説明

インクジェット塗装方法

【課題】高低差が5mm以上の凹凸を有する立体物の基体上に任意の画像を形成するインクジェット塗装方法を提供する。
【解決手段】被塗物からインクジェットヘッドまでの距離が80mm以下で、ヘッドオリフィスのサイズが45μm〜200μmであり、インクを吐出するための圧力が0.005〜0.5MPaであることを特徴とするソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法、及び、前記インクジェットヘッドの周りをエアーカーテンで覆うことを特徴とするソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体上に画像を形成するインクジェット塗装方法に関し、ソレノイドバルブ式インクジェット方式によって凹凸を有する自動車・バス・車両等の車体面、建物の壁面や、家電、携帯電話等の立体物に任意の画像を形成するインクジェット塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット方式では、インクジェットヘッドと被塗物との距離が最長でも5mm程度であったので、高低差が5mm以上の凹凸を有する立体物の基体上に任意の画像を形成することは困難であった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−168583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高低差が5mm以上の凹凸を有する立体物の基体上に任意の画像を形成するインクジェット塗装方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、被塗物からインクジェットヘッドまでの距離を通常より大幅に広く取れるようにすることで上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明に従って、被塗物からインクジェットヘッドまでの距離が80mm以下で、ヘッドオリフィスのサイズが45μm〜200μmであり、インクを吐出するための圧力が0.005〜0.5MPaであることを特徴とするソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット塗装方法により、高低差が5mm以上の凹凸を有する自動車・バス・車両等の車体面、建物の壁面や、家電、携帯電話等の立体物の基体上に任意の画像を形成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】インクジェットヘッドの周りをエアーカーテンで覆うインクジェット塗装方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
紙等のメディアでは印字面は平面であり、そのような場合には、インクジェットヘッドからメディアまでの距離は通常数ミリで、近ければ近いほどよりインクの着弾精度が良くなり画像の精度は高くなる。しかしながら、本発明で塗装される被塗物は凹凸を有する立体物を想定しており、インクジェットヘッドから被塗物までの距離を十分とる必要がある。鋭意検討した結果、本発明の手法を用いることで80mm以下であれば、高精細な印字が可能になった。80mmを超える距離ではメイン粒子の着弾位置の精度が低下するとともに、メイン粒子とサテライト粒子の着弾位置のずれが生じ始め、画像が乱れる現象が生じる。
【0010】
インクジェットヘッドのオリフィスは液滴のサイズに相関があり、ヘッドオリフィスのサイズが45μm未満では空気抵抗の影響をかなり受けて飛行速度が失速し、着弾位置精度が低下してしまう。また、ヘッドオリフィスのサイズが200μmを超えると空気抵抗による失速はなくなるものの被塗物に着弾後の液滴径が大きくなってしまい画像解像度が低下してしまう。
【0011】
ソレノイドバルブ式インクジェットでは気体の圧力を利用し吐出を行うが、その圧力は0.005mPa〜0.5mPaであり、圧力が0.005mPa未満ではインクを押し出す力が弱く安定して吐出できなくなってしまう。逆に0.5mPaを超える圧力では、ソレノイドの動きが鈍くなりバルブの開閉がうまくいかなくなり吐出ができなくなったり、吐出できても吐出されたインクの伸びが長くメイン粒子とサテライト粒子の速度差が大きくなり画像が乱れ易くなる。
【0012】
吐出前のインクの粘度は2mPa・S〜100mPa・Sが望ましく、インク粘度が2mPa・S未満ではサテライト粒子が数多く発生し、100mPa・Sを超える場合では吐出できないことがある。また、吐出されたインクが被塗物に着弾するまでの飛行間でインクの揮発成分が大気中に拡散しインクの粘度が上昇することにより、着弾後のインクのタレ性や滲み性が抑えられ、着弾後の粘度は吐出前の粘度に対して100%〜200%に上昇することが望ましい。200%より高い場合は、吐出する前にインクジェットヘッドのオリフィスの所でもインクの乾燥が生じ、オリフィスを詰まらせる可能性が高くなってしまう。
【0013】
インクジェットヘッドから被塗物までの距離が通常の数倍から数十倍も離れているために、風の影響を受け易く、インクジェットヘッドの周りをエアーカーテンで覆うことにより着弾位置精度を上げることができ、インク中に揮発成分を有する場合では被塗物に着弾したインクの乾燥を促進する。インクジェットヘッドの周りをエアーカーテンで覆う構造の概略図を図1に示す。図1の構造ではインクジェットヘッドを2重の筒で覆い、その筒の間から均一にエアーを放出しエアーカーテンを形成している。エアー風速は1m/s〜5m/sになるように調節することが好ましい。
【0014】
インクジェットヘッドのオリフィス両端を結んだ直線が常に水平にすることにより、インクジェットヘッド内のインクの圧力分布を常に一定にすることで吐出の安定を図り、被塗物である立体物に印字された画像の再現性を向上することが出来る。
【0015】
着色剤として用いることができる顔料として、例えば、
ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、31、55、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153(ニトロン系ニッケル錯体イエロー)、154、155、166、168、180、181、185、
ピグメントオレンジ16、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71、
ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122(キナクリドンマゼンタ)、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、244、254、
ピグメントバイオレット19(キナクリドンバイオレット)、23、29、30、32、37、40、50、
ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:3、15:4、15:6、22、30、64、80、
ピグメントグリーン7(塩素化フタロシアニングリーン)、36(臭素化フタロシアニングリーン)、
ピグメントブラウン23、25、26、
ピグメントブラック7(カーボンブラック)、26、27、28、
酸化チタン、酸化鉄、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0016】
着色剤として顔料を用いる場合にはその体積平均粒子径は一般的には50〜500nmであることが好ましく、80〜300nmであることがより好ましい。
【0017】
また、着色剤として用いることができる染料として、例えば、
ダイアリライド・イエロー(Diarylide Yellow)、
アシド・イエロー(Acid Yellow)13、
ソルベント・イエロー(Solvent Yellow)13、
アシド・グリーン(Acid Green)73、
ソルベント・レッド(Solvent Red)125、
アシド・グリーン(Acid Green)73、
ソルベント・レッド(Solvent Red)25、
アシド・イエロー(Acid Yellow)166、
アシド・ブルー(Acid Blue)260、
アシド・ブルー(Acid Blue)229、
アシド・ブラック(Acid Black)52
等を挙げることができる。
【0018】
着色剤の配合量は使用する着色剤の種類等によって異なるが、一般的には0.5〜40質量%を占める量で用いる。着色剤として顔料を用いる場合にはプリンタヘッドのノズル詰まりが生じない程度に配合することが必要である。
【0019】
基体との密着性を確保するためにバインダー樹脂を含有することが出来る。バインダー樹脂として、例えば、架橋するタイプとしてアルキドメラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、紫外線硬化樹脂、ウレタン樹脂が挙げることができ、架橋しないタイプとしてセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボシキエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。
【0020】
これら樹脂は単独で用いることも2種以上を併用して用いることもできる。バインダー樹脂の種類については特には限定されないが、基体との密着性を確保するために、基体上に塗膜が形成されている場合、主たる樹脂系と同種のバインダー樹脂系を含有していることが好ましい。例えば、基体上に形成されている塗膜の主たる樹脂系が、アクリル樹脂である場合は、バインダー樹脂にアクリル樹脂を含有させた方がよい。基体上に形成されている塗膜の主たる樹脂系と同種のバインダー樹脂系の配合量は、インク中の全バインダー樹脂の5〜100質量%であることが好ましい。
【0021】
塗布された膜厚は1〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。膜厚が1μm未満であると隠蔽性が低下する不具合が生じ易くなり、20μmを超えると塗布時にタレが生じ易くなるので好ましくない。
【0022】
ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂の何れも用いることができる。ポリエステル樹脂は多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応により得られるものであり、多塩基酸としては、例えば、
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、9,10−アントラセンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸;
p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸;
コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸、テトラマー酸等の脂肪族不飽和多価カルボン酸;
ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸
等を例示することができる。また、多塩基酸と共に少量の一塩基酸を併用しても良い。一塩基酸類としては、例えば、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、t−ブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、3−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、t−ブチルナフタレンカルボン酸、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸等を例示することができる。
【0023】
ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価アルコール類として、例えば、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール類、
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のトリオール及びテトラオール類等の脂肪族多価アルコール類;
1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族多価アルコール類;
パラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール等の芳香族多価アルコール類
等を例示することができる。また、多価アルコールと共に少量の一価アルコールを併用しても良い。
【0024】
本発明においてはポリエステル樹脂の数平均分子量は1000〜50000の範囲であることが好ましく、更には2000〜20000の範囲であることがより好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が1000よりも小さい場合には基体に対し密着性が悪くなり、50000よりも大きい場合にはインクの糸曳き現象が発生し易く、インク吐出性が安定しない等の不都合が生ずることがあるので好ましくない。
【0025】
アクリル樹脂としては、通常用いられているラジカル重合性単量体を共重合させたものを用いることができる。ラジカル重合性単量体として、例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;
ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;
エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類
等を挙げることができる。
【0026】
また、酸や塩基等の官能基を含む重合性単量体も用いることができる。官能基含有単量体として、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノn−ブチル、イタコン酸モノn−ブチル、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)エチル、アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)ブチル、(メタ)アクリル酸(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;
メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有単量体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;
ブタジエン、イソプレン等のジエン類;
アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有アリル化合物;
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等の3級アミノ基含有単量体;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体類
等を挙げることができる。また、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の1分子中に2個以上の不飽和結合を有する単量体類等も使用できる。これらの単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
塩化ビニル樹脂として種々のものを使用することができ、例えば、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル、マレイン酸等の他のモノマーとの共重合樹脂を挙げることができる。好ましい塩化ビニル樹脂は塩化ビニルと酢酸ビニルとを共重合させた塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂であり、特に好ましくは分子量30,000以下の共重合樹脂を挙げることができる。
【0028】
上記以外の樹脂として、通常のインク組成物に用いられる樹脂は何れも使用することができる。例えば、アルキドメラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、紫外線硬化樹脂、ウレタン樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボシキエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂は単独で用いることもでき、他の樹脂と併用して用いることもできる。
【0029】
着色インク組成物に用いる樹脂の配合量は1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。樹脂の配合量が1質量%より少ない場合には下塗塗料塗膜との密着性が不足する恐れがあり、20質量%より多い場合にはインク組成物の粘度が高くなり吐出性が不安定になる等の不都合が生じることがあり、好ましくない。
【0030】
本発明で用いる着色インク組成物は顔料の分散性を向上するため顔料分散剤を使用することが望ましい。顔料分散剤として、ポリアミド系樹脂、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。それら分散剤の中でも1分子中に2個以上のアミド基を有し、且つ、数平均分子量が700〜15000であるポリエステルポリアミド樹脂を用いることが好ましい。この顔料分散剤の配合量は、使用する顔料の種類等により異なるが、通常はインク組成物の0.1〜15質量%となる量が好ましく、更には0.5〜10質量%となる量であることが顔料分散性を一層向上させるので好ましい。
