説明

ウォーターレス印刷システム及びウォーターレス印刷方法

高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法が提供される。インクジェット技術と平版印刷システムとを組み合わせることにより、可変で高品質な高速印刷システムを実現する。版胴に水溶液を塗布して第1のネガイメージを生成する。印刷媒体にインキによるポジイメージを転写する。そして、残留したインキ及び水溶液を版胴より除去し、版胴に水溶液を塗布して第2のネガイメージを生成する。本システム及び方法を用いて、高品質な一対一マーケティングのアプリケーション(one-to-one marketing applications)を作成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、米国仮出願番号60/775,511(2006年2月21日出願)及び米国仮出願番号60/819,301(2006年7月7日出願)の利益を主張するものであり、これら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
平版印刷技術及びグラビア印刷技術は、長年にわたって改善や改良が続けられてきている。平版印刷の基本的原理は、インキ受容領域とインキ反発領域との両方を有する表面から、インキを転写するものである。オフセット印刷では、インキの中間転写が行われる。例えば、オフセット平版印刷機では、版胴からゴムブランケット胴へとインキが転写され、そのブランケット胴からウェブ(すなわち、紙)にイメージが転写される。グラビア印刷においては、インキが入る凹型のくぼみが刻まれた版胴が紙ウェブに接触し、帯電によりインキの紙への転写を促進する。
【0004】
初期の平版印刷技術では、隆起した部分のみにインキが付着するようにプレート上に形成された、印刷されるイメージのレリーフを利用していた。現在の平版印刷の印刷工程では、材料科学の原理を活用している。例えば、印刷される部分が疎水性を有するように、印刷されるイメージが親水性プレート(版)にエッチングされる。このプレートをインキ塗布の前に水で湿しておくと、油性インキは、プレートの疎水性部分(すなわち、湿し水で濡れなかった部分)のみに付着する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの印刷技術はいずれも同様の問題を抱えている。同じイメージが何度も繰り返し印刷される。平版印刷では、レリーフイメージやエッチングされた疎水性イメージなどの不変イメージを有するプレートが用いられている。また、グラビア印刷では、版胴に刻まれた凹型のインキくぼみによる不変イメージが用いられている。このため、平版印刷及びグラビア印刷は、「短期的な」印刷ジョブや可変データを含む印刷ジョブ(例えば、請求書、財務表、ターゲット広告)には用いられていない。平版印刷に用いられるプレートを作成するには、かなりの費用がかかる。このため、少ない部数を印刷するジョブ(すなわち、短期的ジョブ)を平版印刷で行うのはコスト効率が悪い。更に、レーザー印刷やインクジェット印刷のように印刷内容(コンテンツ)を自在に変えることはできない。
【0006】
従来、書籍や雑誌などの出版物は、多くのポストプレス工程(後処理工程)を含む印刷工程を経て印刷されている。例えば、雑誌では同じページが5000回も印刷される。次のページも5000回印刷される。雑誌の全ページが印刷されるまでの間、各ページについてこの工程が繰り返される。そして、印刷されたページがポストプレス工程に送られ、裁断及び製本が行われる。もし平版印刷の画質及び速度で可変イメージを印刷することができれば、雑誌は連続するページ順に印刷され、完成した雑誌がそのまま印刷機から出てくるようになる。これは、雑誌印刷の速度を劇的に改善し、雑誌印刷の費用を大幅に削減することになる。
【0007】
インクジェット印刷技術は、可変機能を有するプリンタを備えている。インクジェット技術には、バブルジェット(登録商標)方式(すなわち、サーマル方式)と圧電方式との2つの方式がある。いずれの方式も微小なインキ液滴をページに吹き付けるものである。バブルジェット(登録商標)プリンタでは、熱源によりインキを気化させて、バブル(気泡)を発生させる。気泡の膨張により液滴が形成され、この液滴がプリントヘッドから発射される。圧電方式では、各インクタンクの後ろ側にあるピエゾクリスタル素子を用いる。電圧を印加することによりクリスタル素子を振動させる。クリスタル素子の往復動作によって1滴分のインキを引き込み、そのインキを紙に噴射する。
【0008】
カラーインクジェット印刷の品質は、一般に、オフセット平版印刷やグラビア印刷の品質よりも数段低い。更に、最速のインクジェットプリンタであっても、通常は、平版印刷やグラビア印刷よりも印刷速度がかなり低い。従来のインクジェット印刷では、紙に水性インキを塗布することによる影響も問題になっている。水性インキを用いると、紙に水分が過剰に吸収されて、印刷された紙にシワや波打ちが生じることがある。この現象を抑制するため、インクジェットプリンタでは特殊な紙やコーティングが用いられる。このような紙は、従来の紙に比べて、はるかに高価であることが多い。
【0009】
更に、インクジェット技術をカラー印刷に用いた場合には、インキの被覆面積及び水の吸収量が多くなる。これは、カラーイメージを生成するのに4つのカラー処理が用いられるためである。4つのカラー処理では、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(すなわち、CMYK)のインキの塗布量を調整することによって、様々な色をページに印刷している。このため、ページの部分によっては、所望の色を出すために4色全てのインキの層が重なることがある。更に、インクジェットプリンタによって形成されたドットが広がって、ぼやけたイメージになってしまうことがある。
【0010】
レーザー印刷は、現在のところ、高速可変印刷の有力な代替方法とはならない。これは、オフセット印刷やグラビア印刷に比べて、印刷速度がはるかに低く、資材コスト(例えば、トナー)が非常に高価なためである。また、レーザーカラー印刷では、印刷されたページを折り曲げた際にひび割れが発生することが多いため、雑誌などの製本出版物に用いるのは難しい。
【0011】
このため、従来の平版印刷及びグラビア印刷の品質及び速度を有する可変印刷技術の開発が望まれている。更には、毎分400フィート(毎分122メートル)以上の速度で処理可能な可変印刷システムの実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の原理に基づいて、高速可変印刷装置及び高速可変印刷方法が提供される。本発明の目的は、可変であって、かつ、平版印刷の印刷品質を実現することである。上記高速可変印刷方法は、インクジェット技術と平版印刷システムとを組み合わせることにより、可変で高品質な高速印刷システムを実現する。本発明のある態様において、従来のオフセット平版印刷機に用いられている湿しシステムは除去され、これに代わって、クリーニングシステムと水溶液ジェットシステムとが設けられる。水溶液ジェットシステムは、平版印刷の版胴にネガイメージを可変にプリントするために用いられる。この水溶液は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、その他の適切なグリコール、又はこれらの組み合わせを含んでいる。例えば、ある態様においては、この水溶液を、水とエチレングリコールとの組み合わせ、水のみ、又はその他の適切な水溶液とすることができる。プレート(版)は親水性であるので、水溶液はその親水性部分にしっかりとどまることになる。プレートがインキシステムを通過するときに、水溶液で濡れた部分は油性のインキをはじく。クリーニングシステムは、版胴が1回転するごとに、又は所定の回数だけ回転するごとに、残留したインキ及び/又は水溶液を除去する。
