説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録媒体のカール状態を矯正しながらスタックさせるようにして生産性を向上させるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 インク滴で記録媒体に画像を形成する画像形成部3と、記録媒体を吸着搬送面73aで帯電吸着させながら搬送する帯電搬送ベルト73と、帯電搬送ベルト73からスタック排紙される記録媒体を受けてスタックするスタック部8と、を備え、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aは下向きとされ、吸着によって搬送させる記録媒体の後端側領域に対する吸着力を、先端側領域に対する吸着力よりも弱くする帯電制御部を含み、帯電搬送ベルト73によるスタック排紙時において記録媒体の後端側領域から先にスタック部8に受け渡すようにしてスタックされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプロセスを用いたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置において、図11に示すように、インクにより画像が記録された記録媒体Pは、特に塗工紙などの特殊用紙でない普通紙の場合、レーザー記録方式などに比べインクの水分量により記録面P1が膨張する。この膨張によって記録されていない側の面と記録されている側の面との表面積に差が発生することにより記録面P1側を外側にしてカールする。このカールの量は記録面P1のインクの量と比例関係にあり、インクの量が多い場合はカールの量が大きくなる。
【0003】
このように記録媒体がカールを起こすと、排紙の際に本来トレイ上にスタックされるべき記録媒体の位置が定まらず、正確にスタックされなかったり、排紙段階で先端の変形などを起因とするジャム状態が発生したりするので、このカールを防止するための提案がなされている。その一例として、記録媒体のインクの量などの記録状態に応じて記録媒体を所定時間停止させることで乾燥時間を調整して記録媒体の安定化を図った装置が知られている(特許文献等1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8―164601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような装置では、記録媒体の乾燥を促すために搬送を停止させていることにより、その余分な停止時間が生産性を悪化させることとなる問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために鑑み、記録媒体のカール状態を矯正しながらスタックさせるようにして生産性や品質などを向上させるインクジェット記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を記録媒体に向けて供給し、この記録媒体に画像を形成して所定の排紙方向に排紙する画像形成部と、この画像形成部から排紙される前記記録媒体を、帯電による吸着力によって吸着搬送面に吸着させながら前記排紙方向と同方向の第一搬送方向とこの第一搬送方向とは逆方向の第二搬送方向とに選択搬送可能とする帯電搬送ベルトと、この帯電搬送ベルトから前記第二搬送方向にスタック排紙される記録媒体を受けてスタックするスタック部と、を備え、前記帯電搬送ベルトにおける前記吸着搬送面は下向きとされ、前記吸着力によって前記第一搬送方向に搬送させる前記記録媒体における前記第一搬送方向の上流側の後端側領域に対する吸着力を、前記第一搬送方向の下流側の先端側領域に対する吸着力よりも弱くするための帯電制御部を含み、前記スタック部は前記帯電搬送ベルトの前記吸着搬送面よりも下側に位置され、前記帯電搬送ベルトによる前記第二搬送方向に対する前記記録媒体のスタック排紙時においてこの記録媒体の前記後端側領域から先に前記スタック部に受け渡すようにしてスタックされることを特徴とする。
【0008】
上記構成とすることにより、画像が形成された記録媒体(用紙)を、帯電搬送ベルトの吸着搬送面によって吸着しながらカールを矯正した状態で第一搬送方向又は第二搬送方向に搬送でき、これによって第一搬送方向では排出トレイに直接排紙したり、第二搬送方向ではスタック部に対してスタック排紙することができる。また、このスタック部では記録媒体のカールが矯正されているため、記録媒体のスタック位置が正確に決まり、用紙束を正確に整えることができる。しかも、この動作は搬送しながらの連続状態であるため生産を停止することがなく生産性を高めることができる。さらに、記録媒体のカールが矯正されているため、ジャムの発生も防止できる。また、記録媒体のスタック時には、吸着力の弱い後端側領域からスタック部に受け渡すようにしているため、帯電搬送ベルトの吸着搬送面から記録媒体が解離しやすく、記録媒体を傷めることなく品質の高いスタックを可能にするインクジェット記録装置を提供する。
