説明

ウエハ加工用粘着テープ

【課題】 ウエハ裏面研削工程後のウエハ反りが小さく、研削工程終了後の各種加熱工程において、基材樹脂フィルムが溶融してチャックテーブルへの付着が低減され、加熱工程後にウエハから剥離する際に引き裂けにくいウエハ加工用テープを提供する。
【解決手段】 基材樹脂フィルム上に粘着剤層が形成されたウエハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリエステル樹脂組成物の少なくとも2層で構成され、少なくとも1層がポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成されているウエハ加工用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハ等の半導体装置を製造するにあたり、ウエハの加工のために使用されるウエハ加工用粘着テープであって、ウエハ等を固定し裏面研削を行う際に使用されるウエハ加工用粘着テープに関するものである。特に、裏面研削後のプラズマエッチング工程、バックメタライジング工程、あるいはダイボンディングフィルムの貼合工程等の加熱工程を含む半導体装置加工工程で使用できる耐熱性に優れたウエハ加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、半導体ウエハのパターン表面に半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼り付ける工程、半導体ウエハの裏面を研削する工程、ダイシングテープへウエハマウントする工程、半導体ウエハから表面保護用粘着テープを剥離する工程を経て、ダイシング工程で半導体チップに分割される。分割された半導体チップはダイボンディング工程でリードフレームへ接合され、モールド工程で外部保護のために樹脂で封止される。
特に、ディスクリートデバイスの製造においては、半導体ウエハ裏面研削後に表面保護用粘着テープを半導体ウエハ表面に貼合したまま真空チャンバーへ半導体ウエハを導入し、半導体ウエハ裏面へ電極形成の目的で金属蒸着やスパッタリングを行うバックメタライジング工程が施される。この工程では、金属蒸着やスパッタリングにより熱が発生するため、表面保護用粘着テープ付き半導体ウエハを装置内へ導入する場合には表面保護用粘着テープには耐熱性が求められる。
【0003】
近年の高密度実装技術の進歩に伴いウエハの薄型化が進み、これに伴い表面保護用粘着テープの厚さ精度に対する要求は高まっている。また、半導体ウエハの薄型化に伴い、プラズマエッチング、ダイボンディングフィルム貼合、バックメタライジング(金属蒸着・スパッタリング)等の加熱工程時に、表面保護用粘着テープの熱溶融や熱収縮により、半導体ウエハの破損や表面保護用粘着テープの剥離不良などの問題点が挙げられている。
バックメタライジングを行うディスクリートデバイスはメモリデバイスと比較してウエハ厚が厚く、薄型化の進行も遅かったが、近年ではデバイスの特性から、50μmレベルまで薄型化する方法が望まれている。
【0004】
耐熱性の表面保護用粘着テープとして、エネルギー線硬化型樹脂組成物を介してポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し、その後エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させた粘着テープが提案されている(特許文献1参照)。本発明者は特許文献1記載の粘着テープをウエハに貼合して、ウエハ裏面の研削を行い、その後加熱した後のウエハの反りについて測定を行った。その結果、特許文献1記載の粘着テープは、ウエハ裏面の研削を行った後の反りは小さいものの、そのウエハを加熱した場合のウエハの反りの防止は十分とはいえないことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−256595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ウエハ裏面研削工程後のウエハ反りが小さく、研削工程終了後の各種加熱工程において、基材樹脂フィルムが溶融してチャックテーブルへ付着することがなく、加熱工程後にウエハから剥離する際に引き裂けにくいウエハ加工用テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の積層構造を有する基材樹脂フィルムを用いることで、加熱工程での収縮を抑制でき、加熱工程を経た後のテープ剥離時に引き裂けにくいことを見出した。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
【0008】
すなわち本発明は、以下のウエハ加工用テープを提供するものである。
<1>基材樹脂フィルム上に粘着剤層が形成されたウエハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリエステル樹脂組成物の少なくとも2層で構成され、少なくとも1層がポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成されていることを特徴とするウエハ加工用粘着テープ。
<2>前記少なくとも2層の基材樹脂フィルムが厚さ1〜10μmのエポキシ系接着層を介して形成されていることを特徴とする<1>記載のウエハ加工用粘着テープ。
<3>前記基材樹脂フィルムと粘着剤層の間に中間樹脂層が形成されていることを特徴とする<1>又は<2>記載のウエハ加工用粘着テープ。
<4>前記ポリエステル樹脂組成物がポリエチレンナフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂組成物であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
<5>前記基材樹脂フィルムの厚さが5〜38μmであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
<6>前記中間樹脂層を構成する樹脂組成物がアクリル樹脂を主成分とすることを特徴とする<3>〜<5>のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
