは、左右移動機構によるキャリッジ63の左右移動および印刷ヘッド62からのインクの吐出に応じて、後述するコントローラー103により供給電流の電流値が制御され、ON/OFF状態の切り替えが瞬時に可能(ON/OFF制御可能)であるとともに、電流値に応じた照射強度の紫外線が照射可能となっている。
【0021】
なお、ガイドバー部材51の左端部には、図1に示すように、メンテナンスステーション54が設けられており、印刷ユニット60をこの内部に移動させて印刷ヘッド62のノズル吸引、クリーニング等を行う装置を有している。また、ガイドバー部材51の右端部には、図2に示すように、各色UVインクのカートリッジ式インクタンクを有したインク供給装置55が設けられており、色ごとにインクタンクと印刷ヘッド62とがインクチューブを介して連通し、適宜インクタンクから印刷ヘッド62にUVインクが供給されるようになっている。なお、ガイドバー部材51の右端部には、インク供給装置55に加えて後述するUV光源70を冷却するためのメイン冷却部85が設けられている。
【0022】
支持テーブル11とこれらの装置を繋いで第1フレキシブルガイド14が設けられており、支持テーブル11の下側に配設された電源18からこれらインク供給装置55およびメンテナンスステーション54等に電力を送るためのケーブルや、水冷チラーユニット90からメイン冷却部85に後述する冷却水を供給する第3循環管路98の一部が第1フレキシブルガイド14内に配設されている。この構成により、支持テーブル11に対してガイドバー部材51の前後移動を許容しつつ、印刷部50に電力等の供給を行うことができるようになっている。
【0023】
また、ガイドバー部材51と印刷ユニット60とを繋いで第2フレキシブルガイド56が設けられており、第2フレキシブルガイド56内に、電力送出用の電線や、インク供給用のケーブルおよびUV光源70に後述する冷媒液を供給するための第1循環管路81の一部等が配設されている。この構成により、ガイドバー部材51に沿った印刷ユニット60(キャリッジ63)の左右移動を許容しつつ、ガイドバー部材51側(インク供給装置55やメイン冷却部85等)から印刷ユニット60にUVインクおよび冷媒液等の供給を行うことができるようになっている。
【0024】
コントロールユニット100は、支持テーブル11の前端部に設置されており、操作パネル101、停止ボタン102およびコントローラー103を主体に構成される。操作パネル101には、インクジェットプリンタ1の作動を操作する操作ボタン(図示せず)、および稼動状況を表示する表示パネル(図示せず)等が設けられている。停止ボタン22は、押圧操作されることによってその信号がコントローラー103に入力され、インクジェットプリンタ1の作動を停止させるボタンである。コントローラー103は、インクジェットプリンタ1の各機構を含む装置全体の作動を制御する制御装置であり、前後移動機構20,30によるガイドバー部材51の前後移動制御、左右移動機構によるキャリッジ63の左右移動制御、印刷ヘッド62の各ノズルからのインク吐出制御、および左右のUV光源70L,70R)からから照射される紫外線の照射制御などを行う。
【0025】
例えば、支持テーブル11の載置台12上に固定保持された印刷媒体2に対して印刷を行う場合、前後移動機構20,30により印刷ユニット60を印刷媒体2の後端(または前端)に移動させる。そして、印刷ユニット60は、左右移動機構により左右に往復移動されるとともに、印刷ヘッド62の各ノズルから印刷媒体2に向けてUVインクが吐出される。ここで、印刷ユニット60が左方へ移動しているときには、印刷ヘッド62の右側に設けられた右UV光源70RをON状態として紫外線を照射し、印刷媒体2に吐着されたUVインクを硬化させる。なお、このとき左UV光源70Lは、印刷ユニット60の左方への移動において印刷ヘッド62の左側に位置するため、UVインクが印刷媒体2に付着する前に紫外線を照射することになるので、例えばOFF状態(照射強度をゼロ)として、紫外線を照射しないように制御されることが好ましい。又は、印刷媒体2と左UV光源70Lとの間にシャッター機構を設け、このシャッター機構を制御して紫外線を照射しないようにしても良い。
【0026】
