説明

インクジェットプリントヘッド用の一体的な微細加工されたガター

本発明は、一体式のガターシステムを有するモノリシックなプリントヘッドを含んで成るインクジェットプリントヘッドであって、前記ガターシステムがインク流に近接する端壁を備えており、前記壁のインク方向に近接する側面が、前記プリントヘッドを通るインク方向に対してほぼ平行であるインクジェットプリントヘッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷ヘッドの分野に関する。本発明は、特に、改良されたガターを有するインクジェットプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
Chwalekらに発行された米国特許第6,079,821号明細書には、選択された液滴の偏向を、オリフィスから出るジェットの非対称加熱により達成する連続インクジェットプリントヘッドが開示されている。
【0003】
Jeanmaireらによる米国特許第6,554,410号明細書には、選択された液滴の改良された偏向方法が教示されている。この方法は、各ジェットを小さな液滴と大きな液滴に分裂させること、および、液滴の飛行方向に対して空気またはガスの直交流を生じさせることを含み、空気またはガスの直交流が生じることによって、小さな液滴は、ガターまたはインクキャッチャーの方に偏向し、一方、大きな液滴は、ガターまたはインクキャッチャーを回避して媒体に当たり、所望の画像またはその反転像を描く。すなわち、大きな液滴はガターにより捕獲され、小さな液滴は媒体に到達する。
【0004】
Anagnostopoulosらに発行された米国特許第6,450,619号明細書には、上記のプリントヘッドに使用できるCMOSおよびMEMS技術を使用したノズルプレートの製造方法が開示されている。さらに、Anagnostopoulosらに発行された米国特許第6,663,221号明細書には、ページ幅のノズルプレートの製造方法が開示されており、ここで、ページ幅とは、ノズルプレートの長さが約4インチまたはそれよりも長いことを意味する。ノズルプレートは、ここで定義するように、ノズルのアレイから成り、各ノズルは出口オリフィスを有し、出口オリフィスの周りにヒーターが近接して存在する。各ヒーターをアドレスする論理回路およびヒーターに電流を供給するドライバーは、ヒーターと同じ支持体上に位置していても、その外部に存在してもよい。
【0005】
完全に連続的なインクジェットプリントヘッドの場合、ノズルプレートおよびその関連する電子機器に加えて、選択された液滴を偏向する手段が必要とされ、選択されなかった液滴を集めるためのインクガターまたはキャッチャー、インク再循環または廃棄システム、様々なエアフィルターおよびインクフィルター、インクおよび空気供給手段並びに他の取り付けおよび位置合わせ用のハードウェアが必要とされる。
【0006】
これらの連続式インクジェットプリントヘッドにおいて、ノズルプレート中のノズルは、一直線上に配列されており、ノズルは1インチ当たり約150〜2400個であり、出口オリフィスの直径に応じて約100ピコリットルほどの大きな液滴乃至1ピコリットルほどの小さな液滴を生じる。
【0007】
先に述べたように、選択された液滴の静電偏向に依存するもの(例えば、Simonらに発行された米国特許第5,475,409号明細書を参照)を包含する全ての連続式インクジェットプリントヘッドは、選択されなかった液滴を集めるのにインクガターまたはキャッチャーを必要とする。かかるガターは、ノズルアレイに対して慎重に位置合わせされなくてはならない。なぜなら、選択された液滴と選択されなかった液滴の間の角度分離が、通常、たった数度であるからである。位置合わせプロセスは、通常、非常に面倒な手続きであり、プリントヘッドのコストをかなり増加させる。プリントヘッドのコストは、各ガターがそれに対応するノズルプレートに対してそれぞれ一つ一つ位置合わせされなくてはならないことからさらに増加する。
【0008】
上記のガターまたはキャッチャーは、選択されなかった液滴を集めるのに、ナイフエッジまたは他の何らかのタイプの縁部を含むことがあり、その縁部は、端から端までの数十ミクロンで真っ直ぐでなければならない。ガターは、通常、ノズルプレートとは異なる材料から作られるため、ガターとノズルプレートは異なる熱膨張係数を有し、周囲温度が変化すると、ガターとノズルアレイとは、プリントヘッドの機能不全をもたらすのに十分な配列のずれを生じることがある。ガターは、通常、位置合わせねじを使用してあるフレームに取り付けられ、位置合わせは、輸送中に生じうる衝撃がプリントヘッドアセンブリに加わった場合に失われることがある。ガターが接着剤を使用してフレームに取り付けられる場合には、接着剤が硬化する際の接着剤の硬化中に配列のずれが生じることがあり、プリントヘッド集成中のプリントヘッドの歩留まり低下をもたらす。
【0009】
米国特許出願第2006/0197810号明細書(Anagnostopoulosら)には、一列のインクジェットオリフィスを含む一体的なプリントヘッド要素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,079,821号明細書
【特許文献2】米国特許第6,554,410号明細書
