ウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構
【課題】組付け性に優れ簡素な構造で精度を要する構成部品を保護して隙間調整も安定して行え、ノーブレーキの虞れもなく、非常ブレーキとして油圧シリンダ等の作動手段の付加も容易なウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を提供することを目的とする。
【解決手段】ウェッジカム10を形成したカムシャフト11の軸動により前記ウェッジカム10のカム作用によりブレーキアーム4、4の基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキにおいて、過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフト11の軸方向の初期位置を変更することにより、カムシャフト11自体の先端部において所定の力が作用した状態で過剰ストローク時の隙間調整が行えるので、安定した隙間調整が単一の調整機構にて広い範囲で行うことが可能となる。
【解決手段】ウェッジカム10を形成したカムシャフト11の軸動により前記ウェッジカム10のカム作用によりブレーキアーム4、4の基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキにおいて、過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフト11の軸方向の初期位置を変更することにより、カムシャフト11自体の先端部において所定の力が作用した状態で過剰ストローク時の隙間調整が行えるので、安定した隙間調整が単一の調整機構にて広い範囲で行うことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキを搭載する車両、特に鉄道車両用のディスクブレーキでは、一対のブレーキアームの基端部を拡開してそれらの開放端部に設けられたパッドアッセンブリをブレーキロータ(ディスクロータ)の両側から挟圧してブレーキ動作を行う梃子式のキャリパブレーキが知られている。これらの梃子式のキャリパブレーキにあって、前記パッドアッセンブリが摩耗すると、ブレーキが効き始める時期が遅れて制動距離が長くなるものであった。そこで、ブレーキアームに過剰ストロークが発生することがないように、通常、隙間調整機構であるアジャスタ機構をアクチュエータとブレーキアームの基端部との間に配設している。そのようなアジャスタ機構として、例えば、下記特許文献1に記載されたブレーキシリンダがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164159号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたブレーキシリンダは、図12に示すように、シリンダ本体102に対して相対移動するピストン103と、該ピストン103とともに移動する軸棒104と、該軸棒104に取り付けられた押棒105と、該押棒105の前記シリンダ本体102からの突出長さをブレーキ作動の際に調整する突出長さ調整手段106とを備えており、前記押棒105は前記ピストン103の移動方向と平行に延びる軸孔を有する円筒状に形成されるとともに、該軸孔の内面の少なくとも一部に雌ネジ151が螺刻され、前記軸棒104は、外面の少なくとも一部に前記雌ネジ151と螺合する雄螺子141が螺刻され前記軸孔に螺挿されるとともに、外部からの軸周りの回転力を付与する回転力付与手段と係合可能な係合部142を有するものである。
【0005】
このような突出長さ調整手段106を備えたブレーキシリンダ101において、圧力室102b内への圧力供給によって、ピストン103を図12(B)に示したように、軸棒104および105を介して連結部材107を、シリンダ本体102における第1ケーシング121に対して拡開方向に移動させる。これによって、連結部材107と第1ケーシング121とのそれぞれに接続された図示外のブレーキアームを揺動させてブレーキ動作が行われる。パッドアッセンブリに摩耗が生じた場合には、蓋部108を取り外して軸棒104における係合部142に、外部からハンドルレンチ等のソケットを係合させて回転させることで、押棒105の雌ネジ151に対する軸棒104の雄ネジ141の螺合を進行させて、軸棒104と押棒105との軸方向距離を拡大させることで、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する隙間調整が可能となる。
【0006】
また、ブレーキパッドの制動面が摩耗すると、ブレーキを作動させる押棒105の必要ストロークが増大し、凹凸面152を介したガイド部材161のストロークも大きくなり過剰ストロークが発生する。規制体165がストッパ166に当接するようになると、ガイド部材161に大きな戻し力が作用するので、凹凸面152を乗り越えて押棒105が突出方向に変位する。このようにして、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する自動隙間調整がなされる。
【0007】
しかしながら、このような従来のアジャスタ機構にあっては、調整作業が外部からのハンドルレンチ等を用いた手動により行われて作業が面倒である他、部品構成が複雑になりがちで誤組付けの虞れを生じ易く、外部からのハンドルレンチ等を用いた手動による調整作業が押棒105と軸棒104との間でなされることから、雌ネジ151と雄螺子141との螺合部に過大な力が作用して螺合部が破損した場合には、ノーブレーキの虞れも生じた。また、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する自動隙間調整の場合は、押棒105とガイド部材161との間の凹凸面152を乗り越えた押棒105側の進行によってなされることになるものの、規制体165やストッパ166等の余分な部材を要して複雑な構成となる上、これらの部品の損傷で隙間調整機能が失われる虞れが大きかった。
【0008】
そこで本発明では、前記従来のアジャスタ機構における諸課題を解決して、組付け性に優れて簡素な構造で精度を要する構成部品を保護して隙間調整も安定して行え、ノーブレーキの虞れもなく、非常ブレーキとして油圧シリンダ等の作動手段の付加も容易なウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することを特徴とする。また本発明は、前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更することを特徴とする。また本発明は、前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされたことを特徴とする。また本発明は、前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等としたことを特徴とする。また本発明は、前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、請求項1の構成要件である、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することにより、カムシャフト自体の先端部において所定の力が作用した状態で過剰ストローク時の隙間調整が行えるので、安定した隙間調整が単一の調整機構にて広い範囲で行うことが可能となる。