<7>前記粘着剤層を構成する樹脂組成物がアクリル樹脂を主成分とすることを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
<8>前記粘着剤層を構成する樹脂組成物が放射線硬化性であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明のウエハ加工用粘着テープは、特に、半導体ウエハに貼合して裏面研削する際に使用される表面保護用粘着テープとして使用することができる。本発明のウエハ加工用粘着テープを用いることにより、高いウエハ面内加工精度を得ることができ、ウエハに貼合された場合にウエハの反りを矯正し低減することができる。
また、プラズマエッチングによるストレスリリーフ、ダイボンディングフィルム貼合、バックメタライジング工程等の加熱工程においても、テープの熱寸法安定性が高く、テープの収縮により発生するウエハの破損を著しく低減することができる。さらに加熱工程終了後にウエハから剥離する際に、引き裂けにくいウエハ加工用粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のウエハ加工用粘着テープの一実施態様について模式的に示した断面図である。
【図2】本発明のウエハ加工用粘着テープの他の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【図3】本発明のウエハ加工用粘着テープがウエハ表面に貼合された状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明のウエハ加工用テープ100は、図1に示されるように、少なくとも2層(1及び2)からなる基材樹脂フィルム10上に粘着剤層20が形成されている。本発明のウエハ加工用粘着テープ100は、図3に示されるように、ウエハ200上に形成された回路面300の表面に貼合されて、ウエハ裏面が研削されて、薄膜ウエハ(図示せず)とされる。
【0012】
1.基材樹脂フィルム
基材樹脂フィルムは、少なくとも2層で構成され、そのいずれの層もポリエステル樹脂組成物で構成されていると同時に、そのうち少なくとも1層がポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成されている。ここで主成分とするとは、樹脂組成物中の樹脂成分のうち80質量%以上であることをいう。ポリエチレンナフタレートの他に配合できる樹脂としては、本発明の趣旨を損なわないように選択される。使用できるものとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、及びポリイミドからなる群から選ばれた少なくとも1種を配合することができる。ポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物中の樹脂成分はポリエチレンナフタレートのみの場合が樹脂同士の相溶性の点から好ましい。
積層されたフィルムは、ポリエステル樹脂組成物がポリエチレンナフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。これにより、耐熱性を維持したまま、引き裂き強度を増加させることができる。
基材樹脂フィルムを少なくとも2層で構成し、そのいずれの層もポリエステル樹脂組成物で構成すると同時に、そのうち少なくとも1層をポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成することにより、加熱工程での熱収縮を抑制するとともに、加熱工程終了後にウエハから剥す場合にウエハ加工用粘着テープの引き裂きを低減することができる。
【0013】
本発明の基材樹脂フィルムを押出加工により少なくとも2層に成形すると2層間の密着性不足により層間剥離が発生しやすくなるため、成形されたフィルムを接着剤層を介して積層して2層以上としたものを基材樹脂フィルムに用いることが好ましい。接着剤層としては、厚さ1〜10μmのエポキシ系接着層を用いるのが好ましい。
エポキシ系接着層の厚さを1〜10μmの厚さにすることにより、ウエハ加工性や耐熱性に影響を与えず、2層以上のフィルムを接合することができる。エポキシ系接着層の厚さはさらに好ましくは、1〜8μm、特に好ましくは、1〜5μmである。エポキシ系接着層の厚さが薄すぎるとフィルム間の接着力が不足となり、厚すぎるとウエハの研削性が悪化する。
【0014】
本発明のウエハ加工用粘着テープの基材樹脂フィルムの厚さの合計は、機械特性(引張強さ及び伸び)、熱による収縮及び粘着剤層として放射線硬化性のものを使用した場合の放射線透過性の観点から好ましくは10〜100μm、特に好ましくは10〜38μmである。基材樹脂フィルムの厚さをこの範囲内とすることにより、加熱冷却時の収縮応力の小さいテープとすることができる。基材樹脂フィルムの厚さが薄すぎると機械強度不足となり、厚すぎると加熱・冷却時の収縮率や収縮応力が大きくなる。
積層された基材樹脂フィルムのそれぞれの厚さは適宜選定することができる。それぞれの厚さは、好ましくは、5〜38μm、さらに好ましくは、5〜25μmである。
粘着剤層として放射線硬化性の粘着剤樹脂組成物を用いる場合には、基材樹脂フィルムとしては、放射線透過性のものを用いることが好ましい。なお、ここで、放射線とは、例えば、紫外線のような光、あるいはレーザ光、または電子線のような電離性放射線を総称していい、以下、これらを総称して放射線という。
基材樹脂フィルムとしては、ビカット軟化点(JIS K 7206、荷重:50N、昇温速度:50℃/h、試験片サイズ:10mm×10mm×4mm)が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
基材樹脂フィルム上に後述の中間樹脂層が設けられる場合には、中間樹脂層5との密着性を向上させるために、中間樹脂層側の基材樹脂フィルムにコロナ処理やプライマー層処理などを適宜施してもよい。
また、基材樹脂フィルムの最外層表面をシボ加工もしくは滑剤コーティングすることによって、ブロッキング防止等の効果を得ることができる。
【0015】
2.中間樹脂層
