説明

イージーピールフィルム

【課題】シール強度が高く、優れた易開封性を有するとともに、透明性に優れたイージーピールフィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも基材層(A)とシーラント層(B)とからなる共押出多層フィルムであって、基材層(A)はポリプロピレンからなり、シーラント層(B)は、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂からなり、該ポリプロピレンの密度と該ポリエチレンの密度との密度比が1:0.97〜1:1.03であり、また該ポリプロピレンと該ポリエチレンとの配合比(質量)が80:20〜50:50であり、且つ厚さが5〜20μmであるイージーピールフィルム。上記のポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレンが好ましい。また、このイージーピールフィルムのヘイズ値は10%以下が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品などの包装分野において、包装容器のシール部に配置するためのヒートシール性フィルムに関し、詳しくは、優れたイージーピール性を有し、且つ透明性がよいイージーピールフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品などの包装袋、カップ容器の蓋材などのシール部にはヒートシール性を有するフィルムが配置されている。また、これらのシールには、使用時に包装袋や蓋を手で容易に開封できるように、易開封性シールが多用されている。この易開封性シールに用いるシール材の一種として、基材層にシーラント層(シール層)を積層したいわゆるイージーピールフィルムが知られている。このイージーピールフィルムの基材層面には、必要に応じて、更に、包装袋の基材や蓋の基材が積層される。そして、従来から、種々の構成のイージーピールフィルムが提案されている。
【0003】
例えば、オレフィン樹脂層とイージーピール可能な異樹脂ブレンド樹脂層と加工性改善樹脂層とを共押出してなるイージーピールフィルムが提案され、異樹脂ブレンド樹脂としてポリプロピレンとポリエチレンのブレンドが挙げられ、一例としてポリプロピレン、及び、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとの異樹脂ブレンド樹脂を共押出してなるフィルムの例が記載されている(特許文献1)。また、ポリプロピレンよりなる基材層に、ポリブテンとポリエチレンとポリプロピレンとを含有するシール層を積層したポリプロピレン容器用イージーピールフィルムが提案されている(特許文献2)。また、シール層が、エチレン−メタクリル酸共重合体とポリプロピレンとの混合物からなるクッション層とポリエチレンからなるシーラント層の両層からなり、クッション層側に包装袋の基材や蓋材の基材を積層するようにした、イージーピールフィルムが提案されている(特許文献3)。
【0004】
更に、特定のメルトインデックスを有する長鎖分岐化ポリプロピレンホモポリマー又は長鎖分岐化ポリプロピレンブロックポリマーとポリスチレンとからなる樹脂組成物をシーラント層とする、ポリプロピレン樹脂に対してイージーピール性を有する積層体が提案されている(特許文献4)。また、高密度ポリエチレン樹脂(密度0.942g/cm以上)とポリプロピレン樹脂の混合物からなるシール樹脂層と、該シール樹脂層に隣接したポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂層を含む1層又は2層以上からなる基材樹脂層とで構成され、シール樹脂層と基材樹脂層の層間強度が基材樹脂層の破壊強度より大きい、蓋材用多層積層フィルムが提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−131556号公報
【特許文献2】特開平6−328636号公報
【特許文献3】特開2002−283513号公報
【特許文献4】特開2002−128972号公報
【特許文献5】特開2008−114437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品や医薬品などの包装分野においては、包装容器内に収納した内容物が、外から見えることを要求される場合がある。そのためには、包装袋や蓋の基材に透明な材料を用いることが要求されるとともに、シール部に配置するイージーピールフィルムにも透明性が要求される。従来のイージーピールフィルムは、透明性が十分といえず、包装袋や蓋材のシール部に適用した際に内容物が見えにくくなるという問題があった。本発明は、この問題点を解決し、シール強度が高く、優れた易開封性を有するとともに、透明性に優れたイージーピールフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため、種々の材料について検討を行った結果、ポリプロピレンに非相溶成分としてポリエチレンを配合した混合樹脂をシーラント層に用いるにあたり、この混合樹脂のポリプロピレンの密度とポリエチレンの密度との密度比が、該混合樹脂の透明性に影響し、特定の密度比にすることにより優れた透明性を有するものとなることを知り、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも基材層(A)とシーラント層(B)とからなる共押出多層フィルムであって、基材層(A)はポリプロピレンからなり、シーラント層(B)は、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂からなり、該ポリプロピレンの密度と該ポリエチレンの密度との密度比が1:0.97〜1:1.03であり、また該ポリプロピレンと該ポリエチレンとの配合比(質量)が80:20〜50:50であり、且つ厚さが5〜20μmであることを特徴とするイージーピールフィルムである。