【特許文献3】米国特許第6,450,619号明細書
【特許文献4】米国特許第6,663,221号明細書
【特許文献5】米国特許第5,475,409号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0197810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
プリントヘッドを形成するように組み合わされる微細加工シリコンウエハから形成することのできるモノリシックなプリントヘッドに対して有効なガター配置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点を解消することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、高品質な連続式インクジェット印刷品質を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、改良された一体式のプリントヘッドを提供することである。
【0015】
本発明は、一体式のガターシステムを有するモノリシックなプリントヘッドを含んで成るインクジェットプリントヘッドであって、前記ガターシステムがインク流に近接する端壁を備えており、前記端壁のインク方向に近接する側面が、前記プリントヘッドを通るインク方向に対して概して平行であるインクジェットプリントヘッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のガター壁を使用したインクジェットプリントヘッドの断面図である。
【図2】図2は、連続式インクジェットプリンターの概略図である。
【図3】図3は、本発明のインクジェット用ガターの拡大概略図である。
【図4】図4は、上記ガターを有するガタープリントヘッドの概略側面図である。
【図5】図5は、幾つかのプリントヘッドを含むシリコンウエハの図である。
【図6A−6H】図6A〜6Hは、シリコンウエハのエッチングを示す図である。
【図6I】図6Iは、シリコンウエハを組み合わせて一体式のガタープリントヘッドを製造することを示す説明図である。
【図7】図7は、溝を有するガターの上面図である。
【図8】図8は、内側壁溝を有するガターの上面図である。
【図9】図9は、外側壁溝を有するガターの上面図である。
【図10】図10は、内側および外側壁溝を有するガターの上面図である。
【図11】図11は、成形リブを有するガターの上面図である。
【図12】図12は、成形リブを有するガターの斜視図である。
【図13】図13は、壁に延びるリブを有するガターの図である。
【図14】図14は、壁に延びるリブを有するガターの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、従来のやり方と比べて多くの利点を提供する。本発明のモノリシックな一体式のプリントヘッドは、選択されなかった液滴と選択された液滴との分離の改善を提供する。本発明のプリントヘッドにおいて、選択されなかった液滴はよりガターに到達しやすい。本発明の一実施態様において、選択されなかった液滴は、それらが壁の外側に当たった場合であっても、ガター内に引き込まれる。本発明のガター壁は、シリコンウエハからの形成が可能であるため、その構造は、液滴のためのナイフエッジまたは角度の付いたキャッチャーの形成を必要としない。本発明の構造は、典型的なシリコンエッチング技術、例えば深掘反応性イオンエッチング(deep reactive ion etching)(DRIE)技術により形成することができる。本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0018】
図1には、本発明の壁12を備えたガターを有することのできるモノリシックな一体式のガタープリントヘッドが示されている。この一体式のプリントヘッドは、当該プリントヘッドに入る偏向空気のためのダクト開口部26と、偏向空気を22において除去するための吸引部とを備えている。プリントヘッドは、また、プリントヘッドに入り、ダクト22へ除去されるべき共線状空気のためのダクト開口部を24に有する。開口部26を通って入る偏向空気の一部は開口部25を通って出て、共線状空気によるポスト偏向(post deflection)をもたらす。ノズルアレイ18のインクオリフィスは、インク液滴の連続的な流れを放出する。液滴は、26で入ってくる偏向空気によって小さな液滴28の流れと大きな液滴の流れに分けられる。図示されているようなプリントヘッドは、シリコン材料の幾つかの層から形成される。これらの層は、ノズルプレート36と、プレート38,42,44,46,48および50である。一実施態様において、プレート36は厚さ約300μmであり、層38は厚さ約450μmであり、シリコン層42は厚さ450μmであり、シリコン層44は厚さ450μmであり、シリコン層46は厚さ650μmであり、層48は厚さ650μmであり、ガター層50は厚さ450μmである。しかしながら、これらの寸法は、意図する特定の用途に応じて変わる。例えば、これらの寸法は、特定のノズル構造、噴出させるインクのタイプなどに応じて変わるであろう。各個々のプレートまたはウエハに構造および孔を形成するための個別のエッチングの後に、個々の層を組み合わせてモノリシックな一体式のガターユニットにする。特に興味深いのはガタープレート50であり、用いられるエッチング技術が非常に薄い壁の形成を可能にしたために、ガタープレート50においては、壁12がこの層と一体的に形成されている。ガターダクト14は、概して、約100〜300μmの高さを有し、改善されたキャピラリー流をもたらす。小さな液滴インク28はガターダクト14内に集められ、ダクト27を通じて吸引により回収される。
