説明

ウイルスを精製するための方法

細胞溶解調製物からウイルスを精製するためのプロセスが、記載される。このプロセスは、好ましくは、2つの連続するクロマトグラフィー工程からなる。その第一工程は、サイズ排除クロマトグラフィーを利用する清澄化工程である。その第二工程は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用する、ウイルス捕捉・放出工程である。これらの連続クロマトグラフィー工程は、ウイルスを精製することおよびクロマトグラフィー緩衝液の導電率調整を回避することの利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本明細書中に記載される発明は、ウイルス精製の分野にある。
【背景技術】
【0002】
癌を処置するためのウイルスの使用に再帰している。Lancet Oncology Vol.3,January 2002,第17頁を参照のこと。多分、最も研究されたウイルスは、アデノウイルスである。McCormickおよびその同僚は、最近の研究のほとんどを行った。彼らは、腫瘍サプレッサーであるp53に結合してその機能を阻害する55kdタンパク質をコードするE1B遺伝子において欠失を有するアデノウイルスを使用した。Science,1996,vol.274:第373頁。このウイルスは、p53機能を欠く腫瘍を標的とし、ヒト臨床試験に入っている。癌を処置するように遺伝子操作された別のウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。種々の変異体(ICP34.5遺伝子において変異を含む変異体、およびICP6遺伝子において変異を含む変異体を含む)が、構築されて試験された。前者は、いわゆる神経毒性因子をコードし、一方、後者は、リボヌクレオチドレダクターゼの大サブユニットをコードする。ICP34.5変異体ウイルスは、現在、グリア芽細胞腫を有する患者に関してフェーズIヒト臨床試験中である。Market Jら、Gene Ther,vol.2000;vol.7:第867頁。
【0003】
アデノウイルスおよび単純ヘルペスウイルス(最も研究された2種の腫瘍溶解性ウイルスである)に加えて、かなりの研究が、腫瘍溶解能力を有する他のウイルス(ワクシニアウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、水疱性口内炎ウイルスおよびニューカッスル病ウイルスが挙げられる)に対してなされ、今も実施され続けている。Lancet Oncology Vol.3,January 2002,page 17。
【0004】
腫瘍溶解因子として、またはワクチンもしくは遺伝子を送達するための手段として、ウイルスにおいて最新の興味を持って、実験室研究規模でウイルスを培養および精製する方法は、そのウイルスが多数の患者を処置するために使用される場合に必要とされる大規模産生には、十分ではないことが明らかなった。研究レベルでのウイルスの精製は、一般的に、密度ベースの超遠心分離方法を使用して実施される。この方法は、研究ツールとして使用するために有効であることが証明されているが、この方法は、非常に高価であり、時間がかかり、産業規模産生のために容易にはスケールアップされない。超遠心分離に対する可能な代替法は、クロマトグラフィーである。
【0005】
サイズ排除クロマトグラフィーは、単独でか、または密度勾配遠心分離と組み合わせて、特定の植物ウイルスを精製するため(Albrechtsenら、J.Virological Methods 28:245〜256,1990)ならびにウシパピローマウイルスを精製するため(HjorthおよびMereno−Lopez,J.Virological Methods 5:151〜158(1982));およびダニ媒介脳炎ウイルスを精製するため(Crooksら、J.Chrom.502:59〜68(1990))に、使用されている。これはまた、組換えレトロウイルスの産生のためにも使用されている(Mento,S.J.,Viagene,Inc.,1994 Williamsburg Bioprocessing Conference)。
【0006】
Harunaら,Virology 13:264〜267(1961)は、1型アデノウイルス、3型アデノウイルス、および8型アデノウイルスの精製のためにDEAEアニオン交換クロマトグラフィーを使用することを報告する。一方、KlempererおよびPereir(Virology 9:536〜545:1959)およびPhilipson(Virology 10:459〜465(1960))は、他の型のアデノウイルスを用いて同じ方法を使用することを報告する。また、Blanche F.ら,Gene Ther 2000 Jun;7(12):1055〜62は、アデノウイルス粒子の検出および精製のための、改良型アニオン交換HPLC方法を記載する。
【0007】
サイズ排除クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーに加えて、他のクロマトグラフィー方法が、ウイルスを精製するために使用されている。例えば、モノクローナル抗体(Mab)を使用するアフィニティクロマトグラフィーは、ダイズモザイクウイルスの精製のために有効な方法であると報告されている(Diacoら、J.Gen.Virol.67:345〜351,1986)。Fowler(J.Virological Mehods.11:59〜74(1985))は、エプスタインバーウイルスを精製するために、密度勾配遠心分離と組み合わせてMabアフィニティクロマトグラフィーを使用した。
【0008】
O’Keeffe R.ら、Biotechnol Bioeng 1999 Mar 5;62(5):537〜45は、硫酸セルフィンおよびヘパリン−HPマトリックスを使用する、感染性単純ヘルペスウイルスウイルスのアフィニティ吸着回収を記載する。
【0009】
Huygheら(Human Gene Therapy 6:1403〜1416(1995))は、組換えアデノウイルスの精製のためのいくつかの方法(アニオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、固定亜鉛アフィニティクロマトグラフィー、超遠心分離が挙げられる)の比較を開示し、組換えアデノウイルスの精製のための好ましいプロセスは、細胞溶解物をヌクレアーゼ処理し、その後、膜フィルターに通して濾過し、その後、DEAEクロマトグラフィーを行い、その後、亜鉛アフィニティクロマトグラフィーを行うことであると、結論付けている。
【0010】
米国特許第4,724,210号は、インフルエンザウイルスの精製方法を記載する。
【0011】
米国特許第4,725,546号は、日本脳炎ウイルスの精製方法を記載する。
【0012】
米国特許第4,725,547号は、狂犬病ウイルスの精製方法を記載する。
【0013】
米国特許第4,855,055号は、化学アフィニティクロマトグラフィーによる、プレS2含有B型肝炎ウイルス表面抗原の単離および精製を記載する。
【0014】
米国特許第5,602,023号は、精製ウイルスワクチンの調製プロセスを記載し、そのプロセスは、ショ糖勾配超遠心分離によるウイルスの精製工程、再水和工程、および凍結乾燥工程を包含する。