【0009】
また、インクジェット記録装置において、前記帯電搬送ベルトによる前記第二搬送方向に対する前記記録媒体のスタック排紙時において前記帯電搬送ベルトの前記吸着搬送面に吸着されている前記後端側領域を、この帯電搬送ベルトから解離させるためのスタック分離爪を備えることを特徴とすることにより、帯電搬送ベルトの吸着搬送面から記録媒体の後端側領域を、確実に解離してスタック排紙することができるため、上記のような正確な用紙束を得ることができる品質の高いスタック性を、さらに良好にすることができる。
【0010】
また、インクジェット記録装置において、前記記録媒体が前記スタック部に受け渡される際、この記録媒体を前記スタック部に載せるように、該記録媒体を前記吸着搬送面から解離させるための押圧力を付与させる押圧力付与部を備えることを特徴とすることにより、帯電搬送ベルトの吸着搬送面における帯電による吸着力で記録媒体が吸着された状態であっても、その吸着搬送面から確実に記録媒体を解離させることができるため、スタック動作の連続性を損なうことなくスタックを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図。
【図2】図1のインクジェット記録装置の画像形成部の平面図。
【図3】帯電搬送ベルトの電界密度パターンの形成状態を示す図。
【図4】帯電搬送ベルトの帯電による吸着メカニズムを示す図。
【図5】帯電搬送ベルトの吸着搬送面の帯電形態を示す図とそれに吸着される用紙を示す図。
【図6】スタック部のスタック分離爪の作動状態を示す図。
【図7】スタック部の押圧付与部としての分離コロの作動状態を示す図。
【図8】制御部のブロック図。
【図9】制御部による制御のフローを示す図。
【図10】制御部による制御作動状態を示す図。
【図11】従来の記録媒体のカールが発生する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図、図2は図1のインクジェット記録装置の画像形成部の平面図である。
【0013】
このインクジェット記録装置1は、いわゆるインクジェットプロセスを用いたものであり、装置本体2の内部に、画像を形成するための画像形成部3、用紙搬送部4等を有し、装置本体2内に設けた給紙部5から記録媒体としての用紙Sを1枚ずつ給紙して、用紙搬送部4によって用紙Sを画像形成部3に供給する。
【0014】
この画像形成部3によって用紙Sにインクのインク液滴を吐出させて供給し、所要の画像(原稿画像に対応した画像)を形成(記録)した後、片面印刷の場合には、画像形成部3から排紙搬送部6とカール矯正部7を通じて画像形成部3から排紙された用紙Sを受けつつスタックするスタック部8に用紙Sをスタック排紙する。
【0015】
両面印刷の場合には、排紙搬送部6の途中から両面処理部9に送り込み、スイッチバック搬送を行って、再度、用紙搬送部4に給紙して両面に画像を形成した後、同様にスタック部8にスタック排紙するようになっている。
【0016】
画像形成部3は、図2にも示すように、ガイドロッド21及び図示しないガイドステーでキャリッジ(印字部)22をキャリッジ走査方向(主走査方向)に移動可能に保持し、主走査モータ23で駆動プーリ24と従動プーリ25間に架け渡したタイミングベルト26を介して主走査方向に移動走査する。
【0017】
そして、このキャリッジ22上に、夫々の色のインク液滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる複数のインクジェットヘッド27を搭載し、キャリッジ22を主走査方向に移動させ、用紙搬送部4によって用紙Sを用紙搬送方向(副走査方向)に送りながらインクジェットヘッド27からインク液滴を吐出させて画像形成を行うシャトル型としている。なお、ライン型ヘッドを用いることもできる。
【0018】
また、ガイドロット21は、上下に平行移動するようになっている。これによってキャリッジ22も上下に平行移動するようになっている。本実施の形態のようなインクジェット方式の記録装置においては、用紙Sとして封筒等の厚紙を用いて、これを通紙する場合には、封筒とキャリッジ22とが擦れたり汚れたりしないように、キャリッジ22の高さ(図1の上下)を変化させるようにしている。このキャリッジ22と用紙Sとの距離によって各種厚みの違う用紙Sの使用を可能にしている。