本発明のウエハ加工用テープ100は、図2に示されるように、少なくとも2層の樹脂フィルム(1及び2)からなる基材樹脂フィルム10と粘着剤層20の間に中間樹脂層30が形成されている。
本発明のウエハ加工用粘着テープ1を構成する中間樹脂層は、好ましくは粘着剤層より弾性率が高いものがよい。中間樹脂層の80℃における貯蔵弾性率は、粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率よりも大きいものが好ましい。ウエハ加工用粘着テープとして常温での剛性をもたせるために中間樹脂層のガラス転移点(Tg)の好ましい範囲は、−20℃〜100℃であり、より好ましくは0℃〜50℃である。中間樹脂層は、例えば、粘着成分と硬化成分とを含む中間樹脂層組成物を基材樹脂フィルム上に塗工した後、硬化させることによって設けることができる。中間樹脂層組成物には、室温で1週間程度放置することによって徐々に硬化し、好ましい範囲の弾性率となるような材料を用いることが好ましい。中間樹脂層を硬くする方法としては、中間樹脂層組成物に使用される粘着成分のガラス転移点(Tg)を高くする、中間樹脂層組成物に添加される硬化成分量を多く配合する、中間樹脂層組成物に無機化合物フィラーを加える等の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、中間樹脂層組成物に放射線照射によって硬化する材料を使用し、放射線照射によって硬化させて中間樹脂層の硬さを調整してもよい。中間樹脂層の厚さは、ウエハの裏面研削工程でのクッション性および加熱工程でのアウトガス抑制の観点から、厚さ20〜200μmであるものが好ましく、30〜100μmであるものがより好ましく、40〜60μmであるものが更に好ましい。中間樹脂層の厚さが薄すぎると研削工程時のクッション性が小さくなり、中間樹脂層の厚さが厚すぎると加熱工程でのアウトガス発生量低減の効果が薄れる可能性がある。なお、中間樹脂層は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0016】
中間樹脂層組成物の粘着成分は、イソシアヌレート型イソシアネート硬化剤と相溶性がよい種々の従来の粘着剤を適宜用いることができる。本発明においては、耐熱性やアウトガス抑制の観点から、特にアクリル樹脂を主成分とする樹脂組成物を用いたものが好ましい。アクリル樹脂を主成分とするとは、ベース樹脂の70%以上がアクリル系重合体で構成されているものをいうものとする。
アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。特に、後述の架橋剤を用いた場合の架橋点間距離増大による可とう性向上の観点からメタクリル酸n−ブチル(n−BMA)が好ましい。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシル基を有するヒドロキシエチルアクリレートを挙げることができる。アクリル系重合体以外樹脂成分としては、アクリル系粘着成分と相溶性がよく、粘着性に問題が生じないものを配合することができる。
【0017】
中間樹脂層組成物の硬化成分として、イソシアヌレート型イソシアネートを含ませることができる。イソシアヌレート型イソシアネートは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。また、必要に応じてイソシアヌレート型イソシアネート以外の硬化剤を更に加えることもできる。本発明におけるイソシアヌレート型イソシアネートとは下記一般式(I)に表される化合物である。ここで、(I)式中のR、R、Rはそれぞれ独立に、例えば、アルキル基等の有機基であるが、耐熱性を損なわない範囲であれば任意の原子、有機基を用いることができる。イソシアヌレート型イソシアネートとして、具体的には、市販品として、デュラネート(登録商標) TKA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製)等を用いることができる。イソシアヌレート型イソシアネートは、例えば、ジイソシアネートを重合することにより製造される。そのようなジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
なお、式(I)で示す基本骨格は、イソシアヌレート環を1つ有するジイソシアネートが3量体の場合であるが、イソシアヌレート型イソシアネートには、イソシアヌレート環を2つ有する5量体や、イソシアヌレート環を3つ有する7量体が含まれていてもよい。
【0020】
これらの硬化成分は架橋剤として働き、アクリル樹脂等の粘着成分等架橋に取り込むことができる官能基を有する成分と反応した結果できる架橋構造により、中間樹脂層は三次元網状構造を有し、ウエハ加工時に生じる温度上昇時にも軟化しにくいものとなる。イソシアヌレート型イソシアネートは耐熱性の高い環構造を有するため、それを用いた硬化後の中間樹脂層および、未反応の硬化成分自体がウエハ加工時の熱によって分解し、ウエハを汚染することや、アウトガスとして発生されることを抑制することができる。
【0021】
本発明におけるイソシアヌレート型イソシアネート硬化剤の好ましい配合量は、硬化後の中間樹脂層組成物の架橋点の増加によるアウトガス発生抑制の観点から、中間樹脂層組成物の硬化成分のイソシアヌレート型イソシアネート硬化剤のイソシアネート基(NCO)の合計モル数(α)に対し、中間樹脂層組成物の粘着成分に含まれる全てのヒドロキシル基(OH)の合計モル数(β)の混合比で0.5≦α/β≦5.0、好ましくは0.8≦α/β≦2.0、より好ましくは1.0≦α/β≦1.5である。α/βが小さすぎると硬化後の組成物中粘着成分の未架橋部分が多く、加熱時に分解しやすいため、アウトガス発生の原因となりやすい。また、α/βが大きすぎると、ベースポリマーと反応せずに残った硬化剤が空気中などの水分との反応による尿素等のガスの発生が汚染原因となることや硬化剤自体が汚染の原因となる可能性がある。
【0022】