【0019】
図1および2を参照すると、本発明の好ましい実施態様において使用される印刷装置(典型的には、インクジェットプリンターまたはプリントヘッド)が概略的に示されている。プリンター160は、インクジェットノズルアレイ18の一部として一体的に形成された一体的偏向ガター壁12を含む。大容量のインク液滴32および小容量のインク液滴28は、噴出流経路162に実質的に沿うインク液滴形成機構/プリントヘッド10から噴出されたインクから形成される。一体的ガター構造体166は、ガスを、一体的偏向ガター構造体を通って、異なるサイズのインク液滴を分けるためにインク液滴へ向けて偏向させるための入口プレナム164および出口プレナム166を含む。一体的ガターは、ガター16の外側端に近接して位置する薄い壁12を含む。壁12の目的は、変位した小さな液滴28を捕獲するとともに、大きな液滴32を、プリントドラム172により担持された記録媒体168へ液滴経路162に沿って移動させ続けることである。真空ポンプ174は、インク回収管路166と連通しており、ガス流178のためのシンクを提供する。ガス流176による力が加わることで、インク液滴が小さな液滴の経路と大きな液滴の経路に分かれる。ポンプ220が空気を引き込み、一方、フィルター210は塵埃粒子を除去する。
【0020】
インク回収ダクト27は、偏向器12により回収された液滴を受容するための一体的壁ガター構造16の出口プレナム166に接続されている。インク回収管路27は、インク回収溜め182と連通しており、インク戻り配管184による印刷されなかったインク液滴の、その後の再利用のための回収を容易にする。インク回収溜め182には、連続気泡スポンジまたはフォーム186が入れられ、連続気泡スポンジまたはフォーム186は、ノズルアレイ18が急速に走査される用途でのインクのスロッシングを防止する。インク回収導管166内に負圧を生じさせるために、負圧源に接続された真空導管188をインク回収溜め182と連通させることができ、生じた負圧によって、インク液滴の分離およびインク液滴の除去が改善される。しかしながら、インク回収導管166内のガス流速は、大きな液滴の経路を著しく乱さないように選択される。インク回収導管166には、インクの霧化により生じるいかなるインク流、または、プレナム166内の空気流により捕獲された誤った方向に導かれたジェットを捕獲するために、フィルター192およびドレイン194が備え付けられている。捕獲されたインクは次に、回収溜めに戻される。
【0021】
さらに、入口プレナム164の一部は、ポンプ220およびコンディショニングチャンバ190からのガス流のほんの一部の流れを変え、インク回収導管166に引き込まれ、次いでガス再循環配管170に引き込まれるガスの供給源を提供する。ガター壁12におけるおよびインク回収導管166におけるガス圧は、一体的ガター16の近傍のプリントヘッドアセンブリにおけるガス圧が、プリントドラム近傍の周囲空気圧に対して正であるように、インク回収導管166およびプレナム164の構造と関連して調節される。そのため、環境粉塵および紙繊維が一体的壁12に接近および付着することが妨げられ、そしてさらに、インク回収導管166に入ることが妨げられる。
【0022】
作動時には、記録媒体168は、周知の方式でプリントドラム72により軸162を横断する方向に搬送される。記録媒体168の搬送は、液滴サイズを制御するために、プリントヘッド/ノズルアレイ機構(図示せず)の移動と調和させる。これは、周知の方式で、図示されていないコントローラを使用して実現できる。記録媒体168は、紙、ビニル、布、他の繊維材料などを含む様々な材料から選択できる。
【0023】
一体的ガター構造16の回収空気ダクト27は、ノズルアレイ18に一体的に形成されている。好ましい実施態様において、共線状空気構造ダクト24にオリフィスクリーニングシステム(図示せず)が組み込まれていても良い。クリーニングは、ノズルアレイ18に、構造体24を通って注入された溶剤をあふれさせることにより達成することができる。使用済みの溶剤は、出口242を通じてクリーニング溶剤を真空引きすることにより除去される。
【0024】
本発明において、ガター構造は、ノズルアレイ18と一体的に形成される。これは、インクジェットノズル18と壁12の間の精度を保つために行われる。本発明の好ましい実施態様において、ノズルアレイ18は、周知の半導体作製技術(CMOS回路作製技術、微小電気機械構造(micro-electro mechanical structure)(MEMS)作製技術など)を使用して半導体材料(シリコンなど)から形成される。かかる方法は、米国特許第6,663,221号および第6,450,619号明細書で説明されており、これらの特許明細書の全内容は本明細書に援用する。しかしながら、当該技術分野で従来知られている任意の作製法を使用して任意の材料からノズルアレイをガター構造と一体的に形成することができるものが特に考えられ、従って、本発明の範囲内にある。
