説明

インクジェットプリントヘッドによる印刷方法、インクジェットプリントヘッド、インクジェットプリントヘッドの作動方法、インクジェットプリントヘッドの為の駆動回路及び液滴の平均の速度制御方法

【課題】基板に印刷するインクジェットプリントヘッドを作動する方法を提供する。
【解決手段】プリントヘッドが、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給とに連通する画室を有し、さらに、プリントヘッドが、画室と接続され、かつプリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射し、基板に適当なトーンのプリントドットを形成する電気的に作動可能な手段を含み、この方法は、プリントトーンデータに従って電気的に作動可能な手段に、複数の電気信号を印加するステップを含み、連続する信号の印加間の時間遅れは、前記プリントドットを形成するために噴射される前記小滴の数にかかわらず、プリントドットを形成するために、対応する小滴が基板に運ばれる平均速度に対する変化が、人の目で検知可能な印刷映像の欠陥となる変化以下にとどめる程度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小滴沈着装置を作動する方法、特に、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給とに連通する画室を有するインクジェットプリントヘッドに関し、プリントヘッドは、さらに、画室と接続され、かつ対応する数の小滴を噴射するために複数回作動可能である電気的に作動可能な手段を含んでいる。特に、本発明は、画室が、電気信号に対応してチャネル(channel)の量を変化する手段と接続されるチャネル(channel)である(即ち、画室はチャネルを含むものであり、以下画室と称する)、プリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、例えば、WO95/25011、US−A−5 227 813およびEP−A−O 422 870など(すべてここに参照のため記載されている)から周知であり、画室は、画室の長手方向に沿って延在する側壁によって隣の画室同士が分離されている。電気信号に対応して、画室の壁は、画室軸に対して横方向に変位可能である。これにより、順番に、画室軸に沿って伝わる音波を発生し、当業者に周知であるように小滴を噴射させる。
【0003】
前述の文献のEP−A−O 422 870は、“マルチパルスグレースケールプリンティング”の概念、すなわち、短時間周期内に一つの画室から可変数の小インク滴を発射し、結果として生ずる小滴の“パケット”が、飛行中および/または紙上に溶け込み、紙上に相応じる可変サイズのプリントドットを形成する概念を開示している。図1は、前述のEP−A−O 422 870から引用され、かつ小滴の可変数(64,60,55,40など)を噴射する10本の隣接したプリントヘッド画室からの小滴噴射を図式で示している。いずれか一つの画室から噴射される連続する小滴の不変の間隔は、連続する小滴の噴射速度が一定であることを示している。さらに、この間隔が、多い数の小滴を噴射する画室と少ない数の小滴を噴射する画室と同一であることは注目されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実験において、EP−A−O 422 870に記述されている動作から二つの偏差が明らかにされた。
第一の調査結果によると、所定の画室から噴射される第一小滴は、空気抵抗によって減速され、スリップストリームの中を移動し、その結果、空気抵抗をうけることが少ないパケットの次に続く小滴が後から第一小滴にヒットすることが分かる。パケットの第一小滴と次に続く小滴とが、溶け合い(merge)、一つの大きなドロップを形成する場合がある。
【0005】
第二の調査結果によると、このような一つの大きなドロップの速度は、所定の画室から一つの進行に噴射されるパケットの小滴の総数に左右されて変化する。
