説明

インバータ装置の制御方法

【課題】 インバータ装置の選択順位を考慮しないで決定された起動台数だけ選択すると、特定のインバータ装置のみが選択されてインバータ装置の寿命を短くする。
【解決手段】 直流電源に複数台のインバータ装置を並列接続し、出力電力値に基づいてインバータ装置の起動台数を決定し、各インバータ装置の出力電力を積算して積算電力値を算出し、少ない順に決定された起動台数だけを選択し、選択されたインバータ装置が前周期から起動しているときはそのまま継続し停止しているときは起動させるインバータ装置の制御方法において、各インバータ装置が停止から起動へと変化した回数を各インバータ装置ごとにカウントして積算起動回数値を算出し、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とを乗算して積算電力起動回数値を算出し、積算電力起動回数値の少ないインバータ装置から順に選択することを特徴とするインバータ装置の制御方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池等の直流電源からの直流出力を複数のインバータ装置で交流出力に変換して交流系統に供給する電源システムに係り、特に各インバータ装置の起動順位を決定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来技術の電源システムのブロック図である。同図において、電源システムは、太陽電池からなる直流電源DCと、上記直流電源DCに並列接続されて直流出力をインバータで交流出力に変換して出力する第1インバータ装置PS1乃至第nインバータ装置PSnと、上記直流電源DCからの出力電力値を検出する電力検出部DSと、上記各インバータ装置を上記出力電力値に基づいて制御する出力制御部SAと、上記直流電源DCに接続された上記各インバータ装置を開閉する開閉器SW1乃至開閉器SWnとから形成されている。
【0003】
図4において、第1インバータ装置PS1は、第1インバータ制御回路CO1と第1インバータ回路PC1とで形成され、第2インバータ装置PS2は、第2インバータ制御回路CO1と第2インバータ回路PC1とで形成され、第nインバータ装置PSnは、第nインバータ制御回路COnと第nインバータ回路PCnとで形成されている。
【0004】
第1インバータ制御回路CO1は、出力制御部SAから起動信号が入力すると動作を開始し、第1開閉器SW1を閉路して第1インバータ回路PC1に直流電源DCからの出力電力を供給し、かつ、第1インバータ回路PC1を起動させて直流電圧を交流電圧に変換して系統電源ACに供給する。第2インバータ制御回路CO2乃至第nインバータ制御回路COnも上記と同一動作を行なう。
【0005】
電力検出部DSは、直流電源DCからの出力電力値を検出して出力制御部SAに入力する。上記出力制御部SAは、出力電力演算部PAとインバータ選択部CHとで形成され、上記出力電力演算部PAは、上記出力電力値に基づいてインバータ装置の起動台数を決定する。上記インバータ選択部CHは、上記決定された起動台数に基づいて、各インバータ装置に起動信号を入力する。
【0006】
しかし、上述の従来技術では、インバータ装置の起動台数を出力電力値に基づいて決定しているが、上記インバータ装置の起動順位に関しては何ら考慮されていない。このために、直流電源DCからの出力電力値が低くいときに、例えば、特定のインバータ装置のみが運転され、他のインバータ装置は上記出力電力値が増大したときに起動すると、特定のインバータ装置のみ起動されることとなるため、上記特定のインバータ装置の出力電力値及び起動回数が増加してしまう。
【0007】
また、特許文献1に記載する従来技術は、各インバータ装置ごとの出力電力を積算して積算電力値を算出し、上記積算電力値の少ない上記インバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択し、上記各インバータ装置の出力電力値のバラツキを均一化する方法である。
【0008】
【特許文献1】特開2000−305633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来技術において、インバータ装置の起動台数を出力電力値に基づいて決定しているが、上記インバータ装置の起動順位に関しては何ら考慮されていない。そのため、例えば、特定のインバータ装置のみが運転され、上記特定のインバータ装置の出力電力量と上記インバータ装置が停止状態から起動状態へと変化する起動回数とが増加してしまう。上記特定のインバータ装置の出力電力値が大きくなると、上記インバータ装置のインバータ回路を形成している半導体素子の熱損失が増加し、上記半導体素子の劣化を促進して寿命を短くしてしまう。さらに、上記起動回数が増加すると、直流電源DCに接続された上記各インバータ装置を開閉する特定の開閉器の開閉回数が増加し、上記開閉回数の増加に応じて開閉器の接点が劣化して上記特定の開閉器の寿命を短くしてしまう。
