説明

インスタントライス及びその製造方法

【課題】原料米を糯米や低アミロース米に限定することなく、これら以外の粳米であっても食感が良く、煮崩れがなく外観に優れ、かつ、従来に比して湯戻し時間が短いインスタントライス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】無浸漬の原料米に対し加圧蒸煮処理を行う工程と、該加圧蒸煮処理した米粒をアルファ化する炊飯工程と、該炊飯工程後の米粒を比較的低温で緩慢に乾燥を行う一次乾燥工程と、乾燥した米粒を解す単粒化工程と、単粒化した米粒を比較的高温で乾燥する膨化乾燥工程と、を順次設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等で加熱調理することなく湯又は冷水でも簡単に喫食可能となる、外観及び食感の良いインスタントライス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインスタントライスは、生米を炊飯等でアルファ化した後、熱風乾燥等によって得られるが、粘りに欠けたり、形が崩れたり、復元に20分以上の時間を要したりしていた。
【0003】
それを解決すべく、糯(もち)米又は糯米に近い低アミロース米を用いたインスタントライス(即席米飯)の製造方法が特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−65077
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように糯米や低アミロース米を用いた場合、浸漬時の吸水は比較的時間はかかるものの米粒内部まで十分水分が浸透するため、アルファ化が十分行われるとともに復元時においても、より短時間に喫食可能となり、さらに、低アミロース米故の粘りのある食感を有している。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のインスタントライスの製造方法においては、糯米又は糯米に近い低アミロース米を用いたインスタントライスの製造方法であって、これら以外の粳(うるち)米では実施が困難なものであった。本発明はこの点にかんがみ、原料米を糯米や低アミロース米に限定することなく、これら以外の粳米であっても食感が良く、煮崩れがなく外観に優れ、かつ、従来に比して復元時間が短いインスタントライス及びその製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、無浸漬の原料米に対し加圧蒸煮処理を行う工程と、該加圧蒸煮処理した米粒をアルファ化する炊飯工程と、該炊飯工程後の米粒を比較的低温で緩慢に乾燥を行う一次乾燥工程と、乾燥した米粒を解す単粒化工程と、単粒化した米粒を比較的高温で乾燥する膨化乾燥工程と、を順次設けるという技術的手段を講じた。
【0008】
前記加圧蒸煮工程において、0.05MPa〜0.3MPaの加圧状態で60秒〜180秒間加圧蒸煮処理を行うとよい。
【0009】
前記一次乾燥工程において、80℃〜100℃の熱風で米粒の含水率が10%〜20%の範囲となるよう乾燥するとよい。
【0010】
前記膨化乾燥工程において、150℃〜250℃の熱風で米粒の含水率が10%以下となるよう乾燥するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインスタントライスの製造方法によると、原料米粒を加圧蒸煮してその内部を多孔状に形成することにより、炊飯時に米粒中心部までの吸水及び熱の伝達が早く行われるためアルファ化が十分行われ、従来のような浸漬工程が不要となり、大量の洗米水やその排水処理が不要となる。また、湯や水で戻す際の吸水性も向上するため復元時間が短縮される。さらに、前記加圧蒸煮工程により米粒表面に薄いアルファ化層が形成されるため、炊飯時に煮崩れがしにくく外観良く仕上がり、喫食時に粒感もあり、また、急速な吸水によっても米粒に亀裂が生じにくい。加えて、膨化乾燥工程において米粒を膨化させることにより米粒がふっくら膨らむとともに、光の乱反射により米粒がいっそう白く見えることで外観が一段と改善されるとともに湯戻し時の吸水性も更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のインスタントライスの製造方法における製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明における原料は精白米とし、粳米、糯米、低アミロース米、高アミロース米、短粒種、中粒種、長粒種のいずれでも良く、また、品種の制約もないが、加圧蒸煮工程において米粒内部が多孔状となりやすいように、原料米の含水率は12%〜15%であることが好ましい。
