説明

インタークーラー

【課題】インタークーラー内における凝縮水の発生を確実に抑制する。
【解決手段】吸気ガス入口11を有する入口側ヘッダー12と、吸気ガス出口13を有する出口側ヘッダー14と、入口側ヘッダー12と出口側ヘッダー14との間に配設された熱交換用のコア部15とを備えたインタークーラー10において、吸気ガス中の水蒸気が入口側ヘッダー12よりも下流のコア部15内で凝縮するのを抑制すべく入口側ヘッダー12内の吸気ガスを加熱するヒーター25を有する加熱機構24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付エンジンにおいて用いられるインタークーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力向上を図る目的からエンジンの吸気系に過給機を装着する過給機付エンジンにおいては、過給機で過給された吸気ガス(圧縮空気)が高温となるため、この高温の吸気ガスをエンジンの燃焼室にそのまま供給してしまうと、充填効率の低下やノッキング(ガソリンエンジンの場合)の問題が生じ得る。
【0003】
そのため、過給機付エンジンにおいては、過給機により過給された吸気ガスを冷却するためのインタークーラーをエンジンの吸気系に装着するようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
インタークーラーは、例えば、吸気ガス入口を有する入口側ヘッダーと、吸気ガス出口を有する出口側ヘッダーと、これら入口側ヘッダーと出口側ヘッダーとの間に配設された熱交換用のコア部とから主に構成される。
【0005】
トラック用のエンジンの場合は、インタークーラーがエンジンの前方に搭載されており、走行による空気流或いはクーリングファンの吸い込みによる空気流がインタークーラーに流れ込むことにより、過給機による過給で高温となった吸気ガスが冷やされる。また、乗用車のエンジンにおいても搭載位置は若干異なるものの、インタークーラーの前面に走行による空気流があたるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−275982号公報
【特許文献2】特開2010−223508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エンジンの排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の排出量を低減するために、エンジンの排気の一部を吸気に還流するEGR(排気再循環)が有効であり、NOxの排出量をより一層低減するため、EGR率を高める機運がある。その際、従来の高圧EGR(HP−EGR;High Pressure EGR)では、過給機のタービンへ流入する排気ガスの流量が減り、実質的に過給しなくなる。その結果、ブースト圧が上がらず、スモークが悪化するという現象が顕著となる。そのため、図3に示すような低圧EGR(LP−EGR;Low Pressure EGR)が用いられ始めている。
【0008】
低圧EGRを用いると、排気ガスがインタークーラーを通過することとなる。低負荷運転の場合、排気ガスの温度が比較的低いため、排気ガスがインタークーラー内で露点(約45℃)以下となり、排気ガス中の水蒸気が水(凝縮水)となることがある。この際、排気ガス中のNOx、SOx(硫黄酸化物)が水に溶け込み、水溶液(硝酸水溶液、硫酸水溶液)となる。これらの水溶液は、強酸性であり、インタークーラー(一般的にアルミ製)を溶かしてしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、インタークーラー内における凝縮水の発生を確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明は、吸気ガス入口を有する入口側ヘッダーと、吸気ガス出口を有する出口側ヘッダーと、前記入口側ヘッダーと前記出口側ヘッダーとの間に配設された熱交換用のコア部とを備えたインタークーラーにおいて、吸気ガス中の水蒸気が前記入口側ヘッダーよりも下流の前記コア部内で凝縮するのを抑制すべく前記入口側ヘッダー内の吸気ガスを加熱するヒーターを有する加熱機構を備えたものである。
【0011】
前記ヒーターは、前記入口側ヘッダー内に設けられ、前記入口側ヘッダー内の吸気ガスを加熱媒体により加熱する熱交換器であっても良い。
【0012】
前記ヒーターは、前記入口側ヘッダー内に配設された電気ヒーターであっても良い。