【0010】
図5は、インバータ装置の設置台数を、例えば、10台とし、測定期間を1ヶ月として、特許文献1に記載する方法を用いて、各インバータ装置ごとの出力電力を積算して積算電力値を算出し、上記積算電力値の少ない上記インバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択し、各インバータ装置ごとの積算電力値と起動回数とのバラツキを測定した図である。図5に示す測定結果より、上記各インバータ装置の積算電力値のバラツキは改善されて均一化されている。しかし、上記各インバータ装置の起動回数に対しては、バラツキが均一化できず、上記より起動回数の多い開閉器で接点が劣化がして寿命を短くしてしまう。
【0011】
上述より、平均化する対象要素を特許文献1に記載する積算電力値に絞り込んで平均化すると、対象要素に対しては大きく平均化されるが、他の対象要素である起動回数に対しては望ましい効果がない。そこで、本発明は、上述した課題を解決することができるインバータ装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、直流電源に複数台のインバータ装置を並列接続し、上記直流電源からの出力電力値を予め定めた周期で計測し、上記周期ごとの出力電力値に基づいて上記インバータ装置の起動台数を決定し、上記各インバータ装置の入力電力及び出力電力を積算して上記各インバータ装置ごとの積算電力値を算出し、上記積算電力値の少ない上記インバータ装置から順に上記決定された起動台数だけを選択し、上記選択されたインバータ装置が前周期から起動しているときはそのまま継続し、停止しているときは起動状態に変化させるインバータ装置の制御方法において、上記各インバータ装置が停止状態から起動状態へと変化した回数を各インバータ装置ごとにカウントして積算起動回数値を算出し、上記各インバータ装置ごとの上記積算電力値と上記積算起動回数値とを乗算して積算電力起動回数値を算出し、上記積算電力起動回数値の少ない上記インバータ装置から順に上記決定された起動台数だけを選択することを特徴とするインバータ装置の制御方法である。
【0013】
第2の発明は、上記積算電力起動回数値を、上記各インバータ装置ごとの起動時間を積算して積算起動時間値を算出し、上記積算起動時間値を上記積算電力値の代りに使用することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置の制御方法である。
【0014】
第3の発明は、上記積算電力起動回数値を、上記各インバータ装置ごとの上記積算電力値と上記積算起動回数値とを加算して算出することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とを乗算して積算電力起動回数値を算出し、上記積算電力起動回数値の少ないインバータ装置から順に決定された起動台数だけ起動すると、積算電力値の平均化にとどまらず起動回数の平均化にも効果があり、インバータ回路を形成している半導体素子の熱損失のバラツキが均一化と上記各インバータ装置を開閉する開閉器の起動回数のバラツキも均一化とが可能となり、上記半導体素子及び開閉器の寿命が均一化され信頼性の高い電源システムが可能となる。
【0016】
第2の発明によれば、積算起動時間値を積算電力値に置き換え、上記積算起動時間値と上記積算起動回数値とを乗算した値に基づいて、各インバータ装置の起動順位を決定しても上述の第1の発明とほぼ同様の効果がある。
【0017】
第3の発明によれば、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とを加算して積算電力起動回数値とし、上記加算した積算電力起動回数値に基づいて、各インバータ装置の起動順位を決定しても上述の第1の発明とほぼ同様の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態の電源システムのブロック図である。同図において、図4に示す、従来技術の電源システムのブロック図と同一符号は同一動作を行なうので説明は省略し符号が相違する構成について説明する。
【0019】