【0015】
本発明における原料米は、洗米等を行う前の生米のほかに、いわゆる無洗米でもよい。また、原料米の含水率は12%〜15%が好ましく、この範囲外の場合は水分添加又は乾燥することにより範囲内となるよう水分調整するとよい。
【0016】
ステップ1(加圧蒸煮工程)
この工程は、原料米を中心部までアルファ化させることなく米粒表面のみをアルファ化させる加圧蒸煮処理を行う。この処理を行う装置としては従来公知の蒸気調理機でよく、例えば、密閉状の加圧加熱槽内に米粒を搬送するためのネットコンベアを横設するとともに、該ネットコンベアの搬送始端側上方には原料供給管を、同搬送終端側下方には原料排出管をそれぞれ臨ませ、該原料供給管及び原料排出管には加圧加熱槽内を気密状に保持するために複数の弁が設けられる。さらに、該加圧加熱槽には加圧加熱蒸気の供給管や排水管が接続される。
【0017】
次に、前記加圧蒸煮工程における作用を説明する。前記加圧加熱槽内に加圧加熱蒸気供給管から加圧した飽和蒸気を供給し、槽内の圧力が0.05MPa〜0.3MPaの範囲内の任意設定値となるよう調節する。この際の槽内温度は約110℃〜145℃の状態となっている。次いで、含水率14%の原料米を洗浄・浸漬することなく原料供給管から投入し、槽内のネットコンベア上に落下させる。原料米はネットコンベアによって搬送される間に加圧蒸煮処理される。処理時間は、60秒〜180秒の範囲の任意設定時間となるようネットコンベアの搬送速度を調節することによって行う。
【0018】
上記加圧蒸煮処理により、米粒表層の0.1mm〜0.5mmがアルファ化される一方で、米粒中心部はアルファ化されることなく多孔質を形成する。加圧蒸煮処理を終えた米粒は、原料米排出管から排出され次工程に搬送される。
【0019】
ステップ2(単粒化工程)
この工程は、前工程の加圧蒸煮工程で処理された、表層をアルファ化し、中心部を多孔状となした米粒を単粒化するための工程である。単粒化装置としては、例えば特開20005−49060記載のように、前工程から移送された米粒をネットコンベア上で搬送する間に該ネットコンベアの上方又は下方からの通風により冷ますとともに、ネットコンベアの搬送方向に複数設けた回転ピン等による解し手段によって行うとよい。
【0020】
この工程により、ネットコンベア上の米粒は常温による通風を60秒〜180秒間受けて表面の粗熱が取れるとともに、米粒同士の結着力を弱めて単粒化され、次工程へのハンドリングが向上する。
なお、加圧蒸煮処理によって米粒が互いに結着して塊状になっている場合は、ネットコンベアの終端部に多数のピンを植設したロールを組み合わせてなる解砕装置によって単粒化を行うとよい。また、ハンドリング上、特に問題がなければ本工程は省略することができる。
【0021】
ステップ3(炊飯工程)
この工程は、単粒化された米粒を炊飯して完全にアルファ化する工程である。炊飯装置としてはスチーム炊飯や釜炊飯など公知の炊飯手段から適宜選択できる。前工程で単粒化された米粒は、ベルトコンベア等で搬送され、例えば、配米されて複数の炊飯釜に順次投入され、次いで適量の炊飯水が供給されて炊飯が行われる。この際、インスタントライスのアイテムに応じた硬さに仕上がるよう加水量を調整し均一な炊飯を行う。
なお、炊き上がったときのご飯の水分が60%以下にすることで、後工程での米粒の単粒化を容易に行うことができる。
【0022】
ステップ4(一次乾燥工程)
この工程は、前工程で炊き上がった含水率50%〜60%の米飯を、次工程の膨化乾燥に適した含水率10%〜20%にするための工程である。乾燥方法は問わないが、食感を低下させないため、80℃〜100℃の比較的低温の熱風で約60分間かけて乾燥処理することが肝要である。
【0023】
前記炊飯工程から前記一次乾燥工程に米飯を搬送する場合、周知のコンベア等で搬送することもできるが、水槽内に設けたコンベアを使った水輸送(特開2000−41850参照)を行ってもよい。この場合、水中で輸送しながら米飯の単粒化が行える。
【0024】
ステップ5(単粒化工程)
この工程は、次工程の膨化乾燥工程における膨化処理が効果的に行えるように米粒同士が結着しないように単粒化させる工程である。
【0025】
単粒化処理は、ネットコンベア上の米粒を、多数のピンを植設してなるピンローラで解すなど、従来公知の方法を適宜採用する。
なお、ステップ1における加圧蒸煮処理により、米粒表面にアルファ化層が形成されているため、該単粒化工程における単粒化が比較的容易である。
【0026】
ステップ6(膨化乾燥工程)