【0015】
米国特許第5,837,520号は、アデノウイルス精製方法を特許請求する。その方法は、ウイルス粒子を含む細胞溶解物を、非カプセル化DNAおよび非カプセル化RNAの両方を選択的に分解する酵素薬剤で処理する工程;処理した溶解物を第一樹脂にてクロマトグラフする工程;および第一樹脂からの溶出物を第二樹脂にてクロマトグラフする工程からなり、一方の樹脂は、アニオン交換樹脂であり、もう一方は、固定金属イオンアフィニティ樹脂である。
【0016】
米国特許第6,008,036号は、ウイルス精製方法を記載する。その方法は、アニオン交換クロマトグラフィー工程、その後、カチオン交換クロマトグラフィー工程、そして必要に応じて、金属結合アフィニティクロマトグラフィー工程を使用する、クロマトグラフィーによる。
【0017】
米国特許第6,194,191号は、精製アデノウイルスを精製するための方法を記載する。その方法は、培地において宿主細胞を増殖させる工程;灌流培養によってかもしくは流加培養プロセスを介してその宿主細胞に栄養物を提供する工程;その宿主細胞を溶解して、アデノウイルスを含む細胞溶解物を提供する工程(その溶解は、感染した細胞の自己分解を介して達成される);ならびにその溶解物からアデノウイルスを精製して、精製アデノウイルス組成物を提供する工程;を包含する。種々のクロマトグラフィー工程(アニオン交換クロマトグラフィーを使用することを含む)もまた、特許請求されている。
【0018】
米国特許第6,261,823号は、ウイルス調製物からアデノウイルスを精製する方法を特許請求している。その方法は、そのウイルス調製物をアニオン交換クロマトグラフィーに供する工程;そのアニオン交換クロマトグラフィー媒体からアデノウイルスを溶出する工程;およびそのアニオン交換溶出物をサイズ排除クロマトグラフィーに供する工程という、連続工程を包含し、アデノウイルスが、サイズ排除クロマトグラフィー媒体から溶出される。
【0019】
米国特許第6,383,795号は、結合部分を含むアニオン交換クロマトグラフィー樹脂を使用してアデノウイルスがクロマトグラフィー樹脂に結合するようにさせて、アデノウイルスについて溶液を濃縮する方法を特許請求する。その結合部分は、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジメチルアミノイソブチル、およびジメチルアミノペンチルからなる群より選択される。その後、アデノウイルスは、上記樹脂から溶出される。
【0020】
米国特許第6,537,793号は、アデノウイルスを精製する方法を記載する。その方法は、生物学的媒体を、架橋アガロースマトリックスとその架橋アガロースマトリックスに可撓性アームにより結合したイオン交換基とを含む支持体に接触させて、その生物学的媒体とクロマトグラフィー支持体との間の接触により、生物学的媒体からウイルス粒子を分離する工程を包含する。
【0021】
しばしば、ウイルスを精製するための方法の中心的特徴は、アニオン交換クロマトグラフィーと、その後のサイズ排除クロマトグラフィーとからなることは、注目に値する。ほとんどの場合、アニオン交換クロマトグラフィーの前に、濾過工程が実施される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
精製された腫瘍溶解ウイルス、または遺伝子治療用ウイルスベクターとして使用され得るウイルスについて、必要性が増加していることを考慮すると、改良された精製方法が、非常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一局面は、ウイルスを調製物から精製する方法である。その方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、その後のアニオン交換クロマトグラフィーに供するという連続工程を使用する。その連続クロマトグラフィー工程は、細胞溶解物調製物を清澄化し、ウイルスを精製し、そしてクロマトグラフィー緩衝液の導電率調整を回避するという利点を有する。
【0024】
本発明の別の局面は、ウイルスを細胞溶解物調製物から精製する方法であり、その方法は、サイズ排除クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィーという連続工程を使用し、そのサイズ排除クロマトグラフィーは、1つ以上の別個の多孔性クロマトグラフィー材料を使用することかなる。
【0025】
本発明の別の局面は、ウイルスを、そのウイルスを含む調製物から精製する方法であり、その方法は、サイズ排除クロマトグラフィーの前に界面活性剤を使用して、細胞溶解物を可溶化することによる。
【0026】
本発明の別の局面は、ウイルスを、そのウイルスを含む調製物から精製する方法であり、その方法は、サイズ排除クロマトグラフィーの前に界面活性剤およびヌクレアーゼを使用して、細胞溶解物を可溶化することによる。
【0027】
本発明の特徴は、サイズ排除クロマトグラフィーとその後にアニオン交換クロマトグラフィーとを使用して、細胞溶解物調製物からウイルスを精製する際に、クロマトグラフィー緩衝液の導電率を調整することを回避することである。
【0028】
本発明のなお別の特徴は、ウイルスを精製するための方法であり、その方法は、連続してかまたは直列して実施され得るクロマトグラフィーを含み、それによって迅速な精製を可能にする。
【0029】
本発明のこれらの局面および他の局面は、下記に提示される本発明を完全に考慮すると明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本特許全体を通して引用されるすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許/特許出願の各々が、その全体を参考として援用すると具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、参考として援用される。
【0031】
本発明の実施は、分子生物学、タンパク質分析、および微生物学の技術を使用する。それらの技術は、当業者の範囲内にある。そのような技術は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley & Sons,New York,1995に完全に説明されている。また、細胞トランスフェクション技術、アデノウイルスの増幅および力価測定技術は、以前に記載されている(F.L.Grahamら、Molecular Biotechnology 3:207〜220,1995;Grouzetら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1414〜1419,1997;WO 96/25506)。
【0032】
本発明の改変および変化形は、当業者にとって明らかである。本明細書中に記載される具体的な実施形態は、例としてのみ提供される。本発明は、それらの実施形態によって限定されるものとは解釈されるべきではない。
【0033】