図1において、電源システムは、太陽電池からなる直流電源DCと、上記直流電源DCに並列接続されて直流出力をインバータで交流出力に変換して出力する第1インバータ装置PS1乃至第nインバータ装置PSnと、上記直流電源DCからの出力電力値を検出する電力検出部DSと、上記各インバータ装置を上記出力電力値に基づいて起動台数と起動順位とを決定する出力台数制御部SKと、上記直流電源DCに接続された上記直流電源DCからの出力電力を開閉する開閉器SW1乃至開閉器SWnとから形成されている。
【0020】
電力検出部DSは、直流電源DCからの出力電力を検出し出力電力値として台数制御部SKに入力する。上記台数制御部SKは、出力電力演算部PAと積算電力回数部MAとインバータ選択部CHとで形成され、上記出力電力演算部PAは、予め定めた周期ごとの出力電力値に基づいてインバータ装置の起動台数を決定する。上記積算電力回数部MAは、上記直流電源DCからの出力電力値と上記インバータ装置の起動台数とに基づいて上記各インバータ装置ごとの起動回数をカウントして積算起動回数値を算出し、かつ上記各インバータ装置ごとの入力電力及び出力を積算して積算電力値を算出し、続いて、上記積算起動回数値と上記積算電力値とを乗算して上記各インバータ装置ごとの積算電力起動回数値を算出して記憶する。そして、上記各インバータ装置の積算電力起動値の少ないものから順に選択信号を出力する。上記インバータ選択部CHは、上記決定された起動台数と上記選択信号とに基づいて、上記積算電力起動回数値の少ない順から上記インバータ装置を選択する。
【0021】
第1インバータ制御回路CO1は、台数制御部SKから起動信号が入力すると動作を開始し、第1開閉器SW1を閉路して第1インバータ回路PC1に直流電源DCからの出力電力を供給し、かつ、第1インバータ回路PC1を起動させて直流電圧を交流電圧に変換して系統電源ACに供給する。第2インバータ制御回路CO2及び第nインバータ制御回路COnも上記と同一動作を行なう。
【0022】
次に、本発明の動作を、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0023】
図2に示すステップ100において、電力検出部DSは直流電源DCからの出力電力を予め定めた周期で検出して出力電力値として出力する。
【0024】
ステップ200において、出力電力演算部PAは周期ごとの出力電力値に基づいてインバータ装置の起動台数を決定する。
【0025】
ステップ300において、積算電力回数部MAは各インバータ装置ごとに対応した各データを記憶する所定の番地を設定する。
【0026】
ステップ400において、積算電力回数部MAは、周期ごとに決定する起動台数に基づいて停止状態から起動状態へと変化した回数を各インバータ装置ごとにカウントして積算起動回数値を算出して所定の番地に記憶する。
【0027】
ステップ500において、積算電力回数部MAは、各インバータ装置の入力電力又は出力電力を計測し、上記計測した出力電力を積算して各インバータ装置ごとの積算電力値を算出して所定の番地に記憶する。
【0028】
ステップ600において、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とを乗算して積算電力起動回数値を算出し、所定の番地に上記積算電力起動回数値を記憶する。
【0029】
ステップ700において、積算電力起動回数値の少ないインバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択する。
【0030】
以上でルーチンが終了し、また最初のステップ100から同じルーチンが繰り返される。
【0031】
図3は、インバータ装置の設置台数を、例えば、10台とし、測定期間を1ヶ月として、各インバータ装置ごとの積算電力起動回数値を算出し、上記積算電力起動回数値の少ない上記インバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択したときの、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とのバラツキを測定した図である。図3に示す測定結果より、上記各インバータ装置の積算電力起動回数値の少ない順から上記インバータ装置を選択すると、上記各インバータ装置の積算電力値のバラツキの均一化のみならず積算起動回数値のバラツキの均一化も実現できる。
【0032】
上述より、平均化対象要素を一つに絞り込んで平均化した場合は、対象要素に対してのも大きく平均化されるが、他の要素に対しては望ましい結果が得られない。それに対して、本発明の積算起動回数値と積算電力値との2要素を乗算した値に基づいて各インバータ装置を選択すると、従来技術で課題となっていた起動回数にたいしても均一化が可能となる。
【0033】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2は、上記実施の形態1の図2に示すフローチャートと相違する動作についてのみ説明する。