第三の調査結果は、(例えば、EP−A−O 376 532に記述される)プリントヘッドの三サイクル作動に関し、プリントヘッドの連続する画室が、3つのグループの一つに互い違いに割り当てられている。それぞれのグループは、上述のように入力(incoming)プリントデータに従って一つ以上の小滴のパケットを噴射する使用可能画室で順番に使用可能にされる。そのような小滴の溶け込みによって形成される一つの大きなドロップの速度は、同一グループの隣接した画室が、作動されるかどうか(すなわち、3画室に1つ)、または同一グループの2番目の画室のみが、作動されるかどうか(すなわち、6画室に1つ)に左右されて変化することが明らかになっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に略述された速度に対する変化により、本質的に周知の問題とはいえ、上記に説明されるマルチパルスグレースケールモードのプリントヘッド作動に、特に重大であるかなりのドット配置誤差を生じさせることがある。本発明者は、1ピクセルピッチの1/4以上である2つ以上のプリントドット間の配置誤差により、人の目で検知可能なプリントの欠陥となることをここに立証した。マルチパルスグレースケールプリントヘッドは、一般に、1インチにつき360ドットのプリントピッチ、それぞれに5m/s、5kHおよび1mmの最小基板速度、パケット発射周波数およびプリントヘッド基板分離で作動するので、これにより、二つの隣接したプリントドットを形成するために進む小滴間の速度の許容変化に、1.25m/sの上限を置く。
【0007】
本発明は、目的として、上述される現象が発生するとき、前述のドット配置誤差を回避することにあり、下記の線図に関する例証として記述されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の一公知例に示されたマルチパスルグレースケールプリンティングの概念を示す図である。
【図2】図2は全波形期間を有する小滴速度に対する変化を示す図である。
【図3】図3aは、図2の結果を得るために使用された波形を示す図であり、図3bは、図3aの連続したいくつかの波形の例を示す図である。
【図4】図4は、本発明に於ける波形拡張周期の期間を有する小滴速度に対する変化を示す図である。
【図5】図5は、本発明による作動波形の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明に於ける波形休止周期期間を有する小滴速度に対する変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る具体例を、添付図面を参照してここで一例として説明される。
図2は、全波形期間を有する小滴速度に対する変化を示している。
図3aは、図2の結果を得るために使用された波形を示している。
図3bは、引き続いて、図3のいくつかの波形の印加を示している。
図4は、波形拡張周期の期間を有する小滴速度に対する変化を示している。
図5は、本発明による作動波形を示している。
図6は、波形休止周期期間を有する小滴速度に対する変化を示している。
【0010】
図2は、小滴のパケットを生成するため、上記に記述される種類のプリントヘッドの画室に繰り返し印加される描画強化解放(draw−reinforce−release)(DRR)波形の全期間Tを有するドロップ速度に対する変化を示している。当業者には周知であるこのような波形は、図3aに示されており、最初に拡張状態(Eで“描画”)にプリントヘッド画室を置き、その後、収縮状態(RFで“強化”)に変え、次に、最初の開始していない、静止状態に戻って画室を(RLで)“解放”する。図3aに示されるように、図2を得るために使用される波形の描画と強化周期とは等しく、波形を繰り返すと、一つの小滴を噴射することになる。
【0011】
第3b図は、きわめて近接して連続数回波形を印加し、画室から数小滴を噴射(“droplets per dot”即ち“dpd”)して、紙上に相応じるサイズのドットを形成することを描写している。画室が属するグループが使用可能とされる毎に、かつ入力プリントデータがドットをプリントすることを要求する状態になる毎に、このステップがそれぞれの画室のために繰り返されることは効果的なことである。図2に示されるデータを得るために使用される実験において、60Hzの周波数で、画室は、繰り返し使用可能であり、ドットがプリントされた。
上記に説明されるように、画室から噴射されるパケットの小滴は、飛行中すべて溶け込み、印刷される基板にヒットする一つの大きなドットを形成する場合がある。あるいは、すべての小滴の溶け込みが、基板で起こる場合もある。第三の状況において、パケットのすべての小滴は、大きな溶け込まれたドロップに先立って移動するパケットの第一小滴を除いては飛行中溶け込む。
【0012】