【0025】
図3は、本発明に係る壁12およびガター16の拡大図である。回収されるべき小さな液滴28は、壁12の内側で受け取られる。受け取られた液滴は、壁12に対してメニスカス54を形成する。インクは、次に、プリントヘッドからインクが引き出される所まで、52で流れる。壁12は非常に薄く、プレート50の底部と一体的な部分を成している。図4は、本発明の壁12を有するガター17の別の拡大図である。ガター17は、壁12の外側56に誤って当たった小さなインク液滴28を回収するための回収孔58を備えている。壁に当たった後の液滴は、ガターの下方へ流れ落ち、ガターの下方に流れ落ちた液滴は、回収のためにインクを引き出す回収ダクト27において吸引およびキャピラリー力または毛細管力の作用により回収孔58に引き込まれる。ガターの底部にある回収孔へのインクの移動を促進するために、壁の外側にキャピラリー通路を設けることが可能である。ノズルのアレイを含むシリコン構造体中のノズルアレイの下方に一連の回収孔が存在してもよい。インク回収孔の数は、一般的に、ノズルの数に対応する。開口部ノッチ64は、流れからの小さな液滴28のより早い時点での引き込みを可能にするために形成された部分である。開口部ノッチ64は、孔32の出口への共線状の空気と大きな液滴32の流れにおいて、より早い時点で、移動させるべき小さな液滴28を主孔62から出して主孔内の空気の流れから離すことを可能にする。壁12は、上面13を含む。
【0026】
本発明の一体的なガターの付いた装置は、シリコン物品を成形するための周知の方法のうちのいずれによっても形成できる。それらの方法としては、CMOS回路作製法、微小電気機械構造作製法(MEMS)などが挙げられる。好ましい方法は、深掘反応性イオンエッチ(DRIE)法であることが分かった。このプロセスは、他のシリコン形成法と比べて、この装置に必要とされる大きなエッチ深さ(>10マイクロメートル)で高アスペクト比構造体の製造を可能にする。幾つかのシリコンウエハをエッチングすることを含み、シリコンウエハを次いで極めて精密な方式で一体化するシリコン材料の作製法は、プリントヘッドのノズル間の距離が正確に制御されるため、プリントヘッドの形成にとって特に望ましい。さらに、正確な方式でシリコン構造体中への流体および空気の操作のための溝が必要である。
【0027】
積層チップ材料を形成するための方法及び装置は周知である。図6A〜6Iには、製造プロセスについての簡単な説明図が示されている。図6Aには、シリコンにフィーチャーがエッチングされていない単一のウエハ110が示されている。図6Bでは、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)二酸化ケイ素膜の層112がウエハ上に堆積されている。図6Cでは、酸化物層は、部分的にエッチングされる領域を画定するためにフォトリソグラフィーを使用してパターン化されている。図6Dでは、表面は、エッチングされるべき側でフォトレジスト116のパターンによりコーティングされており、フォトレジストの開口部が、エッチングが起こる場所を画定している。図6Eでは、ウエハ110は、フォトレジストマスクを用いる深掘反応性イオンエッチングプロセスを使用して部分的にエッチングされている。図6Fでは、酸化物ハードマスクを使用してさらなるエッチングを行った後、ウエハに形成された孔115と、ウエハの除去された部分が114で示されている。図6Gでは、形成されたウエハを回収するために酸化物膜が除去されており、形成されたウエハはモノリシックな構造の1つの層になる。図6Hでは、別のウエハ117がウエハ110に結合している。シリコンウエハ117は、同じプロセスにより既にエッチングされたものである。図6Iには、ウエハスケールインテグレーションによる一体的ガター装置の作製の展望拡大図が示されている。図示されているように、エッチングされたウエハ111,113および115があり、これらのウエハは結合して、別個のウエハ111,113および115の個別のエッチングにより開口部が形成されているモノリシックな構造体であるウエハ117を形成している。プリントヘッド119は、次に、マニホールド121に取り付けられる。マニホールド121が、プリントヘッドに供給されるべき空気の出入りのための通路となる開口部123および125を有することが見られる。開口部127は、マニホールド中のオリフィスになって、流体をマニホールドに向けさせるか、あるいは、吸引を提供する。図6Iは単なる例示である。図1に示したような本発明のプリントヘッドは、一般的に、一体的なガター壁シリコンプリントヘッドのための必要な通路を形成するエッチングが施された少なくとも6層のプレートまたはウエハを必要とする。
【0028】
図5には、1つのシリコンウエハ積層体250にある8つの一体的ガター装置が示されている。括弧63は、線94および96で積層体から分離することのできる1つの装置を示している。プリントヘッドを含むウエハ積層体は、ノズルアレイ18の列が露出する方式で図中に示されている。ウエハ90のその他の部分はチップ内にあるが、略図で示されている。通路98は、共線状の空気が入り、および、クリーニング溶剤が出入りするための通路である。インク返送路99は、ガターから図示されていないインク供給器への経路を提供する。偏向空気がウエハに入るための通路が102で示されている。