更に、中間樹脂層に放射線硬化性をもたせること、好ましくは紫外線硬化樹脂とすることで、研削工程後に放射線硬化により硬化収縮させ耐熱性を向上させたうえで加熱工程へと送ることもできる。放射線硬化性をもたせるためには、例えば、中間樹脂層に光重合性炭素−炭素二重結合を有するアクリレート系オリゴマーを添加することが挙げられる。これらのオリゴマーとしては光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が広く適用可能である。また、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型等のポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナート等)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等)を反応させて得られる。
【0023】
放射線により中間樹脂層を硬化させる場合には、中間樹脂層に光重合性開始剤を更に添加することができる。例えば、光重合性開始剤としてイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用することができる。これらのうち1種類以上を中間樹脂層に添加することにより、効率よく重合反応を進行させることができる。更に中間樹脂層には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤等、あるいはその他の改質剤等を配合することができる。
【0024】
3.粘着剤層
図1に示されるように、基材樹脂フィルム10上に粘着剤層20が形成され、本発明のウエハ加工用粘着テープ100が製造される。さらに、図2に示されるように、基材樹脂フィルム10上に中間樹脂層30が形成され、さらに粘着剤層20が形成され、本発明のウエハ加工用粘着テープ100が製造される。
中間樹脂層を形成する場合には、粘着剤層は、基材樹脂フィルム上に中間樹脂層を形成後、粘着剤を塗工して製造することができる。粘着剤層は、研削工程時にウエハ割れを起こさない、回路表面が研削時のダスト浸入で汚染されない程度の密着性をもっているものが好ましい。更には、ウエハの薄化に伴って粘着剤の紫外線硬化収縮によりウエハ割れが発生する危険もあるため、紫外線硬化後の収縮が小さいもの、加熱工程により発生するガスが少ないもの、加熱工程を経た後でも紫外線照射により十分に粘着力が低下するものが好ましい。例えば、ベース樹脂として主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)と、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる化合物(b)とを含む樹脂組成物を用いたアクリル系粘着剤を用いることができる。
前記重合体(a)の放射線硬化性炭素−炭素二重結合の好ましい導入量は、ヨウ素価が0.5〜20、より好ましくは0.8〜10である。ヨウ素価がこの範囲内にあれば放射線照射後の粘着力の低減効果を得ることができ、化合物(a)そのものに安定性があり、製造が容易となる。上記重合体(a)は、ガラス転移点(Tg)が−70℃〜0℃であることが好ましい。ガラス転移点(Tg)が−70℃以上であれば、放射線照射に伴う熱に対する耐熱性を十分有する。
【0025】
前記重合体(a)はどのようにして製造されたものでもよい。例えば、前記重合体(a)としては、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)と、該官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。また、官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体を(a1’)とし、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するとともに(a1’)の官能基と反応し得る官能基を有する化合物を(a2’)とし、これらを反応させて、重合体(a)とすることもできる。
前記の主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)は、例えば、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0026】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート)を挙げることができる。また、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなど)を挙げることができる。
【0027】
単量体(a1−1)として、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用するほどガラス転移点は低くなる傾向にある。したがって、単量体(a1−1)のアルキルエステルのアルキル基の炭素数を適宜選択することにより、所望のガラス転移点を有する重合体(a)を得ることができる。
また、ガラス転移点の他、他の成分との相溶性や各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を(a1−1)に加えて重合体(a)を得ることができる。これらの低分子化合物の配合量は、単量体(a1−1)の5質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部をヒドロキシル基またはカルボキシル基および放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0029】
前記(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。また(a2)の官能基がヒドロキシル基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がアミノ基の場合は、(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
具体例としては、単量体(a1−2)の具体例で列挙したものと同様のものを列挙することができる。
【0030】
(a1)と(a2)の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などを好ましくは、後述の通りの範囲に適宜設定することができる。