図2は、これらの様々なモードに差異はないが、基板で測定されるように基板にヒットする第一のドロップ(小滴)の速度を示している。グループの別の画室のみが発射される場合(6作動に1)、約4.5μs期間の一つのDRR波形(1dpd)を印加する(一つの小滴を噴射すること)と、1秒につき略12m/sの速度であるのに対して、グループのすべての画室が発射される場合(6作動に1)、約14μsの速度であることが分かる。しかし、きわめて近接して連続7回(7dpd)同一波形を印加して、7小滴を噴射すると、“3に1”作動のとき、約37m/sの速度となり、また“6に1”作動のとき、約25m/sの速度となる。
全波形期間Tの特定の有利値が、前述の速度に対する変化が大幅に減速される値にあることが明らかになっている。図2の場合、略3.8μs期間の波形でプリントヘッドを作動することによって、1進行に噴射される小滴の数、または同一グループの隣接した画室の発射/不発射状態にかかわらず、速度は、約12m/sでかなり一定することが分かる。同様に、少なくとも5m/sで、好ましくは少なくとも7m/sでの小滴噴射速度が、許容プリント品質には必要であることが見出されているので、単に4m/sでは、これは所望以下であるが、約7.5μs以上の波形での作動の結果、かなり速度が一定する。さらに、Tの大きな値でも、全体的に波形期間は大きくなり、かつ相応じてドットプリント速度は遅くなる。
【0013】
図2は、前述のWO95/25011に開示され、かつ略4μsの共振の周期に等しい略250kHzの共振周波数を有する種類のプリントヘッドを使用して得られた。これは、2μsに等しい作動波形の圧縮および拡張要素のそれぞれに順番に対応して、作動波形の周期が4μsに等しいとき、プリントヘッドから噴射される小滴の速度U、の共振ピークを示す図2の“3/1に1dpd”トレースに反映されている。WO95/25011に説明されているように、このような共振周期は、インクの圧力波の速度(c)に対する閉鎖画室長さ(L)の比(L/c)の2倍に等しいと従来考えられていた。従って、閉鎖画室に於いては当該L/cは、半共振時間を示すために以下に使用され、そのように表示すると、上記に参照された有利値は、それぞれに、1.9L/cまたは>3.75L/cである。
【0014】
2μsで、この半共振周期が、必要な大きい小滴値を達成するために大きな画室の長さLを必要とするいずれか一つの1小滴噴射周期に一つの小インク滴を噴射する(いわゆる、“バイナリー”印刷)ように設計されている同様なプリントヘッドにおいてよりかなり短いことは注目されるべきである。複数のドロップではなく単に一つのドロップが、基盤にプリントドットを形成するために噴射される必要があるという事実によって、最大小滴噴射周波数の対応する低減は、オフセットされる。対比してみると、複数の小滴がプリントドットを形成する“マルチパルスグレースケール”の作動は、一般に、十分に高い繰り返し周波数、第二に、十分に低い小滴値を達成するために、半共振周期が、5μs以下、好ましくは2.5μs以下の値を有するプリントヘッドを必要とする。
【0015】
波形期間の前述の有利値は、プリントヘッドの設計、作動波形、ドットプリント周波数などによって変化するのに、これらが決定される方法(図2に示される種類のグラフから)は、同一である。同様なことは、プリントヘッドの共振周期値にも当てはまる。作動波形期間Tの様々な値に対して、速度データUは、周知の速度で移動する基板の噴射小滴の沈着位置を分析するか、または(好ましくは)顕微鏡でストロボスコープ的に小滴噴射を観察するかのいずれかによって得られる。両方法により、ノズルおよび基板間のジャーナル中の小滴の平均速度を表示することは効果的なことである。
【0016】
上述のように、図3aに示される“DRR”波形は、期間および/または振幅に等しい画室収縮および拡張要素を必ずしも持つ必要はない。実際には、波形の拡張要素の期間は、全体として、作動波形の期間よりはむしろ今まで論じられてきた動作に影響を及ぼすと考えられている。
【0017】
図4は、5m/sの小滴噴射速度(U)を達成するために必要なピークピーク波形振幅(V)の拡張周期期間(DR)の増加による変化を示している。図2によると、プリントヘッドは、WO95/25011に開示されている種類のものであり、略4.4μsの共振周期、2L/cを有する。
【0018】
約2.5μsまたは4.5μsの拡張周期期間(DR)の値で、波形振幅Vの異なる値は、必然的に小滴発射状況に左右される。DR=2.5μsの場合、マルチパルスグレースケールプリントモードの3画室毎に一つ(“3に1”の作動)から7小滴(1ドットにつき7ドロップ(dpd))を噴射するように、きわめて近接して継続7回波形を印加するとき、単に27ボルトのピークピーク波形振幅(V)が必要とされる。対比してみると、6画室毎に一つ(“6に1”の作動)から一つの小滴(1ドットにつき1ドロップ(dpd))を噴射するように、ただ一度波形を印加するとき、V=32の値が、同一小滴噴射速度を達成するために必要である。