また、印刷ユニット60が右方へ移動しながら印刷ヘッド62から印刷媒体2に向けてUVインクが吐出されるときには、印刷ヘッド62の左側に設けられた左UV光源70LをON状態として紫外線を照射し、印刷媒体2に吐出されたUVインクを硬化させる。なお、このとき右UV光源70Rは、印刷ユニット60の右方への移動において印刷ヘッド62の右側に位置するため、UVインクが印刷媒体2に付着する前に紫外線を照射することになるので、上記左UV光源70Lと同様に、例えばOFF状態、又はシャッター機構を設けて紫外線を照射しないように制御されることが好ましい。このように、印刷ユニット60は左右に往復移動するとともに、前後移動機構20,30によって前後に移動されることによって、印刷媒体2に所望の印刷が行われる。
【0027】
このように構成されるインクジェットプリンタ1にあって、キャリッジ63(搭載部63a)に配設され、コントローラー103により照射制御されるUV光源70(左右のUV光源70L,70R)に冷媒液を供給し、UV光源70が紫外線射出時に発生する熱を放熱させる冷却装置80(図5を参照)が設けられている。
【0028】
次に、本発明の特徴である冷却装置80について、図5を参照して説明する。冷却装置80は、UV光源70に接続され冷媒液を循環させる第1循環管路81、第1循環管路81に設けられ冷媒液が管路内で循環するための循環流を作り出す第1循環ポンプ82、および第1循環管路81に設けられ冷媒液と冷却水との熱交換を行う熱交換器83からなるメイン冷却部85と、熱交換器83に冷却水を供給する水冷チラーユニット90とを主体に構成される。
【0029】
メイン冷却部85は、図2および図5に示すように、ガイドバー部材51の右端部に配設されている。また、水冷チラーユニット90は、支持テーブル11の下側に配置されている。なお、メイン冷却部85の配置位置は、ガイドバー部材51の右端部に限らず適宜に配置することができるが、第1循環管路81をより小さな(コンパクトな)循環管路とするために、ガイドバー部材51の近傍に載置されることが好ましい。また、水冷チラーユニット90の配置位置は、支持テーブル11の下側に限定されるものでなく、インクジェットプリンタ1と別置きにする等適宜に配置することができる。
【0030】
第1循環管路81は、ガイドバー部材51に配設されるガイド部材側チューブ81a、キャリッジ63に配設されUV光源70に接続されるキャリッジ側チューブ81b、およびガイドバー部材51とキャリッジ63(印刷ユニット60)とを繋ぐ第2フレキシブルガイド56内に配設されガイドバー部材側チューブ81aおよびキャリッジ側チューブ81bをコネクター81dを介して連結するフレキシブルチューブ81cとから密閉された環状に構成される。このようにフレキシブルチューブ81cおよび第2フレキシブルガイド56によりガイドバー部材51とキャリッジ63とを繋いだ構成であるため、キャリッジ63のガイドバー部材51に対する左右移動を許容するようになっている。
【0031】
第1循環管路81(キャリッジ側チューブ81b)は、UV光源70に設けられた冷却部71内を冷媒液が通過するようにUV光源70に接続されており、第1循環ポンプ82によって第1循環管路81内を循環される冷媒液が冷却部71内を通過する過程において熱交換を行ってUV光源70の紫外線射出時に発生する熱を奪うようになっている。このように第1循環管路81内を循環する冷媒液は、UV光源70の冷却部71を通過する過程で熱交換を行い、UV光源70の熱を奪うことによって温度が上昇するが、この冷媒液の熱を、熱交換器83において水冷チラーユニット90から供給される冷却水との熱交換を行うことによって放熱するようになっている。なお、第1循環管路81内を循環する冷媒液としては、電極、つまり金属を侵さない性質を持ち、熱的にも化学的にも安定で過酸化物を形成しない性質を有するものであれば、どのような物質を用いてもよい。例えば、フッ素系不活性液体として知られるバーレルフロロフルード(松村石油株式会社製)を用いることもできる。また、熱交換器83は、種々のタイプの熱交換器を用いることができるが、例えば、冷却効率および小型化等の理由により、対向流かつプレート式の熱交換器を用いることが好ましい。
【0032】