主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を1つ以上有する(メタ)アクリル系単量体を構成単位として含む重合体(a)は、各種の溶剤中で溶液重合することにより得ることができる。溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができる。一般にアクリル系重合体の良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤を使用することが好ましい。例えば、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を用いることができる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の重合体(a)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、重合体(a)の合成は、溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0031】
重合体(a)の分子量は、30万〜150万程度が好ましい。30万未満では、低分子量成分によるウエハ表面汚染が生じやすくなる。この汚染を、極力防止するためには、分子量が、40万以上である方が好ましい。また、分子量が150万を越えると、合成時および塗工時にゲル化する可能性がある。なお、重合体(a)が、水酸基価5〜100となるOH基を有すると、放射線照射後の粘着力を減少することによりテープ剥離不良の危険性を更に低減することができるので好ましい。なお、ヨウ素価は、Wijs法に基づき算出したものであり、分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウオータース社製、商品名:150−C ALC/GPC)により測定した値をポリスチレン換算の質量平均分子量として算出したものである。また、水酸基価は、FT−IR法にて算出したものであり、酸価は、JIS K 5407の11.1に準じて算出したものである。
【0032】
次に、粘着剤層のもう1つの成分である化合物(b)について説明する。化合物(b)は、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる化合物であり、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。この化合物(b)は架橋剤として働き、重合体(a)と反応した結果できる架橋構造により、化合物(a)および(b)を主成分とした粘着剤の凝集力を、粘着剤塗布後に向上することができる。ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等を挙げることができ、具体的には、市販品として、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製)等を用いることができる。また、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、市販品として、ニカラックMX−45(三和ケミカル社製)、メラン(日立化成工業株式会社製)等を用いることができる。更に、エポキシ樹脂としては、TETRAD−X(三菱化学株式会社製)等を用いることができる。本発明においては、特にポリイソシアネート類を用いることが好ましい。(b)の添加量としては、重合体(a)100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.4〜3質量部とすることがより好ましい。(b)の添加量が少なすぎると凝集力向上効果が十分でない場合があり、(b)の添加量が多すぎると粘着剤の配合および塗布作業中に硬化反応が急速に進行し、架橋構造が形成され、作業性が損なわれる場合がある。
【0033】
また、本発明において、粘着剤層には、光重合開始剤(c)が含まれていることが好ましい。粘着剤層に含まれる光重合開始剤(c)には基材および中間樹脂層を透過する放射線により反応するものであれば、特に制限はなく、従来知られているものを用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体(ロフィン二量体)、アクリジン系化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(c)の添加量としては、重合体(a)100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.2〜5質量部とすることがより好ましい。
【0034】
更に本発明に用いられる中間樹脂層や粘着剤層には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤等、あるいはその他の改質剤等を配合することができる。また、無機化合物フィラーを適宜加えてもよい。粘着剤層は厚さ5〜100μmであるものが好ましく、5〜50μmであるものがより好ましく、10〜30μmであるものが更に好ましい。更には、中間樹脂層と粘着剤層を合わせた厚さが25〜200μmであることが好ましい。なお、粘着剤層は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0035】
4.剥離フィルム
剥離フィルムは、セパレーターや剥離層、剥離ライナーとも呼ばれ、粘着剤層を保護する目的のため、また粘着剤を平滑にする目的のために、必要に応じて設けられる。剥離フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムや紙などが挙げられる。剥離フィルムの表面には粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていてもよい。必要に応じて、粘着剤層が環境紫外線によって反応しないように、紫外線防止処理が施されていてもよい。剥離フィルムの厚さは、通常10〜100μm、好ましくは25〜5μmである。
【実施例】
【0036】
