説明

イントロデューサー組立体

【課題】イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないようにする。
【解決手段】イントロデューサー組立体は、ダイレーターチューブ450を止血弁440の挿通部441に挿通し、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化してある。シースハブ430と止血弁との間に配置された変形部材490は、シースハブの軸方向と交差する方向に移動して止血弁を押圧することによって、挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イントロデューサー組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年医療において、カテーテルと呼ばれる細長い中空管状の医療器具を用いて様々な形態の治療や検査が行われている。このような治療方法としては、カテーテルの長尺性を利用して直接患部に薬剤を投与する方法、加圧によって拡張するバルーンを先端に取り付けたカテーテルを用いて体腔内の狭窄部を押し広げて開く方法、先端部にカッターが取り付けられたカテーテルを用いて患部を削り取って開く方法、逆にカテーテルを用いて動脈瘤や出血箇所あるいは栄養血管に詰め物をして閉じる方法などがある。また、体腔内の狭窄部を開口した状態に維持するために、側面が網目状になっている管形状をしたステントをカテーテルを用いて体腔内に埋め込んで留置する治療方法などがある。さらに、体内の体にとって過剰となった液体を吸引することなどがある。
【0003】
カテーテルを用いて治療・検査などを行う場合には、一般的に、カテーテルイントロデューサーを使用して、腕または脚に形成された穿刺部位にイントロデューサーシースを導入し、イントロデューサーシースの内腔を介してカテーテル等を経皮的に血管等の病変部に挿入している。
【0004】
特許文献1には、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化しておき、治療・検査などを行う現場において両者を組み付ける作業の煩雑さを低減するようにしたイントロデューサー組立体が開示されている。イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化すると、イントロデューサーシースに備えられた止血弁にダイレーターチューブを挿通した状態が、使用されるまで継続されることになる。この場合、ダイレーターチューブの挿通にともなう圧縮力が長期にわたって止血弁に作用する。このため、経年変化によって、止血弁にいわゆる「へたり」が生じ、ダイレーターチューブを抜き取ったときに、止血弁が十分な止血性能を発揮しない虞がある。そこで、特許文献1のイントロデューサー組立体にあっては、ダイレーターチューブの長手方向のうち、止血弁に接触したままとなる部位における外径を、他の部位における外径よりも小径に形成してある。これによって、止血弁に長期にわたって作用する圧縮力を低減し、ダイレーターチューブを抜き取ったときの止血性能の低下を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−168532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダイレーターチューブの長手方向の一部分を縮径すると、ダイレーターチューブに作用する応力が、径が変化する部位に集中してしまってダイレーターチューブが折れ易くなる。このため、ダイレーターチューブの本来の機能である、シースチューブの芯材としての機能を十分に発揮することができなくなる。
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のイントロデューサー組立体は、シースチューブ、前記シースチューブの基端側に取り付けられるシースハブ、および前記シースハブの基端側に取り付けられカテーテルを挿通するための挿通部が設けられた止血弁を備えるイントロデューサーシースと、
ダイレーターチューブ、および前記ダイレーターチューブの基端側に取り付けられるダイレーターハブを備えるダイレーターと、
前記シースハブと前記止血弁との間に配置され、前記シースハブの軸方向と交差する方向に移動して前記止血弁を押圧することによって、前記挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を前記止血弁に付与する変形部材と、
前記変形部材を前記シースハブに対して係止して前記止血弁を押圧した状態を保持する係止部材と、を有している。そして、前記ダイレーターチューブを前記キャップの前記貫通孔および前記止血弁の前記挿通部に挿通し、前記圧縮力を付与する前の状態において、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させてある。
【発明の効果】
【0009】