【0019】
用紙搬送部4は、図1にも示すように、下方の給紙部5から鉛直上方に給紙された用紙Sを略90度搬送方向を転換させて水平方向にし、画像形成部3に対向させて搬送するための駆動ローラである搬送ローラ41とテンションローラである従動ローラ42間に架け渡した無端状の駆動ベルト43と、この駆動ベルト43を画像形成部3の対向する領域でガイドする水平ガイド部材44とを備えている。
【0020】
この用紙搬送部4の駆動ベルト43は、図2にも示すように、副走査モータ45からタイミングベルト46及びタイミングローラ47を介して搬送ローラ41が回転されることで、用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0021】
排紙搬送部6は、図1にも示すように、用紙搬送部4からの用紙Sを受けて送り出す一対の搬送ローラ61及びこれと対向するガイドローラ62と、その搬送下流側に配設される一対の排紙ローラ63及びこれと対向するガイドローラ64とを備えている。また、用紙Sの搬送姿勢を水平に安定させるようにガイドしながら搬送する下ガイド部65及び上ガイド部66を備え、この下ガイド部65と上ガイド部66との間を、用紙Sが搬送される搬送路となしている。
【0022】
また、排紙搬送部6の搬送上流側には、用紙搬送部4からの用紙Sが搬送されたか否かを検知する入口検知センサ67が設けられている。また、排紙搬送部6の搬送下流側には、排紙搬送部6からの用紙Sが排出されたか否かを検知する出口検知センサ68が設けられている。
【0023】
カール矯正部7は、図1にも示すように、排紙搬送部6からの用紙Sを受けてさらに搬送するために、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に架け渡した無端状の帯電搬送ベルト73を備えている。この帯電搬送ベルト73に所定のテンションを付与するためのテンションローラ74を有している。
【0024】
駆動ローラ71は駆動モータ75で駆動プーリ76と従動プーリ77間に架け渡したタイミングベルト78を介して用紙搬送部4と排紙搬送部6における用紙搬送方向(排紙方向)と同方向の第一搬送方向X1と、この第一搬送方向X1とは逆方向の第二搬送方向X2に選択搬送可能に制御される。
【0025】
また、帯電搬送ベルト73における吸着搬送面73aは下向きとされ、かつその第一搬送方向X1の下流側が斜め上方に指向されるように設けられている。この帯電搬送ベルト73は、図3に示すように、表層がその表面に電荷を保持できる誘電体層73bと、裏層が導体層73cから構成される二層構造のものである。そして、誘電体層73bとしてはポリエステル系樹脂の誘電体フィルム、また、導体層73cとしては、ポリエステル系樹脂にカーボンを分散させた導体フィルムやが一例として挙げられる。なお、帯電搬送ベルト73の裏層の導体層73cはアルミ蒸着によって形成されるものでもよい。このように構成される帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに用紙Sを吸着させるために、帯電搬送ベルト73の外周面には電極ローラ10が接触しており、この電極ローラ10には、AC電源部としての交流電源部11から交流電圧が印加されるようになっている。また、帯電搬送ベルト73の導体層73cと接する従動ローラ72は接地されている。
【0026】
この帯電搬送ベルト73に電極ローラ10を介して交流電源部11から交流電圧が印加されると、帯電搬送ベルト73の誘電体層73b表面には、図3に示すように、電荷密度+σ、−σが交互に所定のピッチ(ストライプ状)で並んだ電界密度パターンが形成される。また、帯電搬送ベルト73の導体層73c裏面にも同様の電界密度パターンが180°ずれて形成される。このように形成された電界密度パターンによって帯電搬送ベルト73の表面近傍には不平等電界が形成される。
【0027】
この不平等電界によって図4に示すように、帯電搬送ベルト73の誘電体の矢印Fxの成分によって用紙Sは帯電搬送ベルト73に静電的に吸着されて保持され、帯電搬送ベルト73に連行されて搬送されることとなる。なお、図4における記号「+」、「−」は、誘電体層73b表面、導体層73c裏面に表れる電荷の概要を示している。なお、図1に戻り、帯電搬送ベルト73の表面の不平等電界の電荷を除去するための除電ブラシ73bを備えている。
【0028】
また、帯電搬送ベルト73の吸着力は、図5に示すように、第一搬送方向X1に搬送させる用紙Sにおける第一搬送方向X1の上流側の後端側領域S1に対する吸着力を、第一搬送方向X1の下流側の先端側領域S2に対する吸着力よりも弱くするように制御される。