【0013】
前記加熱機構は、前記出口側ヘッダーに設けられ、前記出口側ヘッダー内の吸気ガスの温度を検出する温度センサーをさらに有しても良い。
【0014】
前記加熱機構は、前記温度センサーの検出値に応じて前記ヒーターの作動と非作動とを切り替えるコントローラーをさらに有しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インタークーラー内における凝縮水の発生を確実に抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るインタークーラーを示し、(a)は背面図であり、(b)は(a)のIb−Ib線断面図であり、(c)は(b)のIc−Ic線断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るインタークーラーを示し、(a)は背面図であり、(b)は(a)のIIb−IIb線断面図であり、(c)は(b)のIIc−IIc線断面図である。
【図3】インタークーラーが用いられる過給機付エンジンの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
先ず、本実施形態に係るインタークーラーが用いられる過給機付エンジンについて図3を用いて説明する。
【0019】
図3に示すように、過給機付エンジンは、エンジン(例えば、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等)1と、エンジン1に吸気を供給する吸気マニホールド2及び吸気管3と、エンジン1からの排気を排出する排気マニホールド4及び排気管5と、エンジン1に供給する吸気を昇圧するための過給機(ターボチャージャー)6と、エンジン1の排気系(排気マニホールド4、排気管5)の排気の一部を吸気系(吸気マニホールド2、吸気管3)に戻すEGRシステム7とを備える。
【0020】
過給機6は、排気管5に配設されたタービン6aと、吸気管3に配設されたコンプレッサー6bとを有する。タービン6aよりも下流の排気管5には、前段のDOC(酸化触媒)8aと後段のDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)8bとを有する後処理装置8が設けられる。コンプレッサー6bよりも上流の吸気管3には、上流側から順にエアフローメーター9aとサージタンク9bとスロットルバルブ9cとが設けられ、コンプレッサー6bよりも下流の吸気管3には、空冷式のインタークーラー10が設けられる。
【0021】
EGRシステム7は、所謂低圧EGRシステムであり、タービン6a及び後処理装置8よりも下流の排気管5とインタークーラー10及びコンプレッサー6bよりも上流の吸気管3とを連通するEGR管7aと、EGR管7aに設けられたEGRクーラー7bと、EGRクーラー7bよりも下流のEGR管7aに設けられたEGRバルブ7cとを有する。
【0022】
次に、本実施形態に係るインタークーラー10について図1を用いて説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るインタークーラー10は、吸気ガス入口(空気入口)11を有する入口側ヘッダー12と、吸気ガス出口(空気出口)13を有する出口側ヘッダー14と、入口側ヘッダー12と出口側ヘッダー14との間に配設された熱交換用のコア部15とを備える。
【0024】
入口側ヘッダー12は、コア部15に接続され、コア部15の一端部(図1(a)中の右側)に沿って延びる入口側タンク16と、入口側タンク16に連通され、先端に吸気ガス入口11が形成された入口側パイプ17とを有する。
【0025】
出口側ヘッダー14は、コア部15に接続され、コア部15の他端部(図1(a)中の左側)に沿って延びる出口側タンク18と、出口側タンク18に連通され、先端に吸気ガス出口13が形成された出口側パイプ19とを有する。
【0026】
コア部15は、一対のエンドプレート20と、一対のエンドプレート20間に架け渡された複数のチューブ21と、隣接するチューブ21間に各々設けられた複数の外気流通路22とを有する。
【0027】
チューブ21は、入口側ヘッダー12から出口側ヘッダー14へと吸気ガス(空気、排気ガス)を流すためのものであり、扁平中空状のパイプから形成される。外気流通路22は、チューブ21を流れる吸気ガスを冷却するための空気が流れる流路であり、インタークーラー10の前面と背面とを貫通するように形成される。また、外気流通路22には、冷却効率を高めるためにフィン23が配設されている。なお、図1(a)では、フィン23の一部のみを図示している。