シースハブと止血弁との間に配置された変形部材がシースハブの軸方向と交差する方向に移動して止血弁を押圧することによって、挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁に付与するため、使用前は止血弁を開放状態としておきダイレーターチューブを挿通していても止血弁への負担が少なく、使用時にはダイレーターチューブを抜き取った後にも、止血弁が十分な止血性能を発揮する。しかも、ダイレーターチューブの長手方向の一部分を縮径する必要がないので、ダイレーターチューブの本来の機能である、シースチューブの芯材としての機能も十分に発揮される。したがって、本発明によれば、イントロデューサーシースとダイレーターとを予め一体化したイントロデューサー組立体であって、止血弁の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブの本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)は、本発明の実施形態に係るイントロデューサー組立体を示す図であって、包装フィルム内にパッケージ化した状態を示す平面図、図1(B)は、図1(A)の破線部1Bで示す部分の拡大断面図である。
【図2】イントロデューサー組立体のイントロデューサーシース、およびダイレーターを分解して示す平面図である。
【図3】図3(A)は、圧縮力が付与される前の状態の止血弁をシースハブとともに示す平面図、図3(B)は、圧縮力が付与される前の状態の止血弁を示す斜視図である。
【図4】図4(A)は、圧縮力が付与された状態の止血弁をシースハブとともに示す平面図、図4(B)は、圧縮力が付与された状態の止血弁を示す斜視図である。
【図5】イントロデューサー組立体の作用の説明に供する概略断面図であって、イントロデューサーシースとダイレーターとが一体化される前の状態を示す概略断面図である。
【図6】イントロデューサー組立体の作用の説明に供する概略断面図であって、イントロデューサーシースに対してダイレーターを仮止めした状態を示す概略断面図である。
【図7】図6に示される状態から、ダイレーターハブをシースハブに向けて押し込んだ状態を示す概略断面図である。
【図8】図7に示される状態から、ダイレーターを抜き取った後のイントロデューサーシースを示す概略断面図である。
【図9】図9(A)は、図6の破線部9Aで示す部分の拡大図、図9(B)は、図7の破線部9Bで示す部分の拡大図である。
【図10】保持部材および接続部材の改変例の説明に供する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
イントロデューサー組立体410は、体腔内へのアクセスルートを確保するためのデバイスである。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、体腔内へ挿通される側を「先端側」と称す。
【0013】
図1、図2、および図7を参照して、イントロデューサー組立体410を概説すると、イントロデューサー組立体410は、イントロデューサーシース411と、ダイレーター413とを有している。本実施形態のイントロデューサー組立体410にあっては、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化させ、包装フィルム(包装部材に相当する)120内にパッケージ化してある。イントロデューサーシース411は、シースチューブ420、シースチューブ420の基端側に取り付けられるシースハブ430、およびシースハブ430の基端側に取り付けられカテーテルを挿通するための挿通部441が設けられた止血弁440を備えている。ダイレーター413は、ダイレーターチューブ450、およびダイレーターチューブ450の基端側に取り付けられるダイレーターハブ460を備えている。
【0014】
イントロデューサー組立体410はさらに、変形部材490と、係止部材480と、を有している(図3、図4をも参照)。変形部材490は、シースハブ430と止血弁440との間に配置され、シースハブ430の軸方向と交差する方向(図4、図7において矢印で示す)に移動して止血弁440を押圧することによって、挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁440に付与する。挿通部441はダイレーターチューブ450等を通過可能であり、かつ、開閉可能である部分をいう。係止部材480は、変形部材490をシースハブ430に対して係止して止血弁440を押圧した状態を保持する。
【0015】
そして、イントロデューサー組立体410は、ダイレーターチューブ450を止血弁440の挿通部441に挿通し、圧縮力を付与する前の状態において、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化させた状態で密封包装されている(図6をも参照)。以下、イントロデューサー組立体410について詳述する。
【0016】
イントロデューサーシース411は、体腔内へ留置されて、その内部に、例えばカテーテル、ガイドワイヤ、塞栓物等を挿通して、体腔内へ導入するためのものである。