【0013】
本発明のある態様においては、従来のオフセット平版印刷機の湿しシステムに代えて、インキではなく水溶液を噴射する少なくとも1つのインクジェットヘッドを備えた水溶液ジェットシステムが設けられる。これらの態様においては、インクジェット技術と平版印刷技術とが融合されることになる。インクジェットヘッドによって版胴の可変位置に水溶液が「プリント」され、すなわち、吹き付けられて、可変のネガイメージが生成される。
【0014】
本発明のある態様においては、版胴に代えて、又は版胴に加えて、オフセット印刷のブランケット胴に、水溶液ジェットシステムによって可変イメージが生成される。水溶液噴射によるイメージは、版胴又はブランケット胴の回転ごとに変更することが可能である。クリーニングシステムは、胴が1回転するごとに、又は所定の回数だけ回転するごとに、残留した水溶液及び/又はインキを除去する。
【0015】
本発明のある態様においては、高速可変印刷装置はバックエンドのデータベース管理システムに接続される。データベース管理システムは、1つ以上のイメージコントローラに接続される。イメージコントローラは、水溶液ジェットシステム及び平版印刷システムの動作を制御し、多用途でユーザーによる再設定が可能な可変印刷装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の更なる特徴、性質、及び様々な効果については、以下の詳細な説明及び添付図面によって明らかとなるであろう。
【0017】
図1は、従来型のオフセット平版印刷機100を示している。従来の平版印刷工程においては、印刷されるイメージが親水性プレート102にエッチングされてインキが付着する疎水性部分が形成される。親水性プレート102は、版胴104に取り付けられ、回転して湿しシステム106及びインキシステム108を通過する。湿しシステム106は水供給装置107を含み、インキシステム108はインキ供給装置109を含む。親水性プレート102の親水性部分は、湿しシステム102によって湿らされる。油性のインキを用いることにより、インキは、プレート102の疎水性部分のみに付着する。
【0018】
ブランケット胴110が用いられる場合は、インキイメージが版胴104からブランケット胴110へと転写される。そして、このインキイメージが、ブランケット胴110と圧胴114との間のウェブ112(例えば、紙)に転写される。圧胴114を用いたウェブ112へのイメージ転写は、印刷されるイメージとウェブ112とを実質的に均等な圧力又は力で押圧することにより行われる。版胴104とウェブ112との間に媒介物としてゴムブランケットが用いられる場合には、この工程は一般に「オフセット印刷」と呼ばれる。プレート102は、エッチングが行われて版胴104に取り付けられているので、平版印刷は同一のイメージを何度も印刷する際に用いられる。平版印刷は、高品質の出力が得られるため、好んで用いられている。4台の印刷機を連続して配置することにより、雑誌品質の4色のイメージ印刷が可能になる。
【0019】
図2には、本発明の原理に基づく装置が示されている。図2は、平版印刷分野において知られている、インキシステム202、プレート204、版胴206、ブランケット胴208、及び圧胴210を有する印刷機200を示している。プレート204は、その全体が親水性である(例えば、標準アルミニウム平版プレート)。但し、図1の湿しシステム106は、図2では、クリーニングシステム212及び水溶液ジェットシステム214に置き換えられている。
【0020】
水溶液ジェットシステム214は、一連のインクジェットカートリッジ(例えば、バブルジェット(登録商標)カートリッジ、サーマルカートリッジ、圧電カートリッジ)を有している。バブルジェット(登録商標)は、ヒーターの作動によりインキ液滴を噴射する。圧電システムは、圧電アクチュエーターの作動によりインキ液滴を噴射する。インキ液滴は、インクジェットカートリッジに設けられた小さな孔から噴出する。カートリッジには、任意の数の孔があけられている。一般的な例としては、インクジェットカートリッジは600個の孔を有しており、多くの場合、300個ずつ2列に配置されている。
【0021】
本発明において、水溶液ジェットシステム214は、水溶液(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、又はこれらの組み合わせ)を噴射するために用いられる。本発明のある実施形態においては、水溶液は1つ以上の界面活性剤(例えば、Air Products社製のSurfynol(登録商標))を含有している。このような界面活性剤は、各分子の一方に親水基を有し、他方に親油基を有する。1つ以上の界面活性剤を水溶液に添加することにより、水溶液の表面張力特性を改善することができる。これにより、インキ液滴の配置制御が容易になり、より高品質の印刷イメージを得ることが可能になる。
【0022】
インクジェットを用いて紙にインキ液滴を配置するのと同様に、水溶液ジェットシステム214の水溶液ジェットを用いて、親水性プレートに水溶液を配置する。ある実施形態においては、水溶液は従来型のインクジェットノズル(噴射ノズル)によって噴出される。このようなインクジェットノズルには、例えば、HP、Lexmark、Spectra、Canonなどの各社製のインクジェットノズルが含まれる。ある実施形態においては、水溶液ジェットシステム214は、様々な印刷速度及び出力解像度をサポートする。
【0023】
本発明の原理に基づき、水溶液ジェットシステム214は、印刷イメージのネガイメージの全部又はその一部を、版胴206上に「プリント」又は噴射するために用いられる。例えば、図12に関して詳細を後述するように、イメージコントローラがデータシステムからイメージデータを受信する。このイメージデータは、印刷されるイメージ又はそのネガイメージである。このイメージデータは、比較的頻繁に変更される(例えば、ページごとに異なる)可変イメージデータ、変更頻度の少ない(例えば、100ページごとに異なる)準固定イメージデータ、不変の固定イメージデータ、及び可変・準固定・固定の各イメージデータの組み合わせが含まれる。イメージデータの一部又は全部は、バイナリデータ、ビットマップデータ、ページ記述コード、又はこれらの組み合わせとして保存される。ある実施形態においては、ポストスクリプト(PostScript)やプリンタコマンド言語(PCL)などのページ記述言語(PDL)が、イメージデータを定義及び解釈するために用いられる。そして、データシステムは、水溶液ジェットシステム214を電子制御して、様々なタイプのイメージデータの一部又は全部を表現するイメージ(又はそのネガイメージ)を水溶液で版胴206にプリントする。ネガイメージは、紙にインキが付着しない各部分のイメージである。このため、版胴206上のあるポイントが水溶液ジェットシステム214を通過した後、そのポイントに水溶液滴が配置されていない場合には、インキシステム202からのインキのみがそのポイントに付着することになる。