【0028】
また、本実施形態に係るインタークーラー10は加熱機構24を備え、加熱機構24は、吸気ガス(空気、排気ガス)中の水蒸気が入口側ヘッダー12よりも下流のコア部15内で凝縮するのを抑制するために、入口側ヘッダー12内の吸気ガスを加熱するヒーターを有する。
【0029】
本実施形態では、加熱機構24のヒーターは、入口側ヘッダー12の入口側タンク16内に設けられ、入口側タンク16内の吸気ガスを加熱媒体により加熱する熱交換器(以下、追加熱交換器という)25である。本実施形態では、追加熱交換器25に流す加熱媒体としてエンジン冷却水を用いる。
【0030】
追加熱交換器25は、入口側ヘッダー12の入口側タンク16内に加熱媒体通路(冷却水通路)26を区画形成する一対のエンドプレート27と、一対のエンドプレート27間に架け渡された複数のチューブ28と、各チューブ28内に加熱効率を高めるために配設されたフィン29とを有する。吸気ガスはチューブ28内を通過し、加熱媒体は加熱媒体通路26を通過する。即ち、吸気ガスがチューブ28内を通過することで、加熱媒体通路26内の加熱媒体との熱交換により吸気ガスの温度が上がる。また、追加熱交換器25は、チューブ28内を通過する吸気ガスの温度が10℃程度上がるように設定される。
【0031】
また、入口側ヘッダー12の入口側タンク16には、加熱媒体を加熱媒体通路26内に導入する加熱媒体導入管30と、加熱媒体を加熱媒体通路26内から排出する加熱媒体排出管31とが接続される。加熱媒体導入管30及び加熱媒体排出管31は、エンジン1におけるエンジン冷却水を循環させる冷却系に接続される。さらに、加熱媒体導入管30には電磁弁32が設けられ、電磁弁32は後述するコントローラー34による制御を受けて加熱媒体導入管30の開閉を行う。
【0032】
さらに、加熱機構24は、出口側ヘッダー14に設けられ、出口側ヘッダー14内の吸気ガスの温度を検出する温度センサー33と、温度センサー33の検出値(つまり、出口側ヘッダー14内の吸気ガスの温度)に応じて、ヒーター(追加熱交換器25)の作動と非作動とを切り替えるコントローラー34とを備える。温度センサー33は出口側ヘッダー14の出口側タンク18に設けられ、温度センサー33にコントローラー34が接続される。また、コントローラー34は、加熱媒体導入管30に設けた電磁弁32に接続される。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0034】
本実施形態に係るインタークーラー10では、出口側ヘッダー14の出口側タンク18に温度センサー33を設け、温度センサー33の検出値(つまり、出口側タンク18内の吸気ガスの温度)が所定の閾値(例えば、46℃)以下になる場合は、エンジン冷却水(例えば、70℃〜90℃)を追加熱交換器25に流すべくコントローラー34により電磁弁32を開く。エンジン冷却水を追加熱交換器25に流すことで、追加熱交換器25が作動とされる。
【0035】
追加熱交換器25内のエンジン冷却水により入口側タンク16内の吸気ガス(空気、排気ガス)が温められ、入口側タンク16及び追加熱交換器25よりも下流のコア部15内の吸気ガスの温度は露点(約45℃)以上の温度(例えば、50℃程度)となり、凝縮水の発生は起きない。そのため、吸気ガスに含まれる排気ガス中のNOx、SOxによる水溶液(硝酸水溶液、硫酸水溶液)の発生も起きない。
【0036】
吸気ガス(空気、排気ガス)中の水蒸気が凝縮を起こすのは低負荷運転時であり、このような場合にインタークーラー10を通過する吸気ガスの温度が45℃以上となっても、エンジン性能上に不都合は生じない。
【0037】
一方、温度センサー33の検出値(つまり、出口側タンク18内の吸気ガスの温度)が上述の閾値を超えると、追加熱交換器25へのエンジン冷却水の供給を停止すべくコントローラー34により電磁弁32を閉じる。追加熱交換器25へのエンジン冷却水の供給を停止することで、追加熱交換器25が非作動とされる。
【0038】
ところで、低圧EGRの実用化にあたり、強酸性の水溶液(硝酸水溶液、硫酸水溶液)によるインタークーラーの腐食を防止するため、インタークーラーの材質として、アルミ材に犠牲電極となる亜鉛(Zn)を合金化したものを用いることが考えられるが、犠牲電極による防食効果は不十分である。また、インタークーラーの材質としてステンレス材を用いることも考えられるが、放熱量低下、重量増加、コストアップは避けられない。また、アルミ製のインタークーラーにコーティングを施すことも考えられるが、コーティングの剥離の問題が解決されていない。そのような状況の中、本実施形態は、現状適用可能な技術により、インタークーラーの腐食を確実に防ぐことが可能である。