【0029】
また、図1や図6に示すように、張架された帯電搬送ベルト73の下側の吸着搬送面73aにおける第一搬送方向X1の上流側には、排紙搬送部6の出口から排出される用紙Sの先端を最先に吸着搬送面73aに接触させるように誘導させたり、帯電搬送ベルト73によって第二搬送方向X2に逆搬送(スタック排紙)させる際に、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに吸着されている用紙Sを、この帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aから解離させるようにするスタック分離爪12を備えている。このスタック分離爪12は回転軸12aを中心に、駆動源としての揺動モータ12bによって揺動駆動される。
【0030】
このスタック分離爪12は、図6に示すように、その先端12cが帯電搬送ベルト73から離れ、先端12cと帯電搬送ベルト73との間に隙間が生じる位置(図6(b)参照)と、先端12cが帯電搬送ベルト73に接触若しくは近接し、吸着搬送面73aと用紙Sとの間に、その先端12cが入り込む位置(図6(c)参照)とに揺動制御される。
【0031】
また、図1に戻り、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aにおける第一搬送方向X1の下流側には、吸着搬送面73aによって吸着搬送される用紙Sを後述する排出トレイ14にストレート排紙させるために、用紙Sを吸着搬送面73aから解離させるために、先端が駆動ローラ71に巻かれている部分の帯電搬送ベルト73に近接若しくは接触し、吸着搬送面73aと用紙Sとの間に、その先端が入り込むようにした排紙分離爪13を備えている。また、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに吸着される用紙Sの有無を検知する用紙センサ79が備えられる。
【0032】
スタック部8は、図1に示すように、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aよりも下側に位置され、帯電搬送ベルト73による第二搬送方向X2に対する用紙Sのスタック排紙時において、この用紙Sの第一搬送方向X1の上流側における後端側領域S1(図6参照)から先に受けるように配設させている。
【0033】
スタック部8は、スタックトレイ81が用紙Sの第一搬送方向X1の下流側に向かって斜め上方に傾斜して、帯電搬送ベルト73によってスタック排紙された用紙Sを受ける用紙受け面82と、この用紙受け面82の基端から一体的に上方に延出され、用紙受け面82の上にスタック排紙された用紙Sの後端側領域S1(図6(c)参照)の端部を受け止めて、この端部を揃えるエンドフェンス83とを備えている。
【0034】
このエンドフェンス83に、例えばステイプル処理が可能となるように、ステイプラ84を配設することもできる。このために用紙Sがエンドフェンス83に当接した状態を検知するための用紙端検知センサ88を備えている。
【0035】
また、スタックトレイ81に順次スタックされ、束状となった用紙束ST(図10(e)参照)の用紙幅(用紙搬送方向と直交)を揃えることもできる。すなわち、用紙幅方向の両側に、一対のサイドフェンス85が配設されている。このサイドフェンス85は、用紙幅方向における相互間隔が拡幅又は縮幅するように同期して接離移動可能に配設されている。そして、このサイドフェンス85の移動制御によって用紙束STの整合が可能となる。
【0036】
また、スタックトレイ81には、用紙束STを排出トレイ15上に排出さるための用紙束搬送ベルト86が設けられている。この用紙束搬送ベルト86は駆動ローラ86aと従動ローラ86bとの間に掛け渡されている。
【0037】
また、スタックトレイ81の用紙受け面82の上に排紙された用紙Sがエンドフェンス83に当接した状態で、図1や図7に示すように、帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに吸着されている用紙Sを、該吸着搬送面73aから強制的に解離させるための押圧力付与部としての分離コロ87がカール矯正部7に設けられる。
【0038】
この分離コロ87は、用紙Sに直接接触して、その用紙Sを下方へ押さえるよう当接自在に設けられる。そして、分離コロ87はアーム87aを介して回転軸87bを中心に、駆動源としての揺動モータ87cによって振り子運動が与えられ、スタック排紙される用紙Sごとに用紙受け面82上に落とし込みさせている。このため帯電搬送ベルト73は振り子運動する分離コロ87と干渉しないように左右二体に分離させた形態としている。