【0019】
実際問題として、小滴発射状況に対する波形振幅の変化には、複雑で、(費用のかかる)、制御電子機器を必要とする。実行か簡単でかつ費用のかからない一定波形振幅の別の解決法では、上述されるように小滴噴射速度に対する変化と、結果として小滴配置誤差とを生じることになる。
【0020】
しかし、本発明は、小滴噴射速度が、小滴発射状況にかかわらず、実質的に一定である拡張周期期間(DR)の値があることを明らかにしている。このような作動により、作動状況にかかわらず、かつ小滴配置誤差の恐れがなく一定の振幅の波形を使用可能にする。
【0021】
例えば、図4の場合、このような一定の動作は、1.8μsから2.2μsの近似値域のDR値によって、約2.2μsで達成される速度間の特に近接する一致によって、また3.0μsから3.6μsの値域、特に3.4μsにおいて生じる。半共振周期、L/c、の式で表示すると、これらの値域は、略0.8L/cから1.0L/c、特に、1L/cであり、また1.4L/cから1.6L/c、特に、1.5L/cである。高値域ではなく低値域での作動は、高波形繰り返し周波数を順番に可能にする低全波形期間を生ずる。1.8μsから2.2μs値域の所定小滴速度の最低動作電圧も、プリントヘッドアクチュエータの壁の圧電材料に相応じる最低加熱を生じる。これらの理由で、最低値域での動作が好まれる。
【0022】
図4に示されるように一定の小滴噴射速度(U)のために達成されるプリントヘッドの特性が、例えば、ここに参照のため記載されているWO92/12014から、周知であるノズル、インク入口インピーダンスなど一貫性のある流体動効果を含むことは効果的なことである。この特性は、速度変化を組み込んでいるが、波形振幅(V)の変化に対してプリントヘッドの圧電材料でインクを加熱する際の変化によって引き起こされる。プリントヘッドのインクの圧電加熱については、参照のためここに記載されているWO97/35167に説明されており、従って、さらなる詳細についてはここでは論じないことにする。
【0023】
逆に言えば、図2に示され、かつ一定の波形振幅(V)のために達成される種類のプリントヘッドの特性は、変化する流体動効果を落として一貫性のある加熱効果を含むことである。しかし、波形振幅および小滴噴射速度が、作動操作にかかわらず、一定である本発明によるこれらの作動状態で、流体動および圧電加熱効果も一定であることは効果的なことである。従って、特性のどちらの種類も、本発明による作動状態を決定するのに適している。
図5は、図4の特性を達成するために使用される作動波形を示し、動作電圧マグニチュードは、縦座標に、また正規化時間は、横座標に示されている。
【0024】
画室拡張周期は、(C)で示され、その期間(DR)は、図6の特性を達成するために変化される。実質的に隣接してその後2DRの期間の画室収縮周期“X”が続き、画室が収縮または拡張のどちらでもない状態にとどまる期間0.5DRの周期“D”によって続けられる。休止周期に続いて、新たな小滴を噴射するのにふさわしいように、波形が繰り返される。このような波形は、隣接する画室から所望されない小滴を同時に噴射(いわゆる、“偶有的事態”)しないで、基板に一つの可変サイズのドットを形成するために多数の小滴を噴射するのに特に効果的であることが分かった。
【0025】
従って、本発明の第一の形態は、小滴沈着装置を作動する方法にあり、装置は、小滴噴射用ノズルと、小滴流体の供給とに連通する画室を含み、電気信号に対応して画室の量を変化するチャネル量を変化させる手段と接続され、また方法は、第一時間周期のため増加された状態の前記画室の量を保持する第一部分と、前記第一時間周期に実質的に隣接して続く第二時間周期のために減少された状態の前記画室の量を保持する第二部分とを有する信号を印加するステップと、実質的に前記第一時間周期の半分に等しい連続する信号間の時間遅れによって前記信号を繰り返し印加するステップとを含む。
【0026】
さらに、休止時間の特定値を有するこの種類の波形は、一つの小滴(1dpd)と複数小滴(例えば、7dpd)作動間との速度の差を許容映像品質に必要なレベル以下に減少するのに効果的であることがわかった。
【0027】