【0039】
以上要するに、本実施形態に係るインタークーラー10によれば、吸気ガス中の水蒸気が入口側ヘッダー12よりも下流のコア部15内で凝縮するのを抑制すべく入口側ヘッダー12内の吸気ガスを加熱するヒーター(追加熱交換器25)を有する加熱機構24を備えたので、インタークーラー10内における凝縮水の発生を確実に抑制することができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0041】
例えば、図1の実施形態では、追加熱交換器25に流す加熱媒体としてエンジン冷却水を用いるとしたが、これには限定されず、例えば、追加熱交換器25に流す加熱媒体としてエンジンオイルを用いても良い。追加熱交換器25に流す加熱媒体としてエンジンオイルを用いる場合、加熱媒体導入管30及び加熱媒体排出管31は、エンジン1におけるエンジンオイルを循環させる潤滑系に接続される。
【0042】
また、図1の実施形態では、加熱機構24のヒーターは追加熱交換器25であるとしたが、これには限定されず、例えば、図2に示すインタークーラー40のように、加熱機構24のヒーターが入口側ヘッダー12内に設けられた電気ヒーター41であっても良い。電気ヒーター41は、例えばリボンヒーターであり、プレート42により入口側ヘッダー12の入口側タンク16内に支持される。
【0043】
また、温度センサー33を入口側ヘッダー12に設けても良い。その場合、温度センサー33の検出値(つまり、入口側ヘッダー12内の吸気ガスの温度)が所定の閾値(例えば、160℃〜170℃)以下になる場合に、コントローラー34により加熱機構24のヒーター(追加熱交換器25、電気ヒーター41)を作動させる。
【0044】
また、温度センサー33を必ずしもインタークーラー10、40内に設ける必要はなく、吸気マニホールド2に設けられるマニホールド温度センサー(MATセンサー)43(図3参照)を使用しても良い。その場合、マニホールド温度センサー43の検出値(つまり、吸気マニホールド2内の吸気ガスの温度)が所定の閾値(例えば、46℃)以下になる場合に、コントローラー34により加熱機構24のヒーター(追加熱交換器25、電気ヒーター41)を作動させる。
【0045】
さらに、コントローラー34を必ずしもインタークーラー10、30に設ける必要はなく、エンジン1の制御に用いられるコントローラー等を加熱機構24のヒーター(追加熱交換器25、電気ヒーター41)の制御に使用しても良い。
【符号の説明】
【0046】
10 インタークーラー
11 吸気ガス入口
12 入口側ヘッダー
13 吸気ガス出口
14 出口側ヘッダー
15 コア部
24 加熱機構
25 追加熱交換器(ヒーター)
33 温度センサー
34 コントローラー
40 インタークーラー
41 電気ヒーター(ヒーター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ガス入口を有する入口側ヘッダーと、吸気ガス出口を有する出口側ヘッダーと、前記入口側ヘッダーと前記出口側ヘッダーとの間に配設された熱交換用のコア部とを備えたインタークーラーにおいて、吸気ガス中の水蒸気が前記入口側ヘッダーよりも下流の前記コア部内で凝縮するのを抑制すべく前記入口側ヘッダー内の吸気ガスを加熱するヒーターを有する加熱機構を備えたことを特徴とするインタークーラー。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記入口側ヘッダー内に設けられ、前記入口側ヘッダー内の吸気ガスを加熱媒体により加熱する熱交換器である請求項1に記載のインタークーラー。
【請求項3】
前記ヒーターは、前記入口側ヘッダー内に配設された電気ヒーターである請求項1に記載のインタークーラー。
【請求項4】
前記加熱機構は、前記出口側ヘッダーに設けられ、前記出口側ヘッダー内の吸気ガスの温度を検出する温度センサーをさらに有する請求項1から3のいずれかに記載のインタークーラー。
【請求項5】
前記加熱機構は、前記温度センサーの検出値に応じて前記ヒーターの作動と非作動とを切り替えるコントローラーをさらに有する請求項4に記載のインタークーラー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate