説明

インラインフィルタ装置

【課題】 真空吸着時、真空破壊時のどちらの場合においても、一度吸い込んだゴミを戻さないように工夫したフィルタ手段を有する。
【解決手段】 入力口側と出力口側とを連通する2つの通路を設けたインラインフィルタ装置本体と、一方の通路に設けられ、入力口側からの連通のみを可能にする第一のチェック弁機能部と、他方の通路に設けられ、出力口側からの連通のみを可能にする第二のチェック弁機能部と、第二のチェック弁機能部と出力口側との間に設けられたフィルタエレメントとを備えている。2つの通路が、インラインフィルタ装置本体内で並列状態または同心状に形成されている。インラインフィルタ装置本体に、フィルタエレメントの目視用手段を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体製造分野などの真空吸着搬送分野において用いられるインラインフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば真空搬送の場合、真空吸着通路の先端部に装着した吸着部(チャック)で、ワークの表面を吸着把持して所定位置に搬送し、真空保持部に破壊空気を流入させることにより、ワークの外しを行なっている。この場合、吸着時にワーク周辺の空気を吸い込むため、その周辺の空気中のゴミや、ワーク表面や周辺に落下しているゴミを吸い込んで、ゴミが真空吸着通路内に付着してしまい、次に搬送位置決め場所で、真空破壊の空気を再び吸着部に供給する際に、真空吸着通路内に付着しているゴミをまた吸着部から破壊空気と共にワークに噴射して、ワークやその周辺を汚染してしまうおそれが高い。
【0003】
このようなことから、真空吸着部に例えば特許文献1に明示されたようなチューブ継手付きエアフィルタを接続することが考えられる。この場合、チューブ継手側とチューブの接続口側を、真空吸着路に接続することとなるが、どちらを真空吸着側あるいは空気供給側に接続しても良い(特許文献1明細書3頁左段9〜12行目の記載)。
【特許文献1】実公平5−34739号公報
【特許文献2】実開昭61−87294号公報
【特許文献3】実開昭63−30694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術では、確かに一方から接続した時には、フィルタエレメントにより、その位置より先へのゴミの侵入が防止できる。しかし、反対側の流れに対しては、フィルタエレメントで捕捉したゴミを再び吐き出してしまい、それによって新たな汚染を発生してしまうといった問題点を有している。
なお、特許文献2や特許文献3にも同様の技術が記載されているが、特許文献1に記載された技術と同様な欠点がある。
【0005】
このように、従来装置を真空吸着機構に接続される通路にそのまま装着して用いると、真空吸着時に例えば吸盤装置から吸い込んだゴミは、フィルタエレメントで捕捉されてそれ以上先には流入しないが、反対に真空破壊空気を吸盤装置に供給して真空破壊する時に、再度フィルタエレメントを通過する空気によって先に捕捉されたゴミを吸盤装置から吹き出してしまい、周囲を汚染してしまうおそれがある。
【0006】
従って、以上説明したような配管のラインに沿って設けられるインラインフィルタ方式では、真空吸着機構にそのまま装着して用いて真空吸着時、真空破壊時のどちらの場合に用いても、一度吸い込んだゴミを戻さないように工夫することが必要である。
本発明は、この点に注目して為されたもので、その目的は、真空吸着時、真空破壊時のどちらの場合においても、一度吸い込んだゴミを戻さないように工夫したフィルタ手段を有するインラインフィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインラインフィルタ装置は、入力口側と出力口側とを連通する2つの通路を設けたインラインフィルタ装置本体と、一方の通路に設けられ、入力口側からの連通のみを可能にする第一のチェック弁機能部と、他方の通路に設けられ、出力口側からの連通のみを可能にする第二のチェック弁機能部と、第二のチェック弁機能部と出力口側との間に設けられたフィルタエレメントとを備えている。
【0008】
本発明に係るインラインフィルタ装置では、2つの通路が、インラインフィルタ装置本体内で並列状態に形成されている。
また、本発明に係るインラインフィルタ装置では、2つの通路が、インラインフィルタ装置本体内で同心状に形成されている。
また、本発明に係るインラインフィルタ装置では、インラインフィルタ装置本体に、フィルタエレメントの目視用手段を設けている。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、真空吸着時にフィルタエレメントを通過する吸引通路と、真空破壊用空気を供給する通路とを別にし、それぞれの通路に反対向きにチェック弁機能部を介在したので、フィルタエレメントで捕捉したゴミを破壊空気により再び戻すことがなくなり、従来のような汚染を防止できる。
また、本発明においては、2つの通路を並列あるいは同心状に構成することで、真空用インラインフィルタ装置を簡単な構造でかつ安価に提供できる。
【0010】
さらに、本発明においては、フィルタエレメント部分が位置するインラインフィルタ装置本体に、目視手段を設けたので、フィルタエレメントの汚れ状況が一目でわかり、交換あるいは清掃時期が外部から判断することができるなど、メンテナンスが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
(本発明の原理説明)
本発明の実施形態を説明する前に、図1に基づいて本発明の原理について説明する。
図1は、本発明に係るインラインフィルタ装置10の基本回路を示す。本発明に係るインラインフィルタ装置10は、入力ポートPと出力ポートAとを連通する2つの通路11,12を有する。一方の通路11には入力ポートP側からの連通のみを可能にするチェック弁機能部13を接続し、他方の通路12には出力ポートA側からの連通のみを可能にするチェック弁機能部14を接続し、チェック弁機能部14と出力ポートAとの間を、フィルタエレメント15を介して連通している。
【0012】
このように構成した本発明に係るインラインフィルタ装置10を、例えば真空吸着用パッドと電磁弁などを接続する配管途中に接続する際、出力ポートAを真空吸着パッド側と接続し、入力ポートPを電磁弁側に接続する。
このように接続することによって、真空吸着時、真空吸着パッド側から出力ポートAに流入した空気は、フィルタエレメント15を通り、チェック弁機能部14から入力ポートPを通り電磁弁側に排気される。一方、電磁弁側から真空破壊空気は、入力ポートPからチェック弁機能部13を通って出力ポートAから真空吸着パッド側に供給され、真空が破壊される。
【0013】
このように、真空吸着によって排気される空気に混入したゴミは、フィルタエレメント15を通っていくので、ゴミは除去され、また破壊空気が供給される時は別の通路12を通るので、吸い込んだゴミを再度真空吸着パッド側から吹き出すことはなく、汚染などを回避できる。
(第一実施形態)
図2〜図4は、本発明の第一実施形態に係るインラインフィルタ装置20を示す。
【0014】
本実施形態に係るインラインフィルタ装置20では、図1における2つの通路11,12を並列状態に形成した概略直方体形状のインラインフィルタ装置本体21と、インラインフィルタ装置本体21の側面部に装着される概略直方体形状のアダプタ45とを備えている。
インラインフィルタ装置本体21は、反アダプタ45に開口する入力ポート22を有する。入力ポート22は、途中から通路23と通路30とに分かれる。
【0015】
一方の通路23は通口24を介して第一のチェック弁25に連通し、第一のチェック弁25内に配置されているチェックカバー28内を通ってアダプタ45の通路47と連通して出力ポート46に接続されている。ここで、第一のチェック弁25は、インラインフィルタ装置本体21の挿入穴21a内に、入力ポート22側に位置するチェック弁本体26と、弾性体としてのバネ27と、チェックカバー28と、チェックカバー28の端部に取り付けるシールリング29とを有し、入力ポート22から出力ポート46側への流入のみを許容する。
【0016】
他方の通路30は、第二のチェック弁31に連通し、さらに通口37を通ってフィルタエレメント38内に連通し、フィルタエレメント38の内挿室からフィルタカバー40内を通り、アダプタ45の通路48と連通して出力ポート46に接続されている。ここで、第二のチェック弁31は第一のチェック弁25とは互いに逆向きに配置されている。第二のチェック弁31は、インラインフィルタ装置本体21の挿入穴21b内に、出力ポート46側に位置するチェック弁本体32と、弾性体としてのバネ33と、チェックカバー34と、チェックカバー34の端部に取り付けるシールリング35と、インラインフィルタ装置本体21に第二のチェック弁31を固定する栓部材36とを有し、出力ポート46側からフィルタエレメント38を介して入力ポート22側へのみの流入を許容する。また、フィルタエレメント38は、概略断面コ字状の多孔質材料などで構成されており、インラインフィルタ装置本体21の挿入穴21c内において、透明なスリーブ39の内側にフィルタカバー40で底側に押し付けるように装着されている。透明なスリーブ39の両端部には、シールリング41,42が取り付けられている。