【0031】
上記のポリエステルポリアミド樹脂は酸末端ポリエステル樹脂と1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリアミン化合物とを反応させることにより製造される。ポリエステルポリアミド樹脂として、例えば、ルーブリゾール社製のソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32600、ソルスパース33500、ソルスパース34750、ソルスパース35100、ソルスパース37500等や、ビックケミー社製のBYK9077等を挙げることができる。
【0032】
なお、ポリエステルポリアミド樹脂のアミド基が1分子中に2個未満の場合には、顔料分散性が低下するので好ましくない。また、数平均分子量が700未満の場合には顔料分散性が低下し、数平均分子量が15000を超える場合にはインク中への分散性が低下するので好ましくない。
【0033】
本発明で用いる着色インク組成物は通常の溶剤系インクに用いられている有機溶剤を使用する。有機溶剤として、例えば、
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、トリデシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール等のアルコール類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;
酢酸エチル、酢酸イソプロピレン、酢酸n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール等のケトン類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等の含窒素化合物;
トルエン、キシレン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、
等を挙げることができる。これらの有機溶剤については、印刷時のヘッドノズルの特性への適合性、安全性、乾燥性の観点から種々の溶剤が選択され、必要に応じて複数の溶剤を混合して用いることができる。
【0034】
本発明で用いるインクジェット用インク組成物は、有機溶剤としてグリコールエーテル類を含むことが好ましい。中でも、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートは、プリンタヘッド部分でのインクの再溶解性に優れるので特に好ましい。
【0035】
本発明で用いる着色インク組成物は、表面調整剤、光安定化剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤等の添加剤を含有していても良い。
【0036】
画像を形成するために使用するインクジェット方式により着色インクを塗布するプリンタヘッドは、従来から公知のソレノイドバルブ式プリンタヘッドを使用することができ、例えば、Printos社製P16シリーズ等が挙げられる。
【0037】
画像の形成方法については、着色インクを塗布して画像を形成し、画像を形成した後、着色インク中のバインダー樹脂の種類によって異なるが、例えば60〜200℃で強制乾燥させる。
【0038】
本発明においては、画像を形成する工程の後に、画像の色落ち防止、耐候性等を考慮して、更にその上にクリアーコートを形成する工程を有することが好ましい。この場合には画像を形成した後、着色インク中のバインダー樹脂の種類によって異なるが、例えば60〜200℃で強制乾燥させ、その後クリアー塗料を塗布し常温〜200℃で乾燥させる方法を採用しても、画像を形成した後、1〜60分間のインターバルをおいた後にクリアー塗料を塗布し、強制乾燥させる方法を採用してもよい。
【0039】
本発明で使用できる上塗りクリアー塗料は、従来から一般的に用いられているクリアー塗料であるが、アクリル共重合体、ヒンダードアミン基含有アクリル共重合体、加水分解性シリル基含有アクリル共重合体、含フッ素共重合体、加水分解性シリル基含有含フッ素共重合体、アルコキシシラン縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種をバインダーとして含有する上塗りクリアー塗料を用いることが高度の耐候性能を得る上で好ましい。
【0040】
なお、本発明で使用できる上塗りクリアー塗料は、透明性を失わない範囲で艶消し剤、体質顔料、着色顔料あるいはカラーマイカ、ウレタン系、アクリル系等の着色ビーズ、ウレタン系、アクリル系等の透明ビーズ、鱗片状黒鉛、鱗片状酸化鉄、メッキ処理ガラスフレーク、アルミ箔カラークリアー塗布切断品等の各種顔料類を含有することができる。
【0041】
更に、本発明で使用できる上塗りクリアー塗料は、必要に応じて各種の添加剤、改質剤を適宜混合して使用することができる。各種の添加剤、改質剤として、分散剤、沈殿防止剤、表面改質剤、紫外線吸収剤、光安定剤、水分捕捉剤、電導度調整剤、界面活性剤等を挙げることができる。これらの成分はバインダーの固形分100質量部に対し0.1〜10質量部の範囲で使用可能である。
【0042】
この上塗りクリアー塗料は、常法のエアースプレー、エアレススプレー、静電塗装、ロールコーター、フローコーター等の公知の塗装方法を使用して好適に塗布できる。またこの上塗りクリアーは、着色インクの塗膜が未乾燥状態でも、あるいは乾燥状態いずれの時でも塗り重ねることが可能である。
【0043】
更に、上塗りクリアー塗膜の鮮映性等の向上のためにクリアー塗装後に更にクリアー塗装する、いわゆるダブルクリアーを施してもよい。また本上塗りクリアーの乾燥条件は常温〜200℃の温度範囲にて3分〜24時間である。
【実施例】
【0044】
以下に本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。
【0045】