以下に実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記のように中間樹脂層組成物、粘着剤樹脂組成物を調製し、実施例の作製方法のもとにウエハ加工用粘着テープを作製し、試験及び評価を行った。
【0037】
〔中間樹脂層組成物の調製〕
[中間樹脂層組成物1A]
アクリル樹脂(メタクリル酸nブチル)(重量平均分子量:20万、ガラス転移温度20℃)100質量部、硬化剤としてイソシアヌレート型イソシアネート(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:TKA-100)をNCO/OH=1.0になるように混合して中間樹脂層組成物1Aを得た。
【0038】
〔粘着剤層樹脂組成物の調製〕
[粘着剤層樹脂組成物2A]
溶媒のトルエン400g中に、n−ブチルアクリレート128g、2−エチルヘキシルアクリレート307g、メチルメタアクリレート67g、メタクリル酸1.5g、重合開始剤としてベンゾイルペルオキシドの混合液を、適宜、滴下量を調整し、反応温度および反応時間を調整し、官能基をもつ化合物(a1)の溶液を得た。次にこのポリマー溶液に、紫外線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物(a2)として、別にメタクリル酸とエチレングリコールから合成した2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.5gを加え、反応温度および反応時間を調整して、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有する(メタ)アクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体(a)の溶液を得た。重合体(a)の重量平均分子量は80万であった。重量平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウオータース社製、商品名:150−C ALC/GPC)により測定した値をポリスチレン換算して算出したものである。また、Wijs法により算出したヨウ素価は10であった。
続いて、重合体(a)溶液中の重合体(a)100質量部に対してポリイソシアネート(b)としてコロネートL(日本ポリウレタン社製)を、2質量部を加え、光重合開始剤としてSPEEDCURE TPO(DKSHジャパン株式会社製)を0.3質量部、および、SPEEDCURE
BKL(DKSHジャパン株式会社製)を3.0質量部、重合抑制剤としてメトキノンを0.1質量部、溶媒として酢酸エチル150質量部を化合物(a)溶液に加えて混合して、紫外線硬化性の粘着剤層樹脂組成物2Aを調製した。
【0039】
〔基材樹脂フィルムの作成〕
[基材樹脂フィルム3A]
厚さ12.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムと、厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Aを得た。
[基材フィルム3B]
厚さ12.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムと、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Bを得た。
[基材フィルム3C]
厚さ12.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムと、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Cを得た。
[基材フィルム3D]
厚さ25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムと、厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Dを得た。
[基材フィルム3E]
厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、厚さ12.5μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムと、厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをこの順で積層した各層をそれぞれ厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Eを得た。
[基材フィルム3F]
厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、厚さ12.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを厚さ5μmのエポキシ系接着層で積層して、基材樹脂フィルム3Fを得た。
【0040】
[実施例1]
前記の基材樹脂フィルム3AのPETフィルムに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。更に、中間樹脂層上に粘着剤層樹脂組成物2Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が30μmの粘着剤層を形成し、厚さの合計が110μmのウエハ加工用粘着テープを得た。
[実施例2]
前記の基材樹脂フィルム3BのPETフィルムに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
[実施例3]
前記の基材樹脂フィルム3CのPETフィルムに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
[実施例4]
前記の基材樹脂フィルム3DのPETフィルムに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
[実施例5]
前記の基材樹脂フィルム3EのPETフィルムに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
【0041】
[比較例1]