【0034】
図示省略のステップ500において、周期ごとに決定する起動台数に基づいて上記各インバータ装置ごとの起動状態から停止状態に変化するまでの起動時間を計測し、上記起動時間を積算して積算起動時間値を算出し、所定の番地に記憶する。
【0035】
ステップ600において、各インバータ装置ごとの積算起動時間値と積算起動回数値とを乗算して積算時間起動回数間値を算出し、所定の番地に上記積算時間起動回数値を記憶する。
【0036】
ステップ700において、積算時間起動回数値の少ないインバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択する。
【0037】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3は、上記実施の形態1の図2に示すフローチャートと相違する動作についてのみ説明する。
【0038】
図示省略のステップ600において、各インバータ装置ごとの積算電力値と積算起動回数値とを加算して積算電力起動回数値を算出し、所定の番地に上記積算電力起動回数値を記憶する。
【0039】
ステップ700において、上記加算して算出した積算電力起動回数値の少ないインバータ装置から順に決定された起動台数だけ選択する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る太陽電池の電源システムのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【図3】平均化対象要素を積算電力起動回数値として各インバータ装置の積算電力値 と積算起動回数値とのバラツキを計測した図である。
【図4】従来技術の太陽電池の電源システムのブロック図である。
【図5】平均化対象要素を積算電力値として各インバータ装置の積算電力値と積算起 起動回数値とのバラツキを計測した図である。
【符号の説明】
【0041】
AC 交流系統
CH インバータ選択部
CO1 第1インバータ制御回路
CO2 第2インバータ制御回路
COn 第nインバータ制御回路
DC 直流電源(太陽電池)
DS 電力検出部
MA 積算電力回数部
PA 出力電力演算部
PC1 第1インバータ回路
PC2 第2インバータ回路
PCn 第nインバータ回路
PS1 第1インバータ装置
PS2 第2インバータ装置
PSn 第nインバータ装置
SA 出力制御部
SK 台数制御部
SW1 第1開閉器
SW2 第2開閉器
SW3 第3開閉器
SW4 第4開閉器
SWn−1 第n−1開閉器
SWn 第n開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に複数台のインバータ装置を並列接続し、前記直流電源からの出力電力値を予め定めた周期で計測し、前記周期ごとの出力電力値に基づいて前記インバータ装置の起動台数を決定し、前記各インバータ装置の入力電力又は出力電力を積算して前記各インバータ装置ごとの積算電力値を算出し、前記積算電力値の少ない前記インバータ装置から順に前記決定された起動台数だけを選択し、前記選択されたインバータ装置が前周期から起動しているときはそのまま継続し、停止しているときは起動状態に変化させるインバータ装置の制御方法において、前記各インバータ装置が停止状態から起動状態へと変化した回数を各インバータ装置ごとにカウントして積算起動回数値を算出し、前記各インバータ装置ごとの前記積算電力値と前記積算起動回数値とを乗算して積算電力起動回数値を算出し、前記積算電力起動回数値の少ない前記インバータ装置から順に前記決定された起動台数だけを選択することを特徴とするインバータ装置の制御方法。
【請求項2】
前記積算電力起動回数値を、前記各インバータ装置ごとの起動時間を積算して積算起動時間値を算出し、前記積算起動時間値を前記積算電力値の代りに使用することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置の制御方法。
【請求項3】
前記積算電力起動回数値を、前記各インバータ装置ごとの前記積算電力値と前記積算起動回数値とを加算して算出することを特徴とする請求項1記載のインバータ装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−6019(P2006−6019A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179062(P2004−179062)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】