説明

ウエスト付きストッキング

【課題】本発明は、ウエスト部と両脚ストッキング部が繋がっているウエスト付きストッキングを提供する。また、トーションレース機により連続して簡易に編成でき、あとから縫製により縫合する面倒がないウエスト付きストッキングを提供する。
【解決手段】本発明の構成は、前ウエスト部2と後ウエスト部3とを中通し穴4を挟んで編成し、これらのウエスト部2、3を交差編成5、5′しつつ脇通し穴6、6′を挟んで対向側が開放された袋状に形成して延長し、該延長端をそれぞれ左右ストッキング部7、7′の太腿側の前身頃aと後身頃bとなるように連絡させたこと、また、前記ストッキング部7、7′の爪先側の対向面を半円状に潰して接触させ、該接触面を爪先線を残して重合編成したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、股部が開放し、ショーツ等と重ね履きするウエスト付きストッキングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のウエスト付きストッキングとして、特表2001−503820が開示されている。これは図6の如く、ウエスト部61が着用者の片方のヒップ(腰骨)K1に係止される片側ストッキング62と、ウエスト部61′が着用者の他方のヒップ(腰骨)K2に係止される他方の片側ストッキング62′とを備え、着用時にはウエスト部61、61′が腹部上においてV形(あるいはX形)の交差部63を形成するようになるものである。換言すると、ウエスト部は着用しようとする脚の反対側のヒップ(腰骨)に係止させるようにしたものである。このウエスト付きストッキングは股部が開放し、ショーツ等と重ね履きしたときに着用者をしてウエスト部61、61′が両ヒップ(腰骨)に係止するため、腹部や太腿に負担をかけずに長時間にわたって着用できる利点がある。
【特許文献1】特表2001−503820
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来型のウエスト付きストッキングは、ウエスト部61、61′が両ヒップ(腰骨)K1、K2に係止し、着用者の腹部や腿に負担をかけない点では優れていたが、片側のヒップK1に係止するウエスト部61を有するストッキング62と、他方のヒップK2に係止するウエスト部61′を有するストッキング62とがそれぞれ別個に存在するため、常に一対ものとして管理する面倒があったばかりでなく、一対のものとしての組み合わせを誤ると、左右で色や柄、あるいは大きさや形態などが合わないこともあり得た。
【0004】
本発明は、上記の点に鑑み、ウエスト部と両脚ストッキング部が繋がっているウエスト付きストッキングを提供することを目的としている。また、他の目的はトーションレース機により連続して簡易に編成でき、あとから縫製により縫合する面倒がないウエスト付きストッキングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、前ウエスト部と後ウエスト部とを中通し穴を挟んで編成し、これらのウエスト部を交差編成しつつ脇通し穴を挟んで対向側が開放された袋状に形成して延長し、該延長端をそれぞれ左右のストッキング部の太腿側の前身頃と後身頃となるように連絡させたことを特徴とし、ウエスト部と両脚ストッキング部とを繋げて編成できるように構成した。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、前記ストッキング部の爪先側の対向面を半円状に潰して接触させ、該接触面を爪先線を残して重合編成したことを特徴とし、トーションレース機によりウエスト部と両脚ストッキング部、及びストッキング部の爪先をあとから手又はミシンによる縫製により縫合する必要がないように構成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るウエスト付きストッキングによれば、ウエスト部と両脚ストッキング部とが繋げて編成できるため、一着分のストッキングとして管理が容易である。しかも、着用に際し、前ウエスト部を前向きにし、後ウエスト部を後向きにして中通し穴から爪先を通し、該爪先を脇通し穴よりストッキング部内に挿入してから前ウエスト部と後ウエスト部とをそれぞれウエスト腹部及びウエスト背部まで引き上げて形を整えると、股部及び両脇部が開放されたストッキングとなる。すなわち、ショーツ(パンティ)と重ね履きして嵩張らず、楽に長時間にわたって着用できるという優れた効果を奏するものである。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係るウエスト付きストッキングによれば、トーションレース機によりウエスト部と両脚ストッキング部の爪先をあとから手又はミシンによる縫製により縫合する必要がなく、安価に製造できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願ストッキングの着用前の平面図で、(a)はストッキング部が脛までのもの、(b)はストッキング部が爪先まであるものを示す、図2はトーションレース機のガイド筒内の編成物を示す断面図で、(a)は円筒、(b)は2分割、(c)は内縁が開、外縁が閉の袋、(d)は内外縁が閉の袋、(e)は半円を示す、図3は本願ストッキングの着用過程を示す斜視図、図4は本願ストッキングの着用時の斜視図、図5は同ストッキングの着用時の左から見た側面図である。