水冷チラーユニット90は、公知の種々の水冷チラーユニットを用いることができるが、例えば、冷媒ガスを循環させる第2循環管路91と、第2循環管路91に設けられ管路内で冷媒ガスが循環するための循環流を作り出す第2循環ポンプ92と、第2循環管路91に接続された圧縮機93、凝縮器94、冷却塔95、膨張弁96および蒸発器97と、熱交換器83および蒸発器97に接続するとともに冷却水を循環させる第3循環管路98と、第3循環管路98に設けられ管路内で冷却水が循環するための循環流を作り出す第3循環ポンプ99とから構成される。
【0033】
第3循環管路98は、支持テーブル11に配設される支持テーブル側チューブ98a、ガイドバー部材51に配設され熱交換器83に接続されるガイドバー部材側チューブ98b、および支持テーブル11とガイドバー部材51とを繋ぐ第1フレキシブルガイド14内に配設され支持テーブル側チューブ98aおよびガイドバー部材側チューブ98bをコネクター98dを介して連結するフレキシブルチューブ98cとから密閉された環状に構成される。このようにフレキシブルチューブ98cおよび第1フレキシブルガイド14により支持テーブル11とガイドバー部材51とを繋いだ構成であるため、ガイドバー部材51の支持テーブル11に対する前後移動を許容するようになっている。
【0034】
第2循環ポンプ92によって第2循環管路91内を循環される冷媒ガスは、圧縮機93によって高圧高温となった後、凝縮器94および冷却塔95によって凝縮し液化する。この液化された冷媒を、膨張弁96によって気化・膨張させる(断熱膨張させる)ことにより低温化させ、蒸発器97において低温化された冷媒と第3循環管路98(支持テーブル側チューブ98a)内の冷却水との熱交換を行って冷却水を冷却する。蒸発器97において冷却された第3循環管路98内の冷却水は、第3循環ポンプ99によって循環され、熱交換器83で第1循環管路81内の冷媒液との熱交換を行うことにより冷媒液を冷却する。このように熱交換器83において冷却された第1循環管路81内の冷媒液が、第1循環ポンプ82によって循環されてUV光源70の冷却部71を通過する過程で熱交換を行い、UV光源70の紫外線射出時に発生する熱を奪いUV光源70が冷却される。
【0035】
ここで、インクジェットプリンタ1による主な効果についてまとめると、以下のようになる。第1に、冷却装置80は、冷媒液を冷却部71を通過させて循環させる第1循環管路81、第1循環管路81に設けられ冷媒液が第1循環管路81内で循環するための循環流を作り出す第1循環ポンプ82、および第1循環管路81に設けられ冷媒液と冷却水との熱交換を行う熱交換器83からなるメイン冷却部85と、熱交換器83に冷却水を供給する水冷チラーユニット90とを備えて構成される。この構成により、第1循環管路81には交換の必要もない冷媒液が循環されるため、第1循環管路81を密閉させたままにしておくことができ、第1循環管路81へのゴミの混入もない。また、冷媒液が電極を侵食しないため、電極がイオンの多い冷媒液に浸らず、電極の酸化を防ぎ、電極間でのスパークを防ぐこともできるようになる。
【0036】
第2に、第1循環管路81、第1循環ポンプ82および熱交換器83(メイン冷却部85)は、印刷媒体2に沿って相対移動するガイドバー部材51に搭載され、水冷チラーユニット90は支持テーブル11に固定保持され、水冷チラーユニット90から熱交換器83に延びて冷却水を供給する第3循環管路98におけるガイドバー部材51と支持テーブル11とをフレキシブルチューブ98cおよび第1フレキシブルガイド14により繋いだ構成であるため、ガイドバー部材51の支持テーブル11に対する前後移動が許容される。このように構成すると、冷却装置80の配置位置の自由度が格段に向上するため、種々の形態のインクジェットプリンタにおいて冷却装置80を用いることが可能となる。
【0037】
第3に、UV光源70はガイドバー部材51に移動可能に取り付けられたキャリッジ63に搭載され、第1循環ポンプ82および熱交換器83はガイドバー部材51に搭載され、水冷チラーユニット90は支持テーブル11に固定保持され、第1循環管路81におけるキャリッジ63とガイドバー部材51とをフレキシブルチューブ81cおよび第2フレキシブルガイド56により繋いだ構成であるため、キャリッジ63のガイドバー部材51に対する左右移動が許容される。このように構成すると、冷却装置80の配置位置の自由度が格段に向上するため、種々の形態のインクジェットプリンタにおいて冷却装置80を用いることが可能となる。