【0017】
また、インラインフィルタ装置本体21には、内蔵されたフィルタエレメント38に相当する外側位置に、窓43あるいは他の面に窓44を開口して、透明なスリーブ39を介してフィルタエレメント38の状態を目視できるように構成されている。
また、アダプタ45は、インラインフィルタ装置本体21側に開口する2つの通路47,48を反インラインフィルタ装置本体21側に開口する出力ポート46と連通している。
【0018】
本実施形態では、入力ポート22、出力ポート46には、インスタント継手と呼ばれるワンタッチ式の継手49,50が装着してあるが、通常のねじ穴でも、あるいは他の継手が装着してあっても構わない。
次に、このように構成された本実施形態に係るインラインフィルタ装置20の作用を説明する。
【0019】
本実施形態に係るインラインフィルタ装置20では、入力ポート22は、途中から並列した2つの通路23,30を有している。一方の通路23は入力ポート22からの連通のみを許容するチェック弁機能を有する第一のチェック弁25を介しての通路、他方の通路30は出力ポート46からフィルタエレメント38を通り、出力ポート46側への連通のみを許容するチェック弁機能を有する第二のチェック弁31を介しての通路である。
【0020】
従って、先に説明した原理構成と同様に、真空吸着により入り込んだゴミはフィルタエレメント38で除去され、空気のみが第二のチェック弁31を介して入力ポート22側に流出し、入力ポート22からの空気はフィルタエレメント38側の通路30への流入が第二のチェック弁31により阻止され、一方の通路23から真空吸着部側に真空破壊空気として供給される。
【0021】
さらに、本実施形態によれば、内蔵されたフィルタエレメント38に相当する外側位置に設けた窓43,44を介してフィルタエレメント38の状態を目視することができるため、メンテナンスを容易にすることが可能となった。
(第二実施形態)
図5は、本発明の第二実施形態に係るインラインフィルタ装置60を示す。
【0022】
本実施形態に係るインラインフィルタ装置60は、2つの通路60A,60Bを同心状に形成した点で、第一実施形態に係るインラインフィルタ装置20とは相違する。
本実施形態に係るインラインフィルタ装置60は、全体がほぼ円筒状を有しているスリーブ(外筒)61と、その両端にねじ込まれたカバー62,65とを有し、一方のカバー62には中央に入力ポート63が貫通形成してあり、他方のカバー65には出力ポート66が同様に貫通形成してある。
【0023】
さらに、この3つの要素によって形成された内部空間には、入力ポート63と連通する貫通穴71を中心部に形成するとともに、外周に環状溝72を形成したチェックボディ70と、このチェックボディ70の端部73とカバー62の内端面64との間に挟設した円筒状のフィルタエレメント74と、チェックボディ70の環状溝72内に内径側が保持され、外周側がスリーブ61の内面に摺接し、リップ状チェック機能を呈する正圧チェック弁である第二のチェック弁75と、カバー65の先端側に形成した筒部67の内径部68内に配置され、チェックボディ70の貫通穴71の開口部を閉止するように位置するチェック弁本体77とバネ78とからなる真空チェック弁である第一のチェック弁76とが配置されている。さらに、カバー65の内径部68を形成した筒部67周囲には、複数の貫通穴69が半径方向に貫通形成してある。なお、チェックボディ70、フィルタエレメント74および筒部67の外径は、スリーブ61の内径に対して所定の隙間を有する。ここでは、入力ポート63から貫通穴71に至る通路および第一のチェック弁76から出力ポート66に至る通路を一方の通路60Aとし、フィルタエレメント74とスリーブ61との間の隙間および貫通孔69を介して連なる内径部68に至る通路を他方の通路60Bとした。他方の通路60Bには、第二のチェック弁75が配設されている。
【0024】
次に、このように構成された本実施形態に係るインラインフィルタ装置60の作用を説明する。
本実施形態に係るインラインフィルタ装置60では、入力口側(カバー62側)が電磁弁に、出力口側(カバー65側)が真空吸着部に接続してある。