本発明は、ウイルスを含む調製物からウイルスを精製するためのプロセスに関する。「ウイルス調製物」によって、ウイルスを含む任意の溶液、およびそのウイルスが精製されようとされる他の物質が、意図される。そのウイルス調製物は、多数の方法(インビトロでの宿主細胞における培養(バッチ、灌流培養、もしくは細胞工場方法のうちのいずれか1つを含む)または適切な動物宿主におけるインビボでの培養を含む)によって、作製され得る。前者の場合において、ウイルス感染細胞が、収集され得、増殖培地から分離され得、そのウイルスは、その細胞の溶解および細胞破片からの分離によって遊離される。後者の方法において、そのウイルスを含む組織もしくは器官が、取り出され得、そしてそのウイルスはまた、その組織もしくは器官を構成する細胞の溶解によって遊離され得、細胞破片/組織破片から分離され得る。ウイルスはまた、体液から精製され得る。
【0034】
用語「ウイルス」とは、野生型ウイルス、変異体ウイルス、および組換えウイルスを包含し、特に、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、A型肝炎ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、パルボウイルスB19、およびニューカッスル病ウイルスが挙げられるが、これらに限定はしない。この分野の当業者は、他のウイルスが、精製されるウイルスにとって適切であるように本発明のプロセスの特定の特徴を適合することによって、本発明のプロセスを使用して精製され得ることを、認識する。好ましいウイルスは、精製プロセスにおけるクロマトグラフィー工程として、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して容易に精製されるウイルスである。そのようなウイルスとしては、アデノウイルス、レンチウイルス(これは、0.5M NaCl〜1M NaCl間で大きな広いピークとして溶出する)、感染性膵臓壊死ウイルス(これは、100mM NaCl〜125mM NaCl間の塩濃度にて溶出する)、A型肝炎ウイルス、およびパルボウイルスB19が、挙げられる。
【0035】
「溶解」とは、化学的手段もしくは物理的手段によってかまたはウイルス生活環の一部として、ウイルス感染細胞を開口させ、それによってウイルス収集を可能にするプロセスを指す。後者のプロセスは、自己分解と呼ばれる。
【0036】
「清澄化」によって、多孔性クロマトグラフィー材料を使用してウイルス調製物からウイルスを精製する際の工程が意味され、その工程は、アニオン交換クロマトグラフィー工程の前に行われる。清澄化は、カラムクロマトグラフィーまたはバッチ形式で達成され得る。
【0037】
「清澄化クロマトグラフィー」によって、多孔性クロマトグラフィー材料を使用してウイルス調製物からウイルスを精製する際の清澄化工程が意味される。
【0038】
「多孔性クロマトグラフィー材料」によって、主にサイズに基づき、より低い程度には疎水性および電荷に基づく、分子の分離において一般的に使用される事実上任意の型の材料が意味される。本明細書中で例証される場合、「多孔性クロマトグラフィー材料」としては、デキストラン(例えば、SephadexTM樹脂)、または種々の材料(アガロース、ポリスチレンジビニルベンゼン、ポリメタクリレート、シリカ、脂肪族アクリル酸ポリマー(例えば、AmberliteTM樹脂)が挙げられる)から構成され得る他の多孔性材料を、不純物を保持するがウイルスは保持しないような種々の表面誘導体化(例えば、親水性誘導体化、イオン性誘導体化、疎水性誘導体化など)を伴って包含する。
【0039】
「サイズ排除クロマトグラフィー」によって、多孔性クロマトグラフィー材料(好ましくは、多孔性ビーズ)を使用して分子を分離するための方法が、意味される。サイズ排除クロマトグラフィーは、アニオン交換クロマトグラフィーの前に実施される、単一工程において使用される1種以上の別個の型の多孔性クロマトグラフィー材料からなり得るか、または複数の別個の工程において使用される1種以上の多孔性クロマトグラフィー材料からなり得る。本明細書中で使用される場合、1種よりも多くの多孔性クロマトグラフィー材料が使用される「サイズ排除クロマトグラフィー」の例は、AmberliteTM CAD7HPおよびSephadexTM G−50である。
【0040】
下記に考察されるクロマトグラフィーは、個々の工程としてか、連続的にか、または直列して、実施され得る。「直列」によって、あるクロマトグラフィーからの溶出物が、介在する溶出物収集工程を伴わずに、次のクロマトグラフィーに直接適用されることが、意味される。
【0041】
(清澄化)
ウイルスを精製するための一般的な精製スキームが、図1に示される。本発明の好ましい実施形態は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用する清澄化を含み、これは、好ましくは、2種の多孔性クロマトグラフィー材料からなる。好ましい第一の多孔性クロマトグラフィー材料は、非イオン性脂肪族樹脂から構成され、より好ましくは、そのような樹脂は、非誘導体化非イオン性脂肪族アクリル酸ポリマー樹脂であり得る。より好ましいのは、Rhom & Hassによって製造されるAmberliteシリーズの樹脂(Amberlite XAD−7HPが挙げられる)である。最も好ましいのは、実施例において記載されるような、カラム形式で使用されるAmberlite XAD−7HPである。
【0042】
特定の細胞溶解物からウイルスを精製する際に、存在する細胞凝集物の量に依存して、サイズ排除クロマトグラフィーを実施するために単一の多孔性クロマトグラフィー材料を使用し、上記のサイズ排除を省略することが望ましいものであり得ることに留意することが、重要である。これらの場合において、下記に考察する予備清澄化(すなわち、濾過)工程を使用し、その後、単一の多孔性クロマトグラフィー材料(好ましくは、デキストラン製であり、より好ましくは、特定のSephadexTM樹脂である)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーを使用することが、十分であり得る。
【0043】
SephadexTM樹脂を使用するサイズ排除クロマトグラフィー、および下記に考察するアニオン交換クロマトグラフィー工程は、当該分野において周知であり、米国特許第5,837,520号;同第6,194,191号;および同第6,261,823号に記載されているが、連続工程として記載されているわけではない。この連続工程が、本発明の新規な局面である。
【0044】
一般的には、当該分野で周知でありかつ下記に考察される手段によって得られた細胞溶解物は、清澄化に供される。サイズ排除カラムからのウイルス含有溶出物は、アニオン交換カラムに適用される。その後、ウイルスが、そのアニオン交換カラムから溶出される。ウイルスの溶出は、当該分野で公知の技術(光学密度または光学散乱を含む)によってモニターされ得る。さらに、精製前および精製後のウイルスの生物学的特性が、十分に確立されたアッセイ(プラークアッセイが挙げられる)を使用して、決定され得る。
【0045】
本発明の新規な特徴は、サイズ排除クロマトグラフィーを使用し、その後に、アニオン交換クロマトグラフィーを使用することであることにまた留意することが、重要である。当業者によって使用される以前の方法は、これらの2つのクロマトグラフィー工程の順序が逆であった。例えば、米国特許第6,261,823号を参照のこと。