【0011】
また、請求項2の構成要件である、前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更する場合は、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材の回転調整を可能にするコーンクラッチがスリーブ部材に対して円錐面でクラッチ部を構成するので、調整前に振動等で回転することがなく安定性が高い。しかも、ウェッジカムおよびカムシャフトの軸動方向に充分なストロークを確保できるので、カムシャフトの先端部側に配設された隙間調整機構により、ブレーキライニングの新品から全摩耗までの隙間調整が可能で、万一、隙間が増加してもブレーキが作用しなくなることがなく、安全性が高い。
さらに、請求項3の構成要件である、前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされた場合は、精度を要する構成部品を容易に保護できるとともに、組付け性も向上する。
【0012】
さらにまた、請求項4の構成要件である、前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成した場合は、パッド交換等の際に、コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くときにだけ、コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放してナット部材を回転させてカムシャフトを軸方向の原位置に再設定できるので、リリースプラグを内側へ押すようなことがあっても何も変化せず、誤作動の危険性がきわめて低く安全である。
また、請求項5の構成要件である、前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等とした場合は、隙間調整機構の構造をそのまま活用してその構成部品であるスリーブ部材を非常用ブレーキの油圧シリンダ等における油圧ピストン等を連結するだけで、非常ブレーキ作動時には、通常ブレーキにおける空圧による作動遅れを補填して油圧による迅速なブレーキ動作が可能となり、安全性が向上する。
【0013】
さらに、請求項6の構成要件である、前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成された場合は、空圧以外の作動源を必要とせず、システムが簡素化できる。
さらにまた、請求項7の構成要件である、前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成された場合は、非常用ブレーキ作動時に導入された圧液は、暫時マスターシリンダのリザーバに戻り、油圧ピストンによる押圧力は自動的に解除される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第1実施例の要部平断面図である。
【図2】同、自動隙間調整機構の構成部品の分解斜視図である。
【図3】同、自動隙間調整機構の初期状態を示す要部平断面図である。
【図4】同、自動隙間調整機構の非作動(通常ストローク)状態を示す要部平断面図である。
【図5】同、自動隙間調整機構の作動(過剰ストローク)状態を示す要部平断面図である。
【図6】同、自動隙間調整機構の作動後の戻り状態を示す要部平断面図である。
【図7】本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第2実施例の要部平断面図である。
【図8】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ非作動状態を示す要部平断面図である。
【図9】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ作動状態を示す要部平断面図である。
【図10】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの全体斜視図である。
【図11】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの作動システム回路図である。
【図12】従来の隙間調整機構を備えたブレーキシリンダの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構は、図1に示すように、ウェッジカム10を形成したカムシャフト11の軸動により前記ウェッジカム10のカム作用によりブレーキアーム4、4の基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフト11に過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアーム4、4の揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフト11の軸方向の初期位置を変更することを特徴とするものである。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構の第1実施例について説明する。図10(後述する第2実施例の油圧シリンダ3も備えている)に示すように、適宜のサポートを介してボディ1が車体静止部に固定され、該ボディ1の下部両側に一対のブレーキアーム4、4の中間部がブレーキアーム軸5、5によって軸支される。ブレーキアーム4、4の各開放端にはブレーキホルダを介してパッドアッセンブリ6、6が装着される。そして、ブレーキアーム4、4の各基端部には、後述する図1に示すような、リンク式倍力装置のローラアーム13に球面ブッシュ14により連結・支持された出力軸を構成するリンクロッド15の外側端が球面ブッシュ16により支持される。
【0017】
図1に示すように、エアーを供給口7から導入してエアーピストン8をチャンバスプリング9の復元力に抗して軸方向他方側(図面左側)に作動させるエアーシリンダ2がカムシャフト11の一方側(図面右側)に配設される。カムシャフト11の軸方向他方側への移動に伴い、カムシャフト11に取り付けられて形成されたウェッジカム10の傾斜面に乗り上げるカムローラ12、12が配設される。カムローラ12、12は、例えば、リンク式倍力装置を構成する、ストラット19の両端部に他端部がそれぞれベアリング18、18によって軸支された一対のローラアーム13、13の一端部にそれぞれ軸支されている。ウェッジカム10の傾斜面へのカムローラ12、12の乗上げによって、ローラアーム13、13は拡開方向に揺動して、ローラアーム13、13の略中間部に球面ブッシュ14により連結・支持されたリンクロッド15、15を梃子の原理によって倍力して外方(図面上下方向)へ軸動させる。これによって、ブレーキアーム4、4の各基端部を拡開方向に揺動させて、ブレーキアーム4、4、の開放端部に配設されたパッドアッセンブリ6、6(図10)をブレーキロータに挟圧させてブレーキ動作が行われる。