【0010】
1は本願ストッキングである。本願ストッキング1は、図1(a)、(b)の如く、前ウエスト部2と後ウエスト部3とを中通し穴4を挟んでをほぼ平行に編成しつつ交差編成部5、5′を経てから脇通し穴6、6′を挟んで内縁を開放させた袋状に延長し、該延長端をそれぞれ左右のストッキング部7、7′の太腿側の前身頃aと後身頃bとなるように連絡させてなる。ここの使用糸は弾性糸、たとえば、ゴム糸を芯材としてプラスチック繊維をカバーリングした糸、あるいはその他の弾性糸を用いる。
【0011】
前記本願ストッキング1をトーションレース機にて編むときは、具体的には、まず、片脚のストッキング部5の爪先側から太腿側に向けて編成される(図1の上から下に向けて編まれる)。このトーションレース機の主要部の構成は、環状に配したロータメタルの回転(180度づつ)によってボビンを円周に沿って走らせつつボビンから引き出した糸を環状中心に備えた筬打部に集めて筬打ちしつつガイド筒G内で編地(レース)を作り出して順次、挟持ローラを通して巻取ドラムに巻き取れるようになっている。
【0012】
前記個々のロータメタルは、トーションレース機本体の環状基板の上面に等配立設された所定数の固定軸の上部側に遊嵌され、該固定軸の下部側に遊嵌したロータ駆動軸に備えたクラッチの上下動でロータ駆動軸と断続するようになっている。このクラッチの上下動を制御する装置には、古くはジャカード装置が用いられていたが、今ではコンピュータにより柄組織を作り、その組織に沿ってソレノイドを制御して切換ができるようになっている。
【0013】
前記ストッキング部7はその編成中、筬打部のガイド筒G内では図2(a)の破線で示すごとく円筒状になっている。しかして円筒状のまま太腿側を編成した後、図2(b)の如く対向点P1、P2の糸を抜き(ボビンからの糸の供給を停止)、前身頃aと後身頃bとに部分的に分け、該前身頃aと後身頃bとをガイド筒G内で図2(c)の如く外縁a′及びb′を閉じ、内縁a″及びb″を開放した袋状にして交差編成部5を作る。
【0014】
前記交差編成部5から延出した部分は図2(d)の如く外縁a′及びb′と、内縁a″及びb″を閉じた袋状に編成して(この部分を重合編成してもよい)前ウエスト部2と後ウエスト部3を作る。この前ウエスト部2と後ウエスト部3には休止していたボビンからの新たな糸を加えて高密度化させてウエストバンドとしての形体を整える。そして前ウエスト部2と後ウエスト部3とはほぼ平行に必要な長さが編成されたならば、再び、交差編成部5′を経て延長する。
【0015】
前記交差編成部5′から延出した部分は、図2(c)と同様に、外縁a′及びb′を閉じ、内縁a″及びb″を開放した袋状にし、ストッキング部7′の太腿側の前身頃aと後身頃bとして連絡させる。
【0016】
このストッキング部7′は、図2(a)の如く脛部にて終了する場合と、図2(b)の如く足部8まで編成して終了する場合とがある。前者、すなわち脛部にて終了する場合ではその脛端部9は休止していたボビンからの新たな糸を加えて高密度化させ、次の編成体となるストッキング部7の脛部に繋がることとなる。この高密度化した脛端部9はその中間で図 1(a)の一点鎖線に示す如くカット10、10′してもほつれない。この脛端部9はどこでカットしてもほつれないような高密度化組織に編成されていることは勿論である。
【0017】
また、後者、すなわち足部8まで編成して終了する場合ではその爪先部11はあとから手又はミシンによる縫製により縫合する必要がないように編成される。たとえば、トーションレース機にて編成するときにストッキング部7、7′の連続する爪先部11間を、図2(e)の如くガイド筒G内で半円状に潰してレース対向面を互い接触させ、爪先線の形状を残して高密度化にする。この高密度化した爪先部11は図 1(b)の一点鎖線の如くカット10、10′してもほつれない。この爪先部11も同様にどこでカットしてもほつれないような高密度化組織に編成されていることは勿論である。
【0018】
次に、本願ストッキング1の着用の仕方を説明する。まず、図3の如く、前ウエスト部2と後ウエスト部3との間にできた中通し穴4から爪先Aを通し、その通した爪先Aを太腿側の前身頃aと後身頃bとの間に出来た脇割れ穴6、6′よりストッキング部7、7′へ挿入する。
【0019】