この工程は米粒内部に空洞を形成させる工程である。前工程で含水率が15%程度に乾燥され、かつ、単粒化された米粒をネットコンベア等で搬送する間に150℃〜250℃の比較的高温の熱風が噴射される。通風時間は20秒〜30秒 間で、風速30m/s〜40m/s、静圧400Pa〜600Paの条件下で米粒群は流動状態を呈しながら均一に膨化処理が行われる。
上記膨化処理により、米粒全体が膨らんで外観見映えが向上するとともに、米粒内部に空洞が形成されて、より一層吸水性がよくなる。
【0027】
膨化乾燥工程を終えた米粒は含水率10%以下となるが、さらに、ネットコンベアで搬送しながら常温で保冷することで含水率5%〜8%となし、水分活性0.45以下の保存性の良いインスタントライスに仕上げる。
【0028】
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
実施例1
広島県産のヒノヒカリ精米(搗精歩留まり90%、水分13%)を、洗米及び浸漬することなく、120℃で60秒間加圧蒸煮処理し、表層部にアルファ化層を形成した。このときの水分は16%であった。次いで、40分間で通常の炊飯器による炊飯を行い、米粒の水分が54%の炊飯米を得た。次に、この炊飯米に80℃の熱風を35分間通風して水分11%となるよう一次乾燥を行った後、ピンローラによる解し作用を施すとともに膨化乾燥を行った。炉内圧500Paにおいて、風速34m/s、温度235℃の熱風を25秒間浴びせ、米粒を流動化させながら水分5.2%まで乾燥させた。このときの嵩比重が0.308であり、膨化乾燥による膨化度は2.03倍となった。
【0030】
実施例2
実施例1と同じ原料精米を用いて、お粥タイプのインスタントライスを製造する場合、実施例1と同様に加圧蒸煮処理した米粒を、ご飯の水分が60%となるよう炊飯水を加えて炊飯し、次いで、低温の一次乾燥を行うのであるが、水分が30%前後の時点で、ロール間隙が0.5mmの一対のロール間に前記米粒を順次通して圧ぺん処理を行う。このときロールで圧ぺんされた後に米粒が復元するような水分で圧ぺんすることが肝要である。圧ぺん処理後に、再度一次乾燥を継続し、膨化乾燥に適した水分11%まで乾燥する。その後、実施例1と同様に膨化乾燥を行い、水分4.6%、嵩比重0.286、膨化度2.19のインスタントライスを得た。
【0031】
実施例1及び実施例2で得られたインスタントライスと膨化処理を行わなかったインスタントライスとの復元テストの結果を表1に示す。試料はいずれも100gであり、それぞれスタンドパック容器内に160mlの水及び熱湯を加えて復元した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の復元テストの結果からわかるように、実施例1に係るインスタントライスは水を加えて15分、お湯を加えて8分で粒感があって良好な食味に復元した。また、お粥の場合はお湯を加えて5分で復元し、膨化処理を行わない場合に比して水漬けの場合6分の1、湯漬けの場合3分の1の時間でそれぞれ復元できた。
なお、実施例2のお粥タイプの場合、実際にお粥として食するには約300mlの水又は湯を加えるが、この場合の復元時間は、実施例2で示す時間の各半分程度になる。





























【特許請求の範囲】
【請求項1】
無浸漬の原料米に対し加圧蒸煮処理を行う工程と、該加圧蒸煮処理した米粒をアルファ化する炊飯工程と、該炊飯工程後の米粒を比較的低温で緩慢に乾燥を行う一次乾燥工程と、乾燥した米粒を解す単粒化工程と、単粒化した米粒を比較的高温で乾燥する膨化乾燥工程と、を順次設けることを特徴とするインスタントライスの製造方法。
【請求項2】
上記加圧蒸煮工程は、0.05MPa〜0.3MPaの加圧状態で60秒〜180秒間加圧蒸煮処理を行ってなる請求項1のインスタントライスの製造方法。
【請求項3】
上記一次乾燥工程は、80℃〜100℃の熱風で米粒の含水率が10%〜20%の範囲となるよう乾燥してなる請求項1又は2のインスタントライスの製造方法。
【請求項4】
上記膨化乾燥工程は、150℃〜250℃の熱風で米粒の含水率が10%以下となるよう乾燥してなる請求項1、2又は3のインスタントライスの製造方法。
【請求項5】
上記請求項1乃至5いずれかの方法によって得られたインスタントライス。











【図1】
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【公開番号】特開2013−51889(P2013−51889A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190292(P2011−190292)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】