【0018】
エアーシリンダ2に対して軸方向の反対側である、カムシャフト11の先端部側には1つの自動隙間調整機構が配設される。自動隙間調整機構は、ボディ1に対してガイド17を介して支持された径大部を有するスリーブ部材20と、その径大部の内部にサブアッセンブリされたナット部材22と、該ナット部材22にピン24によりスライド自在のみに嵌合されたコーンクラッチ25と、スプリング23、27、リリーフプラグ29等から構成される。エアーシリンダ2のみの設置の場合には、前記スリーブ部材20はボディ1の他方側に装着・固定されたブラケット32によって軸方向の移動が規制されている。
【0019】
図2は本発明の自動隙間調整機構の構成部品の分解斜視図で、図2(A)は分解斜視図、図2(B)は組み立てられた状態の縦断面図、図2(C)はブラケット32側から見たボルト取付け前の横断面図である。図示外のカムシャフト11が嵌合される径小部を有するスリーブ部材20内に、カムシャフト11の先端部が螺合されるナット部材22を内部に嵌合したケース21が嵌合され、ケース21の外側でスリーブ部材20の内側には、スプリングシート33およびベアリング26を介してスプリング27により円錐面25Aがスリーブ部材20の内周面の円錐面に接触するように付勢されるコーンクラッチ25が配設される。コーンクラッチ25の内部には、ナット部材22との間に介設されたベアリング34を介してスプリング23によりナット部材22と反対側に付勢されるリリーフプラグ29が収容される。なお、ブラケット32内に配設された符号31で示したものは、自動隙間調整機構内に塵埃等が侵入するのを防止するブーツである。
【0020】
このように構成された自動隙間調整機構を動作の一部とともに、図1および図2を用いてさらに詳述すると、自動隙間調整機構のガイド17に支持されたスリーブ部材20の径小部内にてカムシャフト11が摺動自在に配置され、該カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22が、スリーブ部材20内に収容されたケース21内に収納される。ケース21のピン孔21Aに挿入されたピン24がナット部材22における外周の軸方向の溝22Aに受け入れられる。前記ピン24は同時にスリーブ部材20内にて軸動する中空状のコーンクラッチ25のピン孔25Cにも挿入されている。コーンクラッチ25の端面とスリーブ部材20の内周面との間には、円錐面25A(図5)によって断接するクラッチ部が形成される。コーンクラッチ25はスリーブ部材20の内周面に配設されたスプリング27によって、円錐面25Aであるクラッチ部を接続する方向に付勢されている。
【0021】
また、前記コーンクラッチ25は、ボディ1の他方側に装着・固定されたブラケット32の略中央部に配設されたリリースプラグ29によって外部から引くことができる。リリースプラグ29の一端部の径大段差部30がコーンクラッチ25の他端部の径小段差部25Bにベアリング28を介して当接しており、リリースプラグ29によるスプリング27の復元力に抗したコーンクラッチ25の外方への牽引のみが可能である。リリースプラグ29を内方へ押圧した場合には、コーンクラッチ25に何らの影響を及ぼすことはないので誤動作を防止できる。パッドアッセンブリ等の新品の交換等の際に、リリースプラグ29によるコーンクラッチ25の外方への牽引によって、コーンクラッチ25はスリーブ部材20の内周面の円錐面25Aのクラッチ部から離れる。そのとき、コーンクラッチ25の軸動に伴い、ピン24を介してケース21も軸動してナット部材22をも外方へ移動させる。これにより、回転自在となったコーンクラッチ25およびナット部材22は、チャンバスプリング9により復元勝手なカムシャフト11の先端部の可逆螺子部11Bに対して軸方向の相対位置が調整され、カムシャフトの軸方向の初期位置を変更して軸方向の原位置に容易に再設定できる。
【0022】
図3は、図1と同様の図で自動隙間調整機構が非作動のブレーキの初期状態を示し、ブレーキアーム4等が省略されて示されている。前記リリースプラグ29とカムシャフト11の先端部との間にはスプリング23が配設されており、前述したリリースプラグ29の外方への付勢とカムシャフト11の復元にも寄与する。図4は自動隙間調整機構の非作動(通常ストローク)状態を示す要部平断面図で、カムシャフト11の先端部がスプリング23を圧縮するものの、カムシャフト11のストロークが通常の範囲内にあってスプリング23がリリースプラグ29に影響を与えることはない。したがって、ナット部材22はカムシャフト11の先端部に対して回転することなく、単にカムシャフト11の先端部と軸方向の移動を共にする。
【0023】
図5は、自動隙間調整機構の作動(過剰ストローク)状態を示す要部平断面図で、パッド等が摩耗すると、図示外のブレーキアーム4の揺動ストロークが増大し、ひいては、カムシャフト11のストロークが通常の範囲を逸脱して過剰ストロークにて軸方向の他方側に移動する。これによって、リリースプラグ29との間に配設されたスプリング23は圧縮され、ナット部材22がリリースプラグ29に当接し、僅かにリリースプラグ29を外方へ押し出す。すると、コーンクラッチ25は円錐面25Aから構成されるクラッチ部から離れ、ピン24、ケース21、ナット部材22とともに回転可能となる。したがって、さらにカムシャフト11の進行により、スプリング27の復元力にてコーンクラッチ25、ピン24を介して付勢されたナット部材22がその位置を維持したまま回転して、進行するカムシャフト11に対して一方側(エアーシリンダ2側)に螺進して相対移動し、カムシャフト11におけるウェッジカム10との軸間距離が小さく調整される。つまり、ウェッジカム10によるカムローラ12を介したローラアーム13の揺動隙間を埋めて、自動隙間調整が完了する。
【0024】
図6は、自動隙間調整機構の作動後の戻り状態を示す要部平断面図で、自動隙間調整が完了すると、スプリング23およびチャンバスプリング9の復元力によりカムシャフト11が初期位置に戻る。スプリング23に対するカムシャフト11の押付けが解除されると、スプリング27によりコーンクラッチ25が円錐面25Aから構成されるクラッチ部に接触して。コーンクラッチ25、ピン24を介したナット部材22は回転不可能となって、カムシャフト11に対する隙間調整がなされたナット部材22の位置が調整された関係に維持される。
【実施例2】
【0025】
図7は、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第2実施例の要部平断面図である。本実施例では、一方側であるウェッジカム10側をエアーを導入して作動するエアーシリンダ2による通常ブレーキとし、前記エアーシリンダ2と対向するカムシャフト11の他方側である先端部側のスリーブ部材20に油圧ピストン36を連結して構成した油圧シリンダ35側を緊急ブレーキである非常用ブレーキとして構成したものである。好適には、前記図1におけるスリーブ部材20に代えて軸方向の寸法の長いものを準備し、ブラケット32に代えて油圧シリンダ35をボディ1の他方側に配設・固定するものである。油圧シリンダ35内に収容された油圧ピストン36とシリンダ内壁との間には油圧室36Aが形成される。ピストン36の外側には油圧ピストン36の復元のためのチャンバスプリング37が配設される。