【0039】
図8は、本実施の形態に係るインクジェット記録装置1の電気的制御系を示すブロック図である。この図8に示すように、各電気的駆動を制御するCPU等の制御部15を備えており、この制御部15としては、図示しないマイコンが使用される。このマイコンの構成は周知であるため詳しい説明は省略するが、I/Oポートと、CPU、ROM及びRAMを備えて、これらがバスで接続されたものである。記憶部として機能するROM及びRAMのうち、ROMには演算等に必要な制御のための公知の各種プログラムが格納されている。
【0040】
この制御部15には、画像形成動作を開始させるコピースタートボタンや用紙Sの種類を設定するボタン等が配置された操作部15aと、上述の排紙搬送部6における入口検知センサ67、出口検知センサ68と、カール矯正部7における用紙検知センサ79と、スタック部8における用紙端検知センサ88とが接続されている。
【0041】
また、制御部15には、駆動系としての画像形成部3における主走査モータ23と、用紙搬送部4における副走査モータ45と、カール矯正部7における駆動モータ75などが接続される。さらに、図5に示すように、カール矯正部7における帯電搬送ベルト73による用紙Sに対する吸着力を与え、かつその吸着力を、第一搬送方向X1に搬送させる用紙Sにおける第一搬送方向X1の上流側の後端側領域S1に対する吸着力を、第一搬送方向の下流側の先端側領域S2に対する吸着力よりも弱くするための帯電制御部15bを含んで構成される。なお、制御部15には、上述したセンサ類の他、画像形成部3や給紙部5などを駆動する駆動手段等が接続されているが、図8においては、これらの図示を省略する。
【0042】
この制御部15による制御の流れを図9に示すフローと、図10に示す動作状態に基づいて説明する。動作開始と同時に画像情報、用紙情報、環境情報などを入手する(ステップS101)。この内容に従い、用紙長さ、用紙方向、カール量の予想などを行いカール矯正部7の帯電搬送ベルト73の帯電条件を設定する。そして、図1に示す給紙部5から送られる用紙Sが画像形成部3に達すると、図2に示すキャリッジ22(インクジェットヘッド27)が主走査方向に、用紙Sが副走査方向に移動制御されることにより、用紙Sに画像が形成されながら排紙搬送部6に送られる。その後、排紙搬送部6に設けられる入口検知センサ67からの信号によって、用紙Sが排紙搬送部6に搬送されたか否かを確認する(ステップS102)。
【0043】
この入口検知センサ67の信号と同時に、排紙搬送部6の図示しない搬送モータによって用紙Sの搬送を開始する(ステップS103)。制御部15は用紙Sの搬送開始と同時に、帯電条件に従い帯電搬送ベルト73に対して帯電制御部15bによる帯電を行いながら帯電搬送ベルト73を駆動モータ75によって第一搬送方向X1である時計周りに動作させる(ステップS104)。
【0044】
さらに、排紙搬送部6からの用紙Sはスタック分離爪12が図6(b)に示すごとく、スタック分離爪12の先端12cが帯電搬送ベルト73から離れ、スタック分離爪12の先端12cと帯電搬送ベルト73との間に隙間が生じるように、揺動モータ12bによって作動制御される(ステップS105)。そして、スタック分離爪12の先端12cと帯電搬送ベルト73との間を通過しながらスタック分離爪12に誘導されて搬送される用紙Sは、その搬送方向先端側から帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに順次吸着されて搬送される。
【0045】
この帯電搬送ベルト73における交流電荷のチャージ方法での用紙Sに対する吸着力は、図5に示すように、第一搬送方向X1に搬送させる用紙Sにおける上流側の後端側領域S1に対する吸着力を、第一搬送方向X1の下流側の先端側領域S2に対する吸着力よりも弱くするように帯電制御部15bによって制御している。この制御方法としては、電圧可変、或いは帯電周期の可変で可能である。
【0046】
この帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに対して用紙Sが吸着された状態で、第一搬送方向X1に搬送される。この時、入口検知センサ67の信号を読み取り、用紙Sがスタック分離爪12を抜けるまでの時間T1をカウントする(ステップS106)。その時間T1が予め設定される時間Tに達すると、スタック分離爪12を、図6(c)に示すように揺動モータ12bによって作動制御させ、帯電搬送ベルト73から用紙Sを分離する準備を行う(ステップS107)。
【0047】