【0024】
本発明のある実施形態においては、真空源又は熱源215が水溶液ジェットシステム214の隣に又はその近くに配置される。ある実施形態において、真空源又は熱源215は水溶液ジェットシステム214に組み込まれている。真空源又は熱源は、プレート204又は版胴206にプリントされた後、水溶液に風を当てたり、乾燥させたり、加熱したりすることによって、水溶液ジェットシステム214により配置された各水溶液滴のサイズを小さくするために用いられる。水溶液滴のサイズを制御する機能により、印刷イメージの品質を高めることができる。
【0025】
版胴206が1回転し、イメージをブランケット胴208に転写した後、版胴はクリーニングシステム212を通過して残留したインキ及び/又は水溶液が除去され、これにより、版胴206は次の回転で(又は所定回転後に)水溶液ジェットシステム214による新たなイメージプリントを行うことができる。クリーニングシステム212は、回転ブラシ、クリーニング液を含んだローラー、ベルト、クリーニング液で処理されたクリーニングウェブ、熱及び/又は空気を供給する装置、静電装置、その他の残留したインキ及び/又は水溶液を版胴206より除去するのに適切な手段を含んで構成される。ある実施形態においては、ブランケット胴208についてもクリーニングシステム215と同様のクリーニングシステムが設けられており、イメージをウェブ216に転写した後、ブランケット胴208から残留物が除去される。
【0026】
ある実施形態においては、版胴206は、従来の平版印刷技術によりプレート204にエッチングされた、特定の印刷ジョブにおける固定データの全てを有している。そして、水溶液ジェットシステム214を用いて、プレート204の特定部分に、可変又は準固定イメージデータによって示されるジョブの可変部分のみを、イメージ化する。
【0027】
他の実施形態においては、プレート204が用いられていない。その代わりとして、当該技術分野で知られているように、版胴206の表面に加工や処理を行って、水溶液ジェットシステム214からの水溶液が付着するようにしている。また、版胴206に加工や処理を行って、固定データを含むと共に、水溶液を付着させて可変データを取り込めるようにしている。本発明のこれらの及び他の実施形態においては、必要に応じて、ブランケット胴208を省略し、イメージをウェブ216に直接転写するようにしてもよい。
【0028】
ある実施形態において、プレート204、版胴206、及びブランケット胴208のうちの1つ以上を、水溶液ジェットシステム214や水溶液が有する様々な特性に応じてカスタマイズ又はデザインしてもよい。例えば、当該技術分野で知られているように、上記プレート及び胴のうちの1つ以上に特別な処理又は加工を行うことにより、特定の解像度やドットサイズのプリントヘッドから噴射された溶液のみが付着するようにすることも可能である。また、プレート及び胴に特別な処理を行い、特定のタイプの溶液のみを付着させ、他のタイプの溶液をはじくようにすることも可能である。例えば、特定の体積、比重、粘度、その他の特性を有する溶液のみをプレート及び胴に付着させ、所望の条件外の溶液をはじくようにすることが可能である。これにより、例えば、異物の混入を防ぐことができると共に、ある水溶液をプリント工程で用い、他の水溶液(異なるの特性を有するもの)をクリーニング工程で用いることができる。他の実施形態においては、通常型の、一般用途用のプレート及び胴を用いる。
【0029】
図3に示すように、印刷機300は水溶液ジェットシステム314とクリーニングシステム312とを有しており、これらのうちの一方又は両方を、版胴306ではなくブランケット胴308に取り付けて用いている。図2に関連して述べたように、印刷機300は、版胴306の上方にインキシステム302を含んでいる。この実施形態では、プレート304を備えた版胴306がインキシステム302を通過すると、その表面全体にインキが付着して完全にインキで覆われる。但し、ブランケット胴308には、上述したように、水溶液で可変イメージが生成されており、インキはブランケット胴308の特定部分のみに転写され、これがブランケット胴308と圧胴310との間にあるウェブ316に転写されることになる。水溶液ジェットシステム314を、版胴306ではなく、ブランケット胴308に用いた場合は、より多量の水溶液を使用することが可能であり、迅速なイメージ化及び再イメージ化を実現される。これは、ブランケット胴308の物性及び表面特性によるものであり、このブランケット胴308には、水溶液滴の広がりを防止するゴム製ブランケットが含まれる。
【0030】
水溶液ジェットシステム及びクリーニングシステムを、他の配置にすることも可能である。図4の例に示すように、印刷機400では、水溶液ジェットシステム414とクリーニングシステム412との配置がよりフレキシブルになっている。図4の例では、ブランケット胴がエンドレスベルト408に置き換えられている。ある実施形態においては、エンドレスベルト408の長さは、様々な追加システム又は水溶液ジェットシステム414及びクリーニングシステム412の配置の利便性に応じて調整可能になっている。水溶液ジェットシステム414及びクリーニングシステム412は、エンドレスベルト408に沿って任意の適した位置に取り付けられる。図2及び図3に関連して述べたように、印刷機400は、インキシステム402、版胴406、プレート404、及びエンドレスベルト408と圧胴410との間のウェブ416を含む。図3のブランケット胴308に関連して述べたように、エンドレスベルト408には水溶液で可変イメージが生成され、インキはエンドレスベルト408の特定部分のみに転写されて、これがウェブ416に転写される。
【0031】
図5及び図6は、本発明の他の実施形態を示している。図5に示すように、印刷機500は版胴506を含み、この版胴506は、ブランケット胴508にインキを転写するために用いられる。上述したように、印刷機500は、インキシステム502、プレート504、ブランケット胴508、水溶液ジェットシステム514、クリーニングシステム512、ウェブ516、及び圧胴510も含む。図6の印刷機600に示すように、ある実施形態においては、図5の版胴・ブランケット胴システムが、単一のイメージング胴608に置き換えられる。図5及び図6の両方の実施形態において、インキは、印刷されるイメージにかかわらず、印刷媒体(例えば、ウェブ516又は616)に接触する胴に転写される。インキが胴に転写された後、水溶液ジェットシステム514又は614を用いて、ウェブにインキを転写させない部分のインキ層の上に水溶液を配置する。換言すれば、印刷されるイメージのネガイメージが、水溶液でインキ層の上にプリントされる。ある実施形態においては、水溶液の代わりとして、ゲル(例えば、シリコーンベースのゲル)が用いられる。