【0017】
シースチューブ420は、経皮的に体腔内へ導入される。
【0018】
シースチューブ420の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0019】
シースハブ430には、シースチューブ420の内部と連通するサイドポート14が形成されている。サイドポート14には、例えばポリ塩化ビニル製の可撓性を有するチューブ15の一端が液密に接続されている。チューブ15の他端は、例えば三方活栓16が装着されている。この三方活栓16のポートからチューブ15を介してイントロデューサーシース411内に生理食塩水のような液体を注入することによってプライミング処理が行われる。
【0020】
図5を参照して、シースハブ430は、シースハブ本体431と、シースハブ本体431内に形成された中心孔432と、中心孔432の基端側に設けられ止血弁440を収納する収納部433と、を有している。収納部433は、止血弁440の裏面448の外周縁部449が当接させられる支持面436を有している。
【0021】
シースハブ430には、シースハブ430の支持面436との間で止血弁440を挟持する挟持部材438を取り付けている。挟持部材438は、中心孔が形成された枠状の外形形状を有しており、止血弁440の表面446の外周縁部447に当接させて配置されている。挟持部材438は、支持面436との間で止血弁440を挟み込んだ状態でシースハブ430に固定されている。固定方法には、例えば溶着を採用することができる。
【0022】
挟持部材438の外壁面には第1突起511を設けている。シースハブ本体431の外壁面において挟持部材438の第1突起511よりも先端側に位置する部位に第2突起512を設けている。第1突起511および第2突起512は、ダイレーターハブ460の内壁面に設けられた第1凹部516および第2凹部517と組み合わせて使用されるものであり、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを接続させるための接続部材530として機能する(図7、図9(B)を参照)。
【0023】
シースハブ430および挟持部材438の構成材料としては、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0024】
図3、および図4を参照して、止血弁440は、矩形の板状をなす弾性部材から構成され、シースハブ430に対して液密に固定されている。止血弁440の両面のうち、シースチューブ420に向かい合う側の端面を「裏面」448といい、反対側の端面を「表面」446という。止血弁440の表面446は、図5〜図8において上側に示されている。
【0025】
止血弁440の表面446には、溝442が設けられている。溝442は、変形部材490が移動する方向と直交する方向(止血弁440の短手方向)に伸び、かつ変形部材490の移動方向(止血弁440の長手方向)に沿う断面が凹状に形成されている。止血弁440はさらに、ダイレーターチューブ450を挿通部441に挿通する前、かつ、変形部材490によって止血弁440を押圧する前の無負荷状態において、開口した小孔445を含んでいる。
【0026】
止血弁440の挿通部441は、ダイレーターチューブ450が挿通されると、ダイレーターチューブ450によって押し広げられて変形する(図6を参照)。挿通部441は開口した小孔445を含んでいるので、開口した小孔を含まない構成の挿通部と比較して、ダイレーターチューブ450を挿通したときの変形量が少ない。また、溝442も備えているので、この点からも、ダイレーターチューブ450を挿通したときの変形量が少ない。したがって、例えば止血弁440に圧縮力を付与した状態を保持した後に、圧縮力を付与した状態を解除すると、挿通部441は弾性復元力によって初期の形状にまで復帰することになる。
【0027】
図3(B)および図4(B)には、変形部材490による押圧によって形状が変化させられる前後の状態の止血弁440の様子が簡略化されて示される。止血弁440は、変形部材490によって外周側面から押圧されると、凹状の溝442を起点にして折れ曲がり、止血弁440全体の形状が裏面448側に向かうように凸状に変形する。これにより、少なくとも表面446側においては、開口していた小孔445が閉じられ、挿通部441が閉塞状態となる。溝442は、折れ曲がりの起点となって止血弁440を閉塞し易くする機能を発揮するとともに、ダイレーターチューブ450やカテーテルを挿通するときに、ダイレーターチューブ450等の先端をガイドするガイド面として機能し、挿通するときの抵抗力を小さくする。
【0028】
止血弁440の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。
【0029】