つぎに、帯電搬送ベルト73の回転方向を逆転させ(ステップS108)、第一搬送方向X1とは逆方向である第二搬送方向X2に用紙Sを吸着搬送するようにしてスタック部8に用紙Sを導く、この吸着搬送時には用紙Sの後端(後端側領域S1)は吸着力が低く抑えているため、比較的容易に分離可能で、直ちにスタック分離爪12に誘導された用紙Sは、カールが矯正されたままで、その後端(後端側領域S1)から先にスタック部8のスタックトレイ81の入口に導入されて受け渡されることとなる。
【0048】
この受け渡し時には、スタックトレイ81の用紙端検知センサ88がモニタされており(ステップS109)、用紙Sがスタックトレイ81のエンドフェンス83に突き当たったところで、揺動モータ87cを起動させ、分離コロ87を揺動制御し、この分離コロ87を帯電搬送ベルト73の吸着搬送面73aに吸着される用紙Sに接触させ、その用紙Sを下方へ押さえるようして、スタック排紙される用紙Sごとにスタックトレイ81の用紙受け面82上に落とし込みさせている(ステップS110)。
【0049】
つぎに、搬送帯電ベルト73に用紙Sが残留していないかをセンシングする用紙センサ79で確認する(ステップS111)。スタックトレイ81の用紙受け面82上に用紙Sが順次スタックされて所定の用紙束STとなった状態で、サイドフェンス85を作動させて用紙束STを用紙幅方向で整合させる(ステップS112)。さらに、除電ブラシ73bによって搬送帯電ベルト73の除電処理をして搬送帯電ベルト73を停止(ステップS113)させて一つの処理を終了させる。
【0050】
なお、用紙Sを排出トレイ14上にストレート排紙させる場合は、帯電搬送ベルト73を第一搬送方向X1に移動させ、吸着搬送面73aに吸着される用紙Sを搬送すると、排紙分離爪13に達した用紙Sは吸着搬送面73aから排紙分離爪13の位置で解離されることにより、排出トレイ14上にスタックされることとなる。
【0051】
本発明は、上述した実施の形態に限定されず、その用紙を逸脱しない範囲内において、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
3 画像形成部
8 スタック部
12 スタック分離爪
15b 帯電制御部
73 帯電搬送ベルト
73a 吸着搬送面
87 分離コロ(押圧力付与部)
S 用紙(記録媒体)
S1 後端側領域
S2 先端側領域
X1 第一搬送方向
X2 第二搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を記録媒体に向けて供給し、この記録媒体に画像を形成して所定の排紙方向に排紙する画像形成部と、
この画像形成部から排紙される前記記録媒体を、帯電による吸着力によって吸着搬送面に吸着させながら前記排紙方向と同方向の第一搬送方向とこの第一搬送方向とは逆方向の第二搬送方向とに選択搬送可能とする帯電搬送ベルトと、
この帯電搬送ベルトから前記第二搬送方向にスタック排紙される記録媒体を受けてスタックするスタック部と、
を備え、
前記帯電搬送ベルトにおける前記吸着搬送面は下向きとされ、前記吸着力によって前記第一搬送方向に搬送させる前記記録媒体における前記第一搬送方向の上流側の後端側領域に対する吸着力を、前記第一搬送方向の下流側の先端側領域に対する吸着力よりも弱くするための帯電制御部を含み、
前記スタック部は前記帯電搬送ベルトの前記吸着搬送面よりも下側に位置され、前記帯電搬送ベルトによる前記第二搬送方向に対する前記記録媒体のスタック排紙時においてこの記録媒体の前記後端側領域から先に前記スタック部に受け渡すようにしてスタックされることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記帯電搬送ベルトによる前記第二搬送方向に対する前記記録媒体のスタック排紙時において前記帯電搬送ベルトの前記吸着搬送面に吸着されている前記後端側領域を、この帯電搬送ベルトから解離させるためのスタック分離爪を備える請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録媒体が前記スタック部に受け渡される際、この記録媒体を前記スタック部に載せるように、該記録媒体を前記吸着搬送面から解離させるための押圧力を付与させる押圧力付与部を備える請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−56131(P2012−56131A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199679(P2010−199679)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】