【0026】
かくして、前述した第1実施例の自動隙間調整機構の構造をそのまま活用してその構成部品であるスリーブ部材20を非常用ブレーキの油圧シリンダ35における油圧ピストン36に連結するだけで、後述する応答遅れの少ない油圧を用いた非常用ブレーキを後付けにて容易に設置することができ、非常ブレーキ作動時には、通常ブレーキにおける空圧による作動遅れを補填して油圧による迅速なブレーキ動作が可能となり、安全性が向上する。
【0027】
図8は、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ非作動状態を示す要部平断面図で、ブレーキアーム4等が省略されて示されている。図から理解されるように、エアシリンダ2におけるエアーピストン8による通常のブレーキ作動時には、スリーブ部材20に対して摺動自在に構成されたカムシャフト11の軸動によって、非常ブレーキ側であるスリーブ部材20に対して影響を及ぼすことはない。図9に示すように、緊急時に非常ブレーキを作動させるには、油圧シリンダ35における油圧室36Aに圧油を供給することにより、油圧ピストン36をチャンバスプリング37の復元力に抗して他方側へ軸動させる。かくして、油圧ピストン36に連結されたスリーブ部材20を牽引し、コーンクラッチ25を接続したままでナット部材22が回転することなく、カムシャフト11をブレーキ作動方向へ軸動させて、油圧による迅速なブレーキ動作が行われる。図10は、以上説明した自動隙間調整機構を備え、通常ブレーキであるエアーによるエアーシリンダ2と非常ブレーキである油圧による油圧シリンダ3を備えたものの全体斜視図である。
【0028】
図11は、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの作動システム回路図である。エアーによる通常ブレーキ機構と油圧による緊急時の非常ブレーキとを備える言わば、ハイブリッドキャリパ作動システムであり、ボディ1の一方側のエアシリンダ2のエアー供給口7(図1)にはエアーチャンバ39における室39Aからのエアーが供給されるように構成され、ボディ1の他方側の油圧シリンダ3には、アキュムレータ42の室42Aからの油圧が供給されるように構成される。緊急時に非常ブレーキを作動させるには、アキュムレータ42からの管路の途中に配設された電磁弁43を緊急ブレーキの作動信号により作動させてアキュムレータ42の室42Aと油圧シリンダ3の油圧室36Aとを連通させ(図9)、圧油を油圧シリンダ3の油圧室36Aに迅速に供給することで、通常ブレーキにおけるエアー圧を用いたエアーシリンダ2の作動遅れを解消して、迅速に非常ブレーキを作動させるとができる。
【0029】
通常ブレーキ作動時のエアーチャンバ39における室39Aへのエアーの供給時に、同時に、エアーチャンバ39におけるエアーピストンの移動によって、リザーバ41からの油をマスターシリンダ40の室40Aからアキュムレータ42の室42Aに蓄圧しておく。室42Aは加圧スプリング42Bによって所定の圧力に加圧されている。この所定圧を超えると、圧油はチェック弁44を介してリザーバ41へ還流される。非常ブレーキの作動後には電磁弁43は閉じられ、前記油圧室36Aからの圧油はオリフィス45を介してリザーバ41に少しずつ還流する。したがって、外部から供給される媒体はエアーのみでよい。
【0030】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ウェッジカムの形状、およびそのカムシャフトへの取付け形態、ウェッジカムとブレーキアーム基端部との関連構成(カムシャフトの両側に配置した実施例のような一対のリンク式倍力装置を介してリンクロッドを介在させたものや、リンク式倍力装置を介さずに、ウェッジカムがカムローラを軸支したリンクロッドを拡開させたり、さらには、ウェッジカムが直接にブレーキアーム基端部を拡開させるように構成することもできる。)、リンク式倍力装置における倍力比率、自動隙間調整機構の構造(スリーブ部材とナット部材との相対回転阻止形態は、実施例の、スリーブ部材のピン孔に挿入されたピンとナット部材の軸方向溝との嵌合の他、スプライン嵌合等による相対回転阻止形態でもよい)、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面にコーンクラッチを弾接したクラッチ部の形状(円錐面に放射状の凹凸を形成して回転の妄動を抑止するようにしてもよい)、形式、リリースプラグの形状、形式およびそのコーンクラッチとの接続形態、油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータの蓄圧形態、電磁弁の形式、オリフィスの形状、形式等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構は、好適には鉄道車両のキャリパ型ディスクブレーキに適用されるが、自動車等の車両や産業用ディスクブレーキ等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 エアーシリンダ
4 ブレーキアーム
10 ウェッジカム
11 カムシャフト
11B 可逆螺子部
20 スリーブ部材
22 ナット部材
25 コーンクラッチ
29 リリースプラグ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキを搭載する車両、特に鉄道車両用のディスクブレーキでは、一対のブレーキアームの基端部を拡開してそれらの開放端部に設けられたパッドアッセンブリをブレーキロータ(ディスクロータ)の両側から挟圧してブレーキ動作を行う梃子式のキャリパブレーキが知られている。これらの梃子式のキャリパブレーキにあって、前記パッドアッセンブリが摩耗すると、ブレーキが効き始める時期が遅れて制動距離が長くなるものであった。そこで、ブレーキアームに過剰ストロークが発生することがないように、通常、隙間調整機構であるアジャスタ機構をアクチュエータとブレーキアームの基端部との間に配設している。そのようなアジャスタ機構として、例えば、下記特許文献1に記載されたブレーキシリンダがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−164159号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたブレーキシリンダは、図12に示すように、シリンダ本体102に対して相対移動するピストン103と、該ピストン103とともに移動する軸棒104と、該軸棒104に取り付けられた押棒105と、該押棒105の前記シリンダ本体102からの突出長さをブレーキ作動の際に調整する突出長さ調整手段106とを備えており、前記押棒105は前記ピストン103の移動方向と平行に延びる軸孔を有する円筒状に形成されるとともに、該軸孔の内面の少なくとも一部に雌ネジ151が螺刻され、前記軸棒104は、外面の少なくとも一部に前記雌ネジ151と螺合する雄螺子141が螺刻され前記軸孔に螺挿されるとともに、外部からの軸周りの回転力を付与する回転力付与手段と係合可能な係合部142を有するものである。