止血弁440は、例えば、円形や楕円形に加工されたものを利用することも可能であるが、矩形状に加工されたものを利用する場合、止血弁の素材となるシート材料を矩形状に切り出して各切り出し片を止血弁440として使用することができるため、円形や楕円形の止血弁を使用する場合に比べてシート材料を無駄なく使用することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0030】
変形部材490は、止血弁440を間に挟んで対をなして配置された第1の押圧部材491および第2の押圧部材492によって構成されている。第1の押圧部材491および第2の押圧部材492のそれぞれは、シースハブ430内に配置される押し付け片493と、押し付け片493と一体的に設けられ端部がシースハブ430の外部に配置される押し込み部材494と、を有している。
【0031】
係止部材480は、シースハブ430に設けた係止溝481と、変形部材490に設けられ係止溝481に対して係脱自在な係止突起482と、から構成されている。係止突起482は、変形部材490の押し込み部材494に一体的に形成されている。
【0032】
第1の押圧部材491および第2の押圧部材492が互いに接近移動することによって、止血弁440の外周側面が押圧され、挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力が止血弁440に付与される。第1の押圧部材491および第2の押圧部材492の接近移動に伴って係止突起482が係止溝482に嵌り込み、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492がそれぞれシースハブ430に対して係止される。
【0033】
第1の押圧部材491および第2の押圧部材492の構成材料は、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0034】
係止突起482は、例えば樹脂成形によって第1の押圧部材491および第2の押圧部材492に一体的に形成したり、係止突起として機能するビードやリングを後付けして形成したりすることが可能である。実施形態にあっては製造作業の簡略化の観点から、成形によって押圧部材491、492に一体的に形成する方法を採用している。
【0035】
ダイレーター413は、イントロデューサーシース411を血管内に挿入するときに、シースチューブ420の折れを防いだり、皮膚の穿孔を拡径したりするために用いられる。
【0036】
ダイレーターチューブ450は、シースチューブ420内に挿通される。図1に示すように、ダイレーターチューブ450の先端部451が、シースチューブ420の先端から露出した状態となる。なお、止血弁440に圧縮力を付与した状態とするまでは、ダイレーターチューブ450の先端部451がシースチューブ420の先端から露出しないようにしてもよい。
【0037】
ダイレーターチューブ450は、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを一体化させた状態においてイントロデューサーシース411に供給される流体をダイレーターチューブ450内へ流通させるための穴452を有している(図1(B)を参照)。イントロデューサーシース411とダイレーター413とを一体化させた状態においては、シースハブ430とダイレーターチューブ450との間、およびシースチューブ420とダイレーターチューブ450との間には僅かなクリアランス(隙間)が形成されている。このため、イントロデューサーシース411に供給されたプライミング処理のための生理食塩水や滅菌処理のためのEOGは、シースハブ430内を通り、ダイレーターチューブ450に形成した穴452を通ってダイレーターチューブ450内に流れ込む。したがって、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化しておいても、ダイレーターチューブ450内のプライミング処理や滅菌処理を支障なく実施することができる。
【0038】
ダイレーターチューブ450内へ流体を流通させるための穴452の個数については、特に制限はないが、流体の円滑な循環を促すことを可能にするために、少なくとも2個以上設けられていることが望ましい。また、寸法や形状についても特に制限はない。
【0039】
ダイレーターチューブ450の構成材料としては、例えばポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの高分子材料またはこれらの混合物などを用いることができる。
【0040】
図6を参照して、ダイレーターハブ460は、ダイレーターハブ本体461と、ダイレーターハブ本体461内に形成された中心孔462と、ダイレーターハブ本体461の内壁面に設けられた第1凹部516と、第1凹部516よりも先端側に設けられた第2凹部517と、を有している。
【0041】
ダイレーターハブ460の構成材料は、特に限定されないが、硬質樹脂のような硬質材料が好適である。硬質樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0042】