このように、本発明の第二の形態は、基板に印刷するインクジェットプリントヘッドを作動する方法であり、プリントヘッドが、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給とを連通する画室を有し、さらに、プリントヘッドが、画室と接続され、かつプリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、基板に適当なトーンのプリントドットを形成する電気的に作動可能な手段を含み、この方法は、複数の電気信号をプリントトーンデータに従って電気的に作動可能な手段に印加するステップを含み、連続する信号の印加間の時間遅れは、前記プリントドットを形成するために噴射される前記小滴の数にかかわらず、プリントドットを形成するために対応する小滴が基板に運ばれる平均速度の変化が、人の目で検知可能な印刷映像の欠陥となる変化以下にとどめる程度である。
【0028】
本発明者は、休止時間の範囲におよぶ適当な実験の手助けにより、休止時間値は、パケットの小滴の数にかかわらず、パケットの小滴の平均速度が狭帯内にある程度であることを見出した。その結果、可変サイズの小滴パケット間に生じる平均速度の変化は、最初に説明されているように人の目で検知可能な印刷映像の欠陥をどちらかと言えば生じる変化よりも小さい。
【0029】
本発明の両形態の好ましい実施の形態は、明細書と従属項とに詳述されている。本発明は、さらに、これらの請求項により作動するのに適応される小滴沈着装置と駆動回路手段とを備えている。
図6は、上記に参照されている種類の実験の結果を示し、平均小滴速度,U,の変化が、図5に示される種類の波形休止周期Dの長さにおける変化を線で表示されている。
【0030】
Dの長さは、本例では、2.2μsの長さを有し、かつ半共振周期に等しい拡張周期Cの長さDRの分数として表されている。圧縮周期Xは、図5に示されるようにCの長さの2倍である。
休止時間が0.5DRに等しい上述の種類の波形は、7小滴のパケットに対応する略6.7m/sの最大速度と、2小滴のパケットに対応する6m/sの最小速度との間の0.7m/sのみで分離することが分かる。これは、上述される1.25m/sの許容可能な差の半分以下である。さらに、最初の方に記述される速度差において1.25m/s限度を超える前に、より短い―かつ従ってより速い―全波形となるように、休止時間を0.45DRに減少することが可能であることは図6からも明らかである。さらに、重大となる有害な影響を与えることなく、0.5DR以上の同様量の休止時間を−0.55の休止時間−に増加することも可能である。実際に、0.5DR以上のドエル値の休止時間を有する速度差に対する増加の低速度は、1.25m/s制限が、約0.85のDR値で達成されることを意味している。このような休止周期を組み込む波形は、0.45DR休止周期を組み込む波形の速度の略90%を有するにすぎないが、結果として、望ましくない。
【0031】
図4および図6の結果は、40Vの範囲の振幅を有する図5に示される種類の波形を使用して得られた。しかし、この装置の他の部分を拘束することにより、実際に印加される波形が多少変形される場合があることは効果的なことである。特に、駆動回路の立上がり時間により、図5に示されているよりも大きな勾配を波形端部に持たせ、または拡張および収縮信号を印加する間にわずかな休止時間を生じることになる。後者の場合、休止時間は、信号間の休止時間よりもかなり短い。
【0032】
略4.4μsの半共振周期を有することに加えて、図4および図6の結果を得るために使用されたプリントヘッドは、25μmのノズル出口直径を有し、炭化水素インクを使用している。
WO95/25011に記述される装置および上記に参照されたその他の文献を明確に参照にするとともに、本発明は、変位可能な側壁を有する画室を使用するあらゆるプリントヘッドに適用可能に考案されている。さらに、上述されるいくつかの利点は、小滴を噴射するために別の電気的に作動可能な手段を使用するドロップオンディマンド型インクジェット装置に本発明を適用することによって享受されることも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に印刷するインクジェットプリントヘッドを使用して基板に印刷する印刷方法であり、前記プリントヘッドが、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給部とに連通する画室を有し、前記プリントヘッドが、さらに、前記画室と接続され、かつ電気信号に応答して、当該画室の容積を変動させる様に作動可能であり、且つ当該電気的作動可能な手段を含み、当該手段はプリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、該基板に適当なトーンのプリントドットを形成する電気的に作動可能な手段を含むインクジェットプリントヘッドを使用し、複数の電気信号を前記プリントトーンデータに従って前記電気的に作動可能な手段に印加するステップを含み、