【0046】
精製プロセスにおいてアニオン交換クロマトグラフィーの前にサイズ排除クロマトグラフィーを使用することによって得られる好ましい結果に関して、いかなる特定の理論にも拘束されることは意図しないが、これは、低分子量材料と、少なくとも部分的には脂質材料からなるそれによりもかなり大きな分子量の凝集物とからウイルスを分離することによって、ウイルス精製を促進すると考えられる。サイズ排除クロマトグラフィーのこの後者の特性は、ウイルス精製の分野の当業者によってこれまでは認識されていない。従って、本発明は、ウイルスを精製する新規なプロセスを思いがけず発見した。
【0047】
サイズ排除クロマトグラフィーとアニオン交換クロマトグラフィーとの連続使用から生じる本発明の別の特徴は、クロマトグラフィー工程間で緩衝液の導電率調整を実施する必要性が大いに低減するかまたは排除することである。下記により考察されるように、アニオン交換クロマトグラフィーの最大限の性能を実現するために、ウイルスをクロマトグラフするために使用される緩衝液の導電率は、これまで、精製工程の間に受容可能な範囲になるように調整する必要が大いにあり、それは、使用されるアニオン交換樹脂の型およびウイルス被膜の電荷性質に依存する。アニオン交換クロマトグラフィーの前に緩衝液を調整する必要性は、本発明によって本質的に排除される。なぜなら、サイズ排除クロマトグラフィーは、ウイルス用からアニオン交換平衡緩衝液へと緩衝液交換すると同時に、粒子状物質および低分子量不純物を減少するからである。従って、そのウイルス溶出物は、アニオン交換カラムに直接適用され得る。
【0048】
より具体的には、本明細書中で意図される場合、サイズ排除クロマトグラフィーは、分子を主にそのサイズに基づいて、かつ疎水性および電荷にも基づいて、多孔性クロマトグラフィー材料を使用してか、または球状ビーズの形態である架橋多糖(例えば、架橋アガロースおよび/もしくはデキストラン)の複合物質であり得る不活性ゲル媒体である樹脂を使用して、分離する工程を含む。架橋の程度が、膨潤したゲルビーズ中に存在する孔のサイズを決定する。特定のサイズよりも大きな分子は、そのゲルビーズ中に侵入せず、従って、そのクロマトグラフィー床を最も速く移動する。これは、ウイルスに当てはまる。より小さな分子(例えば、界面活性剤、タンパク質、DNAなど)は、そのサイズおよび形状に依存して種々の程度までそのゲルビーズに侵入し、これは、その床を通る通過が遅い。従って、分子は、一般的には、分子サイズが小さくなる順序に溶出される。ウイルスは、その大きなサイズが原因で、孔には侵入せず、一般的には、空隙容量にて溶出する。上記のように、緩衝液の導電率に影響を与える分子が大幅に除去されるので、この工程は、緩衝液の導電率を変更させる必要もなく、アニオン交換クロマトグラフィーに匹敵するウイルス溶出物を緩衝液中に生じる。従って、そのウイルス溶出物は、アニオン交換カラムに直接適用され得る。
【0049】
ウイルスは、タンパク質に対して、大きな分子実体である。例えば、アデノウイルスは、約80nmの直径を有し、従って、ビーズの孔に侵入しない。ウイルス精製の状況でサイズ排除クロマトグラフィーを使用するさらなる有利な特徴は、上記のように、ビーズ中に侵入せず、従って、ウイルスとともに空隙容量において溶出すると予期される細胞物質からなる大きな分子量の凝集物および粒子状物質が、実際には保持されることである。これは、それらがカラムから溶出する速度を遅くする。その結果は、この材料からのウイルスの予期せぬ分離である。この効果は、多孔性クロマトグラフィー材料間の間隙空間(すなわち、多孔性ビーズ間の空間)において経時的に存在してくる上記凝集物/粒子状物質(そのサイズは、充填された床においてその粒子の直径に正比例する)から、またはそのような凝集物がサイズ排除クロマトグラフィー多孔性材料について有する親和性から、生じ得る。
【0050】
ウイルスのサイズ排除クロマトグラフィーのために適切な好ましい多孔性クロマトグラフィー樹脂は、デキストラン製であり、より好ましくは、架橋デキストラン製である。より好ましいのは、商標名「SEPHADEX」のもとでAmersham Biosciencesから入手可能な樹脂である。SEPHADEXの型または使用される他のサイズ排除クロマトグラフィー樹脂の型は、精製されようとするウイルス型、およびそのウイルスを含む細胞培養物溶解物の性質の関数である。Sephadex G−50−Fineは、粒径範囲20μm〜80μmを有し、<30kDの不純物および保持し、かつ/または遅くする。この粒子および孔径の組合せは、粒子状物質および低分子量不純物の良好な保持を提供し、平衡化して<40%(v/v)にて充填した場合には、次のクロマトグラフィー(アニオン交換)工程への緩衝液交換を、いかなる導電率調整もさらに行わずに可能にする。これはまた、高分子量ウイルスの容易な通り抜けを許容する。
【0051】
種々の構築材料からの他のサイズ排除支持体もまた、適切であり、それは例えば、Toyopearl 55F(ポリメタクリレート;Tosoh Bioscience,Motgomery,PA)およびBio−Gel P−30 Fine(BioRad Laboratories,Hercules,CA)である。
【0052】
(アニオン交換クロマトグラフィー)
ウイルスを精製する本発明の清澄化プロセスにおいてサイズ排除クロマトグラフィーの後に続くクロマトグラフィー工程は、「アニオン交換クロマトグラフィー」である。後者は、正電荷有機部分を、不活性ポリマー骨格に共有結合架橋して使用する。後者は、樹脂の支持体として使用される。代表的な有機部分は、一級アミノ基、二級アミノ基、三級アミノ基、および四級アミノ基(例えば、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジメチルアミノエチル(DMAE)、およびpHが約5〜約9の範囲内の形式正電荷を既に有するかまたはこれから有する他の基(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))から引き出される。
【0053】
上記支持体材料は、容易に誘導体化可能でありかつ良好な機械的強度を有する、材料である。その材料は、天然ポリマー物質、合成ポリマーもしくは合成コポリマー、または天然ポリマーと合成ポリマーとの混合物であり得る。その支持体は、多孔性もしくは非孔質の粒子、ビーズ、膜、ディスク、またはシートの形状を採り得る。そのような支持体としては、シリカ、親水性ポリマー(MonoBeadsTM,Amersham Corporation,Piscataway,N.J.)、架橋セルロース(例えば、SephacelTM)、架橋デキストラン(例えば、SephadexTM)、架橋アガロース(例えば、SepharoseTM)、ポリスチレン、またはアクリルアミド誘導体のポリマー鎖がグラフト化されるコポリマー(例えば、ポリスチレン−ジビニルベンゼン、もしくはオリゴエチレングリコールとグリシジルメタクリレートとメタクリレートとペンタエリスロールジメタクリレートとから構成されるコポリマー)が挙げられる。
【0054】