イントロデューサー組立体410は、ダイレーターハブ460をシースハブ430に対して仮止めすることによって、圧縮力が付与される前の状態においてイントロデューサーシース411とダイレーター413とを一体化させることを可能にする保持部材510を有している。保持部材510は、イントロデューサー組立体410を使用するときまで、止血弁440に圧縮変形を生じさせず、かつ一体化させた状態で製品として流通させることを可能にする。保持部材510は、シースハブ430に取り付けた挟持部材438に設けられた第1突起511と、ダイレーターハブ460に設けられた第2凹部517とによって構成している(図9(A)を参照)。第2凹部517内に第1突起511を嵌め込むことによって、シースハブ430とダイレーターハブ460とを接続して仮止めしている。
【0043】
イントロデューサー組立体410は、ダイレーターハブ460のシースハブ430に対する相対的な移動に伴いダイレーターハブ460をシースハブ430に着脱自在に接続する接続部材530を有している(図7、図9(B)を参照)。本実施形態の接続部材530は、シースハブ430に設けた第1、第2突起511、512と、ダイレーターハブ460に設けた第1、第2凹部516、517と、から構成されている。第1突起511および第2突起512は略同一の形状に形成されており、第1凹部516および第2凹部517も略同一の形状に形成されている。このため、第1突起511と第2凹部517とによってイントロデューサーシース411とダイレーター413とを仮止めした状態から、ダイレーターハブ460を先端側へさらに移動させて、第1突起511を第1凹部516に嵌め込み、さらに第2突起512を第2凹部517に嵌め込むことによってダイレーターハブ460をシースハブ430に対して接続させることができる。また、シースハブ430に対してダイレーターハブ460を移動させると、シースハブ430の外部に配置された押し込み部材494がシースハブ430の内部へ向けて押し込まれるため、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492が互いに接近移動し、止血弁440に対して圧縮力が付与されることになる。この際、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492は、係止部材480によってシースハブ430に対して係止される。
【0044】
第1、第2突起511、512の形状、および第1、第2凹部516、517の形状は、シースハブ430とダイレーターハブ460とを接続させ、その接続状態を維持し得る限りにおいて特に制限はないが、例えばシースハブ430に対するダイレーターハブ460の相対的な移動に伴わせて、接続、分離作業を円滑に行い得る形態で設けられていることが好ましい。このため、実施形態にあっては、凹部と、凹部内への嵌め込みおよび離脱が容易なリブ状の突起とによって接続部材530を構成させている。
【0045】
ダイレーターハブ460の先端部には、第1、第2突起511、512に形成された傾斜面および押し込み部材494に形成された傾斜面と略同一の傾斜角度で傾斜するガイド面513を設けている(図9を参照)。ダイレーターハブ460を接続させる際に、ダイレーターハブ460をシースハブ430に対してスライド移動させて接続作業を行うことを可能にし、さらにスライド移動に伴わせて押し込み部材494をシースハブ430内に円滑に押し込ませることを可能にするためである。
【0046】
次に、イントロデューサー組立体410の作用について説明する。
【0047】
図5を参照して、止血弁440に対して挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力を付与するのに先立って、シースハブ430に対してダイレーターハブ460を仮止めさせる。ダイレーター413をイントロデューサーシース411に対して接近移動させ、ダイレーターチューブ450を止血弁440の挿通部441に挿通させる。この際、止血弁440の溝442がダイレーターチューブ450の挿通をガイドするため、作業を円滑に行うことができる。
【0048】
図6を参照して、保持部材510(第1突起511、第2凹部517)によってシースハブ430に対してダイレーターハブ450を仮止めさせる。イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化させた状態で製品として流通させることが可能になる。
【0049】
仮止めした状態においては、変形部材490としての第1の押圧部材491および第2の押圧部材492は、止血弁440を押圧しておらず、止血弁440には、挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与されていない。
【0050】
図7を参照して、図6に示される状態から、図中下向きにダイレーター413を押し込むように移動させると、接続部材530(第1、第2突起511、512、および第1、第2凹部516、517)によってシースハブ430とダイレーターハブ460とが接続される。