【0029】
図7,8,9および10は、使用することのできる様々なガターの実施態様を示した本発明のガターの上面図である。図7には、リブ68を有するガター50が示されている。リブの間隔は、概して、ノズル間の間隔に対応するが、リブの各対の間に1つよりも多くのノズルが存在するようにリブが配置されていてもよい。図7のガターは、インク回収孔58を備えている。リブ68は、壁まで延びているものとして示されている。しかしながら、リブが孔58の領域まで延びていることが可能である。リブ68の1つの利点は、インク液滴が当たった領域からインクを引き出す通路67がより小さいため、引き出すのを助けるキャピラリー力を有することである。リブは、液滴がガターに当たった際の液滴の飛び散りの制御も助ける。
【0030】
図8には、壁12に窪みが設けられたガター70の一部が示されている。窪み72は、好ましくはキャピラリーサイズであり、壁12の内側からのインクの排出を助ける。ガターの底部にも、図示されていないインク引き出し通路へのインクの移動を助けるキャピラリー通路74が設けられている。図9には、壁12の外側56にキャピラリー通路82が設けられているガター配置80の一部が示されている。これらのキャピラリー通路82は、壁56の外側に当たったインクのガターの底部への移動を助け、ガターの底部においてインク回収孔58を通じてインクが引き込まれる。
【0031】
図10には、本発明のガター90の別の実施態様が示されている。実施態様90は、壁12の内側にキャピラリー開口部94が設けられており、壁12の外側表面56にキャピラリー溝92が設けられたインクジェットガターの部分図である。ガター16には、さらに、キャピラリー溝98がガターの底部に設けられており、図示されていない回収溝にインクが引き込まれる。キャピラリー溝98は、壁12の内側にあるキャピラリー溝94に対応するように示されているが、実施態様によっては、それらのキャピラリーは互いに対応している必要はない。内側96および外側56の両方に開口部94および92を有するこの壁12によって、回収されるべきインクが、回収孔58を通じて壁の下方に送られることとなり、また、キャピラリー98および94の助けによってインクが図示されていない回収通路に送られることとなる。
【0032】
図11および12は、ガターからのインク流の制御を助けるために成形リブ102が備え付けられたガターを示す実施態様である。リブ102は、壁12の方に向いている端部106で、リブ102間に狭幅の開口部104を有するような形状に作られている。104においてこの流れが狭まることによって、回収通路への吸引に加えてキャピラリー流れの増大が促進される。一般的に、ノズルアレイは、再利用されるべき液滴がリブ102間の開口部104の近くに当たるように位置する。必要に応じて、プレート48の壁103に、過度に偏向された印刷されなかった液滴からのインクを回収通路27へ案内するように成形された1つまたは2つ以上の溝105を設けることができる。使用される場合には、壁103の溝105は、幅5〜25μm、深さ5〜25μmのものであることができ、プレート48の壁103の高さまで延びていることができる。典型的には、壁103は、壁12と比べた場合、インク流れからさらに離れている。
【0033】
図13および図14には、リブ16が壁12と組み合わさるようにリブ16が延びている本発明の別の実施態様が示されている。インクジェットオリフィスは、再利用のために除去されたインク液滴が、リブが幅広くなっている所に形成された通路118に入るように位置合わせされる。リブが幅広くなって狭幅の通路118を形成している。本発明のこの実施態様には幾つかの利点がある。1つの利点は、狭幅の通路118が傾斜した底部114を有することである。底部の傾斜は、深掘反応性イオンエッチング(DRIE)形成技術に依存する。なぜなら、狭幅の開口部は、幅広い開口部の場合の速い速度ではエッチングされないからである。従って、リブ116間の通路117は、リブ116のより薄い箇所ほど、リブが狭くなって深くエッチングされていない領域118における端部よりも深く、かつ、幅が広い。この利点は、通路端118内に当たったインクジェット液滴が集められる場合に、インクジェット液滴が傾斜領域114に当たった場合と同じようには飛び散らないということである。リブ116間の細長く狭い領域118は、インクが集められガターの方に移動する領域からインクを引き出すことも助ける。狭い幅は、キャピラリー効果を促進し、通路内での吸引を増進する。細長く狭い領域における通路の部分は、壁に近接していない通路の部分よりも10〜40%小さい深さを有する。
【0034】
本発明の壁の内側または外側に位置する溝並びにガターの底部に位置する溝は、インクの流れを促進し、好ましくは改善された流れまたはキャピラリー流をもたらすいかなる好適なサイズを有してもよい。ガターの底部にある溝の場合に好ましいサイズは、幅が10〜50μmおよび深さが50〜300μmである。回収のためのインクの最良の移動に最適なサイズは、幅が15〜25μmおよびギャップが75〜125μmである。壁の溝は、好適には、深さが5〜25μmおよび幅が5〜25μmである。最良のインク回収に好ましい範囲は、深さが5〜15μmおよび幅が5〜15μmである。キャピラリー溝は、回収されるべきインクに対して、その回収されるべきインクがガターに到達した後に、消泡効果を提供する。