DMAE、TMAE、DEAE、または四級アンモニウム基を使用することが、好ましい。商標名Fractogel(Novagen)のもとで販売される多数のアニオン交換樹脂は、TMAE、DEAE、DMAEを正電荷部分として使用して、メタクリレートコポリマーをバックグラウンドとして使用する。より好ましいのは、四級アンモニウム樹脂を使用する樹脂である。最も好ましいのは、商標名Q SOURCE−30(Amersham Biosciences)の下で販売される型の四級アンモニウム樹脂である。Q SOURCE−30は、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンで製造された支持体を有する。
【0055】
アニオン交換クロマトグラフィー樹脂は、従来の(重力)カラムクロマトグラフィーにおいて、または放射状流もしくは軸流、流動床カラムを使用する高速液体クロマトグラフィー装置において、またはスラリー(すなわち、バッチ)方法において、使用され得る。後者の方法において、その樹脂は、デカンテーションもしくは遠心分離もしくは濾過またはこれらの方法の組合せによって、サンプルから分離される。ウイルスを含むサイズ排除カラムからの溶出物は、アニオン交換樹脂に直接適用され得、その後、漸増する塩勾配(好ましくは、塩化ナトリウム勾配、より好ましくは、塩化ナトリウム段階勾配)によってこの樹脂から溶出される。
【0056】
イオン交換クロマトグラフィーの原理は、荷電分子がイオン交換体に可逆的に吸着した結果、イオン環境を変えることによって分子が結合したり溶出したりし得ることである。イオン交換体における分離は、通常は、2つの段階において達成される。第一の段階で、分離されるべき物質が、安定かつ強固な結合を生じる条件を使用して交換体に結合される。その後、その物質は、精製される物質の性質に依存して、種々のpHまたはイオン強度の緩衝液を用いて溶出される。
【0057】
より具体的には、本発明に適用される場合、イオン交換クロマトグラフィーの基本原理は、交換体に対するウイルスのアフィニティは、そのウイルス外部被膜の電気特性と、溶媒中の他の荷電物質の相対アフィニティとの両方に依存することである。従って、結合したウイルスは、そのpHを変化させ、従ってそのウイルスの電荷を変化させることによって溶出され得るか、または競合物質(塩がその単なる一例である)を添加することによって溶出され得る。種々の物質は異なる電気特性を有するので、放出条件は、結合した分子種各々によって変化する。一般的には、良好な分離を得るためには、選択方法は、連続的イオン強度勾配溶出または段階的溶出のいずれかである。アニオン交換体について、pHが減少されてイオン強度が増加されるか、またはイオン強度のみが増加されるかのいずれかである。カチオン交換体について、pHおよびイオン強度の両方が、増加され得る。この溶出手順の実際の選択は、通常は、精製されるウイルスの安定性についての考慮事項の試行錯誤の結果である。
【0058】
ウイルスに結合して溶出させるために使用される、アニオン交換体の型、および緩衝液、および塩もまた、精製されようとするウイルスの型の関するであることが、当業者によって認識される。
【0059】
最後に、アニオン交換カラムからの溶出物は、滅菌フィルター(ポリビニリデンフルオリド(PVDF)製で0.45μm以下)を通して濾過され得、濾液が濃縮され得る。好ましい濃縮方法は、ポリエーテルスルホン(PES)膜を使用し、好ましくは500kDポリエーテルスルホン(PES)膜を使用する、限外濾過である。好ましくは、そのフィルターは、Millipore Corporationから入手可能なBIおMaxカセットシリーズのフィルターであるか、またはAG Corporationからの中空繊維型フィルターである。適切な限外濾過フィルターはまた、Sartorius SorporationおよびPall Corporationからも入手可能である。
【0060】
(細胞溶解物調製)
ウイルスは、上記のような多数の供給源(細胞株、組織、体液、器官などが挙げられる)から調製された細胞溶解物から精製され得る。しばしば、ウイルスは、ウイルス感染細胞から生成した細胞溶解物調製物から精製され、その細胞は、細胞培養方法を使用して増殖される。例えば、アデノウイルスは、ウイルス感染細胞(例えば、293細胞、Hela細胞など)から単離され得る。細胞は、収率を最適化するために、高い感染多重度(MOI)で感染され得る。
【0061】
感染細胞からウイルスを放出させるために適切な任意の方法が、ウイルスを含む細胞溶解物を調製するために利用され得る。ウイルスは、当該分野で公知の技術を使用してか、または自己分解によって、感染細胞から放出され得る。ウイルス感染細胞を溶解する好ましい方法としては、低張液の使用、高張液の使用、超音波処理の使用、圧力の使用、または界面活性剤の使用が挙げられる。好ましい技術は、界面活性剤を使用することであり、より好ましくは、サンプル中のDNAおよびRNAの量に依存して、界面活性剤と組み合わせてヌクレアーゼもまた使用することである。
【0062】
多数の界面活性剤(非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤を含む)が、細胞を可溶化するために利用可能である。好ましい界面活性剤は、事実上、非イオン性である。なぜなら、これらは、ウイルス構造を破壊する傾向がなく、従って、精製されたウイルスは、その生物学的活性を維持するからである。さらに、これらは、ウイルスの外部表面上の疎水性領域(この領域は、望ましくないウイルス凝集に関連する)に結合するという有益な特性を有する。従って、これらの界面活性剤は、ウイルス凝集を低減し、これにより、精製プロセスの効率および収率を増加する。
【0063】
広汎に使用される種類の非イオン性界面活性剤は、TweenTMである。このTweenTM界面活性剤は、非変性非イオン性界面活性剤であり、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステルから構成される。代表的には、TweenTM界面活性剤(特に、TweenTM20およびTweenTM80)は、タンパク質が疎水性物質(例えば、プラスチックまたはニトロセルロース)に非特異的結合するのを防ぐためのブロッキング剤として使用される。本発明に適用される場合、この特性は、ウイルス凝集を低減する。一般的には、これらの界面活性剤は、0.01%〜1.0%の濃度で使用される。
【0064】
TweenTM20とTweenTM80との間の差異は、脂肪酸鎖の長さである。TweenTM80は、18炭素鎖テールを有するオレイン酸から誘導される。一方、TweenTM20は、12炭素鎖テールを有するラウリン酸から誘導される。脂肪酸鎖が長いほど、TweenTM80界面活性剤は、TweenTM20よりも親水性が弱くなるが、両方の界面活性剤は、水に可溶性である。
【0065】
別の種類の非イオン性界面活性剤は、TritonTMX界面活性剤である。このファミリーの界面活性剤(TritonTMX−100、X114およびNP−40)は、類似する特定の塩基性特徴を有するが、その特定の疎水性−親水性特性が異なる。これらの不均質界面活性剤は、芳香環に結合した分枝8炭素鎖を有する。この分子のこの部分が、この界面活性剤の疎水性性質の大部分に寄与する。TritonTMX−100およびNP−40は、構造および疎水性が非常に類似しており、ほとんどの適用(本発明に適用可能である場合には、細胞溶解が挙げられる)において交換可能である。