【0051】
ダイレーターハブ460の移動に伴ってシースハブ430の外部に配置された押し込み部材494がシースハブ430の内部へ向けて押し込まれる。これにより、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492がシースハブ430の軸方向と交差する方向に互いに接近移動し、シースハブ440の中心軸に向かう方向に止血弁440を押圧する。挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力が止血弁440に対して付与される。
【0052】
係止部材480は、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492をシースハブ430に対して係止し、止血弁440が押圧された状態を保持する。
【0053】
図8を参照して、止血弁440の挿通部441からダイレーターチューブ450を抜き取る。ダイレーターチューブ450を抜き取った後も、係止部材480は、止血弁440に対して挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力が付与された状態を保持する。挿通部441が閉塞状態となり、止血弁440は、ダイレーターハブ460の基端から血液等の液体の漏出を防止する。
【0054】
溝442によって止血弁440が変形し易くなっているため、止血弁440に設けられた小孔445をより確実に閉塞させることができる。
【0055】
挟持部材438とシースハブ460の支持面436との間で止血弁440の表面446の外周縁部447および裏面448の外周縁部449を挟みこませているため、止血弁440が裏面448側に向けて凸状に変形した状態が保持される。止血弁440が表面446側に向けて凸状に変形したり、止血弁440に位置ずれが生じたりすることを防止することができる。
【0056】
イントロデューサーシース411を使用したカテーテルの挿入操作について以下簡単に説明する。
【0057】
まず、皮膚の所定位置に導入針などを用いて穿孔し、該穿孔よりガイドワイヤを例えば血管内に挿入する。そして、このガイドワイヤをイントロデューサーシース411の先端からその内腔に挿通させて、ガイドワイヤに沿うようにしてイントロデューサーシース411を血管内へ挿入する。この挿入のとき、ダイレーターチューブ450の先端部451が皮膚の穿孔を拡径する。これにより、イントロデューサーシース411の先端側を血管内に挿入することができる。イントロデューサーシース411を血管内に挿入した後は、ガイドワイヤおよびダイレーター413を抜き取ってイントロデューサーシース411のみを残す。これにより、イントロデューサーシース411が、体外と血管内とをつなぐ通路として機能し、このシースを通してカテーテル等の器具を血管内へ挿入できる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、シースハブ430と止血弁440との間に配置された変形部材490がシースハブ430の軸方向と交差する方向に移動して止血弁440を押圧することによって、挿通部441が閉塞状態となる方向の圧縮力を止血弁440に付与するため、使用前は止血弁440を開放状態としておきダイレーターチューブ450を挿通していても止血弁440への負担が少なく、使用時にはダイレーターチューブ450を抜き取った後にも、止血弁440が十分な止血性能を発揮する。しかも、ダイレーターチューブ450の長手方向の一部分を縮径する必要がないので、ダイレーターチューブ450の本来の機能である、シースチューブ420の芯材としての機能も十分に発揮される。したがって、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化したイントロデューサー組立体410であって、止血弁440の止血性能を長期にわたって維持することができ、さらに、ダイレーターチューブ450の本来の機能に支障を来たすことがないイントロデューサー組立体410を提供することができる。
【0059】
イントロデューサー組立体410の出荷時に既にイントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化してあることから、治療などの手技現場において組み合わせる手間が省け、手技の短縮化を図ることができる。
【0060】
手技現場において組み合わせる作業がなくなるので、ダイレーター413の先端折れが発生したり、ダイレーター413を挿入するときの止血弁440の損傷が発生したりする虞を根本的に解消することができる。先端折れや止血弁440からの漏れがなくなるので、患者に対する低侵襲性を向上させることができる。
【0061】
イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化させたイントロデューサー組立体410を包装フィルム120内にパッケージしてある(図1参照)。イントロデューサーシース411とダイレーター413とを別体にして1つの包装フィルム内にパッケージする場合に比較すると、イントロデューサー組立体410をセットするトレーが小さくなる。トレーが小さくなることを通して、省スペース化および省資源化を図ることができ、製造工場や病院、さらには地球に対して、エネルギーロスを最小化することができる。また、一体化させたイントロデューサー組立体410を包装フィルム120によって密封包装しているため、使用前の流通過程等においてイントロデューサー組立体410に汚染が生じることを好適に防止することができる。
【0062】
また、止血弁440を間に挟んで対をなして配置された第1の押圧部材491および第2の押圧部材492を互いに接近移動させて、止血弁440の外周側面を押圧することによって止血弁440をシースハブ440の中心軸に向けて変形させるため、止血弁440に設けられた挿通部441の閉塞を好適に行うことができる。
【0063】
また、止血弁440の表面446に設けられた溝442が、折れ曲がりの起点となることによって、止血弁440が変形し易くなるため、止血弁440に設けられた挿通部441をより確実に閉塞させることができる。
【0064】
また、挟持部材438とシースハブ430との間で止血弁440の表面446の外周縁部447および裏面448の外周縁部449を挟みこませているため、止血弁440が表面446側に向けて凸状に変形したり、止血弁440に位置ずれが生じたりすることを防止することができる。ダイレーター413を使用した手技において、止血弁440の変形や位置ずれに起因した手元の操作感覚への影響が生じることを防止することができる。
【0065】
また、ダイレーターハブ460をシースハブ430に対して相対的に移動させる簡単な操作によって、ダイレーターハブ460とシースハブ430との接続作業、および止血弁440への圧縮力の付与を行うことができる。イントロデューサー組立体410の取り扱い性を向上させることによって、ユーザーの利便性を向上させることができる。
【0066】
また、ダイレーターチューブ450に形成した穴452を通して、イントロデューサーシース411に供給した生理食塩水やEOGをダイレーターチューブ450内に流通させることが可能になっているため、イントロデューサーシース411とダイレーター413とを予め一体化しておいても、ダイレーターチューブ450内のプライミング処理や滅菌処理を支障なく実施することができる。
【0067】
(保持部材および接続部材の改変例)
図10は、保持部材および接続部材の改変例の説明に供する概略断面図である。なお、図1〜図9に示される部材と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0068】
先の実施形態では、シースハブ430とダイレーターハブ460との仮止めを行うための保持部材510、および両部材430、460を着脱自在に接続する接続部材530として、第1、第2突起511、512、および第1、第2凹部516、517によって構成される嵌め込み式の機構のものを示している。しかしながら、本発明にあっては、シースハブ430とダイレーターハブ460とを仮止めさせる機構、および両部材430、460を接続させる機構は、嵌め込み式のものに限定されるものではなく、図10に示すイントロデューサー組立体560のように、ねじ込み式のものであってもよい。
【0069】
すなわち、改変例にあっては、保持部材520および接続部材540は、ダイレーターハブ460の先端側の内壁面に設けられた第1ネジ部541と、シースハブ430の外壁面に設けられ第1ネジ部541と噛み合う第2ネジ部542と、によって構成されている。接続部材540は、第1ネジ部541と第2ネジ部542とがしっかりと強固に噛み合っている状態において、第1、第2ネジ部541、542のうち相互に噛み合っている領域におけるネジ部から構成されている。図示は省略するが、保持部材520は、第1ネジ部541と第2ネジ部542とが緩やかに噛み合っている状態において、第1ネジ部541のうち図中下方端部と、第2ネジ部542のうち図中上方先端部とから構成されている。
【0070】
第1ネジ部541と第2ネジ部542とを噛みあわせた状態で、ダイレーターハブ460を図10の矢印Aの方向に回すことによって、ダイレーターハブ460をシースハブ430にねじ込むことが可能に、かつ、ダイレーターハブ460を逆方向の矢印Bの方向に回すことによってダイレーターハブ460をシースハブ430から取り外すことが可能なように形成されている。
【0071】
変形例に示すねじ込み式の機構を採用する場合においても、ダイレーターハブ460をシースハブ430にねじ込んで移動させる簡単な操作を行うことによって、ダイレーターハブ460とシースハブ430との接続作業、および止血弁440への圧縮力の付与を行うことが可能である。
【0072】
(その他の変形例)
止血弁440への圧縮力の付与は、接続部材520、540によるダイレーターハブ460とシースハブ430との接続に伴わせて行う形態に限られるものではない。例えば手技を行う者が、イントロデューサー組立体を使用する際に、直接的に手で押し込み部材を押し込むことによって止血弁を押圧し、圧縮力を付与する形態とすることも可能である。