【0035】
一体的な壁の幅は、十分な構造強度を提供するのに十分ないかなる好適なものであってもよい。一般的に、壁は、インクジェットヘッドにおける使用のための構造強度を維持したままできるだけ小さく作られる。この壁は、一般的に、5〜25μmの幅および100〜300μmの高さを備える。この壁は、長さが1インチから数インチのモノリシックなインクジェットヘッドの長手方向に延びる。壁の上部に当たるインクの量が最小限に抑えられるとともに、長い寿命を得るために十分な構造強度を維持したまま、インクの良好な捕獲をもたらすため、この壁の好ましい幅は約10〜20μmであり、好ましい高さは150〜200μmである。本発明の壁およびプリントヘッドは、染料インクおよび顔料インクの両方を包含する如何なるタイプのインクとともに使用できる。
【符号の説明】
【0036】
9 ガター
10 プリントヘッド
12 壁
14 ガターダクト
16 ガター
17 ガター
18 ノズルアレイ
22 空気ダクト
24 ダクト
26 ダクト開口部
27 吸引
28 小さな液滴
32 大きな液滴
36 ノズルプレート
38 プレート
42 プレート
44 プレート
46 プレート
48 プレート
50 プレート
56 壁
58 インク回収孔
61 プリントヘッド
62 主孔
63 括弧
64 ノッチ
68 リブ
70 ガター
72 窪み
74 キャピラリー通路
80 ガターの配置
82 キャピラリー通路
90 ガター
92 キャピラリー開口部
94 チップ線
96 チップ線
98 通路
99 インク返送路
100 ガター
102 リブ
104 開口部
106 端部
110 ウエハ
111 ウエハ
112 酸化物膜
113 ウエハ
114 ウエハ
115 ウエハ
116 フォトレジスト
117 ウエハ
118 開口部
119 プリントヘッド
121 マニホールド
123 開口部
125 開口部
127 開口部
160 プリンター
161 積層されたサブ層
162 噴出経路
164 インクジェットプレナム
166 回収管路
168 記録媒体
170 ガス再循環配管
172 プリントドラム
174 真空ポンプ
176 ガス流
178 ガス流
210 フィルター
220 ポンプ
250 シリコンウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体式のガターシステムを有するモノリシックなプリントヘッドを含んで成るインクジェットプリントヘッドであって、前記ガターシステムがインク流に近接する端壁を備えており、前記壁のインク方向に近接する側面が、前記プリントヘッドを通るインク方向に対してほぼ平行であるインクジェットプリントヘッド。
【請求項2】
前記壁が、ほぼ平行な両側面と、前記インクジェットプリントヘッドのインク噴出オリフィスの方に向いている露出縁部とを有する、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項3】
前記露出縁部が、前記壁の平行な両側面に対してほぼ垂直である、請求項2に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項4】
前記壁の少なくとも1つの側面が溝を有する、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項5】
前記溝がキャピラリーサイズのものである、請求項4に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項6】
約50〜300μmの深さと10〜50μmの幅を有する溝が前記壁に近接してガターの底部に存在する、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項7】
前記溝が、5〜25μmの深さおよび5〜25μmの幅を有する、請求項4に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項8】
前記壁が幅5〜25μmの露出縁部を有する、請求項2に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項9】
前記ガターが、前記壁に近接して前記ガターを通るインク移動方向に少なくとも1つのオリフィスを備えている、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項10】
前記ガターが、リブによって複数のインク輸送通路に分けられている、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項11】
前記リブが前記壁まで延びている、請求項10に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項12】