【0005】
このような突出長さ調整手段106を備えたブレーキシリンダ101において、圧力室102b内への圧力供給によって、ピストン103を図12(B)に示したように、軸棒104および105を介して連結部材107を、シリンダ本体102における第1ケーシング121に対して拡開方向に移動させる。これによって、連結部材107と第1ケーシング121とのそれぞれに接続された図示外のブレーキアームを揺動させてブレーキ動作が行われる。パッドアッセンブリに摩耗が生じた場合には、蓋部108を取り外して軸棒104における係合部142に、外部からハンドルレンチ等のソケットを係合させて回転させることで、押棒105の雌ネジ151に対する軸棒104の雄ネジ141の螺合を進行させて、軸棒104と押棒105との軸方向距離を拡大させることで、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する隙間調整が可能となる。
【0006】
また、ブレーキパッドの制動面が摩耗すると、ブレーキを作動させる押棒105の必要ストロークが増大し、凹凸面152を介したガイド部材161のストロークも大きくなり過剰ストロークが発生する。規制体165がストッパ166に当接するようになると、ガイド部材161に大きな戻し力が作用するので、凹凸面152を乗り越えて押棒105が突出方向に変位する。このようにして、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する自動隙間調整がなされる。
【0007】
しかしながら、このような従来のアジャスタ機構にあっては、調整作業が外部からのハンドルレンチ等を用いた手動により行われて作業が面倒である他、部品構成が複雑になりがちで誤組付けの虞れを生じ易く、外部からのハンドルレンチ等を用いた手動による調整作業が押棒105と軸棒104との間でなされることから、雌ネジ151と雄螺子141との螺合部に過大な力が作用して螺合部が破損した場合には、ノーブレーキの虞れも生じた。また、ブレーキアームの過剰ストロークを抑制する自動隙間調整の場合は、押棒105とガイド部材161との間の凹凸面152を乗り越えた押棒105側の進行によってなされることになるものの、規制体165やストッパ166等の余分な部材を要して複雑な構成となる上、これらの部品の損傷で隙間調整機能が失われる虞れが大きかった。
【0008】
そこで本発明では、前記従来のアジャスタ機構における諸課題を解決して、組付け性に優れて簡素な構造で精度を要する構成部品を保護して隙間調整も安定して行え、ノーブレーキの虞れもなく、非常ブレーキとして油圧シリンダ等の作動手段の付加も容易なウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため本発明は、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することを特徴とする。また本発明は、前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更することを特徴とする。また本発明は、前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされたことを特徴とする。また本発明は、前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等としたことを特徴とする。また本発明は、前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、請求項1の構成要件である、ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することにより、カムシャフト自体の先端部において所定の力が作用した状態で過剰ストローク時の隙間調整が行えるので、安定した隙間調整が単一の調整機構にて広い範囲で行うことが可能となる。
【0011】
また、請求項2の構成要件である、前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更する場合は、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材の回転調整を可能にするコーンクラッチがスリーブ部材に対して円錐面でクラッチ部を構成するので、調整前に振動等で回転することがなく安定性が高い。しかも、ウェッジカムおよびカムシャフトの軸動方向に充分なストロークを確保できるので、カムシャフトの先端部側に配設された隙間調整機構により、ブレーキライニングの新品から全摩耗までの隙間調整が可能で、万一、隙間が増加してもブレーキが作用しなくなることがなく、安全性が高い。
さらに、請求項3の構成要件である、前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされた場合は、精度を要する構成部品を容易に保護できるとともに、組付け性も向上する。
【0012】
さらにまた、請求項4の構成要件である、前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成した場合は、パッド交換等の際に、コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くときにだけ、コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放してナット部材を回転させてカムシャフトを軸方向の原位置に再設定できるので、リリースプラグを内側へ押すようなことがあっても何も変化せず、誤作動の危険性がきわめて低く安全である。
また、請求項5の構成要件である、前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等とした場合は、隙間調整機構の構造をそのまま活用してその構成部品であるスリーブ部材を非常用ブレーキの油圧シリンダ等における油圧ピストン等を連結するだけで、非常ブレーキ作動時には、通常ブレーキにおける空圧による作動遅れを補填して油圧による迅速なブレーキ動作が可能となり、安全性が向上する。
【0013】
さらに、請求項6の構成要件である、前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成された場合は、空圧以外の作動源を必要とせず、システムが簡素化できる。
さらにまた、請求項7の構成要件である、前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成された場合は、非常用ブレーキ作動時に導入された圧液は、暫時マスターシリンダのリザーバに戻り、油圧ピストンによる押圧力は自動的に解除される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第1実施例の要部平断面図である。
【図2】同、自動隙間調整機構の構成部品の分解斜視図である。
【図3】同、自動隙間調整機構の初期状態を示す要部平断面図である。
【図4】同、自動隙間調整機構の非作動(通常ストローク)状態を示す要部平断面図である。
【図5】同、自動隙間調整機構の作動(過剰ストローク)状態を示す要部平断面図である。
【図6】同、自動隙間調整機構の作動後の戻り状態を示す要部平断面図である。
【図7】本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第2実施例の要部平断面図である。
【図8】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ非作動状態を示す要部平断面図である。
【図9】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ作動状態を示す要部平断面図である。
【図10】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの全体斜視図である。
【図11】同、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの作動システム回路図である。
【図12】従来の隙間調整機構を備えたブレーキシリンダの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構は、図1に示すように、ウェッジカム10を形成したカムシャフト11の軸動により前記ウェッジカム10のカム作用によりブレーキアーム4、4の基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフト11に過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアーム4、4の揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフト11の軸方向の初期位置を変更することを特徴とするものである。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構の第1実施例について説明する。図10(後述する第2実施例の油圧シリンダ3も備えている)に示すように、適宜のサポートを介してボディ1が車体静止部に固定され、該ボディ1の下部両側に一対のブレーキアーム4、4の中間部がブレーキアーム軸5、5によって軸支される。ブレーキアーム4、4の各開放端にはブレーキホルダを介してパッドアッセンブリ6、6が装着される。そして、ブレーキアーム4、4の各基端部には、後述する図1に示すような、リンク式倍力装置のローラアーム13に球面ブッシュ14により連結・支持された出力軸を構成するリンクロッド15の外側端が球面ブッシュ16により支持される。
【0017】
図1に示すように、エアーを供給口7から導入してエアーピストン8をチャンバスプリング9の復元力に抗して軸方向他方側(図面左側)に作動させるエアーシリンダ2がカムシャフト11の一方側(図面右側)に配設される。カムシャフト11の軸方向他方側への移動に伴い、カムシャフト11に取り付けられて形成されたウェッジカム10の傾斜面に乗り上げるカムローラ12、12が配設される。カムローラ12、12は、例えば、リンク式倍力装置を構成する、ストラット19の両端部に他端部がそれぞれベアリング18、18によって軸支された一対のローラアーム13、13の一端部にそれぞれ軸支されている。ウェッジカム10の傾斜面へのカムローラ12、12の乗上げによって、ローラアーム13、13は拡開方向に揺動して、ローラアーム13、13の略中間部に球面ブッシュ14により連結・支持されたリンクロッド15、15を梃子の原理によって倍力して外方(図面上下方向)へ軸動させる。これによって、ブレーキアーム4、4の各基端部を拡開方向に揺動させて、ブレーキアーム4、4、の開放端部に配設されたパッドアッセンブリ6、6(図10)をブレーキロータに挟圧させてブレーキ動作が行われる。
【0018】
エアーシリンダ2に対して軸方向の反対側である、カムシャフト11の先端部側には1つの自動隙間調整機構が配設される。自動隙間調整機構は、ボディ1に対してガイド17を介して支持された径大部を有するスリーブ部材20と、その径大部の内部にサブアッセンブリされたナット部材22と、該ナット部材22にピン24によりスライド自在のみに嵌合されたコーンクラッチ25と、スプリング23、27、リリーフプラグ29等から構成される。エアーシリンダ2のみの設置の場合には、前記スリーブ部材20はボディ1の他方側に装着・固定されたブラケット32によって軸方向の移動が規制されている。
【0019】
図2は本発明の自動隙間調整機構の構成部品の分解斜視図で、図2(A)は分解斜視図、図2(B)は組み立てられた状態の縦断面図、図2(C)はブラケット32側から見たボルト取付け前の横断面図である。図示外のカムシャフト11が嵌合される径小部を有するスリーブ部材20内に、カムシャフト11の先端部が螺合されるナット部材22を内部に嵌合したケース21が嵌合され、ケース21の外側でスリーブ部材20の内側には、スプリングシート33およびベアリング26を介してスプリング27により円錐面25Aがスリーブ部材20の内周面の円錐面に接触するように付勢されるコーンクラッチ25が配設される。コーンクラッチ25の内部には、ナット部材22との間に介設されたベアリング34を介してスプリング23によりナット部材22と反対側に付勢されるリリーフプラグ29が収容される。なお、ブラケット32内に配設された符号31で示したものは、自動隙間調整機構内に塵埃等が侵入するのを防止するブーツである。
【0020】
このように構成された自動隙間調整機構を動作の一部とともに、図1および図2を用いてさらに詳述すると、自動隙間調整機構のガイド17に支持されたスリーブ部材20の径小部内にてカムシャフト11が摺動自在に配置され、該カムシャフト11の先端部に設けた可逆螺子部11Bに螺合するナット部材22が、スリーブ部材20内に収容されたケース21内に収納される。ケース21のピン孔21Aに挿入されたピン24がナット部材22における外周の軸方向の溝22Aに受け入れられる。前記ピン24は同時にスリーブ部材20内にて軸動する中空状のコーンクラッチ25のピン孔25Cにも挿入されている。コーンクラッチ25の端面とスリーブ部材20の内周面との間には、円錐面25A(図5)によって断接するクラッチ部が形成される。コーンクラッチ25はスリーブ部材20の内周面に配設されたスプリング27によって、円錐面25Aであるクラッチ部を接続する方向に付勢されている。
【0021】