【0032】
図7に示すように、水溶液滴又はゲル滴704により、インキ702の印刷媒体(例えば、イメージング胴708と圧胴710との間のウェブ716)への転写が妨げられる。印刷媒体の吸収性が高すぎると、印刷媒体がイメージング胴から離れる前にインキと共に水溶液やゲルも吸収してしまう。このため、印刷媒体の吸収性が高すぎる場合には、水溶液又はゲルは、これらによって覆われている部分のイメージを薄くする(又は不鮮明にする)ことしか行えない。これに対し、高光沢やプラスチックの印刷媒体が用いられる場合は、インキ702をブロックする水溶液滴又はゲル滴704が印刷媒体に全く吸収されないので、これらにブロックされたインキは印刷媒体に転写されない。いずれの場合でも、水溶液滴又はゲル滴704の保護層で覆われていないインキ702は、ウェブ716に転写される。
【0033】
図5〜図7に示すような実施形態では、その利点として、クリーニングシステムを必要としなくなる点が挙げられる。イメージング胴708は、その表面全体が常にインキ702に覆われているので、工程においてインキを除去する必要がない。しかしながら、乾燥又は蓄積したインキを除去することが望ましい場合があるので、図5及び図6には、クリーニングシステムが示されている。更に、真空源又は熱源(図2の真空源又は熱源215など)をクリーニングシステムに代えて、又は追加して、用いることができる。イメージング胴が再びインキシステムを通過する前に、イメージング胴にある余分な水溶液を乾燥させるのが好ましい。このため、真空源又は熱源は、再びインキを塗布する前に、残った水溶液を除去するために用いられる。
【0034】
水溶液又はゲルの特性(例えば、粘度又は比重)及び印刷媒体の特性を変えること(例えば、ボンド紙、光沢紙を用いたり、様々なコーティング技術を使用したりすること)をにより、水溶液ジェットシステムを用いてプリントされる保護ネガイメージと、印刷媒体との間に、好ましい相互作用を生じさせることが可能である。例えば、イメージの鮮明さが求められる場合には、印刷媒体に全く吸収されないような水溶液を選択するとよい。しかしながら、水溶液ジェットシステムからの水溶液で覆われた部分であっても、ある程度のインキ転写が望ましい場合には、水溶液を急速に吸収する印刷媒体を用いることによって、覆われた部分からもある程度のインキを転写することが可能となる。
【0035】
図8は、本発明の更に他の実施形態を示している。印刷機800はインキシステム802を含み、このインキシステム802はイメージング胴808にインキを塗布するために用いられる。次に、水溶液ジェットシステム814は、印刷媒体(例えば、イメージング胴808と圧胴810との間のウェブ816)に転写されるイメージのポジイメージをプリントするために用いられる。水溶液ジェットシステム814は、インキ層の上に、水溶液又はゲルによる上記ポジイメージをプリントする。この「プリントされた」層は、ウェブに転写される領域におけるインキを保護する。
【0036】
ポジイメージが保護されると、回転するイメージング胴808は、次に剥がしシステム818を通過する。剥がしシステム818は、イメージング胴808の保護されていない部分のインキを剥ぎ取るために用いられる。換言すれば、水溶液ジェットシステム814によって保護されていない、すなわち、印刷されるイメージではない部分のインキが、イメージング胴から剥ぎ取られる(除去される)。剥がしシステム818は、例えば、連続するブランクウェブを用いて、保護されていないインキをイメージング胴から吸い上げるようにすることができる。また代わりに、剥がしシステム818は、後述するような逆転ローラー(reverse form roller)を用いてもよい。保護されたインキイメージは、その後、印刷媒体に転写される。
【0037】
保護されたインキイメージの転写は、水溶液保護層及び保護されたインキの両方をウェブ816に転写することによって行われる。またこれに代えて、剥がしシステム818によって水溶液保護層を除去することにより、水溶液保護層のない、保護されたインキのみをウェブに転写するようにしてもよい。ある実施形態においては、剥がしシステム818は、保護されていないインキ(すなわち、水溶液保護層で覆われていないインキ)を除去するときに、水溶液保護層も同時に除去することができ、これにより、保護されたインキのみがウェブ816に転写される。このような実施形態においては、逆転ローラーを用いて、保護されていないインキ及び水溶液を除去することが可能である。逆転ローラーはまた、除去したインキをインキシステム802に戻すことにも使用され得る。換言すれば、不使用インキは、剥がしシステム818によってリサイクルされることになる。他の適切な方法を用いて、保護されたインキイメージをウェブ816に転写させるようにしてもよい。
【0038】
本発明の他の実施形態として、図9に印刷機900を示す。図9に示すような実施形態において、水溶液ジェットシステム914は、ブロック共重合体(ブロックコポリマー)の界面活性剤を含む水溶液をイメージング胴908にプリントするために用いられる。このような界面活性剤の一例としては、BASF社製のPluronic(登録商標)F-127界面活性剤が挙げられる。これは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとに基づくブロックコポリマーである。このような界面活性剤は、イメージング胴908の表面特性を親水性と親油性と間で変更させるために用いられる。
【0039】
例えば、水溶液ジェットシステム914を用いて、イメージング胴908にポジイメージをプリントする。その後、熱源(例えば、ドライヤー918又はその他の水を蒸発させるのに適切な手段)を用いて、水溶液を乾燥させる。これにより、水溶液ジェットシステム914によってプリントされた箇所には、イメージング胴908に結合したブロックコポリマーが残される。ブロックコポリマーとしては、その一端がイメージング胴の表面材料に結合する一方、他端が親油性を有するものが選ばれる。もともと親水性を有するイメージング胴を用いる場合は、イメージング胴の表面のうち水溶液ジェットシステム914によってブロックコポリマーがプリントされた部分が全て親油性になり、残りの全ての部分が親水性になる。上記イメージング胴は、既知の平版印刷工程において用いることができる。例えば、インキシステム902を用いてインキをイメージング胴908の全体に塗布する。そして、このイメージが、印刷媒体(例えば、イメージング胴908と圧胴910との間のウェブ916)に転写される。
【0040】