【0038】
なお、上述の実施形態において、左右UV光源70L,70Rは、印刷ヘッド62が右方移動時および左方移動時にUVインクを吐出する両方向印刷を行うために、印刷ヘッド62の左右両側に一対となって配置されて構成されているが、この構成に限定されない。例えば、印刷ヘッド62が右方移動時もしくは左方移動時にのみUVインクを吐出して印刷を行う場合は、その際の印刷ヘッド62の進行方向における後方側にのみUV光源を配置すればよい。
【0039】
また、上述の実施形態において、支持テーブル11上に固定保持された印刷媒体2に印刷を行う構成(いわゆるフラットベッド型)のインクジェットプリンタとなっているが、この構成に限定されず、例えば、送り出し機構および巻き取り機構を追加して設けることにより、シート状の印刷媒体をプラテン上に搬送させながら印刷を行う構成のインクジェットプリンタや、CD等の印刷媒体をパレット上に載置し、そのパレットをベルトコンベアで搬送させながら印刷を行う構成のインクジェットプリンタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの概略構成を示した斜視図である。
【図2】上記インクジェットプリンタの概略構成を示した右側面図である。
【図3】前後移動機構の構成を示した説明図であって、(a)は前後移動機構の側面図であり、(b)は前後移動機構の駆動部を示した斜視図である。
【図4】印刷ユニットの内部を示した斜視図(一部省略)である。
【図5】冷却装置の構成を示した系統図である。
【符号の説明】
【0041】
1 インクジェットプリンタ
2 印刷媒体
11 支持テーブル(媒体支持手段、プリンタ本体)
51 ガイドバー部材(第1の移動部材)
62 印刷ヘッド
63 キャリッジ(第2の移動部材)
70 UV光源(紫外線照射手段)
71 冷却部
80 冷却装置
81 第1循環管路(循環管路)
82 第1循環ポンプ(循環ポンプ)
83 熱交換器
90 水冷チラーユニット(第2の冷媒供給手段)
98 第3循環管路(管路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体支持手段により支持された印刷媒体の表面に印刷ヘッドから吐出して付着させたインクに、紫外線照射手段により紫外線を照射して、前記インクを硬化させて前記印刷媒体の表面に所望のプリントを施すインクジェットプリンタにおいて、
前記紫外線照射手段に設けられて紫外線発光時に発生する熱を冷却する冷却部と、
第1の冷媒を、前記冷却部を通過させて循環させる循環管路と、
前記循環管路に設けられ、前記第1の冷媒が前記循環管路内で循環するための循環流を作り出す循環ポンプと、
前記循環管路に設けられ、前記第1の冷媒と外部から供給される第2の冷媒との熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に前記第2の冷媒を供給する第2の冷媒供給手段とを備えて構成されたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記循環管路、前記循環ポンプおよび前記熱交換器は、前記印刷媒体に沿って相対移動する第1の移動部材に搭載され、
前記第2の冷媒供給手段は、プリンタ本体に固定保持され、
前記第2の冷媒供給手段から前記熱交換器に延びて前記第2の冷媒を供給する管路における前記第1の移動部材と前記プリンタ本体とを繋ぐ部分が、前記第1の移動部材の相対移動を許容するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記紫外線照射手段は、前記第1の移動部材に移動可能に取り付けられた第2の移動部材に搭載され、
前記循環ポンプおよび前記熱交換器は、前記第1の移動部材に搭載され、
前記第2の冷媒供給手段は、前記プリンタ本体に固定保持され、
前記循環管路における前記第2の移動部材と前記第1の移動部材とを繋ぐ部分が、前記第2の移動部材の前記第1の移動部材に対する相対移動を許容するように構成されたことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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