また、前記コーンクラッチ25は、ボディ1の他方側に装着・固定されたブラケット32の略中央部に配設されたリリースプラグ29によって外部から引くことができる。リリースプラグ29の一端部の径大段差部30がコーンクラッチ25の他端部の径小段差部25Bにベアリング28を介して当接しており、リリースプラグ29によるスプリング27の復元力に抗したコーンクラッチ25の外方への牽引のみが可能である。リリースプラグ29を内方へ押圧した場合には、コーンクラッチ25に何らの影響を及ぼすことはないので誤動作を防止できる。パッドアッセンブリ等の新品の交換等の際に、リリースプラグ29によるコーンクラッチ25の外方への牽引によって、コーンクラッチ25はスリーブ部材20の内周面の円錐面25Aのクラッチ部から離れる。そのとき、コーンクラッチ25の軸動に伴い、ピン24を介してケース21も軸動してナット部材22をも外方へ移動させる。これにより、回転自在となったコーンクラッチ25およびナット部材22は、チャンバスプリング9により復元勝手なカムシャフト11の先端部の可逆螺子部11Bに対して軸方向の相対位置が調整され、カムシャフトの軸方向の初期位置を変更して軸方向の原位置に容易に再設定できる。
【0022】
図3は、図1と同様の図で自動隙間調整機構が非作動のブレーキの初期状態を示し、ブレーキアーム4等が省略されて示されている。前記リリースプラグ29とカムシャフト11の先端部との間にはスプリング23が配設されており、前述したリリースプラグ29の外方への付勢とカムシャフト11の復元にも寄与する。図4は自動隙間調整機構の非作動(通常ストローク)状態を示す要部平断面図で、カムシャフト11の先端部がスプリング23を圧縮するものの、カムシャフト11のストロークが通常の範囲内にあってスプリング23がリリースプラグ29に影響を与えることはない。したがって、ナット部材22はカムシャフト11の先端部に対して回転することなく、単にカムシャフト11の先端部と軸方向の移動を共にする。
【0023】
図5は、自動隙間調整機構の作動(過剰ストローク)状態を示す要部平断面図で、パッド等が摩耗すると、図示外のブレーキアーム4の揺動ストロークが増大し、ひいては、カムシャフト11のストロークが通常の範囲を逸脱して過剰ストロークにて軸方向の他方側に移動する。これによって、リリースプラグ29との間に配設されたスプリング23は圧縮され、ナット部材22がリリースプラグ29に当接し、僅かにリリースプラグ29を外方へ押し出す。すると、コーンクラッチ25は円錐面25Aから構成されるクラッチ部から離れ、ピン24、ケース21、ナット部材22とともに回転可能となる。したがって、さらにカムシャフト11の進行により、スプリング27の復元力にてコーンクラッチ25、ピン24を介して付勢されたナット部材22がその位置を維持したまま回転して、進行するカムシャフト11に対して一方側(エアーシリンダ2側)に螺進して相対移動し、カムシャフト11におけるウェッジカム10との軸間距離が小さく調整される。つまり、ウェッジカム10によるカムローラ12を介したローラアーム13の揺動隙間を埋めて、自動隙間調整が完了する。
【0024】
図6は、自動隙間調整機構の作動後の戻り状態を示す要部平断面図で、自動隙間調整が完了すると、スプリング23およびチャンバスプリング9の復元力によりカムシャフト11が初期位置に戻る。スプリング23に対するカムシャフト11の押付けが解除されると、スプリング27によりコーンクラッチ25が円錐面25Aから構成されるクラッチ部に接触して。コーンクラッチ25、ピン24を介したナット部材22は回転不可能となって、カムシャフト11に対する隙間調整がなされたナット部材22の位置が調整された関係に維持される。
【実施例2】
【0025】
図7は、本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構を備えた第2実施例の要部平断面図である。本実施例では、一方側であるウェッジカム10側をエアーを導入して作動するエアーシリンダ2による通常ブレーキとし、前記エアーシリンダ2と対向するカムシャフト11の他方側である先端部側のスリーブ部材20に油圧ピストン36を連結して構成した油圧シリンダ35側を緊急ブレーキである非常用ブレーキとして構成したものである。好適には、前記図1におけるスリーブ部材20に代えて軸方向の寸法の長いものを準備し、ブラケット32に代えて油圧シリンダ35をボディ1の他方側に配設・固定するものである。油圧シリンダ35内に収容された油圧ピストン36とシリンダ内壁との間には油圧室36Aが形成される。ピストン36の外側には油圧ピストン36の復元のためのチャンバスプリング37が配設される。
【0026】
かくして、前述した第1実施例の自動隙間調整機構の構造をそのまま活用してその構成部品であるスリーブ部材20を非常用ブレーキの油圧シリンダ35における油圧ピストン36に連結するだけで、後述する応答遅れの少ない油圧を用いた非常用ブレーキを後付けにて容易に設置することができ、非常ブレーキ作動時には、通常ブレーキにおける空圧による作動遅れを補填して油圧による迅速なブレーキ動作が可能となり、安全性が向上する。
【0027】
図8は、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの非常ブレーキ非作動状態を示す要部平断面図で、ブレーキアーム4等が省略されて示されている。図から理解されるように、エアシリンダ2におけるエアーピストン8による通常のブレーキ作動時には、スリーブ部材20に対して摺動自在に構成されたカムシャフト11の軸動によって、非常ブレーキ側であるスリーブ部材20に対して影響を及ぼすことはない。図9に示すように、緊急時に非常ブレーキを作動させるには、油圧シリンダ35における油圧室36Aに圧油を供給することにより、油圧ピストン36をチャンバスプリング37の復元力に抗して他方側へ軸動させる。かくして、油圧ピストン36に連結されたスリーブ部材20を牽引し、コーンクラッチ25を接続したままでナット部材22が回転することなく、カムシャフト11をブレーキ作動方向へ軸動させて、油圧による迅速なブレーキ動作が行われる。図10は、以上説明した自動隙間調整機構を備え、通常ブレーキであるエアーによるエアーシリンダ2と非常ブレーキである油圧による油圧シリンダ3を備えたものの全体斜視図である。
【0028】
図11は、自動隙間調整機構と非常ブレーキ機構を備えたものの作動システム回路図である。エアーによる通常ブレーキ機構と油圧による緊急時の非常ブレーキとを備える言わば、ハイブリッドキャリパ作動システムであり、ボディ1の一方側のエアシリンダ2のエアー供給口7(図1)にはエアーチャンバ39における室39Aからのエアーが供給されるように構成され、ボディ1の他方側の油圧シリンダ3には、アキュムレータ42の室42Aからの油圧が供給されるように構成される。緊急時に非常ブレーキを作動させるには、アキュムレータ42からの管路の途中に配設された電磁弁43を緊急ブレーキの作動信号により作動させてアキュムレータ42の室42Aと油圧シリンダ3の油圧室36Aとを連通させ(図9)、圧油を油圧シリンダ3の油圧室36Aに迅速に供給することで、通常ブレーキにおけるエアー圧を用いたエアーシリンダ2の作動遅れを解消して、迅速に非常ブレーキを作動させるとができる。
【0029】