上記のポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレンが好ましい。また、このイージーピールフィルムのヘイズ値は10%以下が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のイ−ジーピールフィルムは、透明性がよいので、包装容器の収納物が外から見えることを要求される包装容器のシール部材に好適に使用できる。これをシール部に配した包装材は、シールしたときのシール強度が優れており、またそのシールの易開封性もよく、手で簡単に開封でき、更に開封したときの剥離部の剥離外観も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のイ−ジーピールフィルムの基材層(A)はポリプロピレンで構成されている。本発明では、透明性に優れたイ−ジーピールフィルムを得るために、シーラント層(B)を支持する基材層(A)として、透明性に優れた樹脂であるポリプロピレンを用いる。このポリプロピレンとしては、プロピレン単位のみからなるホモポリマー、或いはプロピレンと少量のエチレン、1―ブテンなどとのブロック又はランダム共重合体が用いられる。特に、透明性の良さ、押し出し加工性の良さの点で、プロピレンと少量のエチレン又は1―ブテンとのランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0011】
本発明は、イ−ジーピールフィルムのシーラント層(B)として、ポリプロピレンとポリエチレンの混合樹脂を用いる。本発明は、この混合樹脂を構成するポリプロピレンの密度とポリエチレンの密度との密度比を、特定の密度比、すなわち、ポリプロピレンの密度:ポリエチレンの密度=1:0.97〜1:1.03にすることにより、優れた透明化に成功したものである。本発明のイ−ジーピールフィルムのシーラント層(B)の混合樹脂のポリプロピレンとしては、プロピレン単位のみからなるホモポリマー、或いはプロピレンと少量のエチレン、1―ブテンなどとのブロック共重合体又はランダム共重合体が用いられる。これらポリプロピレンの密度は、0.90〜0.91g/cmである(本発明における密度は、JIS K7112に準じて測定した値である)。透明性の良さ、押し出し加工性の良さの点で、プロピレンと少量のエチレン又は1―ブテンとのランダム共重合体が好ましい。
【0012】
本発明のシーラント層(B)の混合樹脂のポリエチレンについて説明する。一般に、ポリエチレンは、その密度によって、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンに大別されるが、ポリエチレンの密度は、1―ブテン、1−ヘキセン、I−オクテンなどのα−オレフィンを共重合させることによりコントロールすることができ、密度0.88〜0.965g/cmの種々の密度のポリエチレンが市販されている。ポリエチレンは、ラジカル重合触媒、フィリップス触媒、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などの触媒のもとで重合させて製造できるが、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレンが、分子量分布が狭く、結晶分布が均一であって、透明性がよく、好ましい。
【0013】
本発明では、シーラント層(B)で使用するポリプロピレンとポリエチレンの密度について、ポリプロピレンの密度:ポリエチレンの密度=1:0.97〜1:1.03の密度比の範囲内にする。すなわち、使用するポリプロピレンとポリエチレンを、この密度比の範囲内になるように選択する。上記の密度比が1:0.97より小さくなると透明性が悪化し、また1:1.03より大きくなると透明性が悪化する。合成樹脂フィルムの透明性は、ヘイズ値で表わされるが、本発明のイ−ジーピールフィルムは、ヘイズ値(JIS−K−7105)10%以下のものが好ましく、ヘイズ値10%以下のものは実用的な透明性を有する。
【0014】
また、本発明では、シーラント層(B)のポリプロピレンとポリエチレンとの配合比を、質量で、ポリプロピレン;ポリエチレン=80:20〜50:50の範囲内にする。すなわち、ポリプロピレン80〜50質量%、ポリエチレン50〜20質量%の割合で配合する。ポリプロピレンの配合比がこれより高いと接着強度が強すぎて易開封性が悪化する。また、ポリプロピレンの配合比これより低いと、接着強度が弱く、包装容器のシール性が満足できない。
【0015】
また、本発明では、シーラント層(B)の厚みを、5〜20μmにする。20μmを超えると、剥離の途中で層間での剥離となり、膜残りや糸曳きなどを起こして、剥離面の外観が劣るものになる。また、5μmより薄くなると、ヒートシール時に掛かる圧力でシーラント層(B)が流れてしまい、基材層(A)のポリプロピレンと容器の基材とが接着し、易開封性が損なわれることがある。
【0016】
本発明の基材層(A)のポリプロピレン、及びシーラント層(B)のポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂には、それぞれ、熱可塑性樹脂に慣用される添加剤、例えば、酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロックキング防止剤、防曇剤、染料、顔料、オイル、ワックス、充填剤等を添加してもよい。
【0017】