【0066】
別の種類の非イオン性界面活性剤であるBrijTMは、疎水性鎖に結合した種々の長さのポリオキシエチレン鎖を有するという点で、TritonTMX界面活性剤と構造が類似している。しかし、TritonTMX界面活性剤とは異なり、BrijTM界面活性剤は、芳香環を有さず、炭素鎖の長さが変化し得る。BrijTM58は、TritonTMX−100とその疎水性/親水性特徴が類似している。
【0067】
なお別の種類の非イオン性界面活性剤は、オクチルグルコピラノシドとオクチルチオグルコピラノシドとからなる。これらは、細胞を可溶化するために有用な、透析可能な非変性界面活性剤である。
【0068】
ウイルス感染細胞を溶解するため、そしてこれらの細胞からウイルスを精製するために、好ましい界面活性剤の実施形態は、TweenTM20、TweenTM80、NP−40TM、BrijTM−58、TritonTMX−100、またはオクチルグルコシドである。より好ましいのは、TweenTM20およびTweenTM80である。最も好ましいのは、約1%(v/v)の最終濃度で使用されるTweenTM80である。
【0069】
1種以上の酵素(好ましくは、RNAseおよび/またはDNAse、または当業者にとって公知であるエンドヌクレアーゼ混合物からなる)が、細胞溶解物を処理するために使用され得る。細胞凝集またはウイルス凝集を引き起こすことにより、本発明のクロマトグラフィー精製スキームを妨害し得る核酸が、細胞物質に付着し得、回収されるウイルスがほとんどなくなることが周知である。この実施形態において使用するために好ましい酵素薬剤は、ベンゾナーゼ(BenzonazeTM(American Internationl Chemicals))であり、これは、RNAおよびDNAの両方を迅速に切断する非特異的な組換えヌクレアーゼである。他の例示的ヌクレアーゼとしては、PulmozymeTMまたは当該分野で一般的に使用される他の任意のDNAseまたはRNAseが挙げられる。
【0070】
BenzonazeTMが核酸を迅速に加水分解する能力によって、この酵素は、細胞溶解物の粘性を減少するために理想的である。BenzonazeTMは、精製の間の長鎖核酸負荷を低減するために十分に適切であり、従って、収率を改善する。
【0071】
ウイルス感染細胞の細胞溶解物を作製する最も好ましい方法は、その細胞を、界面活性剤(好ましくはTween−80TM)をヌクレアーゼ(好ましくはBenzonaseTM)の存在下で用いて溶解する工程を包含する。
【0072】
ウイルス(特に、アデノウイルス)は、当該分野で公知の多数の技術によって同定および/または定量され得る。その技術としては、Huygheら、Human Gene Therapy 6:1403〜1416(November 1995)に記載されるものと類似する、アニオン交換(AEX)HPLCが挙げられる。上記のアニオン交換クロマトグラフィー工程の後のどの時点においても、ウイルスはまた、当該分野で公知であるタス運お技術によって同定および/または定量され得、その技術としては、米国特許第5,837,520号および同第6,316,185号にそれぞれ記載されるような、精製画分の吸光度(好ましくは、260nm)を測定すること、または光散乱によるウイルス粒子の観察が挙げられる。
【0073】
また、特定の精製工程の後の感染性ウイルスの回収は、適切な宿主細胞株の感染によって決定され得る。例えば、感染性アデノウイルスは、プラークアッセイによって同定および力価決定され得る。あるいは、感染細胞は、豊富なアデノウイルスヘキソンタンパク質について染色され得る。そのような染色は、感染7日間後にその細胞をアセトン:メタノールで固定し、ポリクローナルFITC標識抗ヘキソン抗体(Chemicon,Temecula,Calif.)で染色することによって、実施され得る。精製画分の活性が、クロマトグラフィーの前と後とを比較することによって、決定され得る。
【0074】
(予備清澄化)
上記清澄化工程の前に、界面活性剤(または好ましくは、界面活性剤およびヌクレアーゼ)で野処理後の細胞溶解物調製物は、大きな粒子状物質を除去するように処理され得る。これは、多数の手順(低速遠心分離または濾過が挙げられる)によって達成され得る。濾過が、好ましい。使用される濾過の型(すなわち、組成および孔径)は、特定のウイルスを精製する分野の当業者の知識の範囲内である。ポリプロピレン製、ポリスルホン製、PVDF製、または酢酸セルロース製のフィルターが、使用され得る。ポリプロピレンフィルターが、好ましい。このフィルターの好ましい多孔度は、概して、≦5μmである。
【0075】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含められる。当業者は、本開示を考慮して、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更が具体的実施形態においてなされ得、同様の結果が得られ得ることを認識する。
【実施例】
【0076】
(実施例1)
(アデノウイルスの精製)
一般的な精製スキームが、図1において示される。ウイルスを、本実施例に記載される精製プロセスの特定の工程においてモニターした。この方法は、Huygheら、Human Gene Therapy 6:1403〜1416(Novemeber 1995)に記載されるものと類似する、AEX−HPLCによるウイルス濃度の測定からなった。要約すると、1ml Resource−Qカラムを、300mM NaClと20mMリン酸緩衝液(pH7.5)とを含む緩衝液で平衡化した。300mM NaCl〜600mM NaClの直線勾配を実施して、上記ウイルスを溶出させた。そのUV吸光度を、260nmおよび300nmにおいてモニターした。そのウイルスピークの面積を積算し、塩化セシウム精製した参照標準物と比較した。
【0077】
(細胞溶解物の調製)
Hela−S3細胞(American Type Culture Collectionから入手可能、受託番号ATCC CCL−2.2)に、Johnsonら、Cancer Cell,2002 May;1(4):325〜37により記載されるような、アデノウイルス(Onyx 411)を感染させた。70リットルの細胞培養収集物を、0.65μm中空繊維濾過システムを使用して約3倍に濃縮し、グリセロールを最終10%(v/v)まで添加し、その細胞を凍結して−70℃において保持した。その細胞を、使用するまで凍結したままにした。約2,946gの物質の凍結収集物アリコート(体積約2,860ml)を、精製するように計画した。そのウイルスの精製直前に、その細胞を、2℃〜8℃において12時間配置し、その後、37℃水浴中にて断続的に混合しながらその細胞を30分間融解させ、その細胞を25℃に配置した。その後、その融解溶液を、羽根車およびバッフル付き容器を使用して激しく混合しながら、TweenTM−80およびBenzonaseTMを、それぞれ、最終溶液1ml中1%および100Uになるように添加した。約320mlの10% TweenTM−80溶液を添加し、約1,272μlの250U/μlのBenzonaseTM溶液を添加した。その最終体積は、約3,182mlであった。その混合物を、500rpmにて約90分間攪拌しながら室温でインキュベートした。その後、細胞物質のほとんどが可溶化した。
【0078】
可溶化した物質を、事前に洗浄したProfile II(多孔度5μmのポリプロピレンフィルター;Pall番号PCFY1Y050808)に通して濾過した。その後、この物質を、下記のようにAmeberliteカラムおよびG50カラムに通してさらに清澄化し、緩衝液を交換した。
【0079】
(清澄化)
上記のように調製した可溶化した物質約2797mlを、Amberlite XAD−7HPカラム(Rhom & Haas)およびSephadex G−50 Fineカラムに連続して通すサイズ排除クロマトグラフィーによって、清澄化して緩衝液交換した。このAmberliteカラムは、直径7cm、床高(bed hight)19.5cm、断面積38.5cm、および容積750mlを有した。そのカラムに、ゲルを1.5容量〜2容量の水中に懸濁して樹脂にスラリー粘稠度を有させることによって、充填した。次に、このカラムに、2カラム容量の1N NaOHを通過させることによって、このカラムを清潔にした。上記細胞溶解物をローディングする前に、このカラムを、3カラム容量の水で洗浄し、その後、アニオン交換緩衝液(AEX)平衡化緩衝液(300mM NaCl、20mM Tris(pH7.5)および2mM MgClからなる)で平衡化した。G−50カラムは、直径20cm、床高26.8cm、断面積314.2cmおよび容積8420mlを有した。その樹脂を、20倍(重量/容積)の300mM NaCl溶液(2%ベンジルアルコールを含む)中に懸濁することによって調製した。ベンジルアルコールの溶解度を増加するために、上記NaCl溶液を45℃〜50℃まで加熱した。G−50樹脂を、上記カラム中にスラリーとして充填した。濾過した細胞溶解物をクロマトグラフする前に、そのカラムを、3カラム容量(CV)のアニオン交換緩衝液(AEX)平衡化緩衝液で平衡化した。上記のカラムを直列に接続して、1分間当たり459mlにて流した。図2は、クロマトグラフィープロフィールを示す。ウイルスを含むピークを、280nmにおけるUV吸光度モニタリングによってプールし、約3608mlを得た。ウイルス濃度は、1.59×1011粒子/mlであった。
【0080】
(表1)
(直列に接続したAmberlite XAD−7HPおよびSephadex G−50 Fineクロマトグラフィーについての過程および操作のパラメーターの要約)
Amberliteカラムサイズ:7cm直径、19.5cm床高、750cm床容積;
G−50カラムサイズ:20cm直径、26.8cm床高、8420cm床容積。
【0081】
精製プロフィール パラメーター 値
全手順 温度 22℃
平衡化 流量 459ml/分、3CV/時間
容量 3カラム容量、27.5L
ローディング 流量 459ml/分、3CV/時間
容量 2797ml
濃度 2.06×1011vp/ml
溶出 流量 459ml/分、3CV/時間
容量 3608ml
画分選択 A280 ピーク面積。
【0082】
(アニオン交換クロマトグラフィー(AEX))
Source 30−Q(Amersham Corporation)を充填したアニオン交換カラムは、直径15cm、床高15.5cm、断面積176.7cmおよびカラム容量2,739mlを有した。製造業者から得た場合、この樹脂は、20エタノール溶液中にて供給される。この樹脂を、そのエタノール溶液中に再懸濁し、このカラム中に充填した。使用前に、このカラムを、約8,218mlのAEX平衡化緩衝液(300mM NaCl、20mM Tris(pH7.5)および2ml MgClからなる)で平衡化した。この平衡化は、1分間当たり457mlにて18分間行った。
【0083】
次に、3,608mlからなるG−50溶出物を、0.5μm酢酸セルロースプレフィルターを備えた0.45μm PVDF Durapore−XL(Millipore Corporation)10インチカプセルフィルター中に流量457ml/分で通してカラムにローディングし、その後、平衡化緩衝液(2,739mlの300mM NaCl、20mM Tris(pH7.5)および2mM MgClからなる)で洗浄した。その後、このカラムを2回洗浄した。1回目は、100mMグリシン、20mM Tris(pH7.5)、2mM MgClを含む溶液で洗浄した。2回目は、370mM NaCl、20mM Tris(pH7.5)、および2mM MgClを含む溶液で洗浄した。これらの1回目の洗浄物および2回目の洗浄物の両方は、8,218mlからなった。これらを、1分間当たり457mlの流量にて合計18分間流した。次に、ウイルスを、溶出緩衝液(500mM NaCl、20mM Tris(pH7.5)、および2mM MgClからなる)を使用してアニオン交換樹脂から溶出した。
【0084】
その溶出物を、280nmにてUV吸光度をモニタリングすることによってプールした。これは、Q Source−30カラムから404mlプールを得、ウイルス濃度は、7.33×1011粒子/mlであった。溶出プロフィールが、図3に示される。
【0085】
80%(v/v)グリセロール溶液を、上記プールに添加して、最終容量462mlの10%グリセロールにした。この物質を、0.45μm Millipore Durapore,PVDF,Millipak−20フィルターに通して濾過した。
【0086】
(表3)
(Q Source−30アニオン交換クロマトグラフィーについての過程および操作のパラメーターの要約)
カラムサイズ:15cm直径、15.5cm床高、2,739cm床容積。
【0087】
精製プロフィール パラメーター 値
全手順 温度 約22℃
平衡化 流量 457ml/分
容量 3カラム容量、8,218ml
ローディング 流量 457ml/分
容量 3,608ml
濃度 1.59×1011vp/ml
平衡洗浄 流量 457ml/分
容量 1カラム容量、2,739ml
洗浄1 流量 457ml/分
容量 3カラム容量、8,218ml
洗浄2 流量 457ml/分
容量 3カラム容量、8,218ml
溶出 流量 228ml/分
容量 404ml
画分選択 A280 ピーク面積
濃度 7.33×1011vp/ml
(グリセロール添加
(glyceration)後)。
【0088】
(限外濾過/ダイアフィルトレーションによる濃縮)
最後に、上記アニオン交換カラムから得た溶出物を、0.1sq m 500kD膜を有するMillipore BioMax膜を使用して、濃縮およびダイアフィルトレーションした。この系を、入口圧5psiおよび出口圧0psiにて流した。入口流量700ml/分であり、フラックス速度65ml/分を生じた。グリセロール添加(glyceration)したアニオン交換溶出物を、最初に、約2倍濃縮して1.2×1012vp/mにした。その後、5ダイアフィルトレーション容量(diavolume)の処方物緩衝液(10mM Tris(pH8.0)、20mM NaCl、10%グリセロール、および0.01% Tween−80からなる)で緩衝液を交換した。その後、この処方済みバルクを、−70℃にて凍結した状態で保持した。
【0089】