図9の実施形態は、クリーニングシステム912も含んでいる。クリーニングシステムは、イメージング胴908に対して選択的に作用するものである。ブロックコポリマーの表面活性剤は、イメージング胴908と物理的に結合しているので、機械的な手段ではこれを取り除くことはできない。換言すれば、イメージング胴は、標準的な平版プレートと同様に、繰り返し用いることが可能である。印刷を制御するデータシステムにより情報の変更が必要であると判断された場合に、クリーニングシステム912は、ブロックコポリマーの一部を選択的に除去する。例えば、ブロックコポリマーとイメージング胴との間の結合を断つような化学物質を用いて、選択した箇所にあるブロックコポリマーを除去することが可能である。当業者であれば、ブロックコポリマーとイメージング胴908との間の結合を断つのに適切な手段のいずれもが、ブロックコポリマーを選択的に除去することに用いることができることを理解するであろう。例えば、還元剤を用いて、ブロックコポリマーとイメージング胴908との間の結合を断つことができる。
【0041】
図9の実施形態の変形例においては、水溶液ジェットシステム914は、イメージング胴908にネガイメージをプリントする。この変形例では、もともと親油性を有するイメージング胴と、自由端(イメージング胴に結合する側とは反対の端)が親水性を有するブロックコポリマー界面活性剤を含んだ水溶液と、を用いる。この場合においても、結合した界面活性剤だけを残すように水溶液を乾燥させ、また、イメージング胴908を繰り返し用いることが可能である。上述したように、クリーニングシステム912を用いて、適切な中和溶液を適切な時期に使用して、ブロックコポリマーを選択的に除去することができる。
【0042】
図9の実施形態の他の変形例においては、帯電したブロックコポリマー界面活性剤分子を用いて、イメージング胴908と界面活性剤との間の結合を電子的に制御する。換言すれば、水溶液ジェットシステム914を用いて、帯電した界面活性剤を所望の位置に配置する。界面活性剤分子の帯電特性は、界面活性剤分子のイメージング胴908への物理的な結合の可否を左右するものである。このため、帯電した界面活性剤を除去するためには、それを中和する電荷をクリーニングシステム912から選択的に付与する必要がある。
【0043】
この他、イメージング胴908の表面を帯電させ、イメージング胴の特定の位置における帯電特性を特定の時期で変化させるように制御することが可能である。換言すれば、イメージング胴908の任意の位置でプラス帯電とマイナス帯電とを切り替えることにより、印刷工程中の適切な時期に、界面活性剤を引き付け又は反発させることが可能となる。
【0044】
以上によって明らかなように、様々な特性を有するブロックコポリマー界面活性剤を様々な物性のイメージング胴に用いることにより、イメージング胴に親油性表面と親水性表面とを選択的に形成することが可能である。界面活性剤とイメージング胴の表面との間に生じる物理的結合によってイメージング胴を同じイメージで何度も繰り返し使用することができ、又は、イメージング胴の任意の回転回数ごとにイメージを選択的に変えることもできる。イメージング胴及びブロックコポリマー界面活性剤の物性を利用することにより、耐久性があり、しかも可変で、既知の平版印刷技術の品質を有するイメージシステムを実現することができる。
【0045】
上述のような界面活性剤は、様々な形態(例えば、固体、粉末、水溶液、ゲルなど)で販売されている。本発明の原理に基づいて、任意の形態の界面活性剤を用いることができる。
【0046】
図10は、本発明の他の実施形態を示している。図10は、当該技術分野で知られている平版印刷機1000(例えば、インキシステム1002、版胴1006、ブランケット胴1008、圧胴1010など)を示している。但し、平版印刷機1000の上流側には、コーティングシステム1016及び水溶液ジェットシステム1014が設けられている。図10に示すような実施形態においては、標準の平版プレートに、任意のジョブの固定情報をエッチングする。但し、プレートの一部は可変情報のために確保しておく(例えば、図11に示すように、プレート1100は、可変イメージボックス1102や1104を含んでいる)。可変イメージボックスに対応する平版プレートの部分は、可変イメージボックスの全体にインキが付着するように形成される(すなわち、平版プレートの可変イメージボックス部分がインキシステムを通過すると、その四角い部分の全体にインキが付着する)。
【0047】
可変イメージを生成するため、可変イメージのネガイメージが水溶液ジェットシステム1014によって直接ウェブ1012上に印刷される。ウェブ1012が水溶液ジェットシステム1014に到達するより前に、ウェブ1012には水溶液の吸収を防止するためのコーティングが施される。このため、ウェブ1012の可変イメージがプリントされる部分が、可変イメージのためのインキを転写するブランケット胴1008の部分に接触すると、ウェブ1012は、水溶液ジェットシステム1014によってプリントされていない部分のみにインキが選択的に付着することになる。標準的な平版印刷機では、同じイメージ(例えば、四角いベタ塗り(a solid rectangle))を繰り返しプリントする。しかしながら、ウェブ1012には、まず水溶液ジェットシステム1014によってネガイメージがプリントされ、次にブランケット胴1008の四角いベタ塗りインキが選択的に付着されることで、可変イメージがウェブ1012に生成される。
【0048】
コーティングシステム1016は、全体にコーティングを施すことが可能である。また、コーティングシステム1016は、ウェブ1012にコーティングを施して水溶液の吸収能力を低下させるための好適な手段となり得る。例えば、コーティングシステム1016は、適切な溶液をウェブ1012にスプレーする噴霧器を含む。この溶液によってウェブ1012による水溶液の全部又は一部の吸収が抑制される。
【0049】
上述の実施形態のいずれにおいても、ブランケット胴と版胴との組み合わせを、1つのイメージング胴に置き換えることが可能であり、また、その逆の置き換えも可能である。いずれの場合においても、軟らかいイメージング胴/ブランケット胴と、硬い圧胴との組み合わせ(例えば、シリコーン製のイメージング胴/ブランケット胴と、スチール製の圧胴との組み合わせ)が好ましい。また、硬いイメージング胴/ブランケット胴の場合には、軟らかい圧胴を組み合わせる(例えば、セラミック製のイメージング胴/ブランケット胴と、ゴム製の圧胴との組み合わせ)。
【0050】
ある実施形態においては、「ウォーターレス」システムを実現するために、シリコーン製のイメージング胴の用いることが好ましい。このような実施形態では、イメージング胴は全体が疎油性のシリコーン表面を有する。ウォーターレス平版印刷の技術において知られているように、このようなイメージング胴は、その表面の一部が親油性となるように現像(例えば、エッチング)が行われる。シリコーンは本来疎油性であるので、イメージング胴の表面にインキを塗布する前に、該イメージング胴を水で湿らせておく必要はない。シリコーン製のイメージング胴を用いた本発明のある実施形態においては、親油性であると共にイメージング胴のシリコーン表面に結合する、シリコーンベースの界面活性剤やその他の適切な物質を含む水溶液を用いる。これにより、本明細書に記載された本発明の原理に基づいて、イメージング胴にはこのような水溶液で可変イメージが生成され得る。必要に応じて、適切なクリーニング装置を用いて、残留した水溶液やインキをイメージング胴から除去するようにしてもよい。