当該印刷方法に於いては、当該電気信号は、第1の時間間隔の間、当該画室の容積を増加の状態に保持する為の第1の部分(C)と、当該第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間、当該画室の容積を減少の状態に保持する為の第2の部分(X)とで構成され、当該電気的に作動可能な手段に対して印加される連続する当該信号の間に時間遅れ(D)を挿入する事によって特徴付けられている印刷方法。
【請求項2】
当該時間遅れ(D)は、当該第1の時間間隔の0.45から0.85の範囲内で選択される事によって特徴付けられている請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記第2の時間間隔が、実質的に前記第1の時間間隔の2倍である事を特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記第1時間間隔に対する前記時間遅れの長さの比が、0.55に等しいか、または0.55以下である請求項2に記載の印刷方法。
【請求項5】
連続して印加される信号の間の前記時間遅れは、対応する小滴が前記基板に向かって運ばれる平均速度が1.25m/s以上にまで変化しない程度である事を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の印刷方法。
【請求項6】
前記第1の時間間隔が、前記チャネルの共振時間間隔の半分に等しい事を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の印刷方法。
【請求項7】
基板に印刷するインクジェットプリントヘッドであって、該プリントヘッドが、チャネルのアレイ配列と、小滴を噴射する前記チャネルと個々に連通する一組のノズルと、前記チャネルをインク源に接続する接続手段と、当該それぞれのチャネルと係合し、当該電気信号に対応して当該チャネルの容積を変化させる電気的に作動可能な手段とを含み、当該電気的に作動可能な手段は、プリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、該基板に適当なトーンのプリントドットを形成するものであって、且つインクジェットプリントヘッドは、当該複数の電気信号を前記プリントトーンデータに従って前記電気的に作動可能な手段に印加する駆動回路を含み、更に、当該駆動回路は、第1の時間間隔の間、当該画室の容積を増加の状態に保持する為の第1の部分と、当該第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間、当該画室の容積を減少の状態に保持する為の第2の部分とを含んでおり、且つ当該電気的に作動可能な手段に対して印加される連続する信号の間に時間遅れ(D)を挿入する様に構成されている事によって特徴付けられているインクジェットプリントヘッド。
【請求項8】
当該時間遅れ(D)は、当該第1の時間間隔の0.45から0.85の範囲内で選択される事によって特徴付けられている請求項7に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項9】
前記第2の時間間隔が、実質的に前記第1の時間間隔の2倍である事を特徴とする請求項7又は8に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項10】
基板に印刷するインクジェットプリントヘッドを作動する方法であり、前記プリントヘッドが、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給部とに連通する画室を有し、前記プリントヘッドが、さらに、前記画室と接続され、かつ電気信号に応答して、当該画室の容積を変動させる様に作動可能であり、且つ当該電気的作動可能な手段を含み、当該手段は、プリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、該基板に適当なトーンのプリントドットを形成する電気的に作動可能な手段を含むインクジェットプリントヘッドを作動する方法であり方法であって、前記方法が、複数の電気信号を前記プリントトーンデータに従って前記電気的に作動可能な手段に印加するステップを含み、
当該方法に於いては、当該電気信号は、第1の時間間隔の間、当該画室の容積を増加の状態に保持する為の第1の部分(C)と、当該第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間、当該画室の容積を減少の状態に保持する為の第2の部分(X)とを含んでおり、且つ当該電気的に作動可能な手段に対して印加される連続する信号の間に時間遅れ(D)を挿入する事によって特徴付けられているインクジェットプリントヘッドを作動する方法。