本発明は、ここに完全に記載されている。添付の特許請求の範囲の趣旨からも範囲からも逸脱することなく、多くの変更および改変が上記の発明に対してなされ得ることは、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
以下の図面は、本発明の特定の局面を示す。本発明は、本明細書中に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、より良く理解され得る。
【図1】図1は、アデノウイルスについての全体的精製プロセスのフロー図を示す。「XAD−7HP」とは、Amerliteクロマトグラフィー工程を指す。「G−50−Fine」とは、Sephadex G−50 Fineクロマトグラフィー工程を指す。「AEX」とは、アニオン交換クロマトグラフィー工程を示す。UF/DFとは、限外濾過工程を指す。
【図2】図2は、直列に作動したAmberlite XAD−7HP/SephadexTMG−50 Fineカラムからのウイルス調製物溶出物のクロマトグラフィープロフィールを示す。そのウイルス調製物は、細胞をTweenTM−80およびBenzonaseTMで溶解することによって、ウイルス感染細胞から作製した。
【図3】図3は、Q−Source 30アニオン交換カラムに適用したSephadex G−50 Fineカラムからの溶出物のクロマトグラフィープロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを、該ウイルスを含む調製物から精製する方法であって、該方法は、
a)該ウイルス調製物を、サイズ排除クロマトグラフィーに供し、該サイズ排除クロマトグラフから該ウイルスを溶出する工程;および
b)工程a)の溶出物を、アニオン交換クロマトグラフィーに供し、該アニオン交換クロマトグラフから該ウイルスを溶出する工程;
という連続クロマトグラフ工程を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記サイズ排除クロマトグラフィーは、単一の多孔性クロマトグラフィー材料からなる、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記単一の多孔性クロマトグラフィー材料は、デキストランを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記単一の多孔性クロマトグラフィー用デキストラン材料は、SephadexTMである、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記アニオン交換クロマトグラフィーは、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジメチルアミノエチル(DMAE)、または四級アンモニウムからなる群より選択されるクロマトグラフィー樹脂を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記アニオン交換クロマトグラフィーは、四級クロマトグラフィー樹脂であるQ Source−30を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記アニオン交換クロマトグラフィーの後に、濾過工程を行う、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記濾過工程は、限外濾過である、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記ウイルス調製物は、細胞溶解物を含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記細胞溶解物を生成し、該方法は、
細胞をウイルスに感染させる工程;
該細胞を増殖培地中で増殖させる工程;および
該細胞を溶解する工程;
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記細胞を溶解する工程は、
該細胞を、自己分解を可能にするために十分な時間の間増殖させる工程
を包含する、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記細胞を溶解する工程は、
該細胞を前記増殖培地から単離する工程;および
該細胞を、該細胞を溶解するために十分な濃度の界面活性剤と接触させる工程;
を包含する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記界面活性剤は、Tween−80である、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記細胞を溶解する工程は、
前記細胞溶解物のヌクレアーゼ処理
をさらに包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記ヌクレアーゼは、DNAアーゼ、RNAアーゼ、またはその両方を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記DNAアーゼは、ベンゾナーゼを含む、方法。
【請求項18】
細胞溶解物溶液からウイルスを精製するための方法であって、該方法は、2つの工程を包含し、
第一工程は、該細胞溶解物溶液の清澄化を包含し、該第一工程は、第二工程においてさらに精製され得るウイルス含有溶液を生じ、
該第二工程は、該第一工程から得られた溶液を、該溶液の導電率を調整することなくアニオン交換クロマトグラフィーに供する工程を包含する、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記第一工程は、
前記細胞溶解物溶液を、サイズ排除クロマトグラフィーに供する工程
を包含する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記アニオン交換クロマトグラフィーは、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジメチルアミノエチル(DMAE)、または四級アンモニウムからなる群より選択されるクロマトグラフィー樹脂を使用する工程を包含する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記アニオン交換クロマトグラフィーは、四級クロマトグラフィー樹脂であるQ Source−30を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−523621(P2007−523621A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517300(P2006−517300)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/019126
【国際公開番号】WO2004/112707
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500132889)オニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (5)
【出願人】(505465966)
【Fターム(参考)】