【0073】
止血弁440の押圧は、第1の押圧部材491および第2の押圧部材492のような2つの部材の移動によって行う形態に限られるものではなく、シースハブの軸方向と交差する方向に移動して止血弁440に対して圧縮力を付与し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。したがって、1つの変形部材を利用して押圧を行う形態や、対にして配置された複数組の押圧部材を利用して押圧を行う形態とすることも可能である。
【0074】
また、実施形態にあっては、矩形状の止血弁440を示したが、止血弁の外形形状は特に限定されるものではなく、例えば円形や楕円形に形成されたものを使用することが可能である。止血弁の外形形状に合わせてダイレーターハブの外形形状を丸みを帯びた円形に形成し、ダイレーターハブの持ち易さの向上を図ることも可能である。
【符号の説明】
【0075】
120 包装フィルム(包装部材)、
410 イントロデューサー組立体、
411 イントロデューサーシース、
413 ダイレーター、
420 シースチューブ、
430 シースハブ、
438 挟持部材、
440 止血弁、
441 挿通部、
442 溝、
445 小孔、
446 表面、
447 表面の外周縁部、
448 裏面、
449 裏面の外周縁部、
450 ダイレーターチューブ、
452 穴、
460 ダイレーターハブ、
480 係止部材、
490 変形部材、
491 第1の押圧部材、
492 第2の押圧部材、
510 保持部材、
530 接続部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースチューブ、前記シースチューブの基端側に取り付けられるシースハブ、および前記シースハブの基端側に取り付けられカテーテルを挿通するための挿通部が設けられた止血弁を備えるイントロデューサーシースと、
ダイレーターチューブ、および前記ダイレーターチューブの基端側に取り付けられるダイレーターハブを備えるダイレーターと、
前記シースハブと前記止血弁との間に配置され、前記シースハブの軸方向と交差する方向に移動して前記止血弁を押圧することによって、前記挿通部が閉塞状態となる方向の圧縮力を前記止血弁に付与する変形部材と、
前記変形部材を前記シースハブに対して係止して前記止血弁を押圧した状態を保持する係止部材と、を有し、
前記ダイレーターチューブを前記止血弁の前記挿通部に挿通し、前記圧縮力を付与する前の状態において、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させてなる、イントロデューサー組立体。
【請求項2】
前記変形部材は、前記止血弁を間に挟んで対をなして配置された第1と第2の押圧部材を含み、前記第1と第2の押圧部材を互いに接近移動させることによって前記止血弁を押圧する請求項1に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項3】
前記止血弁の両面のうち前記シースチューブに向かい合う側と反対の表面には、前記変形部材の移動方向と直交する方向に伸び、かつ前記変形部材の移動方向に沿う断面が凹状の溝が形成されている請求項1または請求項2に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項4】
前記止血弁の表裏両面の外周部を前記シースハブとの間で挟持する挟持部材をさらに有する請求項3に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項5】
前記ダイレーターハブの前記シースハブに対する相対的な移動に伴い前記ダイレーターハブを前記シースハブに着脱自在に接続する接続部材を有し、
前記変形部材は、前記ダイレーターハブと前記シースハブとの接続に伴って前記止血弁を押圧する請求項1〜4のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項6】
前記ダイレーターチューブは、前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを一体化させた状態において前記イントロデューサーシースに供給される流体を前記ダイレーターチューブ内へ流通させるための穴を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。
【請求項7】
前記イントロデューサーシースと前記ダイレーターとを予め一体化させた状態の前記イントロデューサー組立体を包装する包装部材を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のイントロデューサー組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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