【0051】
図2〜図10に示すような印刷機を複数直列に配設して印刷を行うことが可能である。このような複数の印刷機の配置例を、図12の印刷機1200において示す。このような配置により、例えば、4色のカラー印刷が可能になる。CMYKの4色処理に従って、各印刷機1202,1204,1206,1208は、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのプリントを行う。各印刷機は、それぞれのラスタイメージプロセッサー(RIP)又はコントローラ(例えば、コントローラ1210,1212,1214,1216)によって制御される。コントローラ1210,1212,1214,1216は、ハードウェアとして、及び/又はプリンタドライバの一部などのソフトウェアとして、実装される。
【0052】
印刷全体は、データシステム1218のような単一のデータシステムによって管理される。このデータシステムは、RIPコントローラ1210,1212,1214,1216を制御し、更にこれらのコントローラがそれぞれ印刷機1202,1204,1206,1208を制御する。データシステム1218は、データベース1220及び可変データソース1222を介して顧客入力部1224を備えている。データベース1220は、イメージデータ、メッセージ、一対一マーケティングデータ(one-to-one marketing data)などが含まれる。
【0053】
ある実施形態においては、データベース1220には、印刷するジョブについての全てのレイアウト情報及び固定イメージ情報が含まれており、可変データソース1222には、あらゆる可変データが含まれる。例えば、顧客入力部1224から顧客データ(例えば、所望のレイアウトやコンテンツ)がデータベース1220に与えられる。可変データソース1222には、パーソナライズされたテキスト(例えば、顧客名と所在地)及びグラフィックが保存されている。そして、データシステム1218は、ジョブを印刷するために、データベース1220と可変データソース1222との両方にアクセスする。データベース1220及び可変データソース1222は、任意の記憶装置又は記憶機構(例えば、ハードドライブ、光ドライブ、RAM、ROM、ハイブリッドメモリ)を含む。印刷機1200には、入力部1226からロール紙又はシート紙が供給される。印刷出力部1228においても、ロール紙又はシート紙の形態となる。更に、印刷機1200の出力部1228では、完全製本されていたり、任意のポストプレス処理に備えたりする場合もある。
【0054】
上述の実施形態で述べた1つ以上の水溶液ジェットシステム、クリーニングシステム、剥がしシステム、真空又は加熱システムは、データシステム1218を介して電子制御され得る。例えば、典型的な使用例においては、データシステム1218は、データベース1220及び/又は可変データソース1222のラスタイメージデータ(又は、ビットマップデータ、ベクトルグラフィックイメージデータ、これらの組み合わせなどを含む他の様々な種類のイメージデータ)にアクセスする。ある実施形態においては、イメージデータは、例えば、ポストスクリプト(PostScript)、PCL、又はその他のPDLコードなどのページ記述コードとして保存される。ページ記述コードは、実際の出力ビットマップや出力ラスタイメージよりも高いレベルのイメージデータを示す。イメージデータの保存形態にかかわらず、データシステム1218は、本発明による水溶液ジェットシステムに、イメージデータ(又はその一部)のネガイメージを水溶液でプレートや版胴にプリントさせる。ある実施形態においては、上述のように、可変イメージデータに該当するデータのみが水溶液でプレート又は版胴にプリントされる。
【0055】
単一のデータシステム(例えば、データシステム1218)により印刷全体を制御することによって、遅れ生成技法(form lag techniques)を活用することが可能である。遅れ生成とは、同じドキュメントの作業を行う複数の可変印刷装置のタイミングを操作するものである。特定のデータがある印刷機によってプリントされるのに必要となる一方、同じドキュメントの他の部分のデータが他の印刷機によってプリントされるのに必要となる場合がある。このような場合には後者の印刷機へのデータ転送を遅らせた方がよい。ドキュメントが後者の印刷機に到達するまでに、いくつかの中間印刷機を経なければならないからである。遅れ生成を効果的に管理することにより、イメージの解像度及び配置が改善され得る。
【0056】
本発明の様々な実施形態における水溶液ジェットシステムは、数多くの方法による改変が可能である。例えば、図13は、個々の水溶液ジェット装置1302を、胴1300において交互に配置した状態を示している。プリントヘッドをオーバーラップさせて、隣り合うプリントヘッドのプリント幅をつなぎ合わせることは、ステッチングとして知られている。ステッチングでは、複数のプリントヘッドを高精度に位置決めして、その継ぎ目を目立たなくすることが可能である。
【0057】
これら水溶液ジェット装置としては、HP、Lexmark、Spectra、Canonなどの各社製のプリントカートリッジが知られる。各ジェット装置は、水溶液を噴射する小さな孔を任意の数だけ有している。図13に示すように、水溶液ジェット装置1302は、水溶液ジェットの間に隙間ができないように、端部が互いにオーバーラップしている。これにより、版胴のあらゆるポイントにイメージが生成されることを可能としている。
【0058】
また、図14の胴1400に示されるように、水溶液ジェット装置1402が直列に並べて配置されてもよい。図15は他の例を示しており、ここでは、胴1500に複数の装置を設置することに代えて、水溶液ジェット1502を単一の装置として設置している。単一の装置なので、水溶液ジェットの間隔を一定にすることが可能である。メンテナンス及び交換に要する費用を低減するには、複数の装置を用いるのが好ましい。水溶液ジェット装置は、水溶液が版胴やブランケット胴の好ましい任意の位置に配置されるように、任意の適切な位置に配置される。
【0059】
図16は、水溶液ジェット装置1600に沿った水溶液ジェット1602の配置の一例を示している。水溶液ジェット1602は、一列に配置されたり、互い違いに配置されたり、又は、版胴又はブランケット胴のあらゆる位置に水溶液滴を配置することが可能な他の適切な方法で配置される。
【0060】
図17は、本発明の原理に基づく印刷機からの出力1702を示している。版胴又はブランケット胴の回転回数1704,1706,・・・,Nごとに、例えば、1つの固定イメージと2つの可変イメージとを含むドキュメント(ドキュメント1705,1710,1712として示される)が印刷される。固定イメージ(固定情報)と可変イメージ(可変情報)とのあらゆる組み合わせが、このような印刷機によって印刷され得る。また、胴の1回転が出力の1ページに一致している必要はない。胴のサイズによって、一度に複数のページが印刷されることもあれば、1回転で出力ページの一部分のみが印刷されることもある。
【0061】
本発明における高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法は、数多くの平版印刷の用途において利用することが可能である。例えば、本明細書に記載されたシステム及び方法は、ダイレクトメール、広告、明細書、請求書などの高品質な一対一マーケティングのアプリケーション(one-to-one marketing applications)に理想的である。本発明に適した他の用途としては、パーソナライズされた書籍、定期刊行物、出版物、ポスター、ディスプレイなどの印刷が挙げられる。本発明における高速可変印刷システム及び高速可変印刷方法は、上述の製品のポストプレス処理(例えば、製本や仕上げ)も迅速化することができる。
【0062】
以上は、本発明の原理を例示するためのものに過ぎず、当業者によって本発明の範囲及び理念から逸脱することなく様々な改変が可能であることは明らかであろう。例えば、記載された手順におけるいくつかのステップの順序は、決定的なものではなく、必要に応じて変更が可能である。また、様々なステップは、様々な技術によって実行され得る。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来技術の印刷システムの側面図である。
【図2】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図3】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図4】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図5】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図6】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図7】図6に示す本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図の部分拡大図である。
【図8】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図9】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図10】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の側面図である。
【図11】図10に示す装置及び本発明の原理に従って実現可能な出力の例を示す図である。
【図12】本発明の原理に基づく装置の一実施形態の図である。
【図13】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図14】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図15】図2〜図10に示す装置の一部分の正面図である。
【図16】図2〜図10に示す装置の部分拡大図である。
【図17】本発明の原理に従って実現可能な一連の出力の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴に水溶液を塗布して第1のネガイメージを生成すること、
前記胴にインキを塗布すること、及び、
印刷媒体にインキによるポジイメージを転写すること、
を含む、可変印刷方法。
【請求項2】
残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去すること、及び、
前記胴に前記水溶液を塗布して第2のネガイメージを生成すること、
を更に含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項3】
前記胴に前記水溶液を塗布する前にイメージデータを受信することを更に含み、前記第1のネガイメージは、前記イメージデータの少なくとも一部に基づいている、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項4】
前記残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去することは、前記胴の各回転ごとに、前記残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去することを含む、請求項2記載の可変印刷方法。
【請求項5】
前記胴に前記水溶液を塗布して前記第1のネガイメージを生成することは、前記胴に前記水溶液をプリントすることを含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項6】
前記プリントは、少なくとも1つの噴射ノズルを用いて行われる、請求項5記載の可変印刷方法。
【請求項7】
前記胴に前記水溶液を塗布して前記第1のネガイメージを生成することは、前記胴に前記水溶液を噴射することを含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項8】
前記噴射は、少なくとも1つのインクジェットヘッドを用いて行われる、請求項7記載の可変印刷方法。
【請求項9】
前記水溶液は、水、エチレングリコール、及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項10】
前記水溶液は、界面活性剤を含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項11】
前記胴に前記水溶液を塗布した後に、前記第1のネガイメージの少なくとも一部の加熱を行うことを更に含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項12】
前記胴に前記水溶液を塗布した後に、前記第1のネガイメージの少なくとも一部の乾燥を行うことを更に含む、請求項1記載の可変印刷方法。
【請求項13】
残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去することは、前記胴にクリーニング液を塗布することを含む、請求項2記載の可変印刷方法。
【請求項14】
前記第1のネガイメージと前記第2のネガイメージとは、異なるイメージである、請求項2記載の可変印刷方法。
【請求項15】
胴に水溶液を塗布して第1のネガイメージを生成する水溶液ジェットシステムと、
前記胴にインキを塗布するインキシステムと、
印刷媒体にインキによるポジイメージを転写する圧胴と、
を含んで構成される、可変印刷システム。
【請求項16】
残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去するクリーニングシステムを更に含んで構成される、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項17】