通常ブレーキ作動時のエアーチャンバ39における室39Aへのエアーの供給時に、同時に、エアーチャンバ39におけるエアーピストンの移動によって、リザーバ41からの油をマスターシリンダ40の室40Aからアキュムレータ42の室42Aに蓄圧しておく。室42Aは加圧スプリング42Bによって所定の圧力に加圧されている。この所定圧を超えると、圧油はチェック弁44を介してリザーバ41へ還流される。非常ブレーキの作動後には電磁弁43は閉じられ、前記油圧室36Aからの圧油はオリフィス45を介してリザーバ41に少しずつ還流する。したがって、外部から供給される媒体はエアーのみでよい。
【0030】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ウェッジカムの形状、およびそのカムシャフトへの取付け形態、ウェッジカムとブレーキアーム基端部との関連構成(カムシャフトの両側に配置した実施例のような一対のリンク式倍力装置を介してリンクロッドを介在させたものや、リンク式倍力装置を介さずに、ウェッジカムがカムローラを軸支したリンクロッドを拡開させたり、さらには、ウェッジカムが直接にブレーキアーム基端部を拡開させるように構成することもできる。)、リンク式倍力装置における倍力比率、自動隙間調整機構の構造(スリーブ部材とナット部材との相対回転阻止形態は、実施例の、スリーブ部材のピン孔に挿入されたピンとナット部材の軸方向溝との嵌合の他、スプライン嵌合等による相対回転阻止形態でもよい)、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面にコーンクラッチを弾接したクラッチ部の形状(円錐面に放射状の凹凸を形成して回転の妄動を抑止するようにしてもよい)、形式、リリースプラグの形状、形式およびそのコーンクラッチとの接続形態、油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータの蓄圧形態、電磁弁の形式、オリフィスの形状、形式等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構は、好適には鉄道車両のキャリパ型ディスクブレーキに適用されるが、自動車等の車両や産業用ディスクブレーキ等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0032】
2 エアーシリンダ
4 ブレーキアーム
10 ウェッジカム
11 カムシャフト
11B 可逆螺子部
20 スリーブ部材
22 ナット部材
25 コーンクラッチ
29 リリースプラグ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することを特徴とするウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項2】
前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更することを特徴とする請求項1に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項3】
前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされたことを特徴とする請求項2に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項4】
前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項5】
前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等としたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項6】
前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項7】
前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成されたことを特徴とする請求項6に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項1】
ウェッジカムを形成したカムシャフトの軸動により前記ウェッジカムのカム作用によりブレーキアームの基端部を拡開揺動するウェッジカム式ブレーキであって、カムシャフトに過剰ストロークが生じる際に前記ブレーキアームの揺動隙間を埋めるように構成したウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構において、前記過剰ストロークが生じる際に、前記カムシャフトの先端部に設けた可逆螺子部に螺合するナット部材との間の回転による軸方向の相対位置を調整してカムシャフトの軸方向の初期位置を変更することを特徴とするウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項2】
前記ナット部材とスライド自在のみに嵌合され、スリーブ部材の内周面に形成した円錐面に弾接されたコーンクラッチを、カムシャフトの過剰ストロークでスリーブ部材から開放してナット部材を回転させることにより、前記カムシャフトの初期位置を調整して変更することを特徴とする請求項1に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項3】
前記ナット部材およびコーンクラッチがスリーブ部材内にてサブアッセンブリ構造とされたことを特徴とする請求項2に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項4】
前記コーンクラッチをリリースプラグを介して外部から引くことにより、該コーンクラッチをスリーブ部材の円錐面から開放することで、カムシャフトの可逆螺子部に螺合するナット部材に対する回転による軸方向の原位置を再設定するように構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項5】
前記ウェッジカムのカムシャフトをエアーシリンダにより作動させる通常ブレーキとし、前記エアーシリンダと対向するカムシャフトの先端部側のスリーブ部材に油圧ピストン等を連結して非常用ブレーキの油圧シリンダ等としたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項6】
前記油圧シリンダ等を作動させるアキュムレータは、通常ブレーキの作動時にエアーチャンバにより蓄圧されるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【請求項7】
前記非常用ブレーキ作動時に導入された圧液はオリフィスによってリザーバへ還流するように構成されたことを特徴とする請求項6に記載のウェッジカム式ブレーキの自動隙間調整機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−193843(P2012−193843A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261202(P2011−261202)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
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