本発明のイ−ジーピールフィルムは、基材層(A)とシーラント層(B)とを、公知の多層Tダイ成形機又は多層インフレ成形機を用いて共押出成形し、多層フィルムにすることにより得られる。そして、この成形の際、基材層(A)とシーラント層(B)の間に、本発明の目的を損なわない範囲で他のポリオレフィン系樹脂層(例えば、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)を積層させてもよい。また、このイ−ジーピールフィルムには、必要に応じて、その基材層(A)側に、包装袋の基材や蓋材の基材、例えばポリエステル樹脂層、ポリアミド樹脂層、ポリカーボネート樹脂層などを積層してもよい。この積層は、上記の共押出成形のときに行ってもいし、ドライラミネート成形機などを用いて別工程で行ってもよい。また、本発明のイ−ジーピールフィルムを使用した包装容器のヒートシールは、160〜230℃で行われる。
【0018】
実施例1〜4、比較例1〜6
表1に示す組成の、基材層のポリプロピレンと、シーラント層のポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂を、多層Tダイ成形機に投入し、温度230℃で共押出し成形して表1に示す厚さの多層フィルム(イージーピールフィルム)を作成した。得られたそれぞれのフィルムについて、ヘイズ値、シール強度を測定し、また剥離外観を評価した。その結果を表1に示す。なお、表1には、使用したポリプロピレン及びポリエチレンの密度(単位:g/cm)を併記した。
【0019】
【表1】

【0020】
表1において、ポリプロピレン(1)は、サンアロマー社製のPC630S(プロピレンランダム共重合体)、ポリプロピレン(2)は、日本ポリプロ社製のWFX4TA(プロピレンランダム共重合体),ポリエチレン(1)は、日本ポリエチレン社製のKS340T(メタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリエチレン(2)は、プライムポリマー社製の0218G(直鎖状低密度ポリエチレン)、ポリエチレン(3)は、日本ポリエチレン社製のHJ632N(高密度ポリエチレン)、ポリエチレン(4)は、日本ポリエチレン社製のSF941(直鎖状低密度ポリエチレン)である。
【0021】
実施例、比較例におけるヘイズ値、シール強度の測定法、及び剥離外観の評価は、次のとおりである。
(1)ヘイズ値
ヘイズ値(%)は、JIS−K−7105により測定した。ヘイズ値が小さいほど透明性がよく、ヘイズ値10%以下のものが実用的である。
(2)シール強度(剥離強度)
上記で得た各多層フィルムの基材層に、厚さ12μmのポリエステルフィルムをドライラミネート法で積層した。この積層体のシーラント層に200μmのポリプロピレンシートを、テスター産業社製ヒートシーラーを用い、温度230℃、圧力0.2MPa、時間1秒でヒートシール(加熱接着)した。このヒートシールしたサンプルを15mm幅に切断し、株式会社オリエンテック社製テンシロンUCT−500を用いて引張り速度300mm/分でシール部を剥離し、そのときの剥離強度(シール強度)を(N/15mm幅)で測定した。
そして、シール強度(N/15mm幅)7〜20のものが、シール強度が適度で易開封性がよく実用的である。シール強度(N/15mm幅)が7未満のものは、シール強度が低すぎて包装容器のシール材としては実用的でなく、また、シール強度(N/15mm幅)が20を超えるものは、シール強度が強すぎて易開封性が悪い。
(3)剥離外観
上記のシール強度の測定におけるシール部を剥離したものについて、剥離後の外観を目視で評価した。剥離後の外観が良いものは○、糸曳きなどが見られ外観が悪いものは×で表した。
【0022】
表1から分かるように、本発明の実施例1〜4のイージーピールフィルムは、ヘイズ値が4,3〜7.6で透明性がよく、またシール強度(N/15mm幅)が8.6〜19.2であって、適度のシール強度を持ち、易開封性がよく、更に剥離外観も優れていた。一方、シーラント層の混合樹脂のポリプロピレンの密度とポリエチレンの密度との密度比が、本発明の範囲外である比較例1,2は、ヘイズ値がそれぞれ16.5及び24.5と大きく、透明性が劣った。また、シーラント層の混合樹脂のポリプロピレンとポリエチレンの配合比が本発明の範囲外であり、ポリプロピレンの配合量が多い比較例3はシール強度が大きすぎて易開封性に劣り、フィルムの破れや切れが生じ、剥離外観も悪かった。またポリプロピレンの配合量が少ない比較例4はシール強度が小さすぎて、実用的でなかった。また、シーラント層の厚みが、本発明の範囲外であり、2μmと薄い比較例5は、シール強度が大きくて易開封性に劣り、フィルムの破れや切れが生じ、剥離外観も悪かった。またシーラント層の厚みが30μmと厚い比較例6は、剥離時に糸曳き、膜残りして剥離外観が悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層(A)とシーラント層(B)とからなる共押出多層フィルムであって、基材層(A)はポリプロピレンからなり、シーラント層(B)は、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂からなり、該ポリプロピレンの密度と該ポリエチレンの密度との密度比が1:0.97〜1:1.03であり、また該ポリプロピレンと該ポリエチレンとの配合比(質量)が80:20〜50:50であり、且つ厚さが5〜20μmであることを特徴とするイージーピールフィルム。
【請求項2】
ポリエチレンが、メタロセン触媒を用いて重合したポリエチレンである請求項1記載のイージーピールフィルム。
【請求項3】
ヘイズ値が10%以下である請求項1又は2記載のイージーピールフィルム。

【公開番号】特開2010−194781(P2010−194781A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40292(P2009−40292)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】