次いで、ストッキング部7、7′を脚B、B′にフィットさせつつ、図4の如く前ウエスト部2と後ウエスト部3とをウエスト腹部C及びウエスト背部C′まで引き上げる。これにより、股部及び太腿両脇部が開放されたストッキングとして履くことができる。この股部及び太腿脇部が開放させているのは、ショーツ(パンティ)と重ね履きしても嵩張らないようにするためである。
【実施例1】
【0020】
今、トーションレース編機を用いて、図4の如く、筒状の片脚のストッキング部7/交差編成部5/前ウエスト部2/後ウエスト部3/交差編成部5′/筒状の他脚のストッキング部7′を得る。この場合、前ウエスト部2と後ウエスト部3との間の中通し穴4の長さ方向の寸法を160mmとし、脇通し穴6、6′の長さ方向の寸法を100mmとし両ストッキング部7、7′の全幅を80mm、全長を1200mmとし、伸長148cm〜162cm、体重45〜63kgの女性(全員が20代)の10人にショーツに重ね履きして朝10時頃より午後3時頃まで着用してもらった。そしてストッキング部7、7′は脛下が漏出した。このストッキングの着用時の履き易さ、履いた後のフット感、腰周辺の締め付け感についてアンケートをとったところ、全員が総ての項目について「良好」と答えた。
【実施例2】
【0021】
次に、トーションレース編機を用いて、図5の如く、爪先部を接合処理した筒状の片脚のストッキング部7/交差編成部5/前ウエスト部2/後ウエスト部3/交差編成部5′/爪先部を接合処理した筒状の他脚のストッキング部7′を得る。この場合、前ウエスト部2と後ウエスト部3との間の中通し穴4の長さ方向の寸法を160mmとし、脇通し穴6、6′の長さ方向の寸法を100mmとし、両ストッキング部7、7′の全幅を80mm、全長を1600mmとした。これを実施例1と同じ女性(10人)にショーツに重ね履きして午後4時頃より午後10時頃まで着用してもらい、着用時の履き易さ、履いた後のフット感、腰周辺の締め付け感についてアンケートをとったところ、実施例1と同様に全員が総ての項目について「良好」と答えた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願ストッキング1は、トーションレース機によりウエスト部と両脚ストッキング部とを繋げて編成できること、また、ショーツ(パンティ)と重ね履きして嵩張らず、楽に長時間にわたって着用できる利点があること、さらに、トーションレース機によりウエスト部と両脚ストッキング部を連続して編成できるとともに、爪先部をあとから手又はミシンによる縫製により縫合する必要がなく、安価に製造できる、ウエスト付きストッキングを提供できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願ストッキングの着用前の平面図で、(a)はストッキング部が脛までのもの、(b)はストッキング部が爪先まであるものである。
【図2】トーションレース機のガイド筒内の編成物を示す断面図で、(a)は円筒、(b)は2分割、(c)は内縁が開、外縁が閉の袋、(d)は内外縁が閉の袋、(e)は半円である。
【図3】本願ストッキングの着用過程を示す斜視図である。
【図4】本願ストッキングの着用時の斜視図である。
【図5】同ストッキングの着用時の左から見た側面図である。
【図6】従来型ストッキングの正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 本願ストッキング
2 前ウエスト部
3 後ウエスト部
4 中通し穴
5、5′ 交差編成部
6、6′ 脇通し穴
7、7′ ストッキング部
8 足部
9 脛端部
10、10′ カット
11 爪先部
a 前身頃
b 後身頃
a′、b′ 外縁
a″、b″ 内縁
A 爪先
B、B′ 脚
C ウエスト腹部
C′ ウエスト背部
61、61′ ウエスト部
K1、K2 ヒップ(腰骨)
62 片側ストッキング
62′ 他の片側ストッキング
63 交差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前ウエスト部と後ウエスト部とを中通し穴を挟んで編成し、これらのウエスト部を交差編成しつつ脇通し穴を挟んで対向側が開放された袋状に形成して延長し、該延長端をそれぞれ左右のストッキング部の太腿側の前身頃と後身頃となるように連絡させたことを特徴とするウエスト付きストッキング。
【請求項2】
前記ストッキング部の爪先側の対向面を半円状に潰して接触させ、該接触面を爪先線を残して重合編成したことを特徴とする請求項1に記載のウエスト付きストッキング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−233385(P2006−233385A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52111(P2005−52111)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(391005293)株式会社市川鉄工 (12)
【Fターム(参考)】