前記リブ間の通路が前記壁に近づくにつれて幅が狭くなっている、請求項11に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項13】
前記通路が、前記壁から離れている部分におけるよりも前記壁に近い通路の狭幅部分における深さがより浅い、請求項12に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項14】
前記通路が10〜100μmの幅を有する、請求項10に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項15】
前記インクジェットプリントヘッドが複数のインクジェットオリフィスを有し、前記通路が前記複数のオリフィスの成す平面内に位置する、請求項12に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項16】
前記インクジェットプリントヘッドが複数のインクジェットオリフィスを有し、狭くなっている通路が前記複数のオリフィスの成す平面内に位置する、請求項12に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項17】
前記プリントヘッドが、複数のシリコン微細加工部品から構成されたモノリシックな単一集成体を含む、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項18】
前記プリントヘッドが複数のインクジェットオリフィスを有し、前記壁が、当該壁を通過するインク流の間に位置するオープンスロットを含む、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項19】
壁に近接する通路の部分の深さが、壁に近接していない通路の部分の深さよりも10〜40%浅い、請求項13に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項20】
溝が、プリントヘッドの液滴出口に向かって前記壁の外側にある、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項21】
インクの噴出のための少なくとも1つのオリフィスとガターシステムとを含んで成るインクジェットプリントヘッドを用意し、
前記プリントヘッドから少なくとも1つのインクジェット流を噴出させること、
オリフィスからの前記少なくとも1つのインク流の方向を、前記インク流を横切る少なくとも1つの空気流によって、前記オリフィスからの前記少なくとも1つのインク流の方向を制御して、印刷に使用されるべきでないインク液滴を前記ガターに入れ、印刷に使用されるべき液滴を主クレームから排出させること、
を含み、前記インク方向に近接する壁の側面が前記プリントヘッドを通るインク方向にほぼ平行である、インクジェット印刷方法。
【請求項22】
前記壁が、前記インクジェットプリントヘッドのインク噴出オリフィスに向いている露出縁部に対してほぼ平行な両側面を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記露出縁部が、前記壁の平行な両側面に対してほぼ垂直である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記壁の少なくとも1つの側面が溝を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
約50〜300μmの深さと10〜50μmの幅を有する溝が前記壁に近接してガターの底部に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記プリントヘッドが、複数のシリコン微細加工部品から構成されたモノリシックな単一集成体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記プリントヘッドが、複数のインクジェットオリフィスを有し、前記壁が当該壁を通過するインク流の間に位置するオープンスロットを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記溝が、前記ガターシステム内に位置する少なくとも1つの回収孔と流体連通している、請求項20に記載のインクジェットプリントヘッド。
【請求項29】
前記ガターシステムがプリントヘッドを通るインク方向に対してほぼ平行であり、かつ、前記端壁から間隔を置いて位置するさらなる壁を含み、前記さらなる壁は溝を含む、請求項1に記載のインクジェットプリントヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図6I】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−532721(P2010−532721A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508372(P2010−508372)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/005882
【国際公開番号】WO2008/143788
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】