【請求項11】
当該時間遅れ(D)は、当該第1の時間間隔の0.45から0.85の範囲内で選択される事によって特徴付けられている請求項10に記載のインクジェットプリントヘッドを作動する方法。
【請求項12】
前記第2の時間間隔が、実質的に前記第1の時間間隔の2倍である事を特徴とする請求項10又は11に記載のインクジェットプリントヘッドを作動する方法。
【請求項13】
基板に印刷するインクジェットプリントヘッドの駆動回路であって、前記プリントヘッドが、チャネルのアレイ配列と、小滴を噴射する前記チャネルと個々に連通する一組のノズルと、前記チャネルをインク源と接続する接続手段と、電気信号に対応して小滴を噴射するそれぞれのチャネルと接続され、当該チャネルの容積を当該電気信号に応答して変化させる電気的に作動可能な手段とを有し、且つ当該電気的に作動可能な手段は、プリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、該基板に適当なトーンのプリントドットを形成するものであり、且つ、当該駆動回路は、当該複数の電気信号を前記プリントトーンデータに従って前記電気的に作動可能な手段に印加する様に構成されており、更に当該電気信号は、第1の時間間隔の間、当該画室の容積を増加の状態に保持する為の第1の部分と、当該第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間、当該画室の容積を減少の状態に保持する為の第2の部分とを含んでおり、且つ当該電気的に作動可能な手段に対して印加される連続する信号の間に時間遅れ(D)を挿入する様に構成されている事を特徴とする駆動回路。
【請求項14】
当該時間遅れ(D)は、当該第1の時間間隔の0.45から0.85の範囲内で選択される事によって特徴付けられている請求項13に記載の駆動回路。
【請求項15】
前記第2の時間間隔が、実質的に前記第1の時間間隔の2倍である事を特徴とする請求項13又は14に記載の駆動回路。
【請求項16】
液滴が基板に向けて移動する際の平均速度に於ける変動を制御する液滴の平均速度制御方法であって、当該制御方法は、基板に印刷するインクジェットプリントヘッドを含み、前記プリントヘッドが、小インク滴の噴射用ノズルと、インク供給部とに連通する画室を有し、前記プリントヘッドが、さらに、前記画室と接続され、かつ電気信号に応答して、当該画室の容積を変動させる様に作動可能である電気的作動可能な手段を含み、且つ当該手段は、プリントトーンデータに従って複数回作動可能であり、それによって対応する数の小滴を噴射して、該基板に適当なトーンのプリントドットを形成するものである手段を含むインクジェットプリントヘッドであって、前記方法が、複数の電気信号を前記プリントトーンデータに従って前記電気的に作動可能な手段に印加するステップを含み、
当該方法に於いては、当該電気信号は、第1の時間間隔の間、当該画室の容積を増加の状態に保持する為の第1の部分(C)と、当該第1の時間間隔に続く第2の時間間隔の間、当該画室の容積を減少の状態に保持する為の第2の部分(X)とを含んでおり、且つ当該電気的に作動可能な手段に対して印加される連続する信号の間に時間遅れ(D)を挿入する事によって特徴付けられているインクジェットプリントヘッドに於ける液滴の平均速度制御方法。
【請求項17】
当該時間遅れ(D)は、当該第1の時間間隔の0.45から0.85の範囲内で選択される事によって特徴付けられている請求項16に記載の液滴の平均速度制御方法。
【請求項18】
前記第2の時間間隔が、実質的に前記第1の時間間隔の2倍である事を特徴とする請求項16又は17に記載の液滴の平均速度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−179660(P2010−179660A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117971(P2010−117971)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【分割の表示】特願2007−229748(P2007−229748)の分割
【原出願日】平成11年2月12日(1999.2.12)
【出願人】(301055608)ザール テクノロジー リミテッド (31)
【Fターム(参考)】