前記水溶液ジェットシステムは、イメージデータを受信するように構成されており、前記第1のネガイメージは、前記イメージデータの少なくとも一部に基づいている、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項18】
前記クリーニングシステムは、前記胴の各回転ごとに、前記残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去するように構成される、請求項16記載の可変印刷システム。
【請求項19】
前記水溶液ジェットシステムは、前記胴に前記水溶液をプリントして、前記胴にインキを塗布するように構成される、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項20】
前記水溶液ジェットシステムは、少なくとも1つの噴射ノズルを含んで構成される、請求項19記載の可変印刷システム。
【請求項21】
前記水溶液ジェットシステムは、少なくとも1つのインクジェットヘッドを含んで構成される、請求項19記載の可変印刷システム。
【請求項22】
前記水溶液は、水、エチレングリコール、及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を含む、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項23】
前記水溶液は、界面活性剤を含む、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項24】
前記界面活性剤は、シリコーンベースの界面活性剤であり、前記胴の表面は、シリコーン層を含んで構成される、請求項23記載の可変印刷システム。
【請求項25】
前記胴は、ウォーターレス印刷システムの一部である、請求項24記載の可変印刷システム。
【請求項26】
前記水溶液ジェットシステムにて前記胴に前記水溶液を塗布した後に前記ネガイメージの少なくとも一部の加熱を行う加熱装置を更に含んで構成される、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項27】
前記水溶液ジェットシステムにて前記胴に前記水溶液を塗布した後に前記ネガイメージの少なくとも一部の乾燥を行う真空装置を更に含んで構成される、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項28】
前記クリーニングシステムは、前記胴にクリーニング液を塗布するように構成される、請求項16記載の可変印刷システム。
【請求項29】
前記水溶液ジェットシステムは、前記胴に前記水溶液を塗布して第2のネガイメージを生成するように更に構成されており、前記第1のネガイメージと前記第2のネガイメージとは、異なるイメージである、請求項15記載の可変印刷システム。
【請求項30】
胴に水溶液を塗布して第1のネガイメージを生成する手段と、
前記胴にインキを塗布する手段と、
印刷媒体にインキによるポジイメージを転写する手段と、
を含んで構成される、可変印刷システム。
【請求項31】
残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去する手段と、
前記胴に前記水溶液を塗布して第2のネガイメージを生成する手段と、
を更に含んで構成される、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項32】
前記胴に前記水溶液を塗布する前にイメージデータを受信する手段を更に含んで構成され、前記第1のネガイメージは、前記イメージデータの少なくとも一部に基づいている、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項33】
前記残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去する手段は、前記胴の各回転ごとに、前記残留したインキ及び水溶液を除去する手段を含んで構成される、請求項31記載の可変印刷システム。
【請求項34】
前記胴に前記水溶液を塗布して前記第1のネガイメージを生成する手段は、前記胴に前記水溶液をプリントする手段を含んで構成される、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項35】
前記プリント手段は、少なくとも1つの噴射ノズルを含んで構成される、請求項34記載の可変印刷システム。
【請求項36】
前記胴に前記水溶液を塗布して前記第1のネガイメージを生成する手段は、前記胴に前記水溶液を噴射する手段を含んで構成される、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項37】
前記噴射手段は、少なくとも1つのインクジェットヘッドを含んで構成される、請求項36記載の可変印刷システム。
【請求項38】
前記水溶液は、水、エチレングリコール、及びプロピレングリコールのうちの1つ以上を含む、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項39】
前記水溶液は、界面活性剤を含む、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項40】
前記界面活性剤は、シリコーンベースの界面活性剤であり、前記胴の表面は、シリコーン層を含んで構成される、請求項39記載の可変印刷システム。
【請求項41】
前記胴は、ウォーターレス印刷システムの一部である、請求項40記載の可変印刷システム。
【請求項42】
前記胴に前記水溶液を塗布した後に前記ネガイメージの少なくとも一部の加熱を行う手段を更に含んで構成される、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項43】
前記胴に前記水溶液を塗布した後に前記ネガイメージの少なくとも一部の乾燥を行う手段を更に含んで構成される、請求項30記載の可変印刷システム。
【請求項44】
前記残留したインキ及び水溶液を前記胴より除去する手段は、前記胴にクリーニング液を塗布する手段を含んで構成される、請求項31記載の可変印刷システム。
【請求項45】
前記第1のネガイメージと前記第2のネガイメージとは、異なるイメージである、請求項31記載の可変印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−527387(P2009−527387A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556392(P2008−556392)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/004437
【国際公開番号】WO2007/098174
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(509002327)ムーア ウォリス ノース アメリカ、 インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】