吸着時は、図6に示すように、パッド側からの空気を出力ポート66側から流入させると、第一のチェック弁76でチェックボディ70の貫通孔71を閉じ(通路60Aを閉じ)、出力ポート66から貫通穴69を通り、第二のチェック弁75のリップ状部分を変形して通路60Bを開放し、フィルタエレメント74に流入し、フィルタエレメント74を通過して入力口63に排気される。この時、吸着側からゴミを吸い込んだときは、フィルタエレメント74で捕捉され、また大きなもの、例えばハンダ屑などは、図8に示すように、第二のチェック弁75の手前の空間部分79に溜めることができる。
【0025】
次に、真空破壊時は、図7に示すように、電磁弁側からの空気を入力ポート63から流入させると、第一のチェック弁76をチェックボディ70の貫通孔71から離反し、中心の貫通口71からチェック弁76を開放させ、出力口66から流出する。この時、空気はフィルタエレメント74を通過するが、第二のチェック弁75のリップ部が通路60Bを閉鎖する。従って、吸着時にフィルタエレメント71に捕捉されたゴミをパッド側へ噴出することがない。
【0026】
このように、本実施形態においては、2つの通路60A,60Bを同心状に形成することによっても、図1に示した原理に沿った作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るインラインフィルタ装置の原理を説明する基本回路図である。
【図2】第一実施形態に係るインラインフィルタ装置の正面断面図である。
【図3】図2のインラインフィルタ装置の外観を示す正面図である。
【図4】図3のインラインフィルタ装置のA矢視図である。
【図5】第二実施形態に係るインラインフィルタ装置の正面断面図である。
【図6】図5のインラインフィルタ装置の吸着時の動作を示す説明図である。
【図7】図5のインラインフィルタ装置の真空破壊時の動作を示す説明図である。
【図8】図5のインラインフィルタ装置の大きなゴミをチェック弁手前の空間部分で捕捉した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10,20,60 インラインフィルタ装置
A,46,63 出力ポート
P,22,66 入力ポート
11,12,23,30,60A,60B 通路
13,14 チェック弁機能部
15 フィルタエレメント
21 インラインフィルタ装置本体
25,76 第一のチェック弁
26,32,77 チェック弁本体
27,33,78 バネ
28,34 チェックカバー
31,75 第二のチェック弁
38,74 フィルタエレメント
39 スリーブ
40 フィルタカバー
43,44 窓
45 アダプタ
61 スリーブ(外筒)
62,65 カバー
70 チェックボディ
71 貫通穴
72 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力口側と出力口側とを連通する2つの通路を設けたインラインフィルタ装置本体と、
前記一方の通路に設けられ、前記入力口側からの連通のみを可能にする第一のチェック弁機能部と、
前記他方の通路に設けられ、前記出力口側からの連通のみを可能にする第二のチェック弁機能部と、
前記第二のチェック弁機能部と前記出力口側との間に設けられたフィルタエレメントと
を備えたことを特徴とするインラインフィルタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のインラインフィルタ装置において、
前記2つの通路が、前記インラインフィルタ装置本体内で並列状態に形成されている
ことを特徴とするインラインフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1記載のインラインフィルタ装置において、
前記2つの通路が、前記インラインフィルタ装置本体内で同心状に形成されている
ことを特徴とするインラインフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のインラインフィルタ装置において、
前記インラインフィルタ装置本体に、前記フィルタエレメントの目視用手段を設けてなる
ことを特徴とするインラインフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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