表1に示す配合量で含有する混合物をそれぞれ顔料分散機で練合して着色インク1〜3を調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
マゼンタ顔料:DIC株式会社製、ファストゲンスーパーマゼンタRG
ポリエステル樹脂:三井化学社製、アルマテックスP645
アクリル樹脂:DIC社製、アクリディックA−430−60
メラミン樹脂:三井化学社製、ユーバン125
UV樹脂: 日本合成化学社製、UV−7605B
開始剤:チバスペシャリティケミカルズ社製、Irgacure379
有機溶剤A:シクロヘキサノン
有機溶剤B:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
有機溶剤C:エクソンモービル社製、ソルベッソ150
有機溶剤D:ブチルアセテート
有機溶剤E:イソボロニルアクリレート
各インクは500メッシュのステンレスフィルターろ過を行った。
【0048】
(実施例1〜26及び比較例1〜3)
電着塗膜が設けられている鋼板上にアルキッドメラミン系塗料(大日本塗料社製:デリコン100)を塗布し、150℃で30分間乾燥させ、その後アクリルメラミン系塗料(大日本塗料社:アクローゼ#9900)を塗布し、150℃で30分間乾燥させ、平板状の基板を作製した。
【0049】
また、JIS G3316 波板1号に準ずる波板上にアクリルメラミン系塗料(大日本塗料社:アクローゼ#9900)を塗布し、150℃で30分間乾燥させ、凹凸が18mmの波板状の基板を作製した。
【0050】
実施例1〜26及び比較例1〜3において、Global inkjet Systems社製HPB−PR−M8を用い、ソレノイドバルブ式インクジェットヘッド(Printos社製;P16)を制御し、上記で得られたインク1〜3の吐出を行った。また、ロボットアーム(株式会社リバスト社製:RCS5000)にソレノイドバルブ式インクジェットヘッドを装着しインクジェットヘッドのオリフィス両端を結んだ直線が常に水平になるようにして、基板に印字を行なった。
【0051】
結果を表2〜4に示す。
【0052】
粘度の測定はレオメーター(AntonPaar社製;Physcia MCR301)を用いて25℃で粘度の測定を行なった。
【0053】
インクの飛行による粘度変化率を測定する方法は、ヘッドの吐出ノズルから9mlサンプル管の口の部分が所定の距離になるように配置し、そのサンプル管に約2ml貯まるまで1つのノズルからインクの吐出を行い、得られたインクの粘度を測定し、吐出前の粘度との比較を行なった。
【0054】
コンプレッサー(アネスト岩田社製;SLP−07ED)を使用し配管中にレギュレーターを取り付け所定の値に圧力を調整した。
【0055】
インクの塗膜化を促進させるために、基板にインクが着弾後、UVランプ(ウシオ電機社製;SP9−250UB)によるUV照射又はハロゲンランプ(三菱電機オスラム社製;JD110V60W/SP/K5E)にスライダック(東京理工社製:RSA−2)を用いて光量を調整可能な状態にして光を照射した。
【0056】
図1のようにインクジェットヘッドを2重の筒で覆い、その筒の間から均一にエアーを放出し、風速が1m/s〜5m/sになるように調節した。風速はYK−2005AH(佐藤商事)を用いて測定した。
【0057】
<着弾精度>
インクを吐出し、メイン粒子とサテライト粒子の着弾位置の差により評価を行った。
◎:メイン粒子中心部とサテライト粒子中心部の差が0.5mm未満。
○:メイン粒子中心部とサテライト粒子中心部の差が0.5mm以上〜1.0mm以下。
×:メイン粒子中心部とサテライト粒子中心部の差が1.0mm超過。
【0058】
<たれ性評価>
インクのたれ性については目視にて行った。
◎:べた印字面は均一で全くたれ無し。
○:べた印字面の縁にわずかにもり上がりが有り。
×:べた印字面の縁からスジ状のたれ有り。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
表2〜4から明らかなように、本発明により着弾精度が良く、たれ性も良好な画像が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明において画像形成の対象となる基体としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、バス、電車等の車体、建物の壁面、家電、携帯電話等が挙げられ、基体の水平面及び垂直面を問わず印刷して利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物からインクジェットヘッドまでの距離が80mm以下で、ヘッドオリフィスのサイズが45μm〜200μmであり、インクを吐出するための圧力が0.005〜0.5MPaであることを特徴とするソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法。
【請求項2】
吐出前の粘度が2mPa・S〜100mPa・Sであり、吐出されたインクが被塗物に着弾するまでの飛行で粘度が吐出前の100%〜200%となるインクジェットインクを用いる請求項1に記載のソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドの周りをエアーカーテンで覆う請求項1又は2に記載のソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドのオリフィス両端を結んだ直線が常に水平である請求項1〜3のいずれかに記載のソレノイドバルブ式インクジェット塗装方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−71240(P2012−71240A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217193(P2010−217193)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】