基材樹脂フィルムとして厚さ25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)の単層フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
[比較例2]
基材樹脂フィルムとして厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の単層フィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法で半導体ウエハ加工用粘着テープを得た。
[比較例3]
前記の基材樹脂フィルム3Fに中間樹脂層組成物1Aを塗布、乾燥させ、乾燥後の膜厚が50μmの中間樹脂層を形成した。それ以外は実施例1と同様の方法でウエハ加工用粘着テープを得た。
【0042】
[試験及び評価]
実施例1〜5、比較例1〜2の半導体ウエハ加工用粘着テープについて、試験及び評価を以下のように行った。
[50μm研削後のウエハの反り]
DISCO社製フルオートグラインダDFG8540(商品名)を用いて、ウエハ加工用粘着テープを貼合した直径8インチのシリコンベアウエハを50μmの厚さまで研削した。その後、ウエハを水平面上に載置し、ウエハ周縁部の最大の高さをウエハ反りとした。ウエハ反りが10mm以下の場合を合格、10mmを越えるものを不合格と判定した。
[TTV]
DISCO社製フルオートグラインダDFG8540(商品名)を用いて、ウエハ加工用粘着テープを貼合した直径8インチのシリコンベアウエハを50μmの厚さまで研削した。その後、500mJ/cmの強度で紫外線を照射し、ウエハ加工用粘着テープを剥離した。該粘着テープ剥離後のウエハ面内の厚さばらつきを測定し、TTV(Total Thickness Variation)とした。TTVが5μm以下の場合を合格、5μmを越えるものを不合格と判定した。
[加熱後のウエハの反り]
DISCO社製フルオートグラインダDFG8540(商品名)を用いて、ウエハ加工用粘着テープを貼合した直径8インチのシリコンベアウエハを100μmの厚さまで研削した。その後、180℃に加熱したホットプレート上にウエハ加工用粘着テープが貼合されたウエハを載置し、急冷した。その後、ウエハを水平面上に載置し、ウエハ周縁部の最大の高さを加熱後のウエハ反りとした。加熱後のウエハ反りが20mm以下の場合を合格、20mmを越えるものを不合格と判定した。
[引き裂き強度]
ウエハ加工用粘着テープから、長さ63mm、幅75mmの大きさで切り出し、幅方向37.5mmの位置に端から長さ20mmの裂け目を入れた試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS
K7128−2に準拠した方法で、引張試験機を用いて長さ方向に引っ張り、裂けたときの応力を引き裂き強度とした。
【0043】
それぞれの実施例、比較例のウエハ加工用粘着テープの構成とその評価結果を表1にまとめた。
【0044】
【表1】

【表2】

【0045】
表1に示すように、基材樹脂フィルムがポリエステルの少なくとも2層で構成され、少なくとも1層がポリエチレンナフタレートで構成されているウエハ加工用粘着テープは、いずれも50研削後のウエハの反りと加熱後のウエハの反りが小さく、引き裂き強度も合格レベルであった。
これに対し、表2からわかるように、基材樹脂フィルムがポリエチレンナフタレート単層で構成されている比較例1では、引き裂き強度が不合格で、ウエハからテープを剥す場合に問題が生じることがわかる。またポリエチレンテレフタレート単層で構成されている比較例2では、加熱後のウエハの反りが大きい。このため比較例2のウエハ加工用粘着テープは、加熱工程を経る工程で使用することは困難であることがわかる。さらにポリエチレンテレフタレート同士が積層されている基材樹脂フィルム比較例3では、ウエハの反り、特に加熱後のウエハの反りが大きいことがわかる。
【符号の説明】
【0046】
1、2 樹脂フィルム
10 基材樹脂フィルム
20 粘着剤層
30 中間樹脂層
100 ウエハ加工用粘着テープ
200 ウエハ
300 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルム上に粘着剤層が形成されたウエハ加工用粘着テープであって、該基材樹脂フィルムがポリエステル樹脂組成物の少なくとも2層で構成され、少なくとも1層がポリエチレンナフタレートを主成分とする樹脂組成物で構成されていることを特徴とするウエハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
少なくとも2層の前記基材樹脂フィルムが厚さ1〜10μmのエポキシ系接着層を介して形成されていることを特徴とする請求項1記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記基材樹脂フィルムと粘着剤層の間に中間樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂組成物がポリエチレンナフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記基材樹脂フィルムの厚さが5〜38μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項6】
前記中間樹脂層を構成する樹脂組成物がアクリル樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層を構成する樹脂組成物がアクリル樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層を構成する樹脂組成物が放射線硬化性であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のウエハ加工用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−216735(P2011−216735